説明

液体試料分注装置及び液体試料分注装置を備えた生化学反応装置

【課題】生化学検査装置で用いられる液体移動機構として、ディスポーサブルピペットチップを装着して用いる場合のようにピペットチップの格納、付け替えの場所を要さず、また、チューブを吸引および排出に用いる場合のエアロゾルによる汚染の防止、チューブ先端の切断面の影響もしくはチューブ変形などによる液量誤差の改善、あるいはチューブの設置の容易化を可能とする、液移動機構及びこの機構を備える生化学検査装置を提供すること。
【解決手段】ディスポーザブルピペットチップに変えて可撓性材料からなるチューブを用いて試薬等の液体を吸引・排出し、使用済みのチューブを切断して使用する液移動装置である。さらにチューブの切断面のバリ取りあるいは成形手段を備え、あるいはチューブ内にフィルターを含むチューブを用いる液移動装置にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体試料分注装置に関するものである。また、液体試料分注装置を備えた生化学反応装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
生化学分野、特には遺伝子診断関連分野においては、遺伝子の抽出、増幅、ハイブリダイゼーションなど各種の処理が行なわれる。このような処理を自動で行なう装置もあり、例えばDNA
抽出・回収・単離のための装置を例に挙げると特許文献1などがあげられる。一般にこのような自動装置は、各試料に複数の試薬等を加えたり、液を移動あるいは分注する際に、ディスポーザブルのプラスティックピペットチップを使用する場合が多い。また、特許文献2のように、ディポーザブルのプラスティックピペットチップの代わりにチューブを使用する方法も開示されている。
【特許文献1】特開平08−320274公報
【特許文献2】特開平06−102151公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般にこれら処理を行なう際に使用されるピペットは、検体の相互間の汚染(コンタミネーション)を防ぐ目的で、ディスポーザブルのプラスティックピペットチップを使用する場合が多い。しかし、この方法では未使用のピペットチップを格納する場所、使用後のピペットチップを廃棄する場所、ピペットチップをピペットに付け替える場所などが必要となり、装置の小型化の妨げとなっている。さらにピペットとピペットチップとの嵌合に不具合があると正確に液を移動できないといった欠点や、ランニングコストがかかってしまうという欠点もある。
【0004】
また、チューブを使う装置では、液を吸引する際に発生するエアロゾルがチューブ内に残り、次の検体にコンタミネーションしてしまうキャリーオーバーが発生するという欠点があった。さらにはチューブ先端の切断面の影響あるいは、チューブが弾性材料の場合吸引によるチューブの変形などによって液量の誤差が大きくなるという欠点があった。チューブをしごいて液を吸引・吐出する形態ではチューブを装置にセットするのに手間がかかるという欠点もあった。
【0005】
よって、本発明の目的は、省スペース化を図り、かつ精度よく液移動を行なうことができる液体分注装置を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、省スペース化を図り、かつ精度よく液移動を行なうことができる液体試料分注装置を備える生化学反応装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の第一は、可撓性材料からなるチューブを用いて液体を移動あるいは分注する装置であって、
前記チューブを送り出す送出手段と、
前記チューブを切断する切断手段と、
前記チューブ内に液体を吸引あるいは排出する吸引・排出手段と、
前記チューブの切断面のバリ取りあるいは成形を行なう成形手段とを備えたことを特徴とする液体移動装置である。
【0008】
本発明の第二は、可撓性材料からなるチューブを用いて液体を移動あるいは分注する装置であって、
前記チューブを送り出す送出手段と、
前記チューブを切断する切断手段と、
前記チューブ内に液体を吸引あるいは排出する吸引・排出手段とを備え、
前記チューブとして、前記切断手段により切断する位置のチューブ内径がその他の部位に比較して細くなっているものを用いることを特徴とする液体移動装置である。
【0009】
本発明の第三は、可撓性材料からなるチューブを用いて液体を移動あるいは分注する装置であって、
前記チューブを送り出す送出手段と、
前記チューブを切断する切断手段と、
前記チューブ内に液体を吸引あるいは排出する吸引・排出手段とを備え、
前記チューブとして、チューブ内に少なくとも1つ以上のフィルターが含まれているものを用いることを特徴とする液体移動装置である。
【0010】
本発明の第四は、可撓性材料からなるチューブを用いて液体を移動あるいは分注する装置であって、
前記チューブを送り出す送出手段と、
前記チューブを切断する切断手段と、
前記チューブ内に液体を吸引あるいは排出する吸引・排出手段とを備え、
前記吸引・排出手段として、吸引および排出用ポンプを前記チューブ端部に接続して用いること
を特徴とする液体移動装置である。
【0011】
本発明の第五は、反応および検出容器を設置可能な1乃至複数の反応ユニットと、
前記反応用の試薬を収納する試薬容器の設置台と、
本発明に係る液体移動装置とを具えたことを特徴とする生化学検査装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ピペットを使用して試料溶液を分注、移動、混合等行なう装置において、未使用のディスポーザブルのプラスティックピペットチップを保管する場所、ピペットチップを交換する場所が削減でき、各種装置の小型化することが可能となった。さらにコンタミネーションを防止すること、正確な量をハンドリングすることが可能となった。また、上記装置は自動遺伝子検査装置などの生化学検査装置にも応用することが可能であり、小型で、信頼性の高い検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の液体移動装置は、液体を格納・保持する手段として可撓性材料からなるチューブを利用し、使用により液体と接触したチューブ端部を切断除去し、未使用部位を新しくチューブ端部として別の液体の吸引および排出に用いることで、異なる液体を繰り返し移動させることを可能とする。
【0014】
液体移動装置は、(1)チューブを送り出す送出手段と、(2)チューブを切断する切断手段と、(3)チューブ内に液体を吸引あるいは排出する吸引・排出手段とを少なくとも有する。
【0015】
可撓性材料からなるチューブには、繰り返し切断して利用するのに十分な長さを有する長尺のチューブを用いる。本装置は未使用のチューブを保持する領域を有しており、好ましくは未使用のチューブをコンパクトに収納するためのチューブ収納部を備えている。液体の吸引排出に使用したチューブ端部を切断すると、送出手段が、未使用のチューブを保持する領域からチューブを送り出し、液体の吸引・排出を行う部位(以下、吸引・排出部位という)に未使用のチューブ端部を補填する。本装置は、未使用チューブを保持する領域から吸引・排出部位まで導くためのガイドを有していることが望ましい。ガイドを有することで送出手段を駆動させるだけで、吸引・排出部位にチューブを送り出すことができる。例えば、液体を吸引・排出するチューブ端部を、吸引・排出部位に保持するために先端ガイド部を有していてもよい。先端ガイド部として吸引・排出部位にノズルを設置して用いることもできる。また、本装置ではチューブ内部に格納した液体を、液体を含む容器に移す場合は、この容器の液面下にチューブ端部を浸し、排出および吸引の操作を繰り返すことで混合あるいは撹拌を行なうことができる。また、筐体などを支持体としてチューブを装着して、この支持体を移動させることにより液体を分注する場合は、送出手段、切断手段およびガイドを支持体に設置することができる。
【0016】
可撓性材料からなるチューブは、吸引・排出する液に浸食されない物であって、チューブを撓めて収納したり、余分な力をかけずに装置に装着することができる程度の可撓性を有していればよく、特に限定されない。チューブの変形による液量の誤差を低減するためには、チューブの可撓性材料は微弾性であることが好ましい。チューブが微弾性であるとは、液体の吸引・排出時のチューブ内の圧力変化によりチューブが径方向に変形しない程度の堅さを有していることをいう。さらに、外部からの押圧によってもチューブが径方向に変形しない程度の堅さを有していることが好ましい。よって、例えば、本発明の装置は、可撓性材料からなるチューブに液体を格納して移動させる液体移動装置であって、可撓性材料からなるチューブを収納して保持するチューブ収納部と、チューブ収納部から吸引・排出部位に可撓性材料からなるチューブを送り出す送出手段と、可撓性材料からなるチューブを切断する切断手段と、可撓性材料からなるチューブのチューブ内に液体を吸引あるいは排出する吸引・排出手段とを備え、チューブの可撓性材料として微弾性材料を用いることを特徴とする液体移動装置を包含する。
【0017】
微弾性を有する可撓性材料からなるチューブを用いる場合には、チューブを変形させることで吸引および排出することができない。その場合は、吸引・排出手段の一つとして、液体を格納するチューブ端部と異なる側のチューブ端部に接続して吸引排出動作を行うことができる吸引・排出手段を用いることができる。そのような吸引・排出手段として、シリンジポンプなどの吸引および排出用ポンプをチューブ端部に接続して好適に用いることができる。
【0018】
また、本装置は、切断手段によりチューブを切断した場合に生じる切断面の成形あるいはバリ取りを行なう成形手段を有することが望ましい。チューブ先端にバリが残っていると、液を排出する際の液切れが悪くなること、また液が直下に排出されず横方向に曲がって排出されてしまうからである。バリ取りは熱をかけて行なうものが簡便である。この場合チューブの材料は熱可塑性樹脂である必要がある。
【0019】
熱可塑性樹脂は、例えばポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどがある。しかし一般にエンジニアリングポリマーと呼ばれるPEEK、ポリイミドなどは、硬く、熱による軟化点が高いため不向きである。上述したように耐薬品性があって、微弾性を有する可撓性材料としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)が例示できる。これらは酸・アルカリ、ほとんどの有機溶媒に強く、吸水性もほとんどない。硬さ(ショア)もPTFEがD50〜55、FEPがD60〜65であり適している。さらにバリ取り成形もPTFEであれば摂氏150度乃至は摂氏250度、FEPにおいては摂氏120度乃至は摂氏200度程度で可能である。同様の理由によりETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)も好適である。なお、ここで例示した材料および温度は本発明を限定するものではない。
【0020】
本発明の装置は、液体移動操作を制御するコントローラを有していてもよく、吸引・排出手段、切断手段、送出手段を夫々制御する機構を有してもよく、あるいはこれらの手段を統合して制御する機構を有していてもよい。例えば、分注する液量や分注回数について設定したプロトコルを実行可能なプログラムを備え、このプロトコルに従って、適切なチューブの長さを送りだし、適切な位置でチューブを切断するように制御することができる。
【0021】
さらに本発明は、上記構成の液体移動装置を備えた生化学検査装置も包含する。すなわち、本発明の生化学検査装置は、反応および検出容器を設置可能な1乃至複数の反応ユニットと、反応用の試薬を収容するための試薬容器を設置するための設置台と、本発明にかかる上記構成の液体試料移動装置とを有する構成である。また、検出ユニットを備えていてもよいし、反応ユニットを検出ユニットに併用する構成であってもよい。さらに、検体を含む溶液を収容する検体容器を設置するための設置台を更に有していてもよい。この生化学検査装置は、核酸断片、DNA、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ポリペプチドからなる群から選択された少なくとも1種を含む検体について行なう生化学検査に好適に利用できる。例えば、核酸の増幅反応あるいはハイブリダイゼーション反応を含む遺伝子検査や抗原抗体反応あるいは酵素反応を行なうタンパク質の検出反応が挙げられる。
【実施例】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明にかかる実施例について説明する。
【0023】
(実施例1)
図1及び図2は本発明の実施例に係る自動分注装置の一実施例の構成図である。図1では、液を格納するためのチューブ(1)は、例えばロール(2)に巻き取られている。チューブの末端はシリンジポンプ(4)などの液を吸引あるいは吐出するための手段に接続されている。チューブをロールに巻きつけて格納する方式では図9に示すようにチューブロール(2)をチューブ送出方向に沿って配置した格納ケースを用いることもできる。図示しない方式によってチューブ先端は液(10)が格納されているマイクロチューブ(8)の位置に移動する。そしてチューブ送り出しローラー(3)、ガイド(5)、カッター(6)などが含まれている筐体(23)を図示しない方式によって下げ、あるいはチューブ送り出しローラー(3)によってチューブ先端を下げ、チューブ先端が液(10)に浸かるようにする。シリンジポンプ(4)を作動させ液(10)を吸引し、筐体(23)を上げ、もしくはチューブ送り出しローラー(3)によってチューブ先端を上げる。さらに不図示の方式によって分注先のマイクロチューブ(8)の上に移動し、筐体(23)を下げ、あるいはチューブ送り出しローラー(3)によってチューブ先端を下げて、シリンジポンプ(4)を作動させて吸引した液を吐出する。チューブ送り出しローラー(3)の間に設けられたガイドにより、チューブ送り出しローラーからチューブが外れないようになっている。また、カッター(切断手段)(6)の傍に設けられたガイドにより、チューブ切断位置に隣接する両サイドのチューブ領域を固定して切断が補助される。
【0024】
同様にチューブ先端が廃棄チューブ入れ(11)の上部に来るように移動し、カッター(6)によってチューブを切断する。この時、接液した部分が切断面よりも上に来ないように、必要ならばチューブ送り出しローラー(3)によってチューブを下げてもよい。なお、切断方式はカッターに限定される物ではなく、例えば熱やレーザーを利用した切断具を使用する場合などが挙げられる。熱やレーザーを使用する場合はカッターなどに比べてパーティクルの発生が少なく、切断面もバリが少ないことから好ましい。さらに熱による切断の場合はチューブの滅菌を兼ねる構造にすることも好ましい。
【0025】
切断面はチューブに対して垂直に切断するほか、斜めに切断することも可能である。この場合チューブが容器底面に接触してもチューブの穴と容器との間に隙間が生じ、穴がふさがれることがないことから好ましい方法である。
【0026】
切断面にバリがでる場合は、成型器(7)などによってバリをとることが好ましい。特に熱による成型器を使用する場合は、簡便にバリがとれるだけでなく、滅菌効果やチューブの曲が是正されるなどの効果があることから好ましい方法である。この場合、熱が影響する機構がある場合はその機構から遠ざけるなどの工夫が必要になる。なお、ここで使用する熱はチューブの材質などにもよるが、摂氏100度から摂氏200度程度が好ましい。
【0027】
チューブの材質は、使用する液で浸食されず、可撓性があれば特に限定される物ではない。柔らかい材料である場合、チューブが長くなるとチューブ内の圧力によってチューブが径方向で変形し、分注量の誤差が大きくなる。しかし堅い材料であるとチューブの取り回しがしにくくなる。よって、チューブの取り回しが可能な程度の可撓性を有し、かつチューブ内の圧力によってチューブが径方向に変形しない程度に柔軟度が低いことが好ましい。なお、成型器(7)が熱を利用する場合は熱可塑性樹脂である必要があることは上述したとおりである。
【0028】
また、使用する液と親和性を持つ材質を使用すると液切れが悪くなり、分注に時間を要したり、分注量にバラツキが出てしまうことがある。このため通常は使用する液と親和性を持たない材質が好ましい。例えば使用する液が水溶液の場合は疎水性材料を用いることが好ましい。上述した使用する薬品に対する耐久性や親和性などの他に、チューブの長さ、装置の大きさ、装置へのチューブのセットのしやすさなどの観点から適した材料を選択できる。例えば内径2mm、外径4mmのPTFEチューブは、以下の(A)から(E)の理由から好ましい。(A)最小曲げ半径が15mmでありロールにしやすいこと。(B)ある程度の堅さがあることからチューブが長くなっても圧力による変形が少なく分注量の誤差が出にくいこと。(C)耐薬品性が優れていること。(D)疎水性であること、(E)熱によりバリ取りがしやすいこと。また、同様の理由でFEPも好適に使用できる。なお、本発明に用いられるチューブの材質はこれに限定される物ではない。
【0029】
またチューブの内径が太ければ液垂れが起こる可能性が高くなる。しかし内径を細くすると圧力損失によって液量に誤差が生じたり、応答性が悪くなってしまう。そこで図6のように液を格納する部分は太くし、切断手段による切断位置(71)は予め細くしたチューブを使用することも好ましい。この切断位置の内径サイズは使用する液量や、細くなっている部分の段数にもよるが、例えば100μL以下の場合は0.2mm乃至0.7mm、1mL程度であれば、0.5mm乃至1.0mm程度、それ以上であれば0.7mm乃至は2.0mm程度がよい。なお、このサイズは一例であって、本発明を限定するものではない。なお、このようなチューブは、上述したような熱可塑性樹脂からなるチューブに熱をかけ圧搾することで簡便に作製が可能である。
【0030】
これらチューブの堅さにもよるが、途中にガイド(5)を設け、チューブが縒れないようにすることも好ましい。しかしガイドが多いとセットする時に手間がかかってしまうと言う問題もある。チューブの材質や装置構成などを考慮して、ガイドを設置するかあるいはどの程度設置するかを設計する必要がある。また、分注装置において液の吸引および排出を行なう位置(吸引排出部位)に可撓性チューブの先端を誘導する先端ガイド部を設けることで、チューブ先端を吸引・排出部位に一定に保つことができる。先端ガイド部は、チューブ材料の特性などから、チューブ先端が吸引・排出部位に正確に保持できる程度に十分に吸引・排出部位に近接して設置する。
【0031】
さらに、チューブ(1)は材質にもよるが通常絶縁性のため帯電しやすく、例えば製造工程、流通工程、あるいは装置へセットする工程などで帯電する可能性が高い。吸引あるいは吐出する際に帯電していると、液組成あるいはチューブの材質などにもよるが、図5のようにチューブ外のところに液滴(61)が回り込むことがある。このように液滴が回り込むと、チューブ移動時に意図しないところに液滴が垂れてしまい、コンタミネーションあるいは装置を汚染してしまう可能性がある。これを防止するために静電気除去装置(14)を内蔵することが好ましい。静電気除去装置(14)を搭載する場所としては、チューブ先端近傍などがあげられる。搭載場所は特にこれらに限定される物ではないが、静電気を除去可能で、他の動作の邪魔にならないところであって、静電気除去装置の清掃あるいはメンテナンスのしやすい位置が好ましい。
【0032】
また、チューブ使用時に、試料によっては接液していない部分もエアロゾルによって汚染される可能性がある。このような場合は途中にフィルターを設けることが好ましい(図7および8参照)。フィルターのポアサイズが小さければエアロゾルによるキャリーオーバーコンタミネーションの可能性も低くなるが、圧力損失によって液量に誤差が生じたり、応答性が悪くなってしまう。逆にポアサイズが大きければエアロゾルも通過し、キャリーオーバーコンタミネーションの可能性が高くなる。通常エアロゾルは数μm以下であるが、ポアサイズをこの大きさに設定すると圧力損失が多くなる。しかし30μm乃至50μmのポアサイズのフィルターは、水分によってポアが詰まりエアロゾルが通過しにくいという特徴を持ち、さらに水分がない状態では空気抵抗が少なく圧縮損失が起こりにくいことが知られている。このような理由からフィルターのポアサイズは30μm乃至50μmが好ましい。
【0033】
このようなフィルターを有するチューブについては、例えばフィルター両端にチューブ外径とほぼ同じ大きさの穴を空けておき、その穴にチューブを差し込んで連結させていく方法は簡便な作製方法である。なお、本作製方法は本発明を限定するものではない。
【0034】
(実施例2)
本発明の別の様式を図2に示した。この方式では、チューブをロール上にせず、折りたたんでチューブ供給カートリッジ(91)に格納した形態である。この形式ではチューブ供給カートリッジ(91)から出るチューブ(1)の先端をシリンジポンプに接続し、もう一端をチューブ送り出しローラー(3)、ガイド(5)を通してセットするのみなので、セットしやすいという特長を持つ。チューブ送り出しローラーでチューブを送り出した際、不要なチューブがチューブ供給カートリッジ(91)から出てしまうのを防ぐ目的で、必要に応じてチューブ留具(13)を設けることも好ましい。
【0035】
このように、チューブの格納方式は、装置の構成などによって適宜選択することが好ましい。なお、本発明は実施例1のロールして収納する形態および実施例2の折りたたんで収納する形態に限定される物ではない。
【0036】
(実施例3)
次に本発明を使用した分注装置(図3)について説明する。分注装置はその用途に応じて、マイクロチューブからマイクロチューブへ、あるいはウェルプレートへ分注する場合、1つの試料を複数の容器(マイクロチューブやウェルプレートなど)に分注する場合など、多くのバリエーションがある。ここでは、マイクロチューブに含まれる液体試料をウェルプレートに分注する装置を例に挙げて説明する。
【0037】
マイクロチューブ(8)に含まれる液体試料をチューブ(1)によってマルチウェルプレート(22)に分注する。この場合チューブ(1)は、不図示の機構によってX軸、Y軸、Z軸に可動である。また、筐体(23)の内部に設置されたシリンジポンプ(4)によって液の吸引、吐出が可能であり、さらに筐体(23)の内部にはチューブを切断するためのカッター(6)、チューブ送り出しローラー(3)が具備されている。
【0038】
チューブ(1)は材質にもよるが通常絶縁性のため帯電しやすく、例えば製造工程、流通工程、あるいは装置へセットする工程などで帯電する可能性が高い。吸引あるいは吐出する際に帯電していると、液組成あるいはチューブの材質などにもよるが、図5のようにチューブの外に液滴(61)が回り込むことがある。このように液滴が回り込むと、チューブ移動時に意図しないところに液滴が垂れてしまい、コンタミネーションあるいは装置を汚染してしまう可能性がある。これを防止するために静電気除去装置(14)を内蔵することが好ましい。静電気除去装置(14)を搭載する場所としては、チューブ先端の動線上やその近傍などが好ましい。チューブ先端の動線とは、液体の移動動作、チューブ廃棄箇所への移動あるいは成形手段への移動などの動作にともなってチューブ先端の通過する経路である。搭載場所は特にこれらに限定される物ではないが、静電気を除去可能で、他の動作の邪魔にならないところであって、静電気除去装置の清掃あるいはメンテナンスのしやすい位置が好ましい。
【0039】
静電気除去装置は針状の放電電極へ電解を集中させてコロナ放電を発生させ、イオン化した空気で除電するコロナ放電式と、微弱な軟X線を使用する軟X線方式などがある。後者は短時間で広い範囲を除電できるメリットがあるが、人体に影響があることや十分な管理と遮蔽設備が必要なことから、コロナ放電式を用いることが望ましい。コロナ放電方式でもAC方式は交流電源を高電圧(4KV〜7KVなど)に昇圧し、一定のサイクルで正負を切り替える方式である。この方式は一般的で取扱いが比較的容易であるが、電極からの有効範囲が狭いという欠点がある。これに対してDC方式は、プラス、マイナスそれぞれでの電極を使用する方式である。この方式はイオン拡散がよく帯電物との距離が離れていても有効であるというメリットがある反面、定期的なメンテナンスが必要となる。除電方式については装置にあった方式を選択すればよく、特に限定される物ではない。また、タイプとしてはブロアタイプ(ファン)、バータイプ、小スポットタイプなどのタイプが市販されており、装置にあわせて選択することが可能である。ブロアタイプは広範囲を除電できるメリットはあるが、塵埃等を巻き上げないようにする機構あるいは巻き上げても影響のない構造にすることが好ましい。
【0040】
筐体(23)、チューブ供給カートリッジ(91)、チューブ(1)などは、静電気除去装置(14)で静電気を除去した後、分注するべき液が入っているマイクロチューブ(8)の上部に移動する。不図示の方式により筐体(23)、チューブ供給カートリッジ(91)、チューブ(1)などを下げ、さらに必要によって筐体(23)内に具備されたチューブ送り出しローラーによってチューブ先端をおろす。さらに筐体(23)内に具備されたシリンジポンプなどによって液を吸引する。そして不図示の方式により筐体(23)などを上げ、さらに必要によって筐体(23)内に具備されたチューブ送り出しローラーによってチューブ先端を上げる。さらにマルチウェルプレート(22)の上に移動して同様に不図示の方式により筐体(23)などを下げ、さらに必要によって筐体(23)内に具備されたチューブ送り出しローラーによってチューブ先端をおろす。同様にシリンジポンプなどによって液をウェル内に分注する。必要によってこれを繰り返して分注を行なう。
【0041】
分注動作終了後は、廃棄チューブ入れ(11)の上に移動し、接液したチューブを筐体(23)内に具備されたカッターなどの切断手段によって切断する。切断面は必要によって成型器(7)などによってバリ取りを行なうことも好ましい。バリ取りに関しては上述したとおりである。
【0042】
なお、切断位置が予め細くされたチューブ(図6)あるいはフィルターを具備したチューブ(図7および8)を用いる場合、切断する位置が制限されることになる。つまり自動分注装置の分注プロトコルに適したチューブ、すなわち分注プロトコルにおいて適した位置に切断する位置が来るように設計したチューブが必要となる。マイクロチューブ(8)内の液を、マルチウェルプレート(22)に分注するような、取り扱う液量が一定であるようなプロトコルの場合は、切断位置を使用する液量に応じて均等に割り付ければよい。このようなチューブは汎用的に使用可能である。しかし、扱う量が一定でないような複雑なプロトコルの場合は、切断位置を均等に割り付けず、その液量に応じて切断位置を変えることが好ましい。例えば最初は50μL、次に25μL、次に50μLの液を扱うようなプロトコルでは、内径が2mmのチューブを用いる場合、切断位置を約20mm、約10mm、約20mmの間隔で切断位置を設ける。この場合、プロトコルが決まるとそれに適したチューブを使用する必要がある。この場合、チューブを交換可能に設置し、実行するプロトコールに従って用いる構成とすることができる。この場合、チューブがチューブ収納ケースごと交換可能に構成され、更にチューブを識別するための識別手段を装置に有する構成にすると良い。例えば、チューブ収納ケースごと交換可能なようにするために取り外し可能なチューブ収納ケースを設置する。また、チューブ収納ケースを交換するための交換手段を備えていてもよい。識別手段については、具体的には、チューブ供給カートリッジ(91)にチューブ識別ID(15)を、バーコードあるいはICチップなどを利用して設ける。そうすると分注装置(21)に不図示の識別ID読み取り装置で読み取り、ユーザーが実行しようとしているプロトコルにそのチューブが適合しているかを自動で判別することも可能である。また、切断位置やそれに応じた使用可能液量などのチューブデータそのものをICチップなどや不揮発性メモリに格納する。そして、これをチューブ供給カートリッジ(91)などに付し、これを分注装置(21)に不図示の識別ID読み取り装置で読み取り、適正な位置でチューブを切断しても良い。
【0043】
さらに別の様態では、例えば光学的にチューブの切断位置の検知などにより、チューブの送り出し状態を検知する手段を設けてもよい。例えばチューブを切断する場合にチューブ送り出しローラー(3)を利用してチューブを送り出しながら、不図示の送り出し状態を検知する手段がチューブの切断位置を検知した段階でチューブ送り出しローラー(3)を停止させ、カッター(6)で切断しても良い。フィルターを備えるチューブや切断位置の径が細いチューブを用いる場合、チューブの送り出し状態をフィルター位置や径が細い箇所の検知により確認することができる。そのため、チューブの送り出しを制御して適切な切断位置で正確に切断することを可能とするので好適に用いることができる。
【0044】
このような自動で確認する手段は必要に応じて設ければ良い。なお、本自動で確認する手段の搭載・非搭載、あるいはその方法は必要に応じて選択可能で、本発明を限定するものではない。
【0045】
(実施例4)
図4は本発明の実施例に係るDNA自動検査装置全体の構造を説明する斜視図である。
【0046】
まず、図4を用いてDNA自動検査装置全体の構造について説明する。DNA自動検査装置(31)は分注ユニット(33)、増幅ユニット(32)、ハイブリダイゼーションユニット(34)が基台(35)上に配置された構成からなる。また、増幅ユニット(32)の上流側には検査するための検体溶液を置くための検体ステージ(37)が備えられている。
【0047】
分注ユニット(33)は分注ユニットX、Z軸(36)によって支えられており、増幅ユニット(32)・ハイブリダイゼーションユニット(34)上の空間をXZ方向に移動可能となっている。分注ユニット(33)はカッター(6)、ガイド(5)、シリンジポンプ(4)、チューブ送り出しローラー(3)などが筐体(23)内に納められている。さらにチューブ(1)が格納されたチューブ供給カートリッジ(91)が取り付けられている。チューブ先端はY方向に等間隔で並んでいる。このシリンジポンプ(4)を駆動させると、チューブ先端に液体を導入したり、液体を排出したりすることができる。
【0048】
増幅ユニット(32)は増幅ユニットY軸(39)の上に増幅ステージ(40)が搭載された構成からなる。増幅ステージ(40)は増幅ユニットY軸(39)によりY方向に移動可能である。これによりチューブ先端を増幅プレート(41)の偶数列、奇数列に位置させることができる。
【0049】
増幅プレート(41)は市販されているポリプロピレン製の96穴のウェルプレートであり、8×12個の増幅ウェル(42)が備えられている。増幅ウェル(42)には1stPCR・精製・2ndPCRで使用する試薬・洗浄液が予め入っており、不純物が混入することを防ぐため図示しない保護シートを増幅ウェル(42)上面に貼り付けている。
【0050】
ハイブリダイゼーションユニット(34)はハイブリダイゼーションY軸(43)にハイブリダイゼーションステージ(44)が搭載された構成からなる。ハイブリダイゼーションステージ(44)はハイブリダイゼーションY軸(43)によりY方向に移動可能である。ハイブリダイゼーションステージ(44)にはハイブリダイゼーションプレート(45)と検出カセット(47)を配置することができる。ハイブリダイゼーションプレート(45)は市販されているポリプロピレン製の96穴のウェルプレートから切り出されたものであり、3×12個のハイブリダイゼーションウェル(46)が備えられている。
【0051】
次に、DNA自動検査装置(31)の動作について説明する。まず、チューブ(1)の静電気を除去するために静電気除去装置(14)を作動させる。そして、分注ユニットX、Z軸(36)を移動させ、チューブ先端の静電気を除去し、静電気除去装置(14)は停止させる。
【0052】
分注ユニットX、Z軸(36)を駆動させて、必要によってチューブ送り出しローラー(3)を駆動させて、チューブ先端を検体ウェル(38)の検体溶液に接触させる。シリンジポンプ(4)を動作させ、チューブ(1)内に検体溶液を導入させる。検体溶液をチューブ(1)内に保持した状態で、分注ユニットX,Z軸(36)、必要によってチューブ送り出しローラー(3)を駆動させてチューブ先端を検体ウェル(38)から抜く。
【0053】
分注ユニットX、Z軸(36)を駆動させてチューブ先端を増幅ウェル(42)に移動する。分注ユニットX,Z軸(36)、必要によってチューブ送り出しローラー(3)でチューブ先端を増幅ウェル(42)に挿入する。シリンジポンプ(4)を動作させ、チューブ内の検体溶液を増幅ウェル(42)に排出することで、検体溶液と増幅ウェル(42)に入っていた試薬とが混合される。最後に分注ユニットX、Z軸(36)で分注ユニット(33)を上昇させ、さらに必要によってチューブ送り出しローラー(3)を使用してチューブ先端を増幅プレート(41)から引き抜く。
【0054】
ここで、増幅プレート(41)およびハイブリダイゼーションプレート(45)に保持された試薬・洗浄液について説明する。増幅ウェル(42)およびハイブリダイゼーションウェル(46)の1列に1検体を扱うために必要な試薬(DNAポリメーラー、基質となるdNTPやその標識化合物など、緩衝溶液、プライマーなど)、洗浄液が入っている。なお、試薬や液の種類についてはこれに限定される物ではない。
【0055】
以上で説明した静電気除去、分注の動作を行ないながら、増幅・精製・ハイブリの各工程を進めていく。これより、工程の順序に従って装置の動作について説明する。
【0056】
まず、検体溶液を入れた検体ウェル(38)を検体ステージ(37)上に配置する。使用する増幅プレート(41)、チューブ供給カートリッジ(91)、ハイブリダイゼーションプレート(45)、生化学反応カセット(47)をDNA自動検査装置(31)上にセットする。ここでDNA自動検査装置(31)をスタートさせることで、DNA検査工程が開始される。
【0057】
最初に必要によってチューブ先端に静電気除去装置(14)で除電し、1stPCR試薬が入った増幅ウェル(42)の上面に不図示の機構によって穴をあける。その後、検体溶液を検体ウェル(38)から1stPCR試薬(DNAポリメーラーゼ、基質となるdNTPなど)が入った増幅ウェル(42)に分注ユニット(33)で移動させる。1stPCR試薬と検体溶液を混合したら、図示しない温度制御手段で混合溶液の入った増幅ウェル(42)に温度サイクルをかける。これにより1stPCRが進行する。
【0058】
1stPCR終了後、標的核酸以外の不純物を取り除く精製工程に入る。標的核酸が特異的に吸着する磁性粒子を増幅ウェル(42)に入れておく。1stPCR産物を磁性粒子が入った増幅ウェル(42)に移して標的核酸を磁性粒子に吸着させる。図示しない磁力発生手段によって磁性粒子を増幅ウェル(42)の底面に固定し、その他の溶液を分注ユニット(33)で取り除く。さらに、磁性粒子を複数の洗浄液で数回洗浄する。洗浄液を磁性粒子が入った増幅ウェル(42)に分注ユニット(33)で移動させ、混合する。磁性粒子を図示しない磁力発生手段によって増幅ウェル(42)の底面に固定し、使用した洗浄液を分注ユニット(33)で取り除く。
【0059】
磁性粒子の洗浄が終わったら標的核酸を取り出すが、ここで不純物が混入していると、判定に悪影響を及ぼす。これまで使用していたチューブを使い続けると、不純物が混入してしまう可能性がある。よって、分注ユニット(33)を廃棄チューブ入れ(11)上に移動させ、使用したチューブを筐体(23)内に具備されたチューブ送り出しローラー(3)によって出して、カッター(6)で使用したチューブ(接液した部分)を切断する。切断されたチューブ断片は廃棄チューブ入れ(11)内に格納される。必要によって新しいチューブ先端をバリ取りすることも好ましい。さらに必要によって上述した方法で静電気除去装置(14)によって除電する。
【0060】
チューブで磁性粒子の入った増幅ウェル(42)に溶出液を移動させる。溶出液によって標的核酸の磁性粒子への吸着が外れる。図示しない磁力発生手段によって磁性粒子を増幅ウェル(42)の底面に固定し、標的核酸の入った溶液を分注ユニット(33)で移動させる。これで精製工程が終了する。
【0061】
精製工程が終了した溶液を増幅ウェル(42)に入っている2ndPCR試薬(DNAポリメーラーゼ、基質となるdNTP、蛍光標識されたプライマー、緩衝溶液など)と混合し、図示しない温度調整手段で温度サイクルをかける。これにより2ndPCRが進行する。温度サイクルをかけ終わったら増幅工程は終了である。
【0062】
増幅産物を含んだ液体を必要によって上述した方法と同様の方法で精製する。そしてハイブリダイゼーション試薬(例えば緩衝溶液や界面活性剤など)の入ったハイブリダイゼーションウェル(46)に分注ユニット(33)で移動させる。増幅産物をハイブリダイゼーション試薬と混合した後、その混合液を生化学反応カセット(47)に移す。生化学反応カセット(47)には注入口(48)があり、ここに混合液を分注ユニット(33)で移動させる。注入口(48)の反対側には吸引口(49)があり、ここに図示しない吸引機構を密着させ、混合液を生化学反応カセット(47)内に注入口(48)から導入させる。この時、生化学反応カセット(47)に帯電していると、注入口周辺を汚染させ、さらに装置の汚染につながり、ひいてはコンタミネーションの原因となりうる。また生化学反応カセット内の空気が残存してしまい、反応に影響を及ぼすおそれもある。このため生化学反応カセットも除電しておく。除電の方法は上述したチューブの除電の方法と同様に既存の方法から適当な方法を選択できる。設置する場所も反応カセットのセッティングや、液体移動操作、除電装置のメンテナンスに支障のないところが好ましいが、特に限定されるものではない。
【0063】
これにより、混合液を生化学反応カセット(47)内の図示しないDNAマイクロアレイと正確に接触させることができる。さらに、図示しない温度調整手段で生化学反応カセット(47)内の混合液の温度を上昇させ、ハイブリダイゼーション反応を進行させる。
【0064】
この分注ユニット(33)での移動を行なう際、生化学反応カセット(47)が所定数セットされていないと移動されてきた混合液がもれて検査装置内を汚染してしまう。このため生化学反応カセット(47)が確実にセットされているかを検出するためのセンサーを設けることも好ましい。
【0065】
ハイブリダイゼーション反応が終了したら、吸引口(49)から空気を引いて混合液を生化学反応カセット(47)内の図示しない廃液チャンバーに移動させる。次に、DNAマイクロアレイの表面を洗浄する。この時に上述した方法でチューブ(1)の接液した部分を廃棄し、未使用のチューブを用意する。ハイブリダイゼーションウェル(46)には数種類の洗浄液が保持されている。これを分注ユニット(33)で生化学反応カセット(47)の注入口(48)まで運び、吸引口(49)から空気を引くことでDNAマイクロアレイ表面を洗浄液が通過する。これを数回繰り返すことで、DNAマイクロアレイ表面が完全に洗浄される。
【0066】
ハイブリダイゼーション反応が終了した生化学反応カセット(47)は図示しない検査ユニットによって標的核酸の有無を判定する。そして次の検体に備えるため、上述の方法でチューブ(1)の使用した部分を廃棄する。
【0067】
ここでチューブの切断部位毎にフィルター(81)を用意すると、圧力損失が大きくなり、応答性が悪く、さらには分注誤差の原因となる。フィルターは必要な部分に設ければ良く、例えばPCR後の液のエアロゾルがハイブリダイゼーション液に混入しても極微量のため問題とならない。しかし、次の検体までエアロゾルがキャリーオーバーしてしまうと、問題がある。このため例えばフィルターは、毎回毎に設けるのではなく、検体が変わる毎に設けることが好ましい。検体が変わる度にフィルターを設ける場合は、図8に示すように1検体分のチューブ中に複数の切断部位を有する。
【0068】
以上、分注装置、遺伝子検査装置等の装置を例に挙げて本発明の有効性を説明してきた。しかしながら本発明はこれらに限定されるものではなく、例えば抗原抗体反応を使用した生化学検査装置あるいは生化学反応カセットなどにも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施例に係る自動分注装置の一実施例の構成図である。
【図2】本発明の実施例に係る自動分注装置の一実施例の構成図である。
【図3】本発明の実施例に係る自動分注装置の一実施例の斜視図である。
【図4】本発明の実施例に係るDNA自動検査装置の構造を説明する斜視図である。
【図5】静電気によるチューブ外への液滴の回り込みの模式図である。
【図6】チューブの一例の模式図である。
【図7】フィルター付きチューブの一例の模式図である。
【図8】フィルター付きチューブの一例の模式図である。
【図9】チューブの格納手段の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0070】
1 チューブ
2 チューブロール
3 チューブ送り出しローラー
4 シリンジポンプ
5 ガイド
6 カッター
7 成型器
8 マイクロチューブ
9 マイクロチューブラック
10 液
11 廃棄チューブ入れ
12 使用済みチューブ
13 チューブ留具
14 静電気除去装置
15 チューブ識別ID
21 本発明の一実施例の分注装置
22 マルチウェルプレート
23 筐体
31 本発明の一実施例のDNA自動検査装置
32 増幅ユニット
33 分注ユニット
34 ハイブリダイゼーションユニット
35 基台
36 分注ユニットX、Z軸
37 検体ステージ
38 検体ウェル
39 増幅ユニットY軸
40 増幅ステージ
41 増幅プレート
42 増幅ウェル
43 ハイブリダイゼーションユニットY軸
44 ハイブリダイゼーションステージ
45 ハイブリダイゼーションプレート
46 ハイブリダイゼーションウェル
47 生化学反応カセット
48 注入口
49 吸引口
61 液滴
71 チューブ切断位置
81 フィルター
91 チューブ供給カートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性材料からなるチューブを用いて液体を移動あるいは分注する装置であって、
前記チューブを送り出す送出手段と、
前記チューブを切断する切断手段と、
前記チューブ内に液体を吸引あるいは排出する吸引・排出手段と、
前記チューブの切断面のバリ取りあるいは成形を行なう成形手段とを備えたことを特徴とする液体移動装置。
【請求項2】
前記成形手段が、熱を用いた手段であることを特徴とする請求項1に記載の液体移動装置。
【請求項3】
可撓性材料からなるチューブを用いて液体を移動あるいは分注する装置であって、
前記チューブを送り出す送出手段と、
前記チューブを切断する切断手段と、
前記チューブ内に液体を吸引あるいは排出する吸引・排出手段とを備え、
前記チューブとして、前記切断手段により切断する位置のチューブ内径がその他の部位に比較して細くなっているものを用いることを特徴とする液体移動装置。
【請求項4】
可撓性材料からなるチューブを用いて液体を移動あるいは分注する装置であって、
前記チューブを送り出す送出手段と、
前記チューブを切断する切断手段と、
前記チューブ内に液体を吸引あるいは排出する吸引・排出手段とを備え、
前記チューブとして、チューブ内に少なくとも1つ以上のフィルターが含まれているものを用いることを特徴とする液体移動装置。
【請求項5】
前記フィルターは、エアロゾルを通過させないことを特徴とする請求項4に記載の液体移動装置。
【請求項6】
可撓性材料からなるチューブを用いて液体を移動あるいは分注する装置であって、
前記チューブを送り出す送出手段と、
前記チューブを切断する切断手段と、
前記チューブ内に液体を吸引あるいは排出する吸引・排出手段とを備え、
前記吸引・排出手段として、吸引および排出用ポンプを前記チューブ端部に接続して用いることを特徴とする液体移動装置。
【請求項7】
前記切断手段による前記チューブの切断が、チューブに対して傾斜をつけて切断することを特徴とする請求1乃至6のいずれかに記載の液体移動装置。
【請求項8】
前記チューブを、未使用チューブを保持する領域から吸引・排出部位まで導くためのガイドを具えたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の液体移動装置。
【請求項9】
前記チューブ先端近傍あるいは前記チューブ先端の動線上もしくはその近傍に静電気除去装置が具備されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の液体移動装置。
【請求項10】
前記チューブの送出状態を検知する手段を更に有する請求項1乃至9のいずれかに記載の液体移動装置。
【請求項11】
前記チューブが交換可能に構成されており、チューブを識別するための識別手段を更に有する請求項1乃至10に記載の液体移動装置。
【請求項12】
反応および検出容器を設置可能な1乃至複数の反応ユニットと、
前記反応用の試薬を収納する試薬容器の設置台と、
請求項1乃至11のいずれかに記載の液体移動装置とを具えたことを特徴とする生化学検査装置。
【請求項13】
前記反応ユニットとして、遺伝子増幅ユニットおよびハイブリダイゼーションユニットの少なくともいずれかを具えることを特徴とする請求項12に記載の生化学検査装置。
【請求項14】
検体として、核酸断片、DNA、オリゴヌクレオチド、タンパク質およびポリペプチドからなる群から選択された少なくとも1種を含むものを用いることを特徴とする請求項12に記載の生化学検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−215931(P2008−215931A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51399(P2007−51399)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】