説明

液化ガスの再ガス化装置および再ガス化ガス製造方法

【課題】簡便な構成で液化ガスの予熱を行い、簡易な構成のシェルアンドチューブ式熱交換器によって再ガス化することができる液化ガスの再ガス化装置を提供する。
【解決手段】被予熱流路3aを流れるLNGを、予熱流路3bを流れるガス化ガスによって予熱する予熱用熱交換器3と、予熱用熱交換器3にて予熱されたLNGを海水または清水によって再ガス化する第1シェルアンドチューブ式熱交換器5とを備え、予熱流路3bには、第1シェルアンドチューブ式熱交換器5によって再ガス化されたガスが導かれ、予熱流路3bを通過して凝縮したLNGを海水または清水によって再ガス化する第2シェルアンドチューブ式熱交換器7を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LNG等の液化ガスを再ガス化する再ガス化装置および再ガス化ガス製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
貯蔵タンク内に貯蔵されたLNG(液化天然ガス)を再ガス化して需要先へ供給するために、再ガス化装置が用いられる。このような再ガス化装置としては、オープンラック式気化器(ORV;Open-Rack-type Vaporizer)方式が多用されている(例えば下記特許文献1参照)。このORV方式は、熱源として海水を用い、大気中で海水をパネル状に並べた多数の伝熱管の外面に散水することにより、伝熱管内部のLNGを気化させるものである。しかし、多くの海水を必要とするとともに、海水が流れる伝熱面積を確保する必要があるので小型化が困難という問題がある。したがって、ORV方式は、FSRU(Floating Storage and Regasification Unit)やFPSO(Floating Production, Storage and Offloading)といった洋上浮体や、LNG船等の船舶に設置することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−14586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに対して浮体用や船舶設置用としては、ORV方式よりも小型化された再ガス化装置として、図3に示すようなシェルアンドチューブ式熱交換器100を用いたSTV(シェルアンドチューブ式気化器)方式による再ガス化装置が使用されている例がある。
そのシェルアンドチューブ熱交換器100の典型的な構造は、同図に示すように、LNGが流れ込む上流ヘッダ103と、上流ヘッダ103に接続され並列に多数設けられた伝熱管107と、伝熱管107を通過したLNGが流れ込む下流ヘッダ105とを備えている。各伝熱管107は、円筒状の胴体(シェル)によって囲まれた水室109内を貫通するようになっている。この熱交換器の主要な特徴として、水室109は、長手方向の略中央部にて、上流側水室109aと下流側水室109bとに分割されている。上流側水室109aには、LNG流れの最上流側(図において左方)から海水(S.W.)が導かれ、上流側水室109aの下流側から海水が排出されるようになっている(同図における破線参照)。すなわち、上流側水室109aでは、海水流れとLNG流れとが並行流となっている。一方、下流側水室109bでは、LNG流れの最下流側(図において右方)から海水が導かれ、下流側水室109bの上流側から海水が排出されるようになっている(同図における破線参照)。すなわち、下流側水室109bでは、海水流れとLNG流れとが対向流となっている。このように、LNG温度が最も低い最上流側では並行流として高い温度の海水を用いることで伝熱管外表面における凍結を回避しつつ、LNG流れの最下流では対向流とすることでLNG取出温度を確保するようになっている。
しかし、このような形式のシェルアンドチューブ式熱交換器100は、図4に示したような、水室を1室としたシェルアンドチューブ式熱交換器100’に比べて複雑な構造となるため、コストが高いということと、設計が難しいという欠点がある。
【0005】
そこで、図4に示したような水室を1室としたシェルアンドチューブ式熱交換器100’を採用するための構成として、LNGを予め別の手段で予熱する方法がある。例えばIFV(Intermediate-Fluid-type Vaporizer;中間媒体式気化器)方式が提案されている。このIFV方式と呼ぶ方法は、シェルアンドチューブ式熱交換器の上流側で、プロパンなどの不凍熱媒体を介して海水などの一次加熱源により間接的に不凍熱媒体により間接的にLNGを予熱する予熱工程が設けられている。この予熱工程により、シェルアンドチューブ式熱交換器のLNG入口温度を凍結が発生しにくい温度まで上昇させ、水室を1室とした安価なシェルアンドチューブ式熱交換器が採用できるようになっている。しかし、予熱工程にかかる投資が大きいことと、プロパン等の不凍液体を用いるため取扱いやメンテナンスが煩雑であり、また機器構成も複雑になるという欠点があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、簡便な構成で液化ガスの予熱を行い、簡易な構成の熱交換器によって再ガス化することができる液化ガスの再ガス化装置および再ガス化ガス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の液化ガスの再ガス化装置および再ガス化ガス製造方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる液化ガスの再ガス化装置は、被予熱流路を流れる液化ガスを、予熱流路を流れる予熱流体によって予熱する予熱用熱交換器と、該予熱用熱交換器にて予熱された液化ガスを海水または清水によって再ガス化する第1熱交換器とを備え、前記予熱流路には、前記第1熱交換器によって再ガス化されたガスが導かれ、前記予熱流路を通過して凝縮した液化ガスを海水または清水によって再ガス化する第2熱交換器を備えていることを特徴とする。
【0008】
予熱用熱交換器では、第1式熱交換器にて再ガス化されたガスを予熱流路へ導き、液化ガスを予熱することとした。このように、再ガス化された自己の熱を用いて液化ガスを予熱することとし、連続した経路を流れる同一流体にて予熱を行うこととしたので、予熱工程にてプロパン等の他の熱媒体を用いる必要がなく、簡便な構成で予熱工程を形成することができる。
また、第1熱交換器には、予熱用熱交換器によって予熱された液化ガスを導くこととし、第1熱交換器に流入する液化ガス温度を上昇させることとしたので、伝熱管周りで海水または清水などの熱媒体が凍結したり、熱交換面に発生した氷により引き起こされる熱交換性能の悪化のおそれを低減できる。したがって、第1熱交換器としてシェルアンドチューブ式熱交換器を用いた場合には、水室を1室とした簡易な構造のシェルアンドチューブ式熱交換器を採用することができる。
また、第2熱交換器には、予熱用熱交換器の予熱流路を通過して凝縮した液化ガスが導かれる。予熱流路を通過した液化ガスは、予熱流路を流れる際に、被予熱流路を流れる液化ガスに熱を与えて温度が低下するが、被予熱流路を流れる液化ガスよりも高温とされたガス化ガスが予熱流路に導かれる構成となっているので、予熱流路を流れて冷却・凝縮された液化ガスは、予熱用熱交換器に流入する液化ガス温度にまでは冷却されることがないように計画することができる。したがって、第2熱交換器に流入する液化ガス温度を液化ガス温度よりも上昇させることができるので、前述の第1熱交換器と同じく伝熱管周りで海水または清水などの熱媒体が凍結したり、熱交換面に発生した氷により引き起こされる熱交換性能の悪化するおそれを低減できる。したがって、第1熱交換器としてシェルアンドチューブ式熱交換器を用いた場合には、例えば水室を1室とした簡易な構造のシェルアンドチューブ式熱交換器を採用することができる。
なお、予熱用熱交換器の被予熱流路および予熱流路から流出した流体を「液化ガス」と称しているが、液相のみからなる流体だけを意味しているのではなく、熱交換器出口側では既にガス化しているか、所定の湿り度を有する二相流体である場合も含まれる。
また、第1熱交換器および/または第2熱交換器としては、好適には、シェルアンドチューブ式熱交換器が用いられるが、本発明は特にこれに限定されるものではなく、例えば、上述のORV方式の熱交換器とすることもできる。
また、第1熱交換器や第2熱交換器の加熱媒体として清水などの2次閉回路による加熱を用いる場合には、不凍液を添加してさらに熱媒水の凍結の対策をすることとしてもよい。
【0009】
さらに、本発明の液化ガスの再ガス化装置では、前記予熱用熱交換器には、ボイルオフガスを予冷または凝縮させる冷却流路が設けられていることを特徴とする。
【0010】
液化ガスを貯蔵するタンク等から発生するボイルオフガスを再液化するための設備が設けられている場合がある。このような場合には、ボイルオフガスを予冷または凝縮させる冷却流路を予熱用熱交換器に設けることにより、ボイルオフガスを冷却すると同時に、液化ガスをより効果的に予熱することができる。
特に、以下に説明するように、複数の独立した流路を形成するマルチフロー化が容易なプレート式熱交換器を予熱用熱交換器として用いることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の液化ガスの再ガス化装置では、前記予熱用熱交換器は、プレート式熱交換器とされていることを特徴とする。
【0012】
予熱用熱交換器をプレート式熱交換器とすることにより、コンパクト化することができる。
プレート式熱交換器としては、具体的には、プレートフィン式やプレートコイル式が挙げられ、ステンレス製やアルミ合金製が好適に使用される。
【0013】
また、本発明の再ガス化ガス製造方法は、予熱用熱交換器を用いて、被予熱流路を流れる液化ガスを、予熱流路を流れる予熱流体によって予熱する予熱工程と、第1熱交換器を用いて、前記予熱工程にて予熱された液化ガスを海水または清水によって再ガス化する第1再ガス化工程とを備え、前記予熱流路には、前記第1熱交換器によって再ガス化されたガスを導き、第2熱交換器を用いて、前記予熱流路を通過して凝縮した液化ガスを海水または清水などの熱媒水によって再ガス化する第2再ガス化工程を備えていることを特徴とする。
【0014】
予熱用熱交換器における予熱工程では、第1熱交換器にて再ガス化されたガスを予熱流路へ導き、液化ガスを予熱することとした。このように、再ガス化された自己の熱を用いて液化ガスを予熱することとし、連続した経路を流れる同一流体にて予熱を行うこととしたので、予熱工程にてプロパン等の他の熱媒体を用いる必要がなく、簡便な構成で予熱工程を形成することができる。
また、第1熱交換器における第1再ガス化工程では、予熱用熱交換器によって予熱された液化ガスを導くこととし、第1熱交換器に流入する液化ガス温度を上昇させることとしたので、伝熱管周りで海水または清水の凍結のおそれを低減できる。したがって、第1熱交換器としてシェルアンドチューブ式熱交換器を用いた場合には、水室を1室とした簡便な構造のシェルアンドチューブ式熱交換器を採用することができる。
また、第2熱交換器における第2再ガス化工程では、予熱用熱交換器の予熱流路を通過して凝縮した液化ガスが導かれる。予熱流路を通過した液化ガスは、予熱流路を流れる際に、被予熱流路を流れる液化ガスに熱を与えて温度が低下するが、被予熱流路を流れる液化ガスよりも高温とされたガス化ガスが予熱流路に導かれる構成となっているので、予熱流路を流れて冷却・凝縮された液化ガスは、予熱用熱交換器に流入する液化ガス温度までは冷却されることがない。したがって、第2熱交換器に流入する液化ガス温度を液化ガス温度よりも上昇させることができるので、伝熱管周りで海水または清水が凍結するおそれを低減できる。したがって、第2熱交換器としてシェルアンドチューブ式熱交換器を用いた場合には、水室を1室とした簡便な構造のシェルアンドチューブ式熱交換器を採用することができる。
なお、予熱用熱交換器の被予熱流路および予熱流路から流出した流体を「液化ガス」と称しているが、液相のみからなる流体だけを意味しているのではなく、特に熱交換器出口ではガス化流体か、または所定の湿り度を有する二相流体も含まれる。
また、第1熱交換器および/または第2熱交換器としては、好適には、シェルアンドチューブ式熱交換器が用いられるが、本発明は特にこれに限定されるものではなく、例えば、上述のORV方式の熱交換器とすることもできる。
また、第1熱交換器や第2熱交換器の加熱媒体として清水などの2次閉回路を用いる場合には、不凍液を添加することとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
予熱用熱交換器にて、第1熱交換器で再ガス化された自己の熱を用いて液化ガスを予熱することとし、連続した経路を流れる同一流体にて予熱を行うこととしたので、予熱工程にてプロパン等の他の熱媒体を用いる必要がなく、簡便な構成で予熱を行うことができる。
また、液化ガスを予熱することにより、第1熱交換器の伝熱管周りの凍結のおそれを低減することができるので、簡易な構成の熱交換器を採用することができる。
また、第2熱交換器に流入する液化ガス温度を液化ガス温度よりも上昇させることができるので、伝熱管周りで海水または清水が凍結するおそれを低減することができる。したがって、簡易な構造の熱交換器を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる液化ガスの再ガス化装置を示した図である。
【図2】図1の変形例を示した図である。
【図3】水室が2室とされたシェルアンドチューブ式熱交換器を示した縦断面図である。
【図4】水室が1室とされたシェルアンドチューブ式熱交換器を示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
FSRU(Floating Storage and Regasification Unit)やFPSO(Floating Production, Storage and Offloading)といった洋上浮体やLNG船等の船舶には、LNG貯蔵設備(液化ガス貯蔵設備)が設けられている。このLNG貯蔵設備のLNG貯蔵タンク(液化ガス貯蔵タンク)から導かれるLNG(液化ガス)を需要先に供給する際に再ガス化するための再ガス化装置1が図1に示されている。
【0018】
図1に示すように、再ガス化装置1は、LNGを予熱する予熱用熱交換器3と、予熱用熱交換器3にて予熱された液化ガスを海水または清水によって再ガス化する第1シェルアンドチューブ式熱交換器(第1熱交換器)5と、予熱用熱交換器3から導かれた液化ガスを海水または清水によって再ガス化する第2シェルアンドチューブ式熱交換器(第2熱交換器)7とを備えている。
【0019】
予熱用熱交換器3には、LNG貯蔵タンクから移送ポンプによって送り出されたLNGが導かれる被予熱流路3aと、第1シェルアンドチューブ式熱交換器5にて再ガス化されたガス化ガスが導かれる予熱流路3bとが設けられている。
予熱用熱交換器3は、プレート式熱交換器とされている。具体的には、プレートフィン式やプレートコイル式が挙げられ、ステンレス製やアルミ合金製が好適に使用される。
予熱用熱交換器3によって、被予熱流路3aを通過するLNGが、例えば−160℃〜−155℃から−100℃〜−40℃まで予熱される。なお、予熱後の流体を単にLNG(液化ガスを意味する)と称するが、液相のみからなる流体だけを意味しているのではなく、所定の湿り度を有する二相流体も含まれる。
予熱流路3bを通過するガス化ガスは、被予熱流路3aを通過するLNGを冷却することによって加熱され、例えば約10℃から−100℃〜−40℃まで冷却される。予熱流路3bから流出するガス化ガスの温度は、予熱用熱交換器3の設計によって設定可能であるが、被予熱流路3aから流出するLNGと同等の温度とすることが好ましい。これにより、第1シェルアンドチューブ式熱交換器5と第2シェルアンドチューブ式熱交換器7とを同じ容量とすることができるからである。
【0020】
第1シェルアンドチューブ式熱交換器5は、図4に示したような水室が1室とされた簡便な構造のシェルアンドチューブ式熱交換器とされている。水室には、海水または清水がLNG流れに対して対向流となるように導かれるようになっている。この第1シェルアンドチューブ式熱交換器5によって、予熱後のLNGは例えば約10℃まで加熱されて再ガス化される。
第1シェルアンドチューブ式熱交換器5にて再ガス化されたガス化ガスは、上述したように予熱用熱交換器3の予熱流路3bへと導かれる。
【0021】
第2シェルアンドチューブ式熱交換器7は、第1シェルアンドチューブ式熱交換器5と同様に、図4に示したような水室が1室とされた簡便な構造のシェルアンドチューブ式熱交換器とされている。水室には、海水または清水がLNG流れに対して対向流となるように導かれるようになっている。この第2シェルアンドチューブ式熱交換器7によって、予熱用熱交換器3にて冷却されて凝縮されたLNGが例えば約10℃まで加熱されて再ガス化される。なお、予熱用熱交換器3にて冷却された流体を単にLNG(液化ガスを意味する)と称するが、液相のみからなる流体だけを意味しているのではなく、ガス相、または所定の湿り度を有する二相流体も含まれる。
第2シェルアンドチューブ式熱交換器7にて再ガス化されたガス化ガスは、CNG(Compressed natural gas;圧縮天然ガス)マニホールドへと導かれ、その後、需要先へと供給される。
【0022】
上述した再ガス化装置1は、以下のように用いられ、再ガス化ガスが製造される。
LNG貯蔵タンクから移送ポンプによって送り出されたLNGは予熱用熱交換器3の被予熱流路3aへと導かれ、例えば−100℃〜−40℃まで予熱される(予熱工程)。
予熱後のLNGは、第1シェルアンドチューブ式熱交換器5へと導かれ、海水または清水によって例えば約10℃まで加熱され再ガス化される(第1再ガス化工程)。
再ガス化されたガス化ガスは、予熱用熱交換器3の予熱流路3bへと導かれ、被予熱流路3aを流れるLNGを冷却することによって例えば−100℃〜−40℃まで冷却される。
予熱流路3bを流出したLNGは、第2シェルアンドチューブ式熱交換器7へと導かれ、海水または清水によって例えば約10℃まで加熱され再ガス化される(第2再ガス化工程)。
再ガス化されたガス化ガスは、CNGマニホールドへと導かれ、需要先へと供給される。
【0023】
本実施形態の再ガス化装置1によれば、以下の作用効果を奏する。
予熱用熱交換器3では、第1シェルアンドチューブ式熱交換器5にて再ガス化されたガスを予熱流路3bへ導き、被予熱流路3aを流れるLNGを予熱することとした。このように、再ガス化された自己の熱を用いてLNGを予熱することとし、連続した経路を流れる同一流体にて予熱を行うこととしたので、予熱工程にてプロパン等の他の熱媒体を用いる必要がなく、簡便な構成で予熱工程を形成することができる。
【0024】
また、第1シェルアンドチューブ式熱交換器5には、予熱用熱交換器3によって予熱されたLNGを導くこととし、第1シェルアンドチューブ式熱交換器5に流入するLNG温度を上昇させることとしたので、伝熱管周りで海水または清水の凍結のおそれがない。したがって、水室を1室とした簡便な構造のシェルアンドチューブ式熱交換器を採用することができる。
【0025】
また、第2シェルアンドチューブ式熱交換器7には、予熱用熱交換器3の予熱流路3bを通過した後の凝縮したLNGを導くこととした。予熱流路3bを通過したLNGは、予熱流路3bを流れる際に、被予熱流路3aを流れるLNGに熱を与えて温度が低下するが、予熱用熱交換器3の被予熱流路3aに流入するLNGまでは冷却されない設計とした。したがって、第2シェルアンドチューブ式熱交換器7に流入するLNG温度を上昇させることができるので、伝熱管周りで海水または清水が凍結するおそれがない。したがって、水室を1室とした簡便な構造のシェルアンドチューブ式熱交換器を採用することができる。特に、本実施形態では、被予熱流路3aから流出して第1シェルアンドチューブ式熱交換器5へと流れ込むLNGと、予熱流路3bから流出して第2シェルアンドチューブ式熱交換器7へ流れ込むLNG温度とを同等の温度としたので、第1シェルアンドチューブ式熱交換器5と第2シェルアンドチューブ式熱交換器7とを同じ容量とすることができ、低コストにてシェルアンドチューブ式熱交換器を調達することができる。
【0026】
[変形例]
図2には、本実施形態の再ガス化装置の変形例が示されている。
この再ガス化装置1‘は、予熱用熱交換器3にボイルオフガス(以下「BOG」という。)を予冷または凝縮させる冷却流路3cが設けられている。その他の構成についいては図1と同様なので同一符号を付しその説明を省略する。
BOGは、LNG貯蔵タンク等から熱侵入によって不可避的に発生するものであり、冷却して再液化する場合がある。BOGを再液化する場合、再液化設備が再ガス化装置1‘の近傍に設置されている。このような場合には、BOGを予冷または凝縮させる冷却流路3cを予熱用熱交換器3に設ける。冷却流路3cを通過して予冷または凝縮されたBOGは、凝縮器または凝縮タンク(Condenser or Condensate tank)へと導かれる。
このように、冷却流路3cにてBOGを冷却すると同時に、BOGによって被予熱流路3aを流れるLNGをより効果的に予熱することができる。
特に、本実施形態では、予熱用熱交換器3としてプレート式熱交換器を用いており、複数の独立した流路を形成するマルチフロー化が容易なため好適である。
【0027】
なお、上述した実施形態では、液化ガスとしてLNGを挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばLPG(液化石油ガス)、LEG(液化エチレン)等の他の液化ガスであってもよい。
また、上述した実施形態では、第1シェルアンドチューブ式熱交換器および第2シェルアンドチューブ式熱交換器を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の熱交換器であっても予熱による効果を得ることができ、例えば、ORV方式の熱交換器としてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1,1’ 再ガス化装置
3 予熱用熱交換器
3a 被予熱流路
3b 予熱流路
3c 冷却流路
5 第1シェルアンドチューブ式熱交換器(第1熱交換器)
7 第2シェルアンドチューブ式熱交換器(第2熱交換器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被予熱流路を流れる液化ガスを、予熱流路を流れる予熱流体によって予熱する予熱用熱交換器と、
該予熱用熱交換器にて予熱された液化ガスを海水または清水によって再ガス化する第1熱交換器と、
を備え、
前記予熱流路には、前記第1熱交換器によって再ガス化されたガスが導かれ、
前記予熱流路を通過して凝縮した液化ガスを海水または清水によって再ガス化する第2熱交換器を備えていることを特徴とする液化ガスの再ガス化装置。
【請求項2】
前記第1熱交換器および/または前記第2熱交換器は、シェルアンドチューブ式熱交換器とされていることを特徴とする請求項1に記載の液化ガスの再ガス化装置。
【請求項3】
前記予熱用熱交換器には、ボイルオフガスを予冷または凝縮させる冷却流路が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液化ガスの再ガス化装置。
【請求項4】
前記予熱用熱交換器は、プレート式熱交換器とされていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の液化ガスの再ガス化装置。
【請求項5】
予熱用熱交換器を用いて、被予熱流路を流れる液化ガスを、予熱流路を流れる予熱流体によって予熱する予熱工程と、
第1熱交換器を用いて、前記予熱工程にて予熱された液化ガスを海水または清水によって再ガス化する第1再ガス化工程と、
を備え、
前記予熱流路には、前記第1熱交換器によって再ガス化されたガスを導き、
第2熱交換器を用いて、前記予熱流路を通過して凝縮した液化ガスを海水または清水によって再ガス化する第2再ガス化工程を備えていることを特徴とする再ガス化ガス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−180877(P2012−180877A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43192(P2011−43192)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】