説明

液圧緩衝器

【課題】安価な構成で、揺れによるストロークを記録できるようにした、液圧緩衝器を提供する。
【解決手段】本油圧緩衝器1はシリンダ2外に突出したピストンロッド3に、該ピストンロッド3の縮み行程における該ピストンロッド3の最大縮み量を記録する縮み量記録手段であるOリング10を備えているので、揺れによるストロークを記録できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧緩衝器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液圧緩衝器として油圧緩衝器(例えば、特許文献1参照)が採用されている。
【特許文献1】特開昭52−113475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、液圧緩衝器では、そのストローク量を調査したいという要求がある。
【0004】
本発明の目的は、安価な構成で、揺れによるストロークを記録できるようにした、液圧緩衝器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段として、本発明のうち請求項1に記載した液圧緩衝器の発明は、作動液が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に挿入されるピストンと、一端部がシリンダ内に挿入されると共に他端部がシリンダ外に突出し、前記ピストンと一体的に移動するピストンロッドとを備え、前記シリンダと前記ピストンとの相対運動に伴う作動液の流動により減衰力を発生させる液圧緩衝器であって、前記ピストンロッドの前記シリンダ外に突出した側には、該ピストンロッドの縮み行程における該ピストンロッドの最大縮み量を記録する縮み量記録手段が備えられることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の液圧緩衝器を採用することにより、安価な構成で、揺れによるストロークを記録することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図1〜図5に基いて詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係る液圧緩衝器は、その作動液に作動油が採用された油圧緩衝器1として提供され、該油圧緩衝器1は、建物の免震構造に採用される。そして、本油圧緩衝器1は、地震等により建物が揺れた際、その揺れによるストロークを記録できるようにしたものである。
ここで、ビル、橋、鉄塔、ガスタンク、配管支柱などの構造物の地震による揺れに対して減衰力を与える油圧緩衝器1は、大きな地震がない限りほとんどストロークしないものであって、大きな地震が発生した後に、その作動状態を確認してストローク量の記録を行う必要がある。
【0008】
本発明の実施の形態に係る油圧緩衝器1は、図1に示すように、作動油が封入されたシリンダ2と、該シリンダ2内に摺動可能に挿入されるピストン(図示略)と、一端部がシリンダ2内に挿入されると共に他端部がシリンダ2外に突出し、ピストンと一体的に移動するピストンロッド3とを備え、シリンダ2とピストンとの相対運動に伴う作動油の流動により減衰力を発生させるものである。
【0009】
図1及び図2に示すように、シリンダ2は、その一端開口がボトム部9で閉塞されると共に、他端開口がロッドガイド4で閉塞される。シリンダ2内には、ピストンが摺動可能に挿入され、該ピストンによって、シリンダ2内が2室に画成される。ピストンと一体的に移動するピストンロッド3の他端部は、シリンダ2の他端開口を閉塞するロッドガイド4に摺動自在に、且つ液密的に支持されて外部に突出されている。
【0010】
図2に示すように、シリンダ2の他端開口を閉塞するロッドガイド4には、ピストンロッド3を摺動自在に支持する軸受部材11が備えられ、且つ液密的に支持するシール要素7が備えられる。該シール要素7は、ピストンロッド3の外周面に摺動自在に密着されるダストシール5及びパッキン6からなる。なお、図2の符号8はパッキン用バックアップリングである。
また、本油圧緩衝器1には、シリンダ2とピストンとの相対運動に伴う作動油の流動により減衰力を発生させる減衰発生手段(図示略)が備えられている。該減衰力発生手段は、例えば、シリンダ2とピストンとの相対運動に伴う作動油の流動に抵抗を付与するオリフィスや調圧弁等で構成される。
【0011】
さらに、図1及び図2に示すように、本油圧緩衝器1には、ピストンロッド3の外周面で、ロッドガイド4との境目部分、具体的にはロッドガイド4に備えたダストシール5と接触する位置に、軸方向に摺動自在な縮み量記録手段であるOリング10が取り付けられる。この位置がOリング10の原点位置となる。また、シリンダ2外に突出しているピストンロッド3は、ロッドカバー17(図1の2点鎖線)で覆われている。該ロッドカバー17はピストンロッド3の先端部分に着脱自在に装着されている。
【0012】
なお、本発明の実施の形態に係る油圧緩衝器1では、縮み量記録手段としてOリング10が採用されているが、図3に示すように断面矩形状のバックアップリング10aを採用してもよい。また、縮み量記録手段は、C型のスパイラル形状またはバイアスカット形状のリングを採用しても良い。さらに、縮み量記録手段はオイルシールや樹脂バンド等を採用してもよい。
【0013】
上述した構成からなる本油圧緩衝器1は、図4に示すように、例えば、建物の基礎部分に配置される地盤側及び建物側の緩衝器設置用基礎12、12の取付金具13、13に、シリンダ2のボトム部9及びピストンロッド3の先端部がピン15によりそれぞれ連結されて設置される。例えば、図4では、図視左右側の各油圧緩衝器1は共に長手方向に沿って配置されると共に、図視上下側の各油圧緩衝器1は共に短手方向に沿って配置される。図4の符号14は梁であり、符号16は積層ゴムである。
【0014】
そして、本発明の実施の形態に係る油圧緩衝器1では、地震等により建物が揺れた場合、例えば、各緩衝器設置用基礎12、12が互いに近接する方向に移動すると、本油圧緩衝器1のピストンロッド3がシリンダ2内に縮むように移動するが、Oリング10はロッドガイド4と干渉してシリンダ2内への没入が規制されるためにピストンロッド3の外周面を先端部に向かって摺動する。
その後、各緩衝器設置用基礎12、12が互いに遠退する方向に移動すると、本油圧緩衝器1のピストンロッド3が外周面上のOリング10の位置を変化させることなくシリンダ2から伸びるように移動する。
その後、再び、各緩衝器設置用基礎12、12が互いに近接する方向に移動し、最初に近接した距離よりもさらに近接した場合、再び、ピストンロッド3がシリンダ2内に縮むように移動し、Oリング10がピストンの外周面をさらに先端部に向かって摺動する。なお、このように、再び各緩衝器設置用基礎12、12が互いに近接する方向に移動した際、最初に近接した距離まで近接しない場合には、Oリング10の位置は変化しない。
その後、各緩衝器設置用基礎12、12が互いに遠退する方向に移動すると、ピストンロッド3が外周面上のOリング10の位置を変化させることなくシリンダ2から伸びるように移動する。
その後、建物の揺れによって上述した作用が繰り返される。
【0015】
その結果、Oリング10の現在位置から上記原点位置までの移動距離を計測し記録することで本油圧緩衝器1のピストンロッド3の最大縮み量(図5のA寸法)を記録することができ、ひいては、揺れの際の各緩衝器設置用基礎12、12間の最大近接量を記録することが可能になる。
さらに、Oリング10は、ロッドガイド3の外周側で摺動可能であって、記録後にOリング位置を原点位置に復帰させることが容易に行える。
【0016】
以上、本発明の実施の形態に係る油圧緩衝器1によれば、ピストンロッド3のシリンダ2外に突出する外周面にOリング10を備え、該Oリング10は、ピストンロッド3の縮み時、シリンダ2内への没入が規制される共に軸方向に摺動自在であり、初期状態時にはロッドガイド4との境目部分に配置される。
これにより、地震等により建物が揺れる場合、本油圧緩衝器1のピストンロッド3の最大縮み量を記録することができ、ひいては、各緩衝器設置用基礎12、12間の最大近接量を記録することができる。しかも、本油圧緩衝器1では、ピストンロッド3にOリング10を備えるだけの構成であるので、例えば、揺れ記録装置等の設置する際の初期設置費用及び維持管理費用を必要とせず、安価な構成とすることができる。
【0017】
また、本発明の実施の形態に係る油圧緩衝器1では、油圧緩衝器1の配置される各緩衝器設置用基礎12、12間の最大近接量が記録できるので、複数箇所に設置された各油圧緩衝器1における軸方向の揺れの程度、すなわち建物の基礎部分における多方向の揺れの程度を記録でき、非常に有効である。さらに、本油圧緩衝器1では、シリンダ2外に突出しているピストンロッド3は、ロッドカバー17で覆われているので、Oリング10の位置が外部からの入力で変化することはなく、記録値の正確性が向上される。さらにまた、本油圧緩衝器1では、ピストンロッド3の外周面に付着した異物は、ダストシール5により除去される前にOリング10により除去されるので、ダストシール5が異物により損傷されるのを防止することができる。
さらに、本油圧緩衝器1では、比較的建物の移動量が大きい地震による振動の記録を残すことを可能とするが、例えば、平常時はストローク量が小さいのでロッドガイド4表面に異物が付着しやすいが、地震発生時にはOリング10により異物が除去されるので、ダストシール5の損傷を防止することが可能となり、さらに、ロッドカバー17を省略した構成も可能となる。
なお、建物等の筋交い間に設置するブレースダンパに用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る油圧緩衝器で、初期状態を示す側面図である。
【図2】図2は、図1におけるシリンダのロッドガイド側の断面図である。
【図3】図3は、縮み量記録手段の他の実施形態を示す、図2と同じ断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係る油圧緩衝器が、建物の基礎部分に設置された状態の一例を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態に係る油圧緩衝器で、建物が揺れた後の状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 油圧緩衝器(液圧緩衝器),2 シリンダ,3 ピストンロッド,4 ロッドガイド,10 Oリング(縮み量記録手段),10a バックアップリング(縮み量記録手段),17 ロッドカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動液が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に挿入されるピストンと、一端部がシリンダ内に挿入されると共に他端部がシリンダ外に突出し、前記ピストンと一体的に移動するピストンロッドとを備え、前記シリンダと前記ピストンとの相対運動に伴う作動液の流動により減衰力を発生させる液圧緩衝器であって、
前記ピストンロッドの前記シリンダ外に突出した側には、該ピストンロッドの縮み行程における該ピストンロッドの最大縮み量を記録する縮み量記録手段が備えられることを特徴とする液圧緩衝器。
【請求項2】
前記縮み量記録手段は、前記ピストンロッドの縮み行程時、前記シリンダ内への没入が規制される共に前記ピストンロッドの外周面を軸方向に摺動自在なリング状部材であることを特徴とする請求項1に記載の液圧緩衝器。
【請求項3】
前記リング状部材はOリングであることを特徴とする請求項2に記載の液圧緩衝器。
【請求項4】
前記縮み量記録手段は、前記ピストンロッドの縮み行程時、前記シリンダ内への没入が規制される共に前記ピストンロッドの外周面を軸方向に摺動自在なC型リング状部材であることを特徴とする請求項1に記載の液圧緩衝器。
【請求項5】
前記ピストンロッドの前記シリンダ外に突出した側をカバーするロッドカバーを備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液圧緩衝器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−107013(P2010−107013A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282125(P2008−282125)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】