説明

液晶媒体および液晶ディスプレイ

【課題】アクティブマトリックスディスプレイおよび特にTNおよびIPSディスプレイに好適な媒体を提供することを目的とする。
【解決手段】第1の誘電的に正の成分として、式Iで表される誘電的に正の化合物を含む成分Aと、第2の誘電的に正の成分として、誘電異方性が3より大きい誘電的に正の化合物を1種または2種以上含む成分Bと、任意成分であって、誘電的に中性の成分として、−1.5〜3の範囲の誘電異方性を有する誘電的に中性の化合物を1種または2種以上含む成分Cとを含む液晶媒体。



(Rはアルキル基等、Xはハロゲン、LはClまたはFを意味する。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶媒体、およびこれらの媒体を備える液晶ディスプレイに関し、特にアクティブマトリクスによりアドレスされるディスプレイ、とりわけねじれネマチック(TN:Twisted Nematic)またはインプレーンスイッチング(IPS:In−Plane Switching)型のディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)は、情報を表示するために広く使われている。LCDは、投射型ディスプレイ用と共に、直視型ディスプレイ用として使用されている。用いられる電気光学モードは、例えば最も多用されているねじれネマチック(TN:Twisted Nematic)モード、超ねじれネマチック(STN:Super Twisted Nematic)モード、光学補償ベンド(OCB:Optically Compensated Bend)モードおよび電圧制御復屈折(ECB:Electrically Controlled Birefringence)モードとそれらの種々の変法および他の方法である。これらのモードは全て、基板と液晶層とにそれぞれ実質的に直角な電界を使用する。これらのモードの他に、基板と液晶層とにそれぞれ実質的に平行な電界を用いる電気光学モード、例えばインプレーンスイッチングモード(例えば、独国特許第4000451号明細書(特許文献1)、欧州特許第0588568号明細書(特許文献2)に開示されている)などもある。とりわけ、この電気光学モードは、最新のデスクトップモニタ用のLCDに使用されており、マルチメディア用途のディスプレイに適用することが考えられている。本発明の液晶は、好ましくは、この型のディスプレイで使用される。
【0003】
これらのディスプレイには、改善された特性を有する新規な液晶媒体が求められている。特に、応答時間は、多くの様式の用途ために改善される必要がある。したがって、より低い粘度(η)、特により低い回転粘度(γ)を備えた液晶媒体が要求される。実際の液晶媒体において、回転粘度は、媒体のしきい値電圧および動作電圧に関連する。従って、例えば、透明点が約75℃でしきい値電圧が約2.0Vの媒体に対しては、回転粘度は好ましくは75mPa・s以下であるべきであり、好ましくは60mPa・s以下、特に55mPa・s以下である。このパラメーターに加えて、媒体は適切に広範囲のネマチック相を示すべきであり、適切な複屈折(Δn)および誘電異方性(Δε)は適度に低い動作電圧を許容するのに十分高くあるべきである。好ましくは、Δεは4より大きく、極めて好ましくは5より大きくあるべきであるが、合理的に高い比抵抗に不利益に働くので同時に好ましくは、15以下、特に12以下であるべきである。
【0004】
本発明のディスプレイは、アクティブマトリクス(Active Matrix LCD、略してAMD)、好ましくは薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)マトリクスによりアドレスされるのが好ましい。しかしながら、本発明の液晶は、他の既知のアドレス手段によるディスプレイにも有益に使用することができる。
【0005】
低分子量液晶材料を高分子材料と共に複合系として使用した種々の異なるディスプレイモードが知られている。例えば、国際公開第91/05029号パンフレット(特許文献3)に開示された、ポリマー分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)系、ネマチック曲線配向相(NCAP:Nematic Curvilinearily Aligned Phase)系およびポリマーネットワーク(PN:Polymer Network)系、または、軸対称微小領域(ASM:Axially Symmetric Microdomain)系などが存在する。これらとは対照的に、本発明にとり好ましいのは、液晶媒体を表面に配向させてそのまま使用することである。これらの表面は、典型的には、液晶材料の均一な配向を達成するために前処理されている。本発明によるディスプレイモードは、好ましくは液晶層に対して実質的に平行な電界を使用する。
【0006】
LCD、特にIPSディスプレイに好適な液晶組成物は、例えば、特開平07−181439号公報(特許文献4)、欧州特許第0667555号明細書(特許文献5)、欧州特許第0673986号明細書(特許文献6)、独国特許第19509410号明細書(特許文献7)、独国特許第19528106号明細書(特許文献8)、独国特許第19528107号明細書(特許文献9)、国際公開第96/23851号パンフレット(特許文献10)および国際公開第96/28521号パンフレット(特許文献11)で公知である。これらの組成物は、しかしながら、顕著な欠点を有している。それらの組成物の多くは、他の欠点の中でも、応答時間が不都合にも長く、比抵抗値が余りに低く、および/または、余りに高い動作電圧を要する。さらに、存在する液晶材料の多くは、低温における保存が特に安定というわけではない。
【特許文献1】独国特許第4000451号明細書
【特許文献2】欧州特許第0588568号明細書
【特許文献3】国際公開第91/05029号パンフレット
【特許文献4】特開平07−181439号公報
【特許文献5】欧州特許第0667555号明細書
【特許文献6】欧州特許第0673986号明細書
【特許文献7】独国特許第19509410号明細書
【特許文献8】独国特許第19528106号明細書
【特許文献9】独国特許第19528107号明細書
【特許文献10】国際公開第96/23851号パンフレット
【特許文献11】国際公開第96/28521号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、実用的な用途に好適な特性、例えば、広いネマチック相範囲、使用するディスプレイモードに応じた適切な光学異方性Δn、適切に高いΔε、特に、低い粘度などを有する液晶媒体が明らかに求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、適切に高いΔε、適切な相範囲およびΔnを有する液晶媒体であって、従来材料の欠点を示さないか、または少なくとも格別により小さな程度しか示さない液晶媒体が実現されることが見いだされた。
【0009】
本出願のこれらの改善された液晶媒体は、少なくとも以下の成分を含む。
【0010】
即ち、下記式Iで表される誘電的に正の化合物を含む第1の誘電的に正の成分である成分A:
【0011】
【化1】

(式中、Rは、1〜7個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ素化アルキルまたはフッ素化アルコキシ基であるか、2〜7個の炭素原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ素化アルケニル基であり、好ましくは、アルキルまたはアルケニル基であり、最も好ましくはアルキルであり、
は、ハロゲンであり、好ましくはClまたはF、最も好ましくはClであり、
Lは互いに独立して、ClまたはFであり、好ましくはFであり、そして、
nおよびmは互いに独立して、それぞれ0〜4の整数であり、好ましくは0、1または2、最も好ましくはそれらの1つが1でもう1つが0である。)
誘電異方性が3より大きい誘電的に正の化合物を1種または2種以上含む第2の誘電的に正の成分である成分B、および
任意成分として、−1.5〜3の範囲の誘電異方性を有する誘電的に中性の化合物を1種または2種以上含む誘電的に中性成分である成分Cを含む。
【0012】
好ましくは、媒体中の成分Aの濃度は、0.1〜20質量%、より好ましくは0.5〜15質量%、さらにより好ましくは1〜10質量%、そして最も好ましくは1.5〜8質量%である。
【0013】
好ましくは、第1の誘電的に正の成分、成分Aは、式Iaの誘電的に正の化合物を含み、より好ましくは大部分が、さらに好ましくは実質的に、最も好ましくは全てが、これらよりなる。
【0014】
【化2】

式中、RおよびXは、それぞれ前述の式Iについて与えられた意味を有し、
11およびL12の一つはFで、他の一つはHである。
【0015】
本発明において好ましく使用される式Iaの化合物の等方性屈折率(niso)は、1.57以上である。ここで、等方性屈折率(niso)は、屈折率nおよびn(ZLI−4792中、対象化合物の10%溶液から外挿される)からniso=(n+2n)/3で計算される。
【0016】
式Iaの特に好ましい化合物は、サブ式Ia−1〜Ia−4から選ばれる。
【0017】
【化3】

式中、Rは、前記式Iで与えられる意味を有する。
【0018】
好ましくは、第2の誘電的に正の成分、成分Bは、誘電異方性が3より大きい誘電的に正の化合物を含み、より好ましくは大部分が、更に好ましくは実質的に、最も好ましくは全てが、これらよりなる。
【0019】
好ましくは、この成分、成分Bは、式IIおよびIIIの群より選ばれる誘電異方性が3より大きい誘電的に正の化合物を1種類または2種以上含み、より好ましくは大部分が、更に好ましくは実質的に、最も好ましくは全てが、これら(単数または複数)よりなる。
【0020】
【化4】

式中、RおよびRは、互いに独立して、それぞれ1〜7個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ素化アルキルまたはフッ素化アルコキシ基であるか、2〜7個の炭素原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ素化アルケニル基であり、RおよびRは、好ましくは、アルキルまたはアルケニル基であり、
【0021】
【化5】

であり、
21、L22、L31およびL32は、互いに独立して、それぞれHまたはFであり、好ましくはL21および/またはL31はFであり、
およびXは、互いに独立して、ハロゲン、1〜3個の炭素原子を有するハロゲン化アルキルまたはアルコキシ基、または2個または3個の炭素原子を有するハロゲン化アルケニルまたはアルケニルオキシ基であり、好ましくはハロゲン、1〜3個の炭素原子を有するハロゲン化アルキルまたはアルコキシ基であり、より好ましくは、F、Cl、−OCFまたは−CFであり、最も好ましくは、F、Clまたは−OCFであり、
は、−CHCH−、−CFCF−、−COO−、トランス−CH=CH−、トランス−CF=CF−、−CHO−または単結合であり、好ましくは、−CHCH−、−COO−、トランス−CH=CH−または単結合であり、最も好ましくは、−COO−、トランス−CH=CH−または単結合であり、
l、m、nおよびoは、互いに独立して、0または1である。
【0022】
本発明の好ましい実施形態においては、成分Bは、式II−1およびII−2の化合物群より選ばれる誘電異方性が3より大きい誘電的に正の化合物を1種類または2種以上含むことが好ましく、より好ましくは大部分が、更に好ましくは実質的に、最も好ましくは全てが、これら(単数または複数)よりなる。
【0023】
【化6】

式中、パラメーターは、それぞれ上記式IIで与えられる意味を有し、式II−1中において、L23およびL24は、互いにおよび他のパラメーターと独立に、HまたはFである。
【0024】
好ましくは、成分Bは、L21およびL22の両者および/またはL23およびL24の両者がFである式II−1およびII−2の化合物群より選ばれる化合物を含む。
【0025】
好ましい実施形態において、成分Bは、L21、L22、L23およびL24の全てがFである式II−1およびII−2の化合物群より選ばれる化合物を含む。
【0026】
好ましくは、成分Bは、式II−1の化合物を1種または2種以上含む。好ましくは、式II−1の化合物は、式II−1a〜II−1iの化合物群より選ばれる。
【0027】
【化7】

【0028】
【化8】

式中、パラメーターは、それぞれ上で与えられる意味を有する。
【0029】
好ましくは、成分Bは、L21およびL22の両者および/またはL23およびL24の両者がFである式II−1a〜II−1eの化合物群より選ばれる化合物を含む。
【0030】
好ましい実施形態において、成分Bは、L21、L22、L23およびL24の全てがFである式II−1a〜II−1eの化合物群より選ばれる化合物を含む。
【0031】
式II−1の特に好ましい化合物は、以下の通りである。
【0032】
【化9】


式中、Rは、上で与えられる意味を有する。
【0033】
好ましくは、成分Bは、式II−2の化合物を1種または2種以上含む。好ましくは、式II−2の化合物は、式II−2a〜II−2dの化合物群より選ばれる。
【0034】
【化10】


式中、パラメーターは、それぞれ上で与えられる意味を有し、好ましくは、L21およびL22の両者はFでL23およびL24の両者はHであるか、またはL21、L22、L23およびL24の全てがFである。
【0035】
式II−2の特に好ましい化合物は、以下の通りである。
【0036】
【化11】

式中、Rは、上で与えられる意味を有する。
【0037】
本発明の更に好ましい実施形態においては、成分Bは、式III−1およびIII−2の化合物群より選ばれる誘電異方性が3より大きい誘電的に正の化合物を1種または2種以上含むことが好ましく、より好ましくは大部分が、更に好ましくは実質的に、最も好ましくは全てが、これら(単数または複数)よりなる。
【0038】
【化12】

式中、パラメーターは、それぞれ上記式IIIで与えられる意味を有する。
【0039】
好ましくは、成分Bは、式III−1の化合物を1種または2種以上含む。好ましくは、式III−1の化合物は、式III−1aおよびIII−1bの化合物群より選ばれる。
【0040】
【化13】

式中、パラメーターは、それぞれ上で与えられる意味を有し、L33およびL34は、それぞれ互いにおよび他のパラメーターと独立に、HまたはFである。
【0041】
好ましくは、成分Bは、式III−2の化合物を1種または2種以上含む。好ましくは、式III−2の化合物は、式III−2a〜III−2hの化合物群より選ばれる。
【0042】
【化14】

【0043】
【化15】

式中、パラメーターは、それぞれ上で与えられる意味を有し、L35およびL36は、それぞれ互いにおよび他のパラメーターと独立にHまたはFである。
【0044】
好ましくは、成分Bは、式III−1aの化合物を1種または2種以上含み、好ましくは、式III−1a−1〜III−1a−6の化合物群より選ばれる。
【0045】
【化16】

式中、Rは、上で与えられる意味を有する。
【0046】
好ましくは、成分Bは、式III−2aの化合物を1種または2種以上含み、好ましくは、式III−2a−1〜III−2a−4の化合物群より選ばれる。
【0047】
【化17】

式中、Rは、上で与えられる意味を有する。
【0048】
好ましくは、成分Bは、式III−2bの化合物を1種または2種以上含み、好ましくは、式III−2b−1〜III−2b−6の化合物群より選ばれる。
【0049】
【化18】

式中、Rは、上で与えられる意味を有する。
【0050】
好ましくは、成分Bは、式III−2cおよびIII−2dの化合物群より選ばれる化合物を1種または2種以上含み、好ましくは、式III−2c−1およびIII−2d−1の化合物群より選ばれる。
【0051】
【化19】

式中、Rは、上で与えられる意味を有する。
【0052】
好ましくは、成分Bは、式III−2eの化合物を1種または2種以上含み、好ましくは、式III−2e−1〜III−2e−5の化合物群より選ばれる。
【0053】
【化20】


式中、Rは、上で与えられる意味を有する。
【0054】
好ましくは、成分Bは、式III−2fの化合物を1種または2種以上含み、好ましくは、式III−2f−1〜III−2f−5の化合物群より選ばれる。
【0055】
【化21】

式中、Rは、上で与えられる意味を有する。
【0056】
好ましくは、成分Bは、式III−2gの化合物を1種または2種以上含み、好ましくは、式III−2g−1〜III−2g−3の化合物群より選ばれる。
【0057】
【化22】

式中、Rは、以上で与えられる意味を有する。
【0058】
好ましくは、成分Bは、式III−2hの化合物を1種または2種以上含み、好ましくは、式III−2h−1〜III−2h−3の化合物群より選ばれる。
【0059】
【化23】

式中、Rは、以上で与えられる意味を有する。
【0060】
式III−1および/またはIII−2の化合物に代えてまたは加えて、本発明の媒体は、式III−3、好ましくは式III−3aの化合物を1種または2種以上含むこともできる。
【0061】
【化24】

式中、パラメーターは、それぞれ上記式IIIで与えられる意味を有する。
【0062】
【化25】

式中、Rは、上で与えられる意味を有する。
【0063】
好ましくは、本発明の液晶混合物は、誘電的に中性の成分、成分Cを含有する。この成分は、−1.5〜+3の範囲の誘電異方性を有する。好ましくは、この成分は、誘電異方性が−1.5〜+3の範囲の誘電的に中性の化合物を含むことが好ましく、より好ましくは大部分が、更に好ましくは実質的に、最も好ましくは全てが、これら(単数または複数)よりなる。好ましくは、この成分は、式IVで表され、誘電異方性が−1.5〜+3の範囲の誘電的に中性の化合物を1種または2種以上含むことが好ましく、より好ましくは大部分が、更に好ましくは実質的に、特に全てが、これら(単数または複数)よりなる。
【0064】
【化26】

ここで、式Iの化合物は、式IVの化合物から除外され、
式中、R41およびR42は、互いに独立して、式IIのRで与えられる意味を有し、好ましくは、R41はアルキル基でR42はアルコキシ基であり、
【0065】
【化27】

であり、好ましくは、
【0066】
【化28】

41およびZ42は、互いに独立して、およびZ41が2つ存在する場合は、これらも互いに独立して、−CHCH−、−COO−、トランス−CH=CH−、トランス−CF=CF−、−CHO−、−CFO−または単結合であり、好ましくは、これらの少なくとも1つは単結合であり、
pは、0、1または2であり、好ましくは、0または1である。
【0067】
好ましくは、誘電的に中性の成分、成分Cは、式IV−1〜IV−6の化合物群から選ばれる1種または2種以上の化合物を含む。
【0068】
【化29】

ここで、式Iの化合物は、式IV−1から除外され、R41およびR42は、それぞれ上記式IVで与えられる意味を有し、式IV−1、IV−4およびIV−5において、R41は、好ましくはアルキルまたはアルケニル基、好ましくはアルケニル基であり、R42は、好ましくはアルキルまたはアルケニル基、好ましくはアルキル基であり、式IV−2において、R41およびR42は好ましくはアルキル基であり、式IV−3において、R41は好ましくはアルキルまたはアルケニル基、好ましくはアルキル基、R42は好ましくはアルキルまたはアルコキシ基、好ましくはアルコキシ基である。
【0069】
好ましくは、誘電的に中性の成分、成分Cは式IV−1、IV−3、IV−4およびIV−5の化合物群から選ばれる1種または2種以上の化合物を含有し、好ましくは、式IV−1の1種または2種以上の化合物と式IV−3およびIV−4の群から選ばれる1種または2種以上の化合物を含有し、好ましくは式IV−1、IV−3およびIV−4のそれぞれ1種または2種以上の化合物を含有し、最も好ましくは式IV−1、IV−3、IV−4およびIV−5のそれぞれ1種または2種以上の化合物を含有する。
【0070】
好ましくは、誘電的に中性の成分、成分Cは、式IV−1a、IV−1b、IV−4a、IV−4b、IV−6aおよびIV−6bの化合物群より選ばれる化合物を1種または2種以上含む。
【0071】
【化30】


式中、Rは、1〜5個好ましくは1〜3個の炭素原子を有するアルキルであり、
R’は、Hまたは1〜3個、好ましくは1〜2個の炭素原子を有するアルキル、好ましくはHまたはメチル、
R”は、Hまたは1〜3個、好ましくは1〜2個の炭素原子を有するアルキル、好ましくはHである。
【0072】
本発明の更に好ましい実施形態においては、これまでの実施形態の一部であっても異なるものであってもよいが、本発明の液晶媒体は成分Cを含み、これは、上で示したように式IV−1からIV−6、および任意に式IV−7〜IV−14の化合物群より選ばれる式IVの化合物を含み、好ましくは大部分が、より好ましくは実質的に、最も好ましくは全てが、これら(単数または複数)よりなる。
【0073】
【化31】


式中、R41およびR42は、それぞれ互いに独立して、炭素数1〜7のアルキル、アルコキシ、フッ素化アルキルまたはフッ素化アルコキシ基、炭素数2〜7のアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ素化アルケニル基であり、
は、HまたはFである。
【0074】
式IIおよび/またはIIIの化合物に代えてまたは加えて、本発明の媒体は、式Vで表される誘電的に正の化合物を1種または2種以上含むこともできる。
【0075】
【化32】


式中、Rは、1〜7個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ素化アルキルまたはフッ素化アルコキシ基であるか、2〜7個の炭素原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ素化アルケニル基であり、好ましくは、アルキルまたはアルケニル基であり、
【0076】
【化33】


であり、
51およびL52は、互いに独立に、HまたはFであり、好ましくはL51はFであり、
は、ハロゲン、1〜3個の炭素原子を有するハロゲン化アルキルまたはアルコキシ基、または2個または3個の炭素原子を有するハロゲン化アルケニルまたはアルケニルオキシ基であり、好ましくは、F、Cl、−OCFまたは−CFであり、最も好ましくは、F、Clまたは−OCFであり、
は、−CHCH−、−CFCF−、−COO−、トランス−CH=CH−、トランス−CF=CF−または−CHO−であり、好ましくは、−CHCH−、−COO−またはトランス−CH=CH−であり、最も好ましくは、−COO−または−CHCH−であり、
qは、それぞれ互いに独立に、0または1である。
【0077】
好ましくは、本発明の媒体は、式Vの化合物を1種または2種以上含み、好ましくは、式V−1およびV−2の化合物群より選ばれる。
【0078】
【化34】


式中、パラメーターは、それぞれ上で与えられる意味を有し、L53およびL54は、それぞれ互いにおよび他のパラメーターと独立に、HまたはFであり、好ましくは、Zは−CH−CH−である。
【0079】
好ましくは、式V−1の化合物は、式V−1aおよびV−1bの化合物群より選ばれる。
【0080】
【化35】

式中、Rは、上で与えられる意味を有する。
【0081】
好ましくは、式V−2の化合物は、式V−2a〜V−2dの化合物群より選ばれる。
【0082】
【化36】


式中、Rは、上で与えられる意味を有する。
【0083】
好ましくは、本発明の液晶混合物は、誘電的に中性の追加成分、成分Dを含有する。この成分は、−1.5〜+3の範囲の誘電異方性を有する。好ましくは、この成分は、誘電異方性が−1.5〜+3の範囲の誘電的に中性の化合物を含むことが好ましく、より好ましくは大部分が、更に好ましくは実質的に、最も好ましくは全てが、これら(単数または複数)よりなる。好ましくは、この成分は、式VIで表され、誘電異方性が−1.5〜+3の範囲の誘電的に中性の化合物を1種または2種以上含むことが好ましく、より好ましくは大部分が、更に好ましくは実質的に、特に全てが、これら(単数または複数)よりなる。
【0084】
【化37】

式中、R61およびR62は、互いに独立して、上記式IIのRで与えられる意味を有し、好ましくは、R61はアルキル基で、R62はアルキルまたはアルケニル基であり、
【0085】
【化38】


であり、好ましくは、
【0086】
【化39】

の少なくとも1つは、
【0087】
【化40】

であり、
61およびZ62は、互いに独立して、およびZ61が2つ存在する場合は、これらも互いに独立して、−CHCH−、−COO−、トランス−CH=CH−、トランス−CF=CF−、−CHO−、−CFO−または単結合であり、好ましくは、これらの少なくとも1つは単結合であり、
rは、0、1または2で、好ましくは0または1である。
【0088】
好ましくは、誘電的に中性の成分、成分Dは、式VI−1およびVI−2の化合物群から選ばれる1種または2種以上の化合物を含む。
【0089】
【化41】

式中、R61およびR62は、それぞれ上記式VIで与えられる意味を有し、R61はアルキル基が好ましく、式VI−1においては、R62はアルケニル基が好ましく、特に−(CH−CH=CH−CHが好ましく、式VI−2においては、R62はアルキル基が好ましい。
【0090】
好ましくは、誘電的に中性の成分、成分Dは式VI−1およびVI−2の化合物群から選ばれる1種または2種以上の化合物を含有し、そこでR61はn−アルキル基が好ましく、式VI−1においては、R62はアルケニル基が好ましく、式VI−2においては、R62はn−アルキル基が好ましい。
【0091】
好ましくは、本発明の液晶混合物は、成分AおよびBに加えて、更なる成分を少なくとも1種類含む。この第3の成分は、成分CおよびDの一方でよく、好ましくは、この第3の成分は成分Cである。
【0092】
また、当然、本発明の混合物は成分A、B、CおよびDの全てを含むこともできる。
【0093】
加えて、本発明の液晶混合物は、誘電的に負の更なる任意成分、成分Eを含有することもでき、好ましくは、式VIIで表される誘電的に負の化合物を含むことが好ましく、より好ましくは大部分が、更に好ましくは実質的に、最も好ましくは全てが、これら(単数または複数)よりなる。
【0094】
【化42】

式中、R71およびR72は、それぞれ互いに独立に、上記式IIのRで与えられる意味を有し、
【0095】
【化43】

であり、
【0096】
【化44】

であり、
71およびZ72は、それぞれ互いに独立に、−CHCH−、−COO−、トランス−CH=CH−、トランス−CF=CF−、−CHO−、−CFO−または単結合であり、好ましくは、これらの少なくとも1つは単結合であり、最も好ましくは、両方が単結合であり、
71およびL72は、それぞれ互いに独立して、C−FまたはNであり、好ましくはこれらの少なくとも1つはC−Fであり、最も好ましくは、両方がC−Fであり、
kは、0または1である。
【0097】
好ましくは、本発明の液晶媒体は、成分A〜Eを含み、より好ましくは大部分が、最も好ましくは全てが、これらよりなり、特に好ましくはI〜VIIの化合物群より選択される化合物からなる。
【0098】
本出願において「含む」は、組成物の文脈において、例えば媒体または成分等の言及される物が特定の各成分(単数または複数)または各化合物(単数または複数)を含有していることであり、好ましくは合計濃度で10%以上、最も好ましくは20%以上含有していることを意味する。
【0099】
文脈中、「大部分が・・よりなる」は、言及される物が特定の各成分(単数または複数)または各化合物(単数または複数)を55%以上、好ましくは60%以上、最も好ましくは70%以上を含有することを意味する。
【0100】
文脈中、「実質的に・・よりなる」は、言及される物が特定の各成分(単数または複数)または各化合物(単数または複数)を80%以上、好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上を含有することを意味する。
【0101】
文脈中、「全てが・・よりなる」は、言及される物が特定の各成分(単数または複数)または各化合物(単数または複数)を98%以上、好ましくは99%以上、最も好ましくは100.0%を含有することを意味する。
【0102】
成分Eは、式VII、好ましくは、式VII−1〜VII−3からなる化合物群より選ばれる化合物を1種または2種以上含むことが好ましく、より好ましくは大部分が、最も好ましくは全体が、これら(単数または複数)よりなる。
【0103】
【化45】

式中、R71およびR72は、それぞれ上記式VIで与えられるものと同じ意味を有する。
【0104】
式VII−1〜VII−3において、好ましくは、R71はn−アルキルまたは1−E−アルケニル基であり、好ましくは、R72はn−アルキルまたはアルコキシ基である。
【0105】
また、本発明の媒体の中で、上では明確には述べていないが、その他のメソーゲン性化合物を任意成分として、有利に使用することもできる。そのような化合物は当業者に知られている。
【0106】
本発明の液晶媒体は、一般に60℃以上の、好ましくは70℃以上の、より好ましくは75℃以上の、特に好ましくは80℃以上の透明点によって特徴付けられる。
【0107】
本発明の液晶媒体の589nm(ナトリウムのD線)で20℃におけるΔnは、好ましくは0.060以上0.160以下の範囲、より好ましくは0.070以上0.125以下の範囲、最も好ましくは0.080以上0.115以下の範囲である。
【0108】
本発明の液晶媒体の1kHzで20℃におけるΔεは、好ましくは3.0以上、より好ましくは4.0以上である。
【0109】
本発明の媒体のネマチック相は、少なくとも0℃以下から70℃以上、好ましくは少なくとも−20℃以下から70℃以上まで、最も好ましくは少なくとも−30℃以下から75℃以上まで、特に少なくとも−40℃以下から75℃以上まで広がることが好ましい。
【0110】
本発明の第1の好ましい実施形態において、液晶媒体のΔnは、0.110以上から0.140以下の範囲、より好ましくは0.115以上から0.135以下の範囲、最も好ましくは0.120以上から0.130以下の範囲であり、一方、Δεは、好ましくは、4.0以上7.0以下の範囲である。
【0111】
この実施形態において、媒体は、好ましくは式IIおよび/または式III−2fの化合物を含有し、および/またはそれらは好ましくは末端CF基またはOCF基を有する化合物を含まず、および/または60℃以上の透明点を有する。
【0112】
本発明の第2の好ましい実施形態において、液晶媒体のΔnは、0.085以上0.125以下の範囲であり、より好ましくは0.090以上0.120以下の範囲、最も好ましくは0.095以上0.115以下の範囲であり、一方、Δεは、好ましくは5.0以上、好ましくは6.0以上、より好ましくは7.0以上、更に好ましくは8.0以上であり、最も好ましくは5.0以上12.0以下の範囲である。
【0113】
この実施形態において、好ましくは、本発明の媒体のネマチック相は、少なくとも−20℃以下から70℃以上、最も好ましくは少なくとも−30℃以下から70℃以上まで、特に少なくとも−40℃以下から70℃以上まで広がることが好ましい。
【0114】
本発明の第3の好ましい実施形態において、液晶媒体のΔnは、0.070以上0.120以下の範囲であり、より好ましくは0.075以上0.115以下の範囲、最も好ましくは0.080以上0.110以下の範囲であり、一方、Δεは、好ましくは、4.0以上、より好ましくは4.0以上14.0以下の範囲、最も好ましくは、4.0以上12.0以下の範囲であるか、特に好ましくは、6.0以上11.0以下の範囲のいずれかである。
【0115】
この実施形態において、好ましくは、本発明の媒体のネマチック相は、少なくとも−20℃以下から75℃以上、より好ましくは少なくとも−30℃以下から70℃以上まで、最も好ましくは少なくとも−30℃以下から75℃以上まで、特に少なくとも−30℃以下から80℃以上まで広がることが好ましい。
【0116】
好ましくは、発明の媒体の−20℃の温度におけるバルクでの保存安定性(LTSbulk)は、120時間以上、より好ましくは500時間以上、最も好ましくは1,000時間以上である。
【0117】
より好ましくは、発明の媒体の−30℃の温度におけるバルクでの保存安定性(LTSbulk)は、120時間以上、より好ましくは500時間以上、最も好ましくは1,000時間以上である。
【0118】
最も好ましくは、発明の媒体の−40℃の温度におけるバルクでの保存安定性(LTSbulk)は、120時間以上、より好ましくは250時間以上、最も好ましくは500時間以上である。
【0119】
発明の媒体の−20℃における、より好ましくは−30℃における、最も好ましくは−40℃の温度におけるバルクでの保存安定性(LTSbulk)は、好ましくは250時間以上、より好ましくは500時間以上、最も好ましくは1,000時間以上である。
【0120】
「種付け(結晶核付け)」テスト後に、PUQU−2−Fの濃度の相対変化率は、好ましくは、15%以下、より好ましくは8%以下、さらにより好ましくは3%以下、最も好ましくは0.1%以下である。
【0121】
「種付け(結晶核付け)」テスト後に、PUQU−3−Fの濃度の相対変化率は、好ましくは、10%以下、より好ましくは5%以下、さらにより好ましくは3%以下、最も好ましくは0.1%以下である。
【0122】
成分Aは、好ましくは全混合物の1%〜15%、より好ましくは2%〜10%、より好ましくは2%〜8%、最も好ましくは3%〜7%の濃度で使用される。
【0123】
成分Bは、好ましくは全混合物の10%〜70%、より好ましくは15%〜65%、より好ましくは20%〜60%、最も好ましくは30%〜50%の濃度で使用される。
【0124】
成分Cは、好ましくは全混合物の15%〜85%、より好ましくは30%〜80%、より好ましくは35%〜70%、最も好ましくは40%〜60%の濃度で使用される。
【0125】
成分Dは、好ましくは全混合物の0%〜40%、好ましくは0%〜30%、より好ましくは0%〜20%、最も好ましくは4%〜15%の濃度で使用される。
【0126】
成分Eは、好ましくは全混合物の0%〜30%、好ましくは0%〜15%、最も好ましくは1%〜10%の濃度で使用される。
【0127】
任意に、本発明の媒体の物理的性質を調節するために、さらに液晶化合物を含むことができる。そのような化合物は当業者に知られている。本発明の媒体中におけるそれらの濃度は、好ましくは0%〜30%、より好ましくは0%〜20%、最も好ましくは1%〜15%である。
【0128】
好ましくは、液晶媒体は、成分A、B、CおよびD、好ましくは成分A、BおよびCの総量で、50%〜100%、より好ましくは70%〜100%、最も好ましくは80%〜100%、特には90%〜100%含み、式I、II、III、IV、V、VIおよびVIIの、好ましくは式I、II、III、IV、VおよびVIのそれぞれの化合物の1種または2種以上含有するか、好ましくは大部分が、最も好ましくは全てが、これら(単数または複数)よりなる。
【0129】
本出願において、「誘電的に正」という用語は、化合物または成分がΔε>3.0であること、「誘電的に中性」という用語は、−1.5≦Δε≦3.0であること、「誘電的に負」という用語は、Δε<−1.5であることをそれぞれ意味する。Δεは、1kHzの周波数で20℃において決められる。化合物の誘電異方性は、ネマチックホスト混合物中での、個別の化合物の10%の溶液の結果から決定される。それぞれの化合物の、ホスト混合物中での溶解性が10%未満であるときは、濃度を5%まで低下して測定する。試験混合物の容量は、ホメオトロピックを有するセル、およびホモジニアス配向を有するセルの両方において決定する。両方の型のセルのセルギャップは、およそ20μmである。印加される電圧は、1kHzの周波数で室温において典型的には0.5V〜1.0Vの二乗平均平方根値を有する矩形波であるが、しかしながら、常にそれぞれの試験混合物の容量のしきい値よりも低く選択される。
【0130】
誘電的に正の化合物については、混合物ZLI−4792が、誘電的に中性および誘電的に負の化合物については、混合物ZLI−3086(両方ともメルク社、ドイツ国)が、それぞれホスト混合物として使用される。化合物の誘電率は、注目している化合物の添加によるそれぞれのホスト化合物の値の変化から決定される。その値を、注目している化合物の濃度100%に外挿する。
【0131】
20℃の測定温度でネマチック相を有する成分は、そのままで測定され、他の全ての点についても化合物の測定と同様に処理される。
【0132】
本出願において「しきい値電圧」という用語は、明示的に別のことを述べなければ、光学的しきい値を意味し、そして10%相対的コントラスト(V10)について与えられる。また、「飽和電圧」という用語は、光学的飽和を意味し、そして90%相対的コントラスト(V90)について与えられる。容量的しきい値電圧(V、またはフレデリクスしきい値VFrと呼ぶ)は、特に明示的に述べる場合にのみ使用する。
【0133】
本出願で与えられたパラメーターの範囲は、他に明示的に述べなければすべて限界値を含む。
【0134】
本出願を通じて、他に特に述べなければ、全ての濃度は、質量パーセントで与えられ、それぞれの完全の混合物に関連付けられる。全ての温度は、摂氏度で与えられ、全ての温度差も摂氏度で与えられる。すべての物理的な特性は、「Merk Liquid Crystals、Physical Properties of Liquid Crystals」Status誌、1997年11月刊、メルク社(ドイツ国)により決定されたか、または決定され、および他に特に述べなければ、20℃の温度に対して与えられる。光学異方性(Δn)については、589.3nmの波長で決定される。誘電異方性(Δε)については、1kHzの周波数で決定される。しきい値電圧、並びに他の電気光学的特性は、メルク社(ドイツ国)で作成された試験セルで決定された。Δεの決定のための試験セルは、約20μmのセルギャップを有していた。電極は、1.13cmの面積および保護リングを有する円形ITO電極であった。配向層は、ホメオトロピック配向(ε)用にはレシチン、およびホモジニアス配向(ε)用には日本合成ゴム社製ポリイミドAL−1054であった。容量は、0.3Vrmsの電圧を有する正弦波を使用した周波数応答分析装置(Solatron1260)で決定した。電気光学的測定において使用した光は、白色光であった。用いた構成は、オートロニック メルカーズ社(Autronic Melchers)(ドイツ)より商業的に入手可能な装置であった。特性電圧は、垂直観察の下で決定した。しきい値(V10)−中間灰色(V50)−および飽和(V90)電圧は、それぞれ10%、50%および90%相対コントラストで決定した。
【0135】
本発明による液晶媒体は、通常の濃度で添加剤およびキラルドーパントをさらに含むことができる。これらのさらなる構成成分の合計濃度は、混合物の合計を基礎として0%〜10%の範囲、好ましくは、0.1%〜6%である。それぞれ使用される個別の化合物の濃度は、好ましくは0.1%〜3%の範囲である。これらおよび類似の添加物の濃度は、本出願の液晶媒体の液晶成分および化合物の濃度の値および範囲には考慮されない。
【0136】
本出願による発明の液晶媒体は、数種の化合物、好ましくは3〜30、より好ましくは4〜20、および最も好ましくは4〜16の化合物からなる。これらの化合物は、慣用的な方法で混合される。原則として、より少ない量で使用される化合物の所定量を、より大きい量として用いられる化合物に溶解する。温度がより高い濃度で用いられる化合物の透明点を越える場合には、溶解の課程の完了を観察するのは、特に容易である。しかしながら、他の慣用の方法、たとえば、たとえば同族化合物または共融混合物であることができる、いわゆるプレ混合物の使用や、構成成分がレディー−トゥ−ユース混合物自身である、いわゆるマルチ・ボトル・システムにより媒体を調製することもできる。
【0137】
適当な添加物の添加により、本発明による液晶媒体は、すべての既知型の液晶ディスプレイ、例えばTN−、TN−AMD、ECB−AMD、VAN−AMD、IPSおよびOCB LCDのような液晶媒体をそのまま使用するもの、特にPDLC、NCAP、PN LCDそして特にASM−PA LCDなどの複合システムにおいて使用可能であるように、変更することができる。
【0138】
液晶の融点T(C、N)、スメクチック相(S)からネマチック(N)相への転移T(S、N)および透明点T(N、I)は、摂氏度で与えられる。
【0139】
ある温度Tにおける発明の媒体のバルクの貯蔵安定性(LTSbulk)は、目視検査によって決定される。対象の媒体2gを適切なサイズの閉じたガラス容器(ボトル)に充填し、冷蔵庫中で所定の温度に放置する。24時間ごとにボトルをチェックし、スメクチック相および結晶の発生を観察する。すべての材料に対して各温度ごとに2本のボトルを貯蔵する。結晶化またはスメクチック相の外観が、2本の対応するボトルの少なくとも1つで観察される場合に、テストを終了する。また、より高い秩序相の発生が観察される前の最後の検査の時間を、それぞれの貯蔵安定性として記録する。
【0140】
ある温度Tにおける発明の媒体のLCセル中での貯蔵安定性(LTScell)の決定のために、配向層を備え、約3cmの表面積、約3cmの電極面積および6μmのセルギャップを有するTN−型LCテストセルに、媒体を充填する。LCにカバーされる領域では、セルはスペーサーを有していない。エッジシール部のみで、スペーサーが使用される。セルをシールし、ポラライザーをセルに付け、窓とライトを備えた冷却ボックス(冷蔵庫)中で所定の温度にセルを置く。一般に、LCで充填されたセル3個を、それぞれの測定温度に使用した。冷却ボックス中のセルを、窓を通して目視により、24時間ごとにスメクチック相および結晶の発生を検査した。ここでも、テストセルの最初の1つに、より高い秩序相の発生が観察される前の最後の検査の時間を、それぞれの貯蔵安定性として記録する。
【0141】
いわゆる「種付け(結晶核付け)」テストでは、対象のそれぞれの混合物1gをバルクで20℃の温度に保ち、続いてPUQU−2−Fの小さな種結晶(1〜10mg)をドープし、96時間20℃の温度にて保存する。そして、サンプルを目視により、結晶の量が増加したかどうか、あるいは変化なしまたは減少しているかどうかを検査する。残りのネマチック液晶混合物をGC−MSで分析し、その組成をドーピング前のバルク材料の組成と比較する。
【0142】
好ましくは、本発明の液晶媒体は、
・式Ia−4の化合物の1種または2種以上、および/または
・式II、好ましくは式II−2、最も好ましくは サブ式II−2a−2およびII−2d−1の群から選ばれる化合物の1種または2種以上、および/または
・式III、好ましくは式III−2、最も好ましくはサブ式III−2f−3、III−2f−4およびIII−2f−5の群から選ばれる化合物の1種または2種以上、および/または
・式IV−1、好ましくはサブ式IV−1bの化合物の1種または2種以上、および/または
・式VI、好ましくはサブ式VI−2の化合物の1種または2種以上
を含有する。
【0143】
本出願において、および特に以下に示す例において、液晶化合物の構造は頭文字で示されており、その化学式への変換は下記表AおよびBに従って行われる。基C2n+1およびC2m+1は全部が、n個またはm個の炭素原子をそれぞれ有する直鎖状アルキル基である。表Bの説明は、それ自体で明らかである。表Aには、親構造にかかわる頭文字のみが示されている。それぞれの場合において、この親構造の頭文字の後に、ハイフンにより分離されて、置換基R、R、LおよびLを特定するコードが続く。
【0144】
【表1】

<表A>
【0145】
【表2】

【0146】
【表3】

【0147】
<表B>
【0148】
【表4】

【0149】
【表5】

【0150】
【表6】

【0151】
【表7】

【0152】
【表8】

【0153】
【表9】

【0154】
【表10】

【0155】
本発明の液晶媒体は、好ましくは、
・表AおよびBの式で表される化合物の群から選択される7種類以上、好ましくは、8種類以上の化合物で、好ましくは異なる式で表される化合物、および/または
・表Aの式で表される化合物の群から選択される1種または2種以上、より好ましくは2種類以上の化合物、好ましくは3種類以上の化合物で、好ましくは異なる式で表される化合物、および/または
・表Bの式で表される化合物の群から選択される3種類以上、より好ましくは4種類以上、さらに好ましくは5種類以上の化合物で、好ましくは異なる式で表される化合物を含む。
【実施例】
【0156】
下記の例は、制限することなく、本発明を説明するものである。
【0157】
しかしながら、物理的特性の構成は、当業者にどの特性が達成できるか、そして、どの範囲でそれらを変更できるかを説明する。特に、好ましく達成することができる種々の特性の組合せが、このように当業者のために明確にされる。
【0158】
<例1>
次表に与えられた組成と特性を有する液晶混合物を実現した。
【0159】
【表11】

【0160】
この混合物は、例えばΔn、電圧特性および適度に低い回転粘度等の好ましい物性を有する。従って、TNモードで動作するディスプレイに良く適している。さらに、−30℃の低温でのネマチック相の優れた安定性を有している。
【0161】
<比較例2>
次表に与えられた組成と特性を有する液晶ホスト混合物を実現した。
【0162】
【表12】

【0163】
この混合物をバルクで、20℃の温度に保ち、PUQU−2−Fの小さな種結晶をドープし、96時間20℃にて保存し、そして残りのネマチック液晶混合物をGC−MSで分析した。
【0164】
結果を、比較のために例2の結果と共に次の表に示す。
【0165】
<例2(例2.1および例2.2)>
比較例2の混合物に、GP−2−CLを2%および5%の濃度で添加し、それぞれ例2.1および例2.2の混合物とし、それぞれの混合物を試験した。結果を次の表に示す。
【0166】
【表13】

【0167】
<比較例3>
次表に与えられた組成と特性を有する液晶ホスト混合物を実現した。
【0168】
【表14】

【0169】
この混合物をバルクで、20℃の温度に保ち、PUQU−2−Fの小さな種結晶をドープし、96時間20℃にて保存し、そして残りのネマチック液晶混合物をGC−MSで分析した。
【0170】
結果を、比較のために例3の結果と共に次の表に示す。
【0171】
<例3(例3.1および例3.2)>
比較例3の混合物に、GP−2−CLを2%および5%の濃度で添加し、それぞれ例3.1および例3.2の混合物とし、それぞれの混合物を試験した。結果を次の表に示す。
【0172】
【表15】

【0173】
<例4>
次表に与えられた組成と特性を有する液晶混合物を実現した。
【0174】
【表16】

この混合物は、有利に低いΔn値、高いΔε値および低い回転粘度を有する。従って、IPSモードで動作するディスプレイに非常によく適している。さらに、低温でのネマチック相の良好な安定性を有している。
【0175】
<例5>
次表に与えられた組成と特性を有する液晶混合物を実現した。
【0176】
【表17】

【0177】
この混合物は、有利に低いΔn値、高いΔε値および低い回転粘度を有する。従って、IPSモードで動作するディスプレイに非常によく適している。さらに、低温でのネマチック相の良好な安定性を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の誘電的に正の成分として、式Iで表される誘電的に正の化合物を含む成分Aと、
第2の誘電的に正の成分として、誘電異方性が3より大きい誘電的に正の化合物を1種または2種以上含む成分Bと、
任意成分であって、誘電的に中性の成分として、−1.5〜3の範囲の誘電異方性を有する誘電的に中性の化合物を1種または2種以上含む成分Cと
を含むことを特徴とする液晶媒体。
【化1】

(式中、Rは、1〜7個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ素化アルキルまたはフッ素化アルコキシ基であるか、2〜7個の炭素原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ素化アルケニル基であり、
はハロゲンであり、
Lは、互いに独立してClまたはFであり、
nおよびmは、互いに独立してそれぞれ0から4の整数である。)
【請求項2】
媒体中の成分Aの濃度が0.1%から20%の範囲であることを特徴とする請求項1記載の液晶媒体。
【請求項3】
誘電的に正の成分である成分Bが、式IIおよびIIIの化合物の群から選ばれる1種または2種以上の化合物を含有する請求項1または2記載の液晶媒体。
【化2】

(式中、RおよびRは、互いに独立して、それぞれ1〜7個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ素化アルキルまたはフッ素化アルコキシ基であるか、2〜7個の炭素原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ素化アルケニル基であり、
【化3】

であり、
21、L22、L31およびL32は、互いに独立して、HまたはFであり、
およびXは、互いに独立して、ハロゲン、1〜3個の炭素原子を有するハロゲン化アルキルまたはアルコキシ基、または2個または3個の炭素原子を有するハロゲン化アルケニルまたはアルケニルオキシ基であり、
は、−CHCH−、−CFCF−、−COO−、トランス−CH=CH−、トランス−CF=CF−、−CHO−または単結合であり、
l、m、nおよびoは、互いに独立して、0または1である。)
【請求項4】
請求項2の式IIで表される化合物を1種または2種以上含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液晶媒体。
【請求項5】
請求項2の式IIIで表される化合物を1種または2種以上含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液晶媒体。
【請求項6】
式IVで表される誘電的に中性の化合物を1種または2種以上含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の媒体。
【化4】

(式中、R41およびR42は、互いに独立して、請求項2の式IIのRで与えられる意味を有し、
【化5】

であり、
41およびZ42は、互いに独立して、およびZ41が2つ存在する場合は、これらも互いに独立して、−CHCH−、−COO−、トランス−CH=CH−、トランス−CF=CF−、−CHO−、−CFO−または単結合であり、
pは、0、1または2である。)
【請求項7】
式Vで表される化合物を1種または2種以上含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液晶媒体。
【化6】

(式中、R61およびR62は、互いに独立して、請求項3の式IIのRで与えられる意味を有し、
【化7】

であり、
61およびZ62は、互いに独立して、およびZ61が2つ存在する場合は、これらも互いに独立して、−CHCH−、−COO−、トランス−CH=CH−、トランス−CF=CF−、−CHO−、−CFO−または単結合であり、
rは、0、1または2である。)
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の液晶媒体を含むことを特徴とする液晶ディスプレイ。
【請求項9】
アクティブマトリックス駆動されることを特徴とする請求項8記載の液晶ディスプレイ。
【請求項10】
液晶ディスプレイにおける請求項1〜7のいずれかに記載の液晶媒体の使用。

【公開番号】特開2007−246906(P2007−246906A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67761(P2007−67761)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】