説明

液晶シャッタ

【課題】ベンド配列からスプレイ配列への転移を制御した高品質の液晶シャッタを提供する。
【解決手段】実施形態によれば、第1シャッタ部を備えた液晶シャッタが提供される。第1シャッタ部は、第1透明電極を含む第1基板部と、第1透明電極に対向する第2透明電極を含む第2基板部と、第1透明電極と第2透明電極との間に設けられた第1液晶層と、を含む。第1液晶層は、第1スイッチング領域において、スプレイ配列とベンド配列とのスイッチングする。第1液晶層は、第1スイッチング領域の中の複数の第1核領域において、第1スイッチング領域よりもスプレイ配列が安定である。第1基板部は、第1核領域を第1液晶層に形成する複数の第1核領域形成部を有する。複数の第1核領域形成部のそれぞれについて、最も近い第1核領域形成部までの距離は、500マイクロメートル以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液晶シャッタに関する。
【背景技術】
【0002】
娯楽、教育、放送、医療などの分野において、立体視システムの実用化が進んでいる。立体視システムにおいては、例えば、左右眼の視差に対応した左眼用像と右眼用像とが、左右眼にそれぞれ時分割で呈示される。このための高速応答のシャッタに、液晶が用いられる。
【0003】
例えば、右目用領域と左目用領域とを有する液晶セルを用いたシャッターメガネを用いる立体映像表示装置がある。この液晶セルの液晶層に、ツイステッドネマティック液晶やスーパーツイステッドネマティック液晶を用いた場合は、応答速度が不十分である。また、強誘電性液晶を用いた場合は、耐ショック性や温度特性などの信頼性に関して改善を要する。
【0004】
一方、πセルを応用したOCB(Optically Compensated Bend)モード液晶がある。OCBモードにおいては、液晶のベンド配列を利用することで、高速応答が得られる。また、ネマティック液晶を用いることから信頼性が高い。
【0005】
OCBモードにおいては、初期のスプレイ配列からベンド配列に転移させる初期化処理の後に動作させる。そして、電源オフ時には、ベンド配列からスプレイ配列に戻る。このような配列の転移を制御することが液晶シャッタの品質の向上のために重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−327961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施形態は、ベンド配列からスプレイ配列への転移を制御した高品質の液晶シャッタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態によれば、第1シャッタ部を備えた液晶シャッタが提供される。前記第1シャッタ部は、第1透明電極を含む第1基板部と、前記第1透明電極に対向する第2透明電極を含む第2基板部と、前記第1透明電極と前記第2透明電極との間に設けられた第1液晶層と、を含む。前記第1液晶層は、第1スイッチング領域において、前記第1透明電極と前記第2透明電極との間の電位差が第1電圧に設定されたときにスプレイ配列となり、前記第1透明電極と前記第2透明電極との間の電位差が前記第1電圧よりも実効値が大きい第2電圧に設定されたときにベンド配列となる。前記第1液晶層は、前記第1スイッチング領域の中の複数の第1核領域において、前記第1スイッチング領域よりもスプレイ配列が安定である。前記第1基板部は、前記第1核領域を前記第1液晶層に形成する複数の第1核領域形成部を有する。前記複数の第1核領域形成部のそれぞれについて、最も近い前記第1核領域形成部までの距離は、500マイクロメートル以下である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に係る液晶シャッタの構成を例示する模式的斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る液晶シャッタが用いられる表示システムの構成を例示する模式図である。
【図3】第1の実施形態に係る液晶シャッタの構成を例示する模式的断面図である。
【図4】図4(a)〜図4(c)は、第1の実施形態に係る液晶シャッタの動作を例示する模式的断面図である。
【図5】図5(a)〜図5(c)は、第1の実施形態に係る液晶シャッタの構成を例示する模式的平面図である。
【図6】第1の実施形態に係る別の液晶シャッタの構成を例示する模式的斜視図である。
【図7】第1の実施形態に係る別の液晶シャッタの構成を例示する模式的断面図である。
【図8】図8(a)〜図8(c)は、第1の実施形態に係る別の液晶シャッタの動作を例示する模式的断面図である。
【図9】第1の実施形態に係る別の液晶シャッタの構成を例示する模式的平面図である。
【図10】第2の実施形態に係る液晶シャッタの構成を例示する模式的斜視図である。
【図11】第2の実施形態に係る別の液晶シャッタの構成を例示する模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0011】
(第1の実施の形態)
以下、実施形態に係る液晶シャッタについて、液晶シャッタが、立体視が可能な表示システムの眼鏡に用いられる場合を例にして説明する。
【0012】
図1は、第1の実施形態に係る液晶シャッタの構成を例示する模式的斜視図である。
図2は、第1の実施形態に係る液晶シャッタが用いられる表示システムの構成を例示する模式図である。
まず、図2により、本実施形態に係る液晶シャッタが用いられる立体視が可能な表示システムの概要について説明する。
【0013】
図2に表したように、表示システム11は、ディスプレイ13(表示部)と、液晶シャッタ眼鏡12と、を備える。表示システム11は、3次元表示モードを有している。3次元表示モードにおいては、視差に対応する左眼用像と右眼用像とが表示される。この左眼用像と右眼用像とを、観視者が3次元映像として観視する。なお、表示システム11は、2次元表示モードを有していても良い。2次元表示モードにおいては、ディスプレイ13に表示された像を、観視者が2次元映像として観視する。以下、3次元表示モードについて説明する。
【0014】
ディスプレイ13は、表示面13dを有する。この表示面13dに、左眼用像と右眼用像とに対応した画像が交互に切り替えて表示される。例えば、ディスプレイ13には、OCBモードで動作するアクティブマトリクス型液晶ディスプレイが用いられる。ディスプレイ13は、マトリクス状に配置された複数の画素を有する。例えば、デジタル信号処理により、例えばフィールド周波数を120Hzに変換して、表示が行われる。
【0015】
液晶シャッタ眼鏡12は、第1シャッタ部101及び第2シャッタ部102を有する。第1シャッタ部101及び第2シャッタ部102のそれぞれは、観視者の左眼及び右眼にそれぞれ対向して配置される。観視者は、第1シャッタ部101及び第2シャッタ部102を介して、ディスプレイ13の表示像を観視する。液晶シャッタ眼鏡12においては、時分割シャッタ動作が行われる。ディスプレイ13の表示に同期して、第1シャッタ部101及び第2シャッタ部102が交互に透光状態及び遮光状態となる。
【0016】
なお、第1シャッタ部101及び第2シャッタ部102は、相互に別体として設けられても良い。また、第1シャッタ部101及び第2シャッタ部102は一体的に連続していても良い。例えば、1つの基板の上に、2つの電極が設けられ、2つの電極のそれぞれが、第1シャッタ部101または第2シャッタ部102のそれぞれに含まれても良い。
【0017】
表示システム11においては、左眼用像と右眼用像とを時分割的に観視する方式が適用される。例えば、ディスプレイ13は、左眼及び右眼に対応した画像をフィールドごとに交互に切り替えて表示する。この時、ディスプレイ13に左眼用画像が表示されている期間においては、左眼用のシャッタ部が透光状態とされ、右眼用のシャッタ部が遮光状態とされる。そして、ディスプレイ13に右眼用画像が表示されている期間において、右眼用のシャッタ部が透光状態とされ、左眼用のシャッタ部が遮光状態とされる。
【0018】
例えば、表示システム11は、制御部14をさらに有することができる。シャッタ部の動作は、例えば、制御部14によって行われる。ただし、制御部14の機能は、ディスプレイ13及び液晶シャッタ眼鏡12のいずれかに含まれても良い。制御部14とディスプレイ13との間の信号の授受、制御部14と液晶シャッタ眼鏡12との間の信号の授受、及び、ディスプレイ13と液晶シャッタ眼鏡12との間の信号の授受は、有線または無線の方式によって行われる。
【0019】
表示システム11においては、左眼用画像を左眼で観視し、右眼用画像を右眼で観視することで、立体的な映像を知覚できる。
【0020】
図1に表したように、実施形態に係る液晶シャッタ100は、第1シャッタ部101を備える。第1シャッタ部101は、第1基板部110aと、第2基板部120aと、第1液晶層130aと、を含む。液晶シャッタ100は、第2シャッタ部をさらに備えることができる。第2シャッタ部の構成は、第1シャッタ部101の構成と同様にすることができる。以下では、第1シャッタ部101について説明する。
【0021】
第1基板部110aは、第1透明電極112aを含む。
第2基板部120aは、第2透明電極122aを含む。第2透明電極122aは、第1透明電極112aに対向する。第1透明電極112aと第2透明電極122aとに駆動部330が接続される。駆動部330により、第1透明電極112aと第2透明電極122aとの間に電圧(電位差Va)が印加される。
【0022】
第1液晶層130aは、第1透明電極112aと第2透明電極122aとの間に設けられる。
第1液晶層130aにおいて、第1スイッチング領域133aが設けられる。第1スイッチング領域133aは、第1透明電極112aと第2透明電極122aとが互いに対向し、第1液晶層130aに電圧が印加される領域を含む。
【0023】
第1液晶層130aは、第1スイッチング領域133aにおいて、第1透明電極112aと第2透明電極122aとの間の電位差Vaが第1電圧に設定されたときにスプレイ配列となる。そして、第1透明電極112aと第2透明電極122aとの間の電位差が第1電圧よりも実効値が大きい第2電圧に設定されたときにベンド配列となる。後述するように、第1電圧は0ボルト(V)を含む。
【0024】
図1では、分かり易いように、第1基板部110aと、第1液晶層130aと、第2基板部120aと、が、互いに離れて描かれているが、第1基板部110aと第1液晶層130aとは互いに接しており、第1液晶層130aと第2基板部120aとは互いに接している。
【0025】
第1液晶層130aにおいて、第1スイッチング領域133aの中に点在する複数の第1核領域134aが形成される。第1液晶層130aは、第1核領域134aにおいて、第1スイッチング領域133aよりもスプレイ配列が安定である。
【0026】
第1基板部110a(第1基板部110a及び第2基板部120aの少なくともいずれかでも良い)は、複数の第1核領域形成部114aを有する。
【0027】
複数の第1核領域形成部114aは、第1核領域134aを第1液晶層130aに形成する。
【0028】
実施形態に係る液晶シャッタ100においては、複数の第1核領域形成部114aのそれぞれについて最も近い第1核領域形成部114aまでの距離(間隔)は、500マイクロメートル(μm)以下である。
【0029】
例えば、複数の第1核領域形成部114aは、複数の柱状スペーサを含むことができる。ただし、第1核領域形成部114aは、後述するように、柱状スペーサ以外でも良い。以下、第1核領域形成部114aが柱状スペーサである場合について説明する。
【0030】
図3は、第1の実施形態に係る液晶シャッタの構成を例示する模式的断面図である。
すなわち、同図は、図1のA1−A2線断面に相当する断面図である。
図3に表したように、第1基板部110aは、第1透明電極112aに加え、第1支持基板111aと、第1配向膜113aと、複数の柱状スペーサ117と、をさらに含む。第1支持基板111aの上に第1透明電極112aが設けられる。第1透明電極112aの上に複数の柱状スペーサ117が設けられる。第1透明電極112aと複数の柱状スペーサ117とを覆うように、第1配向膜113aが設けられる。
【0031】
第2基板部120aは、第2透明電極122aに加え、第2支持基板121aと、第2配向膜123aと、をさらに含む。第2支持基板121aの上に第2透明電極122aが設けられる。第2透明電極122aの上に第2配向膜123aが設けられる。
【0032】
なお、柱状スペーサ117は、第2基板部120aに設けられても良い。また、柱状スペーサ117は、第1基板部110a及び第1基板部120aの両方に設けられても良い。
【0033】
第1シャッタ部101は、第1基板部110aと第2基板部120aとの間において、第1液晶層130aを囲むシール部180をさらに備えることができる。
【0034】
第1シャッタ部101は、第1偏光板160aと、第1光学補償板140aと、第2偏光板170aと、第2光学補償板150aと、をさらに含むことができる。第1偏光板160aと第2偏光板170aとの間に第1基板部110a及び第2基板部120aが配置される。第1偏光板160aと第2基板部120aとの間に第1基板部110aが配置される。第2偏光板170aと第1基板部110aとの間に第2基板部120aが配置される。第1偏光板160aと第1基板部110aとの間に第1光学補償板140aが配置される。第2偏光板170aと第2基板部120aとの間に第2光学補償板150aが配置される。
【0035】
第1支持基板111a及び第2支持基板121aは、透光性である。第1支持基板111a及び第2支持基板121aには、例えばガラスや樹脂などが用いられる。
【0036】
第1透明電極112a及び第2透明電極122aには、液晶シャッタ100において透光及び遮光の動作の対象となる光に対して透光性の導電材料が用いられる。液晶シャッタ100が、例えば液晶シャッタ眼鏡12に用いられる場合には、第1透明電極112a及び第2透明電極122aは、可視光に対して透光性である。第1透明電極112a及び第2透明電極122aには、例えばITO(Indium Tin Oxide)やZnOなどを用いることができる。
【0037】
第1配向膜113a及び第2配向膜123aには、例えばポリイミドを用いることができる。このポリイミド膜には、例えばラビング処理が施される。第1配向膜113aのラビング方向は、第2配向膜123aにおけるラビング方向と、実質的に平行である。第1配向膜113aのラビング方向は、第2配向膜123aにおけるラビング方向と、実質的に同じ向きである。
【0038】
第1液晶層130aにはネマティック液晶が用いられる。第1配向膜113a及び第2配向膜123aの機能により、第1基板部110a及び第2基板部120aの近傍における第1液晶層130aの液晶分子は高いプレチルト角を有する。これにより、第1液晶層130aは、初期状態(電圧が印加されない状態)においてスプレイ配列状態である。電圧印加状態で、ベンド配列状態に転移する。第1シャッタ部101(液晶シャッタ100)は、OCBモードで動作する。
【0039】
第1光学補償板140a及び第2光学補償板150aには、例えば、ディスコティック液晶化合物をハイブリッド配向させた光学異方性層を含む二軸性のフィルム等を用いることができる。
【0040】
複数の柱状スペーサ117は、例えば、第1透明電極112aの上に設けられる。柱状スペーサ117は、第1透明電極112aと第2透明電極122aとの間の距離を制御する。すなわち、柱状スペーサ117は、第1配向膜113aと第2配向膜123aとの間隔を制御する。柱状スペーサ117は、第1液晶層130aの厚さを制御する。なお、第1配向膜113aは、柱状スペーサ117を覆わなくても良い。
【0041】
ここで、第1基板部110aから第1基板部120aに向かう方向をZ軸方向とする。Z軸に対して垂直な1つの軸をX軸とする。Z軸とX軸とに対して垂直な軸をY軸とする。
【0042】
第1液晶層130aの厚さは、例えば、3μm以上8μm以下である。第1配向膜113a及び第2配向膜123aの厚さを無視すると、柱状スペーサ117の高さ(Z軸に沿った厚さ)は、第1液晶層130aの厚さに相当する。柱状スペーサ117の高さは、例えば3μm以上8μm以下である。
【0043】
図4(a)〜図4(c)は、第1の実施形態に係る液晶シャッタの動作を例示する模式的断面図である。
これらの図において、第1配向膜113a及び第2配向膜123aは省略されている。
図4(a)は電源オフ時(第1電圧V1印加時)の状態に対応する。第1電圧V1は、例えば0Vである。図4(b)は、電源オン時のベンド配列状態において第1ベンド電圧VB1を印加した時の状態に対応する。図4(c)は、ベンド配列状態において第1ベンド電圧VB1よりも実効値が大きい第2ベンド電圧VB2を印加した時の状態に対応する。
【0044】
図4(a)に表したように、電源オフ時において、第1液晶層130aの液晶分子130lの配列は、スプレイ配列状態である。
【0045】
そして、液晶シャッタ100において、電源を投入し、初期化処理が行われる。初期化処理においては、所定の転移電圧(ベンド配列に転移させる第2電圧V2)を第1液晶層130aに印加する。これにより、第1液晶層130aのうちの第1スイッチング領域133aの配列状態が、スプレイ配列からベンド配列に転移する。
【0046】
これにより、図4(b)及び図4(c)に表したように、第1スイッチング領域133aにおいては、第1液晶層130aはベンド配列状態となる。
【0047】
第1電圧V1は、例えば0Vである。
第2電圧V2は、スプレイ配列からベンド配列に転移するためのしきい値電圧以上の任意の電圧である。第2電圧V2は、動作時に直流電圧が残存しないよう、正負交番電圧であることが望ましい。スプレイ配列からベンド配列に速やかに転移させるために、第2電圧V2には、実効値が比較的大きい電圧が用いられる。第2電圧V2の絶対値(例えば実効値)は、例えば、10V〜30Vである。ただし、第2電圧V2の値は、しきい値電圧以上であれば任意である。第2電圧V2の実効値が大きいと、スプレイ配列からベンド配列へ速やかに転移する。具体的には、第2電圧V2には、例えば、+15Vで数百ミリ秒(ms)程度の正極性パルスと、−15Vで数百ミリ秒程度の負極性パルスと、の組み合わせ、を用いることができる。このような第2電圧V2の印加によって第1スイッチング領域133aは、例えば1〜2秒程度で、スプレイ配列からベンド配列に転移する。なお、スプレイ配列からベンド配列への転移の時間は、環境温度にも依存する。
【0048】
ベンド配列状態において、例えば第1ベンド電圧VB1を印加した状態(図4(b)の状態)と、例えば第2ベンド電圧VB2を印加した状態(図4(c)の状態)と、のスイッチングが行われる。例えば、第1ベンド電圧VB1は、0Vである。第2ベンド電圧VB2は、例えば±10Vである。
【0049】
液晶シャッタ100の動作中は、第1スイッチング領域133aの液晶分子130lの配向状態はベンド配列に維持される。そして、このベンド配列の液晶分子130lに印加される電圧を変化させると配列状態が変化する。この配列状態の変化に対応して、第1液晶層130aのリタデーションが変化する。第1偏光板160a及び第2偏光板170aを用いることで、このリタデーションの変化に応じた透光状態及び遮光状態が得られる。
【0050】
例えば、第1ベンド電圧VB1を印加した時に、液晶シャッタ100は透光状態となり、第2ベンド電圧VB2を印加した時に液晶シャッタ100は遮光状態となる。または、第1ベンド電圧VB1を印加した時に遮光状態となり、第2ベンド電圧VB2を印加した時に透光状態としても良い。
【0051】
液晶シャッタ100が液晶シャッタ眼鏡12に応用される場合は、第1シャッタ部101と第2シャッタ部102とは、交互に透光状態と遮光状態とを繰り返す。例えば、第1シャッタ部101は、奇数フィールドでは遮光状態であり、偶数フィールドでは透光状態である。一方、第2シャッタ部102は、奇数フィールドでは透光状態であり、偶数フィールドでは遮光状態である。
【0052】
例えば、第1シャッタ部101においては、第1フィールドでは、第1液晶層130aに+10Vの電圧(第2ベンド電圧VB2)が印加されて遮光状態とされる。次の第2フィールドでは、第1液晶層130aの印加電圧が0V(第1ベンド電圧VB1)にされ、透光状態とされる。次の第3フィールドでは、第1液晶層130aに−10Vの電圧(第2ベンド電圧VB2)が印加され、遮光状態とされる。次の第4フィールドでは、第1液晶層130aの印加電圧が0V(第1ベンド電圧VB1)にされ、透光状態とされる。
【0053】
また、第2シャッタ部102においては、第1シャッタ部101に対して、奇数フィールドと偶数フィールドとが入れ替わった電圧が印加される。
【0054】
このように、駆動時において第1液晶層130aには正負交番電圧が印加される。これにより、焼き付きなどを防止することができる。なお、1つのフィールドの期間において、交流電圧を印加しても良い。例えば、バースト信号状の波形が印加されても良い。バースト信号状の波形においては、例えば、奇数フィールドにおいてフィールド周期に相当する周波数よりも高い周波数の±10Vの高周波電圧が印加され、偶数フィールドにおいて、印加電圧が例えば0Vにされる。
【0055】
なお、印加電圧が低い状態(例えば0V)が、一定の期間以上続くと、ベンド配列からスプレイ配列に戻る。上記のように、液晶シャッタ100を液晶シャッタ眼鏡12に応用する場合は、動作中は短い周期でオンとオフとが切り替えられる。このため、長期間にわたり低電圧状態が維持されることがない。これにより、ベンド状態が維持される。また、第1透明電極112aと第2透明電極122aとの間の電圧が、一定以上長い期間、低い値にならないように、定期的にしきい値電圧以上の電圧を、第1透明電極112aと第2透明電極122aとの間に印加しても良い。
【0056】
このように、液晶シャッタ100は、πセル(スプレイ配列セル)に基づくOCBモードで動作する。πセルにおいて、電源オフ時(印加電圧を零にする動作時)に、第1液晶層130aの液晶配列はベンド配列から初期のスプレイ配列に戻る。このベンド配列からスプレイ配列への転移は、液晶の弾性と、液晶が接する界面(第1配向膜113a及び第2配向膜123aなどとの界面)における配向規制力と、によって行われる。すなわち、印加電圧などの外力を用いない。このため、ベンド配列からスプレイ配列への転移は、制御が困難である。従って、ベンド配列からスプレイ配列への転移は、第1液晶層130aの面内において不均一に進行し易い。
【0057】
液晶シャッタにおいて、ベンド配列状態からスプレイ配列状態への転移(逆転移)の際には、ベンド配列領域とスプレイ配列領域とがシミ状のむらとなって長時間(例えば、約3分)にわたり視認されることがあることが分かった。
【0058】
液晶シャッタを表示システム11に用いられる液晶シャッタ眼鏡12に応用した場合に、このシミ状のむらにより品質が低下し、大きな問題になることを見出した。すなわち、ベンド配列からスプレイ配列への転移が液晶シャッタの面内で不均一に生じると、配列の異なる領域がシミ状に見えてしまい、液晶シャッタの品質が低下する。特に、電源オフ時の配列の転移は、電気信号などの外力を用いないため、制御が困難である。
【0059】
実施形態においては、第1スイッチング領域133aよりもスプレイ配列が安定な第1核領域134aが利用される。これにより、ベンド配列状態からスプレイ配列状態への転移が制御でき、速やかに完了する。
【0060】
第1核領域134aを形成するための複数の第1核領域形成部114aが、第1基板部110a(第1基板部110a及び第2基板部120aの少なくともいずれかでも良い)に設けられる。
【0061】
すなわち、図4(a)〜図4(c)に例示したように、柱状スペーサ117の近傍に(または接して)、第1核領域134aが形成される。図4(b)及び図4(c)に表したように、例えば、第1核領域134aにおいては、第1透明電極112a及び第2透明電極122aの間に、第2電圧V2(ベンド配列に転移する電圧)、第1ベンド電圧VB1、及び、第2ベンド電圧VB2を印加した場合においても、スプレイ配列が維持される。すなわち、第1核領域134aにおいては、スプレイ配列からベンド配列への転移が発生し難い。
【0062】
これらの図においては、第1核領域134aは、柱状スペーサ117の周りに形成されているが、第1核領域134aは、柱状スペーサ117の一部の近傍に(または接して)形成されても良い。
【0063】
柱状スペーサ117の近傍に(または接して)第1核領域134aが形成されるのは、柱状スペーサ117により、柱状スペーサ117の近傍の(または接する)部分において液晶の配向性が乱されるためと考えられる。このように、柱状スペーサ117は、第1核領域134aを形成する第1核領域形成部114aとして機能する。
【0064】
液晶シャッタ100において、電源オフ時には、例えば、第1透明電極112aと第2透明電極122aとの間の電圧を所定時間(例えば1秒間)0Vにして蓄積された電荷を解放した後に電源を遮断する。これにより、第1スイッチング領域133aにおける液晶分子130lの配列状態は、ベンド配列からスプレイ配列に徐々に転移する。このとき、もし第1核領域134aが形成されていない場合は、この配列の転移には非常に長い時間がかかる。
【0065】
第1核領域形成部114a(柱状スペーサ117)に対応する第1液晶層130a(第1核領域134a)においては、例えば、局所的にスプレイ配列を維持している。このため、電源オフ時において、第1核領域134a(第1核領域形成部114a)のそれぞれを起点として、第1スイッチング領域133aの第1液晶層130aが、ベンド配列からスプレイ配列へ転移する。
【0066】
そして、実施形態においては、複数の第1核領域形成部114aどうしの間隔が一定(500μm)以下に設定されている。例えば、間隔が500μmであり、転移の進行する速度が等方的である場合は、例えば第1核領域134a(第1核領域形成部114a)のそれぞれを起点とした転移の領域が250μm拡大すると、第1シャッタ部101の全面における転移が完了することになる。本実施形態の構成によれば、液晶シャッタ100(第1シャッタ部101)の全面におけるベンド配列からスプレイ配列への転移に要する時間は4秒以下と、転移は非常に速い。そして、転移は、面内で均一に進むため、シミ状のむらは知覚され難い。
【0067】
例えば、第1核領域形成部114aを設けない参考例の場合には、液晶シャッタの全面におけるベンド配列からスプレイ配列への転移に例えば約3分間を要する。このため、配列の異なる領域がシミ状に見えてしまい品位が低下する。
【0068】
これに対し、実施形態においては、液晶シャッタ100の全面におけるベンド配列からスプレイ配列への転移が速やかに完了する。これにより、品位が高い。このように、実施形態によれば、ベンド配列からスプレイ配列への転移が制御される。これにより、むらを抑制した高品位の液晶シャッタが得られる。
【0069】
発明者の実験によると、電源オフ時において、1つの第1核領域形成部114a(第1核領域134a)を起点としたベンド配列からスプレイ配列への転移領域の拡大の速度は、約10μm/s(マイクロメートル/秒)〜約300μm/sである。
【0070】
2つの第1核領域形成部114aどうしの間において、1つ目の第1核領域形成部114aを起点とする転移領域の拡大の速度と、2つ目の第1核領域形成部114aを起点ととる転移領域の拡大の速度と、が同じであるとする。このとき、転移の完了に要する時間は、第1核領域形成部114aどうしの間の距離の1/2の距離の領域の転移が完了する時間に相当する。
【0071】
例えば、転移領域の拡大の速度が300μm/sである場合において、第1核領域形成部114aどうしの間隔が500μm以下であるときには、0.83s以下で転移が完了する。
【0072】
例えば、転移領域の拡大の速度が50μm/sである場合において、第1核領域形成部114aどうしの間隔が500μm以下であるときには、5s以下で転移が完了する。
【0073】
もし、ベンド配列からスプレイ配列への転移が5sで完了する場合には、スプレイ配列領域とベンド配列領域との境界は、目に見える速度で移動する。このため、これらの境界がシミ状のむらとして観察された場合においても、このシミ状のむらは次第に消滅するものと知覚される。すなわち、故障であるとは知覚されない。
【0074】
これに対し、もし、ベンド配列からスプレイ配列への転移に約3分を要する場合は、スプレイ配列領域とベンド配列領域との境界は、移動しているようには知覚され難い。このため、これらの境界がシミ状のむらとして観察されると、シミ状のむらは固定化されていると知覚される。これにより、品位が低下する。場合によっては、故障したと知覚される。
【0075】
実施形態においては、第1核領域形成部114aどうしの間隔を適切に設定することで、液晶シャッタの全面において、ベンド配列からスプレイ配列への転移を速やかに完了させる。そして、転移が面内で均一に進む。これにより、むらを抑制した高品位の液晶シャッタが得られる。
【0076】
なお、ベンド配列からスプレイ配列への転移領域の拡大の速度は、温度、プレチルト角、及び、液晶の粘性などに依存する。これらを考慮して、第1核領域形成部114aどうしの間隔は適切に設定される。
【0077】
図5(a)〜図5(c)は、第1の実施形態に係る液晶シャッタの構成を例示する模式的平面図である。
図5(a)に表したように、実施形態に係る液晶シャッタ100においては、複数の柱状スペーサ117が、X軸及びY軸に沿って配列している。例えば、柱状スペーサ117どうしのX軸に沿った間隔d1は、500μm以下である。例えば、柱状スペーサ117どうしのY軸に沿った間隔d2は、500μm以下である。
【0078】
図5(b)に表したように、実施形態に係る別の液晶シャッタ100aにおいては、複数の柱状スペーサ117が、Y軸に沿って配列している。そして、Y軸に揃って配列した複数の列が、X軸に沿って並んでいる。このとき、Y軸に沿った位置は、列ごとに1/2ピッチ分シフトしている。柱状スペーサ117どうしの間隔d1及びd3は、500μm以下である。例えば、柱状スペーサ117どうしのY軸に沿った間隔d2は、500μm以下である。
【0079】
図5(c)に表したように、実施形態に係る別の液晶シャッタ100bにおいては、複数の柱状スペーサ117が、正三角形の頂点に配置されている。柱状スペーサ117どうしの間隔d1〜d3は、500μm以下である。
【0080】
このように、複数の柱状スペーサ117のうちの1つと、それに最も近い別の柱状スペーサ117とのどうし間隔が、500μm以下に設定される。これにより、ベンド配列からスプレイ配列への転移を速やかに完了させる。そして、転移は、面内で均一に進む。これにより、むらを抑制した高品位の液晶シャッタが得られる。
【0081】
例えば、第1スイッチング領域133aの中においては、複数の第1核領域形成部114aのそれぞれについて最も近い第1核領域形成部114aまでの距離が必ず約500μm以下である。換言すれば、複数の第1核領域形成部114aのそれぞれについて最も近い第1核領域形成部114aまでの距離が約500μm以下である領域が、第1スイッチング領域133aと定義することもできる。
【0082】
例えば、第1スイッチング領域133aの中においては、複数の第1核領域134aのそれぞれについて最も近い第1核領域134aまでの距離が必ず約500μm以下である。換言すれば、複数の第1核領域134aのそれぞれについて最も近い第1核領域134aまでの距離が約500μm以下である領域が、第1スイッチング領域133aと定義することもできる。なお、第1核領域134aの大きさは、第1核領域形成部114aの大きさとは若干異なる場合がある。
【0083】
第1スイッチング領域133aは、例えば、第1シャッタ部101において、X−Y平面内の中心部分である。例えば、第1スイッチング領域133aは、目立つ部分(使用者が認識し易い部分)である。第1スイッチング領域133a以外の部分(例えば第1スイッチング領域133aよりも外側の部分)は、例えば、液晶シャッタ眼鏡12に応用した場合には、眼鏡のフレームに近い部分である。従って、第1スイッチング領域133a以外の部分においては、ベンド配列からスプレイ配列への転移に長い時間がかかっても実用上大きな問題にはならない。このため、第1スイッチング領域133a以外の部分においては、第1核領域134aのどうしの間の距離が500μmを超えても良い。
【0084】
このように、複数の第1核領域形成部114aは、第1透明電極112a(第1透明電極112a及び第2透明電極122aの少なくともいずれかでも良い)の上に設けられ、第1透明電極112aと第2透明電極122aとの間の距離を制御する複数の柱状スペーサ117を含むことができる。
【0085】
複数の柱状スペーサ117のそれぞれについて最も近い柱状スペーサ117までの距離は約500μm以下である。
【0086】
実施形態において、第1基板部110aから第2基板部120aに向かうZ軸方向(第1方向)に対して垂直な平面で切断した、複数の柱状スペーサ117のそれぞれの断面積は、1平方マイクロメートル(μm)以上、100μm以下であることが望ましい。
【0087】
複数の柱状スペーサ117の断面積が1μm未満のときは、柱状スペーサ117の周囲に形成されるべき第1核領域形成部114aが消失し易い。すなわち、第1核領域134a(逆転移核)の発生確率が低下する。さらに、断面積が1μm未満のときは、柱状スペーサ117の強度が弱くなり、第1液晶層130aの厚さが不均一になりやすい。また、必要な寸法精度を維持するために、加工が難しくなる。
【0088】
複数の柱状スペーサ117の断面積が100μmを超えると、柱状スペーサ117が透過率に影響を与え、液晶シャッタ眼鏡12の透過率が低下する。そして、光スイッチングのコントラスト比が低下する。さらに、柱状スペーサ117及びその周辺の領域が使用者に知覚され、表示品位が低下する場合がある。
【0089】
このように、実施形態においては、複数の柱状スペーサ117について最も近い柱状スペーサ117までの距離を適切に制御することで、ベンド配列からスプレイ配列への転移を速やかに完了させ、むらを抑制し、さらに、複数の柱状スペーサ117の断面積を適切に設定することで、第1核領域134aを発生し易くし、均一な液晶層厚を得、高い加工性を確保し、良好な光学特性を得る。
【0090】
このような条件を考慮すると、実施形態においては、X−Y平面(第1基板部110aから第2基板部120aに向かうZ軸方向に対して垂直な平面)内において、複数の柱状スペーサ117の密度は、4×10個/平方センチメートル(個/cm)以上、1×10個/cm以下であることが望ましい。
【0091】
また、この条件を勘案すると、X−Y平面内において、単位面積に対する複数の柱状スペーサ117(第1核領域形成部114a)の合計の面積の比率は、0.001%以上10%以下であることが望ましい。すなわち、単位面積当たりに占める柱状スペーサ117の投影面積の合計の比率は、0.001%以上10%以下であることが望ましい。
【0092】
これにより、ベンド配列からスプレイ配列への転移を速やかに完了させ、むらを抑制し、第1核領域134aを発生し易くし、均一な液晶層厚を得、高い加工性を確保し、良好な光学特性を得ることができる。
【0093】
実施形態において、複数の第1核領域形成部114aのそれぞれについて最も近い第1核領域形成部114aまでの距離は、1μm以上である。第1核領域形成部114aのどうしの間の距離が1μm以上未満の場合は、第1核領域形成部114aのどうしの間の第1スイッチング領域133aにおいて、ベンド配列になり難くなる。また、第1スイッチング領域133aの面積の比率が小さくなり、スイッチング特性が劣化する。複数の第1核領域形成部114aのそれぞれについて最も近い第1核領域形成部114aまでの距離は、10μm以上であることが望ましい。これにより、良好なスイッチング特性が得られる。
【0094】
例えば、複数の柱状スペーサ117のそれぞれについて最も近い柱状スペーサ117までの距離は、1μm以上である。複数の柱状スペーサ117のそれぞれについて最も近い柱状スペーサ117までの距離は、10μm以上であることが望ましい。これにより、良好なスイッチング特性が得られる。
【0095】
液晶シャッタにおいて、動作時の特性に関しては大きな注意が払われ、その特性の向上のための種々の工夫が行われている。しかしながら、電源オフ時にむらが発生し、これが実用上の問題になることは今まで指摘されておらず、この問題のための有効な対策もなされていなかった。
【0096】
なお、OCBモードの液晶をアクティブマトリクス駆動するディスプレイの場合には、マトリクス状に設けられる微小面積の画素電極のそれぞれがスイッチング領域となる。そして、この画素電極に対応するスイッチング領域においてベンド配列になり、光の透過率の制御が行われる。一方、画素電極のそれぞれの周囲の、例えば走査線や信号線との間の非画素領域は、電圧が印加されない領域であり、スプレイ配列が維持される領域である。このように、OCBモードのアクティブマトリクス駆動ディスプレイにおいては、微小なスイッチング領域の周囲にスプレイ配列領域が形成されることがあっても、スイッチング領域の中にはスプレイ配列を維持する領域(例えば実施形態における第1核領域134a)は形成されない。このようなOCBモードのアクティブマトリクス駆動ディスプレイにおいては、電源オフ時には、バックライトがオフされディスプレイの表示面の全体が暗状態になるため、もしベンド配列及びスプレイ配列が不均一に存在した場合においてもむらが視認されることはない。
【0097】
これに対し、OCBモードの液晶を液晶シャッタ眼鏡12に応用する場合には、液晶シャッタ眼鏡12には周囲の光が入射するため、液晶シャッタに液晶配向のむらがあると、それが視認されてしまう。そして、OCBモードの液晶を液晶シャッタ眼鏡12に応用する場合には、シャッタ部分には、大きな面積の電極が用いられ、スイッチング領域(例えば第1スイッチング領域133a)の面積が大きい。このため、電源オフ時に、スイッチング領域において、ベンド配列からスプレイ配列への転移が不特定な箇所から不特定の形状で不均一に進行する。そして、スイッチング領域の全面の転移の完了に時間がかかるので、シミ状のむらが視認され、実用上大きな問題となる。
【0098】
この液晶シャッタ眼鏡12において新たに発見された上記の課題に対して、実施形態の構成が構築された。実施形態に係る液晶シャッタは、電源オフ時におけるベンド配列からスプレイ配列への転移を制御する。これにより、例えば、むらを抑制した高品質の液晶シャッタが提供される。
【0099】
すなわち、図1に表したように、実施形態に係る液晶シャッタ100においては、第1基板部110aは、第1核領域形成部114aを有する。第1核領域形成部114aは、第1核領域134aを第1液晶層130a中に形成する。第1核領域134aは、第1スイッチング領域133aの中に設けられる。第1核領域134aにおいては、第1スイッチング領域133aよりもスプレイ配列が安定である。
【0100】
例えば、第1透明電極112aと第2透明電極122aとの間の印加電圧の実効値をしきい値電圧以上に上昇させたときに、第1スイッチング領域133aにおいては、スプレイ配列からベンド配列に転移するが、第1核領域134aにおいては、ベンド配列に転移せず、例えばスプレイ配列を維持する。または、第1核領域134aにおいては、第1スイッチング領域133aがベンド配列に転移する電圧よりも実効値が大きい電圧で、ベンド配列に転移する。
【0101】
ベンド配列の状態から、第1透明電極112aと第2透明電極122aとの間の印加電圧の実効値を長期間にわたり、しきい値電圧よりも低下させる(例えば電源をオフする)と、第1核領域134aにおけるスプレイ配列が起点となり、ベンド配列からスプレイ配列への転移が始まる。そして、第1核領域134aどうしの間の距離が適切に設定されることで、第1スイッチング領域133aの全面の転移が、速やかに、均一に進む。
【0102】
なお、液晶シャッタ100において、第1基板部110aと第2基板部120aとは、互いに入れ換えが可能である。第1核領域形成部114aは、第2基板部120aに設けられても良く、第1基板部110a及び第2基板部120aの両方に設けられても良い。
【0103】
(第1実施例)
第1透明電極112aの上に、感光性樹脂膜を塗布し、所定の開口部を有するマスクを用いてパターニングする。これにより、複数の柱状スペーサ117が形成される。柱状スペーサ117のX軸に沿った幅は15μmであり、Y軸に沿った幅は15μmである。柱状スペーサ117の中心どうしのX軸に沿った距離は、200μmであり、Y軸に沿った距離は200μmである。複数の柱状スペーサ117の密度は、2500個/cmである。このとき、複数の柱状スペーサ117のそれぞれについて最も近い柱状スペーサ117までのX軸に沿う距離及びY軸に沿う距離は、共に185μm(すなわち、200μm−15μm)である。
【0104】
第1実施例においては、ベンド配列からスプレイ配列への転移は、約2s〜3sで完了する。逆転移は、液晶シャッタ100の全面において、均一に発生し、成長する。このため、むらは実質上知覚されない。
【0105】
(第2実施例)
第1透明電極112aの上に、感光性樹脂膜により、複数の柱状スペーサ117が形成される。柱状スペーサ117のX軸に沿った幅は10μmであり、Y軸に沿った幅は40μmである。柱状スペーサ117の中心どうしのX軸に沿った距離は、400μmであり、Y軸に沿った距離は400μmである。複数の柱状スペーサ117の密度は、625個/cmである。このとき、複数の柱状スペーサ117のそれぞれについて最も近い柱状スペーサ117までのX軸に沿う距離は390μm(すなわち、400μm−10μm)である。柱状スペーサ117どうしの間のY軸に沿う距離は360μm(すなわち、400μm−40μm)である。
【0106】
第1実施例においては、ベンド配列からスプレイ配列への転移は、約5sで完了する。逆転移は、液晶シャッタ100の全面において発生し成長するが、第1核領域134aどうしの間隔が大きいため、第1実施例と比較すると、むらは知覚され易い。
【0107】
このように、OCBセルにおいては、動作の初期化処理によりスプレイ配列状態からベンド配列状態へ配向状態を転移させる。このとき、柱状スペーサ117の周囲にはスプレイ配列状態が安定な領域が存在する。このスプレイ配列状態が安定な領域は、電源オフ時にセル全面がスプレイ状態へと転移するための核(第1核領域134a)として機能する。例えば、柱状スペーサ117の周囲にはスプレイ配列状態のままの領域が残る。この残存したスプレイ配列状態の領域が、第1核領域134aとして機能する。柱状スペーサ117は、この第1核領域134aを発生させる第1核領域形成部114aとなる。
【0108】
ベンド配列状態からスプレイ配列状態への転移がセル全面で完全に終了するまでの時間は、スプレイ配向状態の領域の成長速度に依存する。第1核領域134aどうしの間隔が短いときには、短時間で転移が終了する。実施形態においては、第1核領域134aを形成する第1核領域形成部114a(柱状スペーサ117)どうしの間隔を適切に設定する。さらに、単位面積あたりの第1核領域形成部114aの数、単位面積に対する複数の第1核領域形成部114aの合計の面積の比率、及び、1つの第1核領域形成部114aの面積が適正化される。これにより、均一な液晶層厚、良好な加工性、及び、良好な光学特性などが得られる。
【0109】
第1核領域134aにおいて第1スイッチング領域133aよりもスプレイ配列が安定にするために、上記のように柱状スペーサ117を用いる方法の他に、第1液晶層130aに印加される電圧の実効値を局所的に小さくする構成を用いることができる。第1液晶層130aに印加される電圧の実効値を局所的に小さくする方法として、透明電極に貫通孔(スリットなど)を設ける方法がある。
【0110】
図6は、第1の実施形態に係る別の液晶シャッタの構成を例示する模式的斜視図である。
図6に表したように、実施形態に係る液晶シャッタ100cも、第1シャッタ部101を備える。第1シャッタ部101は、第1基板部110aと、第2基板部120aと、第1液晶層130aと、を含む。
【0111】
この場合も、第1基板部110a(第1基板部110a及び第2基板部120aの少なくともいずれかでも良い)は、複数の第1核領域形成部114aを有する。
【0112】
この例では、複数の第1核領域形成部114aは、第1透明電極112aに設けられた貫通孔である。貫通孔は、第1透明電極112a及び第2透明電極122aの少なくともいずれかに設けられても良い。以下では、貫通孔が第1透明電極112aに設けられる場合であるとして説明する。
【0113】
図7は、第1の実施形態に係る別の液晶シャッタの構成を例示する模式的断面図である。
すなわち、図6は、図6のA1−A2線断面に相当する断面図である。
図7に表したように、複数の第1核領域形成部114aは、複数の第1貫通孔112hを含む。複数の第1貫通孔112hは、第1透明電極112aを第1透明電極112aの厚さ方向に貫通する。第1貫通孔112hは、第1透明電極112aをZ軸に沿って貫通する。
【0114】
第1貫通孔112hに対向する第1液晶層130aには、第1透明電極112aと第2透明電極122aとの間に電圧を印加した場合においても、しきい値電圧以上の電圧が印加されない。ここで、しきい値電圧以上の電圧とは、一定の時間内においてスプレイ配列からベンド配列に転移する電圧である。このため、第1透明電極112aと第2透明電極122aとの間の電位差Vaがベンド配列に転移する第2電圧V2に設定された場合においても、第1貫通孔112hに対向する第1液晶層130aの部分は、スプレイ配列状態を維持し、ベンド配列に転移しない。すなわち、第1貫通孔112hにより、第1核領域134aが形成される。第1核領域134aにおいては、スプレイ配列状態が維持される。
【0115】
一方、第1貫通孔112hが設けられていない領域においては、第1透明電極112aと第2透明電極122aとの間に電圧(第2電圧V2)を印加すると、第1液晶層130aにはその電圧が印加される。これにより、この領域はベンド配列に転移する。第1貫通孔112hが設けられていない領域が第1スイッチング領域133aとなる。
【0116】
図8(a)〜図8(c)は、第1の実施形態に係る別の液晶シャッタの動作を例示する模式的断面図である。
これらの図において、第1配向膜113a及び第2配向膜123aは省略されている。
図8(a)は電源オフ時(第1電圧V1印加時)の状態に対応する。図8(b)は、ベンド配列状態において第1ベンド電圧VB1を印加した時の状態に対応する。図8(c)は、ベンド配列状態において第1ベンド電圧VB1よりも実効値が大きい第2ベンド電圧VB2を印加した時の状態に対応する。
【0117】
図8(a)に表したように、電源オフ時(第1電圧V1印加時)において第1液晶層130aの液晶分子130lの配列は、スプレイ配列状態である。
【0118】
そして、液晶シャッタ100において、初期化処理が行われる。これにより、第1液晶層130aのうちの第1スイッチング領域133aの配列状態が、スプレイ配列からベンド配列に転移する。
これにより、図8(b)及び図8(c)に表したように、第1スイッチング領域133aにおいては、第1液晶層130aはベンド配列状態となる。
そして、第1ベンド電圧VB1を印加した状態(図8(b)の状態)と、第2ベンド電圧VB2を印加した状態(図8(c)の状態)と、のスイッチングが行われる。
【0119】
図8(a)〜図8(c)に例示したように、第1液晶層130aの第1貫通孔112hに接する部分に、第1核領域134aが形成される。図8(b)及び図8(c)に表したように、第1核領域134aにおいては、第1透明電極112a及び第2透明電極122aの間に、第2電圧V2(ベンド配列に転移する電圧)、第1ベンド電圧VB1、及び、第2ベンド電圧VB2を印加した場合においても、スプレイ配列が維持される。
【0120】
この場合も、電源オフ時において、第1核領域134a(第1核領域形成部114a)のそれぞれを起点として、第1スイッチング領域133aの第1液晶層130aが、ベンド配列からスプレイ配列へ転移する。そして、実施形態においては、複数の第1核領域形成部114a(第1貫通孔112h)どうしの間隔が適切に設定される。
【0121】
図9は、第1の実施形態に係る別の液晶シャッタの構成を例示する模式的平面図である。
図9に表したように、第1透明電極112aに複数の第1貫通孔112hが設けられる。この例では、第1貫通孔112hは、スリット状である。
【0122】
この場合も、複数の第1核領域形成部114a(第1貫通孔112h)のそれぞれについて最も近い第1核領域形成部(第1貫通孔112h)までの距離(間隔d1及びd2)は、500μm以下である。これにより、ベンド配列からスプレイ配列への転移が制御され、速やかに完了する。これにより、むらを抑制した高品位の液晶シャッタが得られる。
【0123】
この場合も、複数の第1核領域形成部114a(第1貫通孔112h)のそれぞれについて最も近い第1核領域形成部114a(第1貫通孔112h)までの距離は、1μm以上であることが望ましい。さらに、10μm以上であることがさらに望ましい。
【0124】
また、X−Y平面内において、単位面積に対する複数の第1貫通孔112hの合計の面積の比率は、0.001%以上10%以下であることが望ましい。
【0125】
また、X−Y平面内において、複数の第1貫通孔112hの密度は、4×10個/cm以上、1×10個/cm以下であることが望ましい。
【0126】
また、複数の第1貫通孔112hのそれぞれの面積(Z軸に対して垂直な平面における面積)は、1μm以上、100μm以下であることが望ましい。
【0127】
これにより、ベンド配列からスプレイ配列への転移を速やかに完了させ、むらを抑制し、第1核領域134aを発生し易くし、高い加工性を確保し、良好な光学特性を得ることができる。
【0128】
図9に表したように、第1貫通孔112hの平面形状は、例えば長方形または扁平円などである。本具体例では、第1貫通孔112hは、長方形のパターン形状を有している。長方形の長辺の長さは例えば15μmであり、短辺の長さは例えば10μmである。第1貫通孔112hのパターン形状の長辺の方向は、例えば、第1液晶層130aの液晶分子130lの長軸方向に対して実質的に平行とすることが望ましい。第1液晶層130aの液晶分子130lの長軸方向は、例えば配向膜(第1配向膜113a及び第2配向膜123a)のラビング方向に対して、実質的に平行である。第1貫通孔112hにおいてスプレイ配列を維持するために、第1貫通孔112hの液晶分子130lの長軸に沿った方向の長さは10μm以上、より望ましくは15μm以上であることが望ましい。一方、第1貫通孔112hにおいては多少の光漏れが生じるため、第1貫通孔112hの大きさは小さいほうが好ましい。第1貫通孔112hの大きさは、例えば、100μm×100μm以下であることが望ましい。
【0129】
なお、第1核領域形成部114aに対応する第1核領域134aにおいては、スプレイ配列が維持されるが、この第1核領域134aのスプレイ配列は、図4(a)〜図4(c)及び図8(a)〜図8(c)に例示したスプレイ配列以外の種々の変形のスプレイ配列を有することができる。
【0130】
すなわち、第1核領域134aにおける配列状態は、例えば、第1透明電極112aと第2透明電極122aとの間のX軸に沿った全域にわたってスプレイ配列状態である。また、第1核領域134aにおける配列状態は、例えば、第1透明電極112aの近傍でスプレイ配列で、第2透明電極122aの近傍でベンド配列になっている配列状態(「スプレイ−ベンド配列状態」と言うことにする)である。さらに、第1核領域134aにおける配列状態は、例えば、第1透明電極112aの近傍でベンド配列で、第2透明電極122aの近傍でスプレイ配列になっている配列状態(「ベンド−スプレイ配列状態」という)である。一方、ベンド配列状態においては、第1透明電極112aの近傍、及び、第2透明電極122aの近傍、の両方でベンド配列である。
【0131】
このように、第1核領域134aにおいては、第1スイッチング領域133aよりもスプレイ配列状態が安定であり、例えば、一方の透明電極の近傍でスプレイ配列で、他方の電極の近傍でベンド配列であっても良い。第1核領域134aのZ軸に沿った少なくとも一部が、スプレイ配列を含む。
【0132】
第1液晶層130aに印加される電圧の実効値を局所的に小さくする第1核領域形成部114aとして、上記においては、第1貫通孔112hを用いたが、実施形態はこれには限定されない。例えば、複数の第1核領域形成部114aとして、第1透明電極112aと第1液晶層130aとの間に設けられた複数の絶縁部を用いることができる。
【0133】
具体的には、第1透明電極112aの主面上にパターニングされた複数の絶縁部を設け、この絶縁部を第1核領域形成部114aとすることができる。さらに、例えば、第1透明電極112aに凹みを設け、この凹みに充填された絶縁材料を第1核領域形成部114aとすることができる。この絶縁材料には、無機材料及び有機材料の任意の絶縁性の材料を用いることができる。
【0134】
この場合も、複数の第1核領域形成部114aどうしの間の距離を適切に設定することで、ベンド配列からスプレイ配列への転移が制御され、短縮される。これにより、むらを抑制した高品位の液晶シャッタが得られる。このように、実施形態において、第1核領域形成部114aの構成は任意である。
【0135】
実施形態においては、第1核領域134aは、第1スイッチング領域133aに取り囲まれるように、第1スイッチング領域133a中に点在して配置される。すなわち、例えば、複数の第1核領域形成部114a(例えば、柱状スペーサ117、第1貫通孔112h、絶縁部など)は、第1透明電極112aの主面の上に点在して配置される。
【0136】
(第2の実施の形態)
図10は、第2の実施形態に係る液晶シャッタの構成を例示する模式的斜視図である。 図10に表したように、本実施形態に係る液晶シャッタ100mは、既に説明した第1シャッタ部101に加え、第2シャッタ部102を備える。
【0137】
第2シャッタ部102の構成は、第1シャッタ部101の構成と同様とすることができる。
すなわち、第2シャッタ部102は、第3基板部110bと、第4基板部120bと、第2液晶層130bと、を含む。
【0138】
第3基板部110bは、第3透明電極112bを含む。
第4基板部120bは、第4透明電極122bを含む。第4透明電極122bは、第3透明電極112bに対向する。
【0139】
第2液晶層130bは、第3透明電極112bと第4透明電極122bとの間に設けられる。第2液晶層130bにおいて、第2スイッチング領域133bが設けられる。
【0140】
第2液晶層130bは、第2スイッチング領域133bにおいて、第3透明電極112bと第4透明電極122bとの間の電位差が第3電圧に設定されたときにスプレイ配列となる。そして、第3透明電極112bと第4透明電極122bとの間の電位差が第3電圧よりも実効値が大きい第4電圧に設定されたときにベンド配列となる。第3電圧は、0Vでも良い。
【0141】
第2液晶層130bにおいて、第2スイッチング領域133bの中に複数の第2核領域134bが形成される。第2液晶層130bは、第2核領域134bにおいて、第2スイッチング領域133bよりもスプレイ配列が安定である。
【0142】
第3基板部110bは、複数の第2核領域形成部114bを有する。第2核領域形成部114bは、第2核領域134bを第2液晶層130bに形成する。
【0143】
複数の第2核領域形成部114bのそれぞれについて最も近い第2核領域形成部114bまでの距離は、500μm以下である。
【0144】
これにより、第2シャッタ部102の全面におけるベンド配列からスプレイ配列への転移が速やかに完了する。また、この転移は、面内で均一である。このように、実施形態によれば、ベンド配列からスプレイ配列への転移が制御される。これにより、むらを抑制した高品位の液晶シャッタが得られる。
【0145】
この場合も、複数の第2核領域形成部114bのそれぞれについて最も近い第2核領域形成部114bまでの距離は、1μm以上であることが望ましい。さらに、10μm以上であることがさらに望ましい。
【0146】
さらに、X−Y平面内において、単位面積に対する複数の第2核領域形成部114bの合計の面積の比率は、0.001%以上10%以下であることが望ましい。
【0147】
第2核領域形成部114bとして、柱状スペーサを用いることができる。すなわち、複数の第2核領域形成部114bは、第3透明電極112bの上に設けられ、第3透明電極112bと第4透明電極122bとの間の間隔を制御する複数の柱状スペーサを含むことができる。第3基板部110bから第4基板部120bに向かう方向に対して垂直な平面内において、この複数の柱状スペーサの密度は、4×10個/cm以上、1×10個/cm以下であることが望ましい。
【0148】
また、第3基板部110bから第4基板部120bに向かう方向に対して垂直な平面で切断した、複数の柱状スペーサのそれぞれの断面積は、1μm以上、100μm以下であることが望ましい。
【0149】
これにより、第2核領域134bを発生し易くし、均一な液晶層厚を得、高い加工性を確保し、良好な光学特性を得ることができる。
【0150】
また、第2核領域形成部114bとして、貫通孔を用いることができる。すなわち、複数の第2核領域形成部114bは、第3透明電極112bを第3透明電極112bの厚さ方向に貫通する複数の第2貫通孔を含むことができる。
【0151】
第3基板部110bから第4基板部120bに向かう方向に対して垂直な平面内において、複数の第2貫通孔の密度は、4×10個/cm以上、1×10個/cm以下であることが望ましい。
また、複数の第2貫通孔のそれぞれの面積(第3基板部110bから第4基板部120bに向かう方向に対して垂直な平面における面積)は、1μm以上、100μm下であることが望ましい。
これにより、高い加工性を確保し、良好な光学特性を得ることができる。
【0152】
さらに、複数の第2核領域形成部114bとして、第3透明電極112bと第2液晶層130bとの間に設けられた複数の絶縁部を用いることができる。
【0153】
液晶シャッタ100mは、2つのシャッタ部を備えることで、液晶シャッタ眼鏡12aとして利用することができる。
例えば、図10に表したように、液晶シャッタ100m(液晶シャッタ眼鏡12a)は、第1シャッタ部101と第2シャッタ部とを連結する連結部355と、左耳用の左支持部351と、右耳用の右支持部352と、をさらに備えることができる。左支持部351は、左耳かけ部353を有し、右支持部352は、右耳かけ部354を有す。
【0154】
例えば、第1シャッタ部101が左眼に対応して配置され、第2シャッタ部102が右眼に対応して配置される。なお、第1シャッタ部101と第2シャッタ部102の配置は逆でも良い。
【0155】
また、第1シャッタ部101の第1基板部110aの側に、第2シャッタ部102の第3基板部110bが配置されているが、第1基板部110aの側に第4基板部120bが配置されても良い。
【0156】
本具体例では、第2基板部120aが、第1基板部110aよりも左耳かけ部353の側に配置され、第4基板部120bが、第3基板部110bよりも右耳かけ部354の側に配置されている。第1基板部110aが、第2基板部120aよりも左耳かけ部353の側に配置され、第3基板部110bが、第4基板部120bよりも右耳かけ部354の側に配置されても良い。
【0157】
図11は、第2の実施形態に係る別の液晶シャッタの構成を例示する模式的斜視図である。
図11に表したように、本実施形態に係る別の液晶シャッタ100nも、第1シャッタ部101と第2シャッタ部102とを備える。
この例では、第1基板部110aと第3基板部110bとが同一の支持基板411に設けられ、第2基板部120aと第4基板部120bとが同一の別の支持基板421に設けられている。
【0158】
すなわち、支持基板411の一部に第1透明電極112aが設けられる。支持基板411の別の一部に、第1透明電極112aに並置して第3透明電極112bが設けられる。すなわち、第1透明電極112aが設けられる部分が第1基板部110aとなる。第3透明電極112bが設けられる部分が第3基板部110bとなる。
【0159】
同様に、別の支持基板421の一部に第2透明電極122aが設けられる。支持基板421の別の一部に、第2透明電極122aに並置して第4透明電極122bが設けられる。第2透明電極122aが設けられる部分が第2基板部120aとなり、第4透明電極122bが設けられる部分が第4基板部120bとなる。
【0160】
このように、第1シャッタ部101と第2シャッタ部102とは、一体的に設けられても良い。
【0161】
上記の液晶シャッタ100m及び100nにおいて、例えば、第1核領域形成部114aが第1基板部110aに設けられ、第2核領域形成部114bが第3基板部110bに設けられる。ただし、第1基板部110aと第2基板部120aとは互いに入れ換えができ、第3基板部110bと第4基板部120bとは互いに入れ換えができる。
【0162】
液晶シャッタが液晶シャッタ眼鏡12bに応用される場合において、第1核領域形成部114a及び第2核領域形成部114bは、観視者の目に近い側の基板部に設けられても良く、目から遠い側の基板部に設けられても良い。
【0163】
このように、液晶シャッタ(液晶シャッタ眼鏡)は、第1シャッタ部101と、第2シャッタ部102と、装着部360(例えば左支持部351及び右支持部352)と、を備えることができる。装着部360は、第1シャッタ部101及び第2シャッタ部102の少なくともいずれかに連結され、使用者の頭部に装着され、第1シャッタ部101及び第2シャッタ部102を使用者の頭部に固定させる。なお、装着部360は、帯状でも良く、液晶シャッタはゴーグル状の形態でも良い。
【0164】
上記においては、ディスプレイ13としてOCBモードで動作するアクティブマトリクス型液晶ディスプレイを用いる場合として説明したが、実施形態はこれに限定されない。例えば、実施形態に係る液晶シャッタが適用できる表示システム11のディスプレイ13には、高速応答性を有するディスプレイ全般を用いることができる。例えば、ディスプレイ13として、有機ELディスプレイやプラズマディスプレイなどを用いても良い。
【0165】
実施形態によれば、ベンド配列からスプレイ配列への転移を制御した高品質の液晶シャッタが提供される。
【0166】
なお、本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0167】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、液晶シャッタに含まれる基板部、透明電極、支持基板、配向膜、液晶層、柱状スペーサ、貫通孔及び絶縁部などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0168】
その他、本発明の実施の形態として上述した液晶シャッタを基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての液晶シャッタも、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0169】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0170】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0171】
11…表示システム、 12、12a、12b…液晶シャッタ眼鏡、 13…ディスプレイ、 13d…表示面、 14…制御部、 100、100a、100b、100c、100m、100n…液晶シャッタ、 101…第1シャッタ部、 102…第2シャッタ部、 110a…第1基板部、 110b…第3基板部、 111a…第1支持基板、 112a…第1透明電極、 112b…第3透明電極、 112h…第1貫通孔、 113a…第1配向膜、 114a…第1核領域形成部、 114b…第2核領域形成部、 117…柱状スペーサ、 120a…第2基板部、 120b…第4基板部、 121a…第2支持基板、 122a…第2透明電極、 122b…第4透明電極、 123a…第2配向膜、 130a…第1液晶層、 130b…第2液晶層、 130l…液晶分子、 133a…第1スイッチング領域、 133b…第2スイッチング領域、 134a…第1核領域、 134b…第2核領域、 140a…第1光学補償板、 150a…第2光学補償板、 160a…第1偏光板、 170a…第2偏光板、 180…シール部、 330…駆動部、 351…左支持部、 352…右支持部、 353…左耳かけ部、 354…右耳かけ部、 355…連結部、 360…装着部、 411、421…支持基板、 VB1、VB2…第1、第2ベンド電圧、 Va…電位差、 d1〜d3…間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1透明電極を含む第1基板部と、
前記第1透明電極に対向する第2透明電極を含む第2基板部と、
前記第1透明電極と前記第2透明電極との間に設けられた第1液晶層と、
を含む第1シャッタ部を備え、
前記第1液晶層は、第1スイッチング領域と、前記第1スイッチング領域の中に点在する複数の第1核領域と、を有し、
前記第1液晶層は、前記第1スイッチング領域において、前記第1透明電極と前記第2透明電極との間の電位差が第1電圧に設定されたときにスプレイ配列となり、前記第1透明電極と前記第2透明電極との間の電位差が前記第1電圧よりも実効値が大きい第2電圧に設定されたときにベンド配列となり、
前記第1液晶層は、前記第1核領域において、前記第1スイッチング領域よりもスプレイ配列が安定であり、
前記第1基板部は、前記第1核領域を前記第1液晶層に形成する複数の第1核領域形成部を有し、
前記複数の第1核領域形成部のそれぞれについて、最も近い前記第1核領域形成部までの距離は、500マイクロメートル以下であることを特徴とする液晶シャッタ。
【請求項2】
前記複数の第1核領域形成部のそれぞれについて、最も近い前記第1核領域形成部までの前記距離は、1マイクロメートル以上であることを特徴とする請求項1記載の液晶シャッタ。
【請求項3】
前記第1基板部から前記第2基板部に向かう第1方向に対して垂直な平面内において、単位面積に対する前記複数の第1核領域形成部の合計の面積の比率は、0.001%以上10%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶シャッタ。
【請求項4】
前記複数の第1核領域形成部は、
前記第1透明電極の上に設けられ、前記第1透明電極と前記第2透明電極との間の間隔を制御する複数の柱状スペーサを含み、
前記第1基板部から前記第2基板部に向かう第1方向に対して垂直な平面内において、前記複数の柱状スペーサの密度は、4×10個/平方センチメートル以上、1×10個/平方センチメートル以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の液晶シャッタ。
【請求項5】
前記複数の第1核領域形成部は、
前記第1透明電極の上に設けられ、前記第1透明電極と前記第2透明電極との間の間隔を制御する複数の柱状スペーサを含み、
前記第1基板部から前記第2基板部に向かう第1方向に対して垂直な平面で切断した、前記複数の柱状スペーサのそれぞれの断面積は、1平方マイクロメートル以上、100平方マイクロメートル以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の液晶シャッタ。
【請求項6】
前記複数の第1核領域形成部は、前記第1透明電極を前記第1透明電極の厚さ方向に貫通する複数の第1貫通孔を含み、
前記第1基板部から前記第2基板部に向かう第1方向に対して垂直な平面内において、前記複数の第1貫通孔の密度は、4×10個/平方センチメートル以上、1×10個/平方センチメートル以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の液晶シャッタ。
【請求項7】
前記複数の第1核領域形成部は、前記第1透明電極を前記第1透明電極の厚さ方向に貫通する複数の第1貫通孔を含み、
軸に前記複数の第1貫通孔のそれぞれの面積は、1平方マイクロメートル以上、100平方マイクロメートル以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の液晶シャッタ。
【請求項8】
前記第1シャッタ部と並置された第2シャッタ部をさらに備え、
前記第2シャッタ部は、
第3透明電極を含む第3基板部と、
前記第3透明電極に対向する第4透明電極を含む第4基板部と、
前記第3透明電極と前記第4透明電極との間に設けられた第2液晶層と、
を含み、
前記第2液晶層は、第2スイッチング領域と、前記第2スイッチング領域の中に点在する複数の第2核領域と、を有し、
前記第2液晶層は、前記第2スイッチング領域において、前記第3透明電極と前記第4透明電極との間の電位差が第3電圧に設定されたときにスプレイ配列となり、前記第3透明電極と前記第4透明電極との間の電位差が前記第3電圧よりも実効値が大きい第4電圧に設定されたときにベンド配列となり、
前記第2液晶層は、前記第2核領域において、前記第2スイッチング領域よりもスプレイ配列が安定であり、
前記第3基板部は、前記第2核領域を前記第2液晶層に形成する複数の第2核領域形成部を有し、
前記複数の第2核領域形成部のそれぞれについて、最も近い前記第2核領域形成部までの距離は、500マイクロメートル以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の液晶シャッタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−150206(P2012−150206A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7706(P2011−7706)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(302020207)株式会社ジャパンディスプレイセントラル (2,170)
【Fターム(参考)】