説明

液封止装置

【課題】作動液タンクに接続されているポンプ、シリンダ等のアクチュエータの修理、改造、交換等を簡単かつ短時間に行うことができる液封止装置を提供する。
【解決手段】作動液タンクに配管を介して接続されて作動液タンク内を吸引するものである。作動液タンク内に負圧を生じさせるバキュームポンプ12と、バキュームポンプ12と作動液タンクとの間に配設され、大気圧との差圧を検出する差圧センサ14とを備えている。差圧センサ14は、大気圧との差を検知し適度の負圧を発生させて作動液タンクの液封止を行う。使用時に作動液タンクにはポンプ、シリンダ等のアクチュエータが接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、油圧駆動式のポンプ、シリンダ等のアクチュエータの修理、改造、交換時に使用するのに好適な液封止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は一般に使用されている油圧プレス装置56を示している。この油圧プレス装置56は、プレス本体58に設けられた油圧シリンダ60と、配管62a、62b、62c及び方向切換バルブ64を介して連結された油圧ポンプ66と、配管62d、62eを介して連結された作動油タンク54とから構成されている。この油圧プレス装置56では油圧シリンダ60と作動油タンク54との間で各配管を通じて常時オイルが循環流動している。
【0003】
今、この油圧プレス装置56の油圧ポンプ66が故障したとすると、従来は、先ず、作動油タンク54内のすべてのオイルをドレンプラグ70より抜き取る。次に、図6に示すように、配管62c、62eの接続端部を取り外し、油圧ポンプ66を油圧回路から分離して修理や交換等を行っている。
【特許文献1】特開平10-195960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
作動油タンク54内のすべてのオイルをドレンプラグ70より抜き取る作業は、長時間を要するだけでなく、その作業場がオイルで汚れるおそれがあり、また、その後始末にも手間と時間がかかる。
なお、タンク内の液体を他のタンクなどに移動するのに負圧発生装置を使うことは公知である(特許文献1参照)。しかし、上記のような作動液タンクの液封止を行うために負圧発生装置を使用するというものは公知ではない。
【0005】
本発明は以上の点に着目してなされたもので、作動液タンクに接続されているポンプ、シリンダ等のアクチュエータの修理、改造、交換等を簡単かつ短時間に行うことができる液封止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施例においては次のような構成により上記の課題を解決する。
〈構成1〉
作動液タンクに配管を介して接続されて上記作動液タンク内を吸引するものであって、上記作動液タンク内に負圧を生じさせるバキュームポンプと、上記バキュームポンプと上記作動液タンクとの間に配設され、大気圧との差圧を検出する差圧センサとを備えたことを特徴とする液封止装置。
【0007】
作動液タンクに接続されているポンプ、シリンダ等のアクチュエータの修理、改造、交換等を簡単かつ短時間に行うことができる。差圧センサにより、大気圧との差を検知し適度の負圧を発生させて作動液タンクの液封止を容易に行うことができる。
【0008】
〈構成2〉
構成1に記載の液封止装置において、上記差圧センサと上記作動液タンクとの間に、負圧を制御する負圧レギュレータを、配管を介して配設したことを特徴とする液封止装置。
【0009】
作動液タンク内の負圧を制御することにより、作動液タンクの変形、破損を防止する。
【0010】
〈構成3〉
構成2に記載の液封止装置において、上記負圧レギュレータと上記作動液タンクとの間に、上記作動液タンク内の異物を分離するフィルタを、配管を介して配設したことを特徴とする液封止装置。
【0011】
バキュームポンプ、負圧レギュレータへの異物の混入を防止し、あるいは異物による誤動作を防止する。
【0012】
〈構成4〉
構成2又は3に記載の液封止装置において、上記負圧レギュレータは、大気吸入ポートと上記バキュームポンプに連通された排気ポートとを備えたハウジング内に、ばね部材により支承され、かつ上記大気吸入ポートと上記排気ポートとの間を往復動する可動弁体により隔成された2つの圧力室を設け、上記排気ポートからの吸引による負圧に基づき上記2つの圧力室に圧力差を生じさせて上記可動弁体を、上記ばね部材のばね力に抗して上記排気ポートを閉塞する方向へ動作するように構成されたことを特徴とする液封止装置。
【0013】
負圧レギュレータにより、作動液タンクの漏れを防止する負圧を常時保持できる。
【0014】
〈構成5〉
構成4に記載の液封止装置において、上記排気ポートは、上記可動弁体の移動方向に適当間隔を置いて複数設けられていることを特徴とする液封止装置。
【0015】
排気ポートが複数設けられていることにより、可動弁体が排気ポートからの吸引力により固定することを防止すると共に、可動弁体の動きをスムーズにする。
【0016】
〈構成6〉
構成4又は5に記載の液封止装置において、上記ばね部材としてコイルばねが使用され、上記可動弁体は、上記コイルばねの一端に支承されるとともに、上記コイルばねの軸心に配置された伸縮支柱の一端に支承されていることを特徴とする液封止装置。
【0017】
〈構成7〉
構成6に記載の液封止装置において、上記コイルばねの他端は、上記ハウジングに螺合されたねじ板に支承されていることを特徴とする液封止装置。
【0018】
ねじ板を回動することにより、コイルばねのばね力を適時調整できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を実施例ごとに詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は実施例1の液封止装置を示す概略図である。
図において、実施例1の液封止装置は、負圧を生じさせるバキュームポンプ12と、大気圧との差圧を検出する差圧センサ14と、負圧を制御する負圧レギュレータ16と、気中の異物を分離するフィルタ18と、負圧ゲージ22と、吸引口アタッチメント24とを備えている。
【0021】
バキュームポンプ12と差圧センサ14とは配管20と配管24により連結されている。バキュームポンプ12と差圧センサ14と負圧レギュレータ16とは配管20と配管25により連結されている。配管20にはフィルタ18の一方の出口が連結されている。
【0022】
フィルタ18の他方の出口には配管28を介して負圧ゲージ22と吸引口アタッチメント24aとが連結されている。吸引口アタッチメント24aは、液封止装置の使用時に、例えば、後述する作動液タンク54(図4)の上面開口に連結される。異種の作動液タンクの上面開口の口径等の寸法に対応できるように、数種の吸引口アタッチメント24b、24cが用意されていることが好ましい。また、吸引口アタッチメント24aを作動液タンク54の上面開口に連結し易くするために、配管28の一部を、ゴム管等のフレキシブル管としてもよい。
【0023】
バキュームポンプ12は周知構成の真空ポンプである。差圧センサ14は吸引側の配管20内と大気側の配管24内の差圧を検出する、周知構成のセンサである。負圧レギュレータ16は、差圧センサと作動液タンクとの間に配設されて負圧を制御するものである。図2に負圧レギュレータ16の構成と作動状況を示している。
【0024】
負圧レギュレータ16は、図2(a)に示すように構成されている。すなわち、円筒状のハウジング30内に、ばね部材32により支承された可動弁体34を備えている。ハウジング30の一端部に大気吸入ポート26が設けられている。中間部の側面に、配管25に連なる2つの排気ポート、すなわち、A排気ポート25aとB排気ポート25bとが設けられている。
【0025】
大気吸入ポート26には管体を介して大気フィルタ27が接続されている。ハウジング30の他端部に、外周面にねじ溝を穿った円形のねじ板42が螺合されている。ねじ板42を回動することにより、ハウジング30内に進入あるいは退出してコイルばね32のばね力を適時微調整できる。
【0026】
ばね部材32としてコイルばねが使用されている。可動弁体34は、コイルばねの一端に非接着状態で支承されるとともに、コイルばねの軸心に配置された伸縮支柱40の一端に固着されている。伸縮支柱40は、伸縮式ロッドアンテナのように、嵌入可能な軸体40aと管体40bとを組み合わせて構成したもので、軸体40aの下端部がねじ板42の中心部に固着され、管体40bの上端部が可動弁体34に固着されている。伸縮支柱40は軸体40aが管体40bに出入りすることにより伸縮する。
【0027】
円筒状のハウジング30内には、可動弁体34により隔成された2つの圧力室36、38が設けられている。可動弁体34は大気吸入ポート26とB排気ポート25bとの間を往復動するが、伸縮支柱40によって支えられてスムーズに動く。2つの排気ポート25a、25bは、可動弁体34の移動方向(図中、上下方向)に適当間隔を置いて設けられ、端部を2つに分岐した構造の配管25にそれぞれ連通している。
【0028】
次に、負圧レギュレータ16の作動状況につき説明する。
図2(a)は無作動状態を示している。この状態から大気吸入ポート26より吸引を開始すると、2つの圧力室36、38に、排気ポート28からの吸引による負圧に基づき圧力差を生じさせて可動弁体34を、ばね部材32のばね力に抗してA排気ポート25aを閉塞する方向へ移動させる。すなわち、図2(b)に示すように可動弁体34が排気ポート25aを封止した状態となる。
【0029】
さらに、吸引力が増すと、図2(c)に示すように可動弁体34がA排気ポート25aとB排気ポート25bとの間に位置した状態となる。この状態で、A排気ポート25aが大気に開き吸引力が弱まる。B排気ポート25bからも吸引し、コイルばね32のばね力とのバランスを保つ。
【0030】
A排気ポート25aが解放され、B排気ポート25bが吸引停止すると、大気吸引となる。この状態から、さらに吸引力が低下すると、図2(d)に示すように可動弁体34が排気ポート25bの下方に位置した状態となる。しかし、可動弁体34よりもB排気ポート25bの寸法を大きめにしておくことにより、B排気ポート25bが完全に閉じることがなく、可動弁体34がB排気ポート25bに吸引固着することがない。
なお、実施例1の液封止装置の使用時に、負圧レギュレータ16は図2の(b)から(d)に示す範囲で動作する。
【0031】
図3はフィルタ18を拡大して示す概略図である。
図示するように、フィルタ18は、2本の円筒体18aの中に、それぞれ濾過材18bと逆流防止バルブ18cを直列に配設したものを使用している。濾過材18bとしては、バキュームポンプ12、負圧レギュレータ16への異物の混入を防止しうる周知の濾過材料が使用されている。逆流防止バルブ18cは、円筒体18aの一端開口部を閉塞できるボール18dと、このボール18dを同開口部に押し付けるコイルばね18eとから構成されている。
【0032】
フィルタ18は、2本の円筒体18aが互いに逆向きに並べて両端部に連通されると共に、配管20と28にそれぞれ連結されている。フィルタ18内の気体は、2本の円筒体18aをそれぞれ片側通行で流れる。すなわち、内部吸引時には矢印19a方向に流れ、同大気吸引時には矢印19b方向に流れる。このようにして、フィルタ18は、バキュームポンプ12、負圧レギュレータ16への異物の混入を防止し、あるいは異物による誤動作を防止する。
【0033】
図4は上記液封止装置の使用状態を示す概略図である。図5に示した部分と共通する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
例えば、図5に示したものと同一構造の油圧プレス装置56を修理する時に使用される。この油圧プレス装置56における油圧ポンプ66が故障したとすると、本発明の液封止装置を、先ず油圧プレス装置56の作動液タンク54に接続する。すなわち、配管28の先端を、吸引口アタッチメント24aを介して作動液タンク54の上面開口に連結する。
【0034】
次いで、バキュームポンプ12を動作して作動液タンク54内を吸引する。この吸引により、作動液タンク54内に負圧が発生し、作動液タンク54に連通されている油圧プレス装置56の油圧回路を液封状態とする。この状態のもとで、配管62c、62eの接続端部を取り外し、油圧ポンプ66を油圧回路から分離して修理や交換等を行うものである。同様の状態において油圧プレス装置56の他の箇所の修理等も可能である。このため、作動液タンク54に接続されているポンプ、シリンダ等のアクチュエータの修理、改造、交換等を簡単かつ短時間に行うことができる。
【0035】
なお、本発明の液封止装置は、油圧シリンダ60、油圧ポンプ66などの油圧駆動式のアクチュエータの作動液タンク54に限られず、その他の液圧回路を備えた機械、装置の作動液タンクにも連結して使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1の液封止装置を示す概略図である。
【図2】同実施例で使用する負圧レギュレータの説明図である。
【図3】同実施例で使用するフィルタの説明図である。
【図4】同実施例の使用状況の説明図である。
【図5】油圧シリンダ、油圧ポンプなどの油圧駆動式のアクチュエータを備えた油圧プレス装置の説明図である。
【図6】同油圧プレス装置の従来の修理方法の説明図である。
【符号の説明】
【0037】
12 バキュームポンプ
14 差圧センサ
16 負圧レギュレータ
18 フィルタ
20、24、28 配管
22 負圧ゲージ
24a、24b、24c 吸引口アタッチメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動液タンクに配管を介して接続されて前記作動液タンク内を吸引するものであって、
前記作動液タンク内に負圧を生じさせるバキュームポンプと、
前記バキュームポンプと前記作動液タンクとの間に配設され、大気圧との差圧を検出する差圧センサとを備えたことを特徴とする液封止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液封止装置において、
前記差圧センサと前記作動液タンクとの間に、負圧を制御する負圧レギュレータを配管を介して配設したことを特徴とする液封止装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液封止装置において、
前記負圧レギュレータと前記作動液タンクとの間に、前記作動液タンク内の異物を分離するフィルタを、配管を介して配設したことを特徴とする液封止装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の液封止装置において、
前記負圧レギュレータは、大気吸入ポートと前記バキュームポンプに連通された排気ポートとを備えたハウジング内に、ばね部材により支承され、かつ前記大気吸入ポートと前記排気ポートとの間を往復動する可動弁体により隔成された2つの圧力室を設け、前記排気ポートからの吸引による負圧に基づき前記2つの圧力室に圧力差を生じさせて前記可動弁体を、前記ばね部材のばね力に抗して前記排気ポートを閉塞する方向へ動作するように構成されたことを特徴とする液封止装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液封止装置において、
前記排気ポートは、前記可動弁体の移動方向に適当間隔を置いて複数設けられていることを特徴とする液封止装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の液封止装置において、
前記ばね部材としてコイルばねが使用され、
前記可動弁体は、前記コイルばねの一端に支承されるとともに、前記コイルばねの軸心に配置された伸縮支柱の一端に支承されていることを特徴とする液封止装置。
【請求項7】
請求項6に記載の液封止装置において、
前記コイルばねの他端は、前記ハウジングに螺合されたねじ板に支承されていることを特徴とする液封止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−88950(P2008−88950A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273513(P2006−273513)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(506336681)有限会社エヌビー工業 (2)
【Fターム(参考)】