説明

液晶ディスプレイ

【課題】液晶ディスプレイを提供する。
【解決手段】本発明は、PS(polymer stabilised:ポリマー安定化)またはPSA(polymer sustained alignment:ポリマー維持配向)型のLCディスプレイにおいて使用するための液晶(liquid−crystal:LC)媒体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PS(polymer stabilised:ポリマー安定化)またはPSA(polymer sustained alignment:ポリマー維持配向)型のLCディスプレイにおいて使用するための液晶(liquid−crystal:LC)媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在使用されている液晶ディスプレイ(LCディスプレイ)は、ほとんどがTN(twisted nematic:ツイストネマチック)型のものである。しかしながら、これらは、コントラストの視野角依存性が強いという不都合を有する。
【0003】
加えて、より広い視野角を有する所謂VA(vertical alignment:垂直配向)ディスプレイが知られている。VAディスプレイのLCセルは2つの透明電極の間にLC媒体の層を含有しており、そこでは、通常、LC媒体は負の値の誘電(dielectric:DC)異方性を有する。スイッチが切れている状態で、LC層の分子は電極表面に垂直に配向しているか(ホメオトロピック的)、または、チルトホメオトロピック配向を有している。電極に電圧を印加すると、電極表面に平行なLC分子の再配向が起きる。
【0004】
更に、複屈折効果に基づいており、所謂「ベンド(bend)」配向で通常は正の(DC)異方性のLC層を有しているOCB(optically compensated bend:光学補償ベンド)ディスプレイが知られている。電圧を印加すると、電極表面に垂直なLC分子の再配向が起きる。加えて、暗状態においてベンドセルの光に対する望ましくない透明性を防ぐために、通常、OCBディスプレイは1枚以上の複屈折光学的リターデーションフィルムを含有する。OCBディスプレイは、TNディスプレイと比較して、より広い視野角および、より短い応答時間を有する。
【0005】
また、2枚の基板の間にLC層を含有するが、通常、櫛形でインターデジタル構造の2つの電極が一方の基板上のみに位置するIPS(in−plane switching:面内スイッチング)ディスプレイも知られている。電極に電圧を印加すると、それによりLC層に平行な有意な成分を有する電界が生成される。それにより、層面内でLC分子の再配向が生じる。更に、所謂FFS(fringe field switching:フリンジ場スイッチング)ディスプレイが提案されており(とりわけ、S.H.Jungら、Jpn.J.Appl.Phys.、第43巻、第3号、2004年、1028頁を参照;非特許文献1)、同様に同一の基板上に2つの電極を含有するが、IPSディスプレイとは対照的に、これらの一方のみが構造化された(櫛形)電極の形状であり、他方の電極は構造化されていない。それにより、強力な所謂「フリンジ場」、即ち、電極端の近傍における強力な電界およびセル全体にわたって強力な垂直成分および強力な水平成分の両者ともを有する電界が生成される。IPSディスプレイおよびFFSディスプレイの両者とも、コントラストの視野角依存性が低い。
【0006】
より最近のタイプのVAディスプレイにおいて、LC分子の均一な配向は、LCセル内の複数の比較的小さなドメインに限定されている。チルトドメインとしても知られるこれらのドメイン間には、回位が存在する場合がある。従来のVAディスプレイと比較して、チルトドメインを有するVAディスプレイは、より大きなコントラストおよび中間階調の視野角非依存性を有する。加えて、スイッチが入っている状態での分子の均一配向のための電極表面の追加処理、例えばラビングなどが、もはや必要ないため、このタイプのディスプレイの製造は、より簡便である。代わりに、チルトまたはプレチルト角の優先的方向は、電極を特別に設計することで制御される。所謂MVA(multidomain vertical alignment:マルチドメイン垂直配向)ディスプレイにおいては、通常、これは局所的なプレチルトを生じる突起を有する電極によって達成される。結果として、電圧を印加すると、LC分子は電極表面に平行に、セルで異なって定義される領域中で異なる方向に配向する。それによって「制御された」スイッチングが達成され、干渉回位線の形成が予防される。この配向によってディスプレイの視野角が改良されるが、しかしながら、光に対する透明性が低下する結果となる。MVAの更なる開発のために片方の電極側のみの突起が使用され、一方で反対側の電極はスリットを有しており、光に対する透明性が改良されている。電圧を印加するとスリットが施された電極はLCセル内に不均質な電界を生じ、制御されたスイッチングが更に達成されることを意味する。光に対する透明性を更に改良するためにスリットと突起との間隔を大きくすることもできるが、これにより今度は応答時間が長くなる結果となる。所謂PVA(patterned VA:パターン化VA)においては、両電極は対向側のスリットにより構造化されているという点において、突起は完全に不要なものとなり、それによってコントラストの増加および光に対する透明性が改良される結果となるが、技術的に困難でありディスプレイが機械的影響(指打など)により敏感となる。しかしながら、例えばモニターおよび特にTVスクリーンなどの多くの用途においては、ディスプレイの応答時間を短縮しコントラストおよび輝度(透過性)を改良することが望まれている。
【0007】
更なる開発は、所謂PS(polymer stabilised:ポリマー安定化)またはPSA(polymer sustained alignment:ポリマー維持配向)ディスプレイである。これらにおいては、少量(例えば、0.3重量%、典型的には1重量%未満)の重合性化合物をLC媒体に添加し、LCセルに導入後、電極間に電圧を印加して、通常UV光重合により、その場で重合または架橋する。「反応性メソゲン」(RM:reactive mesogen)としても知られる重合性メソゲンまたは液晶化合物をLC混合物に添加することが、特に適切であることが証明されている。
【0008】
当面のところ、PSまたはPSAの原理は、さまざまな古典的LCディスプレイ中で使用されている。よって、例えば、PSA−VA、PSA−OCB、PS−IPSおよびPS−TNディスプレイが知られている。試験用セルで示される通り、PSA法は、結果としてセル中にプレチルトを生じる。従って、PSA−OCBディスプレイの場合、オフセット電圧が不必要となるか低減できるように、ベンド構造を安定化することが可能である。PSA−VAディスプレイの場合、このプレチルトは応答時間に対して正の効果を有する。PSA−VAディスプレイに対しては、標準的なMVAまたはPVAピクセルおよび電極レイアウトを使用できる。加えて、しかしながら、例えば、電極の一方側のみを構造化して突起を設けないで操作することが可能であり、製造が著しく簡略化され、同時に結果としてコントラストが非常に良好となり、同時に光に対する透明性が非常に良好となる。
【0009】
他に示さない限り、用語「PSA」はPSディスプレイおよびPSAディスプレイを表すために使用される。
【0010】
PSA−VAディスプレイは、例えば、特開平10−036847号公報(特許文献1)、欧州特許出願公開第1 170 626号公報(特許文献2)、米国特許第6,861,107号明細書(特許文献3)、米国特許第7,169,449号明細書(特許文献4)、米国特許出願公開第2004/0191428号公報(特許文献5)、米国特許出願公開第2006/0066793号公報(特許文献6)および米国特許出願公開第2006/0103804号公報(特許文献7)に記載されている。PSA−OCBディスプレイは、例えば、T.−J−Chenら、Jpn.J.Appl.Phys.第45巻、2006年、2702〜2704頁(非特許文献2)およびS.H.Kim、L.−C−Chien、Jpn.J.Appl.Phys.第43巻、2004年、7643〜7647頁(非特許文献3)に記載されている。PS−IPSディスプレイは、例えば、米国特許第6,177,972号明細書(特許文献8)およびAppl.Phys.Lett.1999年、第75巻(第21号)、3264頁(非特許文献4)に記載されている。PS−TNディスプレイは、例えば、Optics Express 2004年、第12巻(第7号)、1221頁(非特許文献5)に記載されている。
【0011】
特にモニター用、特にはテレビ用途には、LCディスプレイの応答時間のみならずコントラストおよび輝度(よって、透過性も)を最適化することも引き続き要求されている。ここでも、依然としてPSA法は重要な利点を提供するように見える。特に、PSA−VAの場合、他のパラメータに著しい悪影響を及ぼすことなく、試験用セルにおいて測定可能なプレチルトと相関して応答時間の短縮を達成できる。
【0012】
しかしながら、先行技術から既知のLC混合物およびRMは、PSAディスプレイにおいて使用する際に、幾つかの不都合を依然として有することが見出されてきた。よって、全ての望ましい可溶性RMがPSAディスプレイに適していると言うには程遠く、プレチルトを測定する単なる直接PSA実験よりも更に適切な選択要件を見出すことは、しばしば困難であるように見える。光開始剤を添加することなくUV光を用いて重合することが望ましい場合、特定の用途に好都合のことがあるが、選択の余地は更に狭くなる。
【0013】
加えて、LC混合物(下では「LCホスト混合物」とも言う)+重合性成分である選択された「材料系」は、可能な限り最善な電気特性、特に、「電圧保持率(voltage holding ratio)」(HRまたはVHR)を有していなければならない。PSA−VAに関しては、(UV)光照射が加工の不可欠な部分であり、しなしながら、製造終了後のディスプレイにおいても「通常」のストレスとして当然に起こるため、特に、(UV)光照射後の高いHRが中心的に重要である。
【0014】
しかしながら、例えば、不適切なチルトが生じるか全く生じないため、または、例えば、HRがTFTディスプレイ用途には不適切であるため、全てのLC混合物+重合性成分の組合せが「機能する」とは限らない問題が生じる。
【0015】
よって、上記の不都合を有していないか、僅かな程度にのみ有しており、改良された特性を有する、特にVAタイプのPSAディスプレイ、および、そのようなディスプレイにおいて使用するためのLC媒体および重合性化合物に対する多大な要求が引き続きある。特に、高い比抵抗と同時に広い動作温度範囲で低温においてすら短い応答時間を有し、および、多数の中間階調、高いコントラストおよび広い視野角が可能となる低い閾電圧を有し、UV曝露後に高い値の電圧保持率(HR)を有するPSAディスプレイまたは材料に対する多大な要求がある。携帯用途向けのPSAディスプレイにおいては、低い閾電圧および高い複屈折を示す入手可能なLC媒体を有することが特に望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平10−036847号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第1 170 626号公報
【特許文献3】米国特許第6,861,107号明細書
【特許文献4】米国特許第7,169,449号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2004/0191428号公報
【特許文献6】米国特許出願公開第2006/0066793号公報
【特許文献7】米国特許出願公開第2006/0103804号公報
【特許文献8】米国特許第6,177,972号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】S.H.Jungら、Jpn.J.Appl.Phys.、第43巻、第3号、2004年、1028頁
【非特許文献2】T.−J−Chenら、Jpn.J.Appl.Phys.第45巻、2006年、2702〜2704頁
【非特許文献3】S.H.Kim、L.−C−Chien、Jpn.J.Appl.Phys.第43巻、2004年、7643〜7647頁
【非特許文献4】Appl.Phys.Lett.1999年、第75巻(第21号)、3264頁
【非特許文献5】Optics Express 2004年、第12巻(第7号)、1221頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上に示された不都合を有していないか低減された程度にのみ有しており、プレチルト角の設定、および、好ましくは同時に、非常に高い比抵抗値、低い閾電圧および短い応答時間を可能とするPSAディスプレイを提供する目的を基礎とした。
【課題を解決するための手段】
【0019】
驚くべきことに、本明細書の以降に記載される通りのLC媒体を含有する本発明によるPSAディスプレイを使用することにより、この目的を達成できることが見出された。特に驚くべきことに、非重合性成分(ホスト成分)が、Fおよび/またはCl、好ましくはFにより、2位および3位において二置換されている1個以上のフェニレン基を有するメソゲンまたは液晶化合物より本質的に成るネマチック混合物であるLC混合物を使用する場合、先行技術において開示される通りのLC媒体およびLCホスト成分と比較して、著しくより低い閾電圧およびより高い複屈折率を達成することが可能であることが見出された。加えて、本発明のLC媒体は高い比抵抗値および望ましくない自発的な結晶化に対する良好な低温安定性(low temperature stability:LTS)を有し、PSAディスプレイにおいて使用する場合、たとえ光開始剤を使用しなくとも適切なチルト角を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
よって、本発明は、
1種類以上の重合性化合物を含む重合性成分と、
ネマチック成分とを含み、
該ネマチック成分は、Fおよび/またはClにより2位および3位において二置換されている1個以上の1,4−フェニレン基を含むメソゲンまたは液晶化合物より好ましくは選択される1種類以上の化合物を90〜100重量%、好ましくは、90重量%より多く100重量%までで含有することを特徴とする液晶(liquid−crystal:LC)媒体に関する。
【0021】
本発明は、更に、該ネマチック成分が、以下の式から成る群より選択される化合物を90〜100重量%、好ましくは、90重量%より多く100重量%までで含有する上および下に記載される通りのLC媒体に関する。
【0022】
【化1】

式中、個々の基は以下の意味を有する:
aは、1または2を表し、
bは、0または1を表し、
【0023】
【化2】

【0024】
【化3】

【0025】
【化4】

およびRは、それぞれ互いに独立に、1〜12個のC原子を有するアルキルまたはアルケニルを表し、ただし加えて、1個または2個の隣接していないCH基は、O原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−または−COO−で置き換えられていてもよく、
およびRは、それぞれ互いに独立に、Rについて上に示される意味の1つを有し、
は、−CH=CH−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−O−、−CH−、−CHCH−または単結合、好ましくは、単結合を表し、
1〜4は、それぞれ互いに独立に、FまたはClを表し、
およびLは、それぞれ互いに独立に、F、Cl、OCF、CF、CH、CHF、CHFを表す。
【0026】
本発明は、更に、LCディスプレイにおける、好ましくは、PS(polymer stabilised:ポリマー安定化)またはPSA(polymer sustained alignment:ポリマー維持配向)型のディスプレイにおける上および下に記載される通りのLC媒体の使用に関する。
【0027】
本発明は、更に、LCディスプレイにおいて、好ましくは、PS(polymer stabilised:ポリマー安定化)またはPSA(polymer sustained alignment:ポリマー維持配向)型のディスプレイにおいて、該重合性成分が重合されている上および下に記載される通りのLC媒体の使用に関する。
【0028】
本発明は、更に、好ましくは、PSまたはPSA型のディスプレイ、非常に好ましくは、PSA−VAまたはPSA−IPSディスプレイであり、上および下に記載される通りのLC媒体を含むLCディスプレイに関する。
【0029】
本発明は、更に、好ましくは、PSまたはPSA型のディスプレイ、非常に好ましくは、PSA−VAまたはPSA−IPSディスプレイであり、ただし、該重合性成分が重合されている上および下に記載される通りのLC媒体を含むLCディスプレイに関する。
【0030】
好ましくは、PSAディスプレイは、2枚の基板および2個の電極(ただし、該基板の少なくとも一方は光に対して透明であり、該基板の少なくとも一方はそれの上に提供される1個または2個の電極を有する。)と、該基板間に配置され、重合された成分および低分子量成分を含むLC媒体層(ただし、該重合された成分は、1種類以上の重合性化合物を、該ディスプレイセルの該基板間において該LC媒体中で該電極に電圧を印加しながら重合することで得ることができ、ただし、該低分子量成分は上および下に記載される通りのネマチック成分である。)とを含むディスプレイセルを含有する。
【0031】
本発明は、更に、上および下に記載される通りの1種類以上の重合性化合物およびネマチック成分を含むLC媒体を2枚の基板および2個の電極(ただし、該基板の少なくとも一方は光に対して透明であり、該基板の少なくとも一方はそれの上に提供される1個または2個の電極を有する。)を含むディスプレイセル内に提供し、該電極に電圧を印加しながら1種類以上の該重合性化合物を重合することにより、上および下に記載される通りのディスプレイを製造する方法に関する。
【0032】
本発明のPSディスプレイおよびPSAディスプレイは、好ましくは透明層として2個の電極(ただし、これらの2個の電極は、ディスプレイセルを形成する2枚の基板の一方または両方に提供されている。)を含有する。よって、例えば、VA型の本発明のディスプレイにおいては、何れか一方の電極が2枚の基板のそれぞれに提供されているか、または、例えば、IPSまたはFFS型の本発明のディスプレイにおいては、2個の電極の両方が一方の基板に提供されており、もう一方の基板には電極は提供されていない。
【0033】
本発明によるLCディスプレイにおいて使用するためのLC媒体は、1種類以上の重合性化合物と、1種類以上、好ましくは2種類以上の低分子量(即ち、モノマーまたは重合されていない)化合物(それは、通常、メソゲンまたは液晶化合物より選択される)を含むLC混合物(「ホスト混合物」)とを含有する。後者は、重合性化合物の重合のために使用される条件下において重合反応に対し安定または非反応性である。
【0034】
好ましくは、本発明によるLC媒体は、1種類以上の重合性化合物と、上および下に記載される通りのネマチック成分(またはホストLC混合物)とから本質的に成る。しかしながら、LC媒体は、1種類以上の更なる成分、または、例えば、キラルドーパント、重合開始剤、阻害剤、安定剤、界面活性剤、ナノ粒子などより選択される添加剤を追加的に含んでもよい。
【0035】
ネマチック成分またはLCホスト混合物は、好ましくは、ネマチックLC混合物である。用語「ネマチック成分」および「ネマチックLC混合物」は、本明細書においては、ネマチックLC相を有するが、加えて、他のLC相(例えば、スメクチック相など)を有してもよいLC混合物、しかしながら、非常に好ましくは、ネマチックLC相のみを有し他のLC相を有さないLC混合物を意味する。
【0036】
本発明によるLCホスト混合物およびLC媒体は、それらが先行技術において開示される通りのLCホスト成分を含むPSAディスプレイと比較して、著しくより低い閾電圧およびより高い複屈折率を示すため、優位である。従って、それは、携帯用途向けのPSAディスプレイにおける使用に特に適する。
【0037】
本発明は、更に、上および下に記載される通りの新規なネマチック成分およびLCホスト混合物(即ち、それは重合性化合物を含有しないが、非重合性または低分子量化合物 から本質的に成る)に関する。これらのLC混合物は、VAディスプレイおよびMVAディスプレイなどのVA型の従来型のディスプレイにおいて使用できる。本発明は、更に、LCディスプレイ、好ましくは、そのようなLC混合物を含有するVAおよびMVAディスプレイに関する。
【0038】
ネマチック成分のためには、2位および3位がFにより二置換されている1個以上の1,4−フェニレン基を含む化合物が特に好ましい。L、L、LおよびLがFを表す式CY、PYおよびTYの化合物が更に好ましい。
【0039】
式CY、PYおよびTYにおいて、好ましくは、両方の基LおよびLがFを表すか、または、基LおよびLの一方がFを表し、他方がClを表し、および好ましくは、両方の基LおよびLがFを表すか、または、基LおよびLの一方がFを表し、他方がClを表す。
【0040】
式CYの少なくとも1種類の化合物を含有するLC混合物が特に好ましい。式CYの少なくとも1種類の化合物と、式PYの少なくとも1種類の化合物とを含有するLC混合物が更に好ましい。式CY、PYおよびTYのそれぞれの少なくとも1種類の化合物を含有するLC混合物が更に好ましい。
【0041】
更に好ましいLC媒体およびLCホスト混合物を下に示す。
【0042】
a)以下のサブ式より選択される1種類以上の化合物を含むLCホスト混合物:
【0043】
【化5】

【0044】
【化6】

【0045】
【化7】

【0046】
【化8】

式中、aは1または2を表し、alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、alkenylは2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表し、(O)はO原子または単結合を表す。alkenylは、好ましくは、CH=CH−、CH=CHCHCH−、CH−CH=CH−、CH−CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−またはCH−CH=CH−(CH−を表す。
【0047】
b)以下のサブ式より選択される1種類以上の化合物を含むLCホスト混合物:
【0048】
【化9】

【0049】
【化10】

【0050】
【化11】

式中、alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、alkenylは2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表し、(O)はO原子または単結合を表す。alkenylは、好ましくは、CH=CH−、CH=CHCHCH−、CH−CH=CH−、CH−CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−またはCH−CH=CH−(CH−を表す。
【0051】
c)以下のサブ式より選択される1種類以上の化合物を含むLCホスト混合物:
【0052】
【化12】

【0053】
【化13】

式中、Rは1〜7個のC原子を有する直鎖状のアルキルまたはアルコキシ基を表し、Rは2〜7個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表し、(O)はO原子または単結合を表し、mは1〜6の整数を表す。Rは、好ましくは、CH=CH−、CH=CHCHCH−、CH−CH=CH−、CH−CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−またはCH−CH=CH−(CH−を表す。
【0054】
Rは、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシまたはペントキシを表す。
【0055】
d)以下の式の1種類以上の化合物を追加的に含むLCホスト混合物:
【0056】
【化14】

式中、個々の基は以下の意味を有する:
【0057】
【化15】

fは、0または1を表し、
およびRは、それぞれ互いに独立に、1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、ただし加えて、1個または2個の隣接していないCH基は、O原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−または−COO−で置き換えられていてもよく、
およびZは、それぞれ互いに独立に、−CHCH−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C−、−CF=CF−、−CH=CHCHO−または単結合、好ましくは、単結合を表し、
およびLは、それぞれ互いに独立に、F、Cl、OCF、CF、CH、CHF、CHFを表す。
【0058】
好ましくは、両方の基LおよびLがFを表すか、基LおよびLの一方がFを表し、他方がClを表す。
【0059】
式LYの化合物は、好ましくは、以下のサブ式より選択される。
【0060】
【化16】

【0061】
【化17】

式中、Rは上述の意味を有し、(O)はO原子または単結合を表し、alkylは1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、vは1〜6の整数を表す。Rは、好ましくは、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル、または、2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル、特に、CH、C、n−C、n−C、n−C11、CH=CH−、CH=CHCHCH−、CH−CH=CH−、CH−CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−またはCH−CH=CH−(CH−を表す。本発明によるLC媒体は、好ましくは、上述の式の1種類以上の化合物を0重量%より多く10重量%以下の量で含む。
【0062】
e)以下の式より選択される1種類以上の化合物を追加的に含むLCホスト混合物:
【0063】
【化18】

【0064】
【化19】

式中、RはRに上で示される意味の1つを有し、alkylはC1〜6−アルキルを表し、dは0または1を表し、zおよびmは、それぞれ互いに独立に、1〜6の整数を表す。これらの化合物におけるRは、特に好ましくは、C1〜6−アルキルまたは−アルコキシまたはC2〜6−アルケニルであり、dは、好ましくは、1である。本発明によるLC媒体は、好ましくは、上述の式の1種類以上の化合物を0重量%より多く10重量%以下の量で含む。
【0065】
f)以下の式の1種類以上の化合物を追加的に、好ましくは3重量%より多い、特には5重量%以上、非常に特に好ましくは5〜30重量%の量で含むLCホスト混合物:
【0066】
【化20】

式中、
【0067】
【化21】

は、H、CH、Cまたはn−Cを表し、(F)は任意のフッ素置換基を表し、qは、1、2または3を表し、RはRに示される意味の1つを有する。
【0068】
式FIの特に好ましい化合物は、以下のサブ式より選択される:
【0069】
【化22】

【0070】
【化23】

式中、Rは、好ましくは、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキルを表し、Rは、CH、Cまたはn−Cを表す。式FI1、FI2およびFI3の化合物が特に好ましい。
【0071】
g)以下の式の1種類以上の化合物を追加的に含むLCホスト混合物:
【0072】
【化24】

式中、RはRに示される意味を有し、alkylは1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表す。
【0073】
h)例えば以下の式より選択される化合物などのテトラヒドロナフチルまたはナフチル単位を含有する1種類以上化合物を追加的に含むLCホスト混合物:
【0074】
【化25】

【0075】
【化26】

式中、R10およびR11は、それぞれ互いに独立に、Rに示される意味の1つを有し、好ましくは、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキルまたは直鎖状のアルコキシまたは2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニルを表し、ZおよびZは、それぞれ互いに独立に、−C−、−CH=CH−、−(CH−、−(CHO−、−O(CH−、−CH=CHCHCH−、−CHCHCH=CH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C−、−CF=CF−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CH−または単結合を表す。
【0076】
i)以下の式の1種類以上のジフルオロジベンゾクロマン類および/またはクロマン類を追加的に、好ましくは3〜20重量%の量、特に3〜15重量%の量で含むLCホスト混合物:
【0077】
【化27】

式中、R11およびR12は、それぞれ互いに独立に、上述の意味を有し、cは0または1を表す。
【0078】
式BCおよびCRの特に好ましい化合物は、以下のサブ式より選択される:
【0079】
【化28】

【0080】
【化29】

式中、alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、alkenylおよびalkenylは、それぞれ互いに独立に、2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表す。alkenylおよびalkenylは、好ましくは、CH=CH−、CH=CHCHCH−、CH−CH=CH−、CH−CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−またはCH−CH=CH−(CH−を表す。
【0081】
1種類、2種類または3種類の式BC−2の化合物を含む混合物が、非常に特に好ましい。
【0082】
k)以下の式の1種類以上のフッ素化されたフェナントレン類またはジベンゾフラン類を追加的に含むLCホスト混合物:
【0083】
【化30】

式中、R11およびR12は、それぞれ互いに独立に、上述の意味を有し、bは0または1を表し、LはFを表し、rは1、2または3を表す。
【0084】
式PHおよびBFの特に好ましい化合物は、以下のサブ式より選択される:
【0085】
【化31】

式中、RおよびR’は、それぞれ互いに独立に、1〜7個のC原子を有する直鎖状のアルキルまたはアルコキシ基を表す。
【0086】
l)Fおよび/またはClにより2位および3位において置換された1個以上の1,4−フェニレン基を含有する化合物の、ホスト混合物(またはネマチック成分)全体に関する割合は90重量%より多く、好ましくは95重量%より多く、非常に好ましくは98重量%より多く、最も好ましくは100重量%である。
【0087】
m)1種類以上、好ましくは3〜20種類の式CY、PYおよび/またはTYの化合物を含むLCホスト混合物またはネマチック成分。これらの化合物のホスト混合物全体における割合は、好ましくは90重量%より多く100重量%まで、非常に好ましくは95重量%より多く、最も好ましくは100重量%である。これらの個々の化合物の含有量は、好ましくは、それぞれの場合で2〜30重量%である。
【0088】
n)式CY、PYおよびTYの化合物は、式CY1、CY2、CY9、CY10、PY1、PY2、PY9、PY10、TY1およびTY2から成る群より、非常に好ましくは、式CY1、CY2、CY9、CY10、PY9、PY10およびTY1から成る群より選択されるLCホスト混合物またはネマチック成分。
【0089】
o)上および下に記載される通りの重合性化合物は別として、末端ビニルまたはビニルオキシ基(−CH=CH、−O−CH=CH)を含有する化合物は含まないLC媒体。
【0090】
p)1〜5種類、好ましくは、1種類、2種類または3種類の重合性化合物を含むLC媒体。
【0091】
q)媒体全体における重合性化合物の割合は0.05〜5%、好ましくは0.1〜1%であるLC媒体。
【0092】
r)加えて1種類以上の、非常に好ましくは、表Bより選択され、好ましくは、低分子量および/または非重合性キラルドーパントを、好ましくは、表Bで与えられる濃度範囲において含むLC媒体。
【0093】
また、LCホスト混合物は、Fおよび/またはClにより2位および3位において置換されたフェニレン環のない化合物を0%より多く10%未満で含有してもよい。そのような化合物は、存在するのであれば、好ましくは、以下の実施形態より選択される。
【0094】
1)以下の式の1種類以上の化合物を含むLCホスト混合物:
【0095】
【化32】

式中、個々の基は、以下の意味を有する:
【0096】
【化33】

【0097】
【化34】

およびRは、それぞれ互いに独立に、1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、ただし加えて、1個または2個の隣接していないCH基は、O原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−または−COO−で置き換えられていてもよく、
は、−CHCH−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C−、−CF=CF−、−CH=CHCHO−または単結合、好ましくは、単結合を表す。
【0098】
式ZKの化合物は、好ましくは、以下のサブ式より選択される:
【0099】
【化35】

式中、alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、alkenylは、2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表す。alkenylは、好ましくは、CH=CH−、CH=CHCHCH−、CH−CH=CH−、CH−CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−またはCH−CH=CH−(CH−を表す。
【0100】
2)以下の式の1種類以上の化合物を追加的に含むLCホスト混合物:
【0101】
【化36】

式中、個々の基は、それぞれの出現において同一または異なって、以下の意味を有する:
およびRは、それぞれ互いに独立に、上でRに示される意味の1つを有し、
【0102】
【化37】

【0103】
【化38】

eは、1または2を表す。
【0104】
式DKの化合物は、好ましくは、以下のサブ式より選択される:
【0105】
【化39】

式中、alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、alkenylおよびalkenylは、それぞれ互いに独立に、2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表す。alkenylおよびalkenylは、好ましくは、CH=CH−、CH=CHCHCH−、CH−CH=CH−、CH−CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−またはCH−CH=CH−(CH−を表す。
【0106】
3)以下の式より選択される1種類以上の化合物を追加的に含むLCホスト混合物:
【0107】
【化40】

式中、alkylはC1〜6−アルキルを表し、LはHまたはFを表し、Xは、F、Cl、OCF、OCHFまたはOCH=CFを表す。XがFを表す式G1の化合物が特に好ましい。
【0108】
4)以下の式の1種類以上のビフェニル化合物を追加的に含むLCホスト混合物:
【0109】
【化41】

式中、alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、alkenylおよびalkenylは、それぞれ互いに独立に、2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表す。alkenylおよびalkenylは、好ましくは、CH=CH−、CH=CHCHCH−、CH−CH=CH−、CH−CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−またはCH−CH=CH−(CH−を表す。
【0110】
LC混合物における式B1〜B3のビフェニル類の割合は、好ましくは、少なくとも3重量%、特に5重量%以上である。
【0111】
式B2の化合物が特に好ましい。
【0112】
式B1〜B3の化合物は、好ましくは、以下のサブ式より選択される:
【0113】
【化42】

式中、alkylは、1〜6個のC原子を有するアルキル基を表す。本発明による媒体は、特に好ましくは、式B1aおよび/またはB2cの1種類以上の化合物を含む。
【0114】
5)以下の式の1種類以上のターフェニル化合物を追加的に含むLCホスト混合物:
【0115】
【化43】

式中、RおよびRは、それぞれ互いに独立に、上でRに示される意味の1つを有し、
【0116】
【化44】

式中、Lは、FまたはCl、好ましくは、Fを表し、Lは、F、Cl、OCF、CF、CH、CHFまたはCHF、好ましくは、Fを表す。
【0117】
式Tの化合物は、好ましくは、以下のサブ式より選択される:
【0118】
【化45】

式中、Rは1〜7個のC原子を有する直鎖状のアルキルまたはアルコキシ基を表し、Rは2〜7個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表し、(O)は酸素原子または単結合を表し、mは1〜6の整数を表す。Rは、好ましくは、CH=CH−、CH=CHCHCH−、CH−CH=CH−、CH−CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−またはCH−CH=CH−(CH−を表す。
【0119】
Rは、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシまたはペントキシを表す。
【0120】
6)以下の式の1種類以上の化合物を追加的に含むLCホスト混合物:
【0121】
【化46】

式中、RおよびRは上述の意味を有し、好ましくは、それぞれ互いに独立に、直鎖状のアルキルまたはアルケニルを表す。
【0122】
好ましい混合物は、式O1、O3およびO4より選択される1種類以上の化合物を含む。
【0123】
上および下に記載される重合された化合物と、上述の好ましい実施形態の化合物を組み合わせることにより、本発明によるLC媒体において高い透明点および高いHR値を維持しながら低い閾電圧および非常に良好な低温安定性に効果があり、PSAディスプレイにおいてプレチルト角を設定できる。特に、先行技術からの媒体と比較し、PSAディスプレイにおいて、LC媒体は著しく短縮された応答時間、また、特に、短縮された中間階調応答時間を示す。
【0124】
LCホスト混合物は、好ましくは、少なくとも80K、特に好ましくは、少なくとも100Kのネマチック相範囲、および、20℃において、450mPa・s以下、好ましくは、350mPa・s以下の回転粘度を有する。
【0125】
LCホスト混合物は、好ましくは、負の誘電異方性、好ましくは、20℃および1kHzにおいて、約−0.5〜−7.5、特には、約−2.5〜−6.0のΔεを有する。
【0126】
LCホスト混合物は、好ましくは0.06より高い、非常に好ましくは0.09より高い、最も好ましくは0.12より高い複屈折率Δnを有し、好ましくは0.20より低い、非常に好ましくは0.18より低い、最も好ましくは0.16より低い複屈折率Δnを有する。
【0127】
また、LC媒体は、当業者に既知で文献に記載されている、例えば、重合開始剤、阻害剤、安定剤、表面活性化物質またはキラルドーパントなどの更なる添加剤を含んでもよい。これらの添加剤は重合性でも非重合性でもよい。従って、重合性添加剤は重合性成分に属することとなり、非重合性添加剤はLC媒体のネマチック成分に属することとなる。
【0128】
LC媒体は、例えば、好ましくは、下の表Bからの化合物から成る群より選択される1種類以上のキラルドーパントを含有してもよい。
【0129】
例えば、0〜15重量%の多色性色素を加えることができ、更に、導電性を向上するために、ナノ粒子、導電性塩、好ましくは、エチルジメチルドデシルアンモニウム4−ヘキソキシベンゾエート、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレートまたはクラウンエーテル類の錯塩(例えば、Hallerら、Mol.Cryst.Liq.Cryst.第24巻、249〜258頁、1973年参照)を加えることができ、または、ネマチック相の誘電異方性、粘度および/または配向を改変するための物質を加えることができる。このタイプの物質は、例えば、独国特許出願公開第22 09 127号公報、独国特許出願公開第22 40 864号公報、独国特許出願公開第23 21 632号公報、独国特許出願公開第23 38 281号公報、独国特許出願公開第24 50 088号公報、独国特許出願公開第26 37 430号公報および独国特許出願公開第28 53 728号公報に記載されている。
【0130】
本発明によるLC媒体の好ましい実施形態の個々の成分は既知であるか、それらを調製する手法は文献に記載されている標準的な方法に基づいているため、それらを調製する手法は当業者によって先行技術より容易に導くことができるかの何れかである。式CYの対応する化合物は、例えば、欧州特許出願公開第0 364 538号公報に記載されている。式ZKの対応する化合物は、例えば、独国特許出願公開第26 36 684号公報および独国特許出願公開第33 21 373号公報に記載されている。
【0131】
上および下に記載される通りの1種類、2種類または3種類の重合性化合物を含むLC媒体が更に好ましい。
【0132】
アキラルな重合性化合物およびアキラルな化合物を含むか、好ましくは、排他的に成るLC媒体が更に好ましい。
【0133】
重合性成分が、1個の重合性基(一反応性)を含有する1種類以上の重合性化合物および2個以上、好ましくは2個の重合性基(二反応性または多反応性)を含有する1種類以上の重合性化合物を含むPSAディスプレイおよびLC媒体が更に好ましい。
【0134】
重合性成分が、2個の重合性基(二反応性)を含有する重合性化合物から排他的に成るPSAディスプレイおよびLC媒体が更に好ましい。
【0135】
重合性化合物はLC媒体に個別に加えることができるが、本発明による2種類以上の重合性化合物を含む混合物を使用することも可能である。そのような混合物を重合するとコポリマーが形成される。本発明は、更に、上および下で述べる重合性混合物に関する。重合性化合物はメソゲンまたは非メソゲン、好ましくは、メソゲンまたは液晶である。
【0136】
LC媒体における重合性成分の割合は、好ましくは5%未満、特には1%未満、非常に好ましくは0.5%未満である。
【0137】
LC媒体におけるネマチック成分の割合は、好ましくは95%より多く、非常に好ましくは99%より多い。
【0138】
本発明の好ましい実施形態において、重合性化合物は式Iより選択される。
【0139】
【化47】

式中、個々の基は、以下の意味を有する:
およびRは、それぞれ互いに独立に、P−Sp−、H、ハロゲン、SF、NO、炭素基または炭化水素基を表し、
Pは、それぞれの出現において同一または異なって、重合性基を表し、
Spは、それぞれの出現において同一または異なって、スペーサー基または単結合を表し、
およびAは、それぞれ互いに独立に、好ましくは4〜25個の環原子を有する芳香族、ヘテロ芳香族、脂環式またはヘテロ環式基を表し、また、該基は縮合環を含有してもよく、該基はLにより一置換または多置換されていてもよく、
は、それぞれの出現において同一または異なって、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−OCO−、−O−CO−O−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−(CHn1−、−CFCH−、−CHCF−、−(CFn1−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、CR00または単結合を表し、
Lは、P−Sp−、H、OH、CHOH、ハロゲン、SF、NO、炭素基または炭化水素基を表し、
およびR00は、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、
m1は、0、1、2、3または4を表し、
n1は、1、2、3または4を表し、
ただし、基R、RおよびLの少なくとも1つはP−Sp−を表す。
【0140】
式Iの特に好ましい化合物は、
およびAは、それぞれ互いに独立に、1,4−フェニレン、ナフタレン−1,4−ジイルまたはナフタレン−2,6−ジイル(ただし加えて、これらの基における1個以上のCH基はNで置き換えられていてもよい。)、シクロヘキサン−1,4−ジイル(ただし加えて、1個以上の隣接していないCH基はOおよび/またはSで置き換えられていてもよい。)、1,4−シクロヘキセニレン、ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1,3−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、スピロ[3.3]ヘプタン−2,6−ジイル、ピペリジン−1,4−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、インダン−2,5−ジイル、オクタヒドロ−4,7−メタノインダン−2,5−ジイル、またはフェナントレン−2,7−ジイルを表し、ただし、これら全ての基は無置換であっても、Lにより一置換または多置換されていてもよく、
Lは、P−Sp−、OH、CHOH、F、Cl、Br、I、−CN、−NO、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)N(R、−C(=O)Y、−C(=O)R、−N(R、置換されていてもよいシリル、置換されていてもよく6〜20個のC原子を有するアリール、直鎖状または分岐状で1〜25個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシ、直鎖状または分岐状で2〜25個のC原子を有するアルケニル、アルキニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシを表し、ただし加えて、これら全ての基において、1個以上のH原子は、F、ClまたはP−Sp−で置き換えられていてもよく、
はハロゲンを表し、
は、P−Sp−、H、ハロゲン、直鎖状、分岐状または環状で1〜25個のC原子を有するアルキル(ただし加えて、1個以上の隣接していないCH基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、ただし加えて、1個以上のH原子は、F、ClまたはP−Sp−で置き換えられていてもよい。)、置換されていてもよい6〜40個のC原子を有するアリールまたはアリールオキシ基、または置換されていてもよい2〜40個のC原子を有するヘテロアリールまたはヘテロアリールオキシ基を表し、
およびRは、、それぞれ互いに独立に、P−Sp−、H、上に定義される通りのL、または直鎖状または分岐状で1〜25個のC原子を有するアルキルを表し、ただし加えて、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれ互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、−C(R)=C(R)−、−C≡C−、−N(R)−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、ただし加えて、1個以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CNまたはP−Sp−で置き換えられていてもよく、
ただし、基R、RおよびLの少なくとも1つはP−Sp−を表すのものである。
【0141】
基RおよびRの一方または両方はP−Sp−を表す式Iの化合物が特に好ましい。
【0142】
式Iの特に好ましい化合物は、以下のサブ式より選択される。
【0143】
【化48】

【0144】
【化49】

式中、P、Sp、LおよびZは、それぞれの出現において同一または異なって、上述の意味の1つを有し、
Rは、Rに示される意味の1つを有し、好ましくは、P−Sp−または直鎖状または分岐状で1〜12個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシを表し、
Lは、上に定義される通りであり、好ましくは、FまたはCHを表し、
は、好ましくは、−COO−、−OCO−または単結合を表し、
は、−O−、−CO−またはCRを表し、
およびRは、互いに独立に、H、F、CHまたはCFを表し、
m2およびm3は、それぞれ互いに独立に、1〜8の整数を表し、
oは、0または1を表し、
rは、0、1、2、3または4を表し、
sは、0、1、2または3を表し、
tは、0、1または2を表し、
xは、0または1を表す。
【0145】
本発明の更に好ましい実施形態において、重合性化合物は式IIより選択されるキラル化合物である:
【0146】
【化50】

式中、A、Zおよびm1は、それぞれの出現において同一または異なって、式Iにおいて示される意味の1つを有し、
は、それぞれの出現において同一または異なって、式IにおけるRに示される意味の1つを有し、
Qは、Lにより一置換または多置換されていてもよいk価のキラル基を表し、
kは、1、2、3、4、5または6であり、
ただし、化合物は、上に定義される通りの基P−Sp−を表すか含有する基RまたはLの少なくとも一方を含有する。
【0147】
式IIの特に好ましい化合物は、式IIIの1価基Qを含有する。
【0148】
【化51】

式中、Lおよびrは、それぞれの出現において同一または異なって、上で示される意味を有し、
およびBは、それぞれ互いに独立に、縮合されたベンゼン、シクロヘキサンまたはシクロヘキセンを表し、
tは、それぞれの出現において同一または異なって、0、1または2を表し、および
uは、それぞれの出現において同一または異なって、0、1または2を表す。
【0149】
xが1または2を表す式IIIの基が特に好ましい。
【0150】
式IIの更に好ましい化合物は、式IVの1価基Qまたは1個以上の基Rを含有する。
【0151】
【化52】

式中、
は、1〜9個のC原子を有するアルキレンまたはアルキレンオキシまたは単結合を表し、
は、1〜10個のC原子を有するフッ素化されていてもよいアルキルまたはアルコキシを表し、ただし加えて、1個または2個の隣接していないCH基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないように、−O−、−S−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−、−O−COO−、−S−CO−、−CO−S−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、
は、F、Cl、CNまたはQで定義される通りであるがQとは異なるアルキルまたはアルコキシを表す。
【0152】
式IVの好ましい基は、例えば、2−ブチル(即ち、1−メチルプロピル)、2−メチルブチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、特に、2−メチルブチル、2−メチルブトキシ、2−メチルペントキシ、3−メチルペントキシ、2−エチルヘキソキシ、1−メチルヘキソキシ、2−オクチルオキシ、2−オキサ−3−メチルブチル、3−オキサ−4−メチルペンチル、4−メチルヘキシル、2−ヘキシル、2−オクチル、2−ノニル、2−デシル、2−ドデシル、6−メトキシオクトキシ、6−メチルオクトキシ、6−メチルオクタノイルオキシ、5−メチルヘプチルオキシカルボニル、2−メチルブチリルオキシ、3−メチルバレロイルオキシ、4−メチルヘキサノイルオキシ、2−クロロプロピオニルオキシ、2−クロロ−3−メチルブチリルオキシ、2−クロロ−4−メチルバレリルオキシ、2−クロロ−3−メチルバレリルオキシ、2−メチル−3−オキサペンチル、2−メチル−3−オキサヘキシル、1−メトキシプロピル−2−オキシ、1−エトキシプロピル−2−オキシ、1−プロポキシプロピル−2−オキシ、1−ブトキシプロピル−2−オキシ、2−フルオロオクチルオキシ、2−フルオロデシルオキシ、1,1,1−トリフルオロ−2−オクチルオキシ、1,1,1−トリフルオロ−2−オクチル、2−フルオロメチルオクチルオキシである。
【0153】
式IIの更に好ましい化合物は、式Vの2価基Qを含有する。
【0154】
【化53】

式中、L、r、t、AおよびBは、上に示される意味を有する。
【0155】
式IIの更に好ましい化合物は、以下の式より選択される2価基Qを含有する。
【0156】
【化54】

式中、Pheは、Lにより一置換または多置換されていてもよいフェニルを表し、および、Rは、Fまたは1〜4個のC原子を有するフッ素化されていてもよいアルキルを表す。
【0157】
式IIの特に好ましい化合物は、以下のサブ式より選択される。
【0158】
【化55】

【0159】
【化56】

【0160】
【化57】

式中、L、P、Sp、m1、rおよびtは、上に示される意味を有し、ZおよびAは、それぞれの出現において同一または異なって、それぞれZおよびAに示される意味の1つを有し、t1は、それぞれの出現において同一または異なって、0または1を表す。
【0161】
式IIのキラル化合物は、光学的に活性な形態、即ち、純粋なエナンチオマーとして、または、2種類のエナンチオマーの任意の所望の混合物として、または、それらのラセミ化合物のいずれでも使用できる。ラセミ化合物の使用が好ましい。例えば、合成が著しくより単純で材料コストがより低いなど、ラセミ化合物の使用は純粋なエナンチオマーの使用に勝る幾つかの利点を有する。
【0162】
上および下において、以下の意味を適用する。
【0163】
用語「メソゲン基」は当業者には既知であり文献に記載されており、それの引力および斥力的相互作用の異方性により、低分子量または高分子物質中で液晶(LC)相の発生に本質的に寄与する基を表す。メソゲン基を含有する化合物(メソゲン化合物)は、それ自身では必ずしもLC相を有する必要はない。また、他の化合物と混合後および/または重合後のみに、メソゲン化合物がLC相挙動を示すことも可能である。典型的なメソゲン基は、例えば、剛直な棒状または円盤状の形状の単位である。メソゲンまたはLC化合物に関して使用される用語および定義の概説が、Pure Appl.Chem.第73巻(第5号)、888頁(2001年)およびC.Tschierske、G.Pelzl、S.Diele、Angew.Chem.2004年、第116巻、6340〜6368頁において与えられている。
【0164】
用語「スペーサー基」は、上および下で「Sp」とも呼ばれ、当業者には既知であり文献に記載されており、例えば、Pure Appl.Chem.第73巻(第5号)、888頁(2001年)およびC.Tschierske、G.Pelzl、S.Diele、Angew.Chem.2004年、第116巻、6340〜6368頁を参照。他に示さない限り、用語「スペーサー基」または「スペーサー」は、上および下において、重合性メソゲン化合物(「RM」)中でメソゲン基および重合性基(1個または複数)を互いに連結している屈曲性基を表す。
【0165】
用語「反応性メソゲン」または「RM」は、メソゲン基および重合に適切な1個以上の官能基(重合性基または基Pとしても既知である)を含有する化合物を表す。
【0166】
用語「低分子量化合物」および「非重合性化合物」は、通常、モノマー性で、当業者に既知の通常の条件下、特にRMの重合のために使用される条件下において重合に適切な官能基を一切含有しない化合物を表す。
【0167】
用語「有機基」は炭素または炭化水素基を表す。
【0168】
用語「炭素基」は、少なくとも1個の炭素原子を含有する一価または多価の有機基を表し、該基は更なる原子を含有していない(例えば、−C≡C−など)か、例えば、N、O、S、P、Si、Se、As、TeまたはGeなどの更なる1個以上の原子を含有してもよい(例えば、カルボニルなど)かのいずれかである。用語「炭化水素基」は、1個以上のH原子を追加的に、および、例えば、N、O、S、P、Si、Se、As、TeまたはGeなどの1個以上ヘテロ原子を任意成分として含有する炭素基を表す。
【0169】
「ハロゲン」は、F、Cl、BrまたはIを表す。
【0170】
炭素または炭化水素基は、飽和または不飽和基のいずれでもよい。不飽和基は、例えば、アリール、アルケニルまたはアルキニル基である。3個より多いC原子を有する炭素または炭化水素基は、直鎖状、分岐状および/または環状のいずれでもよく、また、スピロ結合または縮合環を有していてもよい。
【0171】
また、用語「アルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」などは、多価の基、例えば、アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレンなども包含する。
【0172】
用語「アリール」は、芳香族炭素基またはそれらより誘導される基を表す。用語「ヘテロアリール」は、1個以上のヘテロ原子を含有する上の定義される通りの「アリール」を表す。
【0173】
好ましい炭素および炭化水素基は、置換されていてもよく、1〜40個、好ましくは1〜25個、特に好ましくは1〜18個のC原子を有するアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシおよびアルコキシカルボニルオキシ、置換されていてもよく、6〜40個、好ましくは6〜25個のC原子を有するアリールまたはアリールオキシ、または、置換されていてもよく、6〜40個、好ましくは6〜25個のC原子を有するアルキルアリール、アリールアルキル、アルキルアリールオキシ、アリールアルキルオキシ、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールカルボニルオキシおよびアリールオキシカルボニルオキシである。
【0174】
更に好ましい炭素および炭化水素基は、C〜C40アルキル、C〜C40アルケニル、C〜C40アルキニル、C〜C40アリル、C〜C40アルキルジエニル、C〜C40ポリエニル、C〜C40アリール、C〜C40アルキルアリール、C〜C40アリールアルキル、C〜C40アルキルアリールオキシ、C〜C40アリールアルキルオキシ、C〜C40ヘテロアリール、C〜C40シクロアルキル、C〜C40シクロアルケニルなどである。C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、C〜C22アルキニル、C〜C22アリル、C〜C22アルキルジエニル、C〜C12アリール、C〜C20アリールアルキルおよびC〜C20ヘテロアリールが特に好ましい。
【0175】
更に好ましい炭素および炭化水素基は、1〜40個、好ましくは1〜25個のC原子を有する直鎖状、分岐状または環状アルキル基であり、該基は無置換であるか、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されており、ただし、1個以上の隣接していないCH基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、それぞれ互いに独立に、−C(R)=C(R)−、−C≡C−、−N(R)−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−で置き換えられていてもよい。
【0176】
は、好ましくは、H、ハロゲン、1〜25個のC原子を有する直鎖状、分岐状または環状アルキル鎖(ただし加えて、1個以上の隣接していないC原子は、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−によって置き換えられていてもよく、ただし、1個以上のH原子はフッ素により置き換えられていてもよい。)、6〜40個のC原子を有する置換されていてもよいアリールまたはアリールオキシ基、または2〜40個のC原子を有する置換されていてもよいヘテロアリールまたはヘテロアリールオキシ基を表す。
【0177】
好ましいアルキル基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、2−メチルブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、2−エチルヘキシル、n−ヘプチル、シクロヘプチル、n−オクチル、シクロオクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、ドデカニル、トリフルオロメチル、ペルフルオロ−n−ブチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペルフルオロオクチル、ペルフルオロヘキシルなどである。
【0178】
好ましいアルケニル基は、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニルなどである。
【0179】
好ましいアルキニル基は、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、オクチニルなどである。
【0180】
好ましいアルコキシ基は、例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、2−メチルブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、n−ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、n−ノニルオキシ、n−デシルオキシ、n−ウンデシルオキシ、n−ドデシルオキシなどである。
【0181】
好ましいアミノ基は、例えば、ジメチルアミノ、メチルアミノ、メチルフェニルアミノ、フェニルアミノなどである。
【0182】
アリールおよびヘテロアリール基は単環であってもまたは多環であってよく、即ち、それらは1個の環(例えば、フェニルなど)または2個以上の環を含有してもよく、また、該基は縮合されていてもよく(例えば、ナフチルなど)または共有結合によって連結されていてもよく(例えば、ビフェニルなど)、または縮合および連結された環の組み合わせを含有していてもよい。ヘテロアリール基は、好ましくは、O、N、SおよびSeより選択される1個以上のヘテロ原子を含有する。
【0183】
6〜25個のC原子を有する単環式、二環式または三環式アリール基および2〜25個のC原子を有する単環式、二環式または三環式へテロアリール基が特に好ましく、該基は縮合された環を含有していてもよく、置換されていてもよい。更に、5員、6員または7員のアリールおよびヘテロアリール基が好ましく、ただし加えて、1個以上のCH基は、O原子および/またはS原子が互いに直接連結されないようにして、N、SまたはOで置き換えられていてもよい。
【0184】
好ましいアリール基は、例えば、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、[1,1’:3’,1”]ターフェニル−2’−イル、ナフチル、アントラセン、ビナフチル、フェナントレン、ピレン、ジヒドロピレン、クリセン、ペリレン、テトラセン、ペンタセン、ベンゾピレン、フルオレン、インデン、インデノフルオレン、スピロビフルオレンなどである。
【0185】
好ましいヘテロアリール基は、例えば、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、フラン、チオフェン、セレノフェン、オキサゾール、イソキサゾール、1,2−チアゾール、1,3−チアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾールなどの5員環;ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,3,5−テトラジンなどの6員環;またはインドール、イソインドール、インドリジン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、プリン、ナフタイミダゾール、フェナントライミダゾール、ピリダイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、ベンゾキサゾール、ナフトキサゾール、アントロキサゾール、フェナントロキサゾール、イソキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、キノリン、イソキノリン、プテリジン、ベンゾ−5,6−キノリン、ベンゾ−6,7−キノリン、ベンゾ−7,8−キノリン、ベンゾイソキノリン、アクリジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾピリダジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、フェナジン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントリジン、フェナントロリン、チエノ[2,3b]チオフェン、チエノ[3,2b]チオフェン、ジチエノチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ベンゾチアジアゾチオフェンなどの縮合基;またはこれらの基の組み合わせである。また、ヘテロアリール基は、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、フッ素、フルオロアルキルまたは更なるアリールまたはヘテロアリール基で置換されてよい。
【0186】
(非芳香族)脂環式およびヘテロ環式基は、飽和環、即ち、排他的に単結合を含有するものと、また、部分的に不飽和な環、即ち、多重結合も含有してよいものとの両者を包含する。ヘテロ環式環は、好ましくは、Si、O、N、SおよびSeより選択される1個以上のヘテロ原子を含有する。
【0187】
(非芳香族)脂環式およびヘテロ環式基は、単環式、即ち、1個のみの環を含有(例えば、シクロヘキサンなど)してもよく、または、多環式、即ち、複数の環を含有(例えば、デカヒドロナフタレンまたはビシクロオクタンなど)していてもよい。飽和基が、特に好ましい。更に、3〜25個のC原子を有する単環式、二環式または三環式基が好ましく、該基は縮合環を含有していてもよく、置換されていてもよい。更に、5員、6員、7員または8員の炭素環式基が好ましく、ただし加えて、1個以上のC原子はSiで置き換えられていてもよく、および/または1個以上のCH基はNで置き換えられていてもよく、および/または1個以上の隣接していないCH基は−O−および/または−S−で置き換えられていてもよい。
【0188】
好ましい脂環式およびヘテロ環式基は、例えば、シクロペンタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフラン、ピロリジンなどの5員基、シクロヘキサン、シリナン、シクロヘキセン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジチアン、ピペリジンなどの6員基、シクロヘプタンなどの7員基、および、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、インダン、ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1,3−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、スピロ[3.3]ヘプタン−2,6−ジイル、オクタヒドロ−4,7−メタノインダン−2,5−ジイルなどの縮合基である。
【0189】
アリール、ヘテロアリール、炭素および炭化水素基は、好ましくは、シリル、スルホ、スルホニル、ホルミル、アミン、イミン、ニトリル、メルカプト、ニトロ、ハロゲン、C1〜12アルキル、C6〜12アリール、C1〜12アルコキシ、ヒドロキシル、またはこれらの基の組み合わせから成る群より選択される1個以上の置換基を有してもよい。
【0190】
好ましい置換基は、例えば、アルキルまたはアルコキシなどの溶解促進基、フッ素、ニトロまたはニトリルなどの電子吸引基、または、ポリマーにおいてガラス転移温度(Tg)を上昇させるための置換基、特に、例えば、t−ブチルまたは置換されていてもよいアリール基などの嵩高い基である。
【0191】
下で「L」とも言われる好ましい置換基は、例えば、F、Cl、Br、I、−CN、−NO、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)N(R、−C(=O)Y、−C(=O)R、−N(R(ただし、Rは上述の意味を有し、Yはハロゲンを表す。)、6〜40個、好ましくは6〜20個のC原子を有する置換されていてもよいシリルまたはアリール、および、1〜25個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ(ただし、1個以上のH原子はFまたはClで置き換えられていてもよい。)である。
【0192】
「置換されたシリルまたはアリール」は、好ましくは、ハロゲン、−CN、R、−OR、−CO−R、−CO−O−R、−O−CO−Rまたは−O−CO−O−Rによる置換を意味し、ただし、Rは上述の意味を有する。
【0193】
特に好ましい置換基Lは、例えば、F、Cl、CN、NO、CH、C、OCH、OC、COCH、COC、COOCH、COOC、CF、OCF、OCHF、OC、更に、フェニルである。
【0194】
【化58】

式中、Lは上述の意味の1つを有する。
【0195】
重合性基Pは、例えば、フリーラジカルまたはイオン性連鎖重合、重付加または重縮合などの重合反応に適するか、または、例えば、ポリマー主鎖上への付加または縮合といったポリマー類似反応に適する基である。連鎖重合のための基、特に、C=C二重結合またはC≡C三重結合を含有するもの、および、例えば、オキセタンまたはエポキシド基などの開環重合に適する基が特に好ましい。
【0196】
好ましい重合性基Pは、CH=CW−COO−、CH=CW−CO−、
【0197】
【化59】

CH=CW−(O)k3−、CW=CH−CO−(O)k3−、CW=CH−CO−NH−、CH=CW−CO−NH−、CH−CH=CH−O−、(CH=CH)CH−OCO−、(CH=CH−CHCH−OCO−、(CH=CH)CH−O−、(CH=CH−CHN−、(CH=CH−CHN−CO−、HO−CW−、HS−CW−、HWN−、HO−CW−NH−、CH=CW−CO−NH−、CH=CH−(COO)k1−Phe−(O)k2−、CH=CH−(CO)k1−Phe−(O)k2−、Phe−CH=CH−、HOOC−、OCN−およびWSi−から成る群より選択され、式中、Wは、H、F、Cl、CN、CF、フェニルまたは1〜5個のC原子を有するアルキル、特に、H、F、ClまたはCHを表し、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜5個のC原子を有するアルキル、特に、H、メチル、エチルまたはn−プロピルを表し、W、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、Cl、1〜5個のC原子を有するオキサアルキルまたはオキサカルボニルアルキルを表し、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、H、Clまたは1〜5個のC原子を有するアルキルを表し、Pheは、上で定義される通りでP−Spとは異なる1個以上の基Lで置換されていてもよい1,4−フェニレンを表し、k、kおよびkは、それぞれ互いに独立に、0または1を表し、kは、好ましくは、1を表し、kは1〜10の整数である。
【0198】
特に好ましい基Pは、CH=CH−COO−、CH=C(CH)−COO−、CH=CF−COO−、CH=CH−、CH=CH−O−、(CH=CH)CH−OCO−、(CH=CH)CH−O−、
【0199】
【化60】

特に、ビニルオキシ、アクリレート、メタクリレート、フルオロアクリレート、クロロアクリレート、オキセタンおよびエポキシドである。
【0200】
本発明の更に好ましい実施形態において、式IおよびIIおよびそれらのサブ式の重合性化合物は、1個以上の基P−Sp−に代えて、2個以上の重合性基Pを含有する1個以上の分岐状の基(多官能重合性基)を含有する。このタイプの適切な基、それらを含有する重合性化合物は、例えば、米国特許第7,060,200号明細書または米国特許出願公開第2006/0172090号公報に記載されている。以下の式より選択される多官能重合性基が特に好ましい。
【0201】
【化61】

式中、
alkylは、単結合または1〜12個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキレンを表し、ただし、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれ互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、−C(R)=C(R)−、−C≡C−、−N(R)−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、ただし加えて、1個以上のH原子は、F、ClまたはCNで置き換えられていてもよく、ただし、Rは上述の意味を有し、好ましくは、上で定義される通りのRを表し、
aaおよびbbは、それぞれ互いに独立に、0、1、2、3、4、5または6を表し、
Xは、X’に示される意味の1つを有し、および
1〜5は、それぞれ互いに独立に、上でPに示される意味の1つを有する。
【0202】
好ましいスペーサー基Spは、基「P−Sp−」が式「P−Sp’−X’−」に一致するように式Sp’−X’より選択され、ただし、
Sp’は、1〜20個、好ましくは1〜12個のC原子を有するアルキレンを表し、該基は、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されていてもよく、ただし加えて、1個以上の隣接していないCH基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、それぞれ互いに独立に、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−NR−CO−O−、−O−CO−NR−、−NR−CO−NR−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、
X’は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR−、−CY=CY−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−または単結合を表し、
およびR00は、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、および
およびYは、それぞれ互いに独立に、H、F、ClまたはCNを表す。
【0203】
X’は、好ましくは、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR−または単結合である。
【0204】
典型的なスペーサー基Sp’は、例えば、−(CHp1−、−(CHCHO)q1−CHCH−、−CHCH−S−CHCH−、−CHCH−NH−CHCH−または−(SiR00−O)p1−であり、式中、p1は1〜12の整数、q1は1〜3の整数、およびRおよびR00は上述の意味を有する。
【0205】
特に好ましい基−X’−Sp’−は、−(CHp1−、−O−(CHp1−、−OCO−(CHp1−、−OCOO−(CHp1−である。
【0206】
特に好ましい基Sp’は、例えば、それぞれの場合で直鎖状のエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、オクタデシレン、エチレンオキシエチレン、メチレンオキシブチレン、エチレンチオエチレン、エチレン−N−メチルイミノエチレン、1−メチルアルキレン、エテニレン、プロペニレンおよびブテニレンである。
【0207】
重合性化合物は、当業者に既知で、例えば、Houben−Weyl編、Methoden der organischen Chemie[Methods of Organic Chemistry]、Thieme−Verlag社、Stuttgart市などの有機化学の標準的な著作に記載されている方法に類似して調製される。式Iの重合性アクリレートおよびメタクリレートの合成は、米国特許第5,723,066号明細書に記載される方法に類似して行うことができる。更に、特に好ましい方法が実施例において与えられる。
【0208】
最も単純な場合、例えば、2,6−ジヒドロキシナフタレン(ナフタレン−2,6−ジオール)または1−(4−ヒドロキシフェニル)フェニル−4−オールなどの一般式HO−A−(Z−Am1−OH(式中、A、A、Zおよびmは、上述の意味を有する)の商業的に入手可能なジオールを、例えば、塩化メタクリロイルまたはメタクリル酸などの基Pを含有する対応する酸、酸誘導体またはハロゲン化化合物を使用して、例えば、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)などの脱水剤存在下において、エステル化またはエーテル化することで合成を行う。
【0209】
重合性化合物は、電圧を印加してLCディスプレイの基板間のLC媒体中において、その場での重合により重合または架橋(化合物が2個以上の重合性基を含有する場合)される。適切で好ましい重合方法は、例えば、熱または光重合で、好ましくは光重合であり、特にはUV光重合である。また必要に応じて、ここに1種類以上の開始剤を加えることもできる。重合の適切な条件および開始剤の適切なタイプおよび量は当業者に既知であり、文献に記載されている。例えば、商業的に入手可能な光重合開始剤Irgacure651(登録商標)、Irgacure184(登録商標)、Irgacure907(登録商標)、Irgacure369(登録商標)またはDarocure1173(登録商標)(Ciba社)がフリーラジカル重合に適する。開始剤を使用する場合、混合物全体における開始剤の比率は、好ましくは0.001〜5重量%、特に好ましくは0.001〜1重量%である。しかしながら、開始剤を添加することなく、重合を行うこともできる。更なる好ましい実施形態において、LC媒体は重合開始剤を含まない。
【0210】
また、例えば、保存または輸送中におけるRMの好ましくない自発的な重合を防止するために、重合性成分またはLC媒体は1種類以上の安定剤を含んでもよい。安定剤の適切なタイプおよび量は当業者に既知であり、文献に記載されている。例えば、Irganox(登録商標)シリーズ(Ciba社)の商業的に入手可能な安定剤が特に適切である。安定剤を使用する場合、RMまたは重合性成分A)の総量を基礎とする安定剤の割合は、好ましくは10〜5000ppm、非常に好ましくは50〜500ppmである。
【0211】
また、本発明による重合性化合物は開始剤のない重合にも適しており、このことは、例えば、材料費がより低く、開始剤またはそれの劣化生成物の残存し得る量によるLC媒体の不純物が特に少ないなどの特筆すべき利点を伴う。
【0212】
本発明によるLC媒体は、好ましくは5%未満、特に好ましくは1%未満、非常に特に好ましくは0.5%未満の重合性化合物、特に、上述の式の重合性化合物を含む。
【0213】
本発明による重合性化合物はLC媒体に個別に加えることができるが、2種類以上の重合性化合物を含む混合物を使用することも可能である。このタイプの混合物を重合するとコポリマーが形成される。本発明は、更に、上および下で述べる重合性混合物に関する。
【0214】
本発明によって使用できるLC媒体は、例えば、1種類以上の上述の化合物を、上で定義される通りの1種類以上の重合性化合物と、および、任意成分として更なる液晶化合物および/または添加剤と混合することにより、それ自身は従来の方法で調製される。一般に、より少量で使用される成分の所望量を、主要構成成分を構成する成分に、有利には昇温して、溶解する。また、成分の溶液を、例えば、アセトン、クロロホルムまたはメタノールといった有機溶媒に混合し、完全に混合後、例えば蒸留により、溶媒を再び除去することも可能である。本発明は、更に、本発明によるLC媒体を調製するための方法にも関する。
【0215】
また、本発明によるLC媒体が、例えば、H、N、O、Cl、Fが対応する同位体に置き換えられた化合物も含んでよいことは、当業者に言うまでもない。
【0216】
本発明によるLCディスプレイの構成は、冒頭で引用した先行技術に記載される通りのPSAディスプレイに対する通常の構造に対応している。突起のない構造、特に加えて、カラーフィルター側の電極が構造化されておらず、TFT側の電極のみがスリットを有するものが好ましい。PSA−VAディスプレイ用に特に適切で好ましい電極構造は、例えば、米国特許出願公開第2006/0066793号公報に記載されている。
【0217】
文意が明らかに他を示さない限り、本明細書において複数形として使用される用語は本明細書において単数形を含むとして解釈され、逆もまた同様である。
【0218】
本明細書の記載および請求項を通して、単語「含む(comprise)」および「含有する(contain)」および該単語の活用、例えば「comprising」および「comprises」は「含むが限定されない」ことを意味し、他の成分を排除することを意図しない(排除しない)。
【0219】
本発明の範囲内に収まりながら、本発明の前述の実施形態に対して改変を行うことができることが分かるであろう。本明細書において開示されるそれぞれの態様は、他に明言しない限り、同一、同等または同様の目的のために働く代替の態様によって置き換えてもよい。よって、他に明言しない限り、開示されるそれぞれの態様は、同等または同様な態様の包括的なシリーズの一例に過ぎない。
【0220】
本明細書において開示される全ての態様は、少なくとも幾つかのそのような態様および/または工程が互いに排他的な組み合わせを除いて、任意の組み合わせにおいて組み合わせてもよい。特に、本発明の好ましい態様は本発明の全ての形態に適用することができ、任意に組み合わせて使用してもよい。同様に、本質的でない組み合わせにおいて記載される態様は、別途(組み合わせず)に使用してもよい。
【0221】
以下の例は、本発明を限定することなく説明する。しかしながら、それらは、当業者に対して、好ましく使用される化合物、それらのそれぞれの濃度およびそれらの互いの組み合わせの好ましい混合の考え方を示す。加えて、例は、どのような特性および特性の組み合わせが入手可能であるかを例示する。
【0222】
下の表においては、以下の略称を使用する:
(n、m、z:それぞれ互いに独立に、1、2、3、4、5または6)
【0223】
【表1】

【0224】
【表2】

【0225】
【表3】

【0226】
【表4】

本発明の好ましい実施形態において、本発明によるLC媒体は、表Aからの化合物から成る群より選択される1種類以上の化合物を含む。
【0227】
表Bに、本発明によるLC媒体に添加できる可能なドーパントを示す。
【0228】
【表5】

【0229】
【表6】

LC媒体は、好ましくは0〜10重量%、特には0.01〜5重量%、特に好ましくは0.1〜3重量%のドーパントを含む。LC媒体は、好ましくは、表Bからの化合物から成る群より選択される1種類以上のドーパントを含む。
【0230】
表Cに、本発明によるLC媒体に添加できる可能な安定剤を示す(nは、ここで、1〜12の整数を表す)。
【0231】
【表7】

【0232】
【表8】

【0233】
【表9】

【0234】
【表10】

【0235】
【表11】

LC媒体は、好ましくは0〜10重量%、特には0.01〜5重量%、特に好ましくは0.1〜1重量%の安定剤を含む。LC媒体は、好ましくは、表Cからの化合物から成る群より選択される1種類以上の安定剤を含む。
【0236】
加えて、以下の略称および記号を使用する:
は20℃における容量閾電圧[V]を表し、
は20℃および589nmにおける異常光屈折率を表し、
は20℃および589nmにおける常光屈折率を表し、
Δnは20℃および589nmにおける光学的異方性を表し、
εは20℃および1kHzにおけるダイレクターに垂直な誘電率を表し、
εは20℃および1kHzにおけるダイレクターに平行な誘電率を表し、
Δεは20℃および1kHzにおける誘電異方性を表し、
cl.p.、T(N,I)は透明点[℃]を表し、
γは20℃における回転粘度[mPa・s]を表し、
は20℃における「スプレイ(splay)」変形に対する弾性定数[pN]を表し、
は20℃における「ツイスト(twist)」変形に対する弾性定数[pN]を表し、
は20℃における「ベンド(bend)」変形に対する弾性定数[pN]を表し、
LTSは試験用セル中で決定される低温安定性(相)を表し、
HR20は20℃における電圧保持率[%]を表し、および
HR100は100℃における電圧保持率[%]を表す。
【0237】
他に明記しない限り、本出願において全ての濃度は重量パーセントで示されており、他に明示しない限り、対応する混合物または混合物成分に関する。
【0238】
他に明記しない限り、例えば、融点T(C,N)、スメクチック(S)からネマチック(N)相への転移T(S,N)および透明点T(N,I)などの本出願において示される全ての温度の値は摂氏度(℃)で示される。
【0239】
全ての物理的特性は「メルク液晶、液晶の物理的特性」1997年11月、ドイツ国メルク社に従って決定されるか決定されたものであり、それぞれの場合で他に明示しない限り、20℃の温度が適用され、Δnは589nmで決定され、Δεは1kHzで決定される。
【0240】
本発明において、用語「閾電圧」は、他に明示しない限り、フレデリックス閾値としても既知の容量閾値(V)に関する。例において、一般的に通常であるが、10%相対コントラストに対する光学的閾値(V10)も示される場合がある。
【0241】
容量閾電圧の測定用に使用されるディスプレイは4μmの間隔で離れている2枚の平坦で平行な外板と、外板の内側にラビングされたポリイミドの配向層を覆う電極層とを有し、該配向層は液晶分子のホメオトロピックエッジ配向を生じる。
【0242】
重合性化合物は、所定の時間のUV照射により、同時に電圧をディスプレイに印加(通常、10V〜30Vの交流、1kHz)して、ディスプレイ内で重合する。例においては、他に示さない限り、28mW/cmの水銀蒸気ランプを使用し、365nm帯域通過フィルターが装着された標準的なUVメーター(Ushio UNIメーターモデル)を使用して強度を測定した。
【0243】
チルト角は、回転結晶実験(Autronic−Melchers TBA−105)によって決定される。ここで、低い値(即ち、角度90°から大きく外れている)が大きなチルトに対応する。
【実施例】
【0244】
<例1>
以下の成分a)〜c)から成るLC媒体は、PS−VAディスプレイにおける使用に適する。
【0245】
a)99.00%の下に示す組成を有するネマチックLCホスト混合物N1。
【0246】
【表12】

b)0.25%の下に示す重合性モノマー化合物A。
【0247】
【化62】

c)0.75%のキラルドーパントS−4011。
【0248】
<例2>
99.50%のネマチックLCホスト混合物N1(例1参照)および0.50%の重合性モノマー化合物A(例1参照)から成るLC媒体は、PS−VAディスプレイにおける使用に適する。
【0249】
<例2>
99.50%のネマチックLCホスト混合物N1(例1参照)、0.25%の重合性モノマー化合物A(例1参照)および0.25%のキラルドーパントS−5011から成るLC媒体は、PS−VAディスプレイにおける使用に適する。
【0250】
<例3>
99.00%のネマチックLCホスト混合物N1(例1参照)、0.25%の下に示す重合性モノマー化合物Bおよび0.75%のキラルドーパントS−4011から成るLC媒体は、PS−VAディスプレイにおける使用に適する。
【0251】
【化63】

<例4>
99.50%のネマチックLCホスト混合物N1(例1参照)および0.50%の下に示す重合性モノマー化合物Cから成るLC媒体は、PS−VAディスプレイにおける使用に適する。
【0252】
【化64】

<例5>
99.00%のネマチックLCホスト混合物N1(例1参照)、0.25%の下に示す重合性モノマー化合物Dおよび0.75%のキラルドーパントS−2011から成るLC媒体は、PS−VAディスプレイにおける使用に適する。
【0253】
【化65】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種類以上の重合性化合物を含む重合性成分と、
ネマチック成分とを含み、
該ネマチック成分は、Fおよび/またはClにより2位および3位において置換されている1個以上の1,4−フェニレン基を含む1種類以上の化合物を90〜100重量%で含有することを特徴とする液晶(liquid−crystal:LC)媒体。
【請求項2】
該ネマチック成分が、以下の式から成る群より選択される化合物を90〜100重量%で含有することを特徴とする請求項1に記載のLC媒体。
【化1】

(式中、個々の基は以下の意味を有する:
aは、1または2を表し、
bは、0または1を表し、
【化2】

【化3】

【化4】

およびRは、それぞれ互いに独立に、1〜12個のC原子を有するアルキルまたはアルケニルを表し、ただし加えて、1個または2個の隣接していないCH基は、O原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−または−COO−で置き換えられていてもよく、
およびRは、それぞれ互いに独立に、Rについて上に示される意味の1つを有し、
は、−CH=CH−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−O−、−CH−、−CHCH−または単結合、好ましくは、単結合を表し、
1〜4は、それぞれ互いに独立に、FまたはClを表し、
およびLは、それぞれ互いに独立に、F、Cl、OCF、CF、CH、CHF、CHFを表す。)
【請求項3】
以下の式より選択される1種類以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のLC媒体。
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

(式中、aは1または2を表し、alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、alkenylは2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表し、(O)はO原子または単結合を表す。)
【請求項4】
以下の式より選択される1種類以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のLC媒体。
【化9】

【化10】

【化11】

(式中、alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、alkenylは2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表し、(O)はO原子または単結合を表す。)
【請求項5】
以下の式より選択される1種類以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のLC媒体。
【化12】

【化13】

(式中、Rは1〜7個のC原子を有する直鎖状のアルキルまたはアルコキシ基を表し、Rは2〜7個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表し、(O)はO原子または単結合を表し、mは1〜6の整数を表す。)
【請求項6】
該重合性化合物は式IまたはIIより選択されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のLC媒体。
【化14】

(式中、個々の基は、以下の意味を有する:
およびRは、それぞれ互いに独立に、P−Sp−、H、ハロゲン、SF、NO、炭素基または炭化水素基を表し、ただし、基RおよびRの少なくとも一方はP−Sp−を表し、
Pは、それぞれの出現において同一または異なって、重合性基を表し、
Spは、それぞれの出現において同一または異なって、スペーサー基または単結合を表し、
およびAは、それぞれ互いに独立に、好ましくは4〜25個のC原子を有する芳香族、ヘテロ芳香族、脂環式またはヘテロ環式基を表し、また、該基は縮合環を含有してもよく、該基はLにより一置換または多置換されていてもよく、
は、それぞれの出現において同一または異なって、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−OCO−、−O−CO−O−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−(CHn1−、−CFCH−、−CHCF−、−(CFn1−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、CR00または単結合を表し、
Lは、P−Sp−、H、OH、CHOH、ハロゲン、SF、NO、炭素基または炭化水素基を表し、
およびR00は、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、
m1は、0、1、2、3または4を表し、
n1は、1、2、3または4を表し、
は、それぞれの出現において同一または異なって、式IにおけるRに示される意味の1つを有し、
Qは、Lにより一置換または多置換されていてもよいk価のキラル基を表し、
kは、1、2、3、4、5または6を表す。)
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に定義される通りのネマチック成分であるLC媒体。
【請求項8】
LCディスプレイにおける請求項1〜7のいずれか一項に記載のLC媒体の使用。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のLC媒体を含み、好ましくは、VA、MVA、PS、PSA、PS−VAまたはPS−IPSモードのディスプレイであるLCディスプレイ。
【請求項10】
2枚の基板および2個の電極(ただし、該基板の少なくとも一方は光に対して透明であり、該基板の少なくとも一方はそれの上に提供される1個または2個の電極を有する。)と、該基板間に配置され、重合された成分および低分子量成分を含むLC媒体層(ただし、該重合された成分は、1種類以上の重合性化合物を、該ディスプレイセルの該基板間において該LC媒体中で該電極に電圧を印加しながら重合することで得ることができ、ただし、該低分子量成分は請求項1〜5のいずれか一項に記載のネマチック成分である。)とを含むディスプレイセルを含有することを特徴とする請求項9に記載のLCディスプレイ。

【公表番号】特表2011−529129(P2011−529129A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520348(P2011−520348)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004991
【国際公開番号】WO2010/012363
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】