説明

液晶化合物、液晶組成物および液晶表示素子

【課題】ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する、または少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物を提供する。
【解決手段】第一成分として例えば下記構造式で例示される、高い上限温度を有し、そして大きな誘電率異方性を有する新規な四環化合物を含有し、第二成分として小さな誘電率異方性を有する特定の化合物を含有し、そしてネマチック相を有する液晶組成物、およびこの組成物を含有する液晶表示素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてAM(active matrix)素子などに適する液晶組成物およびこの組成物を含有するAM素子などに関する。特に、誘電率異方性が正の液晶組成物に関し、この組成物を含有するTN(twisted nematic)モード、OCB(optically compensated bend)モード、IPS(in-plane switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)、またはPSA(polymer sustained alignment)モードの素子などに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子において、液晶の動作モードに基づいた分類は、PC(phase change)、TN(twisted nematic)、STN(super twisted nematic)、ECB(electrically controlled birefringence)、OCB(optically compensated bend)、IPS(in-plane switching)、VA(vertical alignment)、FFS(Fringe Field Switching)、PSA(polymer sustained alignment)モードなどである。素子の駆動方式に基づいた分類は、PM(passive matrix)とAM(active matrix)である。PMはスタティック(static)とマルチプレックス(multiplex)などに分類され、AMはTFT(thin film transistor)、MIM(metal insulator metal)などに分類される。TFTの分類は非晶質シリコン(amorphous silicon)および多結晶シリコン(polycrystal silicon)である。後者は製造工程によって高温型と低温型とに分類される。光源に基づいた分類は、自然光を利用する反射型、バックライトを利用する透過型、そして自然光とバックライトの両方を利用する半透過型である。
【0003】
これらの素子は適切な特性を有する液晶組成物を含有する。この液晶組成物はネマチック相を有する。良好な一般的特性を有するAM素子を得るには組成物の一般的特性を向上させる。2つの一般的特性における関連を下記の表1にまとめる。組成物の一般的特性を市販されているAM素子に基づいてさらに説明する。ネマチック相の温度範囲は、素子の使用できる温度範囲に関連する。ネマチック相の好ましい上限温度は約70℃以上であり、そしてネマチック相の好ましい下限温度は約−10℃以下である。組成物の粘度は素子の応答時間に関連する。素子で動画を表示するためには短い応答時間が好ましい。したがって、組成物における小さな粘度が好ましい。低い温度における小さな粘度はより好ましい。組成物の弾性定数は素子のコントラストに関連する。素子においてコントラストを上げるためには、組成物における大きな弾性定数がより好ましい。
【0004】

【0005】
組成物の光学異方性は、素子のコントラスト比に関連する。組成物の光学異方性(Δn)と素子のセルギャップ(d)との積(Δn×d)は、コントラスト比を最大にするように設計される。適切な積の値は動作モードの種類に依存する。TNのようなモードの素子では、適切な値は約0.45μmである。この場合、小さなセルギャップの素子には大きな光学異方性を有する組成物が好ましい。組成物における大きな誘電率異方性は素子における低いしきい値電圧、小さな消費電力と大きなコントラスト比に寄与する。したがって、大きな誘電率異方性が好ましい。組成物における大きな比抵抗は、素子における大きな電圧保持率と大きなコントラスト比に寄与する。したがって、初期段階において室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。長時間使用したあと、室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。紫外線および熱に対する組成物の安定性は、液晶表示素子の寿命に関連する。これらの安定性が高いとき、この素子の寿命は長い。このような特性は、液晶プロジェクター、液晶テレビなどに用いるAM素子に好ましい。組成物における大きな弾性定数は素子における大きなコントラスト比と短い応答時間に寄与する。したがって、大きな弾性定数が好ましい。
【0006】
TNモードを有するAM素子においては正の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。一方、VAモードを有するAM素子においては負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。IPSモードまたはFFSモードを有するAM素子においては正または負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。PSAモードを有するAM素子においては正または負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。正の誘電率異方性を有する液晶組成物は特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−003053号公報
【0008】
望ましいAM素子は、使用できる温度範囲が広い、応答時間が短い、コントラスト比が大きい、しきい値電圧が低い、電圧保持率が大きい、寿命が長い、などの特性を有する。1ミリ秒でもより短い応答時間が望ましい。したがって、組成物の望ましい特性は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性、大きな弾性定数などである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の1つの目的は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性、大きな弾性定数などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する液晶組成物である。他の目的は、少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物である。別の目的は、このような組成物を含有する液晶表示素子である。別の目的は、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、紫外線に対する高い安定性、大きな弾性定数などを有する組成物であり、そして短い応答時間、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、長い寿命などの特性を有するAM素子である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第一成分として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そしてネマチック相を有する液晶組成物、およびこの組成物を含有する液晶表示素子である。


ここで、Rは炭素数1から12のアルキルまたは炭素数2から12のアルケニルであり;Rは、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;Rは、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルコキシメチル、または炭素数2から12のアルケニルであり;環A、環B、環C、および環Dは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;Xは水素またはフッ素であり;Yは、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシであり;Zは独立して、単結合、エチレン、またはカルボニルオキシであり;mは、0、1、または2である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の長所は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性、大きな弾性定数などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する液晶組成物である。本発明の1つの側面は、少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物である。別の側面は、このような組成物を含有する液晶表示素子である。他の側面は、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、紫外線に対する高い安定性、大きな弾性定数などの特性を有する組成物であり、そして短い応答時間、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、長い寿命などの特性を有するAM素子である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。本発明の液晶組成物または本発明の液晶表示素子をそれぞれ「組成物」または「素子」と略すことがある。液晶表示素子は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。「液晶性化合物」は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物または液晶相を有さないが組成物の成分として有用な化合物を意味する。この有用な化合物は例えば1,4−シクロヘキシレンや1,4−フェニレンのような六員環を有し、その分子構造は棒状(rod like)である。光学活性な化合物または重合可能な化合物は組成物に添加されることがある。これらの化合物が液晶性化合物であったとしても、ここでは添加物として分類される。式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を「化合物(1)」と略すことがある。「化合物(1)」は、式(1)で表される1つの化合物または2つ以上の化合物を意味する。他の式で表される化合物についても同様である。「任意の」は、位置だけでなく個数についても任意であることを示すが、個数が0である場合を含まない。
【0013】
ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。「比抵抗が大きい」は、組成物が初期段階において室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな比抵抗を有し、そして長時間使用したあと室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな比抵抗を有することを意味する。「電圧保持率が大きい」は、素子が初期段階において室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を有し、そして長時間使用したあと室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を有することを意味する。光学異方性などの特性を説明するときは、実施例に記載した測定方法で得られた値を用いる。第一成分は、1つの化合物または2つ以上の化合物である。「第一成分の割合」は、液晶組成物の全重量に基づいた第一成分の重量百分率(重量%)を意味する。第二成分の割合などにおいても同様である。組成物に混合される添加物の割合は、液晶組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)または重量百万分率(ppm)を意味する。
【0014】
成分化合物の化学式において、Rの記号を複数の化合物に用いた。これらの化合物において、任意の2つのRの意味は同じであっても、異なってもよい。例えば、化合物(1)のRがエチルであり、化合物(1−1)のRがエチルであるケースがある。化合物(1)のRがエチルであり、化合物(1−1)のRがプロピルであるケースもある。このルールは、X、Yなどにも適用される。
【0015】
本発明は、下記の項などである。
1. 第一成分として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そしてネマチック相を有する液晶組成物。


ここで、Rは炭素数1から12のアルキルまたは炭素数2から12のアルケニルであり;Rは、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;Rは、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルコキシメチル、または炭素数2から12のアルケニルであり;環A、環B、環C、および環Dは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;Xは、水素またはフッ素であり;Yは、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシであり;Zは独立して、単結合、エチレン、またはカルボニルオキシであり;mは、0、1、または2である。
【0016】
2. 液晶組成物の全重量に基づいて、第一成分の割合が5重量%から30重量%の範囲であり、そして第二成分の割合が5重量%から40重量%の範囲である項1に記載の液晶組成物。
【0017】
3. 第三成分として式(3−1)から式(3−3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項1に記載の液晶組成物。


ここで、R、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキルまたは炭素数2から12のアルケニルであり;環Eは、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;環Fは、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;X、X、X、X、およびXは独立して、水素またはフッ素であり;Y、YおよびYは独立して、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである。
【0018】
4. 液晶組成物の全重量に基づいて、第一成分の割合が5重量%から30重量%の範囲であり、第二成分の割合が5重量%から40重量%の範囲であり、そして第三成分の割合が5重量%から70重量%の範囲である項3に記載の液晶組成物。
【0019】
5. 第四成分として式(4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項1または3に記載の液晶組成物。


ここで、Rは炭素数1から12のアルキルまたは炭素数2から12のアルケニルであり;環Gは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;Xは水素またはフッ素であり;Yは、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシであり;Zは独立して、単結合、エチレン、またはカルボニルオキシであり;nは、1、2、または3である。
【0020】
6. 液晶組成物の全重量に基づいて、第一成分の割合が5重量%から30重量%の範囲であり、第二成分の割合が5重量%から40重量%の範囲であり、第三成分の割合が0重量%から60重量%の範囲であり、そして第四成分の割合が5重量%から50重量%の範囲である項5に記載の液晶組成物。
【0021】
7. 第一成分が、式(1−1−1)、式(1−2−1)、および式(1−3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項1から6のいずれか1項に記載の液晶組成物。


ここで、Rは炭素数1から12のアルキルまたは炭素数2から12のアルケニルである。
【0022】
8. 第二成分が式(2−1)から式(2−15)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項1から7のいずれか1項に記載の液晶組成物。






ここで、Rは、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;Rは、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルコキシメチル、または炭素数2から12のアルケニルである。
【0023】
9. 第二成分が、式(2−1)、式(2−7)、式(2−9)、および式(2−14)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項8に記載の液晶組成物。
【0024】
10. 第二成分が式(2−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項1から7のいずれか1項に記載の液晶組成物。


ここで、Rは、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;Rは、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルコキシメチル、または炭素数2から12のアルケニルである。
【0025】
11. 第三成分が、式(3−1−1)から式(3−1−7)、式(3−2−1)、および式(3−3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項3から5、および7から10のいずれか1項に記載の液晶組成物。







ここで、R、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキルまたは炭素数2から12のアルケニルである。
【0026】
12. 第三成分が、式(3−1−1)から式(3−1−3)、式(3−2−1)、および式(3−3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項3から11のいずれか1項に記載の液晶組成物。




ここで、R、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキルまたは炭素数2から12のアルケニルである。
【0027】
13. 第三成分が式(3−1−1)から式(3−1−6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項11に記載の液晶組成物。
【0028】
14. 第三成分が式(3−1−1)および式(3−1−3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項11に記載の液晶組成物。
【0029】
15. 第三成分が式(3−1−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項11に記載の液晶組成物。
【0030】
16. 第四成分が式(4−1)から式(4−16)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項5から15のいずれか1項に記載の液晶組成物。






ここで、Rは炭素数1から12のアルキルまたは炭素数2から12のアルケニルである。
【0031】
17. 第四成分が式(4−1)から式(4−11)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項5から16のいずれか1項に記載の液晶組成物。




ここで、Rは炭素数1から12のアルキル、または炭素数2から12のアルケニルである。
【0032】
18. 第四成分が式(4−1)から式(4−5)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項5から16のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0033】
19. 第一成分が式(1−1−1)から式(1−3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物であり、第二成分が、式(2−1)、式(2−7)、式(2−9)、および式(2−14)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物であり、第三成分が式(3−1−1)から式(3−1−6)、式(3−2−1)、および式(3−3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物であり、そして第四成分が式(4−1)から式(4−11)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である、項5から18のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0034】
20. 第一成分が式(1−2−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物であり、第二成分が式(2−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物であり、第三成分が、式(3−1−1)、式(3−1−6)、式(3−2−1)、および式(3−3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物であり、そして第四成分が式(4−1)から式(4−5)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である、項5から18のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0035】
21. 液晶組成物の全重量に基づいて、第一成分の割合が5重量%から30重量%の範囲であり、第二成分の割合が5重量%から40重量%の範囲であり、第三成分の割合が10重量%から60重量%の範囲であり、そして第四成分の割合が5重量%から50重量%の範囲である項5から20のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0036】
22. 式(1−1)で表される化合物。


ここで、Rは炭素数1から12のアルキルまたは炭素数2から12のアルケニルであり;Xは水素またはフッ素であり;Yは、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである。
【0037】
23. 式(1−2)で表される化合物。


ここで、Rは炭素数1から12のアルキルまたは炭素数2から12のアルケニルであり;Xは水素またはフッ素であり;Yは、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである。
【0038】
24. 項1から21のいずれか1項に記載の液晶組成物、または項22または23に記載の化合物を含有する液晶表示素子。
【0039】
25. 液晶表示素子の動作モードが、TNモード、OCBモード、IPSモード、FFSモード、またはPSAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である項24に記載の液晶表示素子。
【0040】
26. 25℃における周波数1kHzにおける誘電率異方性が17以上である項1から21のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0041】
本発明は、次の項も含む。1)光学活性な化合物をさらに含有する上記の組成物、2)酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、重合可能な化合物、重合開始剤などの添加物をさらに含有する上記の組成物、3)上記の組成物を含有するAM素子、4)上記の組成物を含有し、そしてTN、ECB、OCB、IPS、FFSまたはPSAのモードを有する素子、5)上記の組成物を含有する透過型の素子、6)上記の組成物を、ネマチック相を有する組成物としての使用、7)上記の組成物に光学活性な化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用。
【0042】
本発明の組成物を次の順で説明する。第一に、組成物における成分化合物の構成を説明する。第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物に及ぼす主要な効果を説明する。第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分化合物の好ましい割合およびその根拠を説明する。第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。第五に、成分化合物の具体的な例を示す。第六に、組成物に混合してもよい添加物を説明する。第七に、成分化合物の合成法を説明する。最後に、組成物の用途を説明する。
【0043】
第一に、組成物における成分化合物の構成を説明する。本発明の組成物は組成物Aと組成物Bに分類される。組成物Aはその他の液晶性化合物、添加物、不純物などをさらに含有してもよい。「その他の液晶性化合物」は、化合物(1)、化合物(2)、化合物(3−1)から化合物(3−3)、および化合物(4)とは異なる液晶性化合物である。このような化合物は、特性をさらに調整する目的で組成物に混合される。添加物は、光学活性な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合可能な化合物、重合開始剤などである。不純物は成分化合物の合成などの工程において混入した化合物などである。この化合物が液晶性化合物であったとしても、ここでは不純物として分類される。
【0044】
組成物Bは、実質的に化合物(1)、化合物(2)、化合物(3−1)から化合物(3−3)、および化合物(4)から選択された化合物のみからなる。「実質的に」は、組成物が添加物および不純物を含有してもよいが、これらの化合物と異なる液晶性化合物を含有しないことを意味する。組成物Bは組成物Aに比較して成分の数が少ない。コストを下げるという観点から、組成物Bは組成物Aよりも好ましい。その他の液晶性化合物を混合することによって物性をさらに調整できるという観点から、組成物Aは組成物Bよりも好ましい。
【0045】
第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果を説明する。成分化合物の主要な特性を本発明の効果に基づいて表2にまとめる。表2の記号において、Lは大きいまたは高い、Mは中程度の、Sは小さいまたは低い、を意味する。記号L、M、Sは、成分化合物のあいだの定性的な比較に基づいた分類であり、0(ゼロ)は、値がほぼゼロであることを意味する。
【0046】


【0047】
成分化合物を組成物に混合したとき、成分化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果は次のとおりである。化合物(1)は上限温度を上げ、そして誘電率異方性を大きく上げる。化合物(2)は下限温度を下げ、そして粘度を下げる。化合物(3−1)は上限温度を上げ、そして誘電率異方性を大きく上げる。化合物(3−2)は上限温度を下げるが、誘電率異方性を大きく上げる。化合物(3−3)は誘電率異方性を大きく上げる。化合物(4)は下限温度を下げ、そして誘電率異方性を上げる。
【0048】
第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分化合物の好ましい割合およびその根拠を説明する。組成物における成分の組み合わせは、第一成分+第二成分、第一成分+第二成分+第三成分、第一成分+第二成分+第四成分、および第一成分+第二成分+第三成分+第四成分である。好ましい組成物における成分の組み合わせは、誘電率異方性を上げるため、粘度を下げるため、または下限温度を下げるために、第一成分+第二成分+第三成分、および第一成分+第二成分+第三成分+第四成分である。
【0049】
第一成分の好ましい割合は、誘電率異方性を上げるために約5重量%以上であり、下限温度を下げるために約30重量%以下である。さらに好ましい割合は約5重量%から約20重量%の範囲である。特に好ましい割合は約5重量%から約10重量%の範囲である。
【0050】
第二成分の好ましい割合は、粘度を下げるために約5重量%以上であり、誘電率異方性を上げるために約40重量%以下である。さらに好ましい割合は約5重量%から約30重量%の範囲である。特に好ましい割合は約5重量%から約25重量%の範囲である。
【0051】
第三成分は、大きな誘電率異方性を有する組成物の調製に適している。この第三成分の好ましい割合は、誘電率異方性を上げるために約5重量%以上であり、下限温度を下げるために約70重量%以下である。さらに好ましい割合は約10重量%から約60重量%の範囲である。特に好ましい割合は約20重量%から約50重量%の範囲である。
【0052】
第四成分は、大きな誘電率異方性を有する組成物の調製に適している。この第四成分の好ましい割合は約5重量%から約50重量%の範囲である。さらに好ましい割合は約10重量%から約40重量%の範囲である。特に好ましい割合は約15重量%から約35重量%の範囲である。
【0053】
第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。R、R、R、R、およびRは独立して、炭素数1から12のアルキルまたは炭素数2から12のアルケニルである。好ましいR、R、R、R、またはRは、紫外線に対する安定性を上げるため、または熱に対する安定性のために、炭素数1から12のアルキルである。さらに好ましいR、R、R、R、またはRは、粘度を下げるため、または弾性定数を上げるために、炭素数1から5のアルキルである。Rは、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。好ましいRは、粘度を下げるために、炭素数2から5のアルケニルであり、紫外線に対する安定性を上げるため、または熱に対する安定性を上げるために、炭素数1から7のアルキルである。Rは、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルコキシメチル、または炭素数2から12のアルケニルである。好ましいRは粘度を下げるために炭素数2から5のアルケニルであり、紫外線に対する安定性を上げるため、または熱に対する安定性を上げるために、炭素数1から7のアルキルである。
【0054】
好ましいアルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、またはオクチルである。さらに好ましいアルキルは、粘度を下げるために、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘプチルである。
【0055】
好ましいアルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、またはヘプチルオキシである。さらに好ましいアルコキシは、粘度を下げるために、メトキシまたはエトキシである。
【0056】
好ましいアルケニルは、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、または5−ヘキセニルである。さらに好ましいアルケニルは、粘度を下げるために、ビニル、1−プロペニル、3−ブテニル、または3−ペンテニルである。これらのアルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。粘度を下げるためなどから、1−プロペニル、1−ブテニル、1−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ペンテニル、3−ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはトランスが好ましい。2−ブテニル、2−ペンテニル、2−ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはシスが好ましい。これらのアルケニルにおいては、分岐よりも直鎖のアルケニルが好ましい。
【0057】
任意の水素がフッ素で置き換えられたアルケニルの好ましい例は、2,2−ジフルオロビニル、3,3−ジフルオロ−2−プロペニル、4,4−ジフルオロ−3−ブテニル、5,5−ジフルオロ−4−ペンテニル、および6,6−ジフルオロ−5−ヘキセニルである。さらに好ましい例は、粘度を下げるために2,2−ジフルオロビニル、および4,4−ジフルオロ−3−ブテニルである。
【0058】
アルキルは環状アルキルを含まない。アルコキシは環状アルコキシを含まない。アルケニルは環状アルケニルを含まない。任意の水素がフッ素で置き換えられたアルケニルは、任意の水素がフッ素で置き換えられた環状アルケニルを含まない。
【0059】
環A、環B、環C、および環Dは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり、mが2である時、任意の2つの環Dは同じであっても、異なってもよい。好ましい環A、環B、環C、または環Dは、光学異方性を上げるために1,4−フェニレンまたは3−フルオロ−1,4−フェニレンであり、粘度を下げるために1,4−シクロへキシレンである。環Eは、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり、好ましい環Eは、光学異方性を上げるために1,4−フェニレンであり、粘度を下げるために1,4−シクロへキシレンである。環Fは、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルである。好ましい環Fは、光学異方性を上げるために1,4−フェニレンまたは3−フルオロ−1,4−フェニレンであり、上限温度を上げるために1,4−シクロへキシレンである。環Gは、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり、nが2または3である時、任意の2つの環Gは同じであっても、異なってもよい。好ましい環Gは、光学異方性を上げるために1,4−フェニレンまたは3−フルオロ−1,4−フェニレンであり、上限温度を上げるために1,4−シクロへキシレンであり、誘電率異方性を上げるために1,3−ジオキサン−2,5−ジイルである。
【0060】
およびZは独立して、単結合、エチレン、またはカルボニルオキシであり、mが2である時、任意の2つのZは同じであっても、異なってもよく、nが2または3である時、任意の2つのZは同じであっても、異なってもよい。好ましいZは粘度を下げるために単結合であり、上限温度を上げるためにカルボニルオキシである。好ましいZは粘度を下げるために単結合またはエチレンであり、誘電率異方性を上げるためにカルボニルオキシである。
【0061】
、X、X、X、X、X、およびXは独立して、水素またはフッ素である。好ましいX、X、X、X、X、X、またはXは、誘電率異方性を上げるためにフッ素である。
【0062】
、Y、Y、Y、およびYは独立して、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである。好ましいY、Y、Y、Y、またはYは、粘度を下げるためにフッ素である。
【0063】
mは、0、1、または2である。好ましいmは上限温度を上げるために1または2であり、下限温度を下げるために0である。nは、1、2、または3である。好ましいnは上限温度を上げるために3であり、下限温度を下げるために2である。
【0064】
第五に、成分化合物の具体的な例を示す。下記の好ましい化合物において、R、R、R、R、およびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、または炭素数2から12のアルケニルである。Rは、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。Rは、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルコキシメチル、または炭素数2から12のアルケニルである。これらの化合物において1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置は、上限温度を上げるためにシスよりもトランスが好ましい。
【0065】
好ましい化合物(1)は、化合物(1−1−1)から化合物(1−1−3)、化合物(1−2−1)から化合物(1−2−3)、化合物(1−3−1)から化合物(1−3−3)、および化合物(1−4−1)から化合物(1−4−3)である。さらに好ましい化合物(1)は化合物(1−1−1)、化合物(1−2−1)、および化合物(1−3−1)である。特に好ましい化合物(1)は化合物(1−1−1)および化合物(1−2−1)である。好ましい化合物(2)は、化合物(2−1)から化合物(2−15)である。さらに好ましい化合物(2)は、化合物(2−1)、化合物(2−7)、化合物(2−9)および化合物(2−14)である。特に好ましい化合物(2)は化合物(2−1)である。好ましい化合物(3)は、化合物(3−1−1)から化合物(3−1−21)、化合物(3−2−1)から化合物(3−2−3)、および化合物(3−3−1)から化合物(3−3−3)である。さらに好ましい化合物(3)は、化合物(3−1−1)から化合物(3−1−3)、化合物(3−2−1)、および化合物(3−3−1)である。特に好ましい化合物(3)は化合物(3−1−1)および化合物(3−2−1)である。好ましい化合物(4)は、化合物(4−1)から化合物(4−18)である。さらに好ましい化合物(4)は、化合物(4−1)から化合物(4−11)である。特に好ましい化合物(4)は、化合物(4−1)から化合物(4−5)である。
【0066】


【0067】

【0068】

【0069】

【0070】

【0071】

【0072】

【0073】

【0074】

【0075】

【0076】

【0077】

【0078】

【0079】

【0080】


【0081】
第六に、組成物に混合してもよい添加物を説明する。このような添加物は、光学活性な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合可能な化合物、重合開始剤などである。液晶のらせん構造を誘起してねじれ角を与える目的で光学活性な化合物が組成物に混合される。このような化合物の例は、化合物(5−1)から化合物(5−5)である。光学活性な化合物の好ましい割合は約5重量%以下である。さらに好ましい割合は約0.01重量%から約2重量%の範囲である。
【0082】

【0083】
大気中での加熱による比抵抗の低下を防止するために、または素子を長時間使用したあと、室温だけではなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を維持するために、酸化防止剤が組成物に混合される。

【0084】
酸化防止剤の好ましい例は、pが1から9の整数である化合物(6)などである。化合物(6)において、好ましいpは、1、3、5、7、または9である。さらに好ましいpは1または7である。pが1である化合物(6)は、揮発性が大きいので、大気中での加熱による比抵抗の低下を防止するときに有効である。pが7である化合物(6)は、揮発性が小さいので、素子を長時間使用したあと、室温だけではなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を維持するのに有効である。酸化防止剤の好ましい割合は、その効果を得るために約50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないように約600ppm以下である。さらに好ましい割合は、約100ppmから約300ppmの範囲である。
【0085】
紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などである。立体障害のあるアミンのような光安定剤もまた好ましい。これらの吸収剤や安定剤における好ましい割合は、その効果を得るために約50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないために約10000ppm以下である。さらに好ましい割合は約100ppmから約10000ppmの範囲である。
【0086】
GH(guest host)モードの素子に適合させるためにアゾ系色素、アントラキノン系色素などのような二色性色素(dichroic dye)が組成物に混合される。色素の好ましい割合は、約0.01重量%から約10重量%の範囲である。泡立ちを防ぐために、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどの消泡剤が組成物に混合される。消泡剤の好ましい割合は、その効果を得るために約1ppm以上であり、表示の不良を防ぐために約1000ppm以下である。さらに好ましい割合は、約1ppmから約500ppmの範囲である。
【0087】
PSA(polymer sustained alignment)モードの素子に適合させるために重合可能な化合物が組成物に混合される。重合可能な化合物の好ましい例はアクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、ビニルケトンなどの重合可能な基を有する化合物である。特に好ましい例は、アクリレート、またはメタクリレートの誘導体である。重合可能な化合物の好ましい割合は、その効果を得るために、約0.05重量%以上であり、表示不良を防ぐために約10重量%以下である。さらに好ましい割合は、約0.1重量%から約2重量%の範囲である。重合可能な化合物は、好ましくは光重合開始剤などの適切な開始剤存在下でUV照射などにより重合する。重合のための適切な条件、開始剤の適切なタイプ、および適切な量は、当業者には既知であり、文献に記載されている。例えば光開始剤であるIrgacure651(登録商標)、Irgacure184(登録商標)、またはDarocure1173(登録商標)(Ciba Japan K.K.)がラジカル重合に対して適切である。重合可能な化合物は、好ましくは光重合開始剤を約0.1重量%から5重量%の範囲で含む。特に好ましくは光重合開始剤を約1重量%から約3重量%の範囲で含む。
【0088】
第七に、成分化合物の合成法を説明する。
【0089】
<化合物(1)の合成>
式(1)で示される液晶性化合物は、有機合成化学の合成手法を適切に組み合わせることにより合成することができる。出発物に目的の末端基、環、および結合基を導入する方法は、例えば、オーガニックシンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座 14 有機化合物の合成と反応(1978年)丸善 あるいは第四版 実験化学講座 19〜26 有機合成I〜VIII (1991)丸善等に記載の方法をあげることができる。
【0090】
〔化合物(1−1)の合成方法〕
以下、化合物(1)の合成例として、化合物(1−1)を合成する方法の一例を下記に示す。このスキームにおいて、R、X、Yの記号は本発明の態様における項22に記載されている記号の定義と同一である。
【0091】


【0092】
アルデヒド誘導体(101)は、試薬として入手できる。
化合物(101)、化合物(102)、および硫酸マグネシウム無水物の混合物を、p−トルエンスルホン酸のような酸と作用させて化合物(103)に誘導し、次いで、得られた化合物(103)のシクロヘキサン溶液をPd触媒の存在下で、80℃、加圧条件にて水素還元を行うと、ケトン誘導体(104)を得ることができる。
【0093】
得られた化合物(104)に、対応するGrignard反応剤(105)を作用させてアルコール誘導体とし、次いでp−トルエンスルホン酸無水物などの酸を用いて脱水反応を行い、さらにラレー−NiあるいはPd触媒下で水素還元をすることにより、化合物(106)を得ることができる。ここで、カラムクロマトグラフィーおよび再結晶濾過を行うことによって、トランス体である化合物(106)を単離できる。
【0094】
化合物(106)をn−BuLiに作用させた後にCFBrと反応させて化合物(107)に誘導し、最後に対応するフェノール誘導体(108)を炭酸カリウムなどの塩基を用いてエーテル化を行うことにより、目的とする化合物(1−1)を得ることができる。
【0095】
[化合物(1−2)の合成法]
以下、化合物(1−2)を合成する方法の一例を下記に示す。このスキームにおいて、R、X、Yの記号は本発明の態様における項23に記載されている記号の定義と同一である。


【0096】
ブロモベンゼン誘導体(111)およびボロン酸誘導体(112)は、試薬として入手できる。
化合物(111)、化合物(112)、および炭酸カリウムなどの塩基の混合物に、Pd触媒を加えて反応させると化合物(113)を得ることができる。得られた化合物(113)にn−BuLiを作用させた後にホルミルピペリジンと反応させて化合物(114)に誘導できる。
【0097】
得られた化合物(114)と化合物(115)の混合物に、p−トルエンスルホン酸無水物などの酸を用いて脱水環化反応を行うと、化合物(116)が得られる。化合物(116)をn−BuLiに作用させた後にCFBrと反応させて化合物(117)に誘導し、最後に、対応するフェノール誘導体(118)を炭酸カリウムなどの塩基を用いてエーテル化を行うことにより、目的とする化合物(1−2)を得ることができる。
【0098】
<化合物(2)〜(4)の合成>
これらの化合物(2)から(4)は既知の方法によって合成できる。合成法を例示する。化合物(2−1)は、特開昭59−70624号公報および特開昭59−176221号公報に記載された方法で合成する。化合物(2−7)は、特開昭57−165328号公報および特開昭59−176221号公報に記載された方法で合成する。化合物(2−9)は、特表2006−503130号公報に記載された方法で合成する。化合物(2−14)は、特開平2−237949号公報に記載された方法で合成する。化合物(3−1)および化合物(3−2)は、特開平10−251186号公報に記載された方法で合成する。化合物(3−3)は、特開平10−204016号公報に記載された方法で合成する。化合物(4−1)はWO98/17664パンフレットおよび特開平9−12569号公報に記載された方法で合成する。化合物(4−6)から化合物(4−10)は、特開平2−233626号公報に記載された方法で合成する。酸化防止剤は市販されている。式(6)のpが1である化合物は、アルドリッチ(Sigma-Aldrich Corporation)から入手できる。pが7である化合物(6)などは、米国特許3660505号明細書に記載された方法によって合成する。
【0099】
合成法を記載しなかった化合物は、オーガニック・シンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載された方法によって合成できる。組成物は、このようにして得た化合物から公知の方法によって調製される。例えば、成分化合物を混合し、そして加熱によって互いに溶解させる。
【0100】
最後に、組成物の用途を説明する。本発明の組成物は主として、約−10℃以下の下限温度、約70℃以上の上限温度、そして約0.07から約0.20の範囲の光学異方性を有する。この組成物を含有する素子は大きな電圧保持率を有する。この組成物はAM素子に適する。この組成物は透過型のAM素子に特に適する。成分化合物の割合を制御することによって、またはその他の液晶性化合物を混合することによって、約0.08から約0.25の範囲の光学異方性を有する組成物、さらには約0.10から約0.30の範囲の光学異方性を有する組成物を調製してもよい。この組成物は、ネマチック相を有する組成物としての使用、光学活性な化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用が可能である。
【0101】
本発明の液晶組成物の好ましいネマチック相の下限温度は、少なくとも約0℃以下であり、より好ましいネマチック相の下限温度は約−20℃以下であり、特により好ましいネマチック相の下限温度は約−30℃以下である。
【0102】
本発明の液晶組成物の好ましいネマチック相の上限温度は、少なくとも約70℃以上であり、より好ましいネマチック相の上限温度は約80℃以上であり、特により好ましいネマチック相の上限温度は約90℃以上である。
【0103】
本発明の液晶組成物の589nmで25℃における好ましい光学異方性は、約0.07から約0.20の範囲であり、より好ましい光学異方性は約0.07から約0.16の範囲であり、特により好ましい光学異方性は約0.08から約0.13の範囲である。
【0104】
本発明の液晶組成物の25℃における好ましい誘電率異方性は、少なくとも約5以上であり、より好ましい誘電率異方性は約10以上であり、特により好ましい誘電率異方性は約17以上である。
【0105】
この組成物はAM素子への使用が可能である。さらにPM素子への使用も可能である。この組成物は、PC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、FFS、VA、PSAなどのモードを有するAM素子およびPM素子への使用が可能である。TN、OCB、IPSモードまたはFFSモードを有するAM素子への使用は特に好ましい。IPSモードまたはFFSモードを有するAM素子において、電圧が無印加状態での液晶分子の配列がパネル基板に対して並行あるいは垂直であってもよい。これらの素子が反射型、透過型または半透過型であってもよい。透過型の素子への使用は好ましい。非結晶シリコン−TFT素子または多結晶シリコン−TFT素子への使用も可能である。この組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)型の素子や、組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)型の素子にも使用できる。
【実施例】
【0106】
合成例により本発明を詳細に説明する。本発明は下記の合成例によって限定されない。
【0107】
[合成例1]
化合物(1−1−a)の合成



(一般式(1−1)で、R=C11、X=Y=F である化合物)
【0108】
合成スキームを下記に示す。

【0109】
[第一工程] 化合物(103)および(104)の合成
1−ヒドロキシベンズアルデヒド(101)(20.0g, 0.164mol)、2−ペンチルプロパン−1,3−ジオール(102)(26.8g, 0.183mol)、硫酸マグネシウム無水物(20.0g)、p−トルエンスルホン酸(0.80g)、およびトルエン(100mL)の混合液を40℃にて3時間攪拌した。反応終了後、反応混合液を濾過して濾液部を取り出し、水で3回洗浄してトルエンを留去した後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶媒:トルエン/酢酸エチル=5/1(容量比))にて精製し、化合物(103)(38.8g, 0.155mol;収率94%)を得た。
得られた化合物(102)(38.8g, 0.155mol)のシクロヘキサン(150mL)溶液に、Pd/C(NAタイプ)(エヌイーケムキャット製)(1.6g)を加えて、70℃、0.5MPaの条件にて水素雰囲気下で5時間加熱攪拌した。反応終了後は、反応液中のPd触媒を濾別し、次いでシクロヘキサンを留去した後に、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:トルエン/酢酸エチル=5/1(容量比))にて精製し、化合物(104)(24.1g, 0.0946mol;収率61%)を得た。
【0110】
[第二工程] 化合物(106)の合成
窒素気流下にて、細粒状のマグネシウム(2.46g, 0.101mol)とTHF(30mL)の混合液に、30〜40℃に液温を保ちながら、1−ブロモ−3,5−ジフルオロベンゼン(105)(19.5g, 0.101mol)のTHF(80mL)をゆっくりと滴下させてGrignard試薬を調製し、そのまま30℃で1時間攪拌した。その後、前段で得られた化合物(104)(21.4g, 0.0842mol)のTHF溶液を、30〜40℃に保ちながらGrignard試薬に滴下して、そのまま1時間攪拌した。反応終了後、反応液を3N−HCl水溶液にゆっくりと注ぎ、トルエン(300mL)にて抽出して溶液を水で3回洗浄してトルエンを留去してアルコール誘導体(28.4g, 0.0771mol)の残渣を得た。
得られたアルコール誘導体(28.4g, 0.0771mol)のトルエン(100mL)溶液にp−トルエンスルホン酸(0.85g)を加えて、生成した水を除去しながら110℃にて1時間加熱還流した。反応終了後、反応液を水で3回洗浄し、トルエンを留去した後に、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:トルエン)、および再結晶濾過(溶媒:エタノール/ヘプタン=1/1(容量比))を3回行って、トランス体のシクロヘキセン誘導体(16.8g, 0.0478mol)を得た。
得られたシクロヘキセン誘導体(16.8g, 0.0478mol)、トルエン(30mL)/エタノール(60mL)混合溶液に、Raney−Ni触媒(1.68g)を加えて、30℃、0.5MPaの条件にて水素雰囲気下で6時間攪拌した。反応終了後は、反応液中のNi触媒を濾別し、次いで溶媒を留去した後に、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:トルエン/n−ヘプタン=2/1(容量比))にて精製し、トランス体の化合物(106)(8.20g, 0.0233mol;収率28%)を得た。
【0111】
[第三工程] 化合物(107)の合成
窒素雰囲気下で、前段で得られた化合物(106)(8.00g, 0.0227mol)のTHF(80mL)溶液に、−40℃にてn−BuLi/n−ヘキサン溶液(16mL, 1.57mol/L)を滴下し、そのままの温度で1時間攪拌した。次いで、ジブロモジフルオロメタン(5.25g, 0.0250mol)のTHF(10mL)溶液をゆっくりと滴下し、そのままの温度で30分間攪拌した。反応終了後、反応液を水に空けてトルエン(200mL)にて抽出し、水で3回洗浄した後にトルエンを留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:トルエン/ヘプタン=1/1(容量比))にて精製し、化合物(107)(5.68g(純度:31%), 3.66mmol)を得た。
【0112】
[第四工程]
窒素気流下で、3,4,5−トリフルオロフェノール(108)(0.596g, 4.03mmol)、炭酸カリウム(1.06g, 7.69mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(0.117g, 0.366mmol)およびDMF(30mL)の混合溶液を40℃にて30分間加熱攪拌した。次いで、前段で得られた化合物(107)(5.68g(純度:31%), 3.66mmol)のDMF(20ml)溶液をゆっくりと加え、90℃にて1時間加熱攪拌した。反応終了後、反応液を水に空け、トルエン(200mL)にて抽出して、重曹水で1回、水で3回洗浄した後にトルエンを留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:トルエン/ヘプタン=2/1(容量比))にて目的物を単離し、さらに再結晶濾過(溶媒:ヘプタン/エタノール=1/1(容量比))にて精製して、標題化合物(1−1−a)(0.221g, 0.403mmol, 収率:11%)を得た。
【0113】
H−NMR(δppm、CDCl): 0.797−0.825(t, 3H), 0.947−0.962(m, 2H), 1.16−1.32(m, 11H), 1.85−1.92(m, 5H), 2.40−2.42(tt, 1H), 3.20−3.25(t, 2H), 4.00−4.15(d, 1H) 6.75−6.77(d, 2H), 6.87−6.90(dd, 2H).
19F−NMR(δppm、CDCl): -62.1−-62.2(t, 2F), -111.9−-112.0(dt, 2F), 133.0−-133.1(dd, 2F), -163.7−-163.8(tt, 1F).
【0114】
得られた化合物(1−1−a)の相転移温度は以下の通りであった。測定は、Diamond−DSC(パーキンエルマー製)を用いて行った。
相転移温度:C 70.9 C 74.8 N 121.9 Iso。
【0115】
合成例1で得られた化合物(1−1−a)の10重量%と後述の母液晶の90重量%とを混合して組成物Aを調整し、混合比と測定値の結果から、外挿法により算出した値を以下に示す。
NI=88.7℃、Δn=0.097、Δε=33.4
【0116】
[合成例2]
化合物(1−2−a)の合成


(一般式(1−2)で、R=C11、X=Y=F である化合物)
【0117】
合成スキームを下記に示す。

【0118】
[第一工程] 化合物(113)の合成
ブロモベンゼン誘導体(111)(50.0g, 0.166mol)、ボロン酸誘導体(112)(28.7g, 0.183mol)、炭酸カリウム(34.4g, 0.249mol)、トリフェニルホスフィン(0.871g, 0.00332mol)、トルエン(100mL)、エタノール(100mL)、水(10mL)の混合溶液に、Pd(PPhCl(1.16g, 0.00166mol)を加えて、80℃で8時間加熱攪拌した。反応終了後に、反応液を水に空けてトルエン(100mL)を加え、重曹水で1回、水で3回洗浄した後に溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘプタン)にて目的物を単離し、さらに再結晶濾過(溶媒:ヘプタン/エタノール=1/1(容量比))にて精製して、化合物(113)(32.4g, 0.113mol, 収率:68%)を得た。
【0119】
[第二工程] 化合物(114)の合成
窒素雰囲気下で、マグネシウム(2.59g, 0.107mol)のTHF(5mL)溶液に、前段で得られた化合物(113)(25.5g, 0.526mol)のTHF(50mL)溶液を少量加えて加熱することによってグリニァール反応を開始させた。反応温度を20〜30℃に保ちながら、残りの化合物(113)のTHF溶液をゆっくりと滴下し、そのままの温度で1時間攪拌した。次いで、反応温度を0℃まで冷却し、ホルミルピペリジン(15.1g, 0.133mol)のTHF(30mL)溶液をゆっくりと滴下し、そのままの温度で1時間攪拌した。反応終了後、反応液を1N−HCl水溶液に空け、トルエン(200mL)にて抽出し、重曹水で1回、水で3回洗浄した後にトルエンを留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:トルエン)にて精製し、化合物(114)(11.2g, 47.4mmol;収率42%)を得た。
【0120】
[第三工程] 化合物(116)の合成
前段で得られた化合物(114)(11.2g, 47.5mmol)、化合物(115)(8.32g, 56.9mmol)のトルエン(80mL)に、p−トルエンスルホン酸水和物(0.30g)を加えて、dean-stark-trapで系内に生成した水を取り除きながら110℃で2時間加熱攪拌した。反応終了後、反応液を水にあけてトルエン(100mL)を加え、重曹水で1回、水で3回洗浄した後にトルエンを留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:トルエン)にて目的物を単離し、さらに再結晶濾過(溶媒:エタノール/ヘプタン=1/1(容量比))にて精製し、化合物(116)(10.0g, 27.5mmol;収率58%)を得た。
【0121】
[第四工程] 化合物(117)の合成
窒素雰囲気下で、前段で得られた化合物(116)(10.0g, 27.5mmol)のTHF(80mL)溶液に、−40℃にてn−BuLi/n−ヘキサン溶液(21mL, 1.57mol/L)を滴下し、そのままの温度で1時間攪拌した。次いで、ジブロモジフルオロメタン(6.91g, 32.9mmol)のTHF(14mL)溶液をゆっくりと滴下し、そのままの温度で30分間攪拌した。反応終了後、反応液を水に空けてトルエン(200mL)にて抽出し、水で3回洗浄した後にトルエンを留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:トルエン)にて精製し、化合物(117)(13.3g(純度:48%), 12.9mmol)を得た。
【0122】
[第五工程]
窒素気流下で、3,4,5−トリフルオロフェノール(118)(2.11g, 14.2mmol)、炭酸カリウム(3.58g, 25.9mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(0.417g, 1.29mmol)およびDMF(30mL)の混合溶液を40℃にて30分間加熱攪拌した。次いで、前段で得られた化合物(117)(13.3g(純度:48%), 12.9mmol)のDMF(50ml)溶液をゆっくりと加え、90℃にて1時間加熱攪拌した。反応終了後、反応液を水に空け、トルエン(200mL)にて抽出して、重曹水で2回、水で3回洗浄した後にトルエンを留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:トルエン)にて目的物を単離し、さらに再結晶濾過(溶媒:エタノール/酢酸エチル=1/1(容量比))にて精製して、標題化合物(1−2−a)(4.77g, 8.51mmol;収率66%)を得た。
【0123】
H−NMR(δppm、CDCl): 0.900−0.914(t, 3H), 1.09−1.13(m, 2H), 1.28−1.34(m, 6H), 2.11−2.16(m, 1H), 3.53−3.57(t, 2H), 4.24−4.27(dd, 2H), 5.44(s, 1H), 6.98−7.00(dd, 2H), 7.19−7.21(d, 2H), 7.35−7.42(m, 3H).
19F−NMR(δppm、CDCl): -62.3−-62.4(t, 2F), -111.1−-111.2(dt, 2F), 132.9−-133.0(dd, 2F), -136.7−-163.7(tt, 1F).
【0124】
得られた化合物(1−2−a)の相転移温度は以下の通りであった。測定は、Diamond−DSC(パーキンエルマー製)を用いて行った。
相転移温度:C 62.4 N 108.5 Iso。
【0125】
合成例2で得られた化合物(1−2−a)の15重量%と母液晶の85重量%とを混合して組成物Aを調整し、混合比と測定値の結果から、外挿法により算出した値を以下に示す。
NI=96.4℃、Δn=0.137、Δε=39.1
【0126】
化合物(1−2)はR=C11、X=Y=Fの化合物以外にも、R=C、およびCも合成した。得られた化合物(1−2)の相転移温度は以下の通りであった。得られた化合物(1−2)の15重量%と後述の母液晶の85重量%とを混合して組成物Bを調整し、混合比と測定値の結果から、外挿法により算出した値を以下に示す。


尚、母液晶の成分、ネマチック−等方性液体の相転移温度(NI)、光学異方性(Δn)、誘電率異方性(Δε)の測定法については下記に示す。
【0127】
組成物および組成物に含有させる化合物の特性を評価するために、組成物およびこの化合物を測定目的物とする。測定目的物が組成物のときはそのままを試料として測定し、得られた値を記載した。測定目的物が化合物のときは、この化合物(15重量%)を母液晶(85重量%)に混合することによって測定用試料を調製した。測定によって得られた値から外挿法によって化合物の特性値を算出した。(外挿値)={(測定用試料の測定値)−0.85×(母液晶の測定値)}/0.15。この割合でスメクチック相(または結晶)が25℃で析出するときは、化合物と母液晶の割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更した。この外挿法によって化合物に関する上限温度、光学異方性、粘度および誘電率異方性の値を求めた。
【0128】
母液晶の成分は下記のとおりである。各成分の割合は、重量%である。

【0129】
特性値の測定は下記の方法にしたがった。それらの多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。
【0130】
ネマチック相の上限温度(NI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0131】
ネマチック相の下限温度(T;℃):ネマチック相を有する試料をガラス瓶に入れ、0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、Tを≦−20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0132】
粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s):測定にはE型回転粘度計を用いた。
【0133】
粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s):測定はM. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995)に記載された方法に従った。ツイスト角が0°であり、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5μmであるTN素子に試料を入れた。この素子に16Vから19.5Vの範囲で0.5V毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文中の40頁記載の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算で必要な誘電率異方性の値は、この回転粘度を測定した素子を用い、下に記載した方法で求めた。
【0134】
光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率n‖は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率n⊥は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。
【0135】
誘電率異方性(Δε;25℃で測定):2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、そしてツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(10V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0136】
しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が約0.45 / Δn (μm)であり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に印加する電圧(32Hz、矩形波)は0Vから10Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が90%になったときの電圧である。
【0137】
電圧保持率(VHR−1;25℃;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。
【0138】
電圧保持率(VHR−2;80℃;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線で硬化する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。
【0139】
電圧保持率(VHR−3;25℃;%):紫外線を照射したあと、電圧保持率を測定し、紫外線に対する安定性を評価した。大きなVHR−3を有する組成物は紫外線に対して大きな安定性を有する。測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そしてセルギャップは5μmである。この素子に試料を注入し、光を20分間照射した。光源は超高圧水銀ランプUSH−500D(ウシオ電機製)であり、素子と光源の間隔は20cmである。VHR−3の測定では、減衰する電圧を16.7ミリ秒のあいだ測定した。VHR−3は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。
【0140】
電圧保持率(VHR−4;25℃;%):試料を注入したTN素子を80℃の恒温槽内で500時間加熱したあと、電圧保持率を測定し、熱に対する安定性を評価した。大きなVHR−4を有する組成物は熱に対して大きな安定性を有する。VHR−4の測定では、減衰する電圧を16.7ミリ秒のあいだ測定した。
【0141】
応答時間(τ;25℃で測定;ms):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5.0μmであり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に矩形波(60Hz、5V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である。立ち上がり時間(τr:rise time;ミリ秒)は、透過率が90%から10%に変化するのに要した時間である。立ち下がり時間(τf:fall time;ミリ秒)は透過率10%から90%に変化するのに要した時間である。応答時間は、このようにして求めた立ち上がり時間と立ち下がり時間との和である。
【0142】
弾性定数(K;25℃で測定;pN):測定には横河・ヒューレットパッカード株式会社製のHP4284A型LCRメータを用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである水平配向セルに試料を入れた。このセルに0ボルトから20ボルト電荷を印加し、静電容量および印加電圧を測定した。測定した静電容量(C)と印加電圧(V)の値を『液晶デバイスハンドブック』(日刊工業新聞社)、75頁にある式(2.98)、式(2.101)を用いてフィッティングし、式(2.99)からK11およびK33の値を得た。次に同171頁にある式(3.18)に、先ほど求めたK11およびK33の値を用いてK22を算出した。弾性定数は、このようにして求めたK11、K22、およびK33の平均値である。
【0143】
比抵抗(ρ;25℃で測定;Ωcm):電極を備えた容器に試料1.0mLを注入した。この容器に直流電圧(10V)を印加し、10秒後の直流電流を測定した。比抵抗は次の式から算出した。(比抵抗)={(電圧)×(容器の電気容量)}/{(直流電流)×(真空の誘電率)}。
【0144】
ガスクロマト分析:測定には島津製作所製のGC−14B型ガスクロマトグラフを用いた。キャリアーガスはヘリウム(2mL/分)である。試料気化室を280℃に、検出器(FID)を300℃に設定した。成分化合物の分離には、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm;固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。このカラムは、200℃で2分間保持したあと、5℃/分の割合で280℃まで昇温した。試料はアセトン溶液(0.1重量%)に調製したあと、その1μLを試料気化室に注入した。記録計は島津製作所製のC−R5A型Chromatopac、またはその同等品である。得られたガスクロマトグラムは、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積を示した。
【0145】
試料を希釈するための溶媒は、クロロホルム、ヘキサンなどを用いてもよい。成分化合物を分離するために、次のキャピラリカラムを用いてもよい。Agilent Technologies Inc.製のHP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty. Ltd製のBP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)。化合物ピークの重なりを防ぐ目的で島津製作所製のキャピラリカラムCBP1−M50−025(長さ50m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いてもよい。
【0146】
組成物に含有される液晶性化合物の割合は、次のような方法で算出してよい。液晶性化合物はガスクロマトグラフで検出することができる。ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は液晶性化合物の割合(モル数)に相当する。上に記載したキャピラリカラムを用いたときは、各々の液晶性化合物の補正係数を1とみなしてよい。したがって、液晶性化合物の割合(重量%)は、ピークの面積比から算出する。
【0147】
1H−NMR分析:測定装置は、DRX−500(ブルカーバイオスピン(株)社製)を用いた。測定は、実施例等で製造したサンプルを、CDCl3等のサンプルが可溶な重水素化溶媒に溶解し、室温で、500MHz、積算回数24回の条件で行った。なお、得られた核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、mはマルチプレットであることを意味する。また、化学シフトδ値のゼロ点の基準物質としてはテトラメチルシラン(TMS)を用いた。
【0148】
19F−NMR分析:測定装置は、DRX−500(ブルカーバイオスピン(株)社製)を用いた。測定は、実施例等で製造したサンプルを、CDCl3等のサンプルが可溶な重水素化溶媒に溶解し、室温で、500MHz、積算回数24回の条件で行った。なお、得られた核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、mはマルチプレットであることを意味する。また、化学シフトδ値のゼロ点の基準物質としてはトリクロロフルオロメタンを用いた。
【0149】
相構造および相転移温度(℃):以下(1)、および(2)の方法で測定を行った。
(1)偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に化合物を置き、3℃/分の速度で加熱しながら相状態とその変化を偏光顕微鏡で観察し、液晶相の種類を特定した。
(2)パーキンエルマー社製走査熱量計DSC−7システム、またはDiamond DSCシステムを用いて、3℃/分速度で昇降温し、試料の相変化に伴う吸熱ピーク、または発熱ピークの開始点を外挿により求め(on set)、相転移温度を決定した。
【0150】
結晶はKと表し、さらに結晶の区別がつく場合は、それぞれK1またはK2と表した。また、スメクチック相はSm、ネマチック相はNと表した。液体(アイソトロピック)はIと表した。スメクチック相の中で、スメクチックB相、またはスメクチックA相の区別がつく場合は、それぞれSmB、またはSmAと表した。BPはブルー相または光学的に等方性の液晶相を表す。2相の共存状態は(N+I)、(N+BP)という形式で表記することがある。具体的には、(N+I)は、それぞれ非液晶等方相とキラルネマチック相が共存する相を表し、(N+BP)は、BP相または光学的に等方性の液晶相とキラルネマチック相が共存した相を表す。Unは光学的等方性ではない未確認の相を表す。相転移温度の表記として、例えば、「K 50.0 N 100.0 I」とは、結晶からネマチック相への相転移温度(KN)が50.0℃であり、ネマチック相から液体への相転移温度(NI)が100.0℃であることを示す。他の表記も同様である。
【0151】
実施例により本発明を詳細に説明する。本発明は下記の実施例によって限定されない。比較例および実施例における化合物は、下記の表3の定義に基づいて記号により表した。
表3において、1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。実施例において記号の後にあるかっこ内の番号は化合物の番号に対応する。(−)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)であり、液晶組成物には不純物が含まれている。最後に、組成物の特性値をまとめた。
【0152】

【0153】
[比較例1]
国際公開2009/089898パンフレットに開示された組成物の中から実施例5を選んだ。根拠は、この組成物が化合物(1)に類似した化合物であるジオキサン環を有する化合物(3−1)、および化合物(2)を含有しており、その中で最も誘電率異方性が大きいからである。本願と同じ測定条件にて物性の比較をするために、本組成物を調合し、上述した方法により測定した。この組成物の成分および特性は下記のとおりである。
3−HGB(F,F)XB(F,F)−F (3−1−6) 15%
4−HH−V (2−1) 4%
3−HHBH−3 (2) 2%
2−BB(F,F)XB(F,F)−F (3−2−1) 6%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (3−2−1) 5%
2−HHXB(F,F)−F (3−3−1) 13%
3−HHXB(F,F)−F (3−3−1) 14%
5−HHXB(F,F)−F (3−3−1) 13%
1−HHB(F,F)−F (4−6) 6%
2−HHB(F,F)−F (4−6) 8%
3−HHB(F,F)−F (4−6) 9%
5−HHB(F,F)−F (4−6) 5%
NI=78.0℃;Tc≦0℃;Δn=0.079;Δε=13.9.
国際公開2009/089898パンフレットの実施例5の記載ではΔε=18.0(参考値)であったが、本願で上述した方法により測定した結果ではΔε=13.9と文献値より小さい値となった。
【0154】
[実施例1]
本組成物を調合し、上述した方法により測定した。この組成物は上記の比較例1の組成物において化合物(1)に類似した化合物であるジオキサン環を有する化合物(3−1)を第一成分の化合物に置き換えて作製した。この組成物の成分および特性は下記のとおりである。
5−GHB(F,F)XB(F,F)−F (1−1−1) 5%
3−GB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (1−2−1) 3%
4−GB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (1−2−1) 4%
5−GB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (1−2−1) 3%
4−HH−V (2−1) 4%
3−HHBH−3 (2) 2%
2−BB(F,F)XB(F,F)−F (3−2−1) 6%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (3−2−1) 5%
2−HHXB(F,F)−F (3−3−1) 13%
3−HHXB(F,F)−F (3−3−1) 14%
5−HHXB(F,F)−F (3−3−1) 13%
1−HHB(F,F)−F (4−6) 6%
2−HHB(F,F)−F (4−6) 8%
3−HHB(F,F)−F (4−6) 9%
5−HHB(F,F)−F (4−6) 5%
NI=74.7℃;Tc≦−20℃;Δn=0.082;Δε=16.3.
本組成物の組合せによって、比較例1に較べてΔεがかなり大きな値となった。
【0155】
[実施例2]
本組成物を調合し、上述した方法により測定した。この組成物の成分および特性は下記のとおりである。
4−GB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (1−2−1) 4%
5−GB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (1−2−1) 6%
5−HH−V (2−1) 5%
3−HH−V1 (2−1) 8%
3−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (3−1−1) 2%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (3−1−1) 9%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (3−2−1) 12%
1−HHXB(F,F)−F (3−3−1) 8%
3−HHXB(F,F)−F (3−3−1) 15%
3−GHB(F,F)−F (4−1) 3%
4−GHB(F,F)−F (4−1) 8%
5−GHB(F,F)−F (4−1) 12%
2−HHBB(F,F)−F (4−14) 2%
3−HHBB(F,F)−F (4−14) 4%
4−HHBB(F,F)−F (4−14) 2%
NI=75.8℃;Tc≦−30℃;Δn=0.101;Δε=19.8;γ1=211mPa・s
【0156】
[実施例3]
本組成物を調合し、上述した方法により測定した。この組成物の成分および特性は下記のとおりである。
4−GB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (1−2−1) 4%
5−GB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (1−2−1) 5%
5−HH−V (2−1) 8%
3−HH−V1 (2−1) 8%
V−HHB−1 (2−7) 4%
3−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (3−1−1) 2%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (3−1−1) 8%
5−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (3−1−1) 3%
3−HGB(F,F)XB(F,F)−F (3−1−6) 3%
4−HGB(F,F)XB(F,F)−F (3−1−6) 6%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (3−2−1) 10%
1−HHXB(F,F)−F (3−3−1) 6%
3−HHXB(F,F)−F (3−3−1) 13%
3−GHB(F,F)−F (4−1) 3%
4−GHB(F,F)−F (4−1) 7%
5−GHB(F,F)−F (4−1) 10%
NI=75.0℃;Tc≦−30℃;Δn=0.100;Δε=19.9;γ1=181mPa・s
【0157】
[実施例4]
本組成物を調合し、上述した方法により測定した。この組成物の成分および特性は下記のとおりである。
3−GB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (1−2−1) 5%
4−GB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (1−2−1) 3%
5−GB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (1−2−1) 2%
3−HH−V (2−1) 16%
3−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (3−1−1) 3%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (3−1−1) 6%
2−HGB(F,F)XB(F,F)−F (3−1−6) 5%
3−HGB(F,F)XB(F,F)−F (3−1−6) 3%
4−HGB(F,F)XB(F,F)−F (3−1−6) 2%
2−BB(F,F)XB(F,F)−F (3−2−1) 2%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (3−2−1) 6%
3−HHXB(F,F)−F (3−3−1) 3%
3−GHB(F,F)−F (4−1) 4%
4−GHB(F,F)−F (4−1) 8%
5−GHB(F,F)−F (4−1) 12%
3−HHEB(F,F)−F (4−4) 6%
5−HHEB(F,F)−F (4−4) 4%
2−HHBB(F,F)−F (4−14) 2%
3−HHBB(F,F)−F (4−14) 4%
4−HHBB(F,F)−F (4−14) 2%
5−HHBB(F,F)−F (4−14) 2%
NI=83.0℃;Tc≦−20℃;Δn=0.101;Δε=21.1;γ1=227mPa・s
【0158】
[実施例5]
本組成物を調合し、上述した方法により測定した。この組成物の成分および特性は下記のとおりである。
V2−GB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (1−2−1) 5%
2−HH−3 (2−1) 5%
3−HH−V (2−1) 10%
VFF−HH−3 (2−1) 5%
3−HB−O2 (2−2) 2%
5−HBB(F)B−2 (2−14) 5%
3−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (3−1−1) 3%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (3−1−1) 8%
5−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (3−1−1) 9%
4−HBBXB(F,F)−F (3−1−2) 3%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (3−2−1) 16%
V2−BB(F,F)XB(F,F)−F (3−2−1) 4%
3−HHXB(F,F)−F (3−3−1) 9%
3−HHEB(F,F)−F (4−4) 7%
3−HBEB(F,F)−F (4−5) 3%
4−HBEB(F,F)−F (4−5) 3%
5−HBEB(F,F)−F (4−5) 3%
NI=72.5℃;Tc≦−30℃;Δn=0.119;Δε=19.2
【0159】
[実施例6]
本組成物を調合し、上述した方法により測定した。この組成物の成分および特性は下記のとおりである。
4−GB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (1−2−1) 4%
3−GB(F)B(F,F)XB(F)−OCF3 (1−2−3) 2%
3−HH−V (2−1) 17%
1−BB−2V (2−3) 2%
3−HHB−1 (2−7) 3%
3−HHB−O1 (2−7) 2%
2−BB(F)B−3 (2−9) 2%
3−HB(F)HH−5 (2−15) 3%
3−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (3−1−1) 3%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (3−1−1) 10%
5−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (3−1−1) 10%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (3−2−1) 15%
3−HHXB(F,F)−F (3−3−1) 9%
3−HHEB(F,F)−F (4−4) 3%
3−HBEB(F,F)−F (4−5) 3%
4−HBEB(F,F)−F (4−5) 3%
5−HBEB(F,F)−F (4−5) 3%
V−HHB(F,F)−F (4−6) 2%
3−H2HB(F,F)−F (4−7) 2%
3−HBB(F,F)−F (4−9) 2%
NI=79.6℃;Tc≦−20℃;Δn=0.127;Δε=18.0
【0160】
[実施例7]
本組成物を調合し、上述した方法により測定した。この組成物の成分および特性は下記のとおりである。
5−GHB(F,F)XB(F,F)−F (1−1−1) 2%
4−GB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (1−2−1) 3%
5−GB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (1−2−1) 2%
5−HH−V (2−1) 15%
3−HHEBH−3 (2−11) 4%
3−HHEBH−4 (2−11) 3%
3−HHEBH−5 (2−11) 3%
3−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (3−1−1) 3%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (3−1−1) 9%
5−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (3−1−1) 5%
2−BB(F,F)XB(F,F)−F (3−2−1) 3%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (3−2−1) 18%
3−BB(F,F)XB(F)−OCF3 (3−2−3) 8%
1−HHXB(F,F)−F (3−3−1) 8%
3−HHXB(F,F)−F (3−3−1) 14%
NI=83.5℃;Tc≦−30℃;Δn=0.115;Δε=18.4.
【0161】
実施例1から実施例7の組成物は、比較例1の組成物と比べて、大きな誘電率異方性を有する。よって、本発明による液晶組成物は優れた特性を有する。
【産業上の利用可能性】
【0162】
ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、大きな弾性定数、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する、または少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物である。このような組成物を含有する液晶表示素子は、短い応答時間、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、長い寿命などを有するAM素子となるので、液晶プロジェクター、液晶テレビなどに用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一成分として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そしてネマチック相を有する液晶組成物。


ここで、Rは炭素数1から12のアルキルまたは炭素数2から12のアルケニルであり;Rは、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;Rは、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルコキシメチル、または炭素数2から12のアルケニルであり;環A、環B、環C、および環Dは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;Xは、水素またはフッ素であり;Yは、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシであり;Zは独立して、単結合、エチレン、またはカルボニルオキシであり;mは、0、1、または2である。
【請求項2】
第三成分として式(3−1)から式(3−3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項1に記載の液晶組成物。


ここで、R、R、およびRは独立して、炭素数1から12のアルキルまたは炭素数2から12のアルケニルであり;環Eは、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;環Fは、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;X、X、X、X、およびXは独立して、水素またはフッ素であり;Y、Y、およびYは独立して、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである。
【請求項3】
第四成分として式(4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項1または2に記載の液晶組成物。


ここで、Rは炭素数1から12のアルキルまたは炭素数2から12のアルケニルであり;環Gは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;Xは水素またはフッ素であり;Yは、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシであり;Zは独立して、単結合、エチレン、またはカルボニルオキシであり;nは、1、2、または3である。
【請求項4】
第一成分が、式(1−1−1)、式(1−2−1)、および式(1−3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項1から3のいずれか1項に記載の液晶組成物。


ここで、Rは炭素数1から12のアルキルまたは炭素数2から12のアルケニルである。
【請求項5】
第二成分が式(2−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項1から4のいずれか1項に記載の液晶組成物。



ここで、Rは、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;Rは、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルコキシメチル、または炭素数2から12のアルケニルである。
【請求項6】
第三成分が、式(3−1−1)から式(3−1−3)、式(3−2−1)、および式(3−3−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項2から5のいずれか1項に記載の液晶組成物。




ここで、R、RおよびRは独立して、炭素数1から12のアルキルまたは炭素数2から12のアルケニルである。
【請求項7】
第三成分が式(3−1−1)から式(3−1−3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項6に記載の液晶組成物。
【請求項8】
第四成分が式(4−1)から式(4−11)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項3から7のいずれか1項に記載の液晶組成物。




ここで、Rは炭素数1から12のアルキルまたは炭素数2から12のアルケニルである。
【請求項9】
液晶組成物の全重量に基づいて、第一成分の割合が5重量%から30重量%の範囲であり、第二成分の割合が5重量%から40重量%の範囲であり、第三成分の割合が10重量%から60重量%の範囲であり、そして第四成分の割合が5重量%から50重量%の範囲である請求項3から8のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項10】
式(1−1)で表される化合物。


ここで、Rは炭素数1から12のアルキルまたは炭素数2から12のアルケニルであり;Xは水素またはフッ素であり;Yは、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである。
【請求項11】
式(1−2)で表される化合物。


ここで、Rは炭素数1から12のアルキルまたは炭素数2から12のアルケニルであり;Xは水素またはフッ素であり;Yは、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか1項に記載の液晶組成物、または請求項10または11に記載の化合物を含有する液晶表示素子。
【請求項13】
液晶表示素子の動作モードが、TNモード、OCBモード、IPSモード、FFSモード、またはPSAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である請求項12に記載の液晶表示素子。

【公開番号】特開2011−153202(P2011−153202A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15041(P2010−15041)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】