説明

液晶化合物、液晶組成物および液晶表示素子

【課題】本発明の目的は、液晶性化合物に必要な一般的物性、熱、光などの対する安定性、小さな粘度、適切な光学異方性、負で大きな誘電率異方性、ネマチック相の広い温度範囲、他の液晶性化合物との優れた相溶性などを有する液晶性化合物及びこの化合物を含有する液晶組成物を提供することである。
【解決手段】式(1)で表される化合物。Ra及びRbは水素又は炭素数1〜20のアルキルであり、環Aは1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル又はナフタレン−2,6−ジイルであり、Zは単結合又は炭素数1〜4のアルキレンであり、Yは水素、ハロゲン、−CN、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHF又はOCHFであり、mは1、2又は3である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶性化合物、液晶組成物および液晶表示素子に関する。さらに詳しくはフェノール誘導体、これを含有し、そしてネマチック相を有する液晶組成物およびこの組成物を含有する液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子において、液晶の動作モードに基づいた分類は、PC(phase change)、TN(twisted nematic)、STN(super twisted nematic)、BTN(Bistable twisted nematic)、ECB(electrically controlled birefringence)、OCB(optically compensated bend)、IPS(in-plane switching)、VA(vertical alignment)などである。素子の駆動方式に基づいた分類は、PM(passive matrix)とAM(active matrix)である。PM(passive matrix)はスタティック(static)とマルチプレックス(multiplex)などに分類され、AMはTFT(thin film transistor)、MIM(metal insulator metal)などに分類される。
【0003】
これらの素子は、適切な物性を有する組成物を含有する。素子の特性を向上させるには、この組成物が適切な物性を有するのが好ましい。組成物の成分である化合物に必要な一般的物性は、次のとおりである。(1)化学的な安定性と物理的な安定性。(2)高い透明点。透明点は、液晶相−等方相の転移温度である。(3)液晶相の低い下限温度。液晶相は、ネマチック相、スメクチック相などを意味する。(4)小さな粘度。(5)適切な光学異方性。(6)適切な誘電率異方性。大きな誘電率異方性を有する化合物は、大きな粘度を有することが多い。(7)大きな比抵抗。
【0004】
組成物は多くの化合物を混合して調製される。したがって、化合物は他の化合物とよく混和するのが好ましい。素子を氷点下の温度で使うこともあるので、低い温度で良好な相溶性を有する化合物が好ましい。高い透明点または液晶相の低い下限温度を有する化合物は、組成物におけるネマチック相の広い温度範囲に寄与する。好ましい組成物は、小さな粘度と素子のモードに適した光学異方性を有する。化合物の大きな誘電率異方性は、組成物の低いしきい値電圧に寄与する。このような組成物によって、使用できる温度範囲が広い、応答時間が短い、コントラスト比が大きい、駆動電圧が小さい、消費電力が小さい、電圧保持率が大きいなどの特性を有する素子を得ることができる。
【0005】
従来の技術は下記のとおりである。さらに好ましい液晶性化合物、液晶組成物および液晶表示素子が望まれている。
【0006】
【特許文献1】特開平2−228号公報(欧州特許公開第315193号明細書)
【特許文献2】欧州特許出願公開第423520号明細書
【特許文献3】特開平3−24036号公報(米国特許5059345明細書)
【特許文献4】特開平3−204835号公報(米国特許第第5128062号号明細書)
【特許文献5】特開平4−330040号公報
【特許文献6】特開平5−294898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の第一の目的は、液晶性化合物に必要な一般的物性、熱、光などに対する安定性、小さな粘度、適切な光学異方性、負で大きな誘電率異方性、ネマチック相の広い温度範囲、他の液晶性化合物との優れた相溶性などを有する液晶性化合物、特に負で大きな誘電率異方性とネマチック相の広い温度範囲を有する液晶性化合物を提供することである。第二の目的は、この化合物を含有し、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、低いしきい値電圧などを有する液晶組成物、特にネマチック相の高い上限温度およびネマチック相の低い下限温度を有する液晶組成物を提供することである。第三の目的は、この組成物を含有し、使用できる広い温度範囲、短い応答時間、小さな消費電力、大きなコントラスト、および低い駆動電圧を有する液晶表示素子を提供することにあり、特に、使用できる広い温度範囲を有する液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特定発明は、次の[1]項で示される。
[1] 式(1)で表される化合物:


ここに、RaおよびRbは独立して水素または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルの任意の−CH−は、−O−、−S−、−CO−、−SiH−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、そしてこのアルキルの任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
環Aは1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルまたはナフタレン−2,6−ジイルであり、これらの環を構成する任意の−CH−は−O−、−S−、−CO−または−SiH−で置き換えられてもよく、これらの環を構成する任意の−(CH−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、そしてこれらの環に直接結合する任意の水素はハロゲン、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHFまたは−OCHFで置き換えられてもよく;
は単結合または炭素数1〜4のアルキレンであり、このアルキレンの任意の−CH−は−O−、−S−、−CO−、−SiH−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、そしてこのアルキレンの任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
は水素、ハロゲン、−CN、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHFまたは−OCHFであり;
mは1、2または3であり;
そして、mが2または3であるとき、複数の環Aは同じ基であっても異なる基であってもよく、複数のZは同じ基であっても異なる基であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の化合物は、液晶性化合物に必要な一般的物性、熱、光などに対する安定性、小さな粘度、適切な光学異方性、負で大きな誘電率異方性、ネマチック相の広い温度範囲、および他の液晶性化合物との優れた相溶性のうちの複数の特性を有する。特に、負で大きな誘電率異方性およびネマチック相の広い温度範囲を有する。本発明の化合物の少なくとも1つを含有する液晶組成物は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、および低いしきい値電圧のうちの複数の特性を有する。特に、ネマチック相の高い上限温度およびネマチック相の低い下限温度を有する。本発明の液晶組成物を含有する液晶表示素子は、使用できる広い温度範囲、短い応答時間、小さな消費電力、大きなコントラスト比および低い駆動電圧のうちの複数の特性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。液晶性化合物は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。液晶性化合物、液晶組成物、液晶表示素子をそれぞれ化合物、組成物、素子と略すことがある。液晶表示素子は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。ネマチック相の上限温度はネマチック相−等方相の相転移温度であり、そして単に上限温度と略すことがある。ネマチック相の下限温度を単に下限温度と略すことがある。式(1)で表わされる化合物を化合物(1)と簡略化して記述することがある。この略記法は式(2)などで表される化合物にも適用することがある。式(1)〜式(14)において、六角形で囲んだA、B、Eなどの記号は、これらが環を示す記号であることを意味する。液晶組成物において百分率で表した化合物の割合は、組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。並べて記載されている複数の式に同じ記号が用いられている場合、これらの記号の意味はそれぞれが同一であってもよいし、またはその選択範囲内で異なっていてもよい。
【0011】
本発明は前記の[1]項と次に示す[2]〜[22]項で構成される。
[2] RaおよびRbが独立して、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜19のアルコキシ、炭素数2〜19のアルコキシアルキル、炭素数2〜21のアルケニル、炭素数1〜20のフッ素化アルキルまたは炭素数1〜19のフッ素化アルコキシであり;
環Aが1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、6−フルオロピリジン−2,5−ジイルまたはピリダジン−3,6−ジイルであり;
が単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CHCO−、−COCH−、−CHSiH−、−SiHCH−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCFO−、−OCF(CH−、−(CHO−、−O(CH−または−(CH−であり;
そして、Yが水素、フッ素、塩素、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHFまたは−OCHFである、[1]項に記載の化合物。
【0012】
[3] RaおよびRbが独立して炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、炭素数2〜10のアルコキシアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜10のフッ素化アルキル、または炭素数1〜10のフッ素化アルコキシであり;
環Aが独立して1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンまたは2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;
が独立して単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCFO−、−OCF(CH−、−(CHO−、−O(CH−または−(CH−であり;
そして、Yが水素、フッ素、塩素、−CF、−CHFまたは−CHFである、[1]項に記載の化合物。
【0013】
[4] RaおよびRbが独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、炭素数2〜10のアルコキシアルキル、または炭素数2〜10のアルケニル、−CHF、または−OCHFであり;
環Aが1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレンまたは2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;
が単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、または−C≡C−であり;
そして、Yが水素、フッ素、−CFHまたは−CFである、[1]項に記載の化合物。
【0014】
[5] Raが炭素数1〜6のアルキル、炭素数1〜6のアルコキシ、炭素数2〜6のアルコキシアルキルまたは炭素数2〜6のアルケニルであり、そしてRbが炭素数1〜6のアルキルまたは炭素数1〜6のアルコキシであり;
環Aが1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;
が単結合または−(CH−であり;
そして、Yが水素またはフッ素である、[1]項に記載の化合物。
【0015】
[6] 式(I)〜式(V)のいずれか1つで表される化合物:


ここに、RaおよびRbは独立して水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、炭素数2〜10のアルコキシアルキル、または炭素数2〜10のアルケニルであり;
が独立して単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCFO−、−(CHO−、−O(CH−または−(CH−であり;
そして、Yは水素、フッ素、塩素、−CFまたは−CFHである。
【0016】
[7] RaおよびRbが独立して炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシまたは炭素数2〜10のアルケニルであり;
が独立して単結合、−(CH−、−CH=CH−または−(CH−であり;
そして、Yが水素、フッ素、塩素、−CFまたは−CHFである、[6]項に記載の化合物。
【0017】
[8] RaおよびRbが独立して炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、または炭素数2〜10のアルケニルであり;
が独立して単結合または−(CH−であり;
そして、Yが水素、フッ素または−CFである、[6]項に記載の化合物。
【0018】
[9] RaおよびRbが独立して炭素数1〜6のアルキルであり;
が単結合であり;
そしてYがフッ素である、[6]項に記載の化合物。
【0019】
[10] 下記の式で表される化合物:


【0020】
[11] 下記の式で表される化合物:


【0021】
[12] 下記の式で表される化合物:


【0022】
[13] [1]〜[12]のいずれか1項に記載の化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を含有する液晶組成物。
【0023】
[14] 式(2)、式(3)および式(4)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、[13]項に記載の液晶組成物:


ここに、Rは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Xはフッ素、塩素、−OCF、−OCHF、−CF、−CHF、−CHF、−OCFCHF、または−OCFCHFCFであり;環Bは独立して1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイルまたは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり、環Eは1,4−シクロヘキシレンまたは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;Zは独立して−(CH−、−(CH−、−COO−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、または単結合であり;そして、Lは独立して水素またはフッ素である。
【0024】
[15] 式(5)および式(6)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、[13]項に記載の液晶組成物:


ここに、Rは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Xは−CNまたは−C≡C−CNであり;環Gは1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;環Jは1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイル、または任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;環Kは1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり;Zは−(CH−、−COO−、−CFO−、−OCF−、または単結合であり;Lは独立して水素またはフッ素であり;そして、bは独立して0または1である。
【0025】
[16] 式(7)、式(8)、式(9)、式(10)および式(11)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、[13]項に記載の液晶組成物:


ここに、Rは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Rはフッ素または炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;環Mは1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレンまたはデカヒドロ−2,6−ナフタレンであり;Zは独立して−(CH−、−COO−または単結合であり;そして、Lは独立して水素またはフッ素であって、Lの少なくとも1つはフッ素である。
【0026】
[17] 式(12)、式(13)および式(14)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、[13]項に記載の液晶組成物:


ここに、Rは独立して炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;環Jは独立して1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイル、または任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;そして、Zは独立して−C≡C−、−COO−、−(CH−、−CH=CH−、または単結合である。
【0027】
[18] [15]項に記載の式(5)および式(6)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、[14]項に記載の液晶組成物。
【0028】
[19] [17]項に記載の式(12)、式(13)および式(14)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、[14]項に記載の液晶組成物。
【0029】
[20] [17]項に記載の式(12)、式(13)および式(14)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、[15]項に記載の液晶組成物。
【0030】
[21] [17]項に記載の式(12)、式(13)および式(14)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、[16]項に記載の液晶組成物。
【0031】
[22] 少なくとも1つの光学活性化合物をさらに含有する、[13]〜[21]のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0032】
[23] [13]〜[22]のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【0033】
本発明の化合物は式(1)で表される。


【0034】
式(1)におけるRaおよびRbは、独立して水素または炭素数1〜20のアルキルである。このアルキルにおいて、任意の−CH−は、−O−、−S−、−CO−、または−SiH−で置き換えられてもよく、任意の−(CH−は−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
【0035】
このようなRaまたはRbの例は、水素、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、アルキルチオ、アルキルチオアルコキシ、アシル、アシルアルキル、アシルオキシ、アシルオキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルケニル、アルケニルオキシ、アルケニルオキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルキニル、アルキニルオキシ、シラアルキル、およびジシラアルキルである。少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられたこれらの基も好ましい。好ましいハロゲンはフッ素および塩素である。さらに好ましいハロゲンはフッ素である。これらの基は、分岐された基であるよりも直鎖の基である方が好ましい。これらの基が光学活性の基であるときは、分岐された基であっても好ましい。アルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。−CH=CHCH、−CH=CHC、−CH=CHC、−CH=CHC、−CCH=CHCH、および−CCH=CHCのような奇数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはトランス配置が好ましい。−CHCH=CHCH、−CHCH=CHC、および−CHCH=CHCのような偶数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはシス配置が好ましい。
【0036】
RaまたはRbの好ましい例は、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜19のアルコキシ、炭素数2〜19のアルコキシアルキル、炭素数2〜21のアルケニル、炭素数1〜20のフッ素化アルキル、および炭素数1〜19のフッ素化アルコキシである。
【0037】
RaまたはRbのより好ましい例は、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、炭素数2〜10のアルコキシアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜10のフッ素化アルキル、および炭素数1〜10のフッ素化アルコキシである。
【0038】
RaまたはRbのさらに好ましい例は、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、炭素数2〜10のアルコキシアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、−CHF、および−OCHFである。
【0039】
Raの特に好ましい例は炭素数1〜6のアルキル、炭素数1〜6のアルコキシ、炭素数2〜6のアルコキシアルキル、および炭素数2〜6のアルケニルであり、そしてRbの特に好ましい例は炭素数1〜6のアルキルおよび炭素数1〜6のアルコキシである。
【0040】
次に、RaまたはRbの具体例を示す。アルキルの例は、−CH、−C、−C、−C、−C10、−C13、−C15、および−C17である。アルコキシの例は、−OCH、−OC、−OC、−OC、−OC10、−OC13、および−OC15、である。アルコキシアルキルの例は、−CHOCH、−CHOC、−CHOC、−(CHOCH、−(CHOC、−(CHOC、−(CHOCH、−(CHOCH、および−(CHOCHである。
【0041】
アルケニルの例は、−CH=CH、−CH=CHCH、−CHCH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHCH、−(CHCH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHC、−(CHCH=CHCH、および−(CHCH=CHである。アルケニルオキシの例は、−OCHCH=CH、−OCHCH=CHCH、および−OCHCH=CHCである。アルキニルの例は、−C≡CCH、および−C≡CCである。
【0042】
少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられたアルキルの例は、−CHF、−CHF、−CF、−(CHF、−CFCHF、−CFCHF、−CHCF、−CFCF、−(CHF、−(CFCF、−CFCHFCF、および−CHFCFCFである。少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられたアルコキシの例は、−OCF、−OCHF、−OCHF、−OCFCF、−OCFCHF、−OCFCHF、−OCFCFCF、−OCFCHFCF、および−OCHFCFCFである。少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられたアルケニルの例は、−CH=CHF、−CH=CF、−CF=CHF、−CH=CHCHF、−CH=CHCF、および−(CHCH=CFである。
【0043】
好ましいRaまたはRbの具体的な例は、−CH、−C、−C、−C、−C10、−OCH、−OC、−OC、−OC、−OC10、−CHOCH、−(CHOCH、−(CHOCH、−CH=CH、−CH=CHCH、−CHCH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHCH、−(CHCH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHC、−(CHCH=CHCH、−(CHCH=CH、−OCHCH=CH、−OCHCH=CHCH、−OCHCH=CHC、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHF、−OCHF、−OCFCF、−OCFCHF、−OCFCHF、−OCFCFCF、−OCFCHFCF、および−OCHFCFCFである。
【0044】
より好ましいRaまたはRbの具体的な例は、−CH、−C、−C、−C、−C10、−OCH、−OC、−OC、−OC、−OC10、−CHOCH、−CH=CH、−CH=CHCH、−CHCH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHCH、−(CHCH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHC、−(CHCH=CHCH、−(CHCH=CH、−CHF、および−OCHFである。
【0045】
特に好ましいRaまたはRbの具体的な例は、−CH、−C、−C、−C、−C10、−OCH、−OC、−OC、−CHOCH、−CH=CH、−CH=CHCH、−(CHCH=CH、および−(CHCH=CHCHである。
【0046】
式(1)における環Aは、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、またはナフタレン−2,6−ジイルである。これらの環を構成する任意の−CH−は、−O−、−S−、−CO−、または−SiH−で置き換えられてもよい。これらの環を構成する任意の−(CH−は−CH=CH−で置き換えられてもよい。そして、これらの環に直接結合する任意の水素は、ハロゲン、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHF、または−OCHFで置き換えられてもよい。
【0047】
任意の−CH−が−O−、−S−、−CO−、または−SiH−で置き換えられた環の例、および任意の−(CH−が−CH=CH−で置き換えられ環の例を次に示す。下記の(15−1)〜(15−48)のうち、好ましい例は(15−1)、(15−2)、(15−3)、(15−4)、(15−15)、(15−23)、(15−31)、(15−32)、(15−33)、(15−40)、(15−43)、および(15−48)である。
【0048】


【0049】


【0050】
任意の水素がハロゲン、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHF、または−OCHFで置き換えられた環の例を次に示す。下記の(16−1)〜(16−71)のうち、好ましい例は(16−1)、(16−2)、(16−3)、(16−4)、(16−6)、(16−10)、(16−11)、(16−12)、(16−13)、(16−14)、(16−15)、(16−54)、(16−55)、(16−56)、(16−57)、(16−58)、および(16−59)である。
【0051】


【0052】


【0053】


【0054】
環Aの例は、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,3,5−トリフルオロ−1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、6−フルオロピリジン−2,5−ジイル、ピリダジン−2,5−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、およびナフタレン−2,6−ジイルである。1,4−シクロヘキシレンおよび1,3−ジオキサン−2,5−ジイルの立体配置はシスよりもトランスが好ましい。なお、構造的に同一の環は例示していない。
【0055】
好ましい環Aは、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、6−フルオロピリジン−2,5−ジイル、およびピリダジン−2,5−ジイルである。
【0056】
より好ましい環Aは、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、および2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。
【0057】
さらに好ましい環Aは、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、および2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。
【0058】
特に好ましい環Aは、1,4−シクロヘキシレンおよび1,4−フェニレンである。
【0059】
式(1)におけるZは単結合または炭素数1〜4のアルキレンである。このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−、−CO−、−SiH−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよい。そして、このアルキレンの任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
【0060】
このようなZの例は、単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CHCO−、−COCH−、−CHSiH−、−SiHCH−、−(CH−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCFO−、−(CHOCF−、−CFO(CH−、−OCF(CH−、−(CHO−、−O(CH−、−CH=CH−CHO−、および−OCH−CH=CH−である。−CH=CH−、−CF=CF−、−CH=CH−CHO−、および−OCH−CH=CH−のような基の二重結合に関する立体配置はシスよりもトランスが好ましい。
【0061】
好ましいZは、単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CHCO−、−COCH−、−CHSiH−、−SiHCH−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCFO−、−OCF(CH−、−(CHO−、−O(CH−、および−(CH−である。
【0062】
より好ましいZは、単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCFO−、−OCF(CH−、−(CHO−、−O(CH−、および−(CH−である。
【0063】
さらに好ましいZは、単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、および−C≡C−である。
【0064】
特に好ましいZは単結合および−(CH−であり、最も好ましいZは単結合である。
【0065】
式(1)におけるYは、水素、ハロゲン、−CN、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHF、または−OCHFである。好ましいハロゲンはフッ素および塩素である。最も好ましいハロゲンはフッ素である。好ましいYは水素、フッ素、塩素、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHF、および−OCHFである。より好ましいYは水素、フッ素、塩素、−CF、−CHF、および−CHFである。更に好ましいYは水素、フッ素、−CFH、および−CFである。特に好ましいYは水素およびフッ素であり、最も好ましいYは水素である。
【0066】
式(1)におけるmは1、2または3である。即ち、式(1)は次の式(1−1)、式(1−2)および式(1−3)に展開される。


これらの式における記号は、式(1)における場合と同一の意味を有する。そして、式(1−2)および式(1−3)においては、複数の環Aは同じ基であっても異なる基であってもよく、複数のZも同じ基であっても異なる基であってもよい。
【0067】
化合物(1)はH(重水素)、13Cなどの同位体を天然存在比の量より多く含んでもよい。そのような場合でも、化合物の物性に大きな差異はない。
【0068】
化合物(1)の特徴についてさらに説明する。ナフタレン環などの縮合環を1環と数えると、化合物(1)は水酸基を有する2環、3環または4環の化合物である。この化合物は、素子が通常使用される条件下において物理的および化学的に極めて安定であり、そして他の液晶性化合物との相溶性がよい。この化合物を含有する組成物は素子が通常使用される条件下で安定である。この組成物を低い温度で保管しても、この化合物が結晶(またはスメクチック相)として析出することがない。この化合物は、化合物に必要な一般的物性、適切な光学異方性、そして適切な誘電率異方性を有する。
【0069】
化合物(1)の末端基、環および結合基を適切に選択することによって、光学異方性、誘電率異方性などの物性を任意に調整することが可能である。末端基RaおよびRb、環A、および結合基Zの種類が、化合物(1)の物性に与える効果を以下に説明する。
【0070】
化合物(1)は、誘電率異方性が負で大きい。負で大きな誘電率異方性を有する化合物は、組成物のしきい値電圧を下げるための成分である。RaおよびRbが水素、アルキルまたはアルコキシなどであり、そしてYがハロゲンやハロゲン化アルキルなどであるとき、この化合物の誘電率異方性は負で大きい。
【0071】
RaまたはRbが直鎖であるときは液晶相の温度範囲が広くそして粘度が小さい。RaまたはRbが分岐鎖であるときは他の液晶性化合物との相溶性がよい。RaまたはRbが光学活性基である化合物は、キラルドーパントとして有用である。この化合物を組成物に添加することによって、素子に発生するリバース・ツイスト・ドメイン(Reverse twisted domain)を防止することができる。RaまたはRbが光学活性基でない化合物は組成物の成分として有用である。RaまたはRbがアルケニルであるとき、好ましい立体配置は二重結合の位置に依存する。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、高い上限温度または液晶相の広い温度範囲を有する。Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 109およびMol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 327に詳細な説明がある。
【0072】
環Aが、2位および3位の水素がハロゲンなどで置き換えられた1,4−フェニレンであるときは負で大きな誘電率異方性を有する。環Aが、任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよい1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、またはピリダジン−3,6−ジイルであるときは光学異方性が大きい。環Aが、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレンまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであるときは光学異方性が小さい。
【0073】
少なくとも2つの環が1,4−シクロヘキシレンであるときは、上限温度が高く、光学異方性が小さく、そして粘度が小さい。少なくとも1つの環が1,4−フェニレンのときは、光学異方性が比較的大きく、そして配向秩序パラメーター(orientational order parameter)が大きい。少なくとも2つの環が1,4−フェニレンであるときは、光学異方性が大きく、液晶相の温度範囲が広く、そして上限温度が高い。
【0074】
結合基Zが単結合、−(CH22−、−CH2O−、−OCH2−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、−CF=CF−、または−(CH2−であるときは粘度が小さい。結合基が単結合、−(CH22−、−CFO−、−OCF−、または−CH=CH−であるときは粘度がより小さい。結合基が−CH=CH−であるときは液晶相の温度範囲が広く、そして弾性定数比K33/K11(K33:ベンド弾性定数、K11:スプレイ弾性定数)が大きい。結合基が−C≡C−のときは光学異方性が大きい。
【0075】
置換基Yがハロゲン、−CN、−CF、−CFH、−OCF、または−OCFHであるときは誘電率異方性値がさらに負に大きい。Yがハロゲン、−CFまたは−CFHであるときは液晶相の温度範囲が広い。
【0076】
化合物(1)が2環または3環を有するときは粘度が小さい。化合物(1)が3環または4環を有するときは上限温度が高い。以上のように、末端基、環および結合基の種類、環の数を適当に選択することにより目的の物性を有する化合物を得ることができる。したがって、化合物(1)はPC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、VAなどの素子に用いられる組成物の成分として有用である。
【0077】
化合物(1)は、前記のように化合物(1−1)〜化合物(1−3)に分けられる。これらのより具体的な例は、下記の化合物(1−1−1)〜化合物(1−3−2)である。これらの化合物におけるRa、Rb、A1、およびZの記号の意味は、式(1)における記号の意味と同一である。Yはハロゲン、−CN、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHF、または−OCHFである。
【0078】


【0079】
化合物(1)は有機合成化学における手法を適切に組み合わせることにより合成する。出発物に目的の末端基、環および結合基を導入する方法は、オーガニックシンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載されている。
【0080】
結合基Zを生成する方法の一例に関して、最初にスキームを示し、次に項(I)〜項(XI)でスキームを説明する。このスキームにおいて、MSGまたはMSGは少なくとも1つの環を有する1価の有機基である。スキームで用いた複数のMSG(またはMSG)は、同一であってもよいし、または異なってもよい。化合物(1A)から(1K)は化合物(1)に相当する。
【0081】


【0082】


【0083】


【0084】


【0085】


【0086】
(I)単結合の生成
アリールホウ酸(21)と公知の方法で合成される化合物(22)とを、炭酸塩水溶液とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で反応させて化合物(1A)を合成する。この化合物(1A)は、公知の方法で合成される化合物(23)にn−ブチルリチウムを、次いで塩化亜鉛を反応させ、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で化合物(22)を反応させることによっても合成される。
【0087】
(II)−COO−と−OCO−の生成
化合物(23)にn−ブチルリチウムを、続いて二酸化炭素を反応させてカルボン酸(24)を得る。化合物(24)と、公知の方法で合成されるフェノール(25)とをDDC(1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド)とDMAP(4−ジメチルアミノピリジン)の存在下で脱水させて−COO−を有する化合物(1B)を合成する。この方法によって−OCO−を有する化合物も合成する。
【0088】
(III)−CFO−と−OCF−の生成
化合物(1B)をローソン試薬のような硫黄化剤で処理して化合物(26)を得る。化合物(26)をフッ化水素ピリジン錯体とNBS(N−ブロモスクシンイミド)でフッ素化し、−CFO−を有する化合物(1C)を合成する。M. Kuroboshi et al., Chem. Lett., 1992,827.を参照。化合物(1C)は化合物(26)を(ジエチルアミノ)サルファートリフルオリド(DAST)でフッ素化しても合成される。W. H. Bunnelle et al., J. Org. Chem. 1990, 55, 768.を参照。この方法によって−OCF−を有する化合物も合成する。Peer. Kirsch et al., Anbew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 1480.に記載の方法によってこれらの結合基を生成させることも可能である。
【0089】
(IV)−CH=CH−の生成
化合物(23)をn−ブチルリチウムで処理した後、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などのホルムアミドと反応させてアルデヒド(28)を得る。公知の方法で合成されるホスホニウム塩(27)をカリウムt−ブトキシドのような塩基で処理して発生させたリンイリドを、アルデヒド(28)に反応させて化合物(1D)を合成する。反応条件によってはシス体が生成するので、必要に応じて公知の方法によりシス体をトランス体に異性化する。
【0090】
(V)−(CH−の生成
化合物(1D)をパラジウム炭素のような触媒の存在下で水素化することにより、化合物(1E)を合成する。
【0091】
(VI)−(CH−の生成
ホスホニウム塩(27)の代わりにホスホニウム塩(29)を用い、項(IV)の方法に従って−(CH−CH=CH−を有する化合物を得る。これを接触水素化して化合物(1F)を合成する。
【0092】
(VII)−C≡C−の生成
ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下で、化合物(23)に2−メチル−3−ブチン−2−オールを反応させたのち、塩基性条件下で脱保護して化合物(30)を得る。ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下、化合物(30)を化合物(22)と反応させて、化合物(1G)を合成する。
【0093】
(VIII)−CF=CF−の生成
化合物(23)をn−ブチルリチウムで処理したあと、テトラフルオロエチレンを反応させて化合物(31)を得る。化合物(22)をn−ブチルリチウムで処理したあと化合物(31)と反応させて化合物(1H)を合成する。
【0094】
(IX)−CHO−または−OCH−の生成
化合物(28)を水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤で還元して化合物(32)を得る。これを臭化水素酸などでハロゲン化して化合物(33)を得る。炭酸カリウムなどの存在下で、化合物(33)を化合物(25)と反応させて化合物(1J)を合成する。
【0095】
(X)−(CH23O−または−O(CH23−の生成
化合物(28)の代わりに化合物(34)を用いて、項(IX)の方法に従って化合物(1K)を合成する。
【0096】
(XI)−(CF22−の生成
J. Am. Chem. Soc., 2001, 123, 5414.に記載された方法に従い、ジケトン(−COCO−)をフッ化水素触媒の存在下、四フッ化硫黄でフッ素化して−(CF22−を有する化合物を得る。
【0097】
次に、本発明の液晶組成物について説明する。本発明の液晶組成物は化合物(1)の少なくとも1つを含有する組成物である。この組成物の成分は化合物(1)から選択される複数の化合物のみであってもよい。好ましい組成物は化合物(1)から選択される少なくとも1つの化合物を1〜99%の割合で含有する。この組成物は化合物(2)〜(14)の群から選択される成分を含有することができる。組成物を調製するときには、化合物(1)の誘電率異方性を考慮して成分を選択する。
【0098】
化合物(1)を含有する誘電率異方性が正で大きい組成物を調製するのに都合のよい組み合わせの例は次のとおりである。最初の例は、化合物(1)と化合物(2)、化合物(3)および化合物(4)の群から選択される少なくとも1つの化合物との組み合わせである(組成物a)。2番目の例は、化合物(1)と化合物(5)および化合物(6)の群から選択される少なくとも1つの化合物との組み合わせである(組成物b)。3番目の例は、化合物(1)と、化合物(2)、化合物(3)および化合物(4)の群から選択される少なくとも1つの化合物と、化合物(5)および化合物(6)の群から選択される少なくとも1つの化合物との組み合わせである。4番目の例は、化合物(1)と化合物(12)、化合物(13)および化合物(14)の群から選択される少なくとも1つの化合物との組み合わせである。組成物aおよび組成物bは、液晶相の温度範囲、粘度、光学異方性、誘電率異方性、しきい値電圧などを調整する目的で、化合物(12)、化合物(13)および化合物(14)の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有してもよい。これらの組成物は、物性をさらに調整する目的で、化合物(7)〜(11)の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有してもよい。これらの組成物は、AM−TN素子、STN素子などに適合させる目的で、その他の液晶性化合物、添加物などの化合物をさらに含有してもよい。
【0099】
化合物(1)を含有する誘電率異方性が負で大きい組成物を調製するのに都合のよい組み合わせの例は、化合物(1)と化合物(7)〜化合物(11)の群から選択される少なくとも1つの化合物との組み合わせである(組成物c)。この組成物は、化合物(12)、(13)および(14)の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有することができる。組成物cは、物性をさらに調整する目的で、化合物(2)〜(6)の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有してもよい。これらの組成物は、VA素子などに適合させる目的で、その他の液晶性化合物、添加物などの化合物をさらに含有してもよい。
【0100】
化合物(1)を用いて誘電率異方性が小さい組成物を調製するときにも、化合物(2)〜(14)の群から選択される化合物を適宜組み合わせることができる。このときには、液晶相の温度範囲、粘度、光学異方性、しきい値電圧などを勘案しながら、組成物の誘電率異方性が小さくなるように、各化合物の割合を調整すればよい。そして、この場合においても、AM−TN素子、STN素子などに適合させる目的で、その他の液晶性化合物、添加物などの化合物をさらに併用することができる。
【0101】
化合物(2)、(3)および(4)は、誘電率異方性が正で大きいので、AM−TN素子用の組成物に主として用いられる。組成物aにおいて、これらの化合物の量は1〜99%である。好ましい量は10〜97%である。より好ましい量は40〜95%である。この組成物に化合物(12)、(13)または(14)をさらに添加する場合、この化合物の好ましい量は60%以下である。より好ましい量は40%以下である。
【0102】
化合物(5)および(6)は、誘電率異方性が正で非常に大きいので、STN素子用の組成物に主として用いられる。組成物bにおいて、これらの化合物の量は1〜99%である。好ましい量は10〜97%である。より好ましい量は40〜95%である。この組成物に化合物(12)、(13)または(14)をさらに添加する場合、この化合物の好ましい量は60%以下である。より好ましい量は40%以下である。
【0103】
化合物(7)、(8)、(9)、(10)、および(11)は、誘電率異方性が負であるので、VA素子用の組成物に主として用いられる。組成物cにおいて、これらの化合物の好ましい量は80%以下である。より好ましい量は40〜80%である。この組成物に化合物(12)、(13)または(14)をさらに添加する場合、この化合物の好ましい量は60%以下である。より好ましい量は40%以下である。
【0104】
化合物(12)、(13)および(14)の誘電率異方性は小さい。化合物(12)は粘度または光学異方性を調整する目的で主に使用される。化合物(13)および(14)は上限温度を上げて液晶相の温度範囲を広げる、または光学異方性を調整する目的で使用される。化合物(12)、(13)および(14)の量を増加させると組成物のしきい値電圧が高くなり、粘度が小さくなる。したがって、組成物のしきい値電圧の要求値を満たすかぎり多量に使用してもよい。
【0105】
化合物(2)〜化合物(14)の好ましい例は、次に示す化合物(2−1)〜化合物(2−9)、化合物(3−1)〜化合物(3−97)、化合物(4−1)〜化合物(4−33)、化合物(5−1)〜化合物(5−56)、化合物(6−1)〜化合物(6−3)、化合物(7−1)〜化合物(7−4)、化合物(8−1)〜化合物(8−6)、化合物(9−1)〜化合物(9−4)、化合物(10−1)、化合物(11−1)、化合物(12−1)〜化合物(12−11)、化合物(13−1)〜化合物(13−21)、および化合物(14−1)〜化合物(14−6)である。これらの式において、R1、R、X1、およびXの記号の意味は、式(2)〜式(14)におけるこれらの記号の意味と同一である。
【0106】


【0107】


【0108】


【0109】


【0110】


【0111】


【0112】


【0113】


【0114】


【0115】


【0116】


【0117】


【0118】


【0119】


【0120】


【0121】


【0122】
本発明の組成物は公知の方法によって調製される。例えば、成分である化合物を混合し、加熱によって互いに溶解させる。組成物に適当な添加物を加えて組成物の物性を調整してもよい。このような添加物は当業者によく知られている。メロシアニン、スチリル、アゾ、アゾメチン、アゾキシ、キノフタロン、アントラキノン、テトラジンなどの化合物である二色性色素を添加してGH素子用の組成物を調製してもよい。一方、液晶のらせん構造を誘起して必要なねじれ角を与える目的でキラルドーパントが添加される。キラルドーパントの例は下記の光学活性化合物(Op−1)〜(Op−13)である。
【0123】


【0124】
キラルドーパントを組成物に添加することによってねじれのピッチを調整する。TN素子およびTN−TFT素子用の好ましいピッチは40〜200μmの範囲である。STN素子用の好ましいピッチは6〜20μmの範囲である。BTN素子用の好ましいピッチは1.5〜4μmの範囲である。PC素子用の組成物にはキラルドーパントを比較的多量に添加する。ピッチの温度依存性を調整する目的で少なくとも2つのキラルドーパントを添加してもよい。
【0125】
紫外線や酸化などによる組成物の劣化防止の目的で安定剤を添加してもよい。安定剤の例は安定剤(Sb−1)〜(Sb−32)である。


【0126】


【0127】


【0128】
本発明の組成物は、PC、TN、STN、BTN,ECB、OCB、IPS、VAなどの素子に使用できる。これらの素子は駆動方式がPMであってもよいし、またはAMであってもよい。この組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)素子や、組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)素子、例えばPN(polymer network)素子にも使用できる。
【実施例】
【0129】
実施例により本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例によって制限されない。No.1などの化合物番号は、実施例4において示した化合物のそれと対応する。得られる化合物は核磁気共鳴スペクトル、質量スペクトルなどで同定する。核磁気共鳴スペクトルにおいて、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、mはマルチプレットである。
【0130】
成分または液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶性化合物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。組成物は、液晶性化合物などの成分の重量を測定してから混合することによって調製される。したがって、成分の重量%を算出するのは容易である。しかし、組成物をガスクロマト分析することによって成分の割合を正確に算出するのは容易でない。補正係数が液晶性化合物の種類に依存するからである。幸いなことに補正係数はほぼ1である。さらに、成分化合物における1重量%の差異が組成物の特性に与える影響は小さい。したがって、本発明においてはガスクロマトグラフにおける成分ピークの面積比を成分化合物の重量%と見なすことができる。つまり、ガスクロマト分析の結果(ピークの面積比)は、補正することなしに液晶性化合物の重量%と等価であると考えてよいのである。
【0131】
特性値の測定において、化合物単体をそのまま試料として用いる場合、化合物を母液晶に混合し試料として用いる場合、そして組成物をそのまま試料として用いる場合の3通りの方法がある。化合物を母液晶に混合する場合は、次の方法をとる。15重量%の化合物および85重量%の母液晶を混合することによって試料を調製した。測定によって得られた値から外挿法よって化合物の特性値を算出した。外挿値=(試料の測定値−0.85×母液晶の測定値)/0.15。この割合でスメクチック相(または結晶)が25℃で析出するときは、化合物と母液晶の割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更した。
【0132】
測定で得られた値のうち、化合物単体をそのまま試料として用い得られた値と、組成物をそのまま試料として用いて得られた値は、そのままの値を実験データとして記載する。化合物を母液晶に混合し試料として用い得られた値は、そのままの値を実験データとして記載する場合もあるし、外挿法で得られた値を記載する場合もある。
【0133】
化合物を母液晶に混合し試料として用いる場合、その母液晶は複数存在する。誘電率異方性が正である化合物のとき、母液晶の一例は母液晶Aである。誘電率異方性が負である化合物のとき、母液晶の一例は母液晶Bである。母液晶AとBの組成は、次のとおりである。
【0134】
母液晶A:


【0135】
母液晶B:


【0136】
特性値の測定は下記の方法にしたがった。それらの多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。測定に用いたTN素子またはVA素子には、TFTを取り付けなかった。
【0137】
<転移温度(℃)>
次のいずれかの方法で測定した。1)偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料が相変化したときの温度を測定した。2)パーキンエルマー社製走査熱量計DSC−7システムおよびDiamond DSCシステムを用い3℃/分速度で測定した。
【0138】
結晶はCと表した。結晶の区別がつく場合は、それぞれCまたはCと表した。スメクチック相はSと表した。液体(アイソトロピック)はIsoと表した。ネマチック相はNと表した。スメクチック相の中で、スメクチックB相、スメクチックC相またはスメクチックA相の区別がつく場合は、それぞれSmA、SmCまたはSmAと表した。転移温度の表記として、「C 92.9 N 196.9 Iso」とは、結晶からネマチック相への転移温度(CN)が92.9℃であり、ネマチック相から液体への転移温度(NI)が196.9℃であることを示す。他の表記も同様である。
【0139】
<ネマチック相の上限温度(TNI;℃)>
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0140】
<低温相溶性(TC;重量%)>
母液晶に化合物を20重量%、15重量%、10重量%、5重量%、3重量%および1重量%混合した試料をガラス瓶に入れ、−20℃のフリーザー中に30日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、20重量%混合したときの試料が結晶またはスメクチックで、15重量%混合したときの試料がネマチック相であった場合、TC=15重量%と記載した。
【0141】
<粘度(η;20℃で測定;mPa・s)>
測定にはE型回転粘度計を用いた。
【0142】
<回転粘度(γ1;25℃で測定;mPa・s)>
1)誘電率異方性が正である試料:測定はM. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。ツイスト角が0°であり、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5μmであるTN素子に試料を入れた。TN素子に16ボルトから19.5ボルトの範囲で0.5ボルト毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算で必要な誘電率異方性の値は、この回転粘度の測定で使用した素子にて、下記の誘電率異方性の測定方法で求めた。
【0143】
2)誘電率異方性が負である試料:測定はM. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmのVA素子に試料を入れた。この素子に30ボルトから50ボルトの範囲で1ボルト毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算に必要な誘電率異方性は、下記の誘電率異方性で測定した値を用いた。
【0144】
<光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定)>
測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率n‖は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率n⊥は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。
【0145】
<誘電率異方性(Δε;25℃で測定)>
1)誘電率異方性が正である試料:2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、そしてツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(10V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0146】
2)誘電率異方性が負である試料:2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmであるVA素子に試料を入れた。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0147】
<しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V)>
誘電率異方性が正である試料のみを測定した。測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9.0μmであり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に印加する電圧(32Hz、矩形波)は0Vから10Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が90%になったときの電圧である。
【0148】
<電圧保持率(VHR;25℃で測定;%)>
測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は6μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線によって重合する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。
【0149】
H−NMR分析>
DRX−500(ブルカーバイオスピン(株)製)を用いて測定した。CDClなど重水素化されたサンプルが可溶な溶媒に溶解させた溶液を、室温にて核磁気共鳴装置を用いて測定した。なお、δ値のゼロ点の基準物質にはテトラメチルシラン(TMS)を用いた。
【0150】
<ガスクロマト分析>
島津製作所製のGC−14B型ガスクロマトグラフを用いて測定した。キャリアーガスはヘリウム(2ml/分)である。試料気化室を280℃に、検出器(FID)を300℃に設定した。成分化合物の分離には、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm;固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。このカラムは、200℃で2分間保持したあと、5℃/分の割合で280℃まで昇温した。試料はアセトン溶液(0.1重量%)に調製したあと、その1μLを試料気化室に注入した。記録計は島津製作所製のC−R5A型Chromatopac、またはその同等品である。得られたガスクロマトグラムは、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積を示した。
【0151】
試料を希釈するための溶媒は、クロロホルム、ヘキサンなどを用いてもよい。成分化合物を分離するために、次のキャピラリカラムを用いてもよい。Agilent Technologies Inc.製のHP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty. Ltd製のBP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)。化合物ピークの重なりを防ぐ目的で島津製作所製のキャピラリーカラムCBP1−M50−025(長さ50m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いてもよい。ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は成分化合物の割合に相当する。成分化合物の重量%は各ピークの面積比と完全には同一ではない。しかし、本発明においては、これらのキャピラリカラムを用いるときは、成分化合物の重量%は各ピークの面積比と同一であると見なしてよい。成分化合物における補正係数に大きな差異がないからである。
【0152】
[実施例1]
1−(4−(4−(4−プロピルシクロヘキシル)フェニル)−2−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノン(1−2−1−11)の合成


【0153】
<第1工程>
窒素雰囲気下、ピリジン10mLに溶解させた3−((4−プロピルシクロヘキシル)フェニル)フェノール(1)5.0gへ、氷水浴下塩化プロピノイル1.6gを加え、滴下終了後2時間室温にて撹拌させた。この溶液を、3N−塩酸20mLへ注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出後有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、6.42gのプロピオン酸3−((4−プロピルシクロヘキシル)フェニル)フェニル(2)を得た。
【0154】
<第2工程>
窒素雰囲気下加熱還流条件下、1,2−ジクロロエタン5mLに溶解させた2.73gの塩化アルミニウムへ1,2−ジクロロエタン5mLに溶解させた(2)4.55g滴下し、6時間加熱還流させた。この反応液を室温まで冷却させた後蒸留水へ注ぎ込み、水層をトルエンで抽出し、有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶で精製し、1.25gの1−(4−(4−(4−プロピルシクロヘキシル)フェニル)−2−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノン(1−2−1−11)を無色結晶として得た。相転移点(℃)C 74.9 SmA 140.3 N 211.4 Iso
【0155】
H−NMR(CDCl):δ(ppm);12.5(s,1H)、7.80(d,2H)、7.56(d,2H)、7.30(d,1H)、7.21(d,1H)、7.13(dd,1H)、3.06(q、2H)、2.51(tt,1H)、1.93−1.87(m,4H)、1.52−1.45(m、2H)、1.40−1.29(m,3H)、1.26(t,3H)、1.23−1.20(m,2H)、1.10−1.03(m,2H)、0.91(t、3H).
【0156】
[実施例2]
1−(4−(4−(4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)−2−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノン(1−2−1−1)の合成


【0157】
<第1工程>
窒素雰囲気下、ピリジン10mLに溶解させた3−((4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)フェノール(3)5.0gへ、氷水浴下塩化プロピノイル1.7gを加え、滴下終了後2時間室温にて撹拌させた。この溶液を、3N−塩酸20mLへ注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出後有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、6.52gのプロピオン酸3−((4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)フェニル(4)を得た。
【0158】
<第2工程>
窒素雰囲気下加熱還流条件下、1,2−ジクロロエタン5mLに溶解させた2.67gの塩化アルミニウムへ、1,2−ジクロロエタン5mLに溶解させた(4)6.52gを滴下し、6時間加熱還流させた。この反応液を室温まで冷却させた後蒸留水へ注ぎ込み、水層をトルエンで抽出し、有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶で精製し、1.25gの1−(4−(4−(4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)−2−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノン(1−2−1−1)を無色結晶として得た。相転移点(℃)C 107.2 N 209.8 Iso
【0159】
H−NMR(CDCl):δ(ppm);12.3(s,1H)、7.59(d,1H)、6.74(d,1H)、6.67(dd,1H)、2.92(q、2H)、2.36(tt,1H)、1.83−1.64(m,8H)、1.36−1.20(m、4H)、1.17(t,3H)、1.08−0.88(m,9H)、0.82−0.75(m,5H).
【0160】
[実施例3]
1−(4−(4−(4−プロピルシクロヘキシル)フェニル)−3−フルオロ−2−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノン(1−2−2−21)の合成


【0161】
<第1工程>
窒素雰囲気下、THF60mLに溶解させた2−フルオロ−3−((4−プロピルシクロヘキシル)フェニル)フェノール(5)9.45gへ、氷水浴下60%水素化ナトリウム1.52gを加え、30分間室温にて撹拌させた。この溶液へ氷冷下クロロメチルメチルエーテル3.07gを加え、室温にて4時間撹拌した。水を注ぎ反応を停止させ、水層をトルエンで抽出後有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、11.6gの2−フルオロ−3−((4−プロピルシクロヘキシル)フェニル)−1−メトキシメトキシベンゼン(6)を得た。
【0162】
<第2工程>
窒素雰囲気下、THF30mLへ溶解させた化合物(6)を−78℃に冷却させ、そこへsec−ブチルリチウム(1.0m/L)16.8mLを滴下して、同温で2時間撹拌した。この反応液をTHF10mLへ懸濁溶解させたヨウ化銅(I)3.2g、塩化プロピノイル1.55gへ−78℃にて滴下し、同温で1時間、室温にて終夜撹拌した。反応液へ飽和塩化アンモニウム水溶液を注いで反応を停止させ、水層をトルエンで抽出し、有機層を合わせて、これを飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、3.65gの1−(4−(4−(4−プロピルシクロヘキシル)フェニル)−3−フルオロ−2−メトキシメトキシフェニル)−1−プロパノン(7)を得た。
【0163】
<第3工程>
エタノール17.7mLへ溶解させた化合物(7)へ1N−塩酸17.7mLを加え、2時間加熱還流させた。室温まで冷却し水を加え、水層をトルエンで抽出し、有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶で精製し、1.48gの1−(4−(4−(4−プロピルシクロヘキシル)フェニル)−3−フルオロ−2−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノン(1−2−2−21)を無色結晶として得た。相転移点(℃)C 95.2 N 207.9 Iso
【0164】
H−NMR(CDCl):δ(ppm);12.5(s,1H)、7.57(dd,1H)、7.52(dd,2H)、7.31(d,2H)、6.95(dd,1H)、3.06(q、2H)、2.52(tt,1H)、1.94−1.87(m,4H)、1.52−1.45(m、2H)、1.39−1.29(m,3H)、1.26(t,3H)、1.23−1.20(m,2H)、1.10−1.03(m,2H)、0.91(t、3H).
【0165】
[実施例4]
実施例1〜3および前記の合成法をもとに、下記の化合物(1−1−1−1)〜化合物(1−3−2−20)を合成する。実施例1〜実施例3で得られた、化合物(1−2−1−11)、化合物(1−2−1−1)および化合物(1−2−2−21)も再掲した。
【0166】


【0167】


【0168】


【0169】


【0170】


【0171】


【0172】


【0173】


【0174】


【0175】


【0176】


【0177】


【0178】
[実施例5]
下記の5つの化合物を混合して、ネマチック相を有する組成物A(母液晶B)を調製した。
4−エトキシフェニル 4−プロピルシクロヘキサンカルボキシレート:17.2%
4−ブトキシフェニル 4−プロピルシクロヘキサンカルボキシレート:27.6%
4−エトキシフェニル 4−ブチルシクロヘキサンカルボキシレート :20.7%
4−メトキシフェニル 4−ペンチルシクロヘキサンカルボキシレート:20.7%
4−エトキシフェニル 4−ペンチルシクロヘキサンカルボキシレート:13.8%
組成物Aの物性は下記のとおりであった。
上限温度(TNI)=74.0℃
粘度(η20)=18.9mPa・s
光学異方性(Δn)=0.087
誘電率異方性(Δε)=−1.3
【0179】
この組成物Aの85%と実施例1で得られた1−(4−(4−(4−プロピルシクロヘキシル)フェニル)−2−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノン(化合物No.1−2−1−11)の15%とからなる組成物Bを調製したところ、その物性値は下記のとおりであった。
光学異方性(Δn)=0.108
誘電率異方性(Δε)=−1.68
化合物(1−2−1−11)を加えることによって、誘電率異方性が負に大きくなり、液晶表示素子にしたときに低い駆動電圧を有することが分かった。
【0180】
実施例6
実施例5に記載した組成物Aの85%と実施例2で得られた1−(4−(4−(4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)−2−ヒドロキシフェニル)−1−プロパノン(化合物No.1−2−1−1)の15%とからなる組成物Cを調製したところ、その物性は次のとおりであった。
光学異方性(Δn)=0.094
誘電率異方性(Δε)=−1.82
化合物(1−2−1−1)を加えることによって、誘電率異方性が負に大きくなり、液晶表示素子にしたときに低い駆動電圧を有することが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物:


ここに、RaおよびRbは独立して水素または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルの任意の−CH−は、−O−、−S−、−CO−、−SiH−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、そしてこのアルキルの任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;環Aは1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルまたはナフタレン−2,6−ジイルであり、これらの環を構成する任意の−CH−は−O−、−S−、−CO−または−SiH−で置き換えられてもよく、これらの環を構成する任意の−(CH−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、そしてこれらの環に直接結合する任意の水素はハロゲン、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHFまたは−OCHFで置き換えられてもよく;Zは単結合または炭素数1〜4のアルキレンであり、このアルキレンの任意の−CH−は−O−、−S−、−CO−、−SiH−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、そしてこのアルキレンの任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;Yは水素、ハロゲン、−CN、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHFまたは−OCHFであり;mは1、2または3であり;そして、mが2または3であるとき、複数の環Aは同じ基であっても異なる基であってもよく、複数のZは同じ基であっても異なる基であってもよい。
【請求項2】
RaおよびRbが独立して、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜19のアルコキシ、炭素数2〜19のアルコキシアルキル、炭素数2〜21のアルケニル、炭素数1〜20のフッ素化アルキルまたは炭素数1〜19のフッ素化アルコキシであり;環Aが1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、6−フルオロピリジン−2,5−ジイルまたはピリダジン−3,6−ジイルであり;Zが単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CHCO−、−COCH−、−CHSiH−、−SiHCH−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCFO−、−OCF(CH−、−(CHO−、−O(CH−または−(CH−であり;そして、Yが水素、フッ素、塩素、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHFまたは−OCHFである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
RaおよびRbが独立して炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、炭素数2〜10のアルコキシアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜10のフッ素化アルキル、または炭素数1〜10のフッ素化アルコキシであり;環Aが独立して1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンまたは2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;Zが独立して単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCFO−、−OCF(CH−、−(CHO−、−O(CH−または−(CH−であり;そして、Yが水素、フッ素、塩素、−CF、−CHFまたは−CHFである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
RaおよびRbが独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、炭素数2〜10のアルコキシアルキル、または炭素数2〜10のアルケニル、−CHF、または−OCHFであり;環Aが1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレンまたは2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;Zが単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、または−C≡C−であり;
そして、Yが水素、フッ素、−CFHまたは−CFである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Raが炭素数1〜6のアルキル、炭素数1〜6のアルコキシ、炭素数2〜6のアルコキシアルキルまたは炭素数2〜6のアルケニルであり、そしてRbが炭素数1〜6のアルキルまたは炭素数1〜6のアルコキシであり;環Aが1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;Zが単結合または−(CH−であり;そして、Yが水素またはフッ素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
式(I)〜式(V)のいずれか1つで表される化合物:


ここに、RaおよびRbは独立して水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、炭素数2〜10のアルコキシアルキル、または炭素数2〜10のアルケニルであり;Zは独立して単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCFO−、−(CHO−、−O(CH−または−(CH−であり;そして、Yは水素、フッ素、塩素、−CFまたは−CFHである。
【請求項7】
RaおよびRbが独立して炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシまたは炭素数2〜10のアルケニルであり;Zが独立して単結合、−(CH−、−CH=CH−または−(CH−であり;そして、Yが水素、フッ素、塩素、−CFまたは−CHFである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
RaおよびRbが独立して炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、または炭素数2〜10のアルケニルであり;Zが独立して単結合または−(CH−であり;そしてYが水素、フッ素または−CFである、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
RaおよびRbが独立して炭素数1〜6のアルキルであり;Zが単結合であり;そしてYがフッ素である、請求項6に記載の化合物。
【請求項10】
下記の式で表される化合物:


【請求項11】
下記の式で表される化合物:


【請求項12】
下記の式で表される化合物:


【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を含有する液晶組成物。
【請求項14】
式(2)、式(3)および式(4)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項13に記載の液晶組成物:


ここに、Rは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Xはフッ素、塩素、−OCF、−OCHF、−CF、−CHF、−CHF、−OCFCHF、または−OCFCHFCFであり;環Bは独立して1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイルまたは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり、環Eは1,4−シクロヘキシレンまたは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;Zは独立して−(CH−、−(CH−、−COO−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、または単結合であり;そして、Lは独立して水素またはフッ素である。
【請求項15】
式(5)および式(6)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項13に記載の液晶組成物:


ここに、Rは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Xは−CNまたは−C≡C−CNであり;環Gは1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;環Jは1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイル、または任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;環Kは1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり;Zは−(CH−、−COO−、−CFO−、−OCF−、または単結合であり;Lは独立して水素またはフッ素であり;そして、bは独立して0または1である。
【請求項16】
式(7)、式(8)、式(9)、式(10)および式(11)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項13に記載の液晶組成物:


ここに、Rは炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Rはフッ素または炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;環Mは1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレンまたはデカヒドロ−2,6−ナフタレンであり;Zは独立して−(CH−、−COO−または単結合であり;そして、Lは独立して水素またはフッ素であって、Lの少なくとも1つはフッ素である。
【請求項17】
式(12)、式(13)および式(14)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項13に記載の液晶組成物。


ここに、Rは独立して炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;環Jは独立して1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイル、または任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;そしてZは独立して−C≡C−、−COO−、−(CH−、−CH=CH−、または単結合である。
【請求項18】
請求項15に記載の式(5)および式(6)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項14に記載の液晶組成物。
【請求項19】
請求項17に記載の式(12)、式(13)および式(14)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項14に記載の液晶組成物。
【請求項20】
請求項17に記載の式(12)、式(13)および式(14)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項15に記載の液晶組成物。
【請求項21】
請求項17に記載の式(12)、式(13)および式(14)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項16に記載の液晶組成物。
【請求項22】
少なくとも1つの光学活性化合物をさらに含有する、請求項13〜21のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項23】
請求項13〜22のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。

【公開番号】特開2007−217288(P2007−217288A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36088(P2006−36088)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】