液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター及びこれを具備する液晶ディスプレイ装置
【課題】視聴角の増大に伴うカラーシフト現象を改善する液晶ディスプレイ装置用光学フィルター及び液晶ディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】液晶ディスプレイパネルの前方に具備される液晶ディスプレイ装置用光学フィルターは、カラーシフト低減層と、外光遮蔽層とを含んでなり、前記カラーシフト低減層は、層をなすバックグラウンド層と前記バックグラウンド層に互いに離間して形成される複数の凹状または凸状レンズ部とを含み、液晶の複屈折特性によって視聴角度及び階調水準に応じて他の色で前記液晶ディスプレイパネルから出射する光のうち、レンズ部に入射した光の出射方向を分散させて、互いに離間した前記レンズ部の間を通過する光と混合させ、前記外光遮蔽層は光吸収物質を含む。好ましくは、前記光吸収物質は、可視光線の全波長帯を吸収する黒色物質である。
【解決手段】液晶ディスプレイパネルの前方に具備される液晶ディスプレイ装置用光学フィルターは、カラーシフト低減層と、外光遮蔽層とを含んでなり、前記カラーシフト低減層は、層をなすバックグラウンド層と前記バックグラウンド層に互いに離間して形成される複数の凹状または凸状レンズ部とを含み、液晶の複屈折特性によって視聴角度及び階調水準に応じて他の色で前記液晶ディスプレイパネルから出射する光のうち、レンズ部に入射した光の出射方向を分散させて、互いに離間した前記レンズ部の間を通過する光と混合させ、前記外光遮蔽層は光吸収物質を含む。好ましくは、前記光吸収物質は、可視光線の全波長帯を吸収する黒色物質である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ装置用光学フィルター及びこれを具備する液晶ディスプレイ装置に係り、より詳しくは、凹状または凸状のレンズ部を有するカラーシフト低減層と光吸収物質を含む外光遮蔽層を具備し、視聴角によるカラーシフトを改善する液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター及びこれを具備する液晶ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報化社会が進展するにつれ、イメージディスプレイ関連部品及び機器が顕著に進歩し且つ普及してきている。その中でも、画像を表示するディスプレイ装置は、テレビ用、パーソナルコンピューターのモニター装置用などとして顕著に普及してきており、大型化と薄型化が同時に進行している。
【0003】
一般に、液晶表示装置(Liquid Crystal Display)は、液晶(Liquid Crystal)を利用して映像を表示するフラット表示装置の一つであって、他のディスプレイ装置に比べて薄くて軽量であり、低い駆動電圧及び低い消費電力を有するという長所がある。このため、産業全般にわたって広範に使用されている。
【0004】
図1は、LCDの基本構造と駆動原理を概念的に示す概念図である。従来のVAモードLCDを例に挙げると、2つの偏光フィルム110、120は、その光軸が互いに垂直になるように付着されている。透明電極140がコーティングされた2つの透明基板130の間に複屈折特性を示す液晶分子150が挿入、配列される。駆動電源部180によって電場が印加されると、液晶分子が電場に対し垂直に動いて配列される。
【0005】
バックライトユニットから出る光は、第1の偏光フィルム120を通過してから線偏光になり、図1の左側に示されたように、オフ状態である場合、液晶は基板に対して垂直配向されているため、線偏光された光は、その状態がそのまま保持され、第1の偏光フィルム120と垂直な第2の偏光フィルム110を通過することができなくなる。
【0006】
一方、図1の右側に示されたように、オン状態である場合、液晶は電場によって基板と平行な方向に沿って2つの直交偏光フィルム110、120の光軸の間に水平配向される。このため、第1の偏光フィルムを介して線偏光された光は液晶分子を通過しながら、第2の偏光フィルムに到逹する直前に偏光状態が90°回転された線偏光、円偏光または楕円偏光状態に変化して第2の偏光フィルムを通過するようになる。電場の強さを調節すれば、液晶の配列状態が垂直配向から徐々に水平方向に配向角度が変化し、このときに出る光の強さを調節することができる。
【0007】
図2は、視聴角による液晶の配向状態と光透過度を示す概念図である。
【0008】
画素220内に液晶分子が所定の方向に配列されている場合、視聴角によって配列状態が異なって見えるようになる。
【0009】
正面の左側から見たとき(210)、液晶分子の配列状態はほぼ水平配向212に見え、画面が相対的に明るく見えるようになる。画面の正面から見たとき(230)、液晶分子の配列状態232は画素220内の液晶分子の配列と等しく見える。正面の右側から見たとき(250)、液晶分子の配列状態は垂直配向252に見え、画面が相対的に暗く見えるようになる。
【0010】
したがって、LCDでは、視聴角の変化に伴って光の強さや色の変化が発生し、自発光ディスプレイに比べて視野角が大きく制限される。このため、視野角の改善のための多くの研究が進められてきた。
【0011】
図3は、視聴角による明暗比の変化及びカラーシフトを改善するための従来技術の一例を示す概念図である。
【0012】
図3を参照すると、画素を2つの部分画素、すなわち、第1の画素部320と第2の画素部340とに分割し、各画素部の液晶配列状態が互いに対称になるようにする。視聴者の視聴方向に応じて第1の画素部320での液晶の配列状態と第2の画素部340での液晶の配列状態が同時に見えるようになり、視聴者に見える光の強さは、それぞれの画素部の光の強さの和になる。
【0013】
すなわち、正面の左側から見たとき(310)、第1の画素部320の液晶は水平配向312に見え、第2の画素部340の液晶は垂直配向314に見えるようになり、第1の画素部320によって画面が明るく見えるようになる。同様に、正面の右側から見たとき(350)、第1の画素部320の液晶は垂直配向352に見え、第2の画素部340の液晶は水平配向354に見えるようになり、第2の画素部340によって画面が明るく見えるようになる。正面330から見たときは、各画素部の配列状態と同一に見えるようになる。このため、視聴者が見るときの画面の明るさは、視聴角の変化に伴って同一またはほぼ同一になり、画面に対する垂直方向を中心に対称になる。これにより、視聴角の変化に伴う明暗比の変化及び色変化の度合いが改善できるようになる。
【0014】
図4は、視聴角による明暗比の変化及びカラーシフトを改善するための従来技術の他の一例を示す概念図である。
【0015】
図4を参照すると、複屈折特性を持っており、その特性がLCDパネルにおいて画素440内の液晶分子と同一であり、液晶分子の配列状態と対称になる光学フィルム420がさらに備えられている。視聴者の視聴方向による画素440内の液晶の配列状態と光学フィルム420の複屈折特性により、視聴者に見える光の強さはそれぞれによる光の強さの和になる。
【0016】
すなわち、正面の左側から見たとき(410)、画素440内の液晶は水平配向414に見え、光学フィルム420による仮想液晶は垂直配向412に見えるようになり、光の強さはそれぞれの和になる。同様に、正面の右側から見たとき(450)、画素440内の液晶は垂直配向454に見え、光学フィルム420による仮想液晶は水平配向452に見えるようになり、光の強さはそれぞれの和になる。正面から見たとき(430)は、画素440内の液晶分子の配列状態と光学フィルム420の配列状態とがそれぞれ同一に見えるようになる(432、434)。
【0017】
しかしながら、前記した技術によっても、図5に示すように、依然として視聴角によるカラーシフトは存在し、視聴角の増大に伴って色変化が生じるという問題点を有する。
【0018】
また、従来の光学フィルム及びディスプレイ装置、特にTNモード液晶ディスプレイ装置では、ガンマカーブの歪み及び階調反転が生じるという問題点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、視聴角の増大に伴うカラーシフト現象を改善することができる液晶ディスプレイ装置用光学フィルター及びこれを具備する液晶ディスプレイ装置を提供することにある。
【0020】
本発明の他の目的は、カラーシフト現象を改善し、且つ、二重像及びヘイズの発生を抑制することができる液晶ディスプレイ装置用光学フィルター及びこれを具備する液晶ディスプレイ装置を提供することにある。
【0021】
本発明のまた他の目的は、ガンマカーブの歪み及び階調反転を改善することができる液晶ディスプレイ装置用光学フィルター及びこれを具備する液晶ディスプレイ装置を提供することにある。
【0022】
本発明のさらなる目的は、外光によるヘイズの発生及び明室明暗比の低下をさらに改善することができる液晶ディスプレイ装置用光学フィルター及びこれを具備する液晶ディスプレイ装置を提供することにある。
【0023】
本発明が解決しようとする技術的課題は前述した技術的課題に制限されず、言及されていない他の技術的課題は、下記から当業者には明確に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前記目的を達成するために、本発明は、液晶ディスプレイパネルの前方に具備される液晶ディスプレイ装置用光学フィルターであって、カラーシフト低減層と、外光遮蔽層とを含んでなり、前記カラーシフト低減層は、層をなすバックグラウンド層と前記バックグラウンド層に互いに離間して形成される複数の凹状または凸状レンズ部とを含み、液晶の複屈折特性によって視聴角度及び階調水準に応じて他の色で前記液晶ディスプレイパネルから出射する光のうち、レンズ部に入射した光の出射方向を分散させて、互いに離間した前記レンズ部の間を通過する光と混合させ、前記外光遮蔽層は、光吸収物質を含むことを特徴とする液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルターを提供する。
【0025】
好ましくは、前記光吸収物質は、可視光線の全波長帯を吸収する黒色物質である。
【発明の効果】
【0026】
前記構成によれば、本発明は、視聴角の増大に伴うカラーシフト現象を最小化することで、ディスプレイ装置の視野角を確保し且つ画質を改善することができるという効果を奏する。
【0027】
また、本発明は、カラーシフト現象を改善し、且つ、二重像及びヘイズの発生を抑制することができるという効果を奏する。
【0028】
さらに、本発明は、ガンマカーブの歪み及び階調反転を改善することができるという効果を奏する。
【0029】
また、本発明は、外光によるヘイズの発生及び明室明暗比の低下をさらに改善することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】LCDの基本構造と駆動原理を概念的に示す概念図である。
【図2】視聴角による液晶の配向状態と光透過度を示す概念図である。
【図3】視聴角による明暗比の変化及びカラーシフトを改善するための従来技術の一例を示す概念図である。
【図4】視聴角による明暗比の変化及びカラーシフトを改善するための従来技術の他の一例を示す概念図である。
【図5】カラーシフト低減層を装着していない状態のLCDの視聴角によるカラーシフトを示すグラフである。
【図6】比較実施形態に係るカラーシフト低減層を示す断面図である。
【図7】比較実施形態に係るカラーシフト低減層を示す断面図である。
【図8】比較実施形態に係るカラーシフト低減層を示す断面図である。
【図9】比較実施形態に係るカラーシフト低減層の製造方法を示す図である。
【図10】レンズ部の深さ/幅の比とカラーシフト改善率との関係を示す図である。
【図11】レンズ部の間隔/ピッチの比とカラーシフト改善率との関係を示す図である。
【図12】レンズ部の間隔/ピッチの比と透過率との関係を示す図である。
【図13】レンズ部の断面の形状と二重像との関係を示す図である。
【図14】レンズ部の断面の形状と二重像との関係を示す図である。
【図15】レンズ部の断面の形状と二重像との関係を示す図である。
【図16】レンズ部の断面の形状と二重像との関係を示す図である。
【図17】レンズ部の断面の形状と二重像との関係を示す図である。
【図18】レンズ部の断面の形状と二重像との関係を示す図である。
【図19】比較実施形態に係るカラーシフト低減層をディスプレイパネルと密着して設けて、二重像及びヘイズの発生を抑制することができることを示す図である。
【図20】比較実施形態に係るカラーシフト低減層をディスプレイパネルと密着して設けて、二重像及びヘイズの発生を抑制することができることを示す図である。
【図21】比較実施形態に係るカラーシフト低減層をディスプレイパネルと密着して設けて、二重像及びヘイズの発生を抑制することができることを示す図である。
【図22】比較実施形態に係るカラーシフト低減層をディスプレイパネルと密着して設けて、二重像及びヘイズの発生を抑制することができることを示す図である。
【図23】比較実施形態に係るカラーシフト低減層をディスプレイパネルと密着して設けて、二重像及びヘイズの発生を抑制することができることを示す図である。
【図24】比較実施形態に係るカラーシフト低減層をディスプレイパネルと密着して設けて、二重像及びヘイズの発生を抑制することができることを示す図である。
【図25】図5のS−PVAモードLCD TVにおいて、自己粘着性を持つ比較実施形態のカラーシフト低減層をディスプレイパネルに付着して、色変化の改善率を測定した結果を示す図である。
【図26】比較実施形態のカラーシフト低減層を具備していないS−IPSモードLCD TVの色変化を示す図である。
【図27】図26のLCD TVに自己粘着性を持つ比較実施形態のカラーシフト低減層をディスプレイパネルに付着して、色変化の改善率を測定した結果を示す図である。
【図28】CCFL BLU及びTNパネルを採用したLCDモニター(モデル:B2440MH)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフトの改善や階調反転、及びガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【図29】CCFL BLU及びTNパネルを採用したLCDモニター(モデル:B2440MH)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフトの改善や階調反転、及びガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【図30】CCFL BLU及びTNパネルを採用したLCDモニター(モデル:B2440MH)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフトの改善や階調反転、及びガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【図31】CCFL BLU及びTNパネルを採用したLCDモニター(モデル:B2440MH)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフトの改善や階調反転、及びガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【図32】LED BLU及びTNパネルを採用したLCDモニター(モデル:BX2440)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフトの改善や階調反転、及びガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【図33】LED BLU及びTNパネルを採用したLCDモニター(モデル:BX2440)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフトの改善や階調反転、及びガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【図34】LED BLU及びTNパネルを採用したLCDモニター(モデル:BX2440)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフトの改善や階調反転、及びガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【図35】LED BLU及びTNパネルを採用したLCDモニター(モデル:BX2440)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフトの改善や階調反転、及びガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【図36】S−PVAパネルを採用した46インチLCD TV(モデル:LH46CSPLBC)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフト改善とガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【図37】S−PVAパネルを採用した46インチLCD TV(モデル:LH46CSPLBC)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフト改善とガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【図38】S−PVAパネルを採用した46インチLCD TV(モデル:LH46CSPLBC)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフト改善とガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【図39】S−PVAパネルを採用した46インチLCD TV(モデル:LH46CSPLBC)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフト改善とガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【図40】レンズ部のサイズと二重像の発生との関係を示す図である。
【図41】レンズ部のサイズと二重像の発生との関係を示す図である。
【図42】レンズ部のサイズと二重像の発生との関係を示す図である。
【図43】レンズ部のサイズとモアレの発生との関係を示す図である。
【図44】本発明の一実施形態に係るカラーシフト低減光学フィルターを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<比較実施形態>
以下では、比較実施形態を説明する。比較実施形態に基づいてカラーシフト低減層のカラーシフトの低減の原理について先に説明する。その後、カラーシフト低減層による二重像及びヘイズの発生を抑制する方案について説明し、カラーシフト低減層がガンマカーブの歪み及び階調反転の改善に有効であることを説明することとする。
【0032】
図6及び図7は、比較実施形態に係るカラーシフト低減層を示す断面図である。
【0033】
カラーシフト低減層は、典型的にディスプレイパネル10の前方に具備される。
【0034】
図示したように、カラーシフト低減層20は、バックグラウンド層21とレンズ部23を具備する。
【0035】
バックグラウンド層21は、光を透過させる物質が層をなして形成される。バックグラウンド層21は、透明高分子樹脂、特に紫外線硬化性透明樹脂からなるものであってよい。
【0036】
レンズ部23は、所定の深さにて凹状または凸状にバックグラウンド層21に形成される。レンズ部は、光を屈折させ、カラーシフトを改善する。レンズ部23は、色混合効果によって、視聴角の増大に伴う色変化を減少させる。レンズ部間の間隔に比べてレンズ部の幅が小さくなるようにすることでディスプレイパネル面の法線方向に放出される光を多く透過させることができる。
【0037】
レンズ部は、ディスプレイパネル面の法線方向に発光される光の方向を変化させて法線から外れる方向に変更させ、また、ディスプレイパネル面の法線から外れる方向に出る光の一部を法線方向に変更させる。すなわち、レンズ部が、視聴角に応じて発光される光の方向を変化させることで、色混合を誘導してカラーシフトを改善することができる。
【0038】
レンズ部23は、多角形断面ストライプパターン、多角形断面波パターン、多角形断面マトリックスパターン、多角形断面ハニカムパターン、多角形断面ドットパターン、半円形断面ストライプパターン、半円形断面波パターン、半円形断面マトリックスパターン、半円形断面ハニカムパターン、半円形断面ドットパターン、半楕円形断面ストライプパターン、半楕円形断面波パターン、半楕円形断面マトリックスパターン、半楕円形断面ハニカムパターン、半楕円形断面ドットパターン、半卵形(oval)断面ストライプパターン、半卵形断面波パターン、半卵形断面マトリックスパターン、半卵形断面ハニカムパターン、及び半卵形断面ドットパターンのいずれかを有していてよい。
【0039】
ここで、多角形断面は、三角形断面、台形断面、四角形断面などであってよい。また、半卵形断面は、円弧及び楕円弧以外の他の曲線軌跡を描くものであってよい。また、半円形、半楕円形及び半卵形は、それぞれ円形、楕円形、及び卵形を正確に1/2に分けた図形を意味するだけでなく、レンズ部の断面のうち一部が円弧、楕円弧、放物線を含む図形をも意味する。すなわち、両辺が楕円弧で、ボトム(Bottom)が直線である図形も前記半楕円形に含まれるものとする。
【0040】
比較実施形態のカラーシフト低減層はこれらに限定されず、種々の形態を有していてよく、断面が左右対称であることが好ましい。
【0041】
また、例えば、ストライプパターンの場合でも、水平ストライプパターン、垂直ストライプパターンなどの種々のパターンを有していてよい。水平方向に形成される場合には、上下の視聴角補償に有効であり、図7に示すように垂直方向に形成される場合には、左右の視聴角補償に有効である。
【0042】
モアレ現象の防止のために、レンズ部23は、バックグラウンド層21の辺に対して所定のバイアス角度を有して形成されていてよい。例えば、ストライプパターンの場合、ストライプが水平または垂直方向に対して所定の傾斜角を有していてよい。
【0043】
レンズ部23は、好ましくは、図7に示すように、レンズ部がバックグラウンド層21の片面に所定の周期にて離間して平行に配列される。
【0044】
図6では、レンズ部23がバックグラウンド層21に対して凹状に形成される実施形態を示しているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、凸状に形成されていてもよい。
【0045】
レンズ部は、ディスプレイパネルと向き合うバックグラウンド層の背面に形成されていてもよいが、視聴者と向き合うバックグラウンド層の前面に形成されていてもよい。また、レンズ部は、バックグラウンド層の両面に形成されていてもよい。
【0046】
レンズ部は、互いに離間して複数形成される。ここで、複数とは、光学フィルムの断面上において、レンズ部が互いに離間して複数形成され、レンズ部同士の間に光を透過させるバックグラウンド層の平坦面が存在することを意味する。したがって、例えば、半楕円形断面マトリックスパターンのレンズ部は、視聴者側から見るとマトリックスパターンをなす単一のレンズ部のように見えるが、光学フィルムの断面上では複数の半楕円形断面レンズ部が互いに離間して配列された構造を有するので、本発明のレンズ部に該当する。
【0047】
図9は、比較実施形態のカラーシフト低減層の製造方法を示す図である。
【0048】
バックグラウンド層21は、バッキング(backing)25上に形成されていてよい。
【0049】
バッキング25は、紫外線透過性を持つ透明な樹脂フィルムまたはガラス基板が好ましい。バッキングの材質としては、例えば、ポリテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、TAC(TriAcetate Cellulose)などが使用されてよい。バッキングの屈折率は、バックグラウンド層の屈折率と同一であることが好ましいが、必ずしも本発明がこれに限定されるものではない。
【0050】
レンズ部23を形成する方法は、バッキング25の片面に紫外線硬化性樹脂を塗布した後、紫外線を照射しながら、レンズ部の鏡像が表面に形成された成形ロールを利用して紫外線硬化性樹脂に凹状溝を形成する。その後、再び紫外線硬化性樹脂に紫外線を照射して、最終的にレンズ部23が形成されたバックグラウンド層21を完成する。
【0051】
なお、比較実施形態のカラーシフト低減層はこれに限定されるものではなく、熱可塑性樹脂を利用した熱プレス法や、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を充填して成形する射出成形法などの各種の方法を用いてバックグラウンド層の凹状溝を得ることができる。
【0052】
図10は、レンズ部の深さD/幅Wの比とカラーシフト改善率との関係を示す図である。
【0053】
目視にて区別できるカラーシフトの程度は、Δu'v'=0.004以上である。したがって、視聴角0°から60°の間で最大Δu'v'=0.02水準のカラーシフトを持つディスプレイパネル(カラーシフト特性が最も優れているS−IPSパネル基準)が目視にて区別できるカラーシフトの改善効果を示すためには、少なくとも色変化の改善率が20%以上(最大Δu'v'=0.016以下)でなければならない。図10のグラフから、色変化の改善率が20%以上になるためには、レンズ部の深さ/幅の比が0.25以上でなければならないことが分かる。また、レンズ部の深さ/レンズ部の幅の比が6を超えると、通常のレンズ部形成方法ではフィルムの製造が不可能であるため、レンズ部の深さ/レンズ部の幅は6以下にならなければならない。
【0054】
図11は、レンズ部の間隔c/ピッチPの比とカラーシフト改善率との関係を示す図である。
【0055】
同様に、図11のグラフから、カラーシフト改善率が20%以上になるためには、レンズ部間の間隔/レンズ部のピッチとの比が0.95以下でなければならない。
【0056】
図12は、レンズ部の間隔C/ピッチPの比と透過率との関係を示す図である。
【0057】
図12のグラフから分かるように、レンズ部間の間隔/レンズ部のピッチとの比が大きいほどフィルム透過率が上がる。フィルム透過率が50%以上になってはじめて商品としての価値があり、透過率が50%以上になるためには、レンズ部間の間隔/レンズ部のピッチとの比が0.5以上になる必要がある。
【0058】
したがって、図11及び図12のグラフから、好適なレンズ部間の間隔/レンズ部のピッチの比が0.5〜0.95にならなければならないことが分かる。
【0059】
図13ないし図18は、レンズ部の断面の形状と二重像との関係を示す図である。
【0060】
図13に示すように、レンズ部(レンズ部の幅27μm、深さ81μm、ピッチ90μm)の曲率を変化させながら、二重像(ghost)を観察した結果、半楕円形断面を有するレンズ部が二重像の発生を最も効果的に抑制することができる。
【0061】
半楕円形から三角形に変わるにつれて、すなわち、曲率が減少するにつれてゴースト(虚像)がはっきりと観察される。図14ないし図18は、原像の輝度と虚像の輝度分布を比較して示す図である。
【0062】
図19ないし図21は、カラーシフト低減層がディスプレイパネルと離間して設けられている場合に二重像及びヘイズが発生することを示す図である。
【0063】
比較実施形態のカラーシフト低減層をディスプレイパネルの前に装着する場合、図19に示すように、カラーシフト低減層がディスプレイパネルと離間し、その距離が大きくなるほど二重像がはっきりする。図20は、カラーシフト低減層がディスプレイパネルと離間して設けられた場合における二重像の発生を示す図である。このような二重像は、ディスプレイパネルの映像を歪曲させるようになる。そこで、カラーシフトを低減させ、且つ、二重像を発生させないようにする方案が要求される。
【0064】
さらには、カラーシフト低減層がディスプレイパネルと離間して設けられている場合、前述した二重像の問題だけでなく、図21に示すように、レンズ部同士の間の平坦面とディスプレイパネルから反射して戻ってくる外光をレンズ部が拡散させることでヘイズが発生するという問題もある。すなわち、カラーシフト低減層とディスプレイパネルへ入射した外光が、カラーシフト低減層と空気(カラーシフト低減層とディスプレイパネルとの間の空気)との界面、そして、空気とディスプレイパネルとの界面で反射または多重反射してからレンズ部に入射し、その後拡散することでヘイズが発生する。このような現象は、明室明暗比を落としてパネルの視認性を低下させる。そこで、カラーシフト低減層の二重像の発生及びヘイズの発生を改善することができる解決策が要求される。
【0065】
図22ないし図24は、カラーシフト低減層の二重像及びヘイズの除去に係る方案を示す図であって、図22は、比較実施形態のディスプレイ装置を概略的に示す図であり、図23は、図22のディスプレイ装置において二重像が除去されることを示す図であり、図24は、比較実施形態に係るディスプレイ装置を概略的に示す図である。
【0066】
カラーシフト低減層とディスプレイパネルを密着させることで、二重像及びヘイズを除去することができる。例えば、図22に示すようにカラーシフト低減層を粘着剤31を介してディスプレイパネルに粘着するか、図24に示すように、自己粘着性を持つ物質にてバックグラウンド層を形成し、そのバックグラウンド層をディスプレイパネルに直接付着させることで、二重像及びヘイズの発生を抑制することができ、且つ、透過率を向上させることができる。また、カラーシフト低減層がディスプレイパネルに粘着することなく単に密着することで、それらの間に空気層が介在しないようにすることも有効である。カラーシフト低減層がディスプレイパネルと密着している場合、二重像と原像との間隔が極めて小さいため区分し難い。
【0067】
このとき、レンズ部は、視聴者側でないディスプレイパネル側と向き合った方がヘイズ低減の面で好ましい。(これは、カラーシフト低減層がディスプレイパネルと離間して設けられている場合も同様である。)
ここで、自己粘着性を持つバックグラウンド層は、紫外線で硬化が可能な透明弾性重合体からなり、容易にディスプレイパネルに直接付着することができる。材料としては、アクリル系エラストマー、シリコン系エラストマー(PDMS)、ウレタン系エラストマー、ポリビニルブチラール(PMB)エラストマー、エチレン−酢酸ビニル系(EVA)エラストマー、ポリビニルエーテル系エラストマー、無定形の飽和ポリエステル系エラストマー、メラミン樹脂系エラストマーなどが使用されてよい。
【0068】
下表1は、カラーシフト低減層がディスプレイパネルと離間して設けられたディスプレイ装置と、図22のディスプレイ装置における、外光によるヘイズを測定した結果を示す。
【表1】
【0069】
測定方法は、外光D65 240lux条件下にブラック基板にサンプルを付着し、左右の視聴角60°で反射される光の輝度を測定した。外光は、サンプルの上方に存在するため、正反射にあたる部分はサンプルの下方から観測可能であり、乱反射は、全方向から観測可能である。このため、サンプルの下方でない側方60°から乱反射された光を測定し、外光による反射ヘイズを測定した。
【0070】
カラーシフト低減層がディスプレイパネルに粘着(または直接付着)された場合、測定された反射ヘイズは2.58nitであって、離間して空気層が存在する場合に比べて非常に小さく、甚だしくはレンズ部を有さないPETフィルムと比べても反射ヘイズが相当に減少したことが分かる。
【0071】
図25は、図5のS−PVAモードLCD TVにおいて、自己粘着性を持つ比較実施形態のカラーシフト低減層(レンズ部の幅は30μm、深さ60μm、ピッチ83μm、半楕円形断面)をディスプレイパネルに付着して、色変化の改善率を測定した結果を示す図である。
【0072】
図25の色変化の改善率は52%を示した。
【0073】
図26は、比較実施形態のカラーシフト低減層を具備していないS−IPSモードLCD TVの色変化を示す図であり、図27は、図26のLCD TVに自己粘着性を持つ比較実施形態のカラーシフト低減層(レンズ部の幅30μm、深さ60μm、ピッチ83μm、半楕円形断面)をディスプレイパネルに付着して、色変化の改善率を測定した結果を示す図である。
【0074】
色変化の改善率は50%を示した。
【0075】
この他、TNモードLCDでも同様にカラーシフトの改善効果を得ることができ、とりわけ、TNモード液晶LCDでは、後述するように階調反転の改善効果までも得ることができる。
【0076】
図28ないし図31は、CCFL BLU及びTNパネルを採用したLCDモニター(モデル:B2440MH)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフトの改善や階調反転、及びガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【0077】
カラーシフトの改善程度を測定するために、測定器機としてSS320ゴニオメーターを使用した。ディスプレイパネルの上下0〜60°まで10°おきに色座標を測定し、カラーシフトに換算して図28を得、カラーシフト低減層サンプルをパネルに直接付着した後、同様に測定して図29を得た。その結果、カラーシフト改善率が25.5%(上)及び65.4%(下)を示すことが分かった。
【0078】
階調反転及びガンマカーブの歪みの改善程度を測定するために、測定器機としてCS−1000を使用した。ディスプレイパネルの正面(0°)及び上下30°、60°の角度におけるW、R、G、Bのグレーレベル毎の輝度を測定して図30を得、カラーシフト低減層サンプルをパネルに直接付着した後、同様に測定して図31を得た。その結果、カラーシフト低減層の適用時にガンマカーブの線形性が回復して階調反転現象が改善し、角度毎のガンマカーブ間の変化が相当に縮小し、ガンマ曲線の歪みが縮小することが分かった。
【0079】
図32ないし図35は、LED BLU及びTNパネルを採用したLCDモニター(モデル:BX2440)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフトの改善や階調反転、及びガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【0080】
カラーシフトの改善程度を測定するために、測定器機としてSS320ゴニオメーターを使用した。ディスプレイパネルの上下0〜60°まで10°おきに色座標を測定し、カラーシフトに換算して図32を得、カラーシフト低減層サンプルをパネルに直接付着した後、同様に測定して図33を得た。その結果、カラーシフト改善率が30.9%(上)及び63.5%(下)を示すことが分かった。
【0081】
階調反転及びガンマカーブの歪みの改善程度を測定するために、測定器機としてCS−1000を使用した。ディスプレイパネルの上下30°、60°の角度におけるW、R、G、Bのグレーレベル毎の輝度を測定して図34を得、カラーシフト低減層サンプルをパネルに直接付着した後、同様に測定して図35を得た。その結果、カラーシフト低減層の適用時にガンマカーブの線形性が回復して階調反転現象が改善し、角度毎のガンマカーブ間の変化が相当に縮小し、ガンマ曲線の歪みが縮小することが分かった。
【0082】
図36ないし図39は、S−PVAパネルを採用した46インチLCD TV(モデル:LH46CSPLBC)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフト改善とガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【0083】
カラーシフトの改善程度を測定するために、測定器機としてSS320ゴニオメーターを使用した。ディスプレイパネルの左右0〜60°まで10°おきに色座標を測定し、カラーシフトに換算して図36を得、カラーシフト低減層サンプルをパネルに直接付着した後、同様に測定して図37を得た。その結果、カラーシフト改善率が48.7%(左)及び53.7%(右)を示すことが分かった。
【0084】
ガンマカーブの歪みの改善程度を測定するために、測定器機としてCS−1000を使用した。ディスプレイパネルの正面と左側30°、60°の角度におけるW、R、G、Bのグレーレベル毎の輝度を測定して図38を得、カラーシフト低減層サンプルをパネルに直接付着した後、同様に測定して図39を得た。その結果、カラーシフト低減層の適用時に角度毎のガンマカーブ間の変化が相当に縮小することが分かった。
【0085】
図40ないし図42は、レンズ部のサイズと二重像の発生との関係を示す図であり、図43は、レンズ部のサイズとモアレの発生との関係を示す図である。
【0086】
カラーシフト低減光学フィルムをディスプレイパネルと密着して設け、レンズ部のピッチが45μm以下になるようにすることで、カラーシフト低減光学フィルムの二重像の発生を防止することができる。好ましくは、前述したレンズ部の深さ/幅の比とレンズ部間の間隔/ピッチの比を満たし、且つピッチが45μm以下になることが好ましい。一方、0.01μm未満の大きさのレンズ部が存在する場合、前記した光の反射、屈折または散乱効果による色混合よりはフィルムの屈折率と空気の屈折率との中間である薄膜のように作用し、その効果が微々たるものとなるため、レンズ部のピッチは0.01μm以上であることが好ましい。
【0087】
下表2は、各サンプルのレンズ部のサイズを表す。このとき、レンズ部の深さ/幅の比とレンズ部間の間隔/ピッチの比は、すべて同一である。
【表2】
【0088】
図40ないし図42は、円形のイメージを、中心を通る線に沿って輝度を測定した結果を示す図である。同図に示すように、中心を通る線とイメージとが交差する二つの交差点において、サンプル#6_ref.では二つのピークが現れているのに対し、図40のサンプル#6_P1、図41のサンプル#6_P2、図43のサンプル#6_P3にいくほど、二重像の発生が低減することが分かる。
【0089】
また、図43に示すように、サンプル#6_ref.ではモアレが発生していたのに対し、サンプル#6_P1ではモアレが発生していないことが分かる。
【0090】
<本発明>
前述した比較実施形態のカラーシフト低減層をディスプレイパネルの前方に配置することでカラーシフトを大きく改善させることができた。さらには、カラーシフト低減層をディスプレイパネルの前方に密着して配置することで、二重像及びヘイズの問題を解消することができた。また、ガンマカーブの歪み及び階調反転を改善することができた。
【0091】
比較実施形態のカラーシフト及び階調反転の改善のための構成、及び二重像及びヘイズの発生抑制のための構成は、本発明においても核心構成をなす。本発明では、これに加えて、外光によるヘイズの発生及び明室明暗比の低下をさらに改善することができる方案を提示する。
【0092】
図21を参照して前述したとおり、外光は、ヘイズを発生させ、且つ明室明暗比を低下させる原因になる。カラーシフト低減層をパネルに密着させることで相当程度のヘイズの低減及び明室明暗比の向上をもたらすことができた。しかしながら、依然としてカラーシフト低減層とパネルへ入射した外光は、空気とパネルとの界面、そして空気とカラーシフト低減層との界面で拡散反射してブラック映像の輝度値を増加させる。このような現象は、明室明暗比を落としてディスプレイ装置の視認性を低下させる。
【0093】
また、バックグラウンド層とバッキングとの界面、そしてバッキングの前面で起きる外光の反射も、反射ヘイズを増加させる原因になる。このようなヘイズによって、ブラック画面において輝度が高いため画面がぼやけて見える現象が発生し、またブラック輝度の増加により明室明暗比が増加し、視認性を低下させる。
【0094】
図44は、明室明暗比の向上のための本発明の一実施形態に係る光学フィルターを概略的に示す図である。
【0095】
本発明は、カラーシフト低減層20と外光遮蔽層30を含む。この他、バッキング25を含んでいてよい。
【0096】
図示したように、図44の光学フィルターは、前方から順に外光遮蔽層30、バッキング25及びカラーシフト低減層20を含む。
【0097】
外光遮蔽層30は、光吸収物質を含む。外光遮蔽層30は、カラーシフト低減層20よりは前方に配置されることが好ましい。
【0098】
外光遮蔽層30は、吸収特性がブラックである光吸収物質、すなわち、可視光線の全波長に対して吸収性を持つ黒色光吸収物質を含んでいてよい。黒色光吸収物質によって、外光遮蔽層の透過色の色座標は、好ましくは、D65光源下においてL*が50以下、a*及びb*は、−30〜+30の値を有する。黒色光吸収物質は、カーボンブラックであってよい。
【0099】
一実施形態によれば、カーボンブラック色素3g(1wt%溶液形態)をMEK溶媒52gに混合し、この混合物をコーティングして外光遮蔽層を得ることができる。これに加えて、外光遮蔽層は樹脂を含み、前記光吸収物質が樹脂に混合されて外光遮蔽層をなしていてよい。
【0100】
光吸収物質をバックグラウンド層またはバッキングに含ませて、別途の外光遮蔽層を設けることなく、バックグラウンド層またはバッキングが外光遮蔽層として働くようにすることもできる。また、粘着剤層が外光遮蔽層として働くようにすることもできる。この場合、光吸収物質は、粘着剤に混合された形態を有していてよい。また、外光遮蔽層は、他の光学機能を有することもできる。すなわち、他の光学機能性層に光吸収物質を含ませて、外光遮蔽層の役割を兼ねるようにすることができる。
【0101】
バッキング25は、カラーシフト低減層20と外光遮蔽層30を支持する役割をする。カラーシフト低減層と外光遮蔽層は、バッキングの背面及び前面にそれぞれ直接コートされていてよい。この場合、単一バッキングにてカラーシフト低減層と外光遮蔽層の両方を支持することができ、バッキングの数を削減することができるという利点がある。実施形態によっては、バッキング25は省略することもできる。
【0102】
下表3は、外光遮蔽層を有する本発明の実施形態と外光遮蔽層を有さない比較実施形態の実験結果を表す。
【表3】
【0103】
外光反射ヘイズは、外光が反射して散乱される程度を示し、低いほど好ましい。外光反射測定方法は、外光がパネルの正面から上方40°の位置にあり且つパネル面での照度が300lux条件であるとき、パネルにサンプルを付着し左右50°の側方に反射される光の輝度を測定した結果である。表3に表すように、外光遮蔽層がヘイズを低減させることが分かる。
【0104】
本発明のディスプレイ装置用光学フィルターは、パネル保護用透明基板、アンチフォグ層、反射防止層、偏光フィルム、位相差フィルムなどの各種の機能性フィルムをさらに含んでいてよい。
【0105】
この場合、本発明の光学フィルターを構成する各構成層は、粘着剤または接着剤にて粘着または接着されていてよい。具体的な材料として、アクリル系接着剤、シリコン系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリビニルブチラール接着剤(PMB)、エチレン−酢酸接着剤(EVA)、ポリビニルエーテル、無定形の飽和ポリエステル、メラミン樹脂などが挙げられる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ装置用光学フィルター及びこれを具備する液晶ディスプレイ装置に係り、より詳しくは、凹状または凸状のレンズ部を有するカラーシフト低減層と光吸収物質を含む外光遮蔽層を具備し、視聴角によるカラーシフトを改善する液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター及びこれを具備する液晶ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報化社会が進展するにつれ、イメージディスプレイ関連部品及び機器が顕著に進歩し且つ普及してきている。その中でも、画像を表示するディスプレイ装置は、テレビ用、パーソナルコンピューターのモニター装置用などとして顕著に普及してきており、大型化と薄型化が同時に進行している。
【0003】
一般に、液晶表示装置(Liquid Crystal Display)は、液晶(Liquid Crystal)を利用して映像を表示するフラット表示装置の一つであって、他のディスプレイ装置に比べて薄くて軽量であり、低い駆動電圧及び低い消費電力を有するという長所がある。このため、産業全般にわたって広範に使用されている。
【0004】
図1は、LCDの基本構造と駆動原理を概念的に示す概念図である。従来のVAモードLCDを例に挙げると、2つの偏光フィルム110、120は、その光軸が互いに垂直になるように付着されている。透明電極140がコーティングされた2つの透明基板130の間に複屈折特性を示す液晶分子150が挿入、配列される。駆動電源部180によって電場が印加されると、液晶分子が電場に対し垂直に動いて配列される。
【0005】
バックライトユニットから出る光は、第1の偏光フィルム120を通過してから線偏光になり、図1の左側に示されたように、オフ状態である場合、液晶は基板に対して垂直配向されているため、線偏光された光は、その状態がそのまま保持され、第1の偏光フィルム120と垂直な第2の偏光フィルム110を通過することができなくなる。
【0006】
一方、図1の右側に示されたように、オン状態である場合、液晶は電場によって基板と平行な方向に沿って2つの直交偏光フィルム110、120の光軸の間に水平配向される。このため、第1の偏光フィルムを介して線偏光された光は液晶分子を通過しながら、第2の偏光フィルムに到逹する直前に偏光状態が90°回転された線偏光、円偏光または楕円偏光状態に変化して第2の偏光フィルムを通過するようになる。電場の強さを調節すれば、液晶の配列状態が垂直配向から徐々に水平方向に配向角度が変化し、このときに出る光の強さを調節することができる。
【0007】
図2は、視聴角による液晶の配向状態と光透過度を示す概念図である。
【0008】
画素220内に液晶分子が所定の方向に配列されている場合、視聴角によって配列状態が異なって見えるようになる。
【0009】
正面の左側から見たとき(210)、液晶分子の配列状態はほぼ水平配向212に見え、画面が相対的に明るく見えるようになる。画面の正面から見たとき(230)、液晶分子の配列状態232は画素220内の液晶分子の配列と等しく見える。正面の右側から見たとき(250)、液晶分子の配列状態は垂直配向252に見え、画面が相対的に暗く見えるようになる。
【0010】
したがって、LCDでは、視聴角の変化に伴って光の強さや色の変化が発生し、自発光ディスプレイに比べて視野角が大きく制限される。このため、視野角の改善のための多くの研究が進められてきた。
【0011】
図3は、視聴角による明暗比の変化及びカラーシフトを改善するための従来技術の一例を示す概念図である。
【0012】
図3を参照すると、画素を2つの部分画素、すなわち、第1の画素部320と第2の画素部340とに分割し、各画素部の液晶配列状態が互いに対称になるようにする。視聴者の視聴方向に応じて第1の画素部320での液晶の配列状態と第2の画素部340での液晶の配列状態が同時に見えるようになり、視聴者に見える光の強さは、それぞれの画素部の光の強さの和になる。
【0013】
すなわち、正面の左側から見たとき(310)、第1の画素部320の液晶は水平配向312に見え、第2の画素部340の液晶は垂直配向314に見えるようになり、第1の画素部320によって画面が明るく見えるようになる。同様に、正面の右側から見たとき(350)、第1の画素部320の液晶は垂直配向352に見え、第2の画素部340の液晶は水平配向354に見えるようになり、第2の画素部340によって画面が明るく見えるようになる。正面330から見たときは、各画素部の配列状態と同一に見えるようになる。このため、視聴者が見るときの画面の明るさは、視聴角の変化に伴って同一またはほぼ同一になり、画面に対する垂直方向を中心に対称になる。これにより、視聴角の変化に伴う明暗比の変化及び色変化の度合いが改善できるようになる。
【0014】
図4は、視聴角による明暗比の変化及びカラーシフトを改善するための従来技術の他の一例を示す概念図である。
【0015】
図4を参照すると、複屈折特性を持っており、その特性がLCDパネルにおいて画素440内の液晶分子と同一であり、液晶分子の配列状態と対称になる光学フィルム420がさらに備えられている。視聴者の視聴方向による画素440内の液晶の配列状態と光学フィルム420の複屈折特性により、視聴者に見える光の強さはそれぞれによる光の強さの和になる。
【0016】
すなわち、正面の左側から見たとき(410)、画素440内の液晶は水平配向414に見え、光学フィルム420による仮想液晶は垂直配向412に見えるようになり、光の強さはそれぞれの和になる。同様に、正面の右側から見たとき(450)、画素440内の液晶は垂直配向454に見え、光学フィルム420による仮想液晶は水平配向452に見えるようになり、光の強さはそれぞれの和になる。正面から見たとき(430)は、画素440内の液晶分子の配列状態と光学フィルム420の配列状態とがそれぞれ同一に見えるようになる(432、434)。
【0017】
しかしながら、前記した技術によっても、図5に示すように、依然として視聴角によるカラーシフトは存在し、視聴角の増大に伴って色変化が生じるという問題点を有する。
【0018】
また、従来の光学フィルム及びディスプレイ装置、特にTNモード液晶ディスプレイ装置では、ガンマカーブの歪み及び階調反転が生じるという問題点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、視聴角の増大に伴うカラーシフト現象を改善することができる液晶ディスプレイ装置用光学フィルター及びこれを具備する液晶ディスプレイ装置を提供することにある。
【0020】
本発明の他の目的は、カラーシフト現象を改善し、且つ、二重像及びヘイズの発生を抑制することができる液晶ディスプレイ装置用光学フィルター及びこれを具備する液晶ディスプレイ装置を提供することにある。
【0021】
本発明のまた他の目的は、ガンマカーブの歪み及び階調反転を改善することができる液晶ディスプレイ装置用光学フィルター及びこれを具備する液晶ディスプレイ装置を提供することにある。
【0022】
本発明のさらなる目的は、外光によるヘイズの発生及び明室明暗比の低下をさらに改善することができる液晶ディスプレイ装置用光学フィルター及びこれを具備する液晶ディスプレイ装置を提供することにある。
【0023】
本発明が解決しようとする技術的課題は前述した技術的課題に制限されず、言及されていない他の技術的課題は、下記から当業者には明確に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前記目的を達成するために、本発明は、液晶ディスプレイパネルの前方に具備される液晶ディスプレイ装置用光学フィルターであって、カラーシフト低減層と、外光遮蔽層とを含んでなり、前記カラーシフト低減層は、層をなすバックグラウンド層と前記バックグラウンド層に互いに離間して形成される複数の凹状または凸状レンズ部とを含み、液晶の複屈折特性によって視聴角度及び階調水準に応じて他の色で前記液晶ディスプレイパネルから出射する光のうち、レンズ部に入射した光の出射方向を分散させて、互いに離間した前記レンズ部の間を通過する光と混合させ、前記外光遮蔽層は、光吸収物質を含むことを特徴とする液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルターを提供する。
【0025】
好ましくは、前記光吸収物質は、可視光線の全波長帯を吸収する黒色物質である。
【発明の効果】
【0026】
前記構成によれば、本発明は、視聴角の増大に伴うカラーシフト現象を最小化することで、ディスプレイ装置の視野角を確保し且つ画質を改善することができるという効果を奏する。
【0027】
また、本発明は、カラーシフト現象を改善し、且つ、二重像及びヘイズの発生を抑制することができるという効果を奏する。
【0028】
さらに、本発明は、ガンマカーブの歪み及び階調反転を改善することができるという効果を奏する。
【0029】
また、本発明は、外光によるヘイズの発生及び明室明暗比の低下をさらに改善することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】LCDの基本構造と駆動原理を概念的に示す概念図である。
【図2】視聴角による液晶の配向状態と光透過度を示す概念図である。
【図3】視聴角による明暗比の変化及びカラーシフトを改善するための従来技術の一例を示す概念図である。
【図4】視聴角による明暗比の変化及びカラーシフトを改善するための従来技術の他の一例を示す概念図である。
【図5】カラーシフト低減層を装着していない状態のLCDの視聴角によるカラーシフトを示すグラフである。
【図6】比較実施形態に係るカラーシフト低減層を示す断面図である。
【図7】比較実施形態に係るカラーシフト低減層を示す断面図である。
【図8】比較実施形態に係るカラーシフト低減層を示す断面図である。
【図9】比較実施形態に係るカラーシフト低減層の製造方法を示す図である。
【図10】レンズ部の深さ/幅の比とカラーシフト改善率との関係を示す図である。
【図11】レンズ部の間隔/ピッチの比とカラーシフト改善率との関係を示す図である。
【図12】レンズ部の間隔/ピッチの比と透過率との関係を示す図である。
【図13】レンズ部の断面の形状と二重像との関係を示す図である。
【図14】レンズ部の断面の形状と二重像との関係を示す図である。
【図15】レンズ部の断面の形状と二重像との関係を示す図である。
【図16】レンズ部の断面の形状と二重像との関係を示す図である。
【図17】レンズ部の断面の形状と二重像との関係を示す図である。
【図18】レンズ部の断面の形状と二重像との関係を示す図である。
【図19】比較実施形態に係るカラーシフト低減層をディスプレイパネルと密着して設けて、二重像及びヘイズの発生を抑制することができることを示す図である。
【図20】比較実施形態に係るカラーシフト低減層をディスプレイパネルと密着して設けて、二重像及びヘイズの発生を抑制することができることを示す図である。
【図21】比較実施形態に係るカラーシフト低減層をディスプレイパネルと密着して設けて、二重像及びヘイズの発生を抑制することができることを示す図である。
【図22】比較実施形態に係るカラーシフト低減層をディスプレイパネルと密着して設けて、二重像及びヘイズの発生を抑制することができることを示す図である。
【図23】比較実施形態に係るカラーシフト低減層をディスプレイパネルと密着して設けて、二重像及びヘイズの発生を抑制することができることを示す図である。
【図24】比較実施形態に係るカラーシフト低減層をディスプレイパネルと密着して設けて、二重像及びヘイズの発生を抑制することができることを示す図である。
【図25】図5のS−PVAモードLCD TVにおいて、自己粘着性を持つ比較実施形態のカラーシフト低減層をディスプレイパネルに付着して、色変化の改善率を測定した結果を示す図である。
【図26】比較実施形態のカラーシフト低減層を具備していないS−IPSモードLCD TVの色変化を示す図である。
【図27】図26のLCD TVに自己粘着性を持つ比較実施形態のカラーシフト低減層をディスプレイパネルに付着して、色変化の改善率を測定した結果を示す図である。
【図28】CCFL BLU及びTNパネルを採用したLCDモニター(モデル:B2440MH)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフトの改善や階調反転、及びガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【図29】CCFL BLU及びTNパネルを採用したLCDモニター(モデル:B2440MH)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフトの改善や階調反転、及びガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【図30】CCFL BLU及びTNパネルを採用したLCDモニター(モデル:B2440MH)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフトの改善や階調反転、及びガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【図31】CCFL BLU及びTNパネルを採用したLCDモニター(モデル:B2440MH)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフトの改善や階調反転、及びガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【図32】LED BLU及びTNパネルを採用したLCDモニター(モデル:BX2440)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフトの改善や階調反転、及びガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【図33】LED BLU及びTNパネルを採用したLCDモニター(モデル:BX2440)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフトの改善や階調反転、及びガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【図34】LED BLU及びTNパネルを採用したLCDモニター(モデル:BX2440)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフトの改善や階調反転、及びガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【図35】LED BLU及びTNパネルを採用したLCDモニター(モデル:BX2440)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフトの改善や階調反転、及びガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【図36】S−PVAパネルを採用した46インチLCD TV(モデル:LH46CSPLBC)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフト改善とガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【図37】S−PVAパネルを採用した46インチLCD TV(モデル:LH46CSPLBC)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフト改善とガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【図38】S−PVAパネルを採用した46インチLCD TV(モデル:LH46CSPLBC)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフト改善とガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【図39】S−PVAパネルを採用した46インチLCD TV(モデル:LH46CSPLBC)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフト改善とガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【図40】レンズ部のサイズと二重像の発生との関係を示す図である。
【図41】レンズ部のサイズと二重像の発生との関係を示す図である。
【図42】レンズ部のサイズと二重像の発生との関係を示す図である。
【図43】レンズ部のサイズとモアレの発生との関係を示す図である。
【図44】本発明の一実施形態に係るカラーシフト低減光学フィルターを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<比較実施形態>
以下では、比較実施形態を説明する。比較実施形態に基づいてカラーシフト低減層のカラーシフトの低減の原理について先に説明する。その後、カラーシフト低減層による二重像及びヘイズの発生を抑制する方案について説明し、カラーシフト低減層がガンマカーブの歪み及び階調反転の改善に有効であることを説明することとする。
【0032】
図6及び図7は、比較実施形態に係るカラーシフト低減層を示す断面図である。
【0033】
カラーシフト低減層は、典型的にディスプレイパネル10の前方に具備される。
【0034】
図示したように、カラーシフト低減層20は、バックグラウンド層21とレンズ部23を具備する。
【0035】
バックグラウンド層21は、光を透過させる物質が層をなして形成される。バックグラウンド層21は、透明高分子樹脂、特に紫外線硬化性透明樹脂からなるものであってよい。
【0036】
レンズ部23は、所定の深さにて凹状または凸状にバックグラウンド層21に形成される。レンズ部は、光を屈折させ、カラーシフトを改善する。レンズ部23は、色混合効果によって、視聴角の増大に伴う色変化を減少させる。レンズ部間の間隔に比べてレンズ部の幅が小さくなるようにすることでディスプレイパネル面の法線方向に放出される光を多く透過させることができる。
【0037】
レンズ部は、ディスプレイパネル面の法線方向に発光される光の方向を変化させて法線から外れる方向に変更させ、また、ディスプレイパネル面の法線から外れる方向に出る光の一部を法線方向に変更させる。すなわち、レンズ部が、視聴角に応じて発光される光の方向を変化させることで、色混合を誘導してカラーシフトを改善することができる。
【0038】
レンズ部23は、多角形断面ストライプパターン、多角形断面波パターン、多角形断面マトリックスパターン、多角形断面ハニカムパターン、多角形断面ドットパターン、半円形断面ストライプパターン、半円形断面波パターン、半円形断面マトリックスパターン、半円形断面ハニカムパターン、半円形断面ドットパターン、半楕円形断面ストライプパターン、半楕円形断面波パターン、半楕円形断面マトリックスパターン、半楕円形断面ハニカムパターン、半楕円形断面ドットパターン、半卵形(oval)断面ストライプパターン、半卵形断面波パターン、半卵形断面マトリックスパターン、半卵形断面ハニカムパターン、及び半卵形断面ドットパターンのいずれかを有していてよい。
【0039】
ここで、多角形断面は、三角形断面、台形断面、四角形断面などであってよい。また、半卵形断面は、円弧及び楕円弧以外の他の曲線軌跡を描くものであってよい。また、半円形、半楕円形及び半卵形は、それぞれ円形、楕円形、及び卵形を正確に1/2に分けた図形を意味するだけでなく、レンズ部の断面のうち一部が円弧、楕円弧、放物線を含む図形をも意味する。すなわち、両辺が楕円弧で、ボトム(Bottom)が直線である図形も前記半楕円形に含まれるものとする。
【0040】
比較実施形態のカラーシフト低減層はこれらに限定されず、種々の形態を有していてよく、断面が左右対称であることが好ましい。
【0041】
また、例えば、ストライプパターンの場合でも、水平ストライプパターン、垂直ストライプパターンなどの種々のパターンを有していてよい。水平方向に形成される場合には、上下の視聴角補償に有効であり、図7に示すように垂直方向に形成される場合には、左右の視聴角補償に有効である。
【0042】
モアレ現象の防止のために、レンズ部23は、バックグラウンド層21の辺に対して所定のバイアス角度を有して形成されていてよい。例えば、ストライプパターンの場合、ストライプが水平または垂直方向に対して所定の傾斜角を有していてよい。
【0043】
レンズ部23は、好ましくは、図7に示すように、レンズ部がバックグラウンド層21の片面に所定の周期にて離間して平行に配列される。
【0044】
図6では、レンズ部23がバックグラウンド層21に対して凹状に形成される実施形態を示しているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、凸状に形成されていてもよい。
【0045】
レンズ部は、ディスプレイパネルと向き合うバックグラウンド層の背面に形成されていてもよいが、視聴者と向き合うバックグラウンド層の前面に形成されていてもよい。また、レンズ部は、バックグラウンド層の両面に形成されていてもよい。
【0046】
レンズ部は、互いに離間して複数形成される。ここで、複数とは、光学フィルムの断面上において、レンズ部が互いに離間して複数形成され、レンズ部同士の間に光を透過させるバックグラウンド層の平坦面が存在することを意味する。したがって、例えば、半楕円形断面マトリックスパターンのレンズ部は、視聴者側から見るとマトリックスパターンをなす単一のレンズ部のように見えるが、光学フィルムの断面上では複数の半楕円形断面レンズ部が互いに離間して配列された構造を有するので、本発明のレンズ部に該当する。
【0047】
図9は、比較実施形態のカラーシフト低減層の製造方法を示す図である。
【0048】
バックグラウンド層21は、バッキング(backing)25上に形成されていてよい。
【0049】
バッキング25は、紫外線透過性を持つ透明な樹脂フィルムまたはガラス基板が好ましい。バッキングの材質としては、例えば、ポリテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、TAC(TriAcetate Cellulose)などが使用されてよい。バッキングの屈折率は、バックグラウンド層の屈折率と同一であることが好ましいが、必ずしも本発明がこれに限定されるものではない。
【0050】
レンズ部23を形成する方法は、バッキング25の片面に紫外線硬化性樹脂を塗布した後、紫外線を照射しながら、レンズ部の鏡像が表面に形成された成形ロールを利用して紫外線硬化性樹脂に凹状溝を形成する。その後、再び紫外線硬化性樹脂に紫外線を照射して、最終的にレンズ部23が形成されたバックグラウンド層21を完成する。
【0051】
なお、比較実施形態のカラーシフト低減層はこれに限定されるものではなく、熱可塑性樹脂を利用した熱プレス法や、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を充填して成形する射出成形法などの各種の方法を用いてバックグラウンド層の凹状溝を得ることができる。
【0052】
図10は、レンズ部の深さD/幅Wの比とカラーシフト改善率との関係を示す図である。
【0053】
目視にて区別できるカラーシフトの程度は、Δu'v'=0.004以上である。したがって、視聴角0°から60°の間で最大Δu'v'=0.02水準のカラーシフトを持つディスプレイパネル(カラーシフト特性が最も優れているS−IPSパネル基準)が目視にて区別できるカラーシフトの改善効果を示すためには、少なくとも色変化の改善率が20%以上(最大Δu'v'=0.016以下)でなければならない。図10のグラフから、色変化の改善率が20%以上になるためには、レンズ部の深さ/幅の比が0.25以上でなければならないことが分かる。また、レンズ部の深さ/レンズ部の幅の比が6を超えると、通常のレンズ部形成方法ではフィルムの製造が不可能であるため、レンズ部の深さ/レンズ部の幅は6以下にならなければならない。
【0054】
図11は、レンズ部の間隔c/ピッチPの比とカラーシフト改善率との関係を示す図である。
【0055】
同様に、図11のグラフから、カラーシフト改善率が20%以上になるためには、レンズ部間の間隔/レンズ部のピッチとの比が0.95以下でなければならない。
【0056】
図12は、レンズ部の間隔C/ピッチPの比と透過率との関係を示す図である。
【0057】
図12のグラフから分かるように、レンズ部間の間隔/レンズ部のピッチとの比が大きいほどフィルム透過率が上がる。フィルム透過率が50%以上になってはじめて商品としての価値があり、透過率が50%以上になるためには、レンズ部間の間隔/レンズ部のピッチとの比が0.5以上になる必要がある。
【0058】
したがって、図11及び図12のグラフから、好適なレンズ部間の間隔/レンズ部のピッチの比が0.5〜0.95にならなければならないことが分かる。
【0059】
図13ないし図18は、レンズ部の断面の形状と二重像との関係を示す図である。
【0060】
図13に示すように、レンズ部(レンズ部の幅27μm、深さ81μm、ピッチ90μm)の曲率を変化させながら、二重像(ghost)を観察した結果、半楕円形断面を有するレンズ部が二重像の発生を最も効果的に抑制することができる。
【0061】
半楕円形から三角形に変わるにつれて、すなわち、曲率が減少するにつれてゴースト(虚像)がはっきりと観察される。図14ないし図18は、原像の輝度と虚像の輝度分布を比較して示す図である。
【0062】
図19ないし図21は、カラーシフト低減層がディスプレイパネルと離間して設けられている場合に二重像及びヘイズが発生することを示す図である。
【0063】
比較実施形態のカラーシフト低減層をディスプレイパネルの前に装着する場合、図19に示すように、カラーシフト低減層がディスプレイパネルと離間し、その距離が大きくなるほど二重像がはっきりする。図20は、カラーシフト低減層がディスプレイパネルと離間して設けられた場合における二重像の発生を示す図である。このような二重像は、ディスプレイパネルの映像を歪曲させるようになる。そこで、カラーシフトを低減させ、且つ、二重像を発生させないようにする方案が要求される。
【0064】
さらには、カラーシフト低減層がディスプレイパネルと離間して設けられている場合、前述した二重像の問題だけでなく、図21に示すように、レンズ部同士の間の平坦面とディスプレイパネルから反射して戻ってくる外光をレンズ部が拡散させることでヘイズが発生するという問題もある。すなわち、カラーシフト低減層とディスプレイパネルへ入射した外光が、カラーシフト低減層と空気(カラーシフト低減層とディスプレイパネルとの間の空気)との界面、そして、空気とディスプレイパネルとの界面で反射または多重反射してからレンズ部に入射し、その後拡散することでヘイズが発生する。このような現象は、明室明暗比を落としてパネルの視認性を低下させる。そこで、カラーシフト低減層の二重像の発生及びヘイズの発生を改善することができる解決策が要求される。
【0065】
図22ないし図24は、カラーシフト低減層の二重像及びヘイズの除去に係る方案を示す図であって、図22は、比較実施形態のディスプレイ装置を概略的に示す図であり、図23は、図22のディスプレイ装置において二重像が除去されることを示す図であり、図24は、比較実施形態に係るディスプレイ装置を概略的に示す図である。
【0066】
カラーシフト低減層とディスプレイパネルを密着させることで、二重像及びヘイズを除去することができる。例えば、図22に示すようにカラーシフト低減層を粘着剤31を介してディスプレイパネルに粘着するか、図24に示すように、自己粘着性を持つ物質にてバックグラウンド層を形成し、そのバックグラウンド層をディスプレイパネルに直接付着させることで、二重像及びヘイズの発生を抑制することができ、且つ、透過率を向上させることができる。また、カラーシフト低減層がディスプレイパネルに粘着することなく単に密着することで、それらの間に空気層が介在しないようにすることも有効である。カラーシフト低減層がディスプレイパネルと密着している場合、二重像と原像との間隔が極めて小さいため区分し難い。
【0067】
このとき、レンズ部は、視聴者側でないディスプレイパネル側と向き合った方がヘイズ低減の面で好ましい。(これは、カラーシフト低減層がディスプレイパネルと離間して設けられている場合も同様である。)
ここで、自己粘着性を持つバックグラウンド層は、紫外線で硬化が可能な透明弾性重合体からなり、容易にディスプレイパネルに直接付着することができる。材料としては、アクリル系エラストマー、シリコン系エラストマー(PDMS)、ウレタン系エラストマー、ポリビニルブチラール(PMB)エラストマー、エチレン−酢酸ビニル系(EVA)エラストマー、ポリビニルエーテル系エラストマー、無定形の飽和ポリエステル系エラストマー、メラミン樹脂系エラストマーなどが使用されてよい。
【0068】
下表1は、カラーシフト低減層がディスプレイパネルと離間して設けられたディスプレイ装置と、図22のディスプレイ装置における、外光によるヘイズを測定した結果を示す。
【表1】
【0069】
測定方法は、外光D65 240lux条件下にブラック基板にサンプルを付着し、左右の視聴角60°で反射される光の輝度を測定した。外光は、サンプルの上方に存在するため、正反射にあたる部分はサンプルの下方から観測可能であり、乱反射は、全方向から観測可能である。このため、サンプルの下方でない側方60°から乱反射された光を測定し、外光による反射ヘイズを測定した。
【0070】
カラーシフト低減層がディスプレイパネルに粘着(または直接付着)された場合、測定された反射ヘイズは2.58nitであって、離間して空気層が存在する場合に比べて非常に小さく、甚だしくはレンズ部を有さないPETフィルムと比べても反射ヘイズが相当に減少したことが分かる。
【0071】
図25は、図5のS−PVAモードLCD TVにおいて、自己粘着性を持つ比較実施形態のカラーシフト低減層(レンズ部の幅は30μm、深さ60μm、ピッチ83μm、半楕円形断面)をディスプレイパネルに付着して、色変化の改善率を測定した結果を示す図である。
【0072】
図25の色変化の改善率は52%を示した。
【0073】
図26は、比較実施形態のカラーシフト低減層を具備していないS−IPSモードLCD TVの色変化を示す図であり、図27は、図26のLCD TVに自己粘着性を持つ比較実施形態のカラーシフト低減層(レンズ部の幅30μm、深さ60μm、ピッチ83μm、半楕円形断面)をディスプレイパネルに付着して、色変化の改善率を測定した結果を示す図である。
【0074】
色変化の改善率は50%を示した。
【0075】
この他、TNモードLCDでも同様にカラーシフトの改善効果を得ることができ、とりわけ、TNモード液晶LCDでは、後述するように階調反転の改善効果までも得ることができる。
【0076】
図28ないし図31は、CCFL BLU及びTNパネルを採用したLCDモニター(モデル:B2440MH)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフトの改善や階調反転、及びガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【0077】
カラーシフトの改善程度を測定するために、測定器機としてSS320ゴニオメーターを使用した。ディスプレイパネルの上下0〜60°まで10°おきに色座標を測定し、カラーシフトに換算して図28を得、カラーシフト低減層サンプルをパネルに直接付着した後、同様に測定して図29を得た。その結果、カラーシフト改善率が25.5%(上)及び65.4%(下)を示すことが分かった。
【0078】
階調反転及びガンマカーブの歪みの改善程度を測定するために、測定器機としてCS−1000を使用した。ディスプレイパネルの正面(0°)及び上下30°、60°の角度におけるW、R、G、Bのグレーレベル毎の輝度を測定して図30を得、カラーシフト低減層サンプルをパネルに直接付着した後、同様に測定して図31を得た。その結果、カラーシフト低減層の適用時にガンマカーブの線形性が回復して階調反転現象が改善し、角度毎のガンマカーブ間の変化が相当に縮小し、ガンマ曲線の歪みが縮小することが分かった。
【0079】
図32ないし図35は、LED BLU及びTNパネルを採用したLCDモニター(モデル:BX2440)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフトの改善や階調反転、及びガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【0080】
カラーシフトの改善程度を測定するために、測定器機としてSS320ゴニオメーターを使用した。ディスプレイパネルの上下0〜60°まで10°おきに色座標を測定し、カラーシフトに換算して図32を得、カラーシフト低減層サンプルをパネルに直接付着した後、同様に測定して図33を得た。その結果、カラーシフト改善率が30.9%(上)及び63.5%(下)を示すことが分かった。
【0081】
階調反転及びガンマカーブの歪みの改善程度を測定するために、測定器機としてCS−1000を使用した。ディスプレイパネルの上下30°、60°の角度におけるW、R、G、Bのグレーレベル毎の輝度を測定して図34を得、カラーシフト低減層サンプルをパネルに直接付着した後、同様に測定して図35を得た。その結果、カラーシフト低減層の適用時にガンマカーブの線形性が回復して階調反転現象が改善し、角度毎のガンマカーブ間の変化が相当に縮小し、ガンマ曲線の歪みが縮小することが分かった。
【0082】
図36ないし図39は、S−PVAパネルを採用した46インチLCD TV(モデル:LH46CSPLBC)における、比較実施形態のカラーシフト低減層によるカラーシフト改善とガンマカーブの歪みの改善を示す図である。
【0083】
カラーシフトの改善程度を測定するために、測定器機としてSS320ゴニオメーターを使用した。ディスプレイパネルの左右0〜60°まで10°おきに色座標を測定し、カラーシフトに換算して図36を得、カラーシフト低減層サンプルをパネルに直接付着した後、同様に測定して図37を得た。その結果、カラーシフト改善率が48.7%(左)及び53.7%(右)を示すことが分かった。
【0084】
ガンマカーブの歪みの改善程度を測定するために、測定器機としてCS−1000を使用した。ディスプレイパネルの正面と左側30°、60°の角度におけるW、R、G、Bのグレーレベル毎の輝度を測定して図38を得、カラーシフト低減層サンプルをパネルに直接付着した後、同様に測定して図39を得た。その結果、カラーシフト低減層の適用時に角度毎のガンマカーブ間の変化が相当に縮小することが分かった。
【0085】
図40ないし図42は、レンズ部のサイズと二重像の発生との関係を示す図であり、図43は、レンズ部のサイズとモアレの発生との関係を示す図である。
【0086】
カラーシフト低減光学フィルムをディスプレイパネルと密着して設け、レンズ部のピッチが45μm以下になるようにすることで、カラーシフト低減光学フィルムの二重像の発生を防止することができる。好ましくは、前述したレンズ部の深さ/幅の比とレンズ部間の間隔/ピッチの比を満たし、且つピッチが45μm以下になることが好ましい。一方、0.01μm未満の大きさのレンズ部が存在する場合、前記した光の反射、屈折または散乱効果による色混合よりはフィルムの屈折率と空気の屈折率との中間である薄膜のように作用し、その効果が微々たるものとなるため、レンズ部のピッチは0.01μm以上であることが好ましい。
【0087】
下表2は、各サンプルのレンズ部のサイズを表す。このとき、レンズ部の深さ/幅の比とレンズ部間の間隔/ピッチの比は、すべて同一である。
【表2】
【0088】
図40ないし図42は、円形のイメージを、中心を通る線に沿って輝度を測定した結果を示す図である。同図に示すように、中心を通る線とイメージとが交差する二つの交差点において、サンプル#6_ref.では二つのピークが現れているのに対し、図40のサンプル#6_P1、図41のサンプル#6_P2、図43のサンプル#6_P3にいくほど、二重像の発生が低減することが分かる。
【0089】
また、図43に示すように、サンプル#6_ref.ではモアレが発生していたのに対し、サンプル#6_P1ではモアレが発生していないことが分かる。
【0090】
<本発明>
前述した比較実施形態のカラーシフト低減層をディスプレイパネルの前方に配置することでカラーシフトを大きく改善させることができた。さらには、カラーシフト低減層をディスプレイパネルの前方に密着して配置することで、二重像及びヘイズの問題を解消することができた。また、ガンマカーブの歪み及び階調反転を改善することができた。
【0091】
比較実施形態のカラーシフト及び階調反転の改善のための構成、及び二重像及びヘイズの発生抑制のための構成は、本発明においても核心構成をなす。本発明では、これに加えて、外光によるヘイズの発生及び明室明暗比の低下をさらに改善することができる方案を提示する。
【0092】
図21を参照して前述したとおり、外光は、ヘイズを発生させ、且つ明室明暗比を低下させる原因になる。カラーシフト低減層をパネルに密着させることで相当程度のヘイズの低減及び明室明暗比の向上をもたらすことができた。しかしながら、依然としてカラーシフト低減層とパネルへ入射した外光は、空気とパネルとの界面、そして空気とカラーシフト低減層との界面で拡散反射してブラック映像の輝度値を増加させる。このような現象は、明室明暗比を落としてディスプレイ装置の視認性を低下させる。
【0093】
また、バックグラウンド層とバッキングとの界面、そしてバッキングの前面で起きる外光の反射も、反射ヘイズを増加させる原因になる。このようなヘイズによって、ブラック画面において輝度が高いため画面がぼやけて見える現象が発生し、またブラック輝度の増加により明室明暗比が増加し、視認性を低下させる。
【0094】
図44は、明室明暗比の向上のための本発明の一実施形態に係る光学フィルターを概略的に示す図である。
【0095】
本発明は、カラーシフト低減層20と外光遮蔽層30を含む。この他、バッキング25を含んでいてよい。
【0096】
図示したように、図44の光学フィルターは、前方から順に外光遮蔽層30、バッキング25及びカラーシフト低減層20を含む。
【0097】
外光遮蔽層30は、光吸収物質を含む。外光遮蔽層30は、カラーシフト低減層20よりは前方に配置されることが好ましい。
【0098】
外光遮蔽層30は、吸収特性がブラックである光吸収物質、すなわち、可視光線の全波長に対して吸収性を持つ黒色光吸収物質を含んでいてよい。黒色光吸収物質によって、外光遮蔽層の透過色の色座標は、好ましくは、D65光源下においてL*が50以下、a*及びb*は、−30〜+30の値を有する。黒色光吸収物質は、カーボンブラックであってよい。
【0099】
一実施形態によれば、カーボンブラック色素3g(1wt%溶液形態)をMEK溶媒52gに混合し、この混合物をコーティングして外光遮蔽層を得ることができる。これに加えて、外光遮蔽層は樹脂を含み、前記光吸収物質が樹脂に混合されて外光遮蔽層をなしていてよい。
【0100】
光吸収物質をバックグラウンド層またはバッキングに含ませて、別途の外光遮蔽層を設けることなく、バックグラウンド層またはバッキングが外光遮蔽層として働くようにすることもできる。また、粘着剤層が外光遮蔽層として働くようにすることもできる。この場合、光吸収物質は、粘着剤に混合された形態を有していてよい。また、外光遮蔽層は、他の光学機能を有することもできる。すなわち、他の光学機能性層に光吸収物質を含ませて、外光遮蔽層の役割を兼ねるようにすることができる。
【0101】
バッキング25は、カラーシフト低減層20と外光遮蔽層30を支持する役割をする。カラーシフト低減層と外光遮蔽層は、バッキングの背面及び前面にそれぞれ直接コートされていてよい。この場合、単一バッキングにてカラーシフト低減層と外光遮蔽層の両方を支持することができ、バッキングの数を削減することができるという利点がある。実施形態によっては、バッキング25は省略することもできる。
【0102】
下表3は、外光遮蔽層を有する本発明の実施形態と外光遮蔽層を有さない比較実施形態の実験結果を表す。
【表3】
【0103】
外光反射ヘイズは、外光が反射して散乱される程度を示し、低いほど好ましい。外光反射測定方法は、外光がパネルの正面から上方40°の位置にあり且つパネル面での照度が300lux条件であるとき、パネルにサンプルを付着し左右50°の側方に反射される光の輝度を測定した結果である。表3に表すように、外光遮蔽層がヘイズを低減させることが分かる。
【0104】
本発明のディスプレイ装置用光学フィルターは、パネル保護用透明基板、アンチフォグ層、反射防止層、偏光フィルム、位相差フィルムなどの各種の機能性フィルムをさらに含んでいてよい。
【0105】
この場合、本発明の光学フィルターを構成する各構成層は、粘着剤または接着剤にて粘着または接着されていてよい。具体的な材料として、アクリル系接着剤、シリコン系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリビニルブチラール接着剤(PMB)、エチレン−酢酸接着剤(EVA)、ポリビニルエーテル、無定形の飽和ポリエステル、メラミン樹脂などが挙げられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ディスプレイパネルの前方に具備される液晶ディスプレイ装置用光学フィルターであって、
カラーシフト低減層と、
外光遮蔽層とを含んでなり、
前記カラーシフト低減層は、層をなすバックグラウンド層と前記バックグラウンド層に互いに離間して形成される複数の凹状または凸状レンズ部を含み、液晶の複屈折特性によって視聴角度及び階調水準に応じて他の色で前記液晶ディスプレイパネルから出射する光のうち、レンズ部に入射した光の出射方向を分散させて、互いに離間した前記レンズ部の間を通過する光と混合させ、
前記外光遮蔽層は、光吸収物質を含むことを特徴とする液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項2】
前記光吸収物質は、可視光線の全波長帯を吸収する黒色物質であることを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項3】
D65光源下における外光遮蔽層の透過色の色座標は、L*が50以下、a*及びb*が−30〜+30であることを特徴とする請求項2に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項4】
前記光吸収物質は、カーボンブラックであることを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項5】
前記光吸収物質は、前記バックグラウンド層に含まれ、前記外光遮蔽層は、前記バックグラウンド層であることを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項6】
前記外光遮蔽層は、前記光吸収物質が樹脂に混合されてなることを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項7】
前記外光遮蔽層は、前記光吸収物質が粘着剤に混合されてなることを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項8】
前記外光遮蔽層は、前記カラーシフト低減層の前方に具備されることを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項9】
前記光学フィルターは、バッキングをさらに含み、
前記カラーシフト低減層は、前記バッキングの背面に直接コートされてなり、
前記外光遮蔽層は、前記バッキングの前面に直接コートされてなることを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項10】
前記レンズ部の断面は、楕円弧を含むことを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項11】
前記バックグラウンド層は、自己粘着性を持つことを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項12】
前記レンズ部は、レンズ部の深さ/レンズ部の幅の比が0.25以上であることを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項13】
前記レンズ部は、レンズ部間の間隔/レンズ部のピッチの比が0.5〜0.95であることを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項14】
前記レンズ部は、レンズ部のピッチが45μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項15】
請求項1に記載のカラーシフト低減光学フィルターを含むことを特徴とする液晶ディスプレイ装置。
【請求項16】
前記カラーシフト低減光学フィルターのレンズ部は、前記液晶ディスプレイパネルと向き合う前記バックグラウンド層の背面に形成されることを特徴とする請求項15に記載の液晶ディスプレイ装置。
【請求項17】
前記カラーシフト低減光学フィルターは、前記液晶ディスプレイパネルに密着されることを特徴とする請求項15に記載の液晶ディスプレイ装置。
【請求項1】
液晶ディスプレイパネルの前方に具備される液晶ディスプレイ装置用光学フィルターであって、
カラーシフト低減層と、
外光遮蔽層とを含んでなり、
前記カラーシフト低減層は、層をなすバックグラウンド層と前記バックグラウンド層に互いに離間して形成される複数の凹状または凸状レンズ部を含み、液晶の複屈折特性によって視聴角度及び階調水準に応じて他の色で前記液晶ディスプレイパネルから出射する光のうち、レンズ部に入射した光の出射方向を分散させて、互いに離間した前記レンズ部の間を通過する光と混合させ、
前記外光遮蔽層は、光吸収物質を含むことを特徴とする液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項2】
前記光吸収物質は、可視光線の全波長帯を吸収する黒色物質であることを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項3】
D65光源下における外光遮蔽層の透過色の色座標は、L*が50以下、a*及びb*が−30〜+30であることを特徴とする請求項2に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項4】
前記光吸収物質は、カーボンブラックであることを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項5】
前記光吸収物質は、前記バックグラウンド層に含まれ、前記外光遮蔽層は、前記バックグラウンド層であることを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項6】
前記外光遮蔽層は、前記光吸収物質が樹脂に混合されてなることを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項7】
前記外光遮蔽層は、前記光吸収物質が粘着剤に混合されてなることを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項8】
前記外光遮蔽層は、前記カラーシフト低減層の前方に具備されることを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項9】
前記光学フィルターは、バッキングをさらに含み、
前記カラーシフト低減層は、前記バッキングの背面に直接コートされてなり、
前記外光遮蔽層は、前記バッキングの前面に直接コートされてなることを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項10】
前記レンズ部の断面は、楕円弧を含むことを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項11】
前記バックグラウンド層は、自己粘着性を持つことを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項12】
前記レンズ部は、レンズ部の深さ/レンズ部の幅の比が0.25以上であることを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項13】
前記レンズ部は、レンズ部間の間隔/レンズ部のピッチの比が0.5〜0.95であることを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項14】
前記レンズ部は、レンズ部のピッチが45μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ装置用カラーシフト低減光学フィルター。
【請求項15】
請求項1に記載のカラーシフト低減光学フィルターを含むことを特徴とする液晶ディスプレイ装置。
【請求項16】
前記カラーシフト低減光学フィルターのレンズ部は、前記液晶ディスプレイパネルと向き合う前記バックグラウンド層の背面に形成されることを特徴とする請求項15に記載の液晶ディスプレイ装置。
【請求項17】
前記カラーシフト低減光学フィルターは、前記液晶ディスプレイパネルに密着されることを特徴とする請求項15に記載の液晶ディスプレイ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図22】
【図24】
【図44】
【図5】
【図9】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図23】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図2】
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【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図22】
【図24】
【図44】
【図5】
【図9】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
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【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【公開番号】特開2012−247781(P2012−247781A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−118305(P2012−118305)
【出願日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【出願人】(502411241)サムスンコーニング精密素材株式会社 (80)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Corning Precision Materials Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】644−1 Jinpyeong−dong, Gumi−si,Gyeongsangbuk−do 730−360,Korea
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【出願人】(502411241)サムスンコーニング精密素材株式会社 (80)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Corning Precision Materials Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】644−1 Jinpyeong−dong, Gumi−si,Gyeongsangbuk−do 730−360,Korea
【Fターム(参考)】
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