説明

液晶吐出装置および液晶吐出装置を使用した液晶パネルの製造方法

【課題】目標量の液晶を安定的に吐出すること。
【解決手段】電源回路11から圧電素子10に駆動電圧が印加されたときにはプッシャ36が下降した後に上昇する。このプッシャ36の下降時にはダイヤフラム16が押圧されることに基づいて圧力室13内の液晶が吐出口14から吐出され、プッシャ36の上昇時にはダイヤフラム16が弾性復帰することに基づいて液晶室23内の液晶が圧力室13内に補充される。この圧力室13内に液晶が補充されたときには電圧検出器38から出力される電圧信号が標準値と比較され、プッシャ36を下降させるための吐出電圧が両者の比較結果に応じて補正される。このため、プッシャ36から圧力室13内の液晶に加わる圧力が液晶の現在の充填量に応じてコントロールされるので、圧力室13の吐出口14から目標量の液晶を安定的に吐出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶パネルの基板に液晶を吐出する液晶吐出装置および液晶吐出装置を使用した液晶パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記液晶吐出装置にはシリンダチューブの内周面に沿ってピストンを移動操作することに基づいてシリンダチューブ内の液晶を加圧し、シリンダチューブのノズルに液晶の滴を形成する構成のものがある。このピストンはボールネジに螺合されたものであり、ボールネジをステッピングモータによって回転操作することに基づいて移動操作される。この従来の液晶吐出装置の場合にはシリンダチューブに圧電素子が固定されており、圧電素子からシリンダチューブに振動を加えることに基づいて液晶の滴をノズルから切り離し、ノズルの下方の基板上に落下させることに基づいて基板に液晶を塗布している。
【特許文献1】特開2003−57666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の液晶吐出装置ではピストンの移動量が予め決められた単位値となるようにステッピングモータの回転量を制御することに基づいて液晶の滴の体積をコントロールしているので、ピストンからシリンダチューブ内の液晶に加わる圧力が設定値に対してばらついてしまう。このため、液晶の滴の体積が一定にならないので、目標量の液晶を安定的に吐出することができない。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は目標量の液晶を安定的に吐出することができる液晶吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の液晶吐出装置は、一面が開口する空間状をなすものであって液晶が充填された圧力室と、前記圧力室に接続されたものであって前記圧力室の内部に充填された液晶を前記圧力室の外部に吐出するための吐出口と、前記圧力室の一面を塞ぐものであって圧力を受けることに基づいて弾性的に変形するダイヤフラムと、前記圧力室に液晶通路を介して接続されたものであって前記圧力室の内部に補充する液晶が貯留された液晶室と、前記ダイヤフラムを前記圧力室の一面で前記圧力室の外部から内部に向けて押圧することに基づいて前記圧力室内を加圧するプッシャと、前記プッシャを前記圧力室の外部から内部に向けて往動操作することに基づいて前記圧力室の内部に充填された液晶を前記プッシャの加圧力で前記吐出口から前記圧力室の外部に吐出するものであって前記プッシャを前記圧力室の内部から外部に向けて復動操作することに基づいて前記ダイヤフラムを弾性復帰させると共に前記液晶室内の液晶を前記液晶室内から前記液晶通路を通して前記圧力室内に補充する圧電素子と、前記プッシャが前記圧力室の外部から内部に向けて往動した後に前記圧力室の内部から外部に向けて復動するように前記圧電素子に駆動電圧を印加する電源回路と、前記圧力室内の圧力の大きさに応じた圧力信号を出力する圧力検出器と、前記液晶室内から前記圧力室内に液晶が補充された後から前記圧力室内の液晶が前記吐出口から吐出される前までの期間内で前記圧力検出器から出力される圧力信号を検出し圧力信号の検出結果を前記圧力室内に予め決められた定量の液晶が充填されているときの圧力である標準値と比較する比較手段と、前記プッシャを前記圧力室の外部から内部に向けて往動させるための駆動電圧の大きさを前記比較手段の比較結果に応じて補正し前記電源回路から前記圧電素子に印加される駆動電圧の大きさを補正結果に応じて制御する電圧制御手段を備えたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0006】
電源回路から圧電素子に駆動電圧が印加されたときにはプッシャが圧力室の外部から内部に向けて往動した後に圧力室の内部から外部に向けて復動する。このプッシャの往動時にはダイヤフラムが圧力室の外部から内部に向けて押圧されることに基づいて圧力室内が加圧され、圧力室の内部に充填された液晶がプッシャの加圧力で圧力室の吐出口から圧力室の外部に吐出される。このプッシャの往動時にはダイヤフラムが弾性復帰し、液晶室内の液晶が液晶通路を通して圧力室内に補充される。この圧力室内に液晶が補充されたときには圧力検出器から出力される圧力信号が標準値と比較される。この標準値は圧力室内に予め決められた定量の液晶が充填されているときの圧力に相当するものであり、圧力信号が標準値と比較されたときには駆動電圧の大きさが両者の比較結果に応じて補正される。この駆動電圧はプッシャの往復方向の移動量に相当するものであり、駆動電圧が補正されたときには電源回路から圧電素子に印加される駆動電圧の大きさが補正結果に応じて制御される。このため、プッシャから圧力室内の液晶に加わる圧力が液晶の現在の充填量に応じてコントロールされるので、圧力室の吐出口から目標量の液晶が安定的に吐出される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[実施例1]
ベース1は、図1に示すように、左右方向へ直線的に延びるものであり、ベース1の左端部には左ガイドレール2が固定され、ベース1の右端部には右ガイドレール3が固定されている。これら左ガイドレール2および右ガイドレール3のそれぞれは前後方向へ直線的に延びるものであり、ベース1と左ガイドレール2と右ガイドレール3相互間には空間状の作業領域4が形成されている。この作業領域4は基板に相当するCF基板5がセットされるものである。このCF基板5は赤青緑の3原色のカラーフィルターが規則的に配列されたものであり、CF基板5には複数のセル領域6が形成されている。これら複数のセル領域6のそれぞれは紫外光硬化型の接着剤材料をCF基板5にスクリーン印刷することから構成されたものであり、複数のセル領域6のそれぞれには液晶が左右方向に複数列および前後方向に複数段に塗布される。
【0008】
左ガイドレール2には、図1に示すように、スライドレール7の左端部が前後方向へ直線的にスライド可能に装着され、右ガイドレール3にはスライドレール7の右端部が前後方向へ直線的にスライド可能に装着されている。このスライドレール7は左右方向へ直線的に延びるものであり、Y駆動機構を介してY方向モータの回転軸に連結されている。このY方向モータはスライドレール7を左ガイドレール2および右ガイドレール3の双方に沿って前後方向へ移動操作するものであり、サーボモータから構成されている。このY方向モータはマイクロコンピュータを主体に構成された制御回路8(図2参照)に接続されている。この制御回路8はCPUとROMとRAMを有するものであり、Y方向モータの回転量を正方向および逆方向のそれぞれに制御することに基づいてスライドレール7を前後方向に位置制御する。この制御回路8は比較手段と電圧制御手段とモータ制御手段のそれぞれに相当するものである。
【0009】
スライドレール7には、図1に示すように、複数の液晶吐出装置9のそれぞれが左右方向へ直線的にスライド可能に装着されており、複数の液晶吐出装置9のそれぞれはX駆動機構を介してX方向モータの回転軸に連結されている。これら複数のX方向モータのそれぞれは液晶吐出装置9をスライドレール7に沿って左右方向へ移動操作するものであり、サーボモータから構成されている。これら複数のX方向モータのそれぞれは制御回路8に接続されており、制御回路8は複数のX方向モータのそれぞれの回転量を正方向および逆方向のそれぞれに制御することに基づいて複数の液晶吐出装置9のそれぞれを左右方向に位置制御し、Y方向モータの回転量を正方向および逆方向のそれぞれに制御することに基づいて複数の液晶吐出装置9をまとめて前後方向に位置制御する。
【0010】
複数の液晶吐出装置9のそれぞれは圧電素子10(図2参照)を駆動源として液晶を吐出するものであり、複数の圧電素子10のそれぞれは、図2に示すように、電源回路11に接続されている。これら複数の電源回路11のそれぞれは圧電素子10に駆動電圧を印加するものであり、制御回路8は複数の電源回路11のそれぞれを駆動制御しながら複数の液晶吐出装置9のそれぞれを位置制御することに基づいてCF基板5の複数のセル領域6内のそれぞれに液晶を複数列複数段に塗布する。このCF基板5は別の基板に相当するTFT基板が接合されるものであり、CF基板5の複数のセル領域6内のそれぞれに塗布された液晶はCF基板5およびTFT基板が相互に接合されることに基づいてセル領域6内に封入される。このTFT基板は複数のTFTアレイが形成されたものである。これら複数のTFTアレイのそれぞれはCF基板5およびTFT基板が相互に接合されることに基づいてセル領域6に対向するものであり、液晶パネルはCF基板5およびTFT基板を相互に接合した状態で両者を複数のセル領域6のそれぞれで切断することに基づいて製造される。以下、液晶吐出装置9の詳細構成について説明する。
【0011】
ノズルプレート12には、図2に示すように、圧力室13と吐出口14と液晶通路15のそれぞれが形成されている。圧力室13は上面および下面のそれぞれが開口する空間状をなすものであり、圧力室13の水平方向の断面は上から下に向けて直径寸法が小さくなる円形状に設定されている。吐出口14は上面および下面のそれぞれが開口する通路状をなすものである。この吐出口14の水平方向の断面は上下方向の全域で直径寸法が一定な円形状に設定されており、吐出口14の上端部は圧力室13の下端部に接続されている。液晶通路15は上面が開口する溝状をなすものであり、液晶通路15の一端部は圧力室13に接続されている。
【0012】
ノズルプレート12の上面には、図2に示すように、ダイヤフラム16が固定されている。このダイヤフラム16は圧力を受けて弾性的に変形するゴム等のフィルムからなるものであり、圧力室13の上面および液晶通路15の上面のそれぞれはダイヤフラム16によって閉鎖されている。ノズルプレート12にはダイヤフラム16の上からベースプレート17が固定されている。このベースプレート17にはシリンダ台18が固定されており、ダイヤフラム16にはシリンダ台18の下方に位置して開口部19が形成されている。このシリンダ台18は上面および下面のそれぞれが開口する通路状の液晶注入口20を有するものであり、液晶注入口20の下面はダイヤフラム16の開口部19を通して液晶通路15に接続されている。
【0013】
シリンダ台18には、図2に示すように、シリンダチューブ21が固定されている。このシリンダチューブ21は上下方向へ延びる円筒状をなすものであり、液晶供給口22および液晶室23を有している。液晶供給口22は上面および下面のそれぞれが開口する通路状をなすものであり、シリンダ台18の液晶注入口20に接続されている。これら液晶注入口20および液晶供給口22のそれぞれは水平方向の断面が円形状をなすものであり、液晶供給口22の直径寸法は液晶注入口20の直径寸法に比べて大きく設定されている。液晶室23は液晶注入口20および液晶供給口22のそれぞれに比べて直径寸法が大きな空間部を称するものであり、液晶室23には液晶タンクが接続されている。この液晶タンクは液晶が貯留されたものであり、液晶室23の内部には液晶タンクから液晶が補充される。
【0014】
シリンダチューブ21の液晶室23内には、図2に示すように、円柱状のピストン24が挿入されており、液晶室23内にはピストン24の上方に位置して空間状の加圧室25が形成されている。このピストン24の外周面は液晶室23の壁面に面接触しており、ピストン24はピストン24の外周面が液晶室23の壁面に案内されることに基づいて上下方向へスライド可能にされている。シリンダチューブ21にはキャップ26が装着されている。このキャップ26はシリンダチューブ21の上面を気密状態に塞ぐものであり、キャップ26には円筒状のジョイント27が固定されている。このジョイント27には空気通路に相当するエアパイプ28の出口が接続されており、エアパイプ28の入口にはエアポンプ29の吐出口30が接続されている。このエアポンプ29はポンプモータを駆動源として吸込口31から空気を吸引して吐出口30から吐出するものであり、ポンプモータは一定方向へ一定速度で回転することに基づいて吐出口30から一定流量で空気を吐出する。
【0015】
エアパイプ28には、図2に示すように、電磁制御弁32が介在されている。この電磁制御弁32は電磁式のアクチュエータを有するものであり、電磁制御弁32の弁の開放度合はアクチュエータによって電気的に制御される。この電磁制御弁32はエアポンプ29の吐出口30から加圧室25内に注入される空気の流量を弁の開放度合に応じて調整することに基づいて加圧室25内の圧力を予め決められた一定値にコントロールするものであり、液晶室23内の液晶は加圧室25内の圧力で液晶供給口22と液晶注入口20と液晶通路15のそれぞれを順に通して圧力室13内に供給される。これらエアポンプ29および電磁制御弁32は加圧室25内の圧力が一定になるように加圧室25内にエアパイプ28を通して空気を供給する圧力調整機構を構成するものである。
【0016】
ベースプレート17には、図2に示すように、サポート33が固定されている。このサポート33は上下方向へ延びる柱状をなすものであり、サポート33の上端部には円筒状のブラケット34が固定されている。このブラケット34の内周面には圧電素子10が固定されている。この圧電素子10は水平な金属板および金属板の一面に接合された素子本体を有するものであり、素子本体は圧電セラミックスの両面のそれぞれに電極を接続することから構成されている。この素子本体は直流の駆動電圧が印加されることに基づいて水平な自然状態から縮小または伸長するものであり、素子本体が縮小または伸長したときには金属板が水平な自然状態から下方へ突出するように振動する。この素子本体は素子本体に印加される駆動電圧が大きくなることに応じて縮小度合または伸長が高まるものであり、金属板の下方への振幅は駆動電圧が大きくなることに応じて大きくなる。
【0017】
ベースプレート17には、図2に示すように、圧力室13の上方に位置して円形状の開口部35が形成されており、開口部35内には円柱状をなす樹脂製のプッシャ36が挿入されている。このプッシャ36の上端部は圧電素子10の金属板に接合され、プッシャ36の下端部はダイヤフラム16に接合されており、圧電素子10の金属板が下方へ振動したときにはプッシャ36が下降することに基づいてダイヤフラム16を下方へ弾性的に押圧し、圧力室13の容積はダイヤフラム16が下方へ押圧されることに応じて小さくなり、圧力室13内の圧力は圧力室13の容積が小さくなることに応じて高まる。
【0018】
圧電素子10には、図2に示すように、電源回路11が接続されている。この電源回路11は、図3に示すように、圧電素子10の素子本体に駆動電圧を一定の時間的な周期Tで印加するものであり、周期Tには引込み期間Tbと吐出期間Tdと補充期間Tsと待機期間Twが設定されている。これら引込み期間Tb〜待機期間Twのそれぞれは固定的な長さに設定されたものであり、引込み期間Tbを除く残りの吐出期間Tdと補充期間Tsと待機期間Twのそれぞれでは相互に異なる大きさの駆動電圧が圧電素子10の素子本体に印加される。
【0019】
引込み期間Tbは、図3に示すように、圧電素子10の駆動電圧を引込み値Vb(=0V)に設定する期間であり、引込み期間Tbでは圧電素子10からプッシャ36に下方への押圧力および上方への引張力のそれぞれが作用することなくプッシャ36がダイヤフラム16を介して圧力室13内の圧力に応じた高さに移動する。この引込み期間Tbでは圧力室13内および吐出口14内のそれぞれに液晶が充填されており、圧力室13内の圧力は、図4の(a)に示すように、吐出口14の下面からΔHだけ高い位置まで液晶が充填される大きさに設定されている。
【0020】
吐出期間Tdは、図3に示すように、圧電素子10の駆動電圧を吐出値Vdに設定する期間である。この吐出期間Tdでは圧電素子10の金属板が吐出値Vdに応じて下方へ振動することに基づいてプッシャ36が吐出値Vdに応じた位置に下降し、図4の(b)に示すように、ダイヤフラム16がプッシャ36によって下方へ押圧されることに基づいて圧力室13内の液晶および吐出口14内の液晶のそれぞれが吐出口14から下方へ吐出される。補充期間Tsは、図3に示すように、圧電素子10の駆動電圧を吐出値Vdから時間の経過に比例して小さくし、プッシャ36を上昇操作する期間であり、吐出口14は、図4の(c)に示すように、吐出期間Tdから補充期間Tsに移行することに基づいて液晶の吐出を停止する。この補充期間Tsではプッシャ36からダイヤフラム16に作用する押圧力が時間の経過に比例して小さくなり、ダイヤフラム16が時間の経過に比例して弾性復帰することに応じて圧力室13の容積が大きくなるので、液晶室23内の液晶が加圧室25内の圧力で圧力室13内に補充される。図4の(d)は補充期間Tsでの液晶の補充状態を示すものであり、液晶の補充中には液晶が粘性で吐出口14の下面から下方へ膨らむように突出する。
【0021】
待機期間Twは、図3に示すように、圧電素子10の駆動電圧を補充期間Tsが終了したときの大きさである待機値Vwに設定する期間であり、待機期間Twでは補充期間Tsが終了したときの高さにプッシャ36が停止する。この待機期間Twでは、図4の(d)に示すように、液晶が粘性で吐出口14の下面から下方へ膨らむように突出しており、次の周期の引込み期間Tbで圧電素子10の駆動電圧が待機値Vwから引込み値Vb(=0V)に瞬時に下降したときには、図4の(a)に示すように、吐出口14の下面からΔHだけ高い位置に液晶が引込まれる。
【0022】
圧電素子10および電源回路11相互間の給電路には、図2に示すように、スイッチング素子に相当するトランジスタ37が介在されている。このトランジスタ37は給電路を閉成するオン状態および給電路を開放するオフ状態相互間で切換えられるものであり、圧電素子10にはトランジスタ37のオン状態で電源回路11から駆動電圧が印加され、トランジスタ37のオフ状態で駆動電圧が遮断される。このトランジスタ37は制御回路8に接続されており、制御回路8はトランジスタ37をオンオフすることに基づいて圧電素子10を運転状態および停止状態相互間で制御する。
【0023】
制御回路8には、図2に示すように、圧力検出器に相当する電圧検出器38が接続されている。この電圧検出器38は圧電素子10の素子本体の端子間電圧に応じたレベルの電圧信号Sを出力するものであり、制御回路8は電圧検出器38から出力される電圧信号Sの大きさに応じて電源回路11を制御し、圧電素子10の駆動電圧の大きさを調整する。電源回路11はDC−DCコンバータを有するものであり、圧電素子10の駆動電圧の大きさはDC−DCコンバータのスイッチング素子のオン時間を制御することで調整される。電圧検出器38は圧電素子10に発生する逆起電力の電圧の大きさを検出するものであり、電圧検出器38から出力される電圧信号Sは圧力室13内の圧力の大きさに応じた圧力信号に相当する。
【0024】
図5は制御回路8のROMに予め記録された運転制御プログラムを説明するためのフローチャートであり、以下、制御回路8の処理内容を図5のフローチャートに基づいて説明する。制御回路8のCPUはステップS1の初期設定処理で引込み期間Tbと吐出期間Tdと補充期間Tsと待機期間Twと吐出電圧VdのそれぞれをROMに予め記録された標準値に設定し、ステップS2でタイマTを「0」にリセットする。このタイマTはCPUが予め決められた一定の時間間隔でタイマ割込み処理を起動し、タイマ割込み処理を起動する毎に予め決められた単位値だけ加算するものであり、CPUはステップS2でタイマTをリセットしたときにはステップS3へ移行し、電圧検出器38から出力される電圧信号Sを検出する。この状態ではトランジスタ37がオフされることに基づいて圧電素子10の駆動電圧を「0V」に設定する引込み期間Tbが開始されており、電圧信号Sは引込み期間Tbで検出される。
【0025】
引込み期間Tbで圧力室13内に標準量の液晶が充填されている場合にはダイヤフラム16からプッシャ36を通して圧電素子10に上方への押圧力および下方への引張力のそれぞれが作用しておらず、圧力室13内に標準量を上回る多量の液晶が充填されている場合にはダイヤフラム16からプッシャ36を通して圧電素子10に上方への押圧力が作用しており、圧力室13内に標準量を下回る少量の液晶が充填されている場合にはダイヤフラム16からプッシャ36を通して圧電素子10に下方への引張力が作用している。従って、圧力室13内に標準量の液晶が充填されている場合には電圧信号Sの検出結果が標準値Soと同一になり、圧力室13内に多量の液晶が充填されている場合には電圧信号Sの検出結果が標準値Soより大きくなり、圧力室13内に少量の液晶が充填されている場合には電圧信号Sの検出結果が標準値Soより小さくなる。
【0026】
CPUはステップS3で電圧信号Sを検出すると、ステップS4で電圧信号Sの検出結果をROMに予め記録された標準値Soと比較する。この標準値Soは、上述したように、圧力室13内に予め決められた定量の液晶が充填されているときの圧力に相当するものであり、CPUはステップS4で電圧信号Sの検出結果が標準値Soと同一であることを判断したときにはステップS8へ移行し、電圧信号Sの検出結果が標準値Soと相違していることを判断したときにはステップS5で電圧信号Sの検出結果が標準値Soより大きいか否かを判断する。
【0027】
CPUは圧力室13内に多量の液晶が充填されている場合にはステップS5で「電圧信号S>標準値So」であることを判断し、ステップS6で吐出電圧Vdの初期設定結果を補正してステップS8へ移行する。この処理は電圧信号Sの検出結果から標準値Soを減算することに基づいて偏差ΔSを算出し、偏差ΔSの算出結果にROMに予め記録された定数kを乗算することに基づいて補正量ΔV(=kΔS)を演算し、吐出電圧Vdの初期設定結果から補正量ΔVの演算結果を減算することで行われるものであり、引込み期間Tbでの液晶の充填量が多量である場合には吐出電圧Vdが初期設定結果より小さくなるように補正される。
【0028】
CPUは圧力室13内に少量の液晶が充填されている場合にはステップS5で「電圧信号S>標準値So」ではないことを判断し、ステップS7で吐出電圧Vdの初期設定結果を補正してステップS8へ移行する。この処理は標準値Soから電圧信号Sの検出結果を減算することに基づいて偏差ΔSを算出し、偏差ΔSの算出結果に定数kを乗算することに基づいて補正量ΔV(=kΔS)を演算し、吐出電圧Vdの初期設定結果に補正量ΔVの演算結果を加算することで行われるものであり、引込み期間Tbでの液晶の充填量が少量である場合には吐出電圧Vdが初期設定結果より大きくなるように補正される。
【0029】
CPUはステップS8へ移行すると、タイマTの加算結果を引込み期間Tbの設定結果と比較する。ここで「T=Tb」を判断したときにはステップS9へ移行し、タイマTを「0」にリセットする。そして、ステップS10でトランジスタ37をオンし、ステップS11の吐出処理で圧電素子10に吐出電圧Vdの設定結果に応じた大きさの駆動電圧が印加されるように電源回路11を駆動制御する。この吐出電圧Vdは直前の引込み期間Tbでの液晶の充填量に応じて設定されたものであり、液晶の充填量が標準値であるときにはプッシャ36の下降量が標準値に設定され、液晶の充填量が多量であるときにはプッシャ36の下降量が標準値に比べて小さく設定され、液晶の充填量が少量であるときにはプッシャ36の下降量が標準値に比べて大きく設定される。即ち、ステップS11の吐出処理ではプッシャ36が液晶の現在の充填量に応じた高さまで下降操作されることに基づいて圧力室13内の液晶の現在の充填量に拘らず吐出口14から予め決められた一定量の液晶が吐出される。
【0030】
CPUはステップS12へ移行すると、タイマTの加算結果を吐出期間Tdの設定結果と比較する。ここで「T=Td」を判断したときにはステップS13へ移行し、タイマTを「0」にリセットする。そして、ステップS14の補充処理へ移行し、圧電素子10に印加される駆動電圧が予め決められた傾き(ボルト/時間)で低下するように電源回路11を駆動制御する。この補充処理では圧電素子10の駆動電圧が予め決められた傾きで低下することに応じてプッシャ36が上昇し、液晶室23内の液晶が加圧室25内の圧力で圧力室13内に補充される。
【0031】
CPUはステップS15へ移行すると、タイマTの加算結果を補充期間Tsの設定結果と比較する。ここで「T=Ts」を判断したときにはステップS16へ移行し、タイマTを「0」にリセットする。そして、ステップS17の待機処理へ移行し、圧電素子10に印加される駆動電圧が補充期間Tsが終了した時点での値となるように電源回路11を駆動制御する。即ち、待機電圧Vwは吐出電圧Vdの大きさに応じて変化する。
【0032】
CPUはステップS18へ移行すると、タイマTの加算結果を待機期間Twの設定結果と比較する。ここで「T=Tw」を判断したときにはステップS19へ移行し、トランジスタ37をオフすることに基づいて圧電素子10の駆動電圧を「0V」に設定する。そして、ステップS2に復帰し、ステップS2〜ステップS19を繰返す。
【0033】
上記実施例1によれば次の効果を奏する。
液晶室23内から圧力室13内に液晶が補充された後から圧力室13内の液晶が吐出口14から吐出される前までの引込み期間Tbで電圧検出器38から出力される電圧信号Sを検出し、電圧信号Sの検出結果を標準値Soと比較した。この比較結果に応じてプッシャ36を下降操作するための吐出電圧Vdの大きさを補正し、吐出期間Tdで電源回路11から圧電素子10に印加される吐出電圧Vdの大きさを補正結果に応じて制御した。このため、吐出期間Tdでプッシャ36から圧力室13内の液晶に加わる圧力が液晶の現在の充填量に応じてコントロールされるので、圧力室13の吐出口14から目標量の液晶を安定的に吐出することができる。
【0034】
圧力室13内の圧力として圧電素子10に発生する逆起電力の電圧を電圧検出器38によって検出した。このため、圧力室13内の圧力を簡素な構成で検出することができるので、部品点数が削減される。加圧室25内の圧力が一定になるようにエアポンプ29から電磁制御弁32を通して加圧室25内に空気を供給した。このため、圧力室13の吐出口14から液晶を吐出するための吐出条件の再現性が高められるので、圧力室13の吐出口14から吐出される液晶の吐出量が一層高精度にコントロールされる。
[実施例2]
シリンダチューブ21の上端部には、図6に示すように、モータ41が固定されている。このモータ41はステッピングモータからなるものであり、モータ41の回転軸には上下方向へ延びるボールネジ42が連結されている。このボールネジ42はシリンダチューブ21内に挿入されたものであり、モータ41の回転軸が回転することに基づいて軸心線CLを中心に回転する。このボールネジ42にはピストン24が螺合されており、ピストン24はモータ41の回転軸が正方向へ回転することに基づいてボールネジ42に沿って下降し、液晶室23内の液晶に圧力を加える。このモータ41は制御回路8に接続されており、制御回路8はピストン24の移動量が予め決められた単位値となるようにモータ41の回転量を制御することに基づいてピストン24から液晶室23内に液晶に加わる圧力を予め決められた一定値にコントロールする。
【0035】
上記実施例2によれば次の効果を奏する。
ピストン24から液晶室23内の液晶に加わる圧力が一定になるようにモータ41の回転量を制御した。このため、圧力室13の吐出口14から液晶を吐出するための吐出条件の再現性が高められるので、圧力室13の吐出口14から吐出される液晶の吐出量が一層高精度にコントロールされる。
【0036】
上記実施例1〜実施例2のそれぞれにおいては、図5のステップS14の補充処理で圧電素子10の駆動電圧を吐出電圧Vdの設定結果から固定的な待機電圧Vwまで固定的な傾きで低下させる構成としても良い。即ち、補充期間Tsの長さを吐出電圧Vdの補正結果に応じて変化させる構成としても良い。
【0037】
上記実施例1〜実施例2のそれぞれにおいては、圧力室13内に標準値を上回る多量の液晶が充填されている場合には電圧信号Sが標準値Soより小さくなり、圧力室13内に標準値を下回る少量の液晶が充填されている場合には電圧信号Sが標準値Soより大きくなるように設定しても良い。
【0038】
上記実施例1〜実施例2のそれぞれにおいては、制御回路8のROMに吐出電圧Vdおよび電圧信号Sの相関関係を特定するためのテーブルデータを予め記録しておき、図5のステップS6およびステップS7のそれぞれで電圧信号Sの検出結果に応じた吐出電圧VdをROMのテーブルデータから選択する構成としても良い。
【0039】
上記実施例1〜実施例2のそれぞれにおいては、圧電素子10および電源回路11相互間の給電路にトランジスタ37に換えてリレーを介在しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施例1を示す図(液晶パネルの製造装置を示す図)
【図2】液晶吐出装置を示す図
【図3】電源回路から圧電素子に印加される駆動電圧の波形を示す図
【図4】吐出口から液晶が吐出する様子を示す図
【図5】制御回路の処理内容を示すフローチャート
【図6】本発明の実施例2を示す図2相当図
【符号の説明】
【0041】
5はCF基板(基板)、8は制御回路(比較手段、電圧制御手段、モータ制御手段)、9は液晶吐出装置、10は圧電素子、11は電源回路、13は圧力室、14は吐出口、15は液晶通路、16はダイヤフラム、21はシリンダチューブ、23は液晶室、24はピストン、25は加圧室、28はエアパイプ(空気通路)、36はプッシャ、38は電圧検出器(圧力検出器)、41はモータを示している。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面が開口する空間状をなすものであって、液晶が充填された圧力室と、
前記圧力室に接続されたものであって、前記圧力室の内部に充填された液晶を前記圧力室の外部に吐出するための吐出口と、
前記圧力室の一面を塞ぐものであって、圧力を受けることに基づいて弾性的に変形するダイヤフラムと、
前記圧力室に液晶通路を介して接続されたものであって、前記圧力室の内部に補充する液晶が貯留された液晶室と、
前記ダイヤフラムを前記圧力室の一面で前記圧力室の外部から内部に向けて押圧することに基づいて前記圧力室内を加圧するプッシャと、
前記プッシャを前記圧力室の外部から内部に向けて往動操作することに基づいて前記圧力室の内部に充填された液晶を前記プッシャの加圧力で前記吐出口から前記圧力室の外部に吐出するものであって、前記プッシャを前記圧力室の内部から外部に向けて復動操作することに基づいて前記ダイヤフラムを弾性復帰させると共に前記液晶室内の液晶を前記液晶室内から前記液晶通路を通して前記圧力室内に補充する圧電素子と、
前記プッシャが前記圧力室の外部から内部に向けて往動した後に前記圧力室の内部から外部に向けて復動するように前記圧電素子に駆動電圧を印加する電源回路と、
前記圧力室内の圧力の大きさに応じた圧力信号を出力する圧力検出器と、
前記液晶室内から前記圧力室内に液晶が補充された後から前記圧力室内の液晶が前記吐出口から吐出される前までの期間内で前記圧力検出器から出力される圧力信号を検出し、圧力信号の検出結果を前記圧力室内に予め決められた定量の液晶が充填されているときの圧力である標準値と比較する比較手段と、
前記プッシャを前記圧力室の外部から内部に向けて往動させるための駆動電圧の大きさを前記比較手段の比較結果に応じて補正し、前記電源回路から前記圧電素子に印加される駆動電圧の大きさを補正結果に応じて制御する電圧制御手段を備えたことを特徴とする液晶吐出装置。
【請求項2】
前記圧力検出器は、前記圧電素子に発生する逆起電力の電圧を検出する電圧検出器から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶吐出装置。
【請求項3】
シリンダチューブと、
前記シリンダチューブの内部に移動可能に挿入されたものであって、前記シリンダチューブの内部空間を前記液晶室および前記液晶室の内部の液晶に圧力を加える加圧室に区画するピストンと、
前記加圧室に空気通路を介して接続されたものであって、前記加圧室内の圧力が一定になるように前記加圧室内に前記空気通路を通して空気を供給する圧力調整機構を備えたことを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の液晶吐出装置。
【請求項4】
シリンダチューブと、
前記シリンダチューブの内部に移動可能に挿入されたものであって、前記シリンダチューブの内部に前記液晶室を形成するピストンと、
前記液晶室内の液晶が加圧されるように前記ピストンを移動操作するモータと、
前記モータを駆動制御することに基づいて前記ピストンの移動量を制御するモータ制御手段を備えたことを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の液晶吐出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の液晶吐出装置を使用した液晶パネルの製造方法において、
前記液晶吐出装置の吐出口から液晶を吐出することに基づいて基板に液晶を塗布し、
前記基板に液晶を塗布した後に別の基板を接合することを特徴とする液晶パネルの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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