説明

液晶媒体および液晶ディスプレイ

【課題】液晶媒体および液晶ディスプレイを提供する。
【解決手段】式Iの1種類以上の重合性化合物を含み、誘電的に正で、好ましくは、ネマチックな媒体と、そこに含有されるポリマー安定化媒体と、液晶ディスプレイにおけるそれらの使用と、これらのディスプレイ、特に、PSA−IPS、PSA−FFSおよびPSA−正のVAディスプレイとに関する。


(P11およびP12は、互いに独立に、重合性基であり、Sp11およびSp12は、連結基または単結合であり、X11およびX12は、−O−、−O−CO−、−CO−O−等、Lは、H、F、Clまたは1〜5個のC原子を有するアルキル等であり、好ましくは、H、FまたはClであり、rおよびsは、互いに独立に、0、1、2または3であり、tは、0、1または2である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶媒体、特に、ポリマーによって安定化されている媒体、およびこれらの媒体を含有する液晶ディスプレイ、特に、アクティブマトリクスによってアドレスされるディスプレイ、および、特には、面内スイッチング(IPS:in−plane switching)、フリンジ場スイッチング(FFS:fringe−field switching)または正のΔεの垂直配向(正のVA:positive vertically aligned)タイプのディスプレイ、および、非常に特には、PS(polymer−stabilised:ポリマー安定化)またはPSA(polymer−sustained alignment:ポリマー維持配向)タイプの液晶ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
現在使用されている液晶ディスプレイ(LCディスプレイ(liquid−crystal display)、略して、「ディスプレイ」または「LCD」とも呼ばれる)は、通常、TN(twisted nematic:ツイストネマチック)タイプのものである。しかしながら、これらは、コントラストの視野角依存性が強いという不都合を有する。
【0003】
加えて、より広い視野角を有する所謂VA(vertical alignment:垂直配向)ディスプレイが知られている。VAディスプレイの液晶セルは2つの透明電極の間に液晶媒体層を含有しており、そこでは、通常、液晶媒体は負の値の誘電(DC:dielectric)異方性(Δε)を有する。スイッチが切れている状態で、液晶層の分子は電極表面に垂直に配向しているか(ホメオトロピック的)、または、チルトホメオトロピック配向を有している。電極に電圧を印加すると、電極表面に平行な液晶分子の再配向が起きる。
【0004】
更に、複屈折効果に基づいて、所謂「ベンド(bend)」配向で通常は正の(DC)異方性の液晶層を有しているOCB(optically compensated bend:光学補償ベンド)ディスプレイが知られている。電圧を印加すると、電極表面に垂直な液晶分子の再配向が起きる。加えて、暗状態においてベンドセルの光に対する望ましくない透明性を防ぐために、通常、OCBディスプレイは1枚以上の複屈折光学的リターデーションフィルムを含有する。OCBディスプレイは、TNディスプレイと比較して、より広い視野角および、より短い応答時間を有する。
【0005】
特に、2枚の基板の間に液晶層を含有し、基板の一方のみが、通常、櫛形構造の電極層を有するIPS(in−plane switching:面内スイッチング)ディスプレイが知られている。電圧を印加すると、それにより液晶層に平行な有意な成分を有する電界が生成される。このため、層面内において液晶分子の再配向が生じる。
【0006】
更に、所謂FFS(fringe−field switching:フリンジ場スイッチング)ディスプレイが提案されており(とりわけ、S.H.Jungら、Jpn.J.Appl.Phys.、43巻、3号、2004年、1028頁を参照;非特許文献1)、同様に同一の基板上に2つの電極を含有するが、IPSディスプレイとは対照的に、これらの一方のみが構造化された(櫛形)電極の形状であり、他方の電極は構造化されていない。それにより、強力な所謂「フリンジ場」、即ち、電極端の近傍における強力な電界およびセル全体にわたって強力な垂直成分および強力な水平成分の両者ともを有する電界が生成される。IPSディスプレイおよびFFSディスプレイの両者とも、コントラストの低い視野角依存性を有する。
【0007】
上述のディスプレイタイプの更に発展したものは、用語「PSA」(「polymer sustained alignment」:ポリマー維持配向)としても知られている所謂「PS」(「polymer stabilised」:ポリマー安定化)ディスプレイである。これらにおいては、少量(例えば、0.3%、典型的には、0.1%以上〜5%以下の範囲内において、好ましくは、3%以下まで)の重合性化合物を液晶媒体に添加し、液晶セルに導入後、電圧を印加したまま、通常、UV光重合によって、その場で電極間において重合または架橋する。また、これらの混合物は、例えば、米国特許第6,781,665号明細書(特許文献1)において記載される通りの開始剤も任意に含んでもよい。重合性化合物を含む混合物に、開始剤、例えば、チバ社製Irganox(登録商標)1076を、好ましくは0〜1%の量で加える。「反応性メソゲン」(RM:reactive mesogen)とも称される重合性メソゲンまたは液晶化合物を液晶混合物に添加することが、特に適切であることが証明されている。当面のところ、PSAの原理は、さまざまな古典的液晶ディスプレイ中で使用されている。例えば、PSA−VA、PSA−OCB、PS−IPS/FFSおよびPS−TNディスプレイが知られている。テストセルにおいて示すことができる通り、PSA法によってセル中の液晶の初期配向が安定化される結果となる。従って、PSA−OCBディスプレイにおいて、ベンド構造の安定化を達成することが可能となり、オフセット電圧を低減または完全に省くことすらできる。PSA−VAディスプレイの場合、ディスプレイの表面に対する垂線より測定される「プレチルト」が低減され、このことは、ディスプレイにおける応答時間に対して正の効果を有する。PSAディスプレイの場合、反応性メソゲンの重合が液晶混合物中で起きるよう意図されている。このための必要条件は、液晶混合物自身が重合性成分を一切含まないことである。適切な重合性化合物は、例えば、表Gに列記されている。
【0008】
加えて、所謂、正のVAディスプレイが、特に好ましい実施形態であることが証明されてきた。これらのディスプレイにおいては、誘電的に正の液晶媒体が使用される。電圧がかかっていない初期状態における液晶の初期配向は、ホメオトロピックであり、即ち、基板に対して本質的に垂直である。櫛歯状電極に電圧を印加すると液晶媒体層に本質的に平行な電界が生成され、基板に本質的に平行な配向への液晶の転換が生じる。また、このタイプの櫛歯状電極は、通常、IPSディスプレイにおいても使用される。また、対応するポリマー安定化(PSA:polymer stabilisation)も、これらの正のVAディスプレイにおいてうまく働くことが証明されている。また、応答時間の著しい短縮も達成できる。
【0009】
特に、モニターおよび特にはテレビ用途向けのみならず携帯用途(携帯テレビ)および「ノート型」テレビ(NBTV:notebook TV)用に、液晶ディスプレイの応答時間のみならずコントラストおよび輝度(よって、透過性)も最適化することが引き続き望まれている。ここで、PSA法は重要な利点を提供できる。特に、PSA−IPS、PSA−FFSおよびPSA−正のVAの場合、特に、これらのディスプレイのコントラストの良好な視野角依存性などの他のパラメータに著しい悪影響を及ぼすことなく、応答時間の短縮を達成できる。
【0010】
正の誘電異方性を有する液晶混合物を含むディスプレイ、および、ポリマーは、例えば、国際特許出願公開第2009/156118号パンフレット(特許文献2)において開示されている。
【0011】
しかしながら、先行技術より既知の液晶混合物およびRMは、PSAディスプレイにおいて使用する際に、各種の不都合を依然として有することが見出されてきた。重合は、好ましくは、光開始剤を添加することなくUV光を用いて行わなければならず、これは特定の用途に好都合のことがある。加えて、液晶混合物(また、下では「液晶ホスト混合物」とも、また、略して単に「ホスト混合物」とも言う)および重合性成分を含む選択された「材料系」は、可能な限り低い回転粘度および可能な限り良好な電気特性を有していなければならない。ここでは、所謂「電圧保持率(voltage holding ratio)」(略して、VHRまたはHR)が強調されるべきである。PSAディスプレイに関しては、通常、UV曝露はディスプレイの製造工程の不可欠な部分であるが、また、当然ながら、製造終了後のディスプレイにおいても「通常」の曝露として起こるため、特に、UV光照射後の高いVHRが中心的に重要なものである。
【0012】
しかしながら、例えば、TFTディスプレイにおいて使用するには、そのVHRがしばしば不適切であったり、あるいは液晶混合物の配向の安定化が不満足であったりするため、これまでの液晶混合物および重合性成分の全ての組み合わせが、PSAディスプレイに適している訳ではないと言う問題が生じる。
【0013】
特に、実用的用途に対して不具合が著しく低減されたPSAディスプレイ用の入手可能で新規な材料を有することが望ましい。
【0014】
よって、上記の不都合を示さないか、僅かな程度にのみ示し、改良された特性を有する、特にIPSおよびFFSタイプのPSAディスプレイ、および、そのようなディスプレイにおいて使用するための液晶媒体および重合性化合物に対する多大な要求が引き続きある。特に、高い比抵抗と同時に広い動作温度範囲で低温においてすら短い応答時間、および、低い閾電圧、多数の中間階調、高いコントラストおよび広い視野角を可能とし、また、特にUV曝露後も高い電圧保持率を有し、および、特に、改良された応答時間を有するPSAディスプレイ、および、PSAディスプレイにおいて使用するための材料に対する多大な要求がある。
【0015】
本発明は、上に示される不都合を有していないか、低減された程度にのみ有しおり、同時に、非常に高い比抵抗値、高いVHR値、広い視野角範囲、低い閾電圧、および、特に短い応答時間が可能となるPSAディスプレイにおいて使用するための新規な液晶混合物および新規な液晶媒体を提供する目的に基づく。
【0016】
この目的は、本出願において記載される通りの液晶媒体および液晶ディスプレイによって本発明に従い達成された。特に、驚くべきことに、PSAディスプレイにおいて本発明による液晶媒体を使用すると、特に速い応答時間を達成できることが見出された。
【0017】
一般にこれらのディスプレイのためには、および、特に、PSA−IPSおよびPSA−FFSディスプレイの場合、改良された特性を有する新規な液晶媒体が必要である。特に、アドレス時間は、多くのタイプの用途のために改良されなければならない。従って、比較的低い粘度(η)を有し、特に、比較的低い回転粘度(γ)を有する液晶媒体が必要である。特に、モニター用途向けには、回転粘度が100mPa・s以下、好ましくは80mPa・s以下、好ましくは60mPa・s以下、特には55mPa・s以下であるべきである。このパラメータに加え、媒体は適切な幅および位置のネマチック相範囲および適切な複屈折(Δn)を有していなければならず、誘電異方性(Δε)は相当に低い動作電圧を可能とするために十分高くなければならない。Δεは、好ましくは2より大きく、非常に好ましくは3より大きいが、好ましくは20以下、特に好ましくは15以下、非常に特に好ましくは12以下であるべきであり、これにより少なくとも相当に高い比抵抗が保たれるからである。
【0018】
ノート型パソコンまたは他の携帯用途向けのディスプレイとしての用途については、回転粘度は、好ましくは90mPa・s以下、より好ましくは55mPa・s以下、特に好ましくは50mPa・s以下であるべきである。ここで、誘電異方性は、好ましくは3.0以上、好ましくは4.0以上、特に好ましくは6.0以上であるべきである。
【0019】
テレビ用のディスプレイとしての用途向けには、誘電異方性は、好ましくは2より大きく、特に好ましくは3より大きいが、好ましくは10未満、好ましくは8未満、特に好ましくは5未満であるべきである。ここで、透明点は50℃以上〜100℃以下の範囲内であるべきであり、複屈折率は0.08以上〜0.13以下の範囲内であるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第6,781,665号
【特許文献2】国際特許出願公開第2009/156118号パンフレット
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】S.H.Jungら、Jpn.J.Appl.Phys.、43巻、3号、2004年、1028頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
従って、広いネマチック相範囲、使用されるディスプレイのタイプに対応する適切な光学異方性(Δn)、適切に高いΔε、および、特に短い応答時間のための特に低い粘度などの実用的用途向けに適切な特性を有する液晶媒体に対する多大な要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
ここで驚くべきことに、適切に高いΔε、適切な相範囲およびΔn有し、先行技術からの材料の不具合を有していないか、少なくとも著しく低減された程度にのみ有する液晶媒体を達成することが可能であることが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0024】
これらの改良された本出願による液晶媒体は、少なくとも以下の化合物を含む:
−式Iの1種類以上の重合性化合物、および
−式IIおよびIIIの化合物群より選択される1種類以上の誘電的に正の化合物(好ましくは、それぞれ、3より大きい誘電異方性を有する化合物)、および
−任意成分として、式IVの1種類以上の誘電的に中性の化合物。
【0025】
【化1】

式中、
11およびP12は、互いに独立に、重合性基、好ましくは、アクリレートまたはメタクリレートであり、
Sp11およびSp12は、互いに独立に、1〜10個のC原子を有するスペーサー基または単結合であり、
11およびX12は、互いに独立に、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−または単結合であり、
Lは、それぞれの出現において、それぞれ互いに独立に、H、F、Clまたは1〜5個のC原子を有するアルキル、好ましくは、H、FまたはClであり、
rおよびsは、互いに独立に、0、1、2または3であり、
tは、0、1または2である。
【0026】
【化2】

式中、
は、1〜7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ化アルキルまたはフッ化アルコキシ、2〜7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ化アルケニル、好ましくは、アルキルまたはアルケニルを表し、
【0027】
【化3】

好ましくは、
【0028】
【化4】

を表し、
21およびL22はHまたはFを表し、好ましくは、L21はFを表し、
は、ハロゲン、1〜3個のC原子を有するハロゲン化アルキルまたはアルコキシ、または、2個または3個のC原子を有するハロゲン化アルケニルまたはアルケニルオキシ、好ましくは、F、Cl、−OCF、−O−CHCF、−O−CH=CH、−O−CH=CFまたは−CF、非常に好ましくは、F、Cl、−O−CH=CFまたは−OCFを表し、
mは、0、1、2または3、好ましくは1または2、特に好ましくは1を表し、
は、1〜7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ化アルキルまたはフッ化アルコキシ、2〜7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ化アルケニル、好ましくは、アルキルまたはアルケニルを表し、
【0029】
【化5】

好ましくは、
【0030】
【化6】

であり、
31およびL32は、互いに独立に、HまたはFを表し、好ましくは、L31はFを表し、
は、ハロゲン、1〜3個のC原子を有するハロゲン化アルキルまたはアルコキシ、または、2個または3個のC原子を有するハロゲン化アルケニルまたはアルケニルオキシ、F、Cl、−OCF、−O−CHCF、−O−CH=CF、−O−CH=CHまたは−CF、非常に好ましくは、F、Cl、−O−CH=CFまたは−OCFを表し、
は、−CHCH−、−CFCF−、−COO−、トランス−CH=CH−、トランス−CF=CF−、−CHO−または単結合、好ましくは、−CHCH−、−COO−、トランス−CH=CH−または単結合、非常に好ましくは、−COO−、トランス−CH=CH−または単結合を表し、および
nは、0、1、2または3、好ましくは1または3、特に好ましくは1を表す。
【0031】
【化7】

式中、
41およびR42は、互いに独立に、式IIにおいてRについて上で示される意味を有し、好ましくは、R41がアルキルを表し、R42がアルキルまたはアルコキシを表すか、または、R41がアルケニルを表し、R42がアルキルを表し、
【0032】
【化8】

を表し、
好ましくは、
【0033】
【化9】

41およびZ42は互いに独立に、Z41が2回出現する場合は、また、これらも互いに独立に、−CHCH−、−COO−、トランス−CH=CH−、トランス−CF=CF−、−CHO−、−CFO−、−C≡C−または単結合を表し、好ましくは、それらの1個以上は単結合を表し、および
pは、0、1または2、好ましくは、0または1を表す。
【0034】
本出願による液晶媒体は、好ましくは、1種類以上の少なくとも一反応性の重合性化合物を含む。特に好ましい実施形態において、液晶媒体は1種類以上の二反応性の重合性化合物を含む。
【0035】
本出願による液晶媒体は、任意成分として、1種類以上の重合開始剤、好ましくは、1種類以上の光開始剤を含んでもよい。媒体における開始剤(1種類)の濃度または開始剤(多種類)の総濃度は、重合性化合物の総濃度を基礎として、好ましくは、0.001%〜1%、好ましくは、0.1%〜10%である。
【0036】
本出願による液晶媒体は、好ましくは、ネマチック相を有する。
【0037】
本発明は、更に、上および下に記載される通りの本発明による液晶混合物と、好ましくは反応性メソゲンより選択される1種類以上の重合性化合物とを含む液晶媒体に関する。
【0038】
本発明は、更に、
−好ましくは反応性メソゲンより選択される1種類以上の重合性化合物を含む重合性成分(成分A)と、
−上および下に記載される通りの式IIおよび/またはIIIの1種類以上の化合物を5%以上含む本発明による液晶混合物から成り、下では「液晶ホスト混合物」または「ホスト混合物」とも言う(非重合性の)液晶成分(成分B)と
を含む液晶媒体に関する。
【0039】
本発明は、更に、好ましくは、電界および/または磁界を印加することなく、PAまたはPSAディスプレイにおいて重合性化合物(1種類または多種類)をその場で(インサイチュー)重合することにより応答時間を改良するために、PSおよびPSAディスプレイにおいて本発明による液晶混合物および液晶媒体を使用すること、特に、液晶媒体を含有するPSおよびPSAディスプレイにおいて使用することに関する。しかしながら、また、電界および/または磁界、好ましくは電界を印加した状態で、重合性化合物(1種類または多種類)の重合を行うこともできる。この場合に印加される電圧は、かなり低くなければならず、特には、0Vから使用される電気光学的効果の閾電圧(Vth)の間の範囲内であるべきである。
【0040】
本発明は、更に、本発明による液晶媒体を含有する液晶ディスプレイ、特に、PSまたはPSAディスプレイ、特に好ましくは、PS−IPS、PSA−IPS、PS−FFSまたはPSA−FFSディスプレイまたはPS−正のVAまたはPSA−正のVAディスプレイに関する。
【0041】
本発明は、更に、2枚の基板(ただし、少なくとも一方の基板は光に対して透明であり、少なくとも一方の基板は電極層を有する。)と、基板間に配置され、重合された成分および低分子量成分を含む液晶媒体層(ただし、重合された成分は、1種類以上の重合性化合物を、液晶セルの基板間において液晶媒体中で、好ましくは電圧を印加しながら重合することで得ることができ、ただし、低分子量成分は上および下で記載される通りの本発明による液晶混合物である。)とから成る液晶セルを含むPSまたはPSAタイプの液晶ディスプレイに関する。
【0042】
本発明は、更に、重合性化合物(1種類または多種類)を重合することで安定化された液晶媒体を含有する液晶ディスプレイに関する。
【0043】
本発明によるディスプレイは、好ましくは、アクティブマトリクス(active matrix LCD、略してAMD)、好ましくは、薄膜トランジスタ(TFT:thin−film transistor)のマトリクスによってアドレスされる。しかしながら、また、本発明による液晶は、他の既知のアドレス手段を有するディスプレイにおいても有利な態様において使用できる。
【0044】
本発明は、更に、本発明による1種類以上の低分子量液晶化合物または液晶混合物を、1種類以上の重合性化合物と、および、任意成分として更なる液晶化合物および/または添加剤と混合することによって本発明による液晶媒体を調製する方法に関する。
【0045】
本発明は、更に、本発明による液晶混合物を、1種類以上の重合性化合物と、および、任意成分として更なる液晶化合物および/または添加剤と混合し、その結果得られる混合物を上および下に記載される通りの液晶セルに導入し、好ましくは0VとVthの間の範囲内で任意に電圧を印加して、特に好ましくは電圧を印加せずに、重合性化合物(1種類または多種類)を重合することによって本発明による液晶ディスプレイを製造する方法に関する。
【0046】
本発明は、更に、ディスプレイ内において必要により電圧を印加し、重合性化合物(1種類または多種類)を重合することによって本発明による媒体が安定化されている液晶ディスプレイを製造する方法に関する。
【0047】
以下の意味を上および下で適用する。
【0048】
他に示さない限り、用語「PSA」をPSディスプレイおよびPSAディスプレイを表すために使用する。
【0049】
用語「チルト」および「チルト角」は、液晶ディスプレイ(本明細書において、好ましくは、PSまたはPSAディスプレイ)において液晶媒体の分子がセル表面に対してチルトした配向に関する。本明細書において、チルト角は、液晶分子の分子長軸(液晶ダイレクタ)と、液晶セルの表面を形成する平坦で平行な外板の表面との間の平均角(90°未満)を表す。
【0050】
用語「メソゲン基」は当業者に既知で文献に記載されており、それの引力および斥力的相互作用の異方性によって、低分子量または高分子物質中で液晶(LC:liquid−crystalline)相の発生に本質的に寄与する基を表す。メソゲン基を含有する化合物(メソゲン化合物)は、それ自身では必ずしも液晶相を有する必要はない。また、他の化合物と混合後および/または重合後のみに、メソゲン化合物が液晶相挙動を示すことも可能である。典型的なメソゲン基は、例えば、剛直な棒状または円盤状の形状の単位である。メソゲンまたは液晶化合物に関して使用される用語および定義の概説は、Pure Appl.Chem.73巻(5号)、888頁(2001年)およびC.Tschierske、G.Pelzl、S.Diele、Angew.Chem.2004年、116巻、6340〜6368頁において与えられている。
【0051】
用語「スペーサー基」または略して「スペーサー」は、上および下で「Sp」とも呼ばれ、当業者に既知で文献に記載されており、例えば、Pure Appl.Chem.73巻(5号)、888頁(2001年)およびC.Tschierske、G.Pelzl、S.Diele、Angew.Chem.2004年、116巻、6340〜6368頁を参照。他に示さない限り、用語「スペーサー基」または「スペーサー」は、上および下において、重合性メソゲン化合物中でメソゲン基および重合性基(1個または複数)を互いに連結している柔軟性の基を表す。
【0052】
用語「反応性メソゲン」または「RM(reactive mesogen)」は、メソゲン基および重合に適切な1個以上の官能基(重合性基または基Pとも呼ばれる)を含有する化合物を表す。
【0053】
用語「低分子量化合物」および「非重合性化合物」は、通常、モノマー性で、当業者に既知の通常の条件下、特にRMの重合のために使用される条件下において重合に適する官能基を含有しない化合物を表す。
【0054】
「非重合性」は、少なくとも重合性化合物を重合するために使用される条件下において、重合反応に対して化合物が安定であるか非反応性であることを意味する。
【0055】
本発明の目的のために、用語「液晶媒体」は、液晶混合物および1種類以上の重合性化合物(例えば、反応性メソゲンなど)を含む媒体を表すことを意図する。用語「液晶混合物」(または「ホスト混合物」)は、非重合性で低分子量の化合物、好ましくは、2種類以上の液晶化合物と、任意成分として、例えば、キラルドーパントまたは安定剤などの更なる添加剤とから排他的に成る液晶混合物を表すことを意図する。
【0056】
特に、室温においてネマチック相を有する液晶混合物および液晶媒体が特に好ましい。
【0057】
また、本発明による液晶混合物および液晶媒体は、例えば、重合開始剤、禁止剤、安定剤、表面活性化物質またはキラルドーパントなどの当業者に既知で文献に記載されている更なる添加剤を含んでもよい。これらは重合性でも非重合性でもよい。従って、重合性添加剤は重合性成分に分類される。従って、非重合性添加剤は液晶混合物(ホスト混合物)または非重合性成分に分類される。
【0058】
PSAディスプレイを製造するために、好ましくは0V〜Vthの範囲内で任意に電圧を印加するが、特に好ましくは電圧を印加せずに、液晶ディスプレイの基板間の液晶媒体中において、その場での重合(インサイチュー重合)により、重合性化合物を重合または架橋(1つの化合物が2個以上の重合性基を含有する場合)する。重合は1つの工程で行うことができる。また、最初に、配向の安定化を引き起こすために電圧を印加しながら第1工程における重合を行い、続いて、第2重合工程において電圧を印加せずに、第1工程において反応しなかった化合物を重合または架橋する(「最終硬化」)ことも可能である。
【0059】
適切で好ましい重合方法は、例えば、熱または光重合で、好ましくは光重合であり、特にはUV光重合である。また、必要に応じて、ここに1種類以上の開始剤を加えることもできる。重合のために適切な条件および開始剤の適切なタイプおよび量は当業者に既知であり、文献に記載されている。例えば、商業的に入手可能な光重合開始剤Irgacure651(登録商標)、Irgacure184(登録商標)、Irgacure907(登録商標)、Irgacure369(登録商標)またはDarocure1173(登録商標)(全てCiba社)がフリーラジカル重合に適する。開始剤を用いる場合、開始剤の比率は、混合物全体を基礎として、好ましくは0.001〜5%、特に好ましくは0.001〜1%である。しかしながら、また、開始剤を加えることなく、重合を行うこともできる。更に好ましい実施形態において、液晶媒体は重合開始剤を含まない。
【0060】
また、例えば、保存または輸送中におけるRMの好ましくない自発的な重合を防止するために、重合性成分(成分A)または液晶媒体(成分B)は1種類以上の安定剤を含んでもよい。安定剤の適切なタイプおよび量は当業者に既知であり、文献に記載されている。例えば、Irganox(登録商標)シリーズ(Ciba社)からの商業的に入手可能な安定剤、例えば、Irganox(登録商標)1076(同様にCiba社)などが特に適切である。安定剤を用いる場合、安定剤の割合は、RMまたは重合性成分A)の総量を基礎として、好ましくは10〜10,000ppm、特に好ましくは50〜500ppmである。
【0061】
また、重合性化合物は開始剤のない重合にも適しており、このことは、例えば、材料費の低下、特に、開始剤またはそれの分解生成物の残存し得る量による液晶媒体の不純物がより少ないなどの特筆すべき利点を伴う。
【0062】
PSAディスプレイにおいて使用するための本発明による液晶媒体は、好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下、および、好ましくは0.01%以上、特に好ましくは0.1%以上の重合性化合物、特には、上および下で与えられる式の重合性化合物を含む。
【0063】
1種類、2種類または3種類の重合性化合物を含む液晶媒体が特に好ましい。
【0064】
更に、成分A)および/またはB)の化合物がアキラルな化合物から成る群より排他的に選択されるアキラルな重合性化合物と、液晶媒体とが好ましい。
【0065】
更に、重合性成分(または成分A)が、1個の重合性基を含有する1種類以上の重合性化合物(一反応性)と、2個以上、好ましくは2個の重合性基を含有する1種類以上の重合性化合物(二反応性または多反応性)とを含む液晶媒体が好ましい。
【0066】
更に、重合性成分または成分A)が、2個の重合性基を含有する重合性化合物(二反応性)を排他的に含むPSAディスプレイおよび液晶媒体が好ましい。
【0067】
重合性化合物は個別に液晶混合物に添加できるが、また、本発明に従って用いられる2種類以上の重合性化合物を含む混合物を使用することも可能である。そのような混合物を重合する場合、コポリマーが形成される。本発明は、更に、上および下で述べられる重合性混合物に関する。重合性化合物は、メソゲンでも非メソゲンでもよい。反応性メソゲン(RM:reactive mesogen)としても既知の重合性メソゲン化合物が特に好ましい。
【0068】
本発明による液晶媒体およびPSAディスプレイにおける使用に適切で好ましいRMを下に記載する。
【0069】
本出願による液晶媒体は、好ましくは、総和で0.05〜10%、好ましくは0.1〜4.0%、特に好ましくは0.2〜2.0%の、好ましくは式Iの重合性化合物を含む。
【0070】
式Iの特に好ましい化合物は、式Iの以下のサブ式である式I−1〜I−10より選択される:
【0071】
【化10】

【0072】
【化11】

式中、
L、r、sおよびtは、上で与えられる意味を有し、および
nおよびmは、互いに独立に、1〜18、好ましくは、2〜5の整数である。
【0073】
用語「炭素基」は、少なくとも1個の炭素原子を含有する一価または多価の有機基を表し、ただし、これは、更なる種類の原子を含有しない(例えば、−C≡C−など)か、または、例えば、N、O、S、P、Si、Se、As、TeまたはGeなどの1種類以上の更なる原子を含有していてもよい(例えば、カルボニルなど)かのいずれかである。用語「炭化水素基」は、1個以上のH原子を追加的に含有しており、例えば、N、O、S、P、Si、Se、As、TeまたはGeなどの1種類以上のヘテロ原子を含有していてもよい炭素基を表す。
【0074】
「ハロゲン」は、F、Cl、BrまたはI、好ましくは、FまたはCl、特に好ましくは、Fを表す。
【0075】
炭素または炭化水素基は、飽和または不飽和基のいずれでもよい。不飽和基は、例えば、アリール、アルケニルまたはアルキニル基である。3個より多いC原子を有する炭素または炭化水素基は、直鎖状、分岐状および/または環状のいずれでもよく、また、スピロ連結または縮合環を含有していてもよい。
【0076】
また、用語「アルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」などは、多価の基、例えば、アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレンなども包含する。
【0077】
用語「アリール」は、芳香族炭素基またはそれらより誘導される基を表す。用語「ヘテロアリール」は、1個以上のヘテロ原子を含有し、上で定義される通りの「アリール」を表す。
【0078】
好ましい炭素および炭化水素基は、置換されていてもよく、1〜40個、好ましくは1〜25個、特に好ましくは1〜18個のC原子を有するアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシおよびアルコキシカルボニルオキシ、置換されていてもよく、6〜40個、好ましくは6〜25個のC原子を有するアリールまたはアリールオキシ、または、置換されていてもよく、6〜40個、好ましくは6〜25個のC原子を有するアルキルアリール、アリールアルキル、アルキルアリールオキシ、アリールアルキルオキシ、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールカルボニルオキシおよびアリールオキシカルボニルオキシである。
【0079】
更に好ましい炭素および炭化水素基は、C〜C40アルキル、C〜C40アルケニル、C〜C40アルキニル、C〜C40アリル、C〜C40アルキルジエニル、C〜C40ポリエニル、C〜C40アリール、C〜C40アルキルアリール、C〜C40アリールアルキル、C〜C40アルキルアリールオキシ、C〜C40アリールアルキルオキシ、C〜C40ヘテロアリール、C〜C40シクロアルキル、C〜C40シクロアルケニルなどである。C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、C〜C22アルキニル、C〜C22アリル、C〜C22アルキルジエニル、C〜C12アリール、C〜C20アリールアルキルおよびC〜C20ヘテロアリールが特に好ましい。
【0080】
更に好ましい炭素および炭化水素基は、直鎖状、分岐状または環状で、1〜40個、好ましくは1〜25個のC原子を有するアルキル基であり、該基は無置換であるか、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されており、ただし、1個以上の隣接していないCH基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、それぞれ互いに独立に、−C(R)=C(R)−、−C≡C−、−N(R)−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−で置き換えられていてもよい。
【0081】
は、好ましくは、H、ハロゲン、直鎖状、分岐状または環状で1〜25個のC原子を有するアルキル鎖(ただし加えて、1個以上の隣接していないC原子は、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−によって置き換えられていてもよく、ただし、1個以上のH原子はフッ素により置き換えられていてもよい。)、置換されていてもよく6〜40個のC原子を有するアリールまたはアリールオキシ基、または置換されていてもよく2〜40個のC原子を有するヘテロアリールまたはヘテロアリールオキシ基を表す。
【0082】
好ましいアルキル基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、2−メチルブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、2−エチルヘキシル、n−ヘプチル、シクロヘプチル、n−オクチル、シクロオクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、ドデカニル、トリフルオロメチル、ペルフルオロ−n−ブチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペルフルオロオクチル、ペルフルオロヘキシルなどである。特に好ましいアルキル基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、2−メチルブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、n−ヘキシル、2−エチルヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシルである。
【0083】
好ましいアルケニル基は、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニルなどである。特に好ましいアルケニル基は、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニルである。
【0084】
好ましいアルキニル基は、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、オクチニルなどである。
【0085】
好ましいアルコキシ基は、例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、2−メチルブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、n−ヘプトキシ、n−オクトキシ、n−ノノキシ、n−デコキシ、n−ウンデコキシ、n−ドデコキシなどである。特に好ましいアルコキシ基は、例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシおよびt−ブトキシである。
【0086】
好ましいアミノ基は、例えば、ジメチルアミノ、メチルアミノ、メチルフェニルアミノ、フェニルアミノなどである。
【0087】
アリールおよびヘテロアリール基は単環でも多環でもよく、即ち、それらは1個の環(例えば、フェニルなど)または2個以上の環を含有してもよく、また、該基は縮合されていてもよく(例えば、ナフチルなど)または共有結合によって連結されていてもよく(例えば、ビフェニルなど)、または縮合および連結された環の組み合わせを含有していてもよい。ヘテロアリール基は、好ましくは、O、N、SおよびSeより選択される1個以上のヘテロ原子を含有する。
【0088】
6〜25個のC原子を有する単環式、二環式または三環式アリール基および2〜25個のC原子を有する単環式、二環式または三環式ヘテロアリール基が特に好ましく、該基は縮合された環を含有していてもよく、置換されていてもよい。更に、5員、6員または7員のアリールおよびヘテロアリール基が好ましく、ただし加えて、1個以上のCH基は、O原子および/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、N、SまたはOで置き換えられていてもよい。
【0089】
重合性化合物およびRMは、当業者に既知で、例えば、Houben−Weyl編、Methoden der organischen Chemie[Methods of Organic Chemistry]、Thieme−Verlag社、Stuttgart市などの有機化学の標準的な著作に記載される方法に類似して調製できる。更なる合成方法は、上および下で引用する文献において与えられる。最も単純な場合、例えば、そのようなRMの合成は、例えば、(メタ)アクリロイルクロリドまたは(メタ)アクリル酸などの基Pを含有する対応する酸、酸誘導体またはハロゲン化された化合物を使用し、例えば、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)などの脱水剤存在下において、2,6−ジヒドロキシナフタレンまたは4,4’−ジヒドロキシビフェニルをエステル化またはエーテル化することで行う。
【0090】
本発明によって使用できる液晶媒体の調製は、例えば、1種類以上の上述の化合物を、上で定義される通りの1種類以上の重合性化合物と、および、任意成分として更なる液晶化合物および/または添加剤と混合することで、それ自身は従来の方法で行われる。一般に、より少量で使用される成分の所望量を、主要な構成成分を構成する成分に、有利には昇温して、溶解する。また、成分の溶液を、例えば、アセトン、クロロホルムまたはメタノールといった有機溶媒に混合し、完全に混合後、例えば蒸留により、溶媒を再び除去することも可能である。本発明は、更に、本発明による液晶媒体を調製するための方法にも関する。
【0091】
また、本発明による液晶媒体が、例えば、H、N、O、ClまたはFが対応する同位体に置き換えられた化合物も含んでよいことは、当業者に言うまでもない。
【0092】
本発明による液晶ディスプレイの構造は、冒頭で引用した先行技術に記載される通りのPSAディスプレイの通常の構成に対応している。突起のない構成が好ましく、特に加えて、カラーフィルター側の電極が構造化されておらず、TFT側の電極のみがスリットを有するものが好ましい。PS−VAディスプレイ用に特に適切で好ましい電極構造は、例えば、米国特許出願公開第2006/0066793号公報に記載されている。
【0093】
本発明による液晶混合物および液晶媒体は、原則として、任意のタイプのPSまたはPSAディスプレイ、特に正の誘電異方性の液晶媒体に基づくもの、特に好ましくはPSA−IPSまたはPSA−FFSディスプレイ用に適している。しかしながら、また、当業者は、例えば、それらの基本的な構造において、または、例えば、基板、配向層、電極、アドレス素子、バックライト、偏光子、カラーフィルター、任意に存在する補償フィルムなどの使用される個々の構成要素の性質、配置または構造において上述のディスプレイと異なるPSまたはPSAタイプの他のディスプレイにおいても、発明的な創造を伴わず、本発明による適切な液晶混合物および液晶媒体を用いることができるであろう。
【0094】
式II〜Vの個々の化合物は、1〜20%、好ましくは、1〜15%の濃度で用いる。それぞれの場合において、2種類以上の同族の化合物、即ち、同じ式の化合物を用いる場合、特に、これらの限定を適用する。1種類のみの個々の物質、即ち、1種類のみの同族な1つの式の化合物を用いる場合、その濃度は2〜20%、化合物によっては30%以上までの範囲でよい。
【0095】
本発明の好ましい実施形態において、液晶媒体は、3より大きい誘電異方性を有し、式II−1およびII−2の化合物群より選択される1種類以上の誘電的に正の化合物を含む。
【0096】
【化12】

【0097】
式中、パラメータは式IIにおいて上で示されるそれぞれの意味を有し、L23およびL24は、互いに独立に、HまたはFを表し、好ましくは、L23はFを表し、および
式II−1の場合、Xは、好ましくは、FまたはOCF、特に好ましくは、Fを表し、および、ある実施形態の場合、
【0098】
【化13】

および/または、式III−1およびIII−2の化合物群より選択され、
【0099】
【化14】

式中、パラメータは式IIIにおいて与えられる意味を有し、
および、本発明による媒体は、式III−1および/またはIII−2の化合物に代えるか、または加えて、式III−3の1種類以上の化合物を含み、
【0100】
【化15】

式中、パラメータは上で示されるそれぞれの意味を有する。
【0101】
液晶媒体は、好ましくは、L21およびL22および/またはL23およびL24の両者がFを表す式II−1およびII−2の化合物群より選択される化合物を含む。
【0102】
好ましい実施形態において、液晶媒体は、L21、L22、L23およびL24の全てがFを表す式II−2の化合物群より選択される化合物を含む。
【0103】
液晶媒体は、好ましくは、式II−1の1種類以上の化合物を含む。式II−1の化合物は、好ましくは、式II−1a〜II−1e、好ましくは、式II−1dの化合物群より選択される。
【0104】
【化16】

式中、パラメータは上で示されるそれぞれの意味を有し、および、L25およびL26は、互いにおよび他のパラメータとは独立に、HまたはFを表し、および好ましくは、
式II−1aおよびII−1bにおいて、L21およびL22の両者がFを表し、
式II−1cおよびII−1dにおいて、L21およびL22の両者がFを表すか、および/または、L23およびL24の両者がFを表し、および、
式II−1eにおいて、L21、L22およびL23がFを表す。
【0105】
液晶媒体は、好ましくは式II−2の1種類以上の化合物を含み、好ましくは式II−2a〜II−2j、好ましくは、式II−2jの化合物群より選択される化合物を含む。
【0106】
【化17】

【0107】
【化18】

式中、パラメータは上で示されるそれぞれの意味を有し、L25〜L28は、互いに独立に、HまたはFを表し、好ましくは、L27およびL28の両者がHを表し、特に好ましくは、L26がHを表す。
【0108】
液晶媒体は、好ましくは、L21およびL22の両者がFを表すか、および/または、L23およびL24の両者がFを表す式II−1a〜II−1eの化合物群より選択される化合物を含む。
【0109】
好ましい実施形態において、液晶媒体は、L21、L22、L23およびL24の全てがFを表す式II−1a〜II−1iの化合物群より選択される化合物を含む。
【0110】
式II−2の特に好ましい化合物は、以下の式の化合物である。
【0111】
【化19】

【0112】
【化20】

式中、RおよびXは上で示される意味を有し、Xは、好ましくは、Fを表す。
【0113】
液晶媒体は、好ましくは、式III−1の1種類以上の化合物を含む。式III−1の化合物は、好ましくは、式III−1a〜III−1j、好ましくは、式III−1c、III−1f、III−1gおよびIII−1jの化合物群より選択される。
【0114】
【化21】

【0115】
【化22】

式中、パラメータは上で与えられる意味を有し、好ましくは、式中、パラメータは上で示されるそれぞれの意味を有し、パラメータL33、L34、L35およびL36は、互いにおよび他のパラメータとは独立に、HまたはFを表す。
【0116】
液晶媒体は、好ましくは式III−1cの1種類以上の化合物を含み、好ましくは式III−1c−1〜III−1c−5、好ましくは、式III−1c−3およびIII−1c−4の化合物群より選択される化合物を含む。
【0117】
【化23】

式中、Rは上で示される意味を有する。
【0118】
液晶媒体は、好ましくは式III−1fの1種類以上の化合物を含み、好ましくは式III−1f−1〜III−1f−5、好ましくは、式III−1f−1、III−1f−2、III−1f−4およびIII−1f−5、より好ましくは、式III−1f−1、III−1f−4およびIII−1f−5の化合物群より選択される化合物を含む。
【0119】
【化24】

式中、Rは上で示される意味を有する。
【0120】
液晶媒体は、好ましくは式III−1gの1種類以上の化合物を含み、好ましくは式III−1g−1〜III−1g−5、好ましくは、式III−1g−3の化合物群より選択される化合物を含む。
【0121】
【化25】

式中、Rは上で示される意味を有する。
【0122】
液晶媒体は、好ましくは式III−1hの1種類以上の化合物を含み、好ましくは式III−1h−1〜III−1h−3、好ましくは、式III−1h−3の化合物群より好ましくは選択される化合物を含む。
【0123】
【化26】

式中、パラメータは上で与えられる意味を有し、Xは、好ましくは、Fを表す。
【0124】
液晶媒体は、好ましくは式III−1iの1種類以上の化合物を含み、好ましくは式III−1i−1およびIII−1i−2、好ましくは、式III−1i−2の化合物群より選択される化合物を含む。
【0125】
【化27】

式中、パラメータは上で与えられる意味を有し、Xは、好ましくは、Fを表す。
【0126】
液晶媒体は、好ましくは式III−1jの1種類以上の化合物を含み、好ましくは式III−1j−1およびIII−1j−2、好ましくは、式III−1j−1の化合物群より選択される化合物を含む。
【0127】
【化28】

式中、パラメータは上で与えられる意味を有する。
【0128】
液晶媒体は、好ましくは、式III−2の1種類以上の化合物を含む。式III−2の化合物は、好ましくは、式III−2aおよびIII−2bの化合物群より選択される。
【0129】
【化29】

式中、パラメータは上で示されるそれぞれの意味を有し、パラメータL33およびL34は、互いにおよび他のパラメータとは独立に、HまたはFを表す。
【0130】
液晶媒体は、好ましくは式III−2aの1種類以上の化合物を含み、好ましくは式III−2a−1〜III−2a−6の化合物群より選択される化合物を含む。
【0131】
【化30】

式中、Rは上で示される意味を有する。
【0132】
液晶媒体は、好ましくは式III−2bの1種類以上の化合物を含み、好ましくは式III−2b−1〜III−2b−4、好ましくは、式III−2b−4の化合物群より選択される化合物を含む。
【0133】
【化31】

式中、Rは上で示される意味を有する。
【0134】
式III−1および/またはIII−2の化合物に代えるか、または加えて、本発明による媒体は式III−3の1種類以上の化合物を含んでもよい。
【0135】
【化32】

式中、パラメータは式IIIにおいて上で示されるそれぞれの意味を有する。
【0136】
これらの化合物は、好ましくは、式III−3aおよびIII−3bの群より選択される。
【0137】
【化33】

式中、Rは上で示される意味を有する。
【0138】
本発明による液晶媒体は、好ましくは、−1.5〜3の範囲内の誘電異方性を有し、好ましくは、式IVおよびVの化合物群より選択される1種類以上の誘電的に中性の化合物を含む。
【0139】
本発明による液晶媒体は、好ましくは、式IV−1〜IV−6の化合物群より選択される1種類以上の化合物を含む。
【0140】
【化34】

式中、R41およびR42は、式IVにおいて上で示されるそれぞれの意味を有し、および、式IV−1、IV−5およびIV−6において、R41は、好ましくはアルキルまたはアルケニル、好ましくはアルケニルを表し、および、R42は、好ましくはアルキルまたはアルケニル、好ましくはアルキルを表し、式IV−2において、R41およびR42は、好ましくは、アルキルを表し、および、式IV−4において、R41は、好ましくはアルキルまたはアルケニル、より好ましくはアルキルを表し、および、R42は、好ましくはアルキルまたはアルコキシ、より好ましくはアルコキシを表す。
【0141】
本発明による液晶媒体は、好ましくは、式IV−1、IV−4、IV−5およびIV−6の化合物群より選択される1種類以上の化合物、好ましくは、式IV−1の1種類以上の化合物、および、式IV−4およびIV−5の群より選択される1種類以上の化合物、より好ましくは、式IV−1、IV−4およびIV−5のそれぞれから1種類以上の化合物、非常に好ましくは、式IV−1、IV−4、IV−5およびIV−6のそれぞれから1種類以上の化合物を含む。
【0142】
好ましい実施形態において、本発明による液晶媒体は、好ましくは、式IV−1の1種類以上の化合物を含有し、より好ましくは、それぞれがそれのサブ式である式CC−n−mおよび/またはCC−n−Omおよび/またはCC−n−Vおよび/またはCC−nV−mおよび/またはCC−Vn−mより選択され、より好ましくは、式CC−n−mおよび/またはCC−n−Vおよび/またはCC−nV−m、非常に好ましくは、式CC−3−1、CC−3−2、CC−3−3、CC−3−4、CC−3−5、CC−3−O1、CC−3−V、CC−4−V、CC−5−VおよびCC−3−V1の群より選択される1種類以上の化合物を含む。これらの略号(頭文字)の定義は下に表Dで示されるか、または、表A〜Cより明らかである。
【0143】
好ましい実施形態において、本発明による液晶媒体は、好ましくは、式IV−4の1種類以上の化合物を含有し、より好ましくは、それぞれがそれのサブ式である式CP−V−nおよび/またはCP−nV−mおよび/またはCP−Vn−mより選択され、より好ましくは、式CP−nV−mおよび/またはCP−V2−n、非常に好ましくは、式CP−2V−1、CP−1V−2およびCP−V2−1の群より選択される1種類以上の化合物を含む。これらの略号(頭文字)の定義は下に表Dで示されるか、または、表A〜Cより明らかである。
【0144】
好ましい実施形態において、本発明による液晶媒体は、好ましくは、式IV−5の1種類以上の化合物を含有し、より好ましくは、それぞれがそれのサブ式である式CCP−V−nおよび/またはCCP−nV−mおよび/またはCCP−Vn−mより選択され、より好ましくは、式CCP−V−nおよび/またはCCP−V2−n、非常に好ましくは、式CCP−V−1およびCCP−V2−1の群より選択される1種類以上の化合物を含む。これらの略号(頭文字)の定義は下に表Dで示されるか、表A〜Cより明らかである。
【0145】
同様に好ましい実施形態において、液晶媒体は、好ましくは、式IV−1の1種類以上の化合物を含有し、より好ましくは、それぞれがそれのサブ式である式CC−n−m、CC−n−Om、CC−n−V、CC−n−Vm、CC−V−V、CC−V−Vnおよび/またはCC−nV−Vmより選択され、より好ましくは、式CC−n−mおよび/またはCC−n−Vおよび/またはCC−n−Vm、非常に好ましくは、式CC−3−1、CC−3−2、CC−3−3、CC−3−4、CC−3−5、CC−3−O1、CC−3−V、CC−4−V、CC−5−VおよびCC−3−V1の群より選択され、特には、式CC−3−V、CC−4−V、CC−5−V、CC−3−V1、CC−4−V1、CC−5−V1、CC−3−V2およびCC−V−V1の群より選択される1種類以上の化合物を含む。これらの略号(頭文字)の定義は同様に下に表Dで示されるか、または、表A〜Cより明らかである。
【0146】
本発明の更なる好ましい実施形態(先のものと同一でも別のものでもよい)において、本発明による液晶混合物は、上に示される通りの式IV−1〜IV−6、および、任意に式IV−7〜IV−14(好ましくは、式IV−7および/またはIV−14の化合物群)より選択される式IVの化合物を含む。
【0147】
【化35】

式中、
41およびR42は、互いに独立に、1〜7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ化アルキルまたはフッ化アルコキシ、または、2〜7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ化アルケニルを表し、および
は、HまたはFを表す。
【0148】
好ましい実施形態において、液晶媒体は、好ましくは、式IV−7の1種類以上の化合物を含み、より好ましくは、それぞれがそれのサブ式である式CPP−3−2、CPP−5−2およびCGP−3−2より選択され、より好ましくは、式CPP−3−2および/またはCGP−3−2、非常に特に好ましくは、式CPP−3−2を含む。これらの略号(頭文字)の定義は下に表Dで示されるか、または、表A〜Cより明らかである。
【0149】
好ましい実施形態において、液晶媒体は、好ましくは、式IV−14の1種類以上の化合物を含み、より好ましくは、それぞれがそれのサブ式である式CPGP−3−2、CPGP−5−2およびCPGP−3−4より選択される化合物、より好ましくは、式CPGP−3−2および/またはCPGP−5−2、非常に特に好ましくは、式CPGP−5−2を含む。これらの略号(頭文字)の定義は下に表Dで示されるか、または、表A〜Cより明らかである。
【0150】
本発明による液晶媒体は、好ましくは、式Vで、−1.5〜3の範囲内の誘電異方性を有する1種類以上の誘電的に中性の化合物を追加的に含む。
【0151】
【化36】

式中、
51およびR52は、互いに独立に、式IIにおいてRについて上で示される意味を有し、好ましくは、R51はアルキルを表し、および、R52はアルキルまたはアルケニルを表し、
【0152】
【化37】

を表し、
好ましくは、
【0153】
【化38】

51およびZ52は、互いに独立に、Z51が2回出現する場合は、これらも互いに独立に、−CHCH−、−COO−、トランス−CH=CH−、トランス−CF=CF−、−CHO−、−CFO−または単結合を表し、好ましくは、それらの1つ以上が単結合を表し、および
rは0、1または2、好ましくは0または1、特に好ましくは1を表す。
【0154】
本発明による液晶媒体は、好ましくは、式V−1およびV−2、好ましくは、式V−1の化合物群より選択される1種類以上の化合物を含む。
【0155】
【化39】

式中、R51およびR52は式Vにおいて上で示されるそれぞれの意味を有し、および、R51は、好ましくは、アルキルを表し、および、式V−1において、R52は、好ましくは、アルケニル、好ましくは、−(CH−CH=CH−CHを表し、および、式V−2において、R52は、好ましくは、アルキル、−(CH−CH=CHまたは−(CH−CH=CH−CHを表す。
【0156】
本発明による液晶媒体は、好ましくは、式V−1およびV−2の化合物群より選択される1種類以上の化合物を含み、式中、R51は、好ましくは、n−アルキルを表し、および、式V−1において、R52は、好ましくは、アルケニルを表し、および、式V−2において、R52は、好ましくは、n−アルキルを表す。
【0157】
好ましい実施形態において、液晶媒体は、好ましくは、式V−1、より好ましくは、そのサブ式PP−n−2Vm、更により好ましくは、式PP−1−2V1の1種類以上の化合物を含む。これらの略号(頭文字)の定義は下に表Dで示されるか、または、表A〜Cより明らかである。
【0158】
好ましい実施形態において、液晶媒体は、好ましくは、式V−2、より好ましくは、それのサブ式PGP−n−m、PGP−n−2VおよびPGP−n−2Vm、更により好ましくは、それのサブ式PGP−3−m、PGP−n−2VおよびPGP−n−V1、非常に好ましくは、式PGP−3−2、PGP−3−3、PGP−3−4、PGP−3−5、PGP−1−2V、PGP−2−2VおよびPGP−3−2Vより選択される1種類以上の化合物を含む。これらの略号(頭文字)の定義は、同様に、下に表Dで示されるか、または、表A〜Cより明らかである。
【0159】
本発明による液晶媒体は、好ましくは、式I〜V、より好ましくは式I〜IVの化合物群より選択される化合物を含み、より好ましくは大部分がこれらより成り、更により好ましくは本質的にこれらより成り、非常に好ましくは完全にこれらより成る。
【0160】
式Iの化合物に加え、本発明による液晶混合物は、好ましくは、式IIおよび/またはIII、好ましくは式IIの化合物および式IIIの化合物を含む。本発明による液晶混合物は、特に好ましくは、式IVおよび/またはV、特に好ましくは、式IVの1種類以上の化合物を追加的に含む。
【0161】
また、本発明による混合物は、当然、式I〜Vの5つの式のうちの複数の式からそれぞれ1種類以上、更には、式I〜Vの5つの全ての式からそれぞれ1種類以上の化合物を含んでもよい。
【0162】
本出願において、組成物に関して含むは、対象となっている項目、即ち、一般に媒体が、示される1種類の化合物または多種類の化合物を、好ましくは10%以上、非常に好ましくは20%以上の総濃度で含むことを意味する。
【0163】
この関係において、「大部分が〜成る」は、対象となっている項目が、55%以上、好ましくは60%以上、非常に好ましくは70%以上の示される1種類の化合物または多種類の化合物を含むことを意味する。
【0164】
この関係において、「本質的に〜成る」は、対象となっている項目が、80%以上、好ましくは90%以上、非常に好ましくは95%以上の示される1種類の化合物または多種類の化合物を含むことを意味する。
【0165】
この関係において、「完全に〜成る」は、対象となっている項目が、98%以上、好ましくは99%以上、非常に好ましくは100.0%の示される1種類の化合物または多種類の化合物を含むことを意味する。
【0166】
また、明らかには上述されていない他のメソゲン化合物も、本発明による媒体中において任意成分として有効に使用できる。そのような化合物は、当業者に知られている。
【0167】
本発明による液晶媒体は、好ましくは65℃以上、より好ましくは70℃以上、更により好ましくは80℃以上、特に好ましくは85℃以上、非常に特に好ましくは90℃以上の透明点を有する。
【0168】
本発明による媒体のネマチック相は、好ましくは少なくとも0℃以下〜65℃以上、より好ましくは少なくとも−20℃以下〜70℃以上、非常に好ましくは少なくとも−30℃以下〜70℃以上、特には少なくとも−40℃以下〜90℃以上に及ぶ。個々の好ましい実施形態においては、本発明による媒体のネマチック相が、100℃以上まで、更に110℃以上の温度にまで及ぶ必要があることがある。
【0169】
本発明による液晶媒体のΔεは、1kHzおよび20℃において、好ましくは2以上、より好ましくは4以上である。特には、Δεは10以下であるが、正のVAディスプレイの場合、また、30以下まででもよい。
【0170】
本発明による液晶媒体のΔnは、589nm(Na)および20℃において、好ましくは0.080以上〜0.120以下の範囲内、より好ましくは0.085以上〜0.115以下の範囲内、更により好ましくは0.090以上〜0.110以下の範囲内、非常に特に好ましくは0.095以上〜0.105以下の範囲内である。
【0171】
テレビ用途向けのIPSディスプレイ用には、約15.6Vまたは約18Vのドライバー電圧を有するドライバーが好ましくは使用される。
【0172】
式IIおよびIIIの化合物は、混合物全体の好ましくは2%〜60%、より好ましくは3%〜35%、非常に特に好ましくは4%〜30%の濃度において使用される。
【0173】
式IVおよびVの化合物は、混合物全体の好ましくは2%〜70%、より好ましくは5%〜65%、更により好ましくは10%〜60%、非常に特に好ましくは10%(好ましくは15%)〜55%の濃度において使用される。
【0174】
物理的特性を調節するために、本発明による媒体は、更なる液晶化合物を任意成分として含んでよい。そのような化合物は、当業者に既知である。本発明による媒体中のそれらの濃度は、好ましくは0%〜30%、より好ましくは0.1%〜20%、非常に好ましくは1%〜15%である。
【0175】
任意成分として、本発明による液晶媒体は、式Iの1種類の化合物または多種類の化合物に加え、更なる1種類の反応性化合物または多種類の反応性化合物(それぞれの該反応性化合物は、メソゲン化合物または非メソゲン等方性化合物のいずれでもよい。)を含む。
【0176】
また任意成分として、本発明による液晶媒体は、好ましくは、光開始剤である重合開始剤を追加的に含む。
【0177】
特に後述の本発明の第2の好ましい実施形態において、液晶媒体は、好ましくは式IV、より好ましくは式IV−1、更により好ましくは、それのそれぞれのサブ式である式CC−n−Vおよび/またはCC−n−Vm、より好ましくは式CC−n−V1および/またはCC−n−Vより選択され、非常に好ましくは、式CC−3−V、CC−4−V、CC−5−VおよびCC−3−V1の群より選択される1種類以上の化合物を含む。これらの略号(頭文字)の定義は、下に表Dで示される。
【0178】
本発明による媒体における式CC−3−Vの化合物の濃度は、好ましくは20%〜60%、特に好ましくは25%〜55%である。
【0179】
液晶媒体は、好ましくは全体で50%〜100%、より好ましくは70%〜100%、非常に好ましくは80%〜100%、特には90%〜100%で、式I、II、III、IVおよびV、好ましくは、式I、II、IIIおよびIVまたはVの1種類以上の化合物を含み、好ましくは大部分がこれらより成り、非常に好ましくは全体がこれらより成る。
【0180】
式IVおよび/またはV、好ましくは式IVの化合物の使用に関しては、本発明は2つの異なる実施形態を有する。
【0181】
これらの好ましい実施形態の第1において、液晶混合物は、1個以上の非末端アルケニル基を有する式IVおよび/またはV(例えば、CC−3−V1、PP−1−2V1およびCCP−2V−1など)の1種類以上の化合物を含むが、1個以上の末端アルケニル基を有するこれらの式(例えば、CC−3−V、CCP−V−1およびPGP−2−2Vなど)の化合物を僅かのみに含むか含まない。その代わりに、この実施形態による液晶混合物は、好ましくは、1個または2個の非末端アルケニル基を有する式IVおよび/またはVの化合物、および/または、アルキル末端基およびアルキルまたはアルコキシ末端基を含有するこれらの式の化合物を含む。式IVおよびVの化合物が形成する成分は、1個または2個の非末端アルケニル基を含有する化合物、および/または、アルキル末端基およびアルキルまたはアルコキシ末端基を含有する化合物、好ましくは、1個または2個の非末端アルケニル基を含有する化合物から、好ましくは大部分が成り、より好ましくは本質的に成り、非常に好ましくは完全に成る。よって、液晶混合物における、好ましくは、この成分における1個以上の非末端アルケニル基を含有する対応する化合物の割合は、好ましくは5%以上、、好ましくは10%以上、および、好ましくは70%以下、好ましくは60%以下である。
【0182】
これらの好ましい実施形態の第2のものにおいて、液晶混合物は、第1の好ましい実施形態において既述の式IVおよび/またはVの化合物に加えるか代えて、1個または2個の末端アルケニル基を有するこれらの式の1種類以上の化合物を含む。この実施形態において、液晶混合物は、好ましくは、1個または2個の末端アルケニル基を有する式IVおよび/またはVの化合物を含む。式IVおよびVの化合物が形成する成分は、1個または2個の末端アルケニル基を含有する化合物から、好ましくは大部分が成り、より好ましくは本質的に成り、非常に好ましくは完全に成る。よって、液晶混合物における、好ましくは、この成分における1個以上の末端アルケニル基を含有する対応する化合物の割合は、好ましくは10〜70%、好ましくは60%までである。
【0183】
本発明の好ましい実施形態による液晶媒体に対する条件を以下に与える。これらの好ましい条件は、個別に満たされるか、または、好ましくは、それぞれ互いの組み合わせで満たされてよい。それらの2つの組み合わせが好ましく、一方、それらの3つ以上の組み合わせが特に好ましい。
【0184】
−媒体は、1%未満の式IIの化合物を含むか、または、好ましくは、式IIの化合物を全く含まないかのいずれかである。
【0185】
−直上で与えられる条件に代えて、媒体は、1種類以上の式IIの化合物、好ましくは式II−1およびII−2の化合物群より選択され、好ましくは式II−1dおよびII−2jの化合物群より選択され、特には、式II−2j−2の後者のものである化合物を含み、この場合、好ましくは、媒体におけるこれらの化合物の総濃度は、1%以上〜15%以下、好ましくは、1.5%以上〜10%以下、最も好ましくは、2%以上〜5%以下の範囲内である。
【0186】
−媒体は、式III−1、好ましくは、式III−1fの化合物群より選択され、好ましくは、式III−1f−1、III−1f−4およびIII−1f−5、最も好ましくは、式III−1f−1および/またはIII−1f−4の化合物群より選択される1種類以上の化合物を含み、この場合、好ましくは、媒体におけるこれらの化合物の総濃度は、2%以上〜20%以下、好ましくは、3%以上〜15%以下、最も好ましくは、4%以上〜12%以下の範囲内である。
【0187】
−媒体は式III−1f−1の1種類以上の化合物を含み、この場合、好ましくは、媒体におけるこれらの化合物の総濃度は、1%以上〜15%以下、好ましくは、2%以上〜10%以下、最も好ましくは、3%以上〜8%以下の範囲内である。
【0188】
−媒体は式III−1f−4の1種類以上の化合物を含み、この場合、好ましくは、媒体におけるこれらの化合物の総濃度は、3%以上〜20%以下、好ましくは、4%以上〜15%以下、最も好ましくは、6%以上〜12%以下の範囲内である。
【0189】
−媒体は式III−1f−5の1種類以上の化合物を含み、この場合、好ましくは、媒体におけるこれらの化合物の総濃度は、3%以上〜20%以下、好ましくは、4%以上〜15%以下、最も好ましくは、6%以上〜12%以下の範囲内である。
【0190】
−媒体は、式IV、好ましくは、式IV−1およびIV−5、好ましくは、式CC−n−V1および/またはCC−n−Vおよび/またはCCP−V−1および/またはCCP−V2−1、より好ましくは、式CC−3−Vおよび/またはCC−3−V1および/またはCCP−V−1および/またはCCP−V2−1の化合物群より選択される1種類以上の化合物を含み、好ましくは、媒体におけるこれらの化合物の総濃度は、45%以上〜65%以下、好ましくは、50%以上〜60%以下、最も好ましくは、53%以上〜58%以下の範囲内である。
【0191】
−媒体は式CC−3−Vの化合物を含み、好ましくは、媒体におけるこの化合物の総濃度は、20%以上〜55%以下、好ましくは、20%以上〜30%以下、または、45%以上〜55%以下のいずれかの範囲内である。
【0192】
−媒体は式CC−3−V1の化合物を含み、好ましくは、媒体におけるこの化合物の総濃度は、2%以上〜10%以下、好ましくは、4%以上〜8%以下の範囲内である。
【0193】
−媒体は式CCP−V−1および/またはCCP−2V−1の化合物を含み、好ましくは、これらの化合物のそれぞれの媒体において存在するものの総濃度は、5%以上〜20%以下、好ましくは、10%以上〜15%以下の範囲内である。
【0194】
−媒体は、式V、好ましくは、式V−1、好ましくは、式PP−1−2V1の1種類以上の化合物を含み、好ましくは、媒体におけるこれらの化合物の総濃度は、5%以上〜10%以下の範囲内である。
【0195】
−液晶媒体の透明点は、80℃以上、より好ましくは、90℃以上であり、好ましくは、媒体は4個の6員環を有する1種類以上の化合物を含み、好ましくは、これらの化合物は、式III−1h、III−1i、III−1jおよびIV−14、好ましくは、式III−1h−3および/またはIII−1j−1および/またはCPGP−3−2および/またはCPGP−5−2および/またはCPGP−3−4の化合物群より選択され、好ましくは、媒体におけるこれらの化合物の総濃度は、1%以上〜12%以下、好ましくは、2%以上〜8%以下の範囲内である。
【0196】
−媒体は、式IV−14、好ましくは、式CPGP−3−2および/またはCPGP−5−2および/またはCPGP−3−4、好ましくは、式CPGP−5−2の1種類以上の化合物を含み、好ましくは、これらの化合物のそれぞれの媒体において存在するものの総濃度は、1%以上〜7%以下、好ましくは、2%以上〜5%以下の範囲内である。
【0197】
−媒体は、式IV−7、好ましくは、式CPP−3−2、CPP−5−2およびCGP−3−2、より好ましくは、式CPP−3−2および/またはCGP−3−2、非常に特に好ましくは、式CPP−3−2の群より選択される1種類以上の化合物を含み、好ましくは、これらの化合物のそれぞれの媒体において存在するものの総濃度は、2%以上〜15%以下、好ましくは、5%以上〜9%以下の範囲内である。
【0198】
本出願において、「誘電的に正」との表現はΔε>3.0である化合物または成分を記述し、「誘電的に中性」は−1.5≦Δε≦3.0のものを記述し、「誘電的に負」はΔε<−1.5のものを記述する。Δεは1kHzの周波数および20℃において決定される。それぞれの化合物の誘電異方性は、ネマチックホスト混合物中での、それぞれの個々の化合物の10%の溶液の結果から決定される。それぞれの化合物のホスト混合物中での溶解度が10%未満のときは、濃度を5%に低下する。試験混合物の容量は、ホメオトロピック配向を有するセルおよびホモジニアス配向を有するセルの両者において決定される。両方のタイプのセルの層厚は、およそ20μmである。印加される電圧は1kHzの周波数および典型的には0.5V〜1.0Vの有効値を有する矩形波であるが、それは常にそれぞれの試験混合物の容量閾値よりも低く選択される。
【0199】
Δεは(ε−ε)で定義され、一方、εavは(ε+2ε)/3である。
【0200】
誘電的に正の化合物に使用されるホスト混合物は混合物ZLI−4792であり、誘電的に中性および誘電的に負の化合物に使用されるものは混合物ZLI−3086であり、両者ともドイツ国メルク社製である。化合物の誘電定数の絶対値は、興味ある化合物を添加した際のホスト混合物のそれぞれの値の変化から決定される。その値を、興味ある化合物の濃度100%に外挿する。
【0201】
20℃の測定温度でネマチック相を有する成分は、そのままで測定し、他の全ては化合物と同様に扱う。
【0202】
両方の場合において他に明言しない限り、本出願において閾電圧(Vth)との表現は光学的閾値を言い、10%相対的コントラスト(V10)を指し、飽和電圧との表現は光学的飽和を言い、90%相対的コントラスト(V90)を指す。フレデリクス閾値(VFr)とも呼ばれる容量的閾電圧(V)は、明らかに述べる場合にのみ使用する。
【0203】
本出願で示されるパラメータの範囲は、他に明言しない限り、全て限界値を含む。
【0204】
互いの組み合わせにおいて特性の各種の範囲に示される異なる上限および下限の値は、追加の好ましい範囲を生じる。
【0205】
本出願を通じて、他に明言しない限り、以下の条件および定義を適用する。全ての濃度は質量パーセントで示され、それぞれ混合物全体に関するものであり、全ての温度は、摂氏度で示され、全ての温度差は差異度で示される。全ての物理的特性は、「Merck Liquid Crystals、Physical Properties of Liquid Crystals」、1997年11月、ドイツ国メルク社に従って決定され、他に明言しない限り、20℃の温度において示される。光学異方性(Δn)は、589.3nmの波長で決定される。誘電異方性(Δε)は、1kHzの周波数で決定される。閾電圧ならびに他の全ての電気光学的特性は、ドイツ国メルク社で製造された試験セルを使用して決定される。Δεの決定のための試験セルは、およそ20μmのセル厚みを有している。電極は、1.13cmの面積および保護リングを有する円形ITO電極である。配向層は、ホメオトロピック配向(ε)用には日本国日産化学社製SE−1211、ホモジニアス配向(ε)用には日本国日本合成ゴム社製ポリイミドAL−1054である。容量は、0.3Vrmsの電圧を有する正弦波を使用するSolatron1260周波数応答解析装置を使用して決定する。電気光学的測定において使用される光は、白色光である。ドイツ国Autronic−Melchers社製の商業的に入手可能なDMS装置を使用する装置構成を、本明細書では用いる。特性電圧を、垂直観察の下で決定した。閾値(V10)、中間灰色(V50)および飽和(V90)電圧を、それぞれ10%、50%および90%相対コントラストで決定した。
【0206】
本発明による液晶混合物および液晶媒体は、例えば、好ましくは、下の表Fからの化合物より成る群より選択される1種類以上のキラルドーパントを通常の濃度で含んでよい。これらのキラルドーパントの総濃度は、混合物全体に基づいて0%〜10%、好ましくは0.1%〜6%の範囲内である。使用される個々の化合物の濃度は、それぞれ好ましくは0.1%〜3%の範囲内である。これらおよび類似の添加剤の濃度は、本出願において、液晶媒体の液晶成分および化合物の値および濃度範囲を示す場合には考慮されない。
【0207】
更に、多色性色素、ナノ微粒子、導電性塩、錯塩、および誘電異方性、粘度および/またはネマチック相の配向を改変するための物質を含む群より選択され、0〜15%、好ましくは0〜10%の1種類以上の添加剤を液晶媒体に加えることができる。適切で好ましい導電性塩は、例えば、エチルジメチルドデシルアンモニウム4−ヘキソキシベンゾエート、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレートまたはクラウンエーテル類の錯塩(例えば、Hallerら、Mol.Cryst.Liq.Cryst.第24巻、第249〜258頁(1973年)参照)である。このタイプの物質は、例えば、ドイツ国特許出願公開第22 09 127号公報、ドイツ国特許出願公開第22 40 864号公報、ドイツ国特許出願公開第23 21 632号公報、ドイツ国特許出願公開第23 38 281号公報、ドイツ国特許出願公開第24 50 088号公報、ドイツ国特許出願公開第26 37 430号公報およびドイツ国特許出願公開第28 53 728号公報に記載されている。
【0208】
本発明による液晶混合物は、数種類の化合物、好ましくは3〜30種類、より好ましくは4〜20種類、アルケニル化合物を含む液晶混合物の場合、非常に好ましくは4〜16種類の化合物から成る。これらの化合物は、従来法で混合される。一般に、より少ない量で使用される化合物の所望量を、より多い量で使用される化合物に溶解する。より高い濃度で使用される化合物の透明点より温度が高い場合には、溶解過程の完了を観察するのは特に容易である。しかしながら、また、例えば、他の従来法、例えば、化合物の同族または共融混合物が可能な所謂プレ混合の使用、または、構成成分がそれ自身で使用可能な状態の混合物の所謂「マルチ・ボトル」系を使用して媒体を調製することも可能である。
【0209】
適切な添加剤を加えることにより、TN、TN−AMD、ECB−AMD、VAN−AMD、IPS−AMD、FFS−AMDおよび正のVA LCDなどのように液晶媒体をそのまま使用するタイプ、またはPDLC、NCAP、PN LCDなどの複合材系において使用するタイプの全ての公知の液晶ディスプレイにおいて、特に、PSA−IPS、PSA−FFSおよび正のVA LCDにおいて、本発明による液晶媒体を使用できるように改変できる。
【0210】
重合性化合物は、好ましくは、所定の時間のUV放射の照射によって、ディスプレイ中で重合する。本明細書においては、好ましい実施形態において、電圧をディスプレイに印加する。印加される電圧は、好ましくは0.1V〜10Vの範囲内、特に好ましくは0.5V〜5Vの範囲内の好ましくは交流電圧(典型的には、1kHz)である。特に好ましい実施形態において、印加される電圧は液晶混合物の閾電圧(V10)より低く、非常に特に好ましくは、重合の最中は電圧を印加しない。例において他に示さない限り、50mW/cmの水銀蒸気ランプを使用する。365nm帯域通過フィルターが装着された標準的なUVメーター(Ushio UNIメーター)を使用して強度を測定する。
【0211】
例えば、液晶の融点T(C,N)またはT(C,S)、スメクチック(S)からネマチック(N)相への転移T(S,N)および透明点T(N,I)などの全ての温度は、摂氏度で示される。全ての温度差は差異度で示される。
【0212】
本発明および特に以下の例において、メソゲン化合物の構造は、頭文字とも呼ばれる略号を用いて示される。これらの頭文字において、化学式は、下の表A〜Cを使用して次の通り略記される。全ての基C2n+1、C2m+1およびC2l+1またはC2n−1、C2m−1およびC2l−1は、それぞれn、mおよびl個のC原子を有する直鎖状のアルキルまたはアルケニル、好ましくは1E−アルケニルを、それぞれ表す。表Aには化合物の核構造の環構造要素に使用されるコードが列記されており、一方、表Bには連結基が示されている。表Cには、左手または右手の末端基のためのコードの意味が与えられている。表Dには、それらのそれぞれの略号と共に化合物の構造が図示されている。
【0213】
【表1】

【0214】
【表2】

【0215】
【表3】

【0216】
【表4】

表中、nおよびmは、それぞれ整数を表し、3つの点「...」は、この表からの他の略号のためのスペースである。
【0217】
以下の表に、それらのそれぞれの略号と共に、図示される構造を示す。これらは、略号の規則の意味を図示するために示される。それらは、更に、好ましく使用される化合物を表す。
【0218】
【表5】

【0219】
【表6】

【0220】
【表7】

【0221】
【表8】

【0222】
【表9】

【0223】
【表10】

【0224】
【表11】

【0225】
【表12】

【0226】
【表13】

【0227】
【表14】

【0228】
【表15】

以下の表、表Eに、本発明によるメソゲン媒体において安定剤として使用できる化合物を図示する。
【0229】
【表16】

【0230】
【表17】

【0231】
【表18】

本発明の好ましい実施形態において、メソゲン媒体は、表Eからの化合物群より選択される1種類以上の化合物を含む。
【0232】
以下の表、表Fに、本発明によるメソゲン媒体においてキラルドーパントとして好ましく使用できる化合物を図示する。
【0233】
【表19】

【0234】
【表20】

本発明の好ましい実施形態において、メソゲン媒体は、表Fからの化合物群より選択される1種類以上の化合物を含む。
【0235】
以下の表、表Gに、本発明によるメソゲン媒体において、好ましくは反応性である、メソゲン化合物として使用できる化合物を図示する。
<表G>
【0236】
【表21】

【0237】
【表22】

【0238】
【表23】

【0239】
【表24】

本発明の好ましい実施形態において、メソゲン媒体は、表Gからの化合物群より選択される1種類以上の化合物を含む。
【0240】
本出願によるメソゲン媒体は、好ましくは、上の表からの化合物から成る群より選択される、2種類以上、好ましくは4種類以上の化合物を含む。
【0241】
本発明による液晶媒体は、好ましくは、
−表Dからの化合物群より選択される、7種類以上、好ましくは8種類以上の化合物、好ましくは、3種類以上好ましくは4種類以上の異なる式を有する化合物と、および/または
−表Gからの化合物群より選択される異なる式を有する、1種類以上、好ましくは2種類以上の化合物と
を含む。
【実施例】
【0242】
以下の例は、如何なる態様においても本発明を制限することなく本発明を説明する。しかしながら、それらは、当業者に対して、好ましく用いられる化合物およびそれらのそれぞれの濃度およびそれらの互いの組み合わせと共に、好ましい混合物の概念(コンセプト)を示す。
【0243】
その物理的特性によって、どのような特性が達成され、どのような範囲でそれらを改変できるかが当業者に明らかとなる。よって、特に、好ましく達成できる各種特性の組み合わせが当業者に例示される。
【0244】
<例1>
以下の表中で示される通りの組成および特性を有する液晶混合物(A)を調製する。
【0245】
【表25】

この混合物はIPSモードにおけるディスプレイに非常に高度に適している。混合物を5個の部分に分ける。最初の部分をIPSセル中に直接導入し検討する。また、混合物の4個の更なる部分のそれぞれに、0.30%、0.50%、1.0%および2.0%の下式の反応性メソゲンRM−1をそれぞれ加える。
【0246】
【化40】

その結果得られる混合物をIPSセル中に導入し、UV照射によって反応性メソゲンを重合する。ここでは、開始剤を使用しない。標準条件より逸脱して、ここで使用される照射強度は45mW/cmである。それぞれの場合において、5分の照射時間を使用する。UV照射の際には、セルに電圧を印加しない。続いて、セルを検討する。結果を以下の表である表2に示す。
【0247】
【表26】

【0248】
<例2>
以下の表中で示される通りの組成および特性を有する更なる液晶混合物(液晶混合物B)を調製する。
【0249】
【表27】

この混合物はIPSおよびFFSモードにおけるディスプレイに非常に高度に適している。例1の通り混合物を部分に分け、ここでは、混合物を4個の部分に分ける。最初の部分をFFSセル(層厚3.6μm、W=4.0μm、L=6.0μm、チルト角2°、スリット角10°)中に直接導入して検討する。また、混合物の3個の更なる部分のそれぞれに、例1において既に使用した反応性メソゲンRM−1の0.30%、0.50%および1.0%をそれぞれ加える。ここでも、光開始剤は加えない。その結果得られる混合物をFFSセル中に導入し、UV放射によって反応性メソゲンを重合する。開始剤は使用しない。標準条件に従い、ここでは、照射強度は50mW/cmであり、5分間の時間で照射を印加する。UV照射の際には、セルに電圧を印加しない。続いて、セルを検討する。結果を以下の表である表4に示す。
【0250】
【表28】

【0251】
<例3>
以下の表中で示される通りの組成および特性を有する更なる液晶混合物(液晶混合物C)を調製する。
【0252】
【表29】

この混合物はIPSモードにおけるディスプレイに非常に高度に適している。例2の通り、混合物を4個の部分に分ける。例2において記載される通り、それぞれの部分を処理および検討する。結果を以下の表である表6に示す。
【0253】
【表30】

【0254】
<例4>
以下の表中で示される通りの組成および特性を有する更なる液晶混合物(液晶混合物D)を調製する。
【0255】
【表31】

この混合物はIPSモードにおけるディスプレイに非常に高度に適している。例1の通り、混合物を10個の部分に分ける。例1において記載される通り、それぞれの部分を処理および検討する。しかしながら、ここでは、混合物の9個の更なる部分のそれぞれに、例1において既に使用した反応性メソゲンRM−1の0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.50、1.0、2.0および3.0%をそれぞれ加える。ここでは、追加して、低温において密封されたボトル中でのバルクにおける保存に対するその結果得られる混合物の安定性を検討する。結果を以下の表である表8に示す。
【0256】
【表32】

【0257】
<例5>
以下の表中で示される通りの組成および特性を有する更なる液晶混合物(液晶混合物E)を調製する。
【0258】
【表33】

この混合物はIPSモードにおけるディスプレイに非常に高度に適している。例2の通り、混合物を4個の部分に分ける。例2において記載される通り、それぞれの部分を処理および検討する。結果を以下の表である表10に示す。
【0259】
【表34】

【0260】
<例6>
以下の表中で示される通りの組成および特性を有する更なる液晶混合物(液晶混合物F)を調製する。
【0261】
【表35】

この混合物はIPSモードにおけるディスプレイに非常に高度に適している。例2の通り、混合物を4個の部分に分ける。例2において記載される通り、それぞれの部分を処理および検討する。結果を以下の表である表12に示す。
【0262】
【表36】

【0263】
<例7>
以下の表中で示される通りの組成および特性を有する更なる液晶混合物(液晶混合物G)を調製する。
【0264】
【表37】

この混合物はIPSモードにおけるディスプレイに非常に高度に適している。例2の通り、混合物を4個の部分に分ける。例2において記載される通り、それぞれの部分を処理および検討する。結果を以下の表である表14に示す。
【0265】
【表38】

【0266】
<例8>
以下の表中で示される通りの組成および特性を有する更なる液晶混合物(液晶混合物H)を調製する。
【0267】
【表39】

この混合物はIPSモードにおけるディスプレイに非常に高度に適している。例2の通り、混合物を4個の部分に分ける。例2において記載される通り、それぞれの部分を処理および検討する。結果を以下の表である表16に示す。
【0268】
【表40】

【0269】
<例9>
以下の表中で示される通りの組成および特性を有する更なる液晶混合物(液晶混合物I)を調製する。
【0270】
【表41】

この混合物はIPSモードにおけるディスプレイに非常に高度に適している。例1の通り、混合物を幾つかの部分に分ける。ここでは、しかしながら、混合物を6個の部分に分ける。最初の部分は、そのままで検討する。残りの5個の部分に、2種類の異なる反応性メソゲンを加える。第1のものは、例1において使用した反応性メソゲンRM−1であり、一方、第2のものは、上で定義される通りの式RMA−3の化合物である。2種類の反応性メソゲンRM−1およびRMA−3の濃度比を2.5で一定に保ち、一方であるいは、RM−1の使用濃度は、それぞれ、0.25、0.50、0.75、1.00および1.25%である。例1において記載される通り、それぞれの部分を処理および検討する。結果を以下の表である表18に示す。
【0271】
【表42】

【0272】
<例10>
以下の表中で示される通りの組成および特性を有する更なる液晶混合物(液晶混合物J)を調製する。
【0273】
【表43】

この混合物はIPSモードにおけるディスプレイに非常に高度に適している。例4の通り、混合物を10個の部分に分ける。例4において記載される通り、それぞれの部分を処理および検討する。結果を以下の表である表20に示す。
【0274】
【表44】

【0275】
<例11>
以下の表中で示される通りの組成および特性を有する更なる液晶混合物(液晶混合物K)を調製する。
【0276】
【表45】

この混合物はIPSモードにおけるディスプレイに非常に高度に適している。例2の通り、混合物を4個の部分に分ける。ここで、RM−1の最低濃度を0.25%から0.30%に変えた以外は、例2において記載される通り、それぞれの部分を処理および検討する。結果を以下の表である表22に示す。
【0277】
【表46】

【0278】
<例12>
以下の表中で示される通りの組成および特性を有する更なる液晶混合物(液晶混合物L)を調製する。
【0279】
【表47】

この混合物はIPSモードにおけるディスプレイに非常に高度に適している。例2の通り、混合物を4個の部分に分ける。例2において記載される通り、それぞれの部分を処理および検討する。結果を以下の表である表24に示す。
【0280】
【表48】

【0281】
<例13>
以下の表中で示される通りの組成および特性を有する更なる液晶混合物(液晶混合物M)を調製する。
【0282】
【表49】

この混合物はIPSモードにおけるディスプレイに非常に高度に適している。例2の通り、混合物を4個の部分に分ける。例11において記載される通り、それぞれの部分を処理および検討する。結果を以下の表である表26に示す。
【0283】
【表50】

【0284】
<例14>
以下の表中で示される通りの組成および特性を有する更なる液晶混合物(液晶混合物N)を調製する。
【0285】
【表51】

この混合物はIPSモードにおけるディスプレイに非常に高度に適している。例2の通り、混合物を4個の部分に分ける。例2において記載される通り、それぞれの部分を処理および検討する。結果を以下の表である表28に示す。
【0286】
【表52】

【0287】
<例15>
以下の表中で示される通りの組成および特性を有する更なる液晶混合物(液晶混合物O)を調製する。
【0288】
【表53】

この混合物はIPSモードにおけるディスプレイに非常に高度に適している。混合物を4個の部分に分ける。例2において記載される通り、それぞれの部分を処理および検討する。結果を以下の表である表30に示す。
【0289】
【表54】

【0290】
<例16>
以下の表中で示される通りの組成および特性を有する更なる液晶混合物(液晶混合物P)を調製する。
【0291】
【表55】

この混合物はIPSモードにおけるディスプレイに非常に高度に適している。例2の通り、混合物を4個の部分に分ける。例2において記載される通り、それぞれの部分を処理および検討する。結果を以下の表である表32に示す。
【0292】
【表56】

【0293】
<例17>
以下の表中で示される通りの組成および特性を有する更なる液晶混合物(液晶混合物Q)を調製する。
【0294】
【表57】

この混合物はIPSモードにおけるディスプレイに非常に高度に適している。例2の通り、混合物を4個の部分に分ける。例2において記載される通り、それぞれの部分を処理および検討する。結果を以下の表である表34に示す。
【0295】
【表58】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
−式Iの1種類以上の重合性化合物、および
−式IIおよびIIIの化合物群より選択される1種類以上の誘電的に正の化合物、および
−任意成分として、式IVの1種類以上の誘電的に中性の化合物
を含むことを特徴とする、正の誘電異方性を有する液晶媒体。
【化1】

(式中、
11およびP12は、互いに独立に、重合性基であり、
Sp11およびSp12は、互いに独立に、1〜10個のC原子を有するスペーサー基または単結合であり、
11およびX12は、互いに独立に、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−または単結合であり、
Lは、それぞれの出現において、それぞれ互いに独立に、H、F、Clまたは1〜5個のC原子を有するアルキル、好ましくは、H、FまたはClであり、
rおよびsは、互いに独立に、0、1、2または3であり、
tは、0、1または2である。)
【化2】

(式中、
は、1〜7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ化アルキルまたはフッ化アルコキシ、2〜7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ化アルケニルを表し、
【化3】

を表し、
21およびL22は、互いに独立に、HまたはFを表し、
は、ハロゲン、1〜3個のC原子を有するハロゲン化アルキルまたはアルコキシ、または、2個または3個のC原子を有するハロゲン化アルケニルまたはアルケニルオキシを表し、
mは、0、1、2または3を表し、
は、1〜7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ化アルキルまたはフッ化アルコキシ、2〜7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ化アルケニルを表し、
【化4】

を表し、
31およびL32は、互いに独立に、HまたはFを表し、
は、ハロゲン、1〜3個のC原子を有するハロゲン化アルキルまたはアルコキシ、または、2個または3個のC原子を有するハロゲン化アルケニルまたはアルケニルオキシを表し、
は、−CHCH−、−CFCF−、−COO−、トランス−CH=CH−、トランス−CF=CF−、−CHO−または単結合を表し、および
nは、0、1、2または3を表す。)
【化5】

(式中、
41およびR42は、互いに独立に、式IIにおいてRについて上で示される意味を有し、
【化6】

を表し、
41およびZ42は互いに独立に、Z41が2回出現する場合は、また、これらも互いに独立に、−CHCH−、−COO−、トランス−CH=CH−、トランス−CF=CF−、−CHO−、−CFO−、−C≡C−または単結合を表し、および
pは、0、1または2を表す。)
【請求項2】
媒体における式Iの重合性化合物の濃度が0.05%〜10%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の媒体。
【請求項3】
式Iの化合物に加え、更なる重合性化合物を追加的に含むことを特徴とする請求項1または2に記載の媒体。
【請求項4】
請求項1において示される通りの式IIの1種類以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の媒体。
【請求項5】
請求項1において示される通りの式IIIの1種類以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の媒体。
【請求項6】
請求項1において示される通りの式IVの1種類以上の誘電的に中性な化合物を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の媒体。
【請求項7】
式Vの1種類以上の誘電的に中性な化合物を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の媒体。
【化7】

(式中、
51およびR52は、互いに独立に、請求項1で式IIにおいてRに示される意味を有し、
【化8】

を表し、
51およびZ52は、互いに独立に、Z51が2回出現する場合は、また、これらも互いに独立に、−CHCH−、−COO−、トランス−CH=CH−、トランス−CF=CF−、−CHO−、−CFO−または単結合を表し、および
rは0、1または2を表す。)
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の媒体を含有することを特徴とする液晶ディスプレイ。
【請求項9】
重合性化合物(1種類または多種類)を重合することにより安定化された請求項1〜7のいずれか一項に記載の媒体を含有することを特徴とするディスプレイ。
【請求項10】
アクティブマトリクスによってアドレスされることを特徴とする請求項8または9に記載のディスプレイ。
【請求項11】
PS−IPSまたはPS−FFSディスプレイであることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項12】
PS正のVAディスプレイであることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項13】
液晶ディスプレイにおける請求項1〜7のいずれか一項に記載の媒体の使用。
【請求項14】
ディスプレイ内において重合性化合物(1種類)または重合性化合物(多種類)を重合することにより請求項1〜7のいずれか一項に記載の媒体を安定化することを特徴とする液晶ディスプレイの製造方法。
【請求項15】
重合性化合物(1種類)または重合性化合物(多種類)を重合する際に電圧を印加しないことを特徴とする請求項14に記載の方法。

【公開番号】特開2012−219270(P2012−219270A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−87081(P2012−87081)
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】