説明

液分岐装置

【課題】漏水させることなく送水ホースの任意の位置に取付けることができ、しかも散水ノズルへの水量を容易に調節し得る園芸用散水装置の水分岐装置を提供する。
【解決手段】水分岐装置10を、互いに入れ子式に挿入可能な二叉部が形成されると共に、これら二叉部の互いに対向する側に、互いに噛合し得る噛合部が形成されてなるクランプ12を備えたホースクランプ部11と、前記クランプ12の二叉部の間の凹曲面側に植設され、前記送液ホース4に刺込まれる水抜用刺込管15と、前記クランプ12の反対側に形成され、前記分岐ホース4が接続されるホースニップル17hが形成されると共に、前記水抜用刺込管15と前記ホースニップル17hとの間に、前記水抜用刺込管15から前記ホースニップル17hに連通する流水路16aを遮断する一方、水の流量を調節する弁機構18が形成された継手部17とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液分岐装置に係り、例えば、園芸用散水装置のホースを流れる水を複数の散水ノズルに分配するために、ホースの長手方向の任意の位置に取付けられる液分岐装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、一戸建ての庭園においては勿論のこと、マンション等のベランダにおいてもプランターや植木鉢等を用いてのガーデニングが行われている。プランターや植木鉢等に植えられている植物への散水は、一般に先端に手動操作式の散水ノズルが取付けられたホースと、このホースが巻回されるホースリールと、このホースリールと水道蛇口を接続する水供給ホース(送水ホース)とからなる散水装置が用いられている。
【0003】
ガーデニングでは、定期的に散水しなければならないが、散水作業効率が悪く、特にベランダに設置された植木鉢やプランターにおいては、夏場になると複数回の散水が必要となり、結構煩わしいのに加えて面倒であった。さらに、留守または旅行時における散水に問題があった。そのため、散水作業の労力を軽減することができ、しかも簡単な構造の散水装置が提案されている。
【0004】
以下、上記従来例に係る散水装置の概要を、その散水装置の全体構成を示す図の図8と、その散水装置の要部を示す斜視図の図9とを順次参照しながら説明する。即ち、この従来例に係る散水装置は、図8に示すように、軟質合成樹脂からなる長尺なホース51と、このホース51の長手方向の任意の位置に取付けられる継手管52と、この継手管52に立ち上がり状に取付けられる立ち上げ管53と、この立ち上げ管53に取付けられるノズル54,55とを備えている。前記ホース51は散水が行われる庭園等の地面56上に敷設されており、そしてこのホース51は地面56からの不用意な移動を防止するために、地面に刺込まれるフック57により適宜位置に固定されている。このようなホース51は水道蛇口58に蛇口継手59を介して連結されており、水道蛇口58から水が供給されるように構成されている。
【0005】
前記継手管52の一端側(図8における下側)は、図9に示すように、図示しないパンチを使用してホース51の長手方向の任意の位置に明けられた吐水孔51aにネジ込まれる。また、前記継手管52の他端側(図8における上側)が、前記立ち上げ管53の下端にネジ込まれて接続される。この立ち上げ管53の上端には、前記ノズル54のネジ部がネジ込まれて取付けられる。前記ノズル55も前記ノズル54と同様に、他の立ち上げ管53の上端にネジ込まれて取付けられる。なお、図8において示す符号51bおよび符号51dは前記ホース51の継目部分に用いられる継目管であり、また符号51cはT字形の継目管51bの分岐部を、必要に応じて閉塞するための栓である(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実開平7−3737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来例に係る散水装置は、軟質合成樹脂からなるホースの任意の位置に適宜吐水孔をあけて、吐水孔にネジ込んだ継手管に立ち上げ管を接続すると共に、この立ち上げ管にノズルを取付けて散水することができる。従って、この従来例に係る散水装置の構成は極めて簡便であって、しかも安価であり、そして短期的な観点からすれば格別の問題がないようにも考えられる。しかしながら、この従来例に係る散水装置には、後述するような解決すべき課題がある。
【0007】
(1)継手管のネジ部を吐水孔にネジ込むだけの構成であって、ネジ込み部位から漏水の恐れがあるから、漏水機能に対する信頼性が劣る。
(2)個々のノズルから噴射し得る水量を、植物の量、育成程度、つまり植物にとって好ましい水量に調整することが困難である。勿論、ホースを調整クリップで絞ることにより植物にとって好ましい水量に調整できるものの、能力が相違する多種類の調整クリップを用意しなければならず、実用上極めて面倒である。
【0008】
従って、本発明の目的は、液分岐装置のホースへの取付け位置における液漏れ防止に対する信頼性が優れ、液供給源から供給される液を送液するホースの任意の位置に容易に着脱することができ、しかも分配液供給手段を介して分配供給する液の流量を容易に調節することを可能ならしめる液分岐装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、従って、上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る液分岐装置が採用した手段の要旨は、液供給源から供給される液を送液するホースに取付けられ、このホースを流れる液を液供給先側に分配供給する分配液供給手段が接続される液分岐装置において、前記ホースの長手方向の任意の位置に着脱自在に外装されるホースクランプ部と、このホースクランプ部側に植設され、前記ホースに刺込まれる液抜用刺込管と、前記ホースクランプ部の反対側に形成され、前記分配液供給手段が接続される接続部が形成されると共に、前記液抜用刺込管と前記接続部との間に、前記液抜用刺込管から前記接続部に連通する流液路を遮断する一方、前記分配液供給手段に分配供給する液の流量を調節する弁機構が形成された継手部とから構成されてなることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項2に係る液分岐装置が採用した手段の要旨は、液供給源から供給される液を送液するホースに取付けられ、このホースを流れる液を液供給先側に分配供給する分配液供給手段が接続される液分岐装置において、前記ホースの長手方向の任意の位置に着脱自在に外装され、開閉自在な両端に互いに入れ子式に挿入可能な二叉部が形成されると共に、これら二叉部の互いに対向する側に、互いに噛合し得る噛合部が形成されてなるクランプを備えたホースクランプ部と、前記クランプの二叉部の間の凹曲面側に植設され、前記ホースに刺込まれる液抜用刺込管と、前記ホースクランプ部の反対側に形成され、前記分配液供給手段が接続される接続部が形成されると共に、前記液抜用刺込管と前記接続部との間に、前記液抜用刺込管から前記接続部に連通する流液路を遮断する一方、前記分配液供給手段に分配供給する液の流量を調節する弁機構が形成された継手部とから構成されてなることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項3に係る液分岐装置が採用した手段の要旨は、請求項2に記載の液分岐装置において、前記クランプの二叉部の噛合部の噛合歯は、前記二叉部の奥側の基端側に傾斜してなることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項4に係る液分岐装置が採用した手段の要旨は、請求項2または3のうちの何れか一つの項に記載の液分岐装置において、前記液抜用刺込管の植設位置は、前記クランプの前記凹曲面側に形成された円錐台状体の頂部の中心であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1乃至4に係る液分岐装置によれば、ホースクランプ部により、液分岐装置をホースに強固に固定することができる。そして、液分岐装置がホースに固定された状態においては、ホースがホースクランプ部により締付けられて外径が縮小し、ホースの液抜用刺込管の刺込穴の内周面が液抜用刺込管の外周面に押付けられるため、液抜用刺込管の刺込部位からの液の漏出が阻止される。さらに、継手部の弁機構によって、液抜用刺込管から抜き出され、分配液供給手段を介して分配供給する液を遮断する一方、液の流量を自在に調節することができる。
【0014】
本発明の請求項2に係る液分岐装置によれば、ホースクランプ部のクランプによりホースを挟むと共に、二叉部の互いに対向する側の噛合部を噛合させることにより、液分岐装置をホースに強固に固定することができる。
【0015】
本発明の請求項3に係る液分岐装置によれば、クランプの両二叉部の噛合部の噛合歯が、これら二叉部の奥側の基端側に傾斜しているため、これらの二叉部の相反する側を相対する方向に押すことにより容易に入れ子式に挿入して噛合歯を噛合させることができる。
また、クランプの両二叉部が互いに入れ子式に挿入された状態においては、二叉部の抜け止め機能に対する信頼性が優れている。
【0016】
本発明の請求項4に係る液分岐装置によれば、液抜用刺込管の植設位置が、クランプの凹曲面側に形成された円錐台状体の頂部の中心であるから、液抜用刺込管がホースに刺込まれた状態においては、ホースの液抜用刺込管の刺込穴の近傍の外周面が円錐台状体の斜面に押付けられると共に、刺込穴の内周面が液抜用刺込管の外周面に押付けられるため、ホースを流れる液漏れ防止に対する信頼性がより一層向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る液分岐装置を、園芸用散水装置に適用した場合を例として、添付図面の図1乃至図7を順次参照しながら説明する。先ず、本発明の実施の形態1に係る液分岐装置(以下、水分岐装置という。)を、図1乃至図4を順次参照しながら説明する。図1は水分岐装置を備えた園芸用散水装置の模式的全体構成説明図、図2は水分岐装置のホースへの取付け状態を示す構成説明図、図3は水分岐装置を構成するホースクランプ部の断面構成説明図で、クランプの二叉部が開いた状態を示す図、図4は水分岐装置を構成する継手部の構成説明図である。
【0018】
図1に示す符号1は、本発明の実施の形態1に係る水分岐装置を備えた園芸用散水装置である。この園芸用散水装置1は、蛇口継手3を介して水道蛇口(液供給源)2に接続され、前記蛇口継手3の下流側に散水したい時間をセットするタイマーを備えたタイマー付きバルブ5が介装されると共に、先端に市販のマニュアル操作式ノズル6が取付けられてなるホース4を備えている。前記タイマー付きバルブ5は、タイマーの作動を停止させると自在に通水させることができるように構成されており、これにより前記マニュアル操作式ノズル6から必要に応じて散水することができるように構成されている。
【0019】
さらに、前記ホース4の前記タイマー付きバルブ5と前記マニュアル操作式ノズル6の間に、このホース4を流れる水を抜出して分配供給する、複数の後述する構成になる水分岐装置10が取付けられている。そして、これら各水分岐装置10のそれぞれから分配液供給手段(以下、分岐ホースという。)7を介して、プランターまたは植木鉢等からなる植物育成容器8内の土9に設置され、前記タイマー付きバルブ5のタイマーにより設定された時間に、植物に対して散水する散水ノズル20に水が分配供給されるように構成されている。
【0020】
なお、この園芸用散水装置1の場合には、図1から良く理解されるように、前記ホース4に4組の水分岐装置10が取付けられている。しかしながら、この水分岐装置10の取付け組数は4組未満であっても、5組以上であっても良いので、この水分岐装置10の取付け組数は4組に限定されるものではない。また、前記ホース4の先端に市販のマニュアル操作式ノズル6が取付けられているが、このホース4の先端を、例えば止水栓で閉塞するように構成しても良い。
【0021】
以下、本発明の実施の形態1に係る水分岐装置10を説明する。即ち、この水分岐装置10は、図2乃至4に示すように、前記ホース4に着脱自在に装着されるホースクランプ部11と、このホースクランプ部11に接続され、前記分岐ホース7が接続される継手部17とから構成されている。この水分岐装置10の前記ホースクランプ部11は、前記送水ホース4への装着状態においては、この送水ホース4の外周を囲繞して締付ける、着脱自在なクランプ12を備えている。このクランプ12は、図2,3において左側に示す第1クランプ13と、右側に示す第2クランプ14とから構成されている。
【0022】
より詳しくは、前記第1クランプ13の先端には、湾曲形成されてなる二叉部が形成されている。この第1クランプ13の二叉部は、内側面が前記ホース4の外周面に押圧され、外側面に側面視で三角波状の噛合歯が形成されてなる基端側の噛合部13aと、先端側の抜け止め部13bとから構成されている。また、前記第2クランプ14の先端にも、湾曲形成されてなる二叉部が形成されている。この第2クランプ14の二叉部は、内側面が前記ホース4の外周面に押圧され、外側面に前記第1クランプ13の噛合部13aの内側面が接触する基端側のホース押え部14aと、内側面に噛合歯が形成され、外側面が前記第1クランプ13の抜け止め部13bの内側面に接触する先端側の噛合部14bとから構成されている。
【0023】
つまり、前記クランプ12の第1クランプ13と第2クランプ14とが前記ホース4に装着された状態にあっては、前記第1クランプ13の先端の二叉部と、前記第2クランプ14の先端の二叉部とを入れ子式に挿入すると、第1クランプ13の噛合部13aの噛合歯と、第2クランプ14の噛合部14bの噛合歯とが噛合する。そして、前記第2クランプ14の噛合部14bの外側面が前記第1クランプ13の抜け止め部13bの内側面で押圧されることにより両二叉部が抜けることがないように構成されている。
【0024】
本実施の形態1に係る水分岐装置10のクランプ12の場合には、図2および図3から良く理解されるように、前記二叉部の第1クランプ13の噛合部13aの噛合歯と、第2クランプ14の噛合部14bの噛合歯との歯形は、何れも二叉部の奥側である噛合部の基端側に傾斜するように形成されている。これら噛合部13a,14bの噛合歯の歯形をこのように傾斜させたのは、噛合歯を噛合させるに際しての入れ子式に挿入する作業の容易化と、入れ子式に挿入された二叉部の抜け止めに対する信頼性の向上を狙いとしたものであり、極めて好ましい形態である。
【0025】
しかしながら、噛合部13a,14bの噛合歯の歯形が、例えば、二等辺三角形状に形成されていたとしても、それなりの抜け止め機能を期待することができる。従って、噛合部13a,14bの噛合歯の歯形は、特に二叉部の奥側に傾斜させなければならないという訳ではない。また、本実施の形態1に係る水分岐装置10のクランプ12の場合には、第1クランプ13の噛合部13aの噛合歯と、第2クランプ14の噛合部14bの噛合歯との噛合数を適宜変更することにより、直径が相違する種々のホースに対して容易に対応することが可能である。
【0026】
前記クランプ12の中心位置であって、かつこのクランプ12の前記二叉部の間の凹曲面に、円錐台状体12aが形成されると共に、この円錐台状体12aの頂部の中心位置に、アルミニウム合金からなるチューブを斜めに削いだ形状の先端が前記ホース4に刺込まれ、このホース4を流れる水を分配供給するために抜出す液抜用刺込管(以下、水抜用刺込管という。)15が植設されている。
【0027】
ところで、この実施の形態1に係る水分岐装置10のクランプ12の場合には、上記のとおり、このクランプ12の凹曲面側の水抜用刺込管15の植設位置に円錐台状体12aが形成されている。これは、前記ホース4の水抜用刺込管15の刺込穴からの漏水防止機能の向上を狙いとしたものであり、円錐台状体12aの形成が必須であるわけではない。
即ち、クランプ12の締付けによるホース4の外径の縮小により、このホース4の水抜用刺込管15の刺込穴からの漏水を防止することができ、それなりの漏水防止機能があるからである。
【0028】
前記ホースクランプ部11のクランプ12の反対側に、円筒部16が形成されている。
この円筒部16の内部には、前記水抜用刺込管15の径方向の中心をとおる中心線Lを共有する円筒部16の中心部の長手方向に沿って、前記水抜用刺込管15から離れるに連れて大径となるテーパ穴状弁座16bを有する流液路(以下、流水路という。)16aが形成されている。そして、この流水路16aの前記テーパ穴状弁座16bの前記円筒部16の基端側に、大径部側に向って順に、O−リング嵌合穴16c、雌ネジ16dが形成されている。
【0029】
ところで、前記O−リング嵌合穴16cには、前記雌ネジ16dに螺着されて接続される継手部17のO−リング溝に嵌着されたO−リングが組込まれる。また、前記第1クランプ13の噛合部13aと抜け止め部13bとの間であって、かつ外側面に形成されてなる外側歯形13cと、前記第2クランプ14のホース押え部14aと噛合部13bとの間であって、かつ外側面に形成されてなる外側歯形14cとは、クランプ作業のための滑り止めであるから、必ずしも設ける必要がないものであり、例えば平坦であっても良い。
【0030】
なお、この水分岐装置10の全体は、例えばエンジニアリングプラスチックと呼ばれるポリアセタール樹脂、または66ナイロンから製造されており、前記第1クランプ13と第2クランプ14の二叉部と円筒部16との間の部分は、所定の引張強度を保持し得て、しかも自在に曲げ変形し得るように構成されている。
【0031】
前記継手部17は、一端側に前記テーパ穴状弁座16bに係合可能な円錐形状のコーン部17aが形成されると共に、他端側に前記分岐ホース7が接続される接続部(以下、ホースニップルという。)17hが形成されている。そして、前記コーン部17aから前記ホースニップル17h側に向って順に、このホースニップル17hの先端に開口する水流出口17dに水流出穴17cを介して連通する水流入口17bと、前記水抜用刺込管15から流出する水を止水するO−リング17iが嵌着されるO−リング溝17eが形成されている。
【0032】
さらに、前記円筒部16に設けられた雌ネジ16dに螺着される雄ネジ17fと、この雄ネジ17fを前記雌ネジ16dに螺着してこの継手部17を前記円筒部16に接続し、かつ取外す際に、継手部17を可逆回転させるノブ17gとが設けられている。なお、以上の説明から良く理解されるように、本実施の形態1に係る水分岐装置10では、前記円筒部16に設けられたテーパ穴状弁座16bと、継手部17のコーン部17aとにより弁機構18が構成されるものである。
【0033】
以下、本発明の実施の形態1に係り、園芸用散水装置1に用いられる水分岐装置10の使用態様について説明する。先ず、継手部17のO−リング溝17eにO−リング17iを嵌着すると共に、この継手部17の雄ネジ17fを、ホースクランプ部11の円筒部16に設けられた雌ネジ16dに螺着して、コーン部17aがテーパ穴状弁座16bのテーパ面に当接するまでねじ込む。次いで、クランプ12の第1クランプ13と第2クランプ14を開くと共に、開いた第1クランプ13と第2クランプ14との間にホース4を押込み、水分岐装置10の水抜用刺込管15をホース4に刺込む。
【0034】
次いで、開いた第1クランプ13の外側歯形13cの部位と、第2クランプ14の外側歯形14cの部位とを相対する方向に押し狭めて、これら開いた第1クランプ13の先端の二叉部と、第2クランプ14の先端の二叉部とを入れ子式に挿入する。このようにして、必要組数の水分岐装置10を送水ホース4の長手方向の任意の位置に装着した後、それぞれの継手部17のホースニップル17hに分岐ホース7の一端側を外嵌して接続し、この分岐ホース7の他端側を散水ノズル20のホース接続部に接続すると共に、散水ノズル20をそれぞれの植物育成容器8の然るべき位置にセットすれば、散水のためのホース接続作業が終了する。
【0035】
本発明の実施の形態1に係る水分岐装置10の場合、クランプ12の第1クランプ13と第2クランプ14の二叉部が入れ子式に挿入された状態においては、第1クランプ13の抜け止め部13bの内側面によって第2クランプ14の噛合部14bの外側面が押圧される。従って、第1クランプ13の噛合部13aの噛合歯と、第2クランプ14の噛合部14bの噛合歯とが噛合した状態で保持され続けることになるので、両二叉部が抜けて外れてしまうようなことがない。
【0036】
なお、前記ホース4に取付けた前記ホースクランプ部11のクランプ12をこのホース4から取外す場合には、第1クランプ13の抜け止め部材13aを噛合部13aから離れる方向向きの力を作用させれば良い。これにより、第1クランプ13の噛合部13aの噛合歯と第2クランプ14の噛合部14bの噛合歯との噛合状態が簡単に解除され、第1クランプ13と第2クランプ14とを開放状態にすることができる。
【0037】
本発明の実施の形態1に係る水分岐装置10によれば、水分岐装置10のクランプ12の第1クランプ13と第2クランプ14により、ホースクランプ部11をホース4に強固に固定することができる。また、ホースクランプ部11が送水ホース4に固定された状態では、クランプ12による締付けによりホース4の外径が縮小する。そして、ホース4の水抜用刺込管15の刺込穴の近傍の外周面が円錐台状体12aの斜面に押付けられると共に、刺込穴の内周面が水抜用刺込管15の外周面に押付けられるため、ホース4を流れる水の漏出が阻止される。従って、継手管のネジ部を吐水孔にネジ込むだけの構成であって、ネジ込み部位から漏水の恐れがある従来例よりも遥かに信頼性が優れている。
【0038】
次いで、下記のようにして散水ノズル20に分配供給する水量が調節される。即ち、水道蛇口2(水供給源)からホース4に水を送水すると共に、継手部17の雄ネジ17fをねじ戻すことによって、ホースクランプ部11の円筒部16の流水路16aの流路面積を調整する。この流路面積の調整により、植物育成容器8にセットされた散水ノズル20に分配供給する水量を自在に調整することができる。
【0039】
従って、本発明の実施の形態に係る水分岐装置10によれば、分岐ホース7を調整クリップで絞るまでもなく、複数の植物育成容器8のそれぞれにセットされている散水ノズル20に対して、それぞれの植物育成容器8に植えられている植物の量、育成程度、つまり植物にとって好ましい水量を容易に分配供給することができる。さらに、水の分配供給が必要な植物育成容器8にセットされている散水ノズル20に対して水を分配供給しながら、水の分配供給が不必要な植物育成容器8にセットされている散水ノズル20に対する水の分配供給を停止することができる。
【0040】
以上の実施の形態1に係る園芸用散水装置の水分岐装置10においては、ホースクランプ部11の円筒部16に継手部17を接続して水分岐装置10を組立て、組立てた水分岐装置10をホース4の任意の位置に装着する場合を例として説明した。しかしながら、このような装着手順に限らず、例えばホースクランプ部11をホース4の任意の位置に装着し、ホース4に装着されたホースクランプ部11の円筒部16に継手部17を接続するようにしても良いので、上記実施の形態1において説明した水分岐装置10の装着作業手順に限定されるものではない。
【0041】
本発明の実施の形態2に係る水分岐装置を、その主要部を断面で示すその構成説明図の図5を参照しながら説明する。なお、本実施の形態2に係る水分岐装置が上記実施の形態1に係る水分岐装置と相違するところは、ホースクランプ部と継手部とが一体構成であることと、弁機構の構成が相違するところにあり、これら以外は同構成であるから、同一のものに同一符号を付して、その相違する点について以下に説明する.
【0042】
即ち、本発明の実施の形態2に係る水分岐装置10aの場合は、上記実施の形態1に係る水分岐装置10と同構成のホースクランプ部11を備えており、そして円筒部16のクランプ12の反対側にホースニップル17hが形成されてなる継手部17が設けられている。水抜用刺込管15の径方向の中心をとおる中心線Lcを中心とし、水抜用刺込管15からホースニップル17hの先端に開口する水流出口17dに連通する水流路16aの途中に弁機構18が設けられている。
【0043】
前記弁機構18は、前記中心線Lcと直交する中心線を中心とする弁体装着穴18aを備えている。この弁体装着穴18aは、円筒部16の側方に突出するブロック部16eに設けられており、このブロック部16e端面から奥側に向って順に、雌ネジ18b、O−リング嵌合穴18c、前記水流路16aを横断するテーパ穴18dとからなっている。
【0044】
前記弁体装着穴18aには、前記水流路16aを遮断する一方、この水流路16aを流れる水の量を調整する弁体19が装着されている。この弁体19は、先端側から順に、前記テーパ穴18dに係合して、前記水流路16aを遮断する一方、この水流路16aの流路面積を調整するコーン部19aと、水流路16aからの水の漏水を防止するO−リング19eが嵌着されるO−リング溝19bと、前記雌ネジ18bに螺着される雄ネジ19cと、弁体19を可逆自在に回転させるノブ19dとから構成されている。
【0045】
本発明の実施の形態2に係る水分岐装置10aにおいては、上記のとおり、ホースクランプ部11の構成が上記実施の形態1に係る水分岐装置10と同構成である。そして、弁機構18の構成が上記実施の形態1に係る水分岐装置10と相違するものの、その機能は同一であるから、本発明の実施の形態2に係る水分岐装置10aは、上記実施の形態1に係る水分岐装置10と同効である。
【0046】
本発明の実施の形態3に係る水分岐装置を、その一部断面示構成説明図の図6(a)と、図6(a)のA−A線断面図の図6(b)を参照しながら説明する。なお、本発明の実施の形態3に係る水分岐装置が上記実施の形態2に係る水分岐装置と相違するところは、弁機構の構成が相違するところにあり、これら以外は同構成であるから、同一のものに同一符号を付して、その相違する点について以下に説明する.
【0047】
即ち、本発明の実施の形態3に係る水分岐装置10bでは、上記実施の形態2に係る水分岐装置10aと同様に、水抜用刺込管15からホースニップル17hの先端に開口する水流出口17dに連通する水流路16aの途中に弁機構18が設けられている。この弁機構18の弁体装着穴18eは、円筒部16の側方に突出するブロック部16eに設けられており、この弁体装着穴18eの内周面面の前記ブロック部16eの端面の近傍位置に1条の半円状の弁体抜け防止用溝18fが刻設されている。
【0048】
前記弁体装着穴18eには、外周面に前記弁体抜け防止用溝18fに嵌合される半円状の断面を有する環状の凸条19iが周設されると共に、ノブ19jによる回転により前記水流路16aを連通させる貫通穴19hが設けられた円筒状弁19gを有する弁体19fが嵌着されている。なお、この場合、前記弁体抜け防止用溝18fに嵌合される半円状の断面を有する環状の凸条19iの外径は、弁体装着穴18eの内径よりも大径であるが、凸条19iの高さは0.5mmであり、円筒部16と弁体19fとは、何れもポリアセタール樹脂から構成されているため、比較的容易に嵌合することが可能である。
【0049】
本実施の形態3に係る水分岐装置10bでは、弁機構18の構成が上記実施の形態2に係る水分岐装置10aと相違するものの、その機能は同一であるから、本発明の実施の形態3に係る水分岐装置10bは、上記実施の形態1に係る水分岐装置10と同効である。
【0050】
本発明の実施の形態4に係る水分岐装置を、その一部断面示構成説明図の図7を参照しながら説明する。即ち、図6と図7との比較において良く理解されるように、本発明の実施の形態4に係る水分岐装置が、上記実施の形態3に係る水分岐装置と相違するところは、本発明の実施の形態4に係る水分岐装置10cは、上記実施の形態3に係る水分岐装置10cの円筒16とクランプ12と分離し、円筒16とクランプ12とネジにより着脱自在としたところにある。従って、本発明の実施の形態4に係る水分岐装置10cは、上記実施の形態1に係る水分岐装置10と同効である。なお、本発明の実施の形態4に係る水分岐装置10cにおいては、円筒部16に設けた雄ネジの先端が円錐台状体としての働きをするものである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上の実施の形態1乃至4に係る水分岐装置においては、何れも園芸用散水装置に適用した場合を例として説明した。しかしながら、本発明の液分岐装置は、散水装置の用途だけでなく、例えば液体肥料の散布装置の用途、殺虫剤散布装置の用途に対しても活用することができる。従って、本発明の液分岐装置は、上記実施の形態に係る園芸用散水装置の用途に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態1に係る水分岐装置を備えた園芸用散水装置の模式的全体構成説明図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係り、水分岐装置のホースへの取付け状態を示す構成説明図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係り、水分岐装置を構成するホースクランプ部の断面構成説明図で、クランプの二叉部が開いた状態を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係り、水分岐装置を構成する継手部の構成説明図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係り、主要部を断面で示す水分岐装置の構成説明図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係り、図6(a)は水分岐装置の一部断面示構成説明図、図6(b)は図6(a)のA−A線断面図である。
【図7】本発明の実施の形態4に係り、水分岐装置の一部断面示構成説明図である。
【図8】従来例に係る散水装置の全体構成を示す図である。
【図9】従来例に係る散水装置の要部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
1…散水装置,2…水道蛇口,3…蛇口継手,4…ホース,5…タイマー付きバルブ,6…マニュアル操作式ノズル,7…分岐ホース,8…植物育成容器,9…土
10,10a,10b,10c…水分岐装置,11…ホースクランプ部,12…クランプ,12a…円錐台状体,13…第1クランプ,13a…噛合部,13b…抜け止め部,13c…外側歯形,14…第2クランプ,14a…ホース押え部,14b…噛合部,14c…外側歯形,15…水抜用刺込管,16…円筒部,16a…流水路,16b…テーパ穴状弁座,16c…O−リング嵌合穴,16d…雌ネジ,17…継手部,17a…コーン部,17b…水流入口,17c…水流出穴,17d…水流出口,17e…O−リング溝,17f…雄ネジ,17g…ノブ,17h…ホースニップル,17i…O−リング,18…弁機構,18a…弁体装着穴,18b…雌ネジ,18c…O−リング嵌合穴,18d…テーパ穴,18e…弁体装着穴,18f…弁体抜け防止用溝,19…弁体,19a…コーン部,19b…O−リング溝,19c…雄ネジ,19d…ノブ,19e…O−リング,19f…弁体,19g…円筒状弁,19h…貫通穴,19i…凸条,19j…ノブ
20…散水ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液供給源から供給される液を送液するホースに取付けられ、このホースを流れる液を液供給先側に分配供給する分配液供給手段が接続される液分岐装置において、前記ホースの長手方向の任意の位置に着脱自在に外装されるホースクランプ部と、このホースクランプ部側に植設され、前記ホースに刺込まれる液抜用刺込管と、前記ホースクランプ部の反対側に形成され、前記分配液供給手段が接続される接続部が形成されると共に、前記液抜用刺込管と前記接続部との間に、前記液抜用刺込管から前記接続部に連通する流液路を遮断する一方、前記分配液供給手段に分配供給する液の流量を調節する弁機構が形成された継手部とから構成されてなることを特徴とする液分岐装置。
【請求項2】
液供給源から供給される液を送液するホースに取付けられ、このホースを流れる液を液供給先側に分配供給する分配液供給手段が接続される液分岐装置において、前記ホースの長手方向の任意の位置に着脱自在に外装され、開閉自在な両端に互いに入れ子式に挿入可能な二叉部が形成されると共に、これら二叉部の互いに対向する側に、互いに噛合し得る噛合部が形成されてなるクランプを備えたホースクランプ部と、前記クランプの二叉部の間の凹曲面側に植設され、前記ホースに刺込まれる液抜用刺込管と、前記ホースクランプ部の反対側に形成され、前記分配液供給手段が接続される接続部が形成されると共に、前記液抜用刺込管と前記接続部との間に、前記液抜用刺込管から前記接続部に連通する流液路を遮断する一方、前記分配液供給手段に分配供給する液の流量を調節する弁機構が形成された継手部とから構成されてなることを特徴とする液分岐装置。
【請求項3】
前記クランプの二叉部の噛合部の噛合歯は、前記二叉部の奥側の基端側に傾斜してなることを特徴とする請求項2に記載の液分岐装置。
【請求項4】
前記液抜用刺込管の植設位置は、前記クランプの前記凹曲面側に形成された円錐台状体の頂部の中心であることを特徴とする請求項2または3のうちの何れか一つの項に記載の液分岐装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−291688(P2009−291688A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146036(P2008−146036)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【特許番号】特許第4371329号(P4371329)
【特許公報発行日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000233619)株式会社ニチリン (69)
【Fターム(参考)】