説明

液化ガス燃料供給装置

【課題】 液化ガス燃料を液体のまま燃料噴射弁に送出してエンジンに供給する液化ガス燃料供給装置について、製造コストの高騰を伴うことなくメンテナンスの容易化および燃料供給の安定性を確保しながら、燃料ポンプの駆動に起因する騒音を減少させる。
【解決手段】 燃料タンク10Aに貯留した液化ガス燃料を燃料ポンプ11Aで液体のまま燃料噴射弁8に送り余剰燃料を燃料タンク10Aに戻すものとしたエンジンの燃料供給システムに配設される液化ガス燃料供給装置1Aにおいて、燃料ポンプ11Aが燃料タンク10A外に配置されているとともに、燃料タンク10Aから燃料ポンプ11Aに接続する燃料供給配管9Aに過流防止弁を兼ねた燃料取出しバルブ10aを備え燃料ポンプ11A下流に燃料遮断弁5aを備えたものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンの燃料供給システムに配設される液化ガス燃料供給装置に関し、殊にLPGやDMEなどガソリンに比べて気化しやすい液化ガス燃料を液体の状態で燃料噴射弁に送りエンジンに供給する液化ガス燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンク内に充填されたLPGやDMEなどの比較的蒸発しやすい液化ガス燃料を燃料ポンプで圧送して液体のまま燃料噴射弁からエンジンの吸気管路に噴射させる液化ガス燃料供給装置が、例えば特開2003−120443号公報に記載されているように従来から広く知られている。
【0003】
図4は前記従来の液化ガス燃料供給装置が配設されたエンジンの燃料供給システムを示すものであり、液化ガス燃料供給装置1Bは、燃料タンク10Bに充填された液状の燃料を最後まで確実に取り出す必要から、燃料ポンプ11Bが燃料タンク10B内底部側に設けた液中式を採用している。そして、燃料タンク10Bに貯留された燃料は燃料ポンプ11Bにより加圧されて燃料供給配管9Aを通ってエンジン50側に配設された燃料噴射弁8に液体のまま送られるものであり、燃料噴射弁8で噴射されなかった余剰燃料は燃料戻し配管9Bを介して燃料タンク10Bに戻されるようになっている。
【0004】
そして、前記液体LPG等の液化ガス燃料を充填する燃料タンク10Bは、常温で液状である高圧の液化ガス燃料を貯蔵する必要性から鋼鉄製で両端を球面とした円筒型のものが採用されている。従って、ポンプ作動時に収装された燃料ポンプ11Bの作動音が燃料タンク10Bに反響して騒音を発生しやすくなっており、運転者および搭乗者などに不快感を与えてしまうことが多い。
【0005】
また、上述のように液化ガス燃料を密閉・貯溜する燃料タンク10B内に燃料ポンプ11Bが収装されていることから、燃料ポンプ11Bが不調の場合や故障の場合には、燃料タンク10B内の液化ガス燃料を別の容器に移すか或いは最後まで消費してから燃料タンク10Bを開放して取り外すことを要するため、燃料ポンプ11Bのメンテナンスを極めて実施しにくいものとしている。
【0006】
そのため、燃料タンクの近傍にサブタンクを設け燃料ポンプをこれに収装するようにして、メンテナンス時の燃料の移動量または消費量を少なく抑えるするという手段も採ることが提案される。ところがこの場合、LPG自動車取扱い構造規準等に準拠する必要から燃料タンクと燃料ポンプとの間に通路径が比較的狭い燃料取出しバルブおよび過流防止弁(EFV)を配設することになり、これを燃料が通過することで燃料ポンプにベーパロックが生じて燃料を安定的に送出できなくなる、という問題がある。
【0007】
そこで、燃料を安定的に送出できないという問題を回避するために、この部分に通路径の大きな燃料取出しバルブおよび過流防止弁を採用することも考えられるが、この部分のみに用いる最適サイズの燃料取出しバルブおよび過流防止弁を特別に用意する必要があり、汎用性が低下して製造コストの高騰を招いてしまう。
【特許文献1】特開2003−120443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、液化ガス燃料を液体のまま燃料噴射弁に送出してエンジンに供給する液化ガス燃料供給装置について、製造コストの高騰を伴うことなくメンテナンスの容易化および燃料供給の安定性を確保しながら、燃料ポンプの駆動に起因する騒音を減少させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するためになされた本発明は、燃料タンクに貯留した液化ガス燃料を燃料ポンプで液体のままエンジンの燃料噴射弁に送り、余剰燃料を燃料タンクに戻すものとしたエンジンの液化ガス燃料供給装置において、前記燃料ポンプが前記燃料タンク外に配置されているとともに、前記燃料タンクと前記燃料ポンプとを接続する燃料通路に燃料取出しバルブおよび過流防止弁を備え、且つ前記燃料ポンプの下流に燃料遮断弁を備えたことを特徴とする。
【0010】
このように、燃料ポンプを燃料タンク外に配設するだけの簡易な構成で製造コストを高騰させることなく燃料ポンプ作動による反響音を減少させて騒音の少ないものとし、更に燃料タンクと燃料ポンプとの間に燃料取出しバルブおよび過流防止弁を設けたことで、装置の安全規準を遵守しながら燃料ポンプのメンテナンスを容易なものとし、安定的な燃料供給を容易に実現することができるようになる。
【0011】
また、前記燃料取出しバルブおよび過流防止弁を備えて燃料タンクと燃料ポンプを接続する複数の燃料通路が互いに並列に設けられている場合には、燃料ポンプのベーパロックを防止するために通常よりも大径の燃料取出しバルブおよび過流防止弁が不要となり汎用性の高いものとなって、低コストでより安定的な燃料供給を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、製造コストを高騰させることなくメンテナンスの容易化および燃料供給の安定性を確保しながら、燃料ポンプの作動に起因する騒音を減少させることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施の形態の一例に係る液化ガス燃料供給装置1Aを配設したエンジンの燃料供給システムの配置図を示すものであり、燃料タンク10Aから延設された燃料供給配管9Aが燃料ポンプ11Aを経由してエンジン50の燃料レール7に接続されており、燃料レール7からエンジン50の吸気管路に配置した燃料噴射弁8に燃料が分配される。また、燃料レール7から燃料戻し配管9Bが延設されて燃料ポンプ11Aを経由して燃料タンク10Aに接続されてリターン式の燃料供給システムを構成している。
【0014】
また、燃料ポンプ11Aの下流に位置する燃料供給配管9Aには、2個の遮断弁5a,5bが配設されて装置の安全性を確保するようになっており、前記燃料戻し配管9Bには圧力レギュレータ3が設けられて燃料タンク10Aに戻す戻し燃料の圧力が調整されるようになっている点は、従来の通常の液化ガス燃料供給装置とほぼ同様である。尚、本実施の形態においては燃料にLPGを使用する場合を説明するものとする。
【0015】
図2は液化ガス燃料供給装置1Aの拡大部分図を示すものであり、液化ガス燃料供給装置1Aは、燃料タンク10Aと燃料タンク10A外に配置された燃料ポンプ11Aとを接続する燃料供給配管9Aに過流防止弁を兼ねた燃料取出しバルブ10aが設けられている点、およびこの燃料取出しバルブ10aを有する燃料ポンプ11Aと燃料タンク10Aとを接続する燃料供給配管9Aが2系統とされて並列に設けられている点に特徴がある。また、燃料噴射弁8で噴射されなかった余剰燃料は、燃料ポンプ11A内を経由して前述の過流防止弁を兼ねた燃料取出しバルブ10aが配置された燃料戻し配管9Bを通って燃料タンク10A内に戻されるようになっている。
【0016】
図3は液化ガス燃料供給装置1Aを車両に配設した状態の縦断面図を示すものであり、液化ガス燃料供給装置1Aは、例えば破線で示した後部座席の後方スペース(トランクルーム奥部)に配設される。一般に、燃料ポンプ11Aが燃料タンク10A外に配置される場合はその配置スペースが問題となるところ、図に示すように、本実施の形態においては繭状の燃料タンク10Aの下方の車両前方側に形成される空きスペースを利用しているため、余分なスペースを確保する必要のないものとなっている。
【0017】
このように、燃料ポンプ11Aを燃料タンク10A外に配設する構成としたことで、内部で反響しやすい両端を球面とした円筒型で鋼鉄製の燃料タンク10Aを用いても、燃料ポンプ11Aの作動による騒音は運転者および同乗者などにとって殆ど気にならないものとなる。また、燃料ポンプ11Aのメンテナンスに際しては、後部シートの背もたれ部を外して蓋板30を開け、各バルブを閉めて燃料ポンプ11A内部の燃料を消費した後、これを容易に取り外して実施することができる。
【0018】
ところで、燃料ポンプ11Aを燃料タンク10A外に配設するものについては、LPG自動車取り扱い構造規準を遵守するために燃料タンク10Aと燃料ポンプ11Aとの間の燃料通路に燃料取出しバルブおよび過流防止弁を配設する必要があることから、過流防止弁を兼ねた燃料取出しバルブ10aを配設することになり、これが通常の径のものでは燃料が通過することにより燃料ポンプ11Aにベーパロックが生じるおそれがあるが、本実施の形態では過流防止弁を兼ねた燃料取出しバルブ10aを有する燃料通路を複数系統(2系統)」設けたことで、通常の径のものを用いてもベーパロックの発生を回避できるようになっている。
【0019】
このように、通常の径を有する複数の過流防止弁を兼ねた燃料取出しバルブ10aを並列に配置することで、ベーパロックを確実に防止できるとともに、この部分だけに配置するために比較的大径の過流防止弁を兼ねた燃料取出しバルブ10aを用意する必要のないものとなって、汎用性に優れて比較的低コストで安定的な燃料供給を確保できるものである。
【0020】
また、燃料戻し配管9Bが燃料ポンプ11Aを経由して燃料タンク10Aに接続されるとともに、燃料ポンプ11Aと燃料タンク10Aとの間に先述の過流防止弁を兼ねた燃料取出しバルブ10aを備えたものとしたことで、燃料噴射弁8で噴射されなかった余剰燃料が燃料タンク10A内に安定的且つ安全に戻されるようになっている。
【0021】
尚、本実施の形態において使用燃料をLPGとしたが、常温でガソリンと比べて気化しやすい液化ガス燃料であればDMEなどの他の燃料を用いる場合でも同様である。また、燃料タンク10Aと燃料ポンプ11Aとを接続する過流防止弁を兼ねた燃料取出しバルブ10aを有する並列の燃料供給配管9Aは、製造コストの大幅な高騰を招かない限りにおいて数に限定はない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明における実施の形態の液化ガス燃料供給装置が配設された燃料供給システムの配置図。
【図2】図1の液化ガス燃料供給装置における液化ガス燃料供給装置の詳細を示す拡大部分図。
【図3】図2の液化ガス燃料供給装置における燃料ポンプの車両配設状態の詳細を示す縦断面図。
【図4】従来例を示す配置図。
【符号の説明】
【0023】
1A 液化ガス燃料供給装置、 8 燃料噴射弁、 9A 燃料供給配管、 9B 燃料戻し配管、 10A 燃料タンク、 10a 燃料取出しバルブ、 11A 燃料ポンプ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクに貯留した液化ガス燃料を燃料ポンプで液体のままエンジンの燃料噴射弁に送り、余剰燃料を燃料タンクに戻すものとしたエンジンの液化ガス燃料供給装置において、前記燃料ポンプが前記燃料タンク外に配置されているとともに、前記燃料タンクと前記燃料ポンプとを接続する燃料通路に燃料取出しバルブおよび過流防止弁を備え、且つ前記燃料ポンプの下流に燃料遮断弁を備えたことを特徴とする液化ガス燃料供給装置。
【請求項2】
前記燃料取出しバルブおよび過流防止弁を備えて燃料タンクと燃料ポンプを接続する複数の燃料通路が互いに並列に設けられている請求項1に記載した液化ガス燃料供給装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−342756(P2006−342756A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−170328(P2005−170328)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(000153122)株式会社ニッキ (296)
【出願人】(000240950)片倉チッカリン株式会社 (24)