説明

液化ガス運搬船

【課題】船体全体の受圧面積を減少させ、風圧抵抗を減少させることができて、船舶の重心位置を低くして、船体の安定性を向上させること。
【解決手段】内部に液化されたガスを貯蔵するとともに、船首尾方向に沿って配置され、かつ、スカート3を介して船体5に固定された複数個の偏平球状タンク2と、これら偏平球状タンク2の上半部を覆うとともに、船首尾方向および船幅方向に沿って延びる一つの連続したタンクカバー7とを備え、前記タンクカバー7が、前記船体5に対して剛に結合され、前記船体5と一体となって縦強度を確保する構造を有している液化ガス運搬船1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガス運搬船に関し、特に、タンク内に低温にて液化された天然ガス(LNG)を貯蔵して運搬するLNG船に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タンク内に低温にて液化された天然ガス(LNG)を貯蔵して運搬する液化ガス運搬船としては、船首尾方向に沿って配置された複数個の(真)球状タンクの上半部を、一つの連続したタンクカバーで覆うようにした液化ガス運搬船が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−521589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、(真)球状タンクでは、LNG船の船体横断面が略矩形をなしていることから、球状タンクをスカートで支持しながら搭載する船内区画の容積に対するタンク内容積の比が小さく、容積効率が悪い。このために、タンクの船体内への格納を完全に行なうことができず、船体の大型化を招く。また、タンクおよびタンクカバーが甲板上に高く突出するため、船橋からの見通しが悪く、これに伴い背の高い上部構造が必要になる。したがって、船体全体の受圧面積が増大し、風圧抵抗が増加するとともに、船舶の重心位置が高くなり安定性が悪化するという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、船体全体の受圧面積を減少させ、風圧抵抗を減少させることができて、船舶の重心位置を低くして、船体の安定性を向上させることができる液化ガス運搬船を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係る液化ガス運搬船は、内部に液化されたガスを貯蔵するとともに、船首尾方向に沿って配置され、かつ、スカートを介して船体に固定された複数個の偏平球状タンクと、これら偏平球状タンクの上半部を覆うとともに、船首尾方向および船幅方向に沿って延びる一つの連続したタンクカバーとを備え、前記タンクカバーが、前記船体に対して剛に結合され、前記船体と一体となって縦強度を確保する構造を有している液化ガス運搬船であって、前記偏平球状タンクは、赤道部より上方に、円筒部と、この円筒部の上方に連設されて、上に凸の鏡板構造の頂部とを備え、赤道部より下方に、前記円筒部の下方に連接されて、下に凸の鏡板構造の底部とを備えているとともに、鉛直方向の直径が赤道の直径よりも短い偏平球状とされている。
【0007】
本発明に係る液化ガス運搬船によれば、赤道部の水平断面の半径と同じ半径を有する(真)球状タンクと比較した場合、同一の高さでは球状タンクに比べ多量の容積が確保されることになるため、同一容積で球状タンクよりも高さが低減されることになる。
これにより、同一容積で球状タンクを採用した場合に比べて船底からタンクカバーの頂面までの高さを(2%〜25%)低減させ、船体全体の受圧面積を減少させて、風圧抵抗を減少させることができ、船舶の重心位置を低くして、船体の安定性を向上させることができる。
【0008】
上記液化ガス運搬船において、当該液化ガス運搬船の船底からタンクカバーの頂面までの高さが、同一容積で球状タンクを採用した場合の液化ガス運搬船の船底からタンクカバーの頂面までの高さよりも、2%〜25%低減されているとさらに好適である。
【0009】
このような液化ガス運搬船によれば、赤道部の水平断面の半径と同じ半径を有する(真)球状タンクと比較した場合、同一の高さでは球状タンクに比べ多量の容積が確保されることになるため、当該液化ガス運搬船の船底からタンクカバー頂面までの高さが、同一容積で球状タンクよりも低減されることになる。
これにより、同一容積で球状タンクを採用した場合に比べて船底からタンクカバーの頂面までの高さを(2%〜25%)低減させ、船体全体の受圧面積を減少させて、風圧抵抗を減少させることができ、船舶の重心位置を低くして、船体の安定性を向上させることができる。
【0010】
上記液化ガス運搬船において、前記偏平球状タンクのタンク内の総容積が、15万m以上であるとさらに好適である。
【0011】
このような液化ガス運搬船によれば、赤道部の水平断面の半径と同じ半径を有する(真)球状タンクと比較した場合、同一の高さでは球状タンクに比べ多量の容積が確保されることになるため、同一容積で球状タンクよりも高さが低減されることになる。
これにより、同一容積で球状タンクを採用した場合に比べて船底からタンクカバーの頂面までの高さを(2%〜25%)低減させ、船体全体の受圧面積を減少させて、風圧抵抗を減少させることができ、船舶の重心位置を低くして、船体の安定性を向上させることができる。
【0012】
上記液化ガス運搬船において、前記タンクカバーの側面と船側外板との間に位置する上甲板の上方に、荷役作業を行うために着岸したターミナルに設置されているギャングウェイラダーが架け渡されるウォークウェイが設けられているとさらに好適である。
【0013】
このような液化ガス運搬船によれば、ターミナルに設置されたギャングウェイラダーが、ウォークウェイの上面に架け渡されることとなるので、上甲板が低い位置に配置されている場合でも、ターミナルに設置されたギャングウェイラダーを架け渡すことができ、ターミナルに設置されたギャングウェイラダーに対する適合性を良好なものとすることができる。
【0014】
上記液化ガス運搬船において、船底から前記ウォークウェイの上面までの高さH(m)が、前記船底から前記上甲板の上面までの高さD(m)+2(m)よりも大きく、40(m)よりも小さい範囲内で、かつ、着岸が予定されているターミナルに設置されたギャングウェイラダーのすべてを架け渡すことができる高さに設定されているとさらに好適である。
なお、「着岸が予定されているターミナル」とは、就航後に本船の着岸が予定されているターミナルおよび/または既に就航している本船が、航路変更等により着岸することになった新たなターミナル等のことをいう。
【0015】
このような液化ガス運搬船によれば、船底からウォークウェイの上面までの高さ(すなわち、上甲板の上面からウォークウェイの上面までの高さ)が、着岸が予定されているターミナルに設置されたギャングウェイラダーの可動範囲にあわせて配置されたウォークウェイの上面に、ギャングウェイラダーが架け渡されるようになっているので、上甲板が低い位置に配置されている場合でも、着岸が予定されているターミナルに設置されたギャングウェイラダーのすべてを架け渡すことができ、ターミナルに設置されたギャングウェイラダーに対する適合性を良好なものとすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る液化ガス運搬船によれば、船体全体の受圧面積を減少させ、風圧抵抗を減少させることができて、船舶の重心位置を低くして、船体の安定性を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る液化ガス運搬船の図であって、(a)は右側面図、(b)は平面図である。
【図2】図1(a)のII−II矢視断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る液化ガス運搬船の図であって、(a)は図1(a)のA−A矢視断面図、(b)は図1(b)のB−B矢視断面図である。
【図4】図1(a)のIV−IV矢視断面図である。
【図5】図1から図3(a)に示す偏平球状タンクの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る液化ガス運搬船の一実施形態について、図1から図5を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係る液化ガス運搬船の図であって、(a)は右側面図、(b)は平面図、図2は図1(a)のII−II矢視断面図、図3は本実施形態に係る液化ガス運搬船の図であって、(a)は図1(a)のA−A矢視断面図、(b)は図1(b)のB−B矢視断面図、図4は図1(a)のIV−IV矢視断面図、図5は図1から図3(a)に示す偏平球状タンクの側面図である。
【0019】
図1(a)、図1(b)、および図3(a)に示すように、本実施形態に係る液化ガス運搬船(本実施形態では「LNG船」)1は、例えば、四個のアルミニウム製の偏平球状タンク(「非真球状タンク」ともいう。)2を備えた船舶であり、これらアルミニウム製の偏平球状タンク2はそれぞれ、その内部に、液化ガス(本実施形態では低温にて液化された天然ガス)を貯蔵することができるように構成されたものである。
【0020】
図5に示すように、偏平球状タンク2は、鉛直方向の直径が赤道の直径よりも若干短い偏平球状、すなわち、若干偏平でやや方形に近い球状、言い換えれば、船体5の内側に無駄な空間の発生が少なく、かつ、船体5の上方への突出量が少なくなるように形成されたタンクである。偏平球状タンク2の赤道部の上方(北半球)には、半径R、高さH2の円筒部31と、円筒部31の上方に連設されて高さH1の、上に凸の鏡板構造とされた頂部32とが設けられ、偏平球状タンク2の赤道部の下方(南半球)には、円筒部31の下方に連設されて高さH3の、下に凸の鏡板構造とされた底部33が設けられている。
【0021】
頂部32は、トーラス部34と、球殻部35とを備えている。
トーラス部34は、円筒部31の上方に連設されて、例えば、θ1=60°までの範囲で半径R2の球体の一部により形成されている。
球殻部35は、トーラス部34の上方に連設されて、半径R1の球体の一部により形成されている。
なお、R2は、α×R(赤道部の水平断面の半径(以下、「赤道部の半径」という))のことであり、例えば、αを0.5とした場合、R2はR(赤道部の半径)の0.5倍になる。
また、R1は、β×Rのことであり、βは、(1−α+α×COSθ1)/COSθ1のことであり、例えば、θ1を60°、αを0.5とした場合、βは1.5になり、R1はRの1.5倍になる。
【0022】
一方、底部33は、第1の球殻部36と、トーラス部37と、第2の球殻部38とを備えている。
第1の球殻部36は、円筒部31の下方に連設されて、例えば、θ4=25°までの範囲で半径R4(=R)の球体の一部により形成されている。
トーラス部37は、第1の球殻部36の下方に連設されて、例えば、θ5=38°までの範囲で半径R5の球体の一部により形成されている。
第2の球殻部38は、トーラス部37の下方に連設されて、半径R6の球体の一部により形成されている。
なお、R5は、γ×Rのことであり、例えば、γを0.7とした場合、R5はRの0.7倍になる。
また、R6は、δ×Rのことであり、δは、(1−γ)×COSθ4/COS(θ4+θ5)+γのことであり、例えば、θ4を25°、θ5を38°、γを0.7とした場合、δは1.299になり、R6はRの1.299倍になる。
【0023】
なお、本実施形態では、トーラス部37の最大横方向寸法aと、トーラス部37および第2の球殻部38の合計縦方向寸法bとの比(a/b)がおおよそ1.5(a/b≒1.5)となるように設定され、高さH1,H2およびH3が下記式(1)〜式(3)を満たすように設定されている。
R/H1=1.5(式1)
2.5≦R/H2≦3.3(式2)
1.1≦R/H3≦1.2(式3)
【0024】
ここで、a/b≒1.5に設定すると、偏平球状タンク2の内圧により小曲率の部分に生じる圧縮能力が十分小さく維持されることになるので、耐座屈設計を不要とすることができる。
また、高さH1,H2およびH3が上記式(1)〜式(3)を満たすように設定されることにより、LNGタンクとしての安定上好ましい結果を得ることができた。
【0025】
また、図2に示すように、これら偏平球状タンク2はそれぞれ、その上端部が偏平球状タンク2の赤道部に固定され、その下端部がファンデーションデッキ4上に固定された円筒形のスカート3を介して船体5に支持されている。すなわち、これら偏平球状タンク2の重量は、スカート3を通して船体5で受けられるようになっている。
【0026】
さらに、図1(a)、図1(b)、および図2に示すように、これら偏平球状タンク2の上半部は、その下端部が上甲板6上に固定されるとともに、船首尾方向および船幅方向に沿って延びる一つの連続したタンクカバー7により覆われている。また、タンクカバー7と上甲板6との間に、伸縮継手は一切設けられておらず、タンクカバー7は剛体構造になっている。すなわち、タンクカバー7は、船体5とともに、船級協会のルール等で要求される船舶の縦強度(船首尾方向(縦方向)に対し、自重、積載される貨物、波の力により生じる曲げの力およびせん断力に対する強度)を確保する構造となっている。
なお、図2中の符号8,9はそれぞれ、縦通隔壁、船側外板を示している。
【0027】
図1(a)から図4に示すように、船体5の船底部には、船首尾方向および船幅方向に沿って、複数個(本実施形態では17個)のバラストタンク10が設けられている。
これらバラストタンク10のうち、船首に最も近い位置に配置されたバラストタンク10以外のバラストタンク10はそれぞれ、偏平球状タンク2の周方向に沿うとともに、偏平球状タンク2の底部上方を取り囲むように配置された上部と、船体5の船側外板9および船底(船底外板)11に沿って、船首尾方向に配置された下部とを備えている。
【0028】
また、図1(a)、図1(b)、図2、および図4に示すように、本実施形態に係る液化ガス運搬船1の左舷側および右舷側には、船側外板9に沿ってウォークウェイ(通路)20がそれぞれ一本ずつ設けられている。
このウォークウェイ20は、荷役作業を行うために着岸したターミナル(図示せず)に設置されているギャングウェイラダー(舷側はしご)が架け渡されるとともに、乗組員および作業員等が行き来する通路としての役目を果たすものである。
【0029】
図2および図4に示すように、ウォークウェイ20は、タンクカバー7の側面7aから外方に向かって延びるウォークデッキ21と、上甲板6から垂直上方(またはタンクカバー7の側面7aから斜め上方)に向かって延びて、ウォークデッキ21の下面を支持する複数本の支持部材22とを備えている。
図1(a)および図1(b)に示すように、ウォークウェイ20は、対応する船側外板9に沿って、ハウス(居住区)23の前面からタンクカバー7の側面7a前端まで延びている。また、ウォークデッキ21の両端(図1(a)および図1(b)において左端および右端)には、ウォークデッキ21上から上甲板6上に降りるための、あるいは上甲板6上からウォークデッキ21上に登るための階段(図示せず)がそれぞれ取り付けられている。
【0030】
そして、船底11からウォークデッキ21の上面までの高さ(垂直距離)H(m)は、船底11から上甲板6の上面までの高さD(m)+2(m)よりも大きく、40(m)よりも小さい範囲内で、かつ、(就航後に)着岸が予定されているターミナルに設置されたギャングウェイラダーのすべてを架け渡すことができる高さに設定されている。
【0031】
本実施形態に係る液化ガス運搬船1によれば、赤道部の水平断面の半径Rと同じ半径Rを有する(真)球状タンクと比較した場合、同一の高さでは球状タンクに比べ多量の容積が確保されることになるため、同一容積で球状タンクよりも高さが低減されることになる。
これにより、同一容積で球状タンクを採用した場合に比べて船底11からタンクカバー7の頂面7bまでの高さを(2%〜25%)低減させ、船体全体の受圧面積を減少させて、風圧抵抗を減少させることができ、船舶の重心位置を低くして、船体の安定性を向上させることができる。
【0032】
また、着岸が予定されているターミナルに設置されたギャングウェイラダーの可動範囲にあわせて配置されたウォークウェイ20の上面に、ギャングウェイラダーが架け渡されるようになっているので、上甲板6が低い位置に配置されている場合でも、着岸が予定されているターミナルに設置されたギャングウェイラダーのすべてを架け渡すことができ、ターミナルに設置されたギャングウェイラダーに対する適合性を良好なものとすることができる。
【0033】
さらに、係船用の金具は、ウォークデッキ21の下方に位置する上甲板6上に、従来と同じように配置されることとなるので、ウォークデッキ21の上面から上方に係船用の金具が突出することを回避することができて、ウォークデッキ21上の通行性を向上させることができる。
【0034】
さらにまた、全偏平球状タンク2の上半部を覆う一つの連続したタンクカバー7が、船体5に対して剛に結合され、船体5とともに、船級協会のルール等で要求される船舶の縦強度を確保する構造となっているので、船体5の幅を2%〜4%程度低減させることができ、船体抵抗および船体重量を低減させることができて、航行性能を向上させることができるとともに、船体5を構成する材料(例えば、鋼材)の総量を低減させることができて、建造コストの低減化を図ることができる。
【0035】
さらにまた、図4に示すように、バラストタンク10の上部が、偏平球状タンク2の周方向に沿うとともに、偏平球状タンク2の底部上方を取り囲むように配置されているので、これらバラストタンク10の上部を、偏平球状タンク2を支持するスカート3の一部として流用することができ、スカート3を構成する材料の総量を低減させることができて、建造コストの低減化を図ることができる。
【0036】
また、本実施形態に係る液化ガス運搬船1によれば、以下のような効果ないし利点も得ることができる。
(1)偏平球状タンク2の南半球の形状が通常の鏡板構造と異なり、貨液の半載時の液面近傍、すなわち赤道から南緯30度程度の範囲が、半径が赤道部の水平断面の半径とほぼ等しい球体形状に形成されていることで、複雑な半載時の液の動揺による座屈問題を従来の(真)球状タンクと同じ信頼性をもって設計できる。
(2)偏平球状タンク2の南半球の上述の球体部分より下方、すなわち、南緯30度より下方の部分がトーラス部37および第2の球殻部38で縦横比(a/b)が略1.5の部分で形成されているので、内圧により小曲率部分に生じる圧縮応力が十分小さく維持され、耐座屈設計が不要となる。
(3)南半球を、赤道部の半径Rと同じ半径R4の球体の一部により形成された第1の球殻部36と、この第1の球殻部36の下方に連設される、トーラス部37および第2の球殻部38からなる疑似楕円部との2つの部分から形成しているため、南半球の製作は、第1の球殻部36と疑似楕円部とを個別に製作した後、両部材を接合することで行なうことができる。したがって、強度、熱歪み、肉厚などに関して第1の球殻部36および疑似楕円部のそれぞれについて設計すればよく、その結果、南半球の設計および製作が容易となる。
(4)疑似楕円部を構成するトーラス部37および第2の球殻部38はいずれも球体の一部から形成されているため、設計・製作が容易である。
(5)トーラス部37と第1の球殻部36とは同じ接線をもつことになるので、両者を滑らかに接合でき、その結果、トーラス部37と第1の球殻部36との接合部での局部的な曲げ応力の発生を抑えることができるとともに、外観も滑らかな連続性を保つことができる。
(6)上記(2)〜(5)により、偏平球状タンク2の南半球の簡単な設計・製作が可能となる。
【0037】
なお、本発明は、タンク内の総容積が15万m以上である液化ガス運搬船に適用されるとさらに好適である。
タンク内の総容積が15万m以上である液化ガス運搬船では、従来、タンクおよびタンクカバーが甲板上に高く突出するため、船橋からの見通しが悪く、これに伴い背の高い上部構造が必要になり、船体全体の受圧面積が増大し、風圧抵抗が増加するとともに、船舶の重心位置が高くなり安定性が悪化するという問題があった。
しかしながら、本発明を、タンク内の総容積が15万m以上である液化ガス運搬船に適用することにより、同一容積で球状タンクを採用した場合に比べて船底からタンクの頂点(北極点)およびタンクカバーの頂面までの高さを(2%〜25%)低減させ、船体全体の受圧面積を減少させて、風圧抵抗を減少させることができ、船舶の重心位置を低くして、船体の安定性を向上させることができ、従来の問題を解決することができるようになった。
【0038】
さらに、上述した実施形態では、ウォークウェイ20の後方端がハウス23の前面まで延びているものについて説明したが、本発明はこのようなものに限定されるものではなく、ウォークウェイ20の後方端が、例えば、ハウス23の側面まで延びたウォークウェイ20を採用することもできる。
そして、ウォークウェイ20の後方側の端部と、ハウス23内のある階層(例えば、2nd Deck)とを防水扉(図示せず)を介して接続する(行き来できるようにする)ことにより、ハウス23内からウォークウェイ20上への、あるいはウォークウェイ20上からハウス23内への利便性を向上させることができる。
【0039】
さらにまた、従来、上甲板6の下方に形成された空間(ファンデーションデッキ4と、上甲板6と、縦通隔壁8と、船側外板9とで囲まれた空間)内に配置されていた電線、油配管、水配管、消火配管、圧縮空気配管等が、ウォークデッキ21の下方に形成された開放空間(ウォークデッキ21と上甲板6との間に形成された空間)内に配置されているとさらに好適である。
これにより、電線、油配管、水配管、消火配管、圧縮空気配管等の保守・点検作業が容易に行えるようになり、メンテナンス性を向上させることができる。
【0040】
さらにまた、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、上述した実施形態において、スカート3の内周面と、バラストタンク10の上部を構成(形成)する壁部(偏平球状タンク2の周方向に沿って存する壁部)12(図2参照)の内周面とを同一平面上に位置させ、かつ、これらスカート3と壁部12とを同一の部材で構成する等、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で適宜必要に応じて変形実施および変更実施することができる。
【0041】
さらにまた、上述した実施形態では、四個の偏平球状タンク2の上半部を、船首尾方向および船幅方向に沿って延びる一つの連続したタンクカバー7で覆うものについて説明したが、本発明はこのようなものに限定されるものではなく、各偏平球状タンク2に対応した四つのタンクカバーを備えたようなものにも適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 液化ガス運搬船
2 偏平球状タンク
3 スカート
5 船体
6 上甲板
7 タンクカバー
7a 側面
7b 頂面
9 船側外板
11 船底
20 ウォークウェイ
31 円筒部
32 頂部
33 底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液化されたガスを貯蔵するとともに、船首尾方向に沿って配置され、かつ、スカートを介して船体に固定された複数個の偏平球状タンクと、
これら偏平球状タンクの上半部を覆うとともに、船首尾方向および船幅方向に沿って延びる一つの連続したタンクカバーとを備え、
前記タンクカバーが、前記船体に対して剛に結合され、前記船体と一体となって縦強度を確保する構造を有している液化ガス運搬船であって、
前記偏平球状タンクは、赤道部より上方に、円筒部と、この円筒部の上方に連設されて、上に凸の鏡板構造の頂部とを備え、赤道部より下方に、前記円筒部の下方に連接されて、下に凸の鏡板構造の底部とを備えているとともに、鉛直方向の直径が赤道の直径よりも短い偏平球状とされていることを特徴とする液化ガス運搬船。
【請求項2】
船底からタンクカバーの頂面までの高さが、同一容積で球状タンクを採用した場合の液化ガス運搬船の船底からタンクカバー頂面までの高さよりも、2%〜25%低減されていることを特徴とする請求項1に記載の液化ガス運搬船。
【請求項3】
前記偏平球状タンクのタンク内の総容積は、15万m以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の液化ガス運搬船。
【請求項4】
前記タンクカバーの側面と船側外板との間に位置する上甲板の上方に、荷役作業を行うために着岸したターミナルに設置されているギャングウェイラダーが架け渡されるウォークウェイが設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の液化ガス運搬船。
【請求項5】
船底から前記ウォークウェイの上面までの高さH(m)が、前記船底から前記上甲板の上面までの高さD(m)+2(m)よりも大きく、40(m)よりも小さい範囲内で、かつ、着岸が予定されているターミナルに設置されたギャングウェイラダーのすべてを架け渡すことができる高さに設定されていることを特徴とする請求項4に記載の液化ガス運搬船。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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