説明

液晶含有組成物、及び液晶表示素子

【課題】低温での高いCR(コントラスト)を実現した液晶含有組成物、及びそれを利用した液晶表示素子を提供すること。
【解決手段】例えば、 実施形態に係る液晶含有組成物4は、例えば、図1に示すように、コレステリック液晶2と、コレステリック液晶2を内包したマイクロカプセル3とを有している。そして、マイクロカプセル3が、ポリウレタン及びポリウレアから選ばれる少なくとも一種からなる壁材成分を含み、且つ当該壁材成分としてシクロ環構造を有するイソシアヌレート体成分とそれ以外のイソシアネートとを含んで構成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶含有組成物、及びこれを利用した液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
コレステリック液晶表示素子は無電源で表示のメモリー性を有すること、偏光板を使用しないため明るい表示が得られること、カラーフィルターを用いずにカラー表示がなされることなどの特徴を有することから近年注目を集めている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特に、コレステリック液晶は螺旋状に配向した棒状分子からなり、その螺旋ピッチに一致した光を干渉反射(選択反射と呼ばれる)する性質を持つ。それゆえ螺旋ピッチを赤色、緑色、青色の波長に相当する大きさに設定することで、カラーフィルターを用いずに色鮮やかなカラー表示が得られるといった特徴を有する。
【0004】
例えば、一対の電極付き基板からなるセル内に封入されたコレステリック液晶は、2種類の配向状態:プレーナ(P)配向、フォーカルコニック(F)配向をとることが知られている。P配向は螺旋軸が基板面に垂直に配向した状態であり選択反射を生じる。F配向は螺旋軸が基板面に平行に配向した状態であり、光を透過する。これら2つの配向状態は電極間に電圧を印加することで相互に遷移させる。
【0005】
それゆえ、上記セルの背面に黒色等の光吸収体を配置することで、P配向時は選択反射色に呈色した明表示を、F配向時には光吸収体の黒色に呈色した暗表示が得られる。上記の配向形態のうち、P配向とF配向は共に無電源で安定に存在される。この性質を利用して無電源で表示を維持するメモリー表示が実現される。
【0006】
一方、液晶の流動を防止し、押し変形や曲げ変形に対する画像の維持性を向上させる目的で、マイクロカプセルに内包させる技術も提案されており、そのマイクロカプセルの壁材成分としてシアヌレート体を用いた技術が提案されている。
【特許文献1】特開平05−134293号公報
【特許文献2】特開平06−226082号公報
【特許文献3】特開平09−015568号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、低温での高いCR(コントラスト)を実現した液晶含有組成物、及びそれを利用した液晶表示素子を提供することである。
【0008】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
コレステリック液晶と、
前記コレステリック液晶を内包する共に、ポリウレタン及びポリウレアから選ばれる少なくとも一種からなる壁材成分を含み、且つ当該壁材成分としてシクロ環構造を有するイソシアヌレート体成分とそれ以外のイソシアネート成分とを含んで構成されるマイクロカプセルと、
を有することを特徴とする液晶含有組成物である。
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記シクロ環構造を有するイソシアヌレート体成分が、下記構造式(1)乃至(2)から選択されるイソシアヌレート体及びその誘導体の少なくとも1種を由来とする成分であることを特徴とする請求項1に記載の液晶含有組成物である。
【0010】
【化1】



【0011】
請求項3に係る発明は、
前記シクロ環構造を有するイソシアヌレート体成分が、イソシアネート全成分に対して5重量%以上含むことを特徴とする請求項1に記載の液晶含有組成物である。
【0012】
請求項4に係る発明は、
一対の電極と、
前記一対の電極に挟持されてなる、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の液晶含有組成物と、
を有することを特徴とする液晶表示素子である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、低温での高いCR(コントラスト)が実現される。
請求項2に係る発明によれば、特に、低温でのCR(コントラスト)の低下が抑制される。
請求項3に係る発明によれば、特に、低温でのCR(コントラスト)の低下が抑制される。
請求項4に係る発明によれば、低温でのCR(コントラスト)の低下が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、実質的に同一の機能・作用を担う部材は、全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0015】
図1は、実施形態に係る液晶含有組成物を示す模式図である。図2は、他の実施形態に係る液晶含有組成物を示す模式図である。
【0016】
実施形態に係る液晶含有組成物4は、例えば、図1に示すように、コレステリック液晶2と、コレステリック液晶2を内包したマイクロカプセル3とを有している。そして、マイクロカプセル3が、ポリウレタン及びポリウレアから選ばれる少なくとも一種からなる壁材成分を含み、且つ当該壁材成分としてシクロ環構造を有するイソシアヌレート体成分とそれ以外のイソシアネートとを含んで構成されている。
【0017】
また、実施形態に係る液液晶含有組成物4は、例えば、図2に示すように、コレステリック液晶5を内容したマイクロカプセル3と、当該マイクロカプセル3を分散・保持させた樹脂部材1とを有する形態であってもよい。
【0018】
なお、実施形態に係る液液晶含有組成物4は、コレステリック液晶2を内包したマイクロカプセル3からなるスラリー状の組成物や、当該スラリー状の組成物をバインダーポリマーと混合したインク組成物としての形態も含むものである。
【0019】
実施形態に係る液晶含有組成物4では、コレステリック液晶2を内容するマイクロカプセル3が上記構成とすることで、マイクロカプセル3によるコレステリック液晶2の配向束縛の影響が低減される。そのため、例えば、黒表示後に白表示を行うと、白表示後に再度白表示を行った場合に比べ、反射率が低下してしまうという、残像現象の発生が抑制される。加えて、CR(コントラスト)も向上される。
特に、マイクロカプセル3を分散・保持する樹脂部材1を有する形態では、液晶(これを内包するマイクロカプセル)の流動性が低減し、押し変形や曲げ変形に対する画像の維持性が向上される一方で、当該樹脂部材1による配向束縛の影響が大きいが、コレステリック液晶2を内容するマイクロカプセル3が上記構成とすることで、残像現象の発生が抑制される。
【0020】
以下、本実施形態に係る液晶含有組成物について詳細に説明する。以下、符号は省略して説明する。
【0021】
まず、コレステリック液晶について説明する。コレステリック液晶は、光学活性化合物を含む液晶材料であり、1)ネマチック液晶にカイラル剤と呼ばれる光学活性化合物等を添加する方法、2)コレステロール誘導体などのようにそれ自身光学活性な液晶材料を用いる方法などによって得られる。前者の場合、ネマチック液晶材料としては、シアノビフェニル系、フェニルシクロヘキサン系、フェニルベンゾエート系、シクロヘキシルベンゾエート系、アゾメチン系、アゾベンゼン系、ピリミジン系、ジオキサン系、シクロヘキシルシクロヘキサン系、スチルベン系、トラン系など公知のネマチック液晶含有組成物が利用される。カイラル剤としてはコレステロール誘導体や、2−メチルブチル基などの光学活性基を有する化合物等が利用される。
【0022】
コレステリック液晶には、色素、粒子などの添加物を加えてもよい。また、架橋性高分子や水素結合性ゲル化剤などを用いてゲル化したものでもよく、また、高分子液晶、中分子液晶、低分子液晶のいずれでもよく、またこれらの混合物でもよい。コレステリック液晶の螺旋ピッチは、カイラル剤の種類や添加量、液晶の材質によって変化させてもよい。選択反射の波長は可視波長域の他、紫外波長域や赤外波長域でもよい。なお、後述する高分子中に分散されたコレステリック液晶滴(マイクロカプセル含む)の平均粒径は、メモリー性を発現するためには、コレステリック液晶の螺旋ピッチの少なくとも3倍以上あることが望ましい。
【0023】
マイクロカプセルについて説明する。
マイクロカプセルは、ポリウレタン及びポリウレアから選ばれる少なくとも一種からなる壁材成分を含み、且つ当該壁材成分としてシクロ環構造を有するイソシアヌレート体成分とそれ以外のイソシアネートとを含んで構成される。また、マイクロカプセルには、必要に応じて、ポリオール成分、垂直配向成分(アルキル基及びフルオロアルキル基などの少なくとも1種)を導入してもよい。
【0024】
マイクロカプセルは、製法自体は公知の方法により形成され得る。具体的には、例えば、芯材(コレステリック液晶)と共に、多価イソシアネート(上記シクロ環構造を有するイソシアヌレート体成分とそれ以外のイソシアネート)及びそれと反応してマイクロカプセル壁を形成する物質(例えば、ポリオール、ポリアミン、2以上のアミノ基を有するプレポリマー、ピペラジン若しくはその誘導体等)を水溶性高分子水溶液(水相)又はカプセル化すべき油性媒体(油相)中に混合し、水中に乳化分散した後、加温することにより水相と油相との界面で高分子形成反応を生じさせ、マイクロカプセル壁を形成することにより得られる。無論、これらに限られるものではない。
【0025】
ここで、シクロ環構造を有するイソシアヌレート体成分の由来となるイソシアヌレート体としては、構造式(1)乃至(2)から選択されるイソシアヌレート体及びその誘導体の少なくとも1種(当該誘導体としては、例えば、メチル−2,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン,1,3,5−トリメチルイソシアネートシクロヘキサンなどのイソシアヌレート体)が好適に挙げられる。なお、下記構造式(1)で示されるイソシアヌレート体は、「タケネートD−127N:武田薬品(株)製」が市販品として挙げられる。また、下記構造式(2)で支援されるイソシアヌレート体は、「ディスモジュールZ4370:住友バイエルウレタン社製」が挙げられる。
【0026】
【化2】

【0027】
シクロ環構造を有するイソシアヌレート体成分の由来となるイソシアヌレート体としては、その他、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート,メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネートなども挙げられる。
【0028】
シクロ環構造を有するイソシアヌレート体成分は、低温でのCR(コントラスト)低下抑制の観点から、イソシアネート全成分に対して、1重量%以上含むことがより望ましく、5重量%以上が特に望ましい。一方で、残像を抑制する観点からは、その上限値は20重量%であることが望ましい。ここで、イソシアネート全成分とは、壁材成分として配合する、上記シクロ環構造を有するイソシアヌレート体成分とイソシアヌレート体成分以外のイソシアネート成分との全成分のことを意味する。
【0029】
一方、上記シクロ環構造を有するイソシアヌレート体成分以外のイソシアネート成分を由来とするイソシアネートとしては、多価イソシアネートが挙げられ、例えば、トリレンジイシシアネート、キシレンジイシシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイシシアネートなどのジイソシアネート,トリイソシアネート,テトライソシアネート等が挙げられる。また、イソシアネートとしては、上記ジイソシアネート、トリイソシアネート、テトライソシアネート等のアダクト体、ビュレット体、シアヌレート体(シクロ環構造を有するイソシアヌレート体成分以外のシアヌレート体)、ポリイソシアネートプレポリマー等も挙げられる。なお、当該イソシアヌレート体成分以外のイソシアネート成分の含有量としては、例えば、全イソシアネート成分から上記イソシアヌレート体成分以外の成分を除いた量となる。
【0030】
また、ポリオール成分としてはポリエステルポリオール成分、ポリエーテルポリオール成分が好適に挙げられるが、特にCR(コントラスト)の向上、残像現象の抑制の点から、ポリエステルポリオール成分が好適である。ポリオール成分は、上記マイクロカプセル原料と共に、ポリオール(例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール)を添加することで、マイクロカプセル壁に含ませる。
【0031】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、二塩基酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等)若しくはそれらのジアルキルエステル、又はそれらの混合物と、グリコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロ−ルヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等)、又はそれらの混合物と、を反応させて得られるポリエステルポリオールが挙げられる。また、ポリエステルポリオールとしては、ラクトン類(ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)等)を開環重合して得られるポリエステルポリオールも挙げられる。
【0032】
一方、ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれらの共重合体などが挙げられる。
【0033】
ポリオール成分の重量平均分子量は、20,000以上1,000,000以下が望ましく、より望ましくは20,000以上500,000以下であり、さらに望ましくは20,000以上50,000以下である。この重量平均分子量が所定値以上であると、特に、効果的に残像現象が低減される一方で、重量平均分子量が大きすぎると溶解性の低下に伴い、溶剤との相様性も低下し、マイクロカプセルを均一に作製することができなくなることがある。
【0034】
ここで、重量平均分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて行う。GPCは、8020シリーズ(東ソー(株)社製)を用い、カラムは、TSKgel、G4000HXL,G2500HXL, G1000HXL(東ソー(株)社製、7.8mmID×30cm)を用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる。実験条件としては、試料濃度を0.2質量%、流速を1ml/min、サンプル注入量を50μl、測定温度を40℃とし、示差屈折率計を用いる。
【0035】
ポリエステルポリオール成分の含有量は、カプセル壁材成分全体に対して1重量%以上50重量%以下であることが望ましく、より望ましくは5重量%以上25重量%以下であり、さらに望ましくは10重量%以上15重量%以下である。含有量が上記範囲であると、効果的に、CR(コントラスト)が向上されると共に、残像現象が低減される。
【0036】
また、垂直配向成分は、上記マイクロカプセル原料と共に、例えば、アルキル基及び/又はフルオロアルキル基と水酸基とを有する化合物よりなる配向材を添加することで、マイクロカプセルに導入される。高分子(マイクロカプセル)が元々持つ水平配向性を、垂直配向成分導入による垂直配向性によって相殺させて配向規制力が弱められる。これによって湾曲のないまっすぐなコレステリック液晶層となり、色純度と表示コントラストが改善される。また、配向規制力が弱いため、高分子に接する液晶分子はいずれの方向に配向してもエネルギー的に差が小さく、それゆえ、P配向・F配向ともに経時的に安定となる。この垂直配向成分についての詳細は、特開2005−316243に記載された事項に準じる。
【0037】
なお、垂直配向成分をマイクロカプセルに導入すると残像現象が生じやすくなる傾向になるが、本実施形態では、当該残像現象が抑制される。
【0038】
上記のように、本実施形態に係る液晶含有組成物は、例えば、コレステリック液晶を内包したマイクロカプセルをバインダ材料中に分散して様々な表面上へ塗布して使用される。これにより、液晶がマイクロカプセルによって保護されているため他の機能層をこの上へ形成されること、圧力や曲げなどの機械強度に優れることなどの特長を有するため利用範囲が広い。また、バインダ材料を硬化性のものを用いることで、層状に形成後、これを硬化すると、コレステリック液晶を内包したマイクロカプセルが分散・保持された樹脂部材が形成される。
【0039】
なお、本実施形態に係る液晶含有組成物は、スクリーン印刷、凸版印刷、凹版印刷、平板印刷、フレクソ印刷などの印刷法や、スピンコート法、バーコート法、ディップコート法、ロールコート法、ナイフコート法、ダイコート法などの塗布法を用いて基板上に塗布して利用する。
【0040】
また、本実施形態に係る液晶含有組成物は、例えば、表示素子、画像・情報記録素子、空間光変調器などに利用される。特に、表示素子、即ち液晶表示素子に利用することがよい。以下、本実施形態に係る液晶表示素子について説明する。
【0041】
本実施形態に係る液晶表示素子は、上記本実施形態に係る液晶含有組成物を一対の電極間に挟持した構成である。具体的には、例えば、図3のように、液晶含有組成物4を、電極11、12がそれぞれ設けられた基板21、22の間に挟持して、駆動回路30によって電圧パルスを与えて表示させる構成となる。表示背景として光吸収部材を液晶含有組成物4と電極12との間、又は基板22の裏面に設けてもよい。基板21、22としては例えば、ガラス、樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォン、ポリカーボネート、ポリオレフィンなどの透明誘電体)が利用される。電極11、12としては、例えば、酸化インジウム錫合金や酸化亜鉛などの透明導電膜が利用される。
【0042】
ここで、図3に示す液晶表示素子は、液晶含有組成物4として、樹脂部材1中にコレステリック液晶2を内容したマイクロカプセル3を分散・保持させた形態を示している。
【0043】
本実施形態に係る液晶表示素子において、上記本実施形態に係る液晶含有組成物はコレステリック液晶のメモリー状態におけるP配向とF配向の光学的差異を際立たせるものであるので、表示モードとしてはこれまで述べてきた選択反射モード以外に、P配向とF配向の光散乱強度の差を利用した散乱−透過モード、旋光度の差を利用した旋光モード、複屈折の差を利用した複屈折モードなどを利用してもよい。この場合、補助部材として偏光板や位相差板と併用してもよい。また、液晶中に2色性色素を加えてゲスト−ホストモードで表示してもよい。
【0044】
本実施形態に係る液晶表示素子の駆動方法としては、1)表示形状にパターニングされた電極間に挟んで駆動するセグメント駆動法、2)交差(例えば直交)する一対のストライプ状電極基板間に液晶含有組成物を挟んで線順次走査して画像を書き込む単純マトリクス駆動法、3)個々の画素ごとに薄膜トランジスタ、薄膜ダイオード、MIM(metal−insulator−metal)素子などの能動素子を設けてこれらの能動素子を介して駆動するアクティブ・マトリクス駆動法、4)光導電体と積層して一対の電極間に挟持して、光像を投影ながら電圧を印加して画像を書き込む光駆動法、5)一対の電極間に挟持した液晶含有組成物を、電圧印加でP配向へ遷移させてその後にレーザーやサーマルヘッドで相転移温度以上へ加熱して画像を書き込む熱駆動法、6)電極基板上へ液晶含有組成物を塗布して、スタイラスヘッドやイオンヘッドで画像を書き込む静電駆動法など、公知の駆動方法が適用される。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。なお、特に断りがない限り、「部」は「質量部」を意味する。
【0046】
[実施例A]
(実施例A1)
ネマチック液晶E7(メルク社製)を86.25部と、カイラル剤R811(メルク社製)を11.0部と、カイラル剤R1011(メルク社製)を2.75部とを混合して、波長650nmを選択反射するコレステリック液晶100部を得た。このコレステリック液晶と、多価イソシアネートとして「タケネートD−110N(三井化学ポリウレタン社製)」8.5部及び「デスモジュールZ4470(住友バイエルウレタン社製)」1.5部と、垂直配向成分の前駆体としてオクタデカノール(アルドリッチ社製)3部と、ポリエステルポリオール(「タケラックA385」三井化学ポリウレタン社製)0.8部と、を、酢酸エチルを1000部中に溶解して油相組成物を調製した。これを1%ポリビニルアルコール水溶液10、000部の中に投入し、ミキサーで撹拌・分散して体積平均粒径が7μmのo/wエマルジョンを作製した。
【0047】
これにポリアリルアミン(日東紡社製)の10%水溶液を100部加え、70℃で2時間加熱してポリウレアを壁材とするマイクロカプセルを作製した。マイクロカプセルを遠沈回収後、ポリビニルアルコール水溶液を加えてマイクロカプセル液晶塗料とした。
【0048】
次に、上記マイクロカプセル液晶塗料を、市販のITO蒸着PET樹脂フィルム上にアプリケータを用いて乾燥膜厚で30μmとなるように塗布した。この上にカーボンブラックを分散したポリビニルアルコール水溶液を乾燥膜厚で3μmとなるように塗布して光吸収層とした。一方、別のITO蒸着PET樹脂フィルムを用意し、この上に2液ウレタン系接着剤を乾燥膜厚で3μmとなるように塗布して、前記上記マイクロカプセル液晶塗料を塗布した基板と貼合して、液晶表示素子を作製した。
【0049】
得られた液晶表示素子について、残像指数、CR(コントラスト)について評価を行った。結果を表1に示す。
【0050】
−CR(コントラスト)−
CRは、上記液晶表示素子サンプルの電圧(V)−反射率(Y)特性を測定し、最大反射率と最小反射率の比をCR(コントラスト)と定義した。液晶表示素子サンプルの上下電極間に、大きさ600V,周波数1kHz,長さ1secの対称矩形波パルス(リセット電圧)を印加して、液晶表示サンプルを一様に明(白)表示(白表示リセット)させ、次に書き込み電圧V(周波数1kHz,長さ200msecの対称矩形波パルス)を印加して、印加終了から3秒後の視感反射率を測定した。この測定を書き込み電圧の大きさを段階的に変えながら繰り返し、電圧−反射率特性Ywr(V)を得た。反射率は分光輝度計CM−2022(ミノルタ社製)を用い、反射率は視感反射率を用いた。このCRの評価を、液晶表示素子を温度10℃に冷却した状態で行った。なお、後述する比較例A1の液晶表示素子のみ、25℃、40℃の状態でもCRの評価をした。
【0051】
(実施例A2〜A3、比較例A1〜A9)
表1に従って、用いる多価イソシアネートを変更した以外は、実施例1と同様にして液晶表示素子を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
上記結果から、比較例A1に示すように、表示素子は温度低下に伴ってコントラストが低下することがわかる。そして、本実施例は、比較例に比べ、低温(本実施例では10℃)で高いコントラストが実現されることがわかる。
【0054】
[実施例B]
(比較例B1、実施例B1乃至B5)
表2に従って、多価イソシアネートとしての「タケネートD−110N(武田薬品工業社製)」及び「タケネートD−147N(武田薬品工業社製)」の配合量を変更した以外は、実施例A1と同様にして液晶表示素子を作製し、評価した。また、コントラストの評価に加え、残像指数の評価も行った。
【0055】
−残像指数−
残像の程度を評価する指標として、残像指数を以下の手順で定義、測定した(図4)。
まず、CR(コントラスト)の評価方法で示したように、白表示リセットによる電圧−反射率特性Ywr(V)を測定する。さらにリセット電圧の大きさを200Vにして、同様の測定を行い、暗(黒)表示リセットによる電流−反射率特性 Ykr(V)を得る。白表示リセットによる電圧−反射率特性において反射率が最大値の90%に達する電圧をVT4と定義する。
これらの値を用い、残像指数を下式で定義した。
残像指数=(Ywr(1.2×VT4)−Ykr(1.2×VT4))/Ykr(1.2×VT4)
【0056】
【表2】

【0057】
上記結果から、シクロ環を有するイソヌレート体の配合量を増加させた本実施例、特に、所定以上配合した実施例では、低温でのコントラストが上昇することがわかる。一方で、残像を抑制する点からは、シクロ環を有するイソヌレート体の配合量は所定範囲以下がよいことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施形態に係る液晶含有組成物の一例を示す概略構成図である。
【図2】実施形態に係る液晶含有組成物の他の一例を示す概略構成図である。
【図3】実施形態に係る液晶表示素子の一例を示す概略構成図である。
【図4】残像指数を説明するための図である。
【符号の説明】
【0059】
1 樹脂部材
2 コレステリック液晶
3 マイクロカプセル
4 液晶含有組成物
11,12 電極
21,22 基板
30 駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コレステリック液晶と、
前記コレステリック液晶を内包する共に、ポリウレタン及びポリウレアから選ばれる少なくとも一種からなる壁材成分を含み、且つ当該壁材成分としてシクロ環構造を有するイソシアヌレート体成分とそれ以外のイソシアネート成分とを含んで構成されるマイクロカプセルと、
を有することを特徴とする液晶含有組成物。
【請求項2】
前記シクロ環構造を有するイソシアヌレート体成分が、下記構造式(1)乃至(2)から選択されるイソシアヌレート体及びその誘導体の少なくとも1種を由来とする成分であることを特徴とする請求項1に記載の液晶含有組成物。
【化1】



【請求項3】
前記シクロ環構造を有するイソシアヌレート体成分が、イソシアネート全成分に対して5重量%以上含むことを特徴とする請求項1に記載の液晶含有組成物。
【請求項4】
一対の電極と、
前記一対の電極に挟持されてなる、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の液晶含有組成物と、
を有することを特徴とする液晶表示素子。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−149814(P2009−149814A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330589(P2007−330589)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】