説明

液晶偏光板用離型フィルム

【課題】 液晶偏光板の製造工程の広幅化や高速化において、加工適正に優れ、光学特性にも優れた液晶偏光板用離型フィルムを提供する。
【解決手段】 フィルム幅が1460mm以上であり、配向主軸の向きが15度以下であるポリエステルフィルムの片面に、離型層を設けた離型フィルムであり、140℃の雰囲気下で5分間保持したときのフィルム長手方向の加熱収縮率が2.5%以下であり、同条件におけるフィルム両端の加熱収縮率の差が0.2%以下であり、たるみ量が15mm/m以下であることを特徴とする液晶偏光板用離型フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近年著しい成長が見られる液晶ディスプレイ(以下、LCDと略記する場合がある)において、今後更なる需要が見込まれる40インチ型以上の大きさを有するLCDに用いられる偏光板用の離型フィルムに関するものであり、この大画面化に伴う液晶偏光板の製造工程の広幅化や高速化において、加工適正に優れ、かつ光学特性にも優れた液晶偏光板用離型フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステルフィルムを基材とする離型フィルムは、その優れた特性より、液晶偏光板、位相差板構成部材製造用、PDP構成部材製造用、有機EL構成部材製造用等、各種ディスプレイ構成部材製造用等、各種光学用途等に使用されている。
【0003】
その中でも特に、液晶偏光板用離型フィルムに関しては近年のLCD市場の著しい成長に伴う生産量の急激な増加が見られる。また、LCD低価格化に伴い、部材の低価格実現のため、製造歩留まりの向上、および、製造の高速化が大きな問題となっている。
【0004】
今後40インチ型以上の大きさを有する大画面LCD市場の成長に対応するため、離型フィルムには広幅化とともに偏光板の取り効率の向上も求められている。例えば横930mm×縦520mmの42インチ型LCD偏光板を2枚以上取る場合、1460mm以上の幅を有する離型フィルムが必要とされる。
【0005】
さらに、品質に関しては製造の高速化や、フィルムの広幅化に伴い、さらにフィルム両端間の配向や加熱による形状変化の均一性が求められている。
両端間の配向の差が大きい場合は、光学的異方性が著しくなり、偏光板の異物混入等の欠陥検査として一般的なクロスニコル法による目視検査での障害となり異物の混入や欠陥を見逃しやすくなるという不具合が生じる。
【0006】
また、両端間の加熱による形状変化の差が大きい場合は、フィルムが加熱加工工程を経て偏光板に貼り合わされる際、平面性が損なわれ全面を貼り合わせることが困難になるという不具合が生じる。
【特許文献1】特開平7−178810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題点を解決しようとするものであり、その解決課題は、液晶偏光板の製造工程の広幅化や高速化において、加工適正に優れ、かつ光学特性にも優れた液晶偏光板用離型フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構成を有する離型フィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、フィルム幅が1460mm以上であり、配向主軸の向きが15度以下であるポリエステルフィルムの片面に、離型層を設けた離型フィルムであり、140℃の雰囲気下で5分間保持したときのフィルム長手方向の加熱収縮率が2.5%以下であり、同条件におけるフィルム両端の加熱収縮率の差が0.2%以下であり、たるみ量が15mm/m以下であることを特徴とする液晶偏光板用離型フィルムに存する。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における離型フィルムの基体であるポリエステルフィルムは単層構成であっても積層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。
【0011】
本発明においてフィルムに使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。何れにしても本発明でいうポリエステルとは、通常60モル%以上、好ましくは80モル%以上がエチレンテレフタレート単位であるポリエチレンテレフタレート等であるポリエステルを指す。
【0012】
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステル層中には、易滑性付与を主たる目的として粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、フィルム原料の製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0013】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0014】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.05〜5μm、好ましくは0.05〜3μmの範囲である。平均粒径が0.05μm未満の場合には、粒子が凝集しやすく、分散性が不十分な場合があり、一方、5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程において種々の表面機能層を塗設させる場合等に不具合が生じる場合がある。
【0015】
さらにポリエステル層中の粒子含有量は、通常0.001〜5重量%、好ましくは0.005〜3重量%の範囲である。粒子含有量が0.001重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0016】
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリマーを製造する任意の段階において添加することができる。
【0017】
また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0018】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
【0019】
本発明の離型フィルム厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲で、かつ、離型フィルムとしての加工が可能であれば特に限定されるものではないが、通常10〜100μm、好ましくは15〜50μmの範囲である。フィルム厚みが10μm未満では、フィルムに腰がないことがあり、離型フィルムを剥がす工程でトラブルを生じるおそれがある。フィルム厚みが100μmを超える場合は、製造コストが上がることになる。
【0020】
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。
【0021】
すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高める必要があり、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0022】
また、本発明においては離型フィルムを構成するポリエステルフィルム製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法とは、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
【0023】
本発明における離型フィルムは、配向主軸の傾きが15度以下であり、好ましくは12度以下である。なお、ここでいう配向角とは、フィルム幅方向または縦方向に対する主軸の傾きである。本発明の離型フィルムは偏光板用として使用される際、当該偏光板の垂直偏光の向きはポリエステルフィルムの縦方向と一致する。それをクロスニコル法により検査する工程では、クロスニコルとするため、すなわち検査のための偏光板をその垂直方向に設置して行う。従ってポリエステルフィルムの偏光方向はそれに対し縦方向およびそれに垂直な幅方向になる。検査工程ではこれらの偏光方向と配向主軸とがなす角を特定範囲とすることにより、精度を高度に維持することができる。配向角が15度より大きいとクロスニコル法検査の際に光漏れが大きくなり好ましくない。
【0024】
さらに上述のポリエステルフィルムの延伸工程中にフィルム表面を処理する、いわゆるインラインコーティングを施すことができる。インラインコーティングによりポリエステルフィルム上に塗布層が設けられる場合には、延伸と同時に塗布が可能となると共に、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることができるため、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
【0025】
次に本発明における塗布層の形成について説明する。本発明における離型フィルムを構成する塗布層は上述のインラインコーティングによりポリエステルフィルム上に設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、いわゆるオフラインコーティングを採用してもよく、両者を併用してもよい。なお、積層ポリエステルフィルムの製造が安価に対応可能な点でインラインコーティングの方が好ましく用いられる。
【0026】
インラインコーティングについては以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては特に縦延伸が終了して、横延伸前にコーティング処理を施すことができる。塗布延伸法によりポリエステルフィルム上に塗布層が設けられる場合には、製膜と同時に塗布が可能になると共に塗布層を高温で処理することができ、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
【0027】
次に本発明における離型層の形成について説明する。本発明における離型フィルムを構成する離型層は上述の塗布延伸法(インラインコーティング)等のフィルム製造工程内において、ポリエステルフィルム上に設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、いわゆるオフラインコーティングを採用してもよく、何れの手法を採用してもよい。塗布延伸法(インラインコーティング)については以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては特に1段目の延伸が終了して、2段目の延伸前にコーティング処理を施すことができる。塗布延伸法によりポリエステルフィルム上に離型層が設けられる場合には、延伸と同時に塗布が可能になると共に離型層の厚みを延伸倍率に応じて薄くすることができ、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
【0028】
また、本発明における離型フィルムを構成する離型層は離型性を良好とするために硬化型シリコーン樹脂を含有するのが好ましい。硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。
【0029】
硬化型シリコーン樹脂の種類としては付加型・縮合型・紫外線硬化型・電子線硬化型・無溶剤型等、何れの硬化反応タイプでも用いることができる。具体例を挙げると、信越化学工業(株)製KS−774、KS−775、KS−778、KS−779H、KS−847H、KS−856、X−62−2422、X−62−2461、X−62−1387、KNS−3051、X−62−1496、KNS320A、KNS316、X−62−1574A/B、X−62−7052、X−62−7028A/B、X−62−7619、X−62−7213、GE東芝シリコーン(株)製YSR−3022、TPR−6700、TPR−6720、TPR−6721、TPR6500、TPR6501、UV9300、UV9425、XS56−A2775、XS56−A2982、UV9430、TPR6600、TPR6604、TPR6605、SM3200、SM3030、東レ・ダウコーニング(株)製DKQ3−202、DKQ3−203、DKQ3−204、DKQ3−205、DKQ3−210、SRX357、SRX211、SD7220、LTC750A、LTC760A、SP7259、BY24−468C、SP7248S、BY24−452、SP7268S、SP7265S、LTC1000M、LTC1050L、SYLOFF7900、SYLOFF7198、SYLOFF22A等が例示される。さらに離型層の剥離性等を調整するために剥離コントロール剤を併用してもよい。
【0030】
本発明において、ポリエステルフィルムに離型層を設ける方法として、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては「コーティング方式」槇書店 原崎勇次著 1979年発行に記載例がある。
【0031】
本発明において、ポリエステルフィルム上に離型層を形成する際の硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、塗布延伸法(インラインコーティング)により離型層を設ける場合、通常、170〜280℃で3〜40秒間、好ましくは200〜280℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのがよい。一方、オフラインコーティングにより離型層を設ける場合、通常、80〜200℃で3〜40秒間、好ましくは100〜180℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのがよい。また、塗布延伸法(インラインコーティング)あるいはオフラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。なお、活性エネルギー線照射による硬化のためのエネルギー源としては、従来から公知の装置,エネルギー源を用いることができる。離型層の塗工量は塗工性の面から、通常0.005〜1g/m、好ましくは0.005〜0.5g/mの範囲である。塗工量が0.005g/m未満の場合、塗工性の面より安定性に欠け、均一な塗膜を得るのが困難になる場合がある。一方、1g/mを超えて厚塗りにする場合には離型層自体の塗膜密着性、硬化性等が低下する場合がある。
【0032】
本発明において塗布層上に離型層を設ける場合、塗布層を設けた後にフィルムを一旦巻き取り、あらためて離型層を設けてもよく、また、塗布層を設けた後、連続して、離型層を塗布層上に設けてもよく、何れの方法を採用してもよい。
【0033】
本発明における離型フィルムに関して、離型層が設けられていない面には本発明の主旨を損なわない範囲において、接着層、帯電防止層、オリゴマー析出防止層等の塗布層を設けてもよい。
【0034】
また、離型フィルムを構成するポリエステルフィルムには予め、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0035】
本発明における離型フィルムの剥離力は、通常10〜100mN/cm、好ましくは10〜50mN/cmの範囲である。剥離力が10mN/cm未満の場合、剥離力が軽くなりすぎて本来剥離する必要がない場面においても容易に剥離する不具合を生じる場合があり、一方、100mN/cmを超える場合には、剥離力が重くなりすぎ、剥離する際に粘着剤が変形し、後の工程で問題が生じたり、粘着剤が離型フィルム側に付着したりすることがある。
【0036】
また、本発明におけるフィルムのたるみ量(平面性)は、15mm/m以下であり、好ましくは7.5mm/m以下の範囲である。フィルム幅が1460mm以上では、たるみ量の影響が大きく偏光板の製造工程や、その後の最終製品(液晶偏光板)の平面性への影響と、両方に作用する。特に、粘着剤塗工をする際にフィルムのたるみ量が15mm/mを超えたものについては、塗布厚さを一定にして加工を行うことが困難になる。例えばコーターヘッドとフィルムの間隙が塗布厚さに影響する場合がそうであり、フィルム幅1460mm以上では、たるみ量が15mm/mを超える場合は、コーターヘッドとフィルムが部分的にしか接触できず、条件調整では対処ができない。これはあらゆる塗工方式において同様の影響を及ぼし好ましくない。
【0037】
また140℃の雰囲気下で5分間保持したときのフィルム長手方向の加熱収縮率は2.5%以下、好ましくは2.0%以下である。2.5%を越えるフィルムは加熱を含む加工工程で平面性を損なうため好ましくない。
【0038】
また、140℃の雰囲気下で5分間保持したときのフィルム両端の長手方向の加熱収縮率差が0.2%以下、好ましくは0.1%以下である。0.2%を超えるフィルムでは、加熱を含む加工工程で蛇行したり片寄りを起こしたりして加工に好ましくない。
【0039】
本発明の離型フィルムを構成する離型層の残留接着率は、80%以上であることが好ましい。離型層の残留接着率が80%未満の場合、製造工程において搬送ロールのロール表面にシリコーン移行成分が転着したり、離型面と接する粘着剤層の粘着力が低下したりすることがある。
【0040】
以下、本発明のフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の要旨を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
【0041】
公知の手法により乾燥したポリエステルチップを溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0042】
本発明においては、このようにして得られたシートを2軸方向に延伸してフィルム化することが好ましい。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを好ましくは縦方向に70〜145℃で1.3〜6倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、横方向に90〜160℃で1.3〜6倍延伸を行い、150〜240℃で1〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。延伸方法としては、逐次2軸延伸であっても同時2軸延伸であってもよく、同時2軸延伸法による延伸方法が好ましい。
【0043】
本発明のポリエステルフィルムは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その要求特性に応じて必要な特性、例えば帯電防止性、耐候性および表面硬度の向上のため、必要に応じて縦延伸終了後、横延伸のテンター入口前にコートをしてテンター内で乾燥する、いわゆるインラインコートを行ってもよい。また、フィルム製造後にオフラインコートで各種のコートを行ってもよい。このようなコートは片面、両面のいずれでもよい。コーティングの材料としては、オフラインコーティングの場合は水系および/または溶媒系のいずれでもよいが、インラインコーティングの場合は水系または水分散系が好ましい。
【0044】
本発明のポリエステルフィルムは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、フィルムの製膜過程の縦延伸後および/または横延伸後で、乾式の洗浄方法により異物を除去してもよい。もしくは、ポリエステルフィルムの幅、長さを調整するためのスリティング作業、巻き替え作業時に、乾式または湿式の洗浄方法、両洗浄方法の併用により異物除去を行うことが好ましい。湿式の洗浄方法は、洗浄液に超音波振動を付与させて、該液をフィルム表面に接触させることにより、フィルム表面の付着異物を剥離、除去する方法が好適である。
【0045】
また、本発明のポリエステルフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他の熱可塑性樹脂、例えばポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等を混合することができる。また、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、顔料、蛍光増白剤等を混合することができる。
【0046】
本発明のポリエステルフィルムに離型層を設置する場合、離型層を構成する材料は離型性を有するものであれば特に限定されるものではなく、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。それらの中でも、硬化型シリコーン樹脂を主成分とした場合に離型性が良好な点でよい。
【0047】
離型層を設置する前段階で、乾式もしくは湿式洗浄、後段階で、乾式洗浄によりフィルム表面に付着した異物を除去することが好ましい。さらに、前段階では、乾式洗浄、次いで、洗浄液に超音波振動を付与させて、該液をフィルム表面に接触させることにより、フィルム表面の付着異物を剥離、除去する方法を用いて異物除去することが好適である。
【0048】
硬化型シリコーン樹脂の種類としては、溶剤付加型・溶剤縮合型・溶剤紫外線硬化型、無溶剤付加型、無溶剤縮合型、無溶剤紫外線硬化型、無溶剤電子線硬化型等いずれの硬化反応タイプでも用いることができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、液晶偏光板の製造工程の高速化や低価格実現に向けての広幅化において、加工適正に優れ、かつ光学特性にも優れた液晶偏光板用離型フィルムを提供することができ、本発明の工業的価値は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中「部」とあるのは「重量部」を示す。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
【0051】
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0052】
(2)平均粒径(d50:μm)の測定
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
【0053】
(3)加熱収縮率の測定
フィルムの両端より長手方向について15mm幅×150mm長の短冊上にサンプルを切り出し、無張力状態で140℃雰囲気中5分間、熱処理しその前後のサンプルの長さを測定することにより次式にて熱収縮率(%)を計算した。
加熱収縮率(%)=[(a−b)/a]×100
(上式中、熱処理前のサンプル長をa、熱処理後のサンプル長をbと表記)
また、収縮率差は両端の測定結果より大きい値から小さい値を引いて値が正になるよう算出した。
【0054】
(4)たるみ量の測定
空中に水平に置かれた2本の平行ロールに、ロール状フィルムから巻きだしたフィルムをかける。ここで、ロールの間隔を1.5m、フィルムにかかる張力を40g/mmとする。2本の平行ロールを結んでできる平面から、下に沈み込んだフィルム面までの距離を全面積で測定し、その(最大値−最小値)をフィルム幅で割った数値をたるみ量(mm/m)とした。
【0055】
(5)配向角の測定
カールツァイス社製偏光顕微鏡を用いて、ポリエステルフィルムの配向を観察し、ポリエステルフィルム面内の主配向軸の方向がポリエステルフィルムの幅方向に対して何度傾いているかを測定し配向角とした。この測定を得られたフィルムの中央部と両端の計3カ所について実施し、3カ所の内で最も大きい配向角の値を最大配向角とした。
【0056】
(6)離型層の塗布量測定
蛍光X線測定装置((株)島津製作所(製)型式「XRF−1500」)を用いてFP(Fundamental Parameter Method)法により、下記測定条件下、離型フィルムの離型層が設けられた面および離型層がない面の珪素元素量を測定し、その差をもって、離型層中の珪素元素量とした。次に得られた珪素元素量を用いて、−SiO(CHのユニットとしての塗布量(Si)(g/m)を算出した。
【0057】
《測定条件》
分光結晶:PET(ペンタエリスリトール)
2θ:108.88°
管電流:95mA
管電圧:40kv
【0058】
(7)離型フィルムの残留接着率の評価
《残留接着力》
試料フィルムの離型層表面に日東電工(製)No.31B粘着テープを2kgゴムローラーにて1往復圧着し、100℃で1時間加熱処理する。次いで、圧着したサンプルから試料フィルムを剥がし、No.31B粘着テープをJIS−C−2107(ステンレス板に対する粘着力、180°引き剥がし法)の方法に準じて接着力を測定する。これを残留接着力とする。
《基礎接着力》
残留接着力の場合と同じテープ(No.31B)を用いてJIS−C−2107に準じてステンレス板に粘着テープを圧着して、同様の要領にて測定を行う。この時の値を基礎接着力とする。これらの測定値を用いて、下記式に基づいて残留接着率を求める。
【0059】
残留接着率(%)=(残留接着力/基礎接着力)×100
なお、測定は20±2℃、65±5%RHにて行う。
【0060】
(8)離型フィルムの剥離力の評価
試料フィルムの離型層表面に両面粘着テープ(日東電工製「No.502」)の片面を貼り付けた後、50mm×300mmのサイズにカットした後、室温にて1時間放置後の剥離力を測定する。剥離力は、引張試験機((株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」)を使用し、引張速度300mm/分の条件下、180°剥離を行った。
【0061】
(9)実用特性
<フィルムの平面性検査>
フィルム上に離型剤を塗布しドライヤー温度120℃、ライン速度30m/minの条件で得た離型フィルムの平面性を目視にて検査した。
○:極めて平面性がよく実用性に富んでいる
△:やや平面性に欠けるが実用的である
×:平面性が悪く実用性に欠ける
【0062】
<クロスニコル下での目視検査性>
フィルム上に離型剤を塗布しドライヤー温度120℃、ライン速度30m/minの条件で得た離型フィルムの幅方向が、偏光フィルムの配向軸と平行となるように、粘着剤を介して離型フィルムを偏光フィルムに密着させ偏光板とし、密着させた離型フィルム上に配向軸がフィルム幅方向と直交するように検査用の偏光板を重ね合わせ、偏光板側より白色光を照射し、検査用の偏光板より目視にて観察し、クロスニコル下での目視検査性を下記基準に従い評価した。なお、測定の際には、得られたフィルムの幅方向に対し中央部と両端部の計3ヶ所から、それぞれA4サイズのサンプルを切り出して実施した。
「判定基準」
○:光干渉性無く検査可能
△:光干渉はあるが検査可能
×:光干渉があり検査不能
○および△のものが実使用上問題のないレベルである。
【0063】
<離型特性>
粘着層を有する積層フィルムより離型フィルムを剥がした時の状況より、離型特性を評価した。
○:離型フィルムが綺麗に剥がれ、粘着剤が離型層に付着する現象が見られない
△:離型フィルムは剥がれるが、速い速度で剥離した場合に粘着剤が離型層に付着する
×:離型フィルムに粘着剤が付着する、もしくはシリコーン移行により粘着力が低下する
【0064】
[ポリエステルの製造方法]
(ポリエステルチップの製造法)
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール70部、および酢酸カルシウム一水塩0.07部を反応器にとり、加熱昇温すると共にメタノール留去させエステル交換反応を行い、反応開始後、約4 時間半を要して230℃ に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。次に燐酸0.04部および三酸化アンチモン0.035部を添加し、常法に従って重合した。すなわち、反応温度を徐々に上げて、最終的に280℃とし、一方、圧力は徐々に減じて、最終的に0.05mmHgとした。4時間後、反応を終了し、常法に従い、チップ化して固有粘度が0.65であるポリエステルAを得た。さらに、上記ポリエステルAを製造する際、平均一次粒径2.4μmの非晶質シリカを5000ppm添加し、ポリエステルBを得た。また、上記ポリエステルAを製造する際、平均一次粒径60nmのδ型の酸化アルミニウムを20000ppm添加し、ポリエステルCを得た。
【0065】
(ポリエステルフィルムの製造)
ポリエステルフィルム(A)
上記ポリエステルAを70wt%、ポリエステルBを30%の配合比で180℃で4時間、不活性ガス雰囲気中で乾燥し、溶融押出機により290℃で溶融し、口金から押出し静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。得られた未延伸シートにまず、95℃で延伸倍率を長手方向に2.5倍延伸し、テンターに導き、幅方向に4.7倍の逐次二軸延伸を行った。その後、230℃ で10秒間の熱処理を行い、その後180℃ で幅方向に10% の弛緩を加え、幅3000mm、厚み38μmのポリエステルフィルムロールを得た。このロールの中央部分をスリットして、フィルムをコアに10000m巻取りして幅1600mmのポリエステルフィルム(A)を得た。
【0066】
ポリエステルフィルム(B)
ポリエステルフィルムの製造(A)において、幅3000mmのポリエステルフィルムロールを二分割にスリットし、幅1460mmのポリエステルフィルムを得る以外はポリエステルフィルムの製造(A)と同様にしてポリエステルフィルム(B)を得た。
【0067】
ポリエステルフィルム(C)
ポリエステルフィルムの製造(A)において、延伸倍率を長手方向に2.8倍、幅方向に4.6倍、延伸後の熱処理温度を225℃に変更する以外はポリエステルフィルムの製造(A)と同様にしてポリエステルフィルム(C)を得た。
【0068】
ポリエステルフィルム(D)
ポリエステルフィルムの製造(A)において、延伸倍率を長手方向に3.0倍、幅方向に4.5倍、延伸後の熱処理温度を205℃に変更する以外はポリエステルフィルムの製造(A)と同様にしてポリエステルフィルム(D)を得た。
【0069】
ポリエステルフィルム(E)
ポリエステルフィルムの製造(A)において、延伸倍率を長手方向に3.3倍、幅方向に4.2倍、延伸後の熱処理温度を190℃に変更する以外はポリエステルフィルムの製造(A)と同様にしてポリエステルフィルム(E)を得た。
【0070】
ポリエステルフィルム(F)
ポリエステルフィルムの製造(A)において、延伸倍率を長手方向に1.9倍、幅方向に4.6倍に変更する以外はポリエステルフィルムの製造(A)と同様にしてポリエステルフィルム(F)を得た。
【0071】
ポリエステルフィルム(G)
ポリエステルフィルムの製造(A)において、ポリエステルAを30wt%、ポリエステルBを30%、ポリエステルCを40wt%の配合比、延伸倍率を長手方向に3.3倍、幅方向に4.2倍、幅3000mmのポリエステルフィルムロールを二分割にスリットし、幅1460mmのポリエステルフィルムを得るに変更する以外はポリエステルフィルムの製造(A)と同様にしてポリエステルフィルム(G)を得た。
【0072】
実施例1:
ポリエステルフィルム(A)に、下記離型剤組成−1からなる離型剤を塗布量(乾燥後)が0.1g/mになるようにリバースグラビアコート方式により塗布し、ドライヤー温度120℃、ライン速度30m/minの条件でロール状の離型フィルムを得た。
《離型剤組成−1》
硬化型シリコーン樹脂(KS−847H:信越化学製)100部
硬化剤(PL−50T:信越化学製)1部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1)1500部
【0073】
実施例2:
実施例1において、ポリエステルフィルム(A)をポリエステルフィルム(B)に変更する以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0074】
実施例3:
実施例1において、ポリエステルフィルム(A)をポリエステルフィルム(C)に変更する以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0075】
実施例4:
実施例1において、ポリエステルフィルム(A)をポリエステルフィルム(D)に変更する以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0076】
実施例5:
実施例1において、塗布剤組成を下記に示す離型剤組成−2に変更する以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
《離型剤組成−2》
硬化型シリコーン樹脂(KS−774:信越化学製)100部
硬化剤(PL−4: 信越化学製)10部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1)1500部
【0077】
実施例6:
実施例1において、塗布剤組成を下記表1に示す離型剤組成−3に変更する以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
《離型剤組成−3》
硬化型シリコーン樹脂(KS−847H:信越化学製)100部
硬化剤(PL−50T:信越化学製)1部
ポリエーテル変性シリコーンオイル(KF−351:信越化学製)8部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1)1500部
【0078】
実施例7:
実施例1において、塗布剤組成を下記に示す離型剤組成−4に変更する以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
《離型剤組成−4》
硬化型シリコーン樹脂(KS−723A:信越化学製)100部
硬化型シリコーン樹脂(KS−723B:信越化学製)5部
硬化剤(PS−3:信越化学製)5部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1)1500部
【0079】
比較例1:
実施例1において、ポリエステルフィルム(A)をポリエステルフィルム(E)に変更する以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0080】
比較例2:
実施例1において、ポリエステルフィルム(A)をポリエステルフィルム(F)に変更する以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0081】
比較例3:
実施例1において、ポリエステルフィルム(A)をポリエステルフィルム(G)に変更する以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0082】
(粘着剤層を有する積層フィルムの製造)
実施例・比較例で得られた離型フィルムの離型層表面に、アクリル系粘着剤を乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃の乾燥炉内を通過時間30秒で通過させた後、厚さ38μmのポリエステルフィルムを貼り合せ粘着層を有する積層フィルムを作成した。
《アクリル粘着剤塗布液》
アクリル粘着剤(オリバインBPS429−4:東洋インキ製)100部
硬化剤(BPS8515:東洋インキ製)3部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1)50部
得られた結果を、下記表1〜2にまとめて示す。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の離型フィルムは、例えば、液晶偏光板用離型フィルムとして好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム幅が1460mm以上であり、配向主軸の向きが15度以下であるポリエステルフィルムの片面に、離型層を設けた離型フィルムであり、140℃の雰囲気下で5分間保持したときのフィルム長手方向の加熱収縮率が2.5%以下であり、同条件におけるフィルム両端の加熱収縮率の差が0.2%以下であり、たるみ量が15mm/m以下であることを特徴とする液晶偏光板用離型フィルム。