説明

液再生装置

【課題】切削用オイルあるいは洗浄液など大きさの異なる切子、塵埃などの不要物を可及的に取り除くことができる液再生装置を提供する。
【解決手段】円筒状のドラムが回転することにより、固体成分と液体成分とを分離するドラムフィルター4と、円筒体36の孔を通過した後、円筒体36の内面側に付着した固体成分を吸引手段54で吸引し外部に排出するオートマチックフィルタ20と、遠心力により固体成分を分離する遠心分離機40と、をこの順番で備えることにより、大きさの異なる固体成分を被処理水から段階的に分離するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製品の切削加工に用いられた切削用オイルなどに含まれる切子、塵埃など各種様々な大きさの不要物を可及的に除去して、再使用するのに好適な液再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、金属製品に切削加工などを施す場合には、回転工具の温度上昇などを防ぐ目的で切削用オイルが使用されている。
このように常時使用される切削用オイルは、再使用する前に不要物、特に切削屑を確実に取り除いてから使用することが求められている。
【0003】
また、金属製品の切削加工などを行う切削機械では、メッシュ状のフィルタが具備され、このフィルタを介して大まかな切削屑の除去が行われている。しかしながら、このようなフィルタはあくまで簡易的なもので、フィルタの目を通ってしまう小さな切子は除去することができない。
【0004】
一方、このフィルタの目を細かなものにすれば、作業効率が悪くなる。
なお、このように不要物を除去してから再使用する液としては、切削用オイルに限らず、例えば、食品、電子部品などの運搬のために使用される運搬用容器(コンテナともいう)などを洗浄する洗浄液の場合も同様で、この場合も食品カス、塵埃などを取り除いてから再使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実情に鑑み、切削用オイルあるいは洗浄液など大きさの異なる切子、塵埃などの不要物を可及的に取り除くことができる液再生装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る液再生装置は、
多数のスリットが形成された円筒状のドラムが回転することにより、固体成分と液体成分とを分離するドラムフィルターと、
多数の孔が形成された円筒体の内面側に付着した固体成分を吸引手段で吸引し外部に排出するオートマチックフィルタと、
遠心力により固体成分を液体成分から分離する遠心分離機と、
をこの順番で備えることにより、大きさの異なる固体成分を被処理水から段階的に分離するようにしたことを特徴としている。
【0007】
このような構成の本願発明によれば、被処理水に含まれる固体成分を多段階に、かつ効率的に除去することができる。しかも、ペーパーフィルター等を使用しないので濾材の消耗品がなくランニングコストを低下させることができる。さらに、切削用オイルであれ、洗浄液であれ様々な液を再生できる。
【発明の効果】
【0008】
本願発明によれば、切削用オイルに含まれる切削屑や運搬用容器などを洗浄する洗浄液に含まれる食品カス、塵埃のように大きさの異なる不要物を効率的に取り除くことができる。しかも、ペーパーフィルターのような消耗品の発生がある濾材を使用しないので、維持管理のためのコストが安価である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は本願発明の一実施例に係る液再生装置の系統図である。
【図2】図2は、図1に示した液再生装置に採用されたドラムフィルターの概略図である。
【図3】図3(A)、(B)は図1に示した液再生装置に採用された濾過装置の破断斜視図と、その一部拡大断面図である。
【図4】図4は、図1に示した液再生装置に採用されたオートマチックフィルタの破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る液再生装置を示したものである。
本実施例の液再生装置2は、ドラムフィルター4と、オートマチックフィルタ20と、遠心分離機40とを備えている。
また、ドラムフィルター4とオートマチックフィルタ20との間には、濾過タンク50が配置され、さらにオートマチックフィルタ20と遠心分離機40との間には、排液タンク30が具備されている。
【0011】
この液再生装置2では、主として、ドラムフィルター4により大径の固体成分が除去され、オートマチックフィルタ20および遠心分離機40により小径の固体成分が除去される。
ドラムフィルター4は、図2に示したように、回転体ドラム12がモータ駆動で回転することにより被処理水が固液分離される。すなわち、被処理水の一次処理が行われ、大径の異物が除去される。このように、ドラムフィルター4の回転体ドラム12を介して被処理水の一次処理を行うことにより、後段の本処理への負担を大幅に軽減することができる。
【0012】
ドラムフィルター4は、図2および図3(A)、(B)に示したように、支持ロッド15により支持された断面三角形状のウェッジワイヤースクリーン16により円筒状に構成された回転体ドラム12と、該回転体ドラム12内に被処理水を供給するトラフ18とを有している。
【0013】
また、回転体ドラム12内には、周方向に散在的に案内板17が配設され、この案内板17により固体成分が回転体ドラム12の一方の端部側に案内される。そして、大径の固体成分が、回転体ドラム12の端部開口から外方に排出される。
なお、ドラムフィルター4で分離できる粒径は、図3(A)、(B)に示した隣接するウェッジワイヤースクリーン16、16間のスリットの大きさにより調整することが可能である。
【0014】
一方、ウェッジワイヤースクリーン16のスリットを通過した小径の固体成分を含む被処理水は、大容量の濾過タンク50内に貯留される。この濾過タンク50内に貯留される液体を、一次処理水Bとする。
【0015】
次に、オートマチックフィルタ20と遠心分離機40について説明する。
ドラムフィルター4の下流側に配置されるオートマチックフィルタ20と遠心分離機40とはそれぞれ公知のものである。
【0016】
先ず、オートマチックフィルタにより、ドラムフィルターで除去されなかった大部分の小径の固体成分が除去される。さらに、オートマチックフィルタで除去され濃縮液として排出された小径の固体成分は、下流の遠心分離機40により概ね分離される。
したがって、本発明では、これまでに比べて多量の液体成分を再利用することが可能となる。
【0017】
オートマチックフィルタ20には、図1および図2に示した濾過タンク50からポンプ24、配管62などを介して一次処理水Bが被処理水として順次供給されてくる。そして、オートマチックフィルタ20において、一次処理水Bが固体成分と液体成分とに分離される。オートマチックフィルタ20で分離された液体成分は、図1に示したクリーンタンク14に供給される。一方、オートマチックフィルタ20では、液体成分が分離された後の固定成分が内壁面に付着する。そして、この付着した固体成分が吸引されるが、そのとき周囲の液体成分も同時に吸引される。したがって、吸引される固体成分は濃縮された状態にある。この濃縮された固体成分は液体成分を伴って排液タンク30に供給される。
【0018】
一方、遠心分離機40には、排液タンク30からホース68を介して、この濃縮された固体成分と液体成分とが供給される。そして、遠心分離機40により固液分離が行われ、小径の固体成分のみが遠心分離機40内に留められる。この遠心分離機40で分離された液体成分は、クリーンタンク14に戻される。
【0019】
以下、オートマチックフィルタ20の構成について図4を参照しながら概略を説明するが、このオートマチックフィルタ20は広く市販されている公知のもので、詳細な説明は省略する。
【0020】
上記オートマチックフィルタ20には、被処理水の取り入れ口となる被処理水取り入れ口11と、濾過液の取り出し口となる濾過液取り出し口13と、固体成分排出管58とが具備されている。そして、濾過液取り出し口13の下流にクリーンタンク14が配置され、固体成分排出管58の下流に排液タンク30が配置されている。
【0021】
なお、濾過液取り出し口13からは、濾過された液体成分が排出され、固体成分排出管58からは、後述するように、濃縮された固体成分が液体成分とともに排出されてくる。
ここで、オートマチックフィルタ20の濾過液取り出し口13から配管64を介してクリーンタンク14に貯留された濾過液を二次処理水Cとする。
【0022】
オートマチックフィルタ20において、便宜上、被処理水取り入れ口11が形成された図4の右側を入口側、濾過液取り出し口13が形成された図4の左側を出口側とする。
図4に示したように、オートマチックフィルタ20では、装置本体の外殻を構成する第1円筒体34の内部に、多孔板からなる第2円筒体36が同心状に配置されている。なお、第2円筒体36は、固液を分離するフィルタとしての機能を有している。そして、第2円筒体36の内方に、回転軸38が軸方向に設置されている。
【0023】
第2円筒体36の端面には、環状の隔壁体42が設置されている。この隔壁体42には放射状の骨材42aが具備されることにより、骨材42aと骨材42aとの間に液通路となる孔が形成されている。
【0024】
第1円筒体34の両端部には、円板状の隔壁体44、45が設置され、これら隔壁体44,45は、第1円筒体34及び第2円筒体36に固定され回転軸38がその中心を貫通している。
なお、第2円筒体36と、略中央部の隔壁体42と、両端部の隔壁体44,45は、第1円筒体34と一体であり、それぞれ回転することはない。
【0025】
第1円筒体34内は、円板状の隔壁体44を境に、図の右方に第1室46が、図の左方に第2室48が画成されている。そして、第1室46内には、複数枚(実施例では4枚)のスピードコントロール板52が回転軸38に放射状に設置されている。そして、回転軸38が濾過装置内で回転することにより、4枚のスピードコントロール板52がともに回転し、このスピードコントロール板52の回転がブレーキとなって、回転軸38の回転速度を概ね一定に保つようになっている。
【0026】
一方、第1円筒体34の第1室46内では、回転軸38の周面にバキュームロータ54が所定間隔置きに設置されている。このバキュームロータ54も上記スピードコントロール板52と同様に回転軸38の回転により回転する。したがって、回転軸38が回転するとバキュームロータ54により、バキュームロータ54の先端開口54aから、筒体36の内面に付着した固体成分が吸引される。このとき、固体成分とともに液体成分も吸引されるので、結果として、固体成分が液体成分内に濃縮した状態となっている。その液体成分とともに濃縮された状態の固体成分は、回転軸38の内部を通って第2室48側に送出され、第2室48内のハイドロモータ56の先端開口56aから第2室48内に排出される。第2室48内に排出された濃縮された状態の固体成分は、第1円筒体34に接続された固体成分排出管58を介してオートマチックフィルタ20の外方に排出される。
【0027】
なお、このオートマチックフィルタ20では、被処理水取り入れ口11と濾過液取り出し口13の差圧が図示しない圧力計で検知されており、この圧力計で検知された差圧が所定値を超えた場合に、固体成分排出管58が自動的に開となるように設定されている。
【0028】
したがって、被処理水取り入れ口11と濾過液取り出し口13との差圧が所定値より大きくなった場合に、固体成分排出管58のバルブが自動的に開となり、バキュームロータ54による吸引が行われるとともに、固体成分排出管58から濃縮された状態の固体成分が自動的に外部に排出されるように構成されている。
【0029】
本実施例のオートマチックフィルタ20では、ペーパーフィルターのような消耗品を必要としないので、運転コストが安価であるとともに、煩雑な保守、点検が不要である。さらに、差圧により吸引が自動的に行われるので、人為的な作業が不要となり、作業者の不注意による目詰まりが生じることもない。すなわち、バキュームロータ54の駆動は自動的に行われるので、固体成分が第2円筒体36の孔を塞いでしまうこともない。これにより、長期間の継続的使用を略メンテナンスフリーで行うことができる。
【0030】
上記のように形成されたオートマチックフィルタ20は、図1に示したように、配管64を介してクリーンタンク14に接続される。
一方、オートマチックフィルタ20における第2の室48に接続された固体成分排出管58は、配管66を介して排液タンク30に接続されている。また、排液タンク30と遠心分離機40との間はホース68を介して接続されている。さらに、この遠心分離機40は、配管72を介してクリーンタンク14に接続されている。
【0031】
遠心分離機40は、遠心力を利用して固体成分と液体とに分離する一般的なものである。そして、この遠心分離機40では、下方の汚水入口から取り入れられてきた固体成分を多く含む排液が、内方のスラッジボックス41内に取り入れられる。スラッジボックス41が回転すると、液体成分に比べて比重の大きい固体成分はスラッジボックス41内に張り付くことにより、固体成分が分離される。このようにスラッジボックス41を介して遠心濾過された液体成分は、配管72に排出される。そして、配管72を介してクリーンタンク14に戻される。
【0032】
本実施例による液再生装置2は、上記のように構成されているが、以下に作用について説明する。
この実施例における被処理液は切削用オイルであり、この切削用オイルから切子、塵埃などの様々な大きさの不要物を除去する場合を例として説明する。
【0033】
切削加工に使用されたオイルは、別途設けられたダーティタンク70内に貯留されている。このダーティタンク70内に貯留された原水、すなわち大小異なる大きさの固体成分を多く含む被処理水は、ポンプ74、配管76などを介して、最初にドラムフィルター4に供給される。
【0034】
そして、このドラムフィルター4に供給された被処理水から、図3(B)に示したように、回転体ドラム12により、先ず大径の固体成分22が除去される。大径の固体成分22が除去された後の一次処理水Bは濾過タンク50内に収容される。大径の固体成分22はスラッジボックス21内に集積される。そして、大径の固体成分22が除去された後の一次処理水Bは、濾過タンク50から、ポンプ24、配管62などを介してオートマチックフィルタ20内に取り入れられる。
【0035】
オートマチックフィルタ20の被処理水取り入れ口11に取り入れられた一次処理水Bは、図4に示した第1円筒体34の内方に勢い良く供給され、その一次処理水Bは、さらにオートマチックフィルタ20の骨材42aの液体通路を通って図左方の第1室46に侵入する。さらに、第1室46内に侵入してきた被処理水は、ここから第2円筒体36の外方に抜けようとする。このとき、被処理水は第2円筒体36の表面に形成された多数の孔を通過することになるので、濾過され、外方に進むことができなかった固体成分は筒体36の内周側に留まる。これにより、オートマチックフィルタ20内において二度目の固液分離が行われる。
【0036】
一方、時間の経過とともに第2円筒体36の内側に固体成分が付着して被処理水取り入れ口11と濾過液取り出し口13との差圧が所定値以上に大きくなると、その差圧を検出したセンサーからの信号に基いて固体成分排出管58のバルブが開となりハイドロモータ56から液が噴出されることにより回転軸38が回転を始める。
【0037】
回転軸38が回転し、スピードコントロール板52およびバキュームロータ54がともに回転すると、固体成分はバキュームロータ54の開口54aから吸引され、回転軸38の内部を通ってハイドロモータ56側に送られ、ハイドロモータ56の開口56aから第2室48内に排出される。このとき、固体成分とともに液体成分も吸引されるので、結果として、固体成分が濃縮した状態となっている。
【0038】
そして、ハイドロモータ56の開口56aから第2室48内に排出された小径の固体成分を濃縮した状態で多く含む排液は、固体成分排出管58から配管66を通り排液タンク30に送られる。
さらに、排液タンク30に送られた濃縮された小径の固体成分を多く含む排液は、これまで廃棄される場合が多かったが、本実施例では、排液タンク30からホース68を通って遠心分離機40に送出される。
【0039】
そして、この遠心分離機40でさらに固体成分から液体成分が分離される。
遠心分離機40で3回目の固液分離が行われ、得られた液体成分は、濾過液排出口37から配管72を通って、クリーンタンク14内に戻される。これにより、切削用オイルの再生が完了し、再利用される。
【0040】
一方、最初に被処理水取り入れ口11から取り入れられた被処理水のうち、第1円筒体36で濾過された液体成分は、第1円筒体34の出口側に形成された濾過液取り出し口13を介して外方に排出され、さらに配管64を介してクリーンタンク14内に戻される。
【0041】
本実施例による液再生装置は、上述したように一度使用された切削用オイルから大きさの異なる切子、塵埃などが可及的に濾過される。
【0042】
また、本発明の洗浄液再生装置では、ペーパーフィルターのような消耗品が不要であるので、運転コストが安価である。また、運転稼動中に、濾過装置の濾過面の清掃が行われるので目詰まりが生じにくい。したがって、運転コストも安価である。さらに、構造がコンパクトで設置場所も小さくて良い。
【0043】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されない。
また、上記実施例における液再生装置は、金属製品の切削加工を行う場合の切削用オイルの再生に適用して説明したが、コンテナなどの洗浄に用いられる洗浄用液の再生に適用することも有効である。
【符号の説明】
【0044】
2 液再生装置
4 ドラムフィルター
11 被処理水取り入れ口
12 円筒状のドラム
13 ろ過液取り出し口
14 クリーンタンク
16 ウェッジワイヤースクリーン
17 案内板
20 オートマチックフィルタ
30 排液タンク
36 第2円筒体
40 遠心分離機
41 スラッジボックス(円筒状のドラム)
52 スピードコントロール板(回転羽根)
54 バキュームロータ
58 排出管(固体成分が排出される排出口)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のスリットが形成された円筒状のドラムが回転することにより、固体成分と液体成分とを分離するドラムフィルターと、
多数の孔が形成された円筒体の内面側に付着した固体成分を吸引手段で吸引し外部に排出するオートマチックフィルタと、
遠心力により固体成分を液体成分から分離する遠心分離機と、
をこの順番で備えることにより、大きさの異なる固体成分を被処理水から段階的に分離するようにしたことを特徴とする液再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−82043(P2013−82043A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224749(P2011−224749)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(305034889)株式会社キサミツ技研 (5)
【出願人】(511246108)株式会社セパレーションテクノロジー (1)
【Fターム(参考)】