説明

液化ガスの供給システム及びその供給方法

【課題】液化ガスを供給する基地において、特別な動力源を要することなく液化ガスを供給する液化ガス供給システム及びその方法を提供する。
【解決手段】車両で液化ガスを搬送するときに用いる容器であって、液化ガスを充填して搬送先の基地にそのままタンクとして設置する複数のバルク容器2,3と、各バルク容器2,3内の液化ガスを加圧するよう各バルク容器に対応させて設けた複数の圧力調節装置4,5と、各バルク容器2,3から取り出した液化ガスを合流させてこの液化ガスの消費地に送給する管路である送給ライン16〜18とを有し、何れか一つのバルク容器内の液化ガスが他のバルク容器内の液化ガスの圧力よりも相対的に高圧になるようにバルク容器内を圧力調節装置4,5により加圧して、加圧したバルク容器から送給ライン16〜18を介して消費地に液化ガスを供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液化ガスの供給システムに関し、液化ガスを搬送するときに用いる容器に液化ガスを充填して搬送先の基地にそのままタンクとして設置し、液化ガスを提供する場合に適用されるものである。
【背景技術】
【0002】
LNG(液化天然ガス)は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量が石炭や石油に比べ30〜40%少なく、環境面においてクリーンなエネルギーとして注目されている。
【0003】
LNGを消費者に提供するために、特に都市ガス配管のない地域において、LNGの貯蔵用タンクや供給設備等を備えたサテライト基地を消費者のいる地域の周辺に設置し、トレーラーによって運搬されたLNGをそのサテライト基地の貯蔵用タンクに貯蔵し、基地周辺の消費者へLNGを供給するということが行われている。
【0004】
しかし、サテライト基地にLNGの貯蔵用タンクを建設することは多大な費用と時間を要し、運搬されたLNGを貯蔵用タンクに移し替える手間や時間がかかるといった問題があった。
【0005】
そこで、そのような問題を解決するためにLNG供給システムが提案されている(特許文献1参照)。当該LNG供給システムでは、まず、港湾周辺等にあるLNGの出荷基地に設置された貯蔵タンク内のLNGがバルク容器に移された後、トレーラーによって牽引されてサテライト基地に搬送される。次に、搬送されたLNGをサテライト基地の貯蔵用タンクに移すのではなく、LNGが充填されたバルク容器を送給ラインに接続しそのままタンクとして用い消費者にLNGを供給する。
【0006】
したがって、当該LNG供給システムを用いることで、サテライト基地に貯蔵用タンクを建設する必要がなくなり、建設にかかるコストの削減が可能となっている。さらに、サテライト基地でバルク容器から貯蔵用タンクにLNGを移す工程を削減し、時間を節約することができるといった効果を奏している。
【0007】
ところで、上記LNG供給システムでは、バルク容器のLNGが消費され残量が少なくなり、他のバルク容器に交換しなければならないという状態になった時に、LNGを充填したバルク容器に切り替えている。すなわち、LNGが不足したバルク容器を送給ラインから取り外し、LNGが充填された新たなバルク容器を接続するという作業が行われる。その作業の間はLNGを供給することができず、必ずしも間断なくLNGの供給を行えるものとは言えない。
【0008】
間断なくLNGの供給を行うための方法として各バルク容器にLNGの汲み出し用のポンプを設け、汲み出している一つのバルク容器のLNGの残量が所定値より少なくなった場合に他のバルク容器のポンプを駆動してこのバルク容器のLNGを汲み出すということが考えられる。ただ、この場合には、機器としてのポンプを追加するばかりでなく、別途このポンプを駆動するための動力源を用意する必要があるので、ポンプと動力源を用意する導入費用や維持・管理する費用が発生し、経済的に大きな不利益を生起するという問題がある。
【0009】
【特許文献1】特開2005−48789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような事情に鑑み、サテライト基地において、特別な動力源を要することなくバルク容器内の液化ガスを消費者に供給し、かつバルク容器内の液化ガスが不足しても間断なく液化ガスを供給可能な液化ガスの供給システム及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、車両で液化ガスを搬送するときに用いる容器であって、前記液化ガスを充填して搬送先の基地にそのままタンクとして設置する複数のバルク容器と、前記各バルク容器内の液化ガスを加圧するよう各バルク容器に対応させて設けた複数のバルク加圧手段と、前記各バルク容器から取り出した液化ガスを合流させてこの液化ガスの消費地に送給する管路である送給ラインとを有し、何れか一つのバルク容器内の液化ガスが他のバルク容器内の液化ガスの圧力よりも相対的に高圧になるように前記バルク容器内を前記加圧手段により加圧して、加圧したバルク容器から前記送給ラインを介して前記消費地に前記液化ガスを供給するように構成したことを特徴とする液化ガス供給システムにある。
【0012】
かかる第1の態様では、搬送先の基地に設置された複数のバルク容器がそのまま液化ガス貯蔵用タンクとして機能すると共に、液化ガスが加圧手段によって加圧されることにより、動力源やポンプを用いずにその圧力によって液化ガスがバルク容器から送給ラインを経て消費地に送出されることが可能となる。また、複数あるバルク容器の中で、相対的にもっとも高圧なバルク容器内の液化ガスのみが消費地に送給されるよう構成されているので、同時に全てのバルク容器内の液化ガスが消費し尽くされるという事態を避けることができる。
【0013】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載する液化ガス供給システムにおいて、前記バルク容器内の液化ガスの残量を検出する検出手段を有し、前記検出手段によって前記バルク容器内の液化ガスが消費し尽くされたことを検出した際には、他の何れか一つのバルク容器内の液化ガスを加圧する加圧手段を有することを特徴とする液化ガス供給システムにある。
【0014】
かかる第2の態様では、液化ガスを送給しているバルク容器が液化ガスを送給し続けて、消費し尽したら、他の何れか一つのバルク容器に切替えて液化ガスを送給するため、バルク内に液化ガスが残っているにもかかわらず、送給ラインから外して液化ガスを充填しなければならないという事態を回避できる。
【0015】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載する液化ガス供給システムにおいて、前記検出手段は圧力計であることを特徴とする液化ガス供給システムにある。
【0016】
かかる第3の態様では、検出手段に圧力計を用いて、バルク容器内のLNGの残量を検出することが可能となる。
【0017】
本発明の第3の態様は、液化ガスを充填した状態で車両により基地に運搬し、この基地にそのままタンクとして設置する複数のバルク容器から取り出した液化ガスを合流させて管路である送給ラインを介して前記液化ガスの消費地に送給する液化ガス送給システムにおいて、何れか一つのバルク容器内の液化ガスが他のバルク容器内の液化ガスの圧力よりも相対的に高圧になるように加圧して、加圧したバルク容器から前記送給ラインを介して前記消費地に前記液化ガスを供給するとともに、前記一つのバルク容器内の液化ガスを消費し尽した時点で、他の何れか一つのバルク容器内の液化ガスを加圧して同様の操作を繰り返すことにより前記送給ラインを介して前記消費地に継続的に前記液化ガスを供給すること特徴とする液化ガス供給方法にある。
【0018】
かかる第4の態様では、基地にタンクとして設置された複数のバルク内の液化ガスを、液化ガスの圧力で消費地に送給ラインを介して液化ガスを供給できる。また、液化ガスが消費し尽くされたバルク容器を送給ラインから取外したり再接続する作業で液化ガスの供給が中断されずに、消費地に継続的に液化ガスを供給することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、サテライト基地において、LNG貯蔵用タンクを設置せずにバルク容器からそのままLNGを供給するという利便性を損なうことなく、相対的に最も高圧なバルク容器内のLNGのみを供給し、消費し尽くしたら他のバルク容器のLNGを供給することにより、LNGの供給システム全体としてLNGを連続的に供給することが可能となり、消費者に対して間断なくLNGを供給できるという効果を奏する。また、動力源を用意しポンプ等を設置する必要もないため、コスト削減に寄与するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本実施形態の説明は例示であり、本発明は以下の説明に限定されない。
【0021】
<実施形態1>
図1は本発明の実施形態1に係る液化ガス供給システムを示すシステム構成図である。 液化ガスとしてLNGを用い、複数台のバルク容器として2台のバルク容器を用いた場合について説明をする。
【0022】
図1に示すように本実施形態の液化ガス供給システム1は、バルク容器2,3がLNGを貯蔵するタンクとしてサテライト基地に設置されている。LNGを供給するために、送給ライン16,17はバルク容器2,3に取り付けられ、合流地点19で合流した後、送給ライン18に一本化されて需要者12と接続されている。
【0023】
バルク容器2,3は、例えば港湾近辺にあるLNGの出荷基地にてLNGが充填され、牽引車両であるヘッド15によってサテライト基地に牽引搬送されたものである。搬送された後は、ヘッド15から切り離されたバルク容器2,3が搬送時の支持台車ごとタンクとして用いられるよう設置される。
【0024】
加圧手段として圧力調節装置4,5がバルク容器2,3のそれぞれに対応して設置されており、圧力調節装置4はバルク容器2の圧力を、圧力調節装置5はバルク容器3の圧力を調節する。
【0025】
検出手段として圧力計6,7がバルク容器2,3それぞれに対応して設置されており、バルク容器2,3内のLNGの圧力を測定し、LNGが残っているか否かを検出するために用いられる。
【0026】
圧力計に換えて、他の検出手段として液面計を用いることも可能である。液面計はバルク容器内のLNGの液面の高さを基に残量を測るものであり、通常はバルク容器2,3に設けられているため、簡易に残量を測定することができる。ただし現時点では測定精度を考慮すると、圧力計を用いる方が好適である。
【0027】
弁開閉制御装置10は圧力計6,7の双方と接続されており、圧力計6,7が測定した圧力値の内、高いほうの圧力値を計測した側の弁を開放し、他方は閉鎖するという制御を行う。例えば、バルク容器2のLNGの圧力値が高いのであれば、弁8を開放し弁9を閉鎖する。
【0028】
ヘッド15は、バルク容器2,3内のLNGが空になって出荷基地でLNGを再度充填する際に、サテライト基地に手配されバルク容器2,3を牽引搬送するものであり、液化ガス供給システム1が本実施形態において実施される場所であるサテライト基地で常時待機していなければならないものではない。
【0029】
送給ライン16には弁8、逆止弁13が取り付けられており、送給ライン17にも弁9、逆止弁14が同様に取り付けられている。逆止弁13,14は、LNGが合流地点19側からバルク容器2,3側へ逆流することを防ぐために設けられている。送給ライン18には気化器11が取り付けられており、液体であるLNGを気化させて、LNGを気体として需要者12に提供するために用いられている。
【0030】
上述の構成を有する本実施形態において、液化ガス供給システム1は以下に説明するようなLNGの供給を可能とする。
【0031】
まず、LNGが充填されたバルク容器2,3からLNGを取出すために加圧を行う。加圧手段である圧力調節装置4,5は、それぞれバルク容器2,3のLNGに圧力を与えることが可能であり、バルク容器2のLNGがバルク容器3のLNGの圧力よりも相対的に高圧になるようにそれぞれ加圧する。ここで加圧の程度はLNGの送給を続けることによってバルク容器2のLNG残量が空になったときの圧力が、バルク容器3のLNGの圧力を下回るように圧力を設定する。
【0032】
次に、圧力計6,7がそれぞれ対応するバルク容器2,3の中のLNGの圧力を測定し、弁開閉制御装置10がその圧力値を受け取る。その測定値に基づいてバルク容器2がバルク容器3より高圧であることを検出した弁開閉制御装置10は、バルク容器2に対応して設置されている弁8を開放する。
【0033】
弁8が開放されると、バルク容器2のLNGの圧力によって、送給ライン16,18を経て、気化器11によって気化された後、需要者12に送給される。一方、バルク容器3のLNGは圧力がかけられているが、バルク容器2のLNGよりも圧力が低いため弁開閉制御装置10は弁9を閉鎖するので、LNGが需要者12へ送給されることはない。すなわち、動力源やポンプを用いることなくその圧力によって、バルク容器2のLNGのみを供給することが可能となる。
【0034】
また、気化器11によって気化されるよりも前によりも前にLNGが気化した場合でも、圧力がかかっているならば送給可能であるので、加圧によってLNGを供給することの利点がある。
【0035】
バルク容器2のLNGが送給され続けると、それに伴い圧力が低下する。さらに送給を続けてバルク容器2内のLNGが空になると同時に、先に加圧した際の圧力設定値では、バルク容器2の圧力がバルク容器3の圧力を下回る状態になる。このようにバルク容器3のLNGの圧力がバルク容器2のLNGの圧力を上回ったときには、弁開閉制御装置10は弁8を閉鎖して弁9を開放し、バルク容器3のLNGが需要者12へ送給されることとなる。すなわち、バルク容器2のLNGを消費し尽した後、弁8,9の開閉を行うのみで、バルク容器3が新たにLNGを送給するように切り替えることができる。このことにより、バルク容器2からバルク容器3へと交換する作業が簡易に行われ、交換のためにLNGの供給を中断することが実質的になくなるという効果がある。
【0036】
LNGを消費し尽くして空になったバルク容器2,3は、手配されたヘッド15に接続されて、出荷基地に牽引搬送される。ここでLNGが充填されて、再度サテライト基地へ牽引搬送される。すなわち、出荷基地とサテライト基地との間で搬送する際にのみバルク容器2,3とヘッド15を一体化させて運用している。このことにより、例えばヘッド15を所有維持することに換えてレンタル等の賃貸手段で運用することができ、コスト削減に寄与させることができる。
【0037】
バルク容器2をLNGの再充填のために液化ガス供給システム1から切り離している間に、バルク容器3のLNGの圧力値を高くするよう調節する。後にLNGの再充填を終えたバルク容器2が液化ガス供給システム1に接続されたときに、バルク容器3のLNGの圧力が高くなるようにするためであり、その圧力値は、最初に圧力差を生じるようにした時の高い方の圧力値にしておく。
【0038】
充填を終えたバルク容器2を再度液化ガス供給システム1に接続し、バルク容器3のLNGが消費し尽くされたときに切り替わってLNGを供給できるよう待機させる。
【0039】
以上に説明したように、LNG圧力設定、バルク容器切替え、LNG充填という作業を繰り返すことにより自動的にかつ間断なくLNGを需要者に供給することが可能となる。
【0040】
なお、本発明は本実施形態1のようにLNGを適用した場合のみに限定されず、LPGなど他の液化ガスにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は液化ガスを供給する設備を構築する場合に関連する産業分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態1に係る液化ガス供給システムを示すシステム構成図である。
【符号の説明】
【0043】
1 液化ガス供給システム
2〜3 バルク容器
4〜5 圧力調節装置
6〜7 圧力計
8〜9 弁
10 弁開閉制御装置
11 気化器
12 需要者
13〜14 逆止弁
15 ヘッド
16〜18 送給ライン
19 合流地点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両で液化ガスを搬送するときに用いる容器であって、前記液化ガスを充填して搬送先の基地にそのままタンクとして設置する複数のバルク容器と、
前記各バルク容器内の液化ガスを加圧するよう各バルク容器に対応させて設けた複数のバルク加圧手段と、
前記各バルク容器から取り出した液化ガスを合流させてこの液化ガスの消費地に送給する管路である送給ラインとを有し、
何れか一つのバルク容器内の液化ガスが他のバルク容器内の液化ガスの圧力よりも相対的に高圧になるように前記バルク容器内を前記加圧手段により加圧して、加圧したバルク容器から前記送給ラインを介して前記消費地に前記液化ガスを供給するように構成したことを特徴とする液化ガス供給システム。
【請求項2】
請求項1に記載する液化ガス供給システムにおいて、
前記バルク容器内の液化ガスの残量を検出する検出手段を有し、前記検出手段によって前記バルク容器内の液化ガスが消費し尽くされたことを検出した際には、他の何れか一つのバルク容器内の液化ガスを加圧する加圧手段を有することを特徴とする液化ガス供給システム。
【請求項3】
請求項2に記載する液化ガス供給システムにおいて、
前記検出手段は圧力計であることを特徴とする液化ガス供給システム。
【請求項4】
液化ガスを充填した状態で車両により基地に運搬し、この基地にそのままタンクとして設置する複数のバルク容器から取り出した液化ガスを合流させて管路である送給ラインを介して前記液化ガスの消費地に送給する液化ガス送給システムにおいて、
何れか一つのバルク容器内の液化ガスが他のバルク容器内の液化ガスの圧力よりも相対的に高圧になるように加圧して、加圧したバルク容器から前記送給ラインを介して前記消費地に前記液化ガスを供給するとともに、
前記一つのバルク容器内の液化ガスを消費し尽した時点で、他の何れか一つのバルク容器内の液化ガスを加圧して同様の操作を繰り返すことにより前記送給ラインを介して前記消費地に継続的に前記液化ガスを供給すること特徴とする液化ガス供給方法。

【図1】
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