説明

液晶媒体および液晶ディスプレイ

【課題】液晶媒体および液晶ディスプレイを提供する。
【解決手段】本発明は、1種類以上の重合性化合物を含み、誘電的に正で、好ましくは、ネマチック媒体と、それから得られるポリマー安定化媒体と、液晶ディスプレイにおけるそれらの使用と、これらディスプレイ、特に、PSA−IPS、PSA−FFSおよびPSA−正のVAディスプレイとに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶媒体、特には、ポリマーによって安定化されている媒体と、これらの媒体を含有する液晶ディスプレイ、特に、アクティブマトリクスによってアドレスされるディスプレイ、および、特には、面内スイッチング(IPS:in−plane switching)、フリンジ場スイッチング(FFS:fringe−field switching)または正のΔεの垂直配向(正のVA:positive vertically aligned)タイプのディスプレイ、および、非常に特には、PS(polymer−stabilised:ポリマー安定化)またはPSA(polymer−sustained alignment:ポリマー維持配向)タイプの液晶ディスプレイとに関する。
【背景技術】
【0002】
現在使用されている液晶ディスプレイ(LCディスプレイ(liquid−crystal display)、略して、「ディスプレイ」または「LCD」とも呼ばれる)は、通常、TN(twisted nematic:ツイストネマチック)タイプのものである。しかしながら、これらは、コントラストの視野角依存性が強い不都合を有する。
【0003】
加えて、より広い視野角を有する所謂VA(vertical alignment:垂直配向)ディスプレイが知られている。VAディスプレイの液晶セルは2つの透明電極の間に液晶媒体層を含有しており、そこでは、通常、液晶媒体は負の値の誘電(DC:dielectric)異方性(Δε)を有する。スイッチが切れている状態で、液晶層の分子は電極表面に垂直に配向しているか(ホメオトロピック的)、または、チルトホメオトロピック配向を有している。電極に電圧を印加すると、電極表面に平行な液晶分子の再配向が起きる。更に、複屈折効果に基づいており、所謂「ベンド(bend)」配向で通常は正の(DC)異方性の液晶層を有しているOCB(optically compensated bend:光学補償ベンド)ディスプレイが知られている。電圧を印加すると、電極表面に垂直な液晶分子の再配向が起きる。加えて、暗状態においてベンドセルの光に対する望ましくない透明性を防ぐために、通常、OCBディスプレイは1枚以上の複屈折光学的リターデーションフィルムを含有する。OCBディスプレイは、TNディスプレイと比較して、より広い視野角および、より短い応答時間を有する。
【0004】
特に、2枚の基板の間に液晶層を含有し、基板の一方のみが、通常、櫛形構造の電極層を有するIPS(in−plane switching:面内スイッチング)ディスプレイが知られている。電圧を印加すると、それにより液晶層に平行な有意な成分を有する電界が生成される。このため、層面内において液晶分子の再配向が生じる。
【0005】
更に、所謂FFS(fringe−field switching:フリンジ場スイッチング)ディスプレイが提案されており(とりわけ、S.H.Jungら、Jpn.J.Appl.Phys.、43巻、3号、2004年、1028頁を参照;非特許文献1)、同様に同一の基板上に2つの電極を含有するが、IPSディスプレイとは対照的に、これらの一方のみが構造化された(櫛形)電極の形状であり、他方の電極は構造化されていない。それにより、強力な所謂「フリンジ場」、即ち、電極端の近傍における強力な電界およびセル全体にわたって強力な垂直成分および強力な水平成分の両者ともを有する電界が生成される。IPSディスプレイおよびFFSディスプレイの両者とも、コントラストの低い視野角依存性を有する。
【0006】
上述のディスプレイタイプの更なる開発は、用語「PSA」(「polymer sustained alignment」:ポリマー維持配向)としても既知の所謂「PS」(「polymer stabilised」:ポリマー安定化)ディスプレイである。これらにおいては、少量(例えば、0.3%、典型的には、0.1%以上〜5%以下の範囲内において、好ましくは、3%以下まで)の重合性化合物を液晶媒体に添加し、電圧を印加しながら液晶セルに導入した後、通常、UV光重合によって、その場で電極間において重合または架橋する。また、これらの混合物は、例えば、米国特許第6,781,665号明細書(特許文献1)において記載される通りの開始剤も任意成分として含んでもよい。開始剤、例えば、チバ社製Irganox(登録商標)1076を、好ましくは、0〜1%の量で重合性化合物を含む混合物に加える。「反応性メソゲン」(RM:reactive mesogen)とも称される重合性メソゲンまたは液晶化合物を液晶混合物に添加することが、特に適切であることが証明されている。当面のところ、PSAの原理は、さまざまな古典的液晶ディスプレイ中で使用されている。例えば、PSA−VA、PSA−OCB、PS−IPS/FFSおよびPS−TNディスプレイが知られている。テストセルにおいて示すことができる通り、PSA法によってセル中の液晶の初期配向が安定化される結果となる。従って、PSA−OCBディスプレイにおいて、ベンド構造の安定化を達成することが可能となり、オフセット電圧を低減または完全に省くことすらできる。PSA−VAディスプレイの場合、ディスプレイの表面に対する垂線より測定される「プレチルト」が低減され、このことは、ディスプレイにおける応答時間に対して正の効果を有する。PSAディスプレイの場合、反応性メソゲンの重合が液晶混合物中で起きるよう意図されている。このための必要条件は、液晶混合物自身が重合性成分を一切含まないことである。適切な重合性化合物は、例えば、表Gに列記されている。
【0007】
加えて、所謂、正のVAディスプレイ、即ち、ディスプレイが特に好ましい実施形態であることが証明されてきた。これらのディスプレイにおいては、誘電的に正の液晶媒体が使用される。ここで、電圧がかかっていない初期状態における液晶の初期配向はホメオトロピックであり、即ち、基板に対して本質的に垂直である。櫛歯状電極に電圧を印加すると液晶媒体層に本質的に平行な電界が生成され、基板に本質的に平行な配向へ液晶が転換される。また、このタイプの櫛歯状電極は、通常、IPSディスプレイにおいても使用される。また、対応するポリマー安定化(PSA)も、これらの正のVAディスプレイにおいて成功裏であることが証明されている。また、応答時間の著しい短縮も達成できる。
【0008】
特にモニターおよび特にはテレビ用途向けのみならず携帯用途(携帯テレビ)および「ノート型」テレビ(NBTV:notebook TV)用に、液晶ディスプレイの応答時間のみならずコントラストおよび輝度(よって、透過性も)を最適化することが引き続き望まれている。また、ここでも、PSA法は重要な利点を提供できる。特に、PSA−IPS、PSA−FFSおよびPSA−正のVAの場合、他のパラメータ、特に、これらのディスプレイのコントラストの良好な視野角依存性などに著しい悪影響を及ぼすことなく、応答時間の短縮を達成できる。
【0009】
しかしながら、先行技術より既知の液晶混合物およびRMは、PSAディスプレイにおいて使用する際に、各種の不都合を依然として有することが見出されてきた。重合は、好ましくは、光開始剤を添加することなくUV光を用いて行わなければならず、これは特定の用途に好都合のことがある。加えて、液晶混合物(また、下では「液晶ホスト混合物」とも、また、略して単に「ホスト混合物」とも言う)および重合性成分を含む選択された「材料系」は、可能な限り低い回転粘度および可能な限り良好な電気特性を有していなければならない。本明細書においては、所謂「電圧保持率(voltage holding ratio)」(略して、VHRまたはHR)が強調されなければならない。PSAディスプレイに関しては、通常、UV曝露はディスプレイの製造工程の不可欠な部分であるが、また、当然ながら、製造終了後のディスプレイにおいても「通常」の曝露として起こるため、特に、UV光照射後の高いVHRが中心的に重要である。
【0010】
しかしながら、例えば、TFTディスプレイにおいて使用するには、しばしばVHRが不適切であるため、または、液晶混合物の配向の安定化が不満足であるため、液晶混合物および重合性成分の全ての組み合わせが、これまで、PSAディスプレイに適している訳ではないと言う問題が生じる。
【0011】
特に、実用的用途に対して著しく低減された不具合を有するPSAディスプレイ用の入手可能で新規な材料を有することが望ましい。
【0012】
よって、上記の不都合を示さないか、僅かな程度にのみ示し、改良された特性を有する、特にIPSおよびFFSタイプのPSAディスプレイ、および、そのようなディスプレイにおいて使用するための液晶媒体および重合性化合物に対する多大な要求が引き続きある。特に、高い比抵抗と同時に広い動作温度範囲で低温においてすら短い応答時間、および、低い閾電圧、多数の中間階調、高いコントラストおよび広い視野角が可能となり、また、特にUV曝露後も高い値の電圧保持率を有し、および、特に、改良された応答時間を有するPSAディスプレイ、および、PSAディスプレイにおいて使用するための材料に対する多大な要求がある。
【0013】
本発明は、上に示される不都合を有していないか、低減された程度にのみ有しており、同時に、非常に高い比抵抗値、高いVHR値、広い視野角範囲、低い閾電圧、および、特に短い応答時間が可能となるPSAディスプレイにおいて使用するための新規な液晶混合物および新規な液晶媒体を提供する目的に基づく。
【0014】
この目的は、本出願において記載される通りの液晶媒体および液晶ディスプレイによって本発明に従い達成された。特に、驚くべきことに、PSAディスプレイにおいて本発明による液晶媒体を使用すると、特に速い応答時間を達成できることが見出された。
【0015】
一般にこれらのディスプレイのためには、および、特に、PSA−IPSおよびPSA−FFSディスプレイの場合、改良された特性を有する新規な液晶媒体が必要である。特に、アドレス時間が、多くのタイプの用途のために改良されなければならない。従って、比較的低い粘度(η)を有し、特に、比較的低い回転粘度(γ)を有する液晶媒体が必要である。特に、モニター用途向けには、回転粘度が100mPa・s以下、好ましくは80mPa・s以下、好ましくは60mPa・s以下、特には55mPa・s以下でなければならない。このパラメータに加え、媒体は適切な幅および位置のネマチック相範囲および適切な複屈折(Δn)を有していなければならず、誘電異方性(Δε)は相当に低い動作電圧を可能とするために十分高くなければならない。Δεは、好ましくは2より大きく、非常に好ましくは3より大きいが、好ましくは20以下、特に好ましくは15以下、非常に特に好ましくは12以下でなければならず、これにより少なくとも相当に高い比抵抗が妨げられるからである。
【0016】
ノート型パソコンまたは他の携帯用途向けのディスプレイとしての用途については、回転粘度が、好ましくは120mPa・s以下、特に好ましくは100mPa・s以下でなければならない。ここで、誘電異方性は、好ましくは6より大きく、好ましくは8より大きく、特に好ましくは12より大きくなければならない。
【0017】
テレビ用のディスプレイとしての用途向けには、誘電異方性は、好ましくは2より大きく、特に好ましくは3より大きいが、好ましくは20未満、好ましくは15未満、特に好ましくは12未満でなければならない。ここで、透明点は50℃以上〜100℃以下の範囲内でなければならず、複屈折率は0.08以上〜0.13以下の範囲内でなければならない。
【0018】
上で与えられる必要条件と異なり、PSA−正のVAディスプレイには、200mPa・s以下、好ましくは150mPa・s以下の回転粘度(γ)を有する新規な液晶媒体が必要である。これらの用途向けには、誘電異方性(Δε)が、好ましくは、2以上、好ましくは4以上〜30以下、好ましくは25以下の範囲内でなければならない。Δεに対する非常に特に好ましい範囲は10以上〜15以下であり、また、25以上〜30以下もである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第6,781,665号
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】S.H.Jungら、Jpn.J.Appl.Phys.、43巻、3号、2004年、1028頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従って、広いネマチック相範囲、使用されるディスプレイのタイプに対応する適切な光学異方性(Δn)、高いΔε、および、特に短い応答時間のための特に低い粘度などの実用的用途向けに適切な特性を有する液晶媒体に対する多大な要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
ここで驚くべきことに、適切に高いΔε、適切な相範囲およびΔn有し、先行技術からの材料の不具合を有していないか、少なくとも著しく低減された程度にのみ有する液晶媒体を達成することが可能であることが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0023】
これらの改良された本出願による液晶媒体は、少なくとも以下の化合物を含む:
−1種類以上の重合性化合物、および
−式IIおよびIIIの1種類以上の誘電的に正の化合物(好ましくは、3より大きい誘電異方性を有する)、および/または、好ましくは、および
−式IIIの1種類以上の誘電的に正の化合物(好ましくは、3より大きい誘電異方性を有する)、および
−任意成分として、式IVの1種類以上の誘電的に中性の化合物。
【0024】
【化1】

式中、
は、1〜7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ化アルキルまたはフッ化アルコキシ、2〜7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ化アルケニル、好ましくは、アルキルまたはアルケニルを表し、
【0025】
【化2】

好ましくは、
【0026】
【化3】

を表し、
21およびL22はHまたはFを表し、好ましくは、L21はFを表し、
は、ハロゲン、1〜3個のC原子を有するハロゲン化アルキルまたはアルコキシ、または、2個または3個のC原子を有するハロゲン化アルケニルまたはアルケニルオキシ、好ましくは、F、Cl、−OCF、−O−CHCF、−O−CH=CH、−O−CH=CFまたは−CF、非常に好ましくは、F、Cl、−O−CH=CFまたは−OCFを表し、
mは、0、1、2または3、好ましくは1または2、特に好ましくは1を表す。
【0027】
【化4】

式中、
は、1〜7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ化アルキルまたはフッ化アルコキシ、2〜7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ化アルケニル、好ましくは、アルキルまたはアルケニルを表し、
【0028】
【化5】

好ましくは、
【0029】
【化6】

を表し、
31およびL32は、互いに独立に、HまたはFを表し、好ましくは、L31はFを表し、
は、ハロゲン、1〜3個のC原子を有するハロゲン化アルキルまたはアルコキシ、または、2個または3個のC原子を有するハロゲン化アルケニルまたはアルケニルオキシ、F、Cl、−OCF、−O−CHCF、−O−CH=CH、−O−CH=CFまたは−CF、非常に好ましくは、F、Cl、−O−CH=CFまたは−OCFを表し、
は、−CHCH−、−CFCF−、−COO−、トランス−CH=CH−、トランス−CF=CF−、−CHO−または単結合、好ましくは、−CHCH−、−COO−、トランス−CH=CH−または単結合、非常に好ましくは、−COO−、トランス−CH=CH−または単結合を表し、および
nは、0、1、2または3、好ましくは1または3、特に好ましくは1を表す。
【0030】
【化7】

式中、
41およびR42は、互いに独立に、式IIにおいてRに上で示される意味を有し、好ましくは、R41がアルキルを表し、R42がアルキルまたはアルコキシを表すか、または、R41がアルケニルを表し、R42がアルキルを表し、
【0031】
【化8】

を表し、
好ましくは、
【0032】
【化9】

41およびZ42は互いに独立に、Z41が2回出現する場合は、また、これらも互いに独立に、−CHCH−、−COO−、トランス−CH=CH−、トランス−CF=CF−、−CHO−、−CFO−、−C≡C−または単結合を表し、好ましくは、それらの1個以上は単結合を表し、および
pは、0、1または2、好ましくは、0または1を表す。
【0033】
本出願による液晶媒体は、好ましくは、1種類以上の少なくとも一反応性で重合性の化合物を含む。特に好ましい実施形態において、液晶媒体は1種類以上の二反応性で重合性の化合物を含む。
【0034】
本出願による液晶媒体は、任意成分として、1種類以上の重合開始剤、好ましくは、1種類以上の光開始剤を含んでもよい。媒体における開始剤(1種類)の濃度または開始剤(多種類)の総濃度は、重合性化合物の総濃度を基礎として、好ましくは、0.001%〜1%、好ましくは、0.1%〜10%である。
【0035】
本出願による液晶媒体は、好ましくは、ネマチック相を有する。
【0036】
本発明は、更に、上および下に記載される通りの本発明による液晶混合物と、好ましくは反応性メソゲンより選択される1種類以上の重合性化合物とを含む液晶媒体に関する。
【0037】
本発明は、更に、
−好ましくは反応性メソゲンより選択される1種類以上の重合性化合物を含む重合性成分(成分A)と、
−上および下に記載される通りの式IIおよび/またはIIIの1種類以上の化合物を5%以上含む本発明による液晶混合物から成り、下では「液晶ホスト混合物」または「ホスト混合物」とも言う(非重合性の)液晶成分(成分B)と
を含む液晶媒体に関する。
【0038】
本発明は、更に、好ましくは、電界および/または磁界を印加することなくPAまたはPSAディスプレイにおいて重合性化合物(1種類または多種類)をその場で重合することにより応答時間を改良するために、PSおよびPSAディスプレイにおいて本発明による液晶混合物および液晶媒体を使用すること、特に、液晶媒体を含有するPSおよびPSAディスプレイにおいて使用することに関する。しかしながら、また、電界および/または磁界、好ましくは電界を印加しながら、重合性化合物(1種類または多種類)の重合を行うこともできる。この場合に印加される電圧はより低くなければならず、特には、0Vおよび使用される電気光学的効果の閾電圧(Vth)の間の範囲内でなければならない。
【0039】
本発明は、更に、本発明による液晶媒体を含有する液晶ディスプレイ、特に、PSまたはPSAディスプレイ、特に好ましくは、PS−IPS、PSA−IPS、PS−FFSまたはPSA−FFSディスプレイまたはPS−正のVAまたはPSA−正のVAディスプレイに関する。
【0040】
本発明は、更に、2枚の基板(ただし、少なくとも一方の基板は光に対して透明であり、少なくとも一方の基板は電極層を有する)と、基板間に配置され、重合された成分および低分子量成分を含む液晶媒体層(ただし、重合された成分は、1種類以上の重合性化合物を、液晶セルの基板間において液晶媒体中で、好ましくは電圧を印加しながら重合することで得ることができ、ただし、低分子量成分は上および下で記載される通りの本発明による液晶混合物である)とから成る液晶セルを含むPSまたはPSAタイプの液晶ディスプレイに関する。
【0041】
本発明は、更に、重合性化合物(1種類または多種類)を重合することで安定化された液晶媒体を含有する液晶ディスプレイに関する。
【0042】
本発明によるディスプレイは、好ましくは、アクティブマトリクス(active matrix LCD、略してAMD)、好ましくは、薄膜トランジスタ(TFT:thin−film transistor)のマトリクスによってアドレスされる。しかしながら、また、本発明による液晶は、他の既知のアドレス手段を有するディスプレイにおいても有利な態様において使用することができる。
【0043】
本発明は、更に、本発明による1種類以上の低分子量液晶化合物または液晶混合物を、1種類以上の重合性化合物と、および、任意成分として更なる液晶化合物および/または添加剤と混合することによって本発明による液晶媒体を調製する方法に関する。
【0044】
本発明は、更に、本発明による液晶混合物を、1種類以上の重合性化合物と、および、任意成分として更なる液晶化合物および/または添加剤と混合し、結果として得られる混合物を上および下に記載される通りの液晶セルに導入し、好ましくは0VおよびVthの間の範囲内で任意に電圧を印加しながら、特に好ましくは電圧を印加せずに、重合性化合物(1種類または多種類)を重合することによって本発明による液晶ディスプレイを製造する方法に関する。
【0045】
本発明は、更に、ディスプレイ内において任意に電圧を印加しながら、重合性化合物(1種類または多種類)を重合することによって本発明による媒体が安定化されている液晶ディスプレイを製造する方法に関する。
【0046】
以下の意味を上および下で適用する。
【0047】
他に示さない限り、用語「PSA」をPSディスプレイおよびPSAディスプレイを表すために使用する。
【0048】
用語「チルト」および「チルト角」は、液晶ディスプレイ(本明細書において、好ましくは、PSまたはPSAディスプレイ)において液晶媒体の分子がセル表面に対してチルトした配向に関する。本明細書において、チルト角は、液晶分子の分子長軸(液晶ダイレクタ)と、液晶セルの表面を形成する平坦で平行な外板の表面との間の平均角(90°未満)を表す。
【0049】
用語「メソゲン基」は当業者には既知であり文献に記載されており、それの引力および斥力的相互作用の異方性により、低分子量または高分子物質中で液晶(LC)相の発生に本質的に寄与する基を表す。メソゲン基を含有する化合物(メソゲン化合物)は、それ自身では必ずしも液晶相を有する必要はない。また、他の化合物と混合後および/または重合後のみに、メソゲン化合物が液晶相挙動を示すことも可能である。典型的なメソゲン基は、例えば、剛直な棒状または円盤状の形状の単位である。メソゲンまたは液晶化合物に関して使用される用語および定義の概説が、Pure Appl.Chem.73巻(5号)、888頁(2001年)およびC.Tschierske、G.Pelzl、S.Diele、Angew.Chem.2004年、116巻、6340〜6368頁において与えられている。
【0050】
用語「スペーサー基」または略して「スペーサー」は、上および下で「Sp」とも呼ばれ、当業者には既知であり文献に記載されており、例えば、Pure Appl.Chem.73巻(5号)、888頁(2001年)およびC.Tschierske、G.Pelzl、S.Diele、Angew.Chem.2004年、116巻、6340〜6368頁を参照。他に示さない限り、用語「スペーサー基」または「スペーサー」は、上および下において、重合性メソゲン化合物中でメソゲン基および重合性基(1個または複数)を互いに連結している柔軟性の基を表す。
【0051】
用語「反応性メソゲン」または「RM(reactive mesogen)」は、メソゲン基および重合に適切な1個以上の官能基(重合性基または基Pとも呼ばれる)を含有する化合物を表す。
【0052】
用語「低分子量化合物」および「非重合性化合物」は、通常、モノマー性で、当業者に既知の通常の条件下、特にRMの重合のために使用される条件下において重合に適した官能基を含有しない化合物を表す。
【0053】
「非重合性」は、少なくとも重合性化合物を重合するために使用される条件下において、重合反応に対して化合物が安定であるか非反応性であることを意味する。
【0054】
本発明の目的のために、用語「液晶媒体」は、液晶混合物および1種類以上の重合性化合物(例えば、反応性メソゲンなど)を含む媒体を表すことを意図する。用語「液晶混合物」(または「ホスト混合物」)は、非重合性で低分子量の化合物、好ましくは、2種類以上の液晶化合物と、任意成分として、例えば、キラルドーパントまたは安定剤などの更なる添加剤とから排他的に成る液晶混合物を表すことを意図する。
【0055】
特に、室温においてネマチック相を有する液晶混合物および液晶媒体が特に好ましい。
【0056】
また、本発明による液晶混合物および液晶媒体は、例えば、重合開始剤、阻害剤、安定剤、表面活性化物質またはキラルドーパントなどの当業者に既知で文献に記載されている更なる添加剤を含んでもよい。これらは重合性でも非重合性でもよい。従って、重合性添加剤は重合性成分に分類される。従って、非重合性添加剤は液晶混合物(ホスト混合物)または非重合性成分に分類される。
【0057】
PSAディスプレイを製造するために、好ましくは0V〜Vthの範囲内で任意に電圧を印加しながら、しかし、特に好ましくは電圧を印加せずに、液晶ディスプレイの基板間の液晶媒体中において、その場での重合により、重合性化合物を重合または架橋(1つの化合物が2個以上の重合性基を含有する場合)する。重合は1つの工程で行うことができる。また、最初に、配向の安定化を引き起こすために電圧を印加しながら第1工程における重合を行い、続いて、第2重合工程において電圧を印加せずに、第1工程において反応しなかった化合物を重合または架橋する(「最終硬化」)ことも可能である。
【0058】
適切で好ましい重合方法は、例えば、熱または光重合で、好ましくは光重合であり、特にはUV光重合である。また、必要に応じて、ここに1種類以上の開始剤を加えることもできる。重合のために適切な条件および開始剤の適切なタイプおよび量は当業者に既知であり、文献に記載されている。例えば、商業的に入手可能な光重合開始剤Irgacure651(登録商標)、Irgacure184(登録商標)、Irgacure907(登録商標)、Irgacure369(登録商標)またはDarocure1173(登録商標)(Ciba社)がフリーラジカル重合に適する。開始剤を用いる場合、開始剤の比率は、混合物全体を基礎として、好ましくは0.001〜5%、特に好ましくは0.001〜1%である。しかしながら、また、開始剤を加えることなく、重合を行うこともできる。更に好ましい実施形態において、液晶媒体は重合開始剤を含まない。
【0059】
また、例えば、保存または輸送中におけるRMの好ましくない自発的な重合を防止するために、重合性成分(成分A)または液晶媒体(成分B)は1種類以上の安定剤を含んでも構わない。安定剤の適切なタイプおよび量は当業者に既知であり、文献に記載されている。例えば、Irganox(登録商標)シリーズ(Ciba社)からの商業的に入手可能な安定剤、例えば、Irganox(登録商標)1076(同様にCiba社)などが特に適切である。安定剤を用いる場合、安定剤の割合は、RMまたは重合性成分A)の総量を基礎として、好ましくは10〜10,000ppm、特に好ましくは50〜500ppmである。
【0060】
また、重合性化合物は開始剤のない重合にも適しており、このことは、例えば、材料費がより低く、特に、開始剤またはそれの劣化生成物の残存し得る量による液晶媒体の不純物がより少ないなどの特筆すべき利点を伴う。
【0061】
PSAディスプレイにおいて使用するための本発明による液晶媒体は、好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下、および、好ましくは0.01%以上、特に好ましくは0.1%以上の重合性化合物、特には、上および下で与えられる式の重合性化合物を含む。
【0062】
1種類、2種類または3種類の重合性化合物を含む液晶媒体が特に好ましい。
【0063】
更に、成分A)および/またはB)の化合物がアキラルな化合物から成る群より排他的に選択されるアキラルな重合性化合物と、液晶媒体とが好ましい。
【0064】
更に、重合性成分(または成分A)が、1個の重合性基を含有する1種類以上の重合性化合物(一反応性)と、2個以上、好ましくは2個の重合性基を含有する1種類以上の重合性化合物(二反応性または多反応性)とを含む液晶媒体が好ましい。
【0065】
更に、重合性成分または成分A)が、2個の重合性基を含有する重合性化合物(二反応性)を排他的に含むPSAディスプレイおよび液晶媒体が好ましい。
【0066】
重合性化合物は個別に液晶混合物に添加できるが、また、本発明に従って用いられる2種類以上の重合性化合物を含む混合物を使用することも可能である。そのような混合物を重合する場合、コポリマーが形成される。本発明は、更に、上および下で述べられる重合性混合物に関する。重合性化合物は、メソゲンでも非メソゲンでもよい。反応性メソゲン(RM:reactive mesogen)としても既知の重合性メソゲン化合物が特に好ましい。
【0067】
本発明による液晶媒体およびPSAディスプレイにおける使用に適切で好ましいRMを下に記載する。
【0068】
本発明の好ましい実施形態において、重合性化合物は式Iより選択される:
【0069】
【化10】

式中、個々の基は以下の意味を有する:
およびRは、それぞれ互いに独立に、P、P−Sp−、H、ハロゲン、SF、NO、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基を表し、ただし、基RおよびRの少なくとも一方は基PまたはP−Sp−を表すか、または含有し、
Pは、それぞれの出現において互いに独立に、重合性基を表し、
Spは、それぞれの出現において互いに独立に、スペーサー基または単結合を表し、
およびAは、それぞれ互いに独立に、および、Aは、それぞれの出現において、好ましくは4〜25個の環原子、好ましくはC原子を有する芳香族、ヘテロ芳香族、脂環式またはヘテロ環式基を表し、該基は、また、縮合環を含有していてもよく、該基は、また、Lで一置換または多置換されていてもよく、
Lは、P、P−Sp−、OH、CHOH、F、Cl、Br、I、−CN、−NO、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)N(R、−C(=O)Y、−C(=O)R、−N(R、置換されていてもよいシリル、置換されていてもよく6〜20個のC原子を有するアリール、または直鎖状または分岐状で1〜25個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ(ただし加えて、1個以上のH原子は、F、Cl、PまたはP−Sp−で置き換えられていてもよい。)、好ましくは、P、P−Sp−、H、OH、CHOH、ハロゲン、SF、NO、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基を表し、
は、それぞれの出現において互いに独立に、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−OCO−、−O−CO−O−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−(CHn1−、−CFCH−、−CHCF−、−(CFn1−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、CR00または単結合を表し、
およびR00は、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、
は、P、P−Sp−、H、ハロゲン、直鎖状、分岐状または環状で1〜25個のC原子を有するアルキル(ただし加えて、1個以上の隣接していないCH基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、ただし加えて、1個以上のH原子は、F、Cl、PまたはP−Sp−で置き換えられていてもよい。)、置換されていてもよく6〜40個のC原子を有するアリールまたはアリールオキシ基、または置換されていてもよく2〜40個のC原子を有するヘテロアリールまたはヘテロアリールオキシ基を表し、
m1は、0、1、2、3または4を表し、および
n1は、1、2、3または4を表し、
ただし、基R、R、および存在する置換基Lからの少なくとも1個、好ましくは、1個、2個または3個、特に好ましくは、1個または2個がPまたはP−Sp−を表すか、少なくとも1個の基がPまたはP−Sp−を含有する。
【0070】
式Iの特に好ましい化合物は、
およびRは、それぞれ互いに独立に、P、P−Sp−、H、F、Cl、Br、I、−CN、−NO、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、SF、または直鎖状または分岐状で1〜25個のC原子を有するアルキルを表し、ただし加えて、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれ互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、−C(R)=C(R00)−、−C≡C−、−N(R00)−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、ただし加えて、1個以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CN、PまたはP−Sp−で置き換えられていてもよく、ただし、基RおよびRの少なくとも一方は基PまたはP−Sp−を表すか含有しており、
およびAは、それぞれ互いに独立に、1,4−フェニレン、ナフタレン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、フェナントレン−2,7−ジイル、アントラセン−2,7−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、クマリン、フラボン(ただし加えて、これらの基における1個以上のCH基はNで置き換えられていてもよい。)、シクロヘキサン−1,4−ジイル(ただし加えて、1個以上の隣接していないCH基はOおよび/またはSで置き換えられていてもよい。)、1,4−シクロヘキセニレン、ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1,3−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、スピロ[3.3]ヘプタン−2,6−ジイル、ピペリジン−1,4−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、インダン−2,5−ジイルまたはオクタヒドロ−4,7−メタノインダン−2,5−ジイルを表し、ただし、これら全ての基は無置換であっても、Lにより一置換または多置換されていてもよく、
Lは、P、P−Sp−、OH、CHOH、F、Cl、Br、I、−CN、−NO、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)N(R、−C(=O)Y、−C(=O)R、−N(R、置換されていてもよいシリル、置換されていてもよく6〜20個のC原子を有するアリール、または直鎖状または分岐状で1〜25個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシを表し、ただし加えて、1個以上のH原子は、F、Cl、PまたはP−Sp−で置き換えられていてもよく、
Pは重合性基を表し、
はハロゲンを表し、
は、P、P−Sp−、H、ハロゲン、直鎖状、分岐状または環状で1〜25個のC原子を有するアルキル(ただし加えて、1個以上の隣接していないCH基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、ただし加えて、1個以上のH原子は、F、Cl、PまたはP−Sp−で置き換えられていてもよい。)、置換されていてもよく6〜40個のC原子を有するアリールまたはアリールオキシ基、または置換されていてもよく2〜40個のC原子を有するヘテロアリールまたはヘテロアリールオキシ基を表すものである。
【0071】
およびRの一方または両方がPまたはP−Sp−を表す式Iの化合物が非常に特に好ましい。
【0072】
本出願による液晶媒体は、好ましくは、総和で0.5〜10%、好ましくは1.0〜4.0%、特に好ましくは1.0〜2.0%の、好ましくは式Iの重合性化合物を含む。
【0073】
式Iの特に好ましい化合物は、以下のサブ式(I1〜I19)より選択される:
【0074】
【化11】

【0075】
【化12】

【0076】
【化13】

式中、
およびPは、Pに対して示される意味の1つを有し、好ましくは、アクリレートまたはメタクリレートを表し、
SpおよびSpは、Spに対して示される意味の1つを有するか、単結合を表し、
は、−O−、−CO−、−C(R)−または−CFCF−を表し、
およびZは、それぞれ互いに独立に、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−または−(CH−(ただし、nは、2、3または4である。)を表し、
Lは、式Iに対して上で示される意味を有し、
L’およびL”は、それぞれ互いに独立に、H、FまたはClを表し、
rは、0、1、2、3または4を表し、
sは、0、1、2または3を表し、
tは、0、1または2を表し、
xは、0または1を表し、および
およびRは、それぞれ互いに独立に、H、CHまたはCF、好ましくは、HまたはCHを表す。
【0077】
本発明の更に好ましい実施形態において、重合性化合物は、式Iより選択されるキラルまたは光学活性な化合物(キラルRM)である:
【0078】
【化14】

式中、A、Zおよびmは、それぞれの出現において同一または異なって、式Iにおいて示される意味の1つを有し、
は、それぞれの出現において同一または異なって、式IにおいてRに示される意味の1つを有し、ただし、Rはキラルでもアキラルでもよく、
Qは、式Iにおいて定義される通りのLにより一置換または多置換されていてもよいk価を有するキラル基を表し、
kは、1、2、3、4、5または6であり、
ただし、化合物は、上で定義される通りの基PまたはP−Sp−を表すか含有する基RまたはLを少なくとも1個含有する。
【0079】
式Iの特に好ましい化合物は、式IAの1価基Qを含有する:
【0080】
【化15】

式中、Lおよびrは、それぞれの出現において同一または異なって、上で示される意味を有し、
およびBは、それぞれ互いに独立に、縮合されたベンゼン、シクロヘキサンまたはシクロヘキセンを表し、
tは、それぞれの出現において同一または異なって、0、1または2を表し、および
uは、それぞれの出現において同一または異なって、0、1または2を表す。
【0081】
uが1を表す式IAの基が特に好ましい。
【0082】
式Iの更に好ましい化合物は、式IBの1価基Qまたは1個以上の基Rを含有する:
【0083】
【化16】

式中、
は、1〜9個のC原子を有するアルキレンまたはアルキレンオキシまたは単結合を表し、
は、フッ素化されていてもよく1〜10個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシを表し、ただし加えて、1個または2個の隣接していないCH基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−S−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−、−O−COO−、−S−CO−、−CO−S−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、
は、F、Cl、CNまたはQで定義される通りであるがQとは異なるアルキルまたはアルコキシを表す。
【0084】
式IBの好ましい基は、例えば、2−ブチル(即ち、1−メチルプロピル)、2−メチルブチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、特に、2−メチルブチル、2−メチルブトキシ、2−メチルペントキシ、3−メチルペントキシ、2−エチルヘキソキシ、1−メチルヘキソキシ、2−オクチルオキシ、2−オキサ−3−メチルブチル、3−オキサ−4−メチルペンチル、4−メチルヘキシル、2−ヘキシル、2−オクチル、2−ノニル、2−デシル、2−ドデシル、6−メトキシオクトキシ、6−メチルオクトキシ、6−メチルオクタノイルオキシ、5−メチルヘプチルオキシカルボニル、2−メチルブチリルオキシ、3−メチルバレロイルオキシ、4−メチルヘキサノイルオキシ、2−クロロプロピオニルオキシ、2−クロロ−3−メチルブチリルオキシ、2−クロロ−4−メチルバレリルオキシ、2−クロロ−3−メチルバレリルオキシ、2−メチル−3−オキサペンチル、2−メチル−3−オキサヘキシル、1−メトキシプロピル−2−オキシ、1−エトキシプロピル−2−オキシ、1−プロポキシプロピル−2−オキシ、1−ブトキシプロピル−2−オキシ、2−フルオロオクチルオキシ、2−フルオロデシルオキシ、1,1,1−トリフルオロ−2−オクチルオキシ、1,1,1−トリフルオロ−2−オクチル、2−フルオロメチルオクチルオキシである。
【0085】
式Iの更に好ましい化合物は、式ICの2価基Qを含有する:
【0086】
【化17】

式中、L、r、t、AおよびBは、上に示される意味を有する。
【0087】
式Iの更に好ましい化合物は、以下の式より選択される2価基Qを含有する:
【0088】
【化18】

式中、Pheは、Lにより一置換または多置換されていてもよいフェニルを表し、および、Rは、Fまたはフッ素化されていてもよく1〜4個のC原子を有するアルキルを表す。
【0089】
適切なキラルRMは、例えば、英国特許出願公開第2 314 839号公報、米国特許第6,511,719号明細書、米国特許第7,223,450号明細書、国際特許出願公開第02/34739号パンフレット、米国特許第7,041,345号明細書、米国特許第7,060,331号明細書または米国特許第7,318,950号明細書に記載されている。ビナフチル基を含有する適切なRMは、例えば、米国特許第6,818,261号明細書、米国特許第6,916,940号明細書、米国特許第7,318,950号明細書および米国特許第7,223,450号明細書に記載されている。
【0090】
上および下で示されるキラル構造要素、および、そのようなキラル構造要素を含有する重合性および重合された化合物を光学的に活性な形態において、即ち、純粋なエナンチオマーとして、または、2種類のエナンチオマーの任意で所望の混合物として、あるいは、ラセミ体として用いることができる。ラセミ体の使用が好ましい。ラセミ体の使用には純粋なエナンチオマーの使用に勝る幾つかの利点があり、例えば、合成の複雑さが著しく低く、材料費が低いなどである。
【0091】
式Iの特に好ましい化合物は、以下のサブ式より選択される:
【0092】
【化19】

【0093】
【化20】

【0094】
【化21】

式中、L、P、Sp、m、rおよびtは、上に示される意味を有し、ZまたはAは、それぞれの出現において同一または異なって、それぞれZおよびAに示される意味の1つを有し、t1は、それぞれの出現において同一または異なって、0または1を表す。
【0095】
用語「炭素基」は、更なる種類の原子を含有しない(例えば、−C≡C−など)か、または、例えば、N、O、S、P、Si、Se、As、TeまたはGeなどの1種類以上の更なる原子を含有していてもよい(例えば、カルボニルなど)かのいずれかで、少なくとも1個の炭素原子を含有する一価または多価の有機基を表す。用語「炭化水素基」は、1個以上のH原子を追加的に含有しており、および、例えば、N、O、S、P、Si、Se、As、TeまたはGeなどの1種類以上のヘテロ原子を含有していてもよい炭素基を表す。
【0096】
「ハロゲン」は、F、Cl、BrまたはI、好ましくは、FまたはCl、特に好ましくは、Fを表す。
【0097】
炭素または炭化水素基は、飽和または不飽和基のいずれでもよい。不飽和基は、例えば、アリール、アルケニルまたはアルキニル基である。3個より多いC原子を有する炭素または炭化水素基は、直鎖状、分岐状および/または環状のいずれでもよく、また、スピロ結合または縮合環を含有していてもよい。
【0098】
また、用語「アルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」などは、多価の基、例えば、アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレンなども包含する。
【0099】
用語「アリール」は、芳香族炭素基またはそれらより誘導される基を表す。用語「ヘテロアリール」は、1個以上のヘテロ原子を含有し、上で定義される通りの「アリール」を表す。
【0100】
好ましい炭素および炭化水素基は、置換されていてもよく、1〜40個、好ましくは1〜25個、特に好ましくは1〜18個のC原子を有するアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシおよびアルコキシカルボニルオキシ、置換されていてもよく、6〜40個、好ましくは6〜25個のC原子を有するアリールまたはアリールオキシ、または、置換されていてもよく、6〜40個、好ましくは6〜25個のC原子を有するアルキルアリール、アリールアルキル、アルキルアリールオキシ、アリールアルキルオキシ、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールカルボニルオキシおよびアリールオキシカルボニルオキシである。
【0101】
更に好ましい炭素および炭化水素基は、C〜C40アルキル、C〜C40アルケニル、C〜C40アルキニル、C〜C40アリル、C〜C40アルキルジエニル、C〜C40ポリエニル、C〜C40アリール、C〜C40アルキルアリール、C〜C40アリールアルキル、C〜C40アルキルアリールオキシ、C〜C40アリールアルキルオキシ、C〜C40ヘテロアリール、C〜C40シクロアルキル、C〜C40シクロアルケニルなどである。C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、C〜C22アルキニル、C〜C22アリル、C〜C22アルキルジエニル、C〜C12アリール、C〜C20アリールアルキルおよびC〜C20ヘテロアリールが特に好ましい。
【0102】
更に好ましい炭素および炭化水素基は、直鎖状、分岐状または環状で、1〜40個、好ましくは1〜25個のC原子を有するアルキル基であり、該基は無置換であるか、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されており、ただし、1個以上の隣接していないCH基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、それぞれ互いに独立に、−C(R)=C(R)−、−C≡C−、−N(R)−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−で置き換えられていてもよい。
【0103】
は、好ましくは、H、ハロゲン、直鎖状、分岐状または環状で1〜25個のC原子を有するアルキル鎖(ただし加えて、1個以上の隣接していないC原子は、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−によって置き換えられていてもよく、ただし、1個以上のH原子はフッ素により置き換えられていてもよい。)、置換されていてもよく6〜40個のC原子を有するアリールまたはアリールオキシ基、または置換されていてもよく2〜40個のC原子を有するヘテロアリールまたはヘテロアリールオキシ基を表す。
【0104】
好ましいアルキル基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、2−メチルブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、2−エチルヘキシル、n−ヘプチル、シクロヘプチル、n−オクチル、シクロオクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、ドデカニル、トリフルオロメチル、ペルフルオロ−n−ブチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペルフルオロオクチル、ペルフルオロヘキシルなどである。特に好ましいアルキル基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、2−メチルブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、n−ヘキシル、2−エチルヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシルである。
【0105】
好ましいアルケニル基は、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニルなどである。特に好ましいアルケニル基は、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニルである。
【0106】
好ましいアルキニル基は、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、オクチニルなどである。
【0107】
好ましいアルコキシ基は、例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、2−メチルブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、n−ヘプトキシ、n−オクトキシ、n−ノノキシ、n−デコキシ、n−ウンデコキシ、n−ドデコキシなどである。特に好ましいアルコキシ基は、例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシである。
【0108】
好ましいアミノ基は、例えば、ジメチルアミノ、メチルアミノ、メチルフェニルアミノ、フェニルアミノなどである。
【0109】
アリールおよびヘテロアリール基は単環でも多環でもよく、即ち、それらは1個の環(例えば、フェニルなど)または2個以上の環を含有してもよく、また、該基は縮合されていてもよく(例えば、ナフチルなど)または共有結合によって連結されていてもよく(例えば、ビフェニルなど)、または縮合および連結された環の組み合わせを含有していてもよい。ヘテロアリール基は、好ましくは、O、N、SおよびSeより選択される1個以上のヘテロ原子を含有する。
【0110】
6〜25個のC原子を有する単環式、二環式または三環式アリール基および2〜25個のC原子を有する単環式、二環式または三環式ヘテロアリール基が特に好ましく、該基は縮合された環を含有していてもよく、置換されていてもよい。更に、5員、6員または7員のアリールおよびヘテロアリール基が好ましく、ただし加えて、1個以上のCH基は、O原子および/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、N、SまたはOで置き換えられていてもよい。
【0111】
好ましいアリール基は、例えば、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、[1,1’:3’,1”]ターフェニル−2’−イル、ナフチル、アントラセン、ビナフチル、フェナントレン、ピレン、ジヒドロピレン、クリセン、ペリレン、テトラセン、ペンタセン、ベンゾピレン、フルオレン、インデン、インデノフルオレン、スピロビフルオレンなどである。
【0112】
好ましいヘテロアリール基は、例えば、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、フラン、チオフェン、セレノフェン、オキサゾール、イソキサゾール、1,2−チアゾール、1,3−チアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾールなどの5員環;ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,3,5−テトラジンなどの6員環;またはインドール、イソインドール、インドリジン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、プリン、ナフタイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリダイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、ベンゾキサゾール、ナフトキサゾール、アントロキサゾール、フェナントロキサゾール、イソキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、キノリン、イソキノリン、プテリジン、ベンゾ−5,6−キノリン、ベンゾ−6,7−キノリン、ベンゾ−7,8−キノリン、ベンゾイソキノリン、アクリジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾピリダジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、フェナジン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントリジン、フェナントロリン、チエノ[2,3b]チオフェン、チエノ[3,2b]チオフェン、ジチエノチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ベンゾチアジアゾチオフェンなどの縮合基;またはこれらの基の組み合わせである。また、ヘテロアリール基は、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、フルオリン、フルオロアルキルまたは更なるアリールまたはヘテロアリール基で置換されてよい。
【0113】
(非芳香族)脂環式およびヘテロ環式基は、飽和環、即ち、排他的に単結合を含有するものと、また、部分的に不飽和な環、即ち、多重結合も含有してよいものとの両者を包含する。ヘテロ環式環は、好ましくは、Si、O、N、SおよびSeより選択される1個以上のヘテロ原子を含有する。
【0114】
(非芳香族)脂環式およびヘテロ環式基は、単環式、即ち、1個のみの環を含有(例えば、シクロヘキサンなど)してもよく、または、多環式、即ち、複数の環を含有(例えば、デカヒドロナフタレンまたはビシクロオクタンなど)していてもよい。飽和基が、特に好ましい。更に、3〜25個のC原子を有する単環式、二環式または三環式基が好ましく、該基は縮合環を含有していてもよく、置換されていてもよい。更に、5員、6員、7員または8員の炭素環式基が好ましく、ただし加えて、1個以上のC原子はSiで置き換えられていてもよく、および/または1個以上のCH基はNで置き換えられていてもよく、および/または1個以上の隣接していないCH基は−O−および/または−S−で置き換えられていてもよい。
【0115】
好ましい脂環式およびヘテロ環式基は、例えば、シクロペンタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフラン、ピロリジンなどの5員基、シクロヘキサン、シリナン、シクロヘキセン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジチアン、ピペリジンなどの6員基、シクロヘプタンなどの7員基、および、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、インダン、ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1,3−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、スピロ[3.3]ヘプタン−2,6−ジイル、オクタヒドロ−4,7−メタノインダン−2,5−ジイルなどの縮合基である。
【0116】
好ましい置換基は、例えば、アルキルまたはアルコキシなどの溶解促進基、フッ素、ニトロまたはニトリルなどの電子吸引基、または、ポリマーにおいてガラス転移温度(Tg)を上昇させるための置換基、特に、例えば、t−ブチルまたは置換されていてもよいアリール基などの嵩高い基である。
【0117】
上および下で「L」とも言われる好ましい置換基は、例えば、F、Cl、Br、I、−CN、−NO、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)N(R、−C(=O)Y、−C(=O)R、−N(R(ただし、Rは上で示される意味を有し、Yはハロゲンを表す。)、置換されていてもよく、6〜40個、好ましくは6〜20個のC原子を有するシリルまたはアリール、および、直鎖状または分岐状で、1〜25個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ(ただし、1個以上のH原子はFまたはClで置き換えられていてもよい。)である。
【0118】
「置換されたシリルまたはアリール」は、好ましくは、ハロゲン、−CN、R、−OR、−CO−R、−CO−O−R、−O−CO−Rまたは−O−CO−O−Rにより置換されていることを意味し、ただし、Rは上で示される意味を有する。
【0119】
特に好ましい置換基Lは、例えば、F、Cl、CN、NO、CH、C、OCH、OC、COCH、COC、COOCH、COOC、CF、OCF、OCHF、OC、更に、フェニルである。
【0120】
【化22】

式中、Lは上で示される意味の1つを有する。
【0121】
重合性基Pは、例えば、フリーラジカルまたはイオン性連鎖重合、重付加または重縮合などの重合反応に適するか、または、例えば、ポリマー主鎖上への付加または縮合といったポリマー類似反応に適する基である。連鎖重合のための基、特に、C=C二重結合または−C≡C−三重結合を含有するもの、および、例えば、オキセタンまたはエポキシド基などの開環重合に適する基が特に好ましい。
【0122】
好ましい基Pは、CH=CW−COO−、CH=CW−CO−、
【0123】
【化23】

CH=CW−(O)k3−、CW=CH−CO−(O)k3−、CW=CH−CO−NH−、CH=CW−CO−NH−、CH−CH=CH−O−、(CH=CH)CH−OCO−、(CH=CH−CHCH−OCO−、(CH=CH)CH−O−、(CH=CH−CHN−、(CH=CH−CHN−CO−、HO−CW−、HS−CW−、HWN−、HO−CW−NH−、CH=CW−CO−NH−、CH=CH−(COO)k1−Phe−(O)k2−、CH=CH−(CO)k1−Phe−(O)k2−、Phe−CH=CH−、HOOC−、OCN−およびWSi−より選択され、式中、Wは、H、F、Cl、CN、CF、フェニルまたは1〜5個のC原子を有するアルキル、特に、H、F、ClまたはCHを表し、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜5個のC原子を有するアルキル、特に、H、メチル、エチルまたはn−プロピルを表し、W、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、Cl、1〜5個のC原子を有するオキサアルキルまたはオキサカルボニルアルキルを表し、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、H、Clまたは1〜5個のC原子を有するアルキルを表し、Pheは、上で定義される通りでP−Spとは異なる1個以上の基Lで置換されていてもよい1,4−フェニレンを表し、k、kおよびkは、それぞれ互いに独立に、0または1を表し、kは、好ましくは、1を表す。
【0124】
特に好ましい基Pは、CH=CW−COO−、特には、CH=CH−COO−、CH=C(CH)−COO−およびCH=CF−COO−、更には、CH=CH−O−、(CH=CH)CH−OCO−、(CH=CH)CH−O−、
【0125】
【化24】

である。
【0126】
非常に特に好ましい基Pは、ビニルオキシ、アクリレート、メタクリレート、フルオロアクリレート、クロロアクリレート、オキセタンおよびエポキシド、特には、アクリレートおよびメタクリレートである。
【0127】
好ましいスペーサー基Spは、基P−Sp−が式P−Sp’−X’−に対応するように式Sp’−X’より選択され、ただし、
Sp’は、1〜20個、好ましくは1〜12個のC原子を有するアルキレンを表し、該基は、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されていてもよく、ただし加えて、1個以上の隣接していないCH基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、それぞれ互いに独立に、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00000−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−NR00−CO−O−、−O−CO−NR00−、−NR00−CO−NR00−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、
X’は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR00−、−NR00−CO−、−NR00−CO−NR00−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR−、−CY=CY−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−または単結合を表し、
00およびR000は、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、および
およびYは、それぞれ互いに独立に、H、F、ClまたはCNを表す。
【0128】
X’は、好ましくは、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR−または単結合である。
【0129】
典型的なスペーサー基Sp’は、例えば、−(CHp1−、−(CHCHO)q1−CHCH−、−CHCH−S−CHCH−、−CHCH−NH−CHCH−または−(SiR00000−O)p1−であり、式中、p1は1〜12の整数であり、q1は1〜3の整数であり、およびR00およびR000は上で示される意味を有する。
【0130】
特に好ましい基−X’−Sp’−は、−(CHp1−、−O−(CHp1−、−OCO−(CHp1−、−OCOO−(CHp1−である。
【0131】
特に好ましい基Sp’は、例えば、それぞれの場合で直鎖状のエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、オクタデシレン、エチレンオキシエチレン、メチレンオキシブチレン、エチレンチオエチレン、エチレン−N−メチルイミノエチレン、1−メチルアルキレン、エテニレン、プロペニレンおよびブテニレンである。
【0132】
本発明の更に好ましい実施形態において、P−Sp−は、2個以上の重合性基を含有する基(多官能重合性基)を表す。このタイプの適切な基、および、それらを含有する重合性化合物、および、それらの調製は、例えば、米国特許第7,060,200号明細書または米国特許出願公開第2006/0172090号公報に記載されている。以下の式より選択される多官能重合性基P−Sp−が特に好ましい:
【0133】
【化25】

式中、
alkylは、単結合または1〜12個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキレンを表し、ただし、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれ互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、−C(R00)=C(R000)−、−C≡C−、−N(R00)−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、ただし加えて、1個以上のH原子は、F、ClまたはCNで置き換えられていてもよく、ただし、R00およびR000は上で示される意味を有し、
aaおよびbbは、それぞれ互いに独立に、0、1、2、3、4、5または6を表し、
Xは、X’に示される意味の1つを有し、および
1〜5は、それぞれ互いに独立に、Pに示される意味の1つを有する。
【0134】
重合性化合物およびRMは、当業者に既知で、例えば、Houben−Weyl編、Methoden der organischen Chemie[Methods of Organic Chemistry]、Thieme−Verlag社、Stuttgart市などの有機化学の標準的な著作に記載される方法に類似して調製できる。更なる合成方法は、上および下で引用する文献において与えられる。最も単純な場合、例えば、そのようなRMの合成は、例えば、(メタ)アクリロイルクロライドまたは(メタ)アクリル酸などの基Pを含有する対応する酸、酸誘導体またはハロゲン化された化合物を使用し、例えば、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)などの脱水剤存在下において、2,6−ジヒドロキシナフタレンまたは4,4’−ジヒドロキシビフェニルをエステル化またはエーテル化することで行う。
【0135】
本発明によって使用できる液晶媒体の調製は、例えば、1種類以上の上述の化合物を、上で定義される通りの1種類以上の重合性化合物と、および、任意成分として更なる液晶化合物および/または添加剤と混合することで、それ自身は従来の方法で行われる。一般に、より少量で使用される成分の所望量を、主要な構成成分を構成する成分に、有利には昇温して、溶解する。また、成分の溶液を、例えば、アセトン、クロロホルムまたはメタノールといった有機溶媒に混合し、完全に混合後、例えば蒸留により、溶媒を再び除去することも可能である。本発明は、更に、本発明による液晶媒体を調製するための方法にも関する。
【0136】
また、本発明による液晶媒体が、例えば、H、N、O、ClまたはFがその対応する同位体に置き換えられた化合物も含んでもよいことは、当業者に言うまでもない。
【0137】
本発明による液晶ディスプレイの構造は、冒頭で引用した先行技術に記載される通りのPSAディスプレイの通常の構成に対応している。突起のない構成が好ましく、特に加えて、カラーフィルター側の電極が構造化されておらず、TFT側の電極のみがスリットを有するものが好ましい。PS−VAディスプレイ用に特に適切で好ましい電極構造は、例えば、米国特許出願公開第2006/0066793号公報に記載されている。
【0138】
本発明による液晶混合物および液晶媒体は、原則として、任意のタイプのPSまたはPSAディスプレイ、特に正の誘電異方性の液晶媒体に基づくもの、特に好ましくはPSA−IPSまたはPSA−FFSディスプレイ用に適している。しかしながら、また、当業者は、例えば、それらの基本的な構造において、または、例えば、基板、配向層、電極、アドレス素子、バックライト、偏光子、カラーフィルター、任意に存在する補償フィルムなどの使用される個々の構成要素の性質、配置または構造において上述のディスプレイと異なるPSまたはPSAタイプの他のディスプレイにおいても、進歩性を伴わず、本発明による適切な液晶混合物および液晶媒体を用いることができるであろう。
【0139】
式II〜VIIIの個々の化合物は、1〜20%、好ましくは、1〜15%の濃度で用いる。それぞれの場合において、2種類以上の同族の化合物、即ち、同じ式の化合物を用いる場合、特に、これらの限定を適用する。1種類のみの個々の物質、即ち、1種類のみの同族な1つの式の化合物を用いる場合、その濃度は2〜20%、化合物によっては30%以上までの範囲でよい。
【0140】
本発明の好ましい実施形態において、液晶媒体は、3より大きい誘電異方性を有し、式II−1〜II−4、好ましくは式II−1および/またはII−2の化合物群より選択される1種類以上の誘電的に正の化合物を含む。
【0141】
【化26】

式中、パラメータは式IIにおいて上で示されるそれぞれの意味を有し、L23およびL24は、互いに独立に、HまたはFを表し、好ましくは、L23はFを表し、および
【0142】
【化27】

および、式II−1およびII−4の場合、Xは、好ましくは、FまたはOCF、特に好ましくは、Fを表し、および式II−3の場合、
【0143】
【化28】

および/または、式III−1およびIII−2の化合物群より選択され、
【0144】
【化29】

式中、パラメータは式IIIにおいて与えられる意味を有し、
および、本発明による媒体は、式III−1および/またはIII−2の化合物に代えてか加えて、式III−3の1種類以上の化合物を含んでもよく、
【0145】
【化30】

式中、パラメータは上で示されるそれぞれの意味を有し、パラメータL33およびL34は、互いにおよび他のパラメータとは独立に、HまたはFを表す。
【0146】
液晶媒体は、好ましくは、L21およびL22および/またはL23およびL24の両者がFを表す式II−1〜II−4の化合物群より選択される化合物を含む。
【0147】
好ましい実施形態において、液晶媒体は、L21、L22、L23およびL24の全てがFを表す式II−2およびII−3の化合物群より選択される化合物を含む。
【0148】
液晶媒体は、好ましくは、式II−1の1種類以上の化合物を含む。式II−1の化合物は、好ましくは、式II−1a〜II−1eの化合物群より選択される。
【0149】
【化31】

式中、パラメータは上で示されるそれぞれの意味を有し、L25およびL26は、互いにおよび他のパラメータとは独立に、HまたはFを表し、および好ましくは、
式II−1aおよびII−1bにおいて、L21およびL22の両者がFを表し、
式II−1cおよびII−1dにおいて、L21およびL22の両者がFを表すか、および/または、L23およびL24の両者がFを表し、および、
式II−1eにおいて、L21、L22およびL23がFを表す。
【0150】
式II−1の特に好ましい化合物は、以下である。
【0151】
【化32】

式中、Rは、上で示される意味を有する。
【0152】
液晶媒体は、好ましくは、式II−2a〜II−2jの化合物群より選択される、好ましくは、式II−2の1種類以上の化合物を含む。
【0153】
【化33】

【0154】
【化34】

式中、パラメータは上で示されるそれぞれの意味を有し、L25〜L28は、互いに独立に、HまたはFを表し、好ましくは、L27およびL28の両者がHを表し、特に好ましくは、L26がHを表す。
【0155】
液晶媒体は、好ましくは、L21およびL22の両者がFを表すか、および/またはL23およびL24の両者がFを表す式II−1a〜II−1eの化合物群より選択される化合物を含む。
【0156】
好ましい実施形態において、液晶媒体は、L21、L22、L23およびL24の全てがFを表す式II−1a〜II−1iの化合物群より選択される化合物を含む。
【0157】
式II−2の特に好ましい化合物は、以下の式の化合物である。
【0158】
【化35】

【0159】
【化36】

式中、RおよびXは上で示される意味を有し、Xは、好ましくは、Fを表す。
【0160】
液晶媒体は、好ましくは、式II−3の1種類以上の化合物を含む。これらの式II−3の化合物は、好ましくは、式II−3a〜II−3cの化合物群より選択される。
【0161】
【化37】

式中、パラメータは上で示されるそれぞれの意味を有し、および、L21およびL22の両者は、好ましくは、Fを表す。
【0162】
好ましい実施形態において、液晶媒体は、式II−4の、好ましくは式II−4aの1種類以上の化合物を含む。
【0163】
【化38】

式中、パラメータは上で与えられる意味を有し、Xは、好ましくは、FまたはOCF、特に好ましくは、Fを表す。
【0164】
液晶媒体は、好ましくは、式III−1の1種類以上の化合物を含む。式III−1の化合物は、好ましくは、式III−1aおよびIII−1bの化合物群より選択される。
【0165】
【化39】

式中、パラメータは上で示されるそれぞれの意味を有し、パラメータL33およびL34は、互いにおよび他のパラメータとは独立に、HまたはFを表す。
【0166】
液晶媒体は、好ましくは、式III−1a−1〜III−1a−6の化合物群より好ましくは選択される式III−1aの1種類以上の化合物を含む。
【0167】
【化40】

式中、Rは上で示される意味を有する。
【0168】
液晶媒体は、好ましくは、式III−1b−1〜III−1b−4、好ましくは、III−1b−4の化合物群より好ましくは選択される式III−1bの1種類以上の化合物を含む。
【0169】
【化41】

式中、Rは上で示される意味を有する。
【0170】
液晶媒体は、好ましくは、式III−2の1種類以上の化合物を含む。式III−2の化合物は、好ましくは、式III−2a〜III−2jの化合物群より選択される。
【0171】
【化42】

【0172】
【化43】

式中、パラメータは上で与えられる意味を有し、好ましくは、ただし、パラメータは上で示されるそれぞれの意味を有し、パラメータL35およびL36は、互いにおよび他のパラメータとは独立に、HまたはFを表す。
【0173】
液晶媒体は、好ましくは、式III−2a−1〜III−2a−5の化合物群より好ましくは選択される式III−2aの1種類以上の化合物を含む。
【0174】
【化44】

式中、Rは上で示される意味を有する。
【0175】
液晶媒体は、好ましくは、式III−2b−1〜III−2b−4、好ましくは、III−2b−4の化合物群より好ましくは選択される式III−2bの1種類以上の化合物を含む。
【0176】
【化45】

式中、Rは上で示される意味を有する。
【0177】
液晶媒体は、好ましくは、式III−2c−1〜III−2c−5の化合物群より好ましくは選択される式III−2cの1種類以上の化合物を含む。
【0178】
【化46】

式中、Rは上で示される意味を有する。
【0179】
液晶媒体は、好ましくは、式III−2d−1およびIII−2e−1の化合物群より好ましくは選択される式III−2dおよびIII−2eの化合物群より選択される1種類以上の化合物を含む。
【0180】
【化47】

式中、Rは上で示される意味を有する。
【0181】
液晶媒体は、好ましくは、式III−2f−1〜III−2f−5の化合物群より好ましくは選択される式III−2fの1種類以上の化合物を含む。
【0182】
【化48】

式中、Rは上で示される意味を有する。
【0183】
液晶媒体は、好ましくは、式III−2g−1〜III−2g−5の化合物群より好ましくは選択される式III−2gの1種類以上の化合物を含む。
【0184】
【化49】

式中、Rは上で示される意味を有する。
【0185】
液晶媒体は、好ましくは、式III−2h−1〜III−2h−3、好ましくは、式III−2h−3の化合物群より好ましくは選択される式III−2hの1種類以上の化合物を含む。
【0186】
【化50】

式中、パラメータは上で与えられる意味を有し、Xは、好ましくは、Fを表す。
【0187】
液晶媒体は、好ましくは、式III−2i−1およびIII−2i−2、好ましくは、式III−2i−2の化合物群より好ましくは選択される式III−2iの1種類以上の化合物を含む。
【0188】
【化51】

式中、パラメータは上で与えられる意味を有し、Xは、好ましくは、Fを表す。
【0189】
液晶媒体は、好ましくは、式III−2j−1およびIII−2j−2、好ましくは、式III−2j−1の化合物群より好ましくは選択される式III−2jの1種類以上の化合物を含む。
【0190】
【化52】

式中、パラメータは上で与えられる意味を有する。
【0191】
式III−1および/またはIII−2の化合物に代えるか加えて、本発明による媒体は式III−3の1種類以上の化合物を含んでもよい。
【0192】
【化53】

式中、パラメータは式IIIにおいて上で示されるそれぞれの意味を有する。
【0193】
これらの化合物は、好ましくは、式III−3aおよびIII−3bの群より選択される。
【0194】
【化54】

式中、Rは上で示される意味を有する。
【0195】
本発明による液晶媒体は、好ましくは、−1.5〜3の範囲内の誘電異方性を有し、好ましくは、式IVおよびVIの化合物群より選択される1種類以上の誘電的に中性の化合物を含む。
【0196】
本発明による液晶媒体は、好ましくは、式IV−1〜IV−6の化合物群より選択される1種類以上の化合物を含む。
【0197】
【化55】

式中、R41およびR42は、式IVにおいて上で示されるそれぞれの意味を有し、および、式IV−1、IV−5およびIV−6において、R41は、好ましくはアルキルまたはアルケニル、好ましくはアルケニルを表し、およびR42は、好ましくはアルキルまたはアルケニル、好ましくはアルキルを表し、式IV−2において、R41およびR42は、好ましくは、アルキルを表し、および、式IV−4において、R41は、好ましくはアルキルまたはアルケニル、より好ましくはアルキルを表し、および、R42は、好ましくはアルキルまたはアルコキシ、より好ましくはアルコキシを表す。
【0198】
本発明による液晶媒体は、好ましくは、式IV−1、IV−4、IV−5およびIV−6の化合物群より選択される1種類以上の化合物、好ましくは、式IV−1の1種類以上の化合物および式IV−4およびIV−5の群より選択される1種類以上の化合物、より好ましくは、それぞれの場合で、式IV−1、IV−4およびIV−5の1種類以上の化合物、非常に好ましくは、それぞれの場合で、式IV−1、IV−4、IV−5およびIV−6の1種類以上の化合物を含む。
【0199】
好ましい実施形態において、本発明による液晶媒体は、好ましくは、式IV−1、より好ましくは、それぞれがそれのサブ式である式CC−n−mおよび/またはCC−n−Omおよび/またはCC−n−Vおよび/またはCC−nV−mおよび/またはCC−Vn−mより選択され、より好ましくは、式CC−n−mおよび/またはCC−n−Vおよび/またはCC−nV−mであり、非常に好ましくは、式CC−3−1、CC−3−2、CC−3−3、CC−3−4、CC−3−5、CC−3−V、CC−4−V、CC−5−VおよびCC−3−V1の群より選択される1種類以上の化合物を含む。これらの略号(頭文字)の定義は下に表Dで示されるか、表A〜Cより明らかである。
【0200】
好ましい実施形態において、本発明による液晶媒体は、好ましくは、式IV−4、より好ましくは、それぞれがそれのサブ式である式CP−V−nおよび/またはCP−nV−mおよび/またはCP−Vn−mより選択され、より好ましくは、式CP−nV−mおよび/またはCP−V2−nであり、非常に好ましくは、式CP−2V−1、CP−1V−2およびCP−V2−1の群より選択される1種類以上の化合物を含む。これらの略号(頭文字)の定義は下に表Dで示されるか、表A〜Cより明らかである。
【0201】
好ましい実施形態において、本発明による液晶媒体は、好ましくは、式IV−5、より好ましくは、それぞれがそれのサブ式である式CCP−V−nおよび/またはCCP−nV−mおよび/またはCCP−Vn−mより選択され、より好ましくは、式CCP−V−nおよび/またはCCP−V2−nであり、非常に好ましくは、式CCP−V−1およびCCP−V2−1の群より選択される1種類以上の化合物を含む。これらの略号(頭文字)の定義は下に表Dで示されるか、表A〜Cより明らかである。
【0202】
同様に好ましい実施形態において、液晶媒体は、好ましくは、式IV−1、より好ましくは、それぞれがそれのサブ式である式CC−n−m、CC−n−V、CC−n−Vm、CC−V−V、CC−V−Vnおよび/またはCC−nV−Vmより選択され、より好ましくは、式CC−n−mおよび/またはCC−n−Vおよび/またはCC−n−Vmであり、非常に好ましくは、式CC−3−1、CC−3−2、CC−3−3、CC−3−4、CC−3−5、CC−3−V、CC−4−V、CC−5−VおよびCC−3−V1の群より選択され、特には、式CC−3−V、CC−4−V、CC−5−V、CC−3−V1、CC−4−V1、CC−5−V1、CC−3−V2およびCC−V−V1の群より選択される1種類以上の化合物を含む。これらの略号(頭文字)の定義は同様に下に表Dで示されるか、表A〜Cより明らかである。
【0203】
先のものと同一でも別のものでもよい本発明の更なる好ましい実施形態において、本発明による液晶混合物は、上に示される通りの式IV−1〜IV−6、および、任意に式IV−7〜IV−14の化合物群より選択される式IVの化合物を含む。
【0204】
【化56】

式中、
41およびR42は、互いに独立に、1〜7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ化アルキルまたはフッ化アルコキシ、または2〜7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ化アルケニルを表し、および
は、HまたはFを表す。
【0205】
好ましい実施形態において、液晶媒体は、好ましくは、式IV−7、より好ましくは、それぞれがそれのサブ式である式CPP−3−2、CPP−5−2およびCGP−3−2より選択され、より好ましくは、式CPP−3−2および/またはCGP−3−2であり、非常に特に好ましくは、式CPP−3−2の1種類以上の化合物を含む。これらの略号(頭文字)の定義は下に表Dで示されるか、表A〜Cより明らかである。
【0206】
式IIおよび/またはIIIの化合物に代えるか加えて、本発明による媒体は、式Vの1種類以上の誘電的に正の化合物を含んでもよい。
【0207】
【化57】

式中、
は、1〜7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ化アルキルまたはフッ化アルコキシ、炭素数2〜7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ化アルケニル、好ましくは、アルキルまたはアルケニルを表し、
【0208】
【化58】

51およびL52は、互いに独立に、HまたはFを表し、好ましくは、L51はFを表し、および
は、ハロゲン、1〜3個のC原子を有するハロゲン化アルキルまたはアルコキシ、または2個または3個のC原子を有するハロゲン化アルケニルまたはアルケニルオキシ、好ましくは、F、Cl、−OCFまたは−CF、非常に好ましくは、F、Clまたは−OCFを表し、
は、−CHCH−、−CFCF−、−COO−、トランス−CH=CH−、トランス−CF=CF−、−CHO−または−CFO−、好ましくは、−CHCH−、−COO−またはトランス−CH=CH−、および非常に好ましくは、−COO−またはトランス−CH=CH−を表し、および
qは、0または1を表す。
【0209】
本発明による媒体は、好ましくは、式V−1およびV−2の化合物群より好ましくは選択される式Vの1種類以上の化合物を含む。
【0210】
【化59】

式中、パラメータは上で示されるそれぞれの意味を有し、および、パラメータL53およびL54は、互いにおよび他のパラメータとは独立に、HまたはFを表し、および、Zは、好ましくは、−CH−CH−を表す。
【0211】
式V−1の化合物は、好ましくは、式V−1aおよびV−1bの化合物群より選択される。
【0212】
【化60】

式中、Rは上で示される意味を有する。
【0213】
式V−2の化合物は、好ましくは、式V−2a〜V−2dの化合物群より選択される。
【0214】
【化61】

式中、Rは上で示される意味を有する。
【0215】
本発明による液晶媒体は、好ましくは、式VIで、−1.5〜3の範囲内の誘電異方性を有する1種類以上の誘電的に中性の化合物を追加的に含む。
【0216】
【化62】

式中、
61およびR62は、互いに独立に、式IIにおいてRに上で示される意味を有し、好ましくは、R61はアルキルを表し、およびR62はアルキルまたはアルケニルを表し、
【0217】
【化63】

を表し、
好ましくは、
【0218】
【化64】

61およびZ62は、互いに独立に、Z61が2回出現する場合は、これらも互いに独立に、−CHCH−、−COO−、トランス−CH=CH−、トランス−CF=CF−、−CHO−、−CFO−または単結合を表し、好ましくは、それらの1つ以上が単結合を表し、および
rは0、1または2、好ましくは0または1、特に好ましくは1を表す。
【0219】
本発明による液晶媒体は、好ましくは、式VI−1およびVI−2の化合物群より選択される1種類以上の化合物を含む。
【0220】
【化65】

式中、R61およびR62は式VIにおいて上で示されるそれぞれの意味を有し、およびR61は好ましくはアルキルを表し、および、式VI−1において、R62は、好ましくはアルケニル、好ましくは、−(CH−CH=CH−CHを表し、および、式VI−2において、R62は、好ましくは、アルキル、−(CH−CH=CHまたは−(CH−CH=CH−CHを表す。
【0221】
本発明による液晶媒体の誘電的に中性の成分は、好ましくは、式VI−1およびVI−2の化合物群より選択される1種類以上の化合物を含み、式中、R61は好ましくはn−アルキルを表し、および、式VI−1において、R62は好ましくはアルケニルを表し、および、式VI−2において、R62は好ましくはn−アルキルを表す。
【0222】
好ましい実施形態において、液晶媒体は、好ましくは、式VI−1、より好ましくは、そのサブ式PP−n−2Vm、更により好ましくは式PP−1−2V1の1種類以上の化合物を含む。これらの略号(頭文字)の定義は下に表Dで示されるか、表A〜Cより明らかである。
【0223】
好ましい実施形態において、液晶媒体は、好ましくは、式VI−2、より好ましくは、それのサブ式PGP−n−m、PGP−n−2VおよびPGP−n−2Vm、更により好ましくは、それのサブ式PGP−3−m、PGP−n−2VおよびPGP−n−V1、非常に好ましくは、式PGP−3−2、PGP−3−3、PGP−3−4、PGP−3−5、PGP−1−2V、PGP−2−2VおよびPGP−3−2Vより選択される1種類以上の化合物を含む。これらの略号(頭文字)の定義は、同様に、下に表Dで示されるか、表A〜Cより明らかである。
【0224】
本発明による液晶混合物は、任意成分として、負の誘電異方性を有する1種類以上の化合物、好ましくは、式VIIの1種類以上の化合物を追加的に含んでもよい。
【0225】
【化66】

式中、
71およびR72は、互いに独立に、式IIにおいてRに上で示される意味を有し、
【0226】
【化67】

【0227】
【化68】

71およびZ72は、互いに独立に、−CHCH−、−COO−、トランス−CH=CH−、トランス−CF=CF−、−CHO−、−CFO−または単結合を表し、好ましくは、それらの1つ以上が単結合を表し、非常に好ましくは、両者が単結合を表し、
71およびL72は、互いに独立に、C−FまたはNを表し、好ましくは、それらの1つ以上がC−Fを表し、非常に好ましくは、両者がC−Fを表し、および
sは、0または1を表す。
【0228】
加えて、本発明による液晶混合物は、式VIIIである1種類以上の誘電的に正の化合物を含んでもよい。
【0229】
【化69】

式中、
は、式IIにおいてRに上で示される意味を有し、
【0230】
【化70】

【0231】
【化71】

他は同一の意味を有するか、または、互いに独立に、
【0232】
【化72】

【0233】
【化73】

を表し、
81およびZ82は、互いに独立に、−CHCH−、−COO−、トランス−CH=CH−、トランス−CF=CF−、−CHO−、−CFO−または単結合を表し、好ましくは、それらの1つ以上が単結合を表し、非常に好ましくは、両者が単結合を表し、
tは0、1または2、好ましくは0または1、より好ましくは1を表し、および
は式IIにおいてXに上で示される意味を有するか、あるいは、Rとは独立にRに示される意味を有してもよく、
ただし、式Iの化合物は、それらより除外される。
【0234】
本発明による液晶媒体は、好ましくは、式I〜VIII、好ましくは式I〜V、非常に特に好ましくは式I〜IIIおよび/またはIVの化合物群より選択される化合物を含み、より好ましくは大部分がこれらより成り、更により好ましくは本質的にこれらより成り、非常に好ましくは完全にこれらより成る。
【0235】
式Iの化合物に加え、本発明による液晶混合物は、好ましくは、式IIおよび/またはIII、好ましくは式IIの化合物、および式IIIの化合物を含む。本発明による液晶混合物は、特に好ましくは、式IVおよび/またはVI、特に好ましくは、式IVの1種類以上の化合物を追加的に含む。
【0236】
また、本発明による混合物は、当然、それぞれの場合において、8つの式、即ち、式I〜VIIIの幾つか、および更には、全ての8つの式、即ち、式I〜VIIIの1種類以上の化合物を含んでもよい。
【0237】
本出願において、組成物に関して含むとは、対象となっている項目、即ち、一般に媒体が、示される1種類の化合物または多種類の化合物を、好ましくは10%以上、非常に好ましくは20%以上の総濃度で含むことを意味する。
【0238】
この関係において、大部分が成るとは、対象となっている項目が、55%以上、好ましくは60%以上、非常に好ましくは70%以上の示される1種類の化合物または多種類の化合物を含むことを意味する。
【0239】
この関係において、本質的に成るとは、対象となっている項目が、80%以上、好ましくは90%以上、非常に好ましくは95%以上の示される1種類の化合物または多種類の化合物を含むことを意味する。
【0240】
この関係において、完全に成るとは、対象となっている項目が、98%以上、好ましくは99%以上、非常に好ましくは100.0%の示される1種類の化合物または多種類の化合物を含むことを意味する。
【0241】
液晶媒体は、好ましくは、式VII、好ましくは、式VII−1〜VII−3の化合物群より選択される1種類以上の化合物を含む。
【0242】
【化74】

式中
71およびR72は、式VIIにおいて上で示されるそれぞれの意味を有する。
【0243】
式VII−1〜VII−3において、R71は、好ましくは、n−アルキルまたは1E−アルケニルを表し、およびR72は、好ましくは、n−アルキルまたはアルコキシを表す。
【0244】
明示的には上述されていない他のメソゲン化合物も、本発明による媒体中において任意成分として有効に使用できる。そのような化合物は、当業者に既知である。
【0245】
本発明による液晶媒体は、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは65℃以上、特に好ましくは70℃以上、非常に特に好ましくは75℃以上の透明点を有する。
【0246】
本発明による媒体のネマチック相は、好ましくは少なくとも0℃以下〜70℃以上、より好ましくは少なくとも−20℃以下〜75℃以上、非常に好ましくは少なくとも−30℃以下〜75℃以上、特には少なくとも−40℃以下〜100℃以上に及ぶ。個々の好ましい実施形態においては、本発明による媒体のネマチック相が、120℃以上まで、更に130℃以上の温度にまで及ぶ必要があることがある。
【0247】
本発明による液晶媒体のΔεは、1kHzおよび20℃において、好ましくは2以上、より好ましくは4以上である。特には、Δεは20以下であるが、正のVAディスプレイの場合、また、30以下まででもある。
【0248】
本発明による液晶媒体のΔnは、589nm(Na)および20℃において、好ましくは0.070以上〜0.150以下の範囲内、より好ましくは0.080以上〜0.140以下の範囲内、更により好ましくは0.090以上〜0.135以下の範囲内、非常に特に好ましくは0.090以上〜0.130以下の範囲内である。
【0249】
本出願の第1の好ましい実施形態において、本発明による液晶媒体のΔnは、好ましくは0.080以上、より好ましくは0.090以上である。
【0250】
この本発明の第1の好ましい実施形態において、液晶媒体のΔnは、好ましくは0.090以上〜0.120以下の範囲内、より好ましくは0.095以上〜0.115以下の範囲内、非常に特に好ましくは0.100以上〜0.105以下の範囲内であり、一方、Δεは、好ましくは4以上〜11以下の範囲内、好ましくは5以上〜9以下の範囲内、特に好ましくは6以上〜8以下の範囲内である。
【0251】
この実施形態において、本発明による媒体のネマチック相は、好ましくは少なくとも−20℃以下〜70℃以上、より好ましくは少なくとも−20℃以下〜70℃以上、非常に好ましくは少なくとも−30℃以下〜70℃以上、特には少なくとも−40℃以下〜95℃以上に及ぶ。
【0252】
本発明の第2の好ましい実施形態において、液晶媒体のΔnは、0.115以上〜0.140以下の範囲内、より好ましくは0.120以上〜0.135以下の範囲内、非常に特に好ましくは0.125以上〜0.130以下の範囲内であり、一方、Δεは、好ましくは6以上、より好ましくは7以上、非常に好ましくは8.5以上〜10以下の範囲内である。
【0253】
この実施形態において、本発明による媒体のネマチック相は、好ましくは少なくとも−20℃以下〜70℃以上、非常に好ましくは少なくとも−30℃以下〜70℃以上、特には少なくとも−40℃以下〜75℃以上に及ぶ。
【0254】
本発明の第3の好ましい実施形態において、液晶媒体のΔnは、0.115以上〜0.140以下の範囲内、より好ましくは0.120以上〜0.135以下の範囲内、非常に好ましくは0.125以上〜0.130以下の範囲内であり、一方、Δεは、好ましくは6以上、より好ましくは7以上、非常に好ましくは8.5以上〜10以下の範囲内であり、液晶媒体のΔnは、0.070以上〜0.120以下の範囲内、より好ましくは0.075以上〜0.115以下の範囲内、非常に特に好ましくは0.080以上〜0.110以下の範囲内であり、一方、Δεは、好ましくは3.5以上、好ましくは4.0以上〜7.0以下の範囲内、より好ましくは4.5以上〜6.0以下の範囲内、特に好ましくは5.0以上〜5.5以下の範囲内である。
【0255】
この実施形態において、本発明による媒体のネマチック相は、好ましくは少なくとも−20℃以下〜75℃以上、より好ましくは少なくとも−30℃以下〜70℃以上、非常に好ましくは少なくとも−30℃以下〜75℃以上、特には少なくとも−30℃以下〜80℃以上に及ぶ。
【0256】
本発明の第4の好ましい実施形態において、液晶媒体のΔnは、好ましくは0.090以上〜0.130以下の範囲内、より好ましくは0.100以上〜0.120以下の範囲内、非常に特に好ましくは0.115以上〜0.120以下の範囲内であり、一方、Δεは、好ましくは10以上であり、好ましくは15以上〜22以下の範囲内、より好ましくは16以上〜20以下の範囲内、特に好ましくは17以上〜19以下の範囲内であり、もしくは、好ましくは10以上〜25以下の範囲内、より好ましくは11以上〜14以下の範囲内、特に好ましくは12以上〜13以下の範囲内である。
【0257】
この実施形態において、本発明による媒体のネマチック相は、好ましくは少なくとも−10℃以下〜70℃以上、より好ましくは少なくとも−30℃以下〜75℃以上、特には少なくとも−40℃以下〜80℃以上に及ぶ。
【0258】
テレビ用途向けのIPSディスプレイ用には、約15.6Vまたは約18Vのドライバー電圧を有するドライバーが好ましくは使用される。
【0259】
式IIおよびIIIの化合物は、混合物全体の好ましくは2%〜60%、より好ましくは3%〜35%、非常に特に好ましくは4%〜30%の濃度において使用される。
【0260】
式IVおよびVIの化合物は、混合物全体の好ましくは2%〜70%、より好ましくは5%〜65%、更により好ましくは10%〜60%、非常に特に好ましくは10%〜、好ましくは15%〜55%の濃度において使用される。
【0261】
式VIIの化合物は、混合物全体の好ましくは0%〜50%、より好ましくは1%〜40%、更により好ましくは3%〜30%、非常に好ましくは5%〜20%の濃度において使用される。
【0262】
式VIIIの化合物は、混合物全体の好ましくは0%〜40%、より好ましくは0%〜35%、非常に好ましくは1%〜30%の濃度において使用される。
【0263】
物理的特性を調節するために、本発明による媒体は、更なる液晶化合物を任意成分として含んでよい。そのような化合物は、当業者に既知である。本発明による媒体中のそれらの濃度は、好ましくは0%〜30%、より好ましくは0.1%〜20%、非常に好ましくは1%〜15%である。
【0264】
特に上述の本発明の第2の好ましい実施形態において、液晶媒体は、好ましくは式IV、より好ましくは式IV−1、更により好ましくは、それのそれぞれのサブ式である式CC−n−Vおよび/またはCC−n−Vm、より好ましくは式CC−n−V1および/またはCC−n−Vより選択され、非常に好ましくは、式CC−3−V、CC−4−V、CC−5−VおよびCC−3−V1の群より選択される1種類以上の化合物を含む。これらの略号(頭文字)の定義は下に表Dで示される。
【0265】
本発明による媒体における式CC−3−Vの化合物の濃度は、好ましくは0%〜65%、特に好ましくは10%〜60%である。好ましい実施形態において、それは50%〜65%、特に好ましくは55%〜60%でよい。
【0266】
液晶媒体は、好ましくは全体で50%〜100%、より好ましくは70%〜100%、非常に好ましくは80%〜100%、特には90%〜100%で、式I、II、III、IV、V、VIおよびVII、好ましくは、式I、II、III、IVおよびVまたはVIの1種類以上の化合物を含み、好ましくは大部分がこれらより成り、非常に好ましくは全体がこれらより成る。
【0267】
式IVおよび/またはVI、好ましくは式IVの化合物の使用に関しては、本発明は3つの異なる実施形態を有する。これら3つの実施形態の第1において、液晶混合物は、1個以上のアルケニル基を備えるこれらの式(例えば、CC−3−V、CC−3−V、PP−1−2V1およびCPP−1−2V1など)の化合物を僅かに含むか含まない。その代わりに、この実施形態による液晶混合物は、好ましくは、アルキル末端基およびアルキル末端基を含有する(例えば、CC−n−m、CP−n−mおよびPGP−nmなど)か、アルキル末端基およびアルコキシ末端基を含有する(例えば、CC−n−OmおよびCP−n−Omなど)式IVおよび/VIの化合物を含む。式IVおよびVIの化合物が形成する成分は、アルキル末端基およびアルキルまたはアルコキシ末端基を含有する化合物から、好ましくは大部分が成り、より好ましくは本質的に成り、非常に好ましくは完全に成る。
【0268】
これらの好ましい実施形態の第2において、液晶混合物は、1個以上の非末端アルケニル基を備える式IVおよび/またはVI(例えば、CC−3−V1、PP−1−2V1およびCCP−2V−1など)の1種類以上の化合物を含むが、1個以上の末端アルケニル基を備えるこれらの式(例えば、CC−3−V、CCP−V−1およびPGP−2−2Vなど)の化合物を僅かのみに含むか含まない。その代わりに、この実施形態による液晶混合物は、好ましくは、1個または2個の非末端アルケニル基を備える式IVおよび/VIの化合物および/またはアルキル末端基およびアルキルまたはアルコキシ末端基を含有するこれらの式の化合物を含む。式IVおよびVIの化合物が形成する成分は、1個または2個の非末端アルケニル基を含有する化合物および/またはアルキル末端基およびアルキルまたはアルコキシ末端基を含有する化合物、好ましくは、1個または2個の非末端アルケニル基を含有する化合物から、好ましくは大部分が成り、より好ましくは本質的に成り、非常に好ましくは完全に成る。よって、液晶混合物における、好ましくは、この成分における1個以上の非末端アルケニル基を含有する対応する化合物の割合は、好ましくは5%以上、好ましくは10%以上、および、好ましくは70%以下、好ましくは60%以下である。
【0269】
これらの好ましい実施形態の第3において、液晶混合物は、最初の2つの好ましい実施形態において既述の式IVおよび/またはVIの化合物に加えるか代えて、1個または2個の末端アルケニル基を備えるこれらの式の1種類以上の化合物を含む。この実施形態において、液晶混合物は、好ましくは、1個または2個の末端アルケニル基を備える式IVおよび/VIの化合物を含む。式IVおよびVIの化合物が形成する成分は、1個または2個の末端アルケニル基を含有する化合物から、好ましくは大部分が成り、より好ましくは本質的に成り、非常に好ましくは完全に成る。よって、液晶混合物における、好ましくは、この成分における1個以上の末端アルケニル基を含有する対応する化合物の割合は、好ましくは10〜70%、好ましくは60%までである。
【0270】
本出願において、誘電的に正との表現はΔε>3.0である化合物または成分を表し、誘電的に中性は−1.5≦Δε≦3.0のものを表し、誘電的に負はΔε<−1.5のものを表す。Δεは1kHzの周波数および20℃において決定される。それぞれの化合物の誘電異方性は、ネマチックホスト混合物中での、個々の化合物のそれぞれの10%の溶液の結果から決定される。それぞれの化合物のホスト混合物中での溶解度が10%未満のときは、濃度を5%に低下する。試験混合物の容量は、ホメオトロピック配向を有するセルおよびホモジニアス配向を有するセルの両方において決定される。両方のタイプのセルの層厚は、およそ20μmである。印加される電圧は1kHzの周波数および典型的には0.5V〜1.0Vの有効値を有する矩形波であるが、それは常にそれぞれの試験混合物の容量閾値よりも低く選択される。
【0271】
Δεは(ε−ε)と定義され、一方、εavは(ε+2ε)/3である。
【0272】
誘電的に正の化合物に使用されるホスト混合物は混合物ZLI−4792であり、誘電的に中性および誘電的に負の化合物に使用されるものは混合物ZLI−3086であり、両者ともドイツ国メルク社製である。化合物の誘電率の絶対値は、対象となる化合物を添加した際のホスト混合物のそれぞれの値の変化から決定される。その値を、対象となる化合物の濃度100%に外挿する。
【0273】
20℃の測定温度でネマチック相を有する成分は、そのままで測定し、他の全ては化合物と同様に扱う。
【0274】
他に明言しない限り、本出願において閾電圧(Vth)との表現は光学的閾値を言い、10%相対的コントラスト(V10)を指し、飽和電圧との表現は光学的飽和を言い、90%相対的コントラスト(V90)を指す。フレデリクス閾値(VFr)とも呼ばれる容量的閾電圧(V)は、明らかに述べる場合にのみ使用する。
【0275】
本出願で示されるパラメータの範囲は、他に明言しない限り、全て限界値を含む。
【0276】
互いの組み合わせにおいて特性の各種の範囲に示される異なる上限および下限の値は、追加の好ましい範囲を生じる。
【0277】
本出願を通じて、他に明言しない限り、以下の条件および定義を適用する。全ての濃度は質量パーセントで示され、それぞれ混合物全体に関するものであり、全ての温度は、摂氏度で示され、全ての温度差は差異度で示される。全ての物理的特性は、「Merck Liquid Crystals、Physical Properties of Liquid Crystals」、1997年11月、ドイツ国メルク社に従って決定され、他に明言しない限り、20℃の温度において示される。光学異方性(Δn)は、589.3nmの波長で決定される。誘電異方性(Δε)は、1kHzの周波数で決定される。閾電圧ならびに他の全ての電気光学的特性は、ドイツ国メルク社で製造された試験セルを使用して決定される。Δεの決定のための試験セルは、約20μmのセル厚みを有している。電極は、1.13cmの面積および保護リングを有する円形ITO電極である。配向層は、ホメオトロピック配向(ε)用には日本国日産化学社製SE−1211、ホモジニアス配向(ε)用には日本国日本合成ゴム社製ポリイミドAL−1054である。容量は、0.3Vrmsの電圧を有する正弦波を使用するSolatron1260周波数応答解析装置を使用して決定する。電気光学的測定において使用される光は、白色光である。ドイツ国Autronic Melchers社製の商業的に入手可能なDMS装置を使用する装置構成を、ここでは用いる。特性電圧を、垂直観察の下で決定した。閾値(V10)、中間灰色(V50)および飽和(V90)電圧を、それぞれ10%、50%および90%相対コントラストで決定した。
【0278】
本発明による液晶混合物および液晶媒体は、例えば、好ましくは、下の表Fからの化合物より成る群より選択される1種類以上のキラルドーパントを通常の濃度で含んでよい。これらのキラルドーパントの総濃度は、混合物全体に基づいて0%〜10%、好ましくは0.1%〜6%の範囲内である。使用される個々の化合物の濃度は、それぞれ好ましくは0.1%〜3%の範囲内である。これらおよび類似の添加剤の濃度は、本出願において、液晶媒体の液晶成分および化合物の値および濃度範囲を示す場合には考慮されない。
【0279】
更に、多色性色素、ナノ微粒子、導電性塩、錯塩、ならびに誘電異方性、粘度および/またはネマチック相の配向を改変するための物質を含む群より選択される、0〜15%、好ましくは0〜10%の1種類以上の添加剤を液晶媒体に加えることができる。適切で好ましい導電性塩は、例えば、4−ヒドロキシ安息香酸エチルジメチルドデシルアンモニウム、テトラフェニルボラン酸テトラブチルアンモニウムまたはクラウンエーテル類の錯塩(例えば、Hallerら、Mol.Cryst.Liq.Cryst.第24巻、第249〜258頁(1973年)参照)である。このタイプの物質は、例えば、ドイツ国特許出願公開第22 09 127、22 40 864、23 21 632、23 38 281、24 50 088、26 37 430および28 53 728号公報に記載されている。
【0280】
本発明による液晶混合物は、数種類の化合物、好ましくは3〜30種類、より好ましくは4〜20種類、アルケニル化合物を含む液晶混合物の場合、非常に好ましくは4〜16種類の化合物から成る。これらの化合物は、従来法で混合される。一般に、より少ない量で使用される化合物の所望量を、より多い量で使用される化合物に溶解する。より高い濃度で使用される化合物の透明点より温度が高い場合には、溶解過程の完了を観察するのは特に容易である。しかしながら、他の従来法、例えば、化合物の同族または共融混合物が可能な所謂プレ混合の使用や、構成成分がそれ自身で使用可能な混合物の所謂「マルチ・ボトル」系を例えば使用して媒体を調製することも可能である。
【0281】
TN、TN−AMD、ECB−AMD、VAN−AMD、IPS−AMD、FFS−AMDおよび正のVA LCDなどの液晶媒体をそのまま使用するか、または、PDLC、NCAP、PN LCDなどの複合材系において、特に、PSA−IPS、PSA−FFSおよび正のVA LCDにおけるいずれであっても、液晶ディスプレイの全ての既知のタイプにおいて使用できるように、適切な添加剤を加えることにより、本発明による液晶媒体を改変できる。
【0282】
重合性化合物は、好ましくは、所定の時間のUV放射の照射によって、ディスプレイ中で重合する。ここで、好ましい実施形態において、電圧をディスプレイに印加する。印加される電圧は、好ましくは0.1V〜10Vの範囲内、特に好ましくは0.5V〜5Vの範囲内の好ましくは交流電圧(典型的には、1kHz)である。特に好ましい実施形態において、印加される電圧は液晶混合物の閾電圧(V10)より低く、非常に特に好ましくは、重合の最中は電圧を印加しない。例において他に明示しない限り、50mW/cmの水銀蒸気ランプを使用する。365nm帯域通過フィルターが装着された標準的なUVメーター(Ushio UNIメーター)を使用して強度を測定する。
【0283】
例えば、液晶の融点T(C,N)またはT(C,S)、スメクチック(S)からネマチック(N)相への転移T(S,N)および透明点T(N,I)などの全ての温度は、摂氏度で示される。全ての温度差は差異度で示される。
【0284】
本発明および特に以下の例において、メソゲン化合物の構造は、頭文字とも呼ばれる略号を用いて示される。これらの頭文字において、化学式は、下の表A〜Cを使用して次の通り略記される。全ての基C2n+1、C2m+1およびC2l+1またはC2n−1、C2m−1およびC2l−1は、それぞれn、mおよびl個のC原子を有する直鎖のアルキルまたはアルケニル、好ましくは1E−アルケニルを、それぞれ表す。表Aには化合物の核構造の環構造要素に使用されるコードが列記されており、一方、表Bには結合基が示されている。表Cには、左側または右側の末端基のためのコードの意味が与えられている。表Dには、それらのそれぞれの略号と共に化合物の例示的な構造が示されている。
【0285】
【表1】

【0286】
【表2】

【0287】
【表3】

【0288】
【表4】

表中、nおよびmは、それぞれ整数を表し、3つの点「...」は、この表からの他の略号のための間隔である。
【0289】
以下の表に、それらのそれぞれの略号と共に、例示的な構造を示す。これらは、略号の規則の意味を例示するために示される。それらは、更に、好ましく使用される化合物を表す。
【0290】
【表5】

【0291】
【表6】

【0292】
【表7】

【0293】
【表8】

【0294】
【表9】

【0295】
【表10】

【0296】
【表11】

【0297】
【表12】

【0298】
【表13】

【0299】
【表14】

【0300】
【表15】

【0301】
以下の表、表Eに、本発明によるメソゲン媒体において安定剤として使用できる例示的な化合物を示す。
【0302】
【表16】

【0303】
【表17】

【0304】
【表18】

【0305】
本発明の好ましい実施形態において、メソゲン媒体は、表Eからの化合物群より選択される1種類以上の化合物を含む。
【0306】
以下の表、表Fに、本発明によるメソゲン媒体においてキラルドーパントとして好ましく使用できる例示的な化合物を示す。
【0307】
【表19】

【0308】
【表20】

【0309】
本発明の好ましい実施形態において、メソゲン媒体は、表Fからの化合物群より選択される1種類以上の化合物を含む。
【0310】
以下の表、表Gに、本発明によるメソゲン媒体において、好ましくは反応性である、メソゲン化合物として使用できる例示的な化合物を示す。
【0311】
【表21】

【0312】
【表22】

【0313】
【表23】

【0314】
【表24】

【0315】
本発明の好ましい実施形態において、メソゲン媒体は、表Gからの化合物群より選択される1種類以上の化合物を含む。
【0316】
本出願によるメソゲン媒体は、好ましくは、上の表からの化合物から成る群より選択される、2種類以上、好ましくは4種類以上の化合物を含む。
【0317】
本発明による液晶媒体は、好ましくは、
−7種類以上、好ましくは8種類以上の化合物、好ましくは、表Dからの化合物群より選択され、3種類以上、好ましくは4種類以上の異なる式を有する化合物と、および/または
−表Gからの化合物群より選択される異なる式を有する、1種類以上、好ましくは2種類以上の化合物と
を含む。
【実施例】
【0318】
以下の例は、如何なる態様においても本発明を制限することなく本発明を説明する。しかしながら、それらは、当業者に対して、好ましく用いられる化合物およびそれらのそれぞれの濃度およびそれらの互いの組み合わせと共に、好ましい混合の考え方を示す。
【0319】
その物理的特性によって、どのような特性が達成され、どのような範囲でそれらを改変できるかが当業者に明らかとなる。よって、特に、好ましくは達成できる各種特性の組み合わせが当業者に例示される。
【0320】
<例1>
以下の表中で示される通りの組成および特性を有する液晶混合物(A)を調製する。
【0321】
【表25】

【0322】
この混合物はIPSモードにおけるディスプレイに非常に高度に適している。混合物を3つに分ける。最初のものをIPSセル中に直接導入し検討する。他の2つのそれぞれに0.5%または1.0%の下式の反応性メソゲンRM−1を加え、混合物をIPSセル中に導入し、UV放射によって反応性メソゲンを重合する。
【0323】
【化75】

開始剤は使用しない。標準条件を離れて、ここで、強度は45mW/cmである。それぞれの場合において、2分、4分および6分の3種類の照射時間を使用する。続いて、セルを検討する。
【0324】
【表26】

【0325】
【表27】

【0326】
上の2つの表より見て取れる通り、安定化されていない混合物と比較してポリマー安定化された混合物の応答時間は著しく短縮されている。その効果は、硬化時間の増加に伴い著しく増加している。それは、0.5%のRMを使用する時よりも1%のRM−1を使用する時のほうが著しく顕著である。
【0327】
<例2>
以下の表中で示される通りの組成および特性を有する更なる液晶混合物(液晶混合物B)を調製する。
【0328】
【表28】

【0329】
この混合物はFFSモードにおけるディスプレイに非常に高度に適している。例1の通り、混合物を3つに分ける。最初のものをFFSセル(層厚3.6μm、W=4.0μm、L=6.0μm、チルト角2°、スリット角10°)中に直接導入し検討する。ここでは、他の2つに1.0%の反応性メソゲンRM−1を加え、混合物をFFSセル中に導入し、UV放射によって反応性メソゲンを重合する。開始剤は使用しない。ここでは標準条件に従い、強度は50mW/cmである。これらの他の2つの一方においては、例1で記載される通りに重合を行い、一方、これらの他の2つの2つ目においては、UV照射の際に、セルに1.6V(rms)の電圧を印加する。再び、例1の通り、それぞれの場合において、2分、4分および6分の3種類の照射時間を使用する。続いて、セルを検討する。
【0330】
【表29】

【0331】
【表30】

【0332】
上の2つの表より見て取れる通り、安定化されていない混合物と比較してポリマー安定化された混合物の応答時間は著しく短縮されている。その効果は、硬化時間の増加に伴い著しく増加している。それは、電圧を印加せずに重合する場合よりも電圧を印加して重合する場合の方が著しく顕著である。
【0333】
<例3>
以下の表中で示される通りの組成および特性を有する更なる液晶混合物(液晶混合物C)を調製する。
【0334】
【表31】

【0335】
この混合物はIPSモードにおけるディスプレイに非常に高度に適している。例1の通り、混合物を3つに分ける。最初のものをIPSセル中に直接導入し検討する。ここで、他の2つの一方に0.3%の反応性メソゲンRM−3を加え、他方に0.3%の反応性メソゲンRM−4を加える。両者をIPSセル中に導入し、UV放射によって反応性メソゲンを重合する。開始剤は使用しない。続いて、セルを検討する。
【0336】
<例4>
以下の表中で示される通りの組成および特性を有する更なる液晶混合物(液晶混合物D)を調製する。
【0337】
【表32】

【0338】
この混合物はIPSモードにおけるディスプレイに非常に高度に適している。例1の通り、混合物を3つに分ける。最初のものをIPSセル中に直接導入し検討する。ここで、他の2つの一方に0.3%の反応性メソゲンRM−3を加え、他方に0.3%の反応性メソゲンRM−4を加える。両者をIPSセル中に導入し、UV放射によって反応性メソゲンを重合する。開始剤は使用しない。続いて、セルを検討する。
【0339】
<例5>
以下の表中で示される通りの組成および特性を有する更なる液晶混合物(液晶混合物E)を調製する。
【0340】
【表33】

【0341】
この混合物はIPSモードにおけるディスプレイに非常に高度に適している。例1の通り、混合物を3つに分ける。最初のものをIPSセル中に直接導入し検討する。ここで、他の2つの一方に0.3%の反応性メソゲンRM−3を加え、他方に0.3%の反応性メソゲンRM−4を加える。両者をIPSセル中に導入し、UV放射によって反応性メソゲンを重合する。開始剤は使用しない。続いて、セルを検討する。
【0342】
続いて、櫛歯状電極および対応するポリイミド配向層上にホメオトロピック初期配向(正のVA)を有し、約4μmの層厚を有するセル中において混合物を検討する。このために、再び調製された混合物を再び新たに3つに分ける。最初のものを対応するセル中に直接導入し検討する。他の2つのそれぞれに1.0%または2.0%の反応性メソゲンRM−1を加え、混合物を対応するセル中に導入し、UV放射によって反応性メソゲンを重合する。開始剤は使用しない。UVA Cubeユニットを使用して照射を行う。標準条件を離れて、ここで、強度は100mW/cmである。それぞれの場合において、2分、4分および6分の3種類の照射時間を使用する。加えて、それぞれの場合について、2つの系列の曝露を異なるセル上で行う。第1の系列においては櫛歯状電極に電圧を印加しないのに対して、第2の系列においては、4VのRMS値を有する矩形交流電圧を電極に印加する。続いて、セルを検討する。
【0343】
照射時間を増加するに従い、全ての場合について応答時間が減少する。照射時間が6分において、事実上、安定な最終値が達成される。応答時間の減少は最大で、約30%までである。応答時間の減少は、1%のRMを使用する時よりも2%のRMを使用する時の方が大きい。応答時間の減少は、重合の際に電圧を印加しない系列において、また、4Vの電圧を印加する系列の両者において起きる。電圧を印加しない系列において、応答時間の改良がより顕著である。
【0344】
加えて、重合の際に4Vの電圧を印加すると、閾電圧が僅かに増加し、暗時透過、即ち、セルのスイッチが入っていない状態における残留透過が僅かに増加する結果となる。
【0345】
<例6>
以下の表中で示される通りの組成および特性を有する更なる液晶混合物(液晶混合物F)を調製する。
【0346】
【表34】

【0347】
この混合物はIPSモードにおけるディスプレイに非常に高度に適している。混合物を2つに分ける。最初のものをIPSセル中に直接導入し検討する。ここで、2つ目の方に0.5%の反応性メソゲンRM−3を加え、混合物をIPSセル中に導入し、UV放射によって反応性メソゲンを重合する。開始剤は使用しない。続いて、セルを検討する。
【0348】
<例7>
以下の表中で示される通りの組成および特性を有する更なる液晶混合物(液晶混合物G)を調製する。
【0349】
【表35】

【0350】
この混合物はIPSモードにおけるディスプレイに非常に高度に適している。混合物を2つに分ける。最初のものをIPSセル中に直接導入し検討する。ここで、2つ目の方に1.0%の反応性メソゲンRM−4を加え、混合物をIPSセル中に導入し、UV放射によって反応性メソゲンを重合する。開始剤は使用しない。続いて、セルを検討する。
【0351】
<例8>
以下の表中で示される通りの組成および特性を有する更なる液晶混合物(液晶混合物H)を調製する。
【0352】
【表36】

【0353】
この混合物はIPSモードにおけるディスプレイに非常に高度に適している。混合物を2つに分ける。最初のものをIPSセル中に直接導入し検討する。ここで、例7の通りに、2つ目の方に1.0%の反応性メソゲンRM−4を加え、混合物をIPSセル中に導入し、UV放射によって反応性メソゲンを重合する。開始剤は使用しない。続いて、セルを検討する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−1種類以上の重合性化合物と、および
−式IIの1種類以上の誘電的に正の化合物と、
−式IIIの1種類以上の誘電的に正の化合物と、
−任意成分として、式IVの1種類以上の誘電的に中性の化合物と
を含むことを特徴とし、正の誘電異方性を有する液晶媒体。
【化1】

(式中、
は、1〜7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ化アルキルまたはフッ化アルコキシ、2〜7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ化アルケニルを表し、
【化2】

を表し、
21およびL22は、互いに独立に、HまたはFを表し、
は、ハロゲン、1〜3個のC原子を有するハロゲン化アルキルまたはアルコキシ、または、2個または3個のC原子を有するハロゲン化アルケニルまたはアルケニルオキシを表し、
mは、0、1、2または3を表す。)
【化3】

(式中、
は、1〜7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ化アルキルまたはフッ化アルコキシ、2〜7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ化アルケニルを表し、
【化4】

を表し、
31およびL32は、互いに独立に、HまたはFを表し、
は、ハロゲン、1〜3個のC原子を有するハロゲン化アルキルまたはアルコキシ、または、2個または3個のC原子を有するハロゲン化アルケニルまたはアルケニルオキシを表し、
は、−CHCH−、−CFCF−、−COO−、トランス−CH=CH−、トランス−CF=CF−、−CHO−または単結合を表し、および
nは、0、1、2または3を表す。)
【化5】

(式中、
41およびR42は、互いに独立に、式IIにおいてRに上で示される意味を有し、
【化6】

を表し、
41およびZ42は互いに独立に、Z41が2回出現する場合は、また、これらも互いに独立に、−CHCH−、−COO−、トランス−CH=CH−、トランス−CF=CF−、−CHO−、−CFO−、−C≡C−または単結合を表し、および
pは、0、1または2を表す)。
【請求項2】
媒体における重合性化合物の濃度が0.05%〜10%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の媒体。
【請求項3】
式Iの1種類以上の化合物を(重合性化合物として)含むことを特徴とする請求項1または2に記載の媒体。
【化7】

(式中、
およびRは、互いに独立に、P、P−Sp−、H、ハロゲン、SF、NO、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基を表し、ただし、RおよびRの少なくとも一方は、好ましくは、P−Sp−を表し、
Pは、それぞれの出現において互いに独立に、重合性基を表し、
Spは、それぞれの出現において互いに独立に、スペーサー基または単結合を表し、
およびAは互いに独立に、また、Aは、それぞれの出現においても互いに独立に、好ましくは4〜25個の原子、好ましくはC原子を含有する芳香族、ヘテロ芳香族、脂環式またはヘテロ環式基を表し、該基は、また、縮合環を含んでいてもよく、該基はLで一置換または多置換されていてもよく、
は、それぞれの出現において互いに独立に、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−OCO−、−O−CO−O−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−(CHn1−、−CFCH−、−CHCF−、−(CFn1−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、CR00または単結合を表し、
Lは、P、P−Sp−、OH、CHOH、F、Cl、Br、I、−CN、−NO、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)N(R、−C(=O)Y、−C(=O)R、−N(R、置換されていてもよいシリル、置換されていてもよく6〜20個のC原子を有するアリール、または直鎖状または分岐状で1〜25個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ、ただし加えて、1個以上のH原子は、F、Cl、PまたはP−Sp−で置き換えられていてもよく、
およびR00は、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、
は、P、P−Sp−、H、ハロゲン、直鎖状、分岐状または環状で1〜25個のC原子を有するアルキル(ただし加えて、1個以上の隣接していないCH基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、ただし加えて、1個以上のH原子は、F、Cl、PまたはP−Sp−で置き換えられていてもよい。)、置換されていてもよく6〜40個のC原子を有するアリールまたはアリールオキシ基、または置換されていてもよく2〜40個のC原子を有するヘテロアリールまたはヘテロアリールオキシ基を表し、
m1は、0、1、2、3または4を表し、および
n1は、1、2、3または4を表し、
ただし、基R、Rおよび存在するLからの少なくとも1個の置換基は、基PまたはP−Sp−を表すか、少なくとも1個のそのような基を含有する。)
【請求項4】
請求項1において示される通りの式IIの1種類以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の媒体。
【請求項5】
請求項1において示される通りの式IIIの1種類以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の媒体。
【請求項6】
請求項1において示される通りの式IVの1種類以上の誘電的に中性な化合物を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の媒体。
【請求項7】
式VIの1種類以上の誘電的に中性な化合物を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の媒体。
【化8】

(式中、
61およびR62は、互いに独立に、請求項3で式IIにおいてRに示される意味を有し、
【化9】

を表し、
61およびZ62は、互いに独立に、Z61が2回出現する場合は、これらも互いに独立に、−CHCH−、−COO−、トランス−CH=CH−、トランス−CF=CF−、−CHO−、−CFO−または単結合を表し、および
rは0、1または2を表す。)
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の媒体を含有することを特徴とする液晶ディスプレイ。
【請求項9】
重合性化合物(1種類または多種類)を重合することにより安定化された請求項1〜7のいずれか一項に記載の媒体を含有することを特徴とするディスプレイ。
【請求項10】
アクティブマトリクスによってアドレスされることを特徴とする請求項8または9に記載のディスプレイ。
【請求項11】
PS−IPSまたはPS−FFSディスプレイであることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項12】
PS正のVAディスプレイであることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載のディスプレイ。
【請求項13】
液晶ディスプレイにおける請求項1〜7のいずれか一項に記載の媒体の使用。
【請求項14】
ディスプレイ内において重合性化合物(1種類または多種類)を重合することにより請求項1〜7のいずれか一項に記載の媒体を安定化することを特徴とする液晶ディスプレイの製造方法。
【請求項15】
重合性化合物(1種類または多種類)を重合する際に電圧を印加しないことを特徴とする請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2012−516920(P2012−516920A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548596(P2011−548596)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000651
【国際公開番号】WO2010/089092
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】