説明

液晶媒体および電気光学ディスプレイ

【課題】液晶媒体として、とくに正の誘電異方性および極めて小さい回転粘度を有するものの提供。
【解決手段】1種または2種以上の式Iの化合物からなる成分Aを含む、ネマチック相を有する液晶媒体:


式中、 Rは、水素、アルキル等を表し、 Zは、−CH−CH−等の連結基を表し、 Xは、ハロゲン、フッ素化アルキル等を表し、 Y11およびY12は、HまたはFを表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネマチック相を有する液晶媒体に関する。本発明はさらに、液晶ディスプレイ、とくにアクティブマトリックスアドレス方式液晶ディスプレイ(AMDまたはAM LCD)に関し、極めてとくに動画を映すためのディスプレイ、例えばコンピュータのモニターやテレビの画面のようなものに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のディスプレイにおいては、液晶が誘電体として用いられ、この液晶は光学特性が電圧の印加によって可逆的に変化するものである。電気光学ディスプレイとして液晶を媒体として用いるものは当業者に知られている。これらの液晶ディスプレイは種々の電気光学効果を用いている。最も普通に用いられているのはTN効果(“twisted nematic”、ねじれネマチック:ホモジニアスな、実質的にプラナーな液晶の初期配向および約90°ねじれたネマチック構造を有する)、STN効果(“supertwisted nematic”、超ねじれネマチック)およびSBE効果(“supertwisted bifringence effect”、超ねじれ複屈折効果)である。これらおよび同様な電気光学効果にいおては、液晶媒体として正の誘電異方性(Δε)を有するものが用いられている。
【0003】
電気光学効果として上記のように正の誘電異方性を有する液晶媒体を用いるもの以外に、他の電気光学効果として負の誘電異方性を有する液晶媒体を用いるものがある。例えば、ECB(“electrically controlled bifringence”、電界効果複屈折)効果およびその派生型であるDAP(“deformation of aligned phases”、整列相の変形)、VAN(“vertically aligned nematic”、垂直配向ネマチック)およびCSH(“colour super homeotropic”、カラースーパーホメオトロピック)などである。
【0004】
電気光学効果として、優れた、コントラストの視野角低依存性を有するものは、軸平行対称微小画素(ASMと略記する)を用いている。この効果においては、各画素の液晶は、ポリマー物質によって円柱状に囲まれている。この方式は、プラズマチャネルによるアドレスと組み合わせる場合にとくに好適である。したがって、とくに、大面積のPA(“plasma addressed”、プラズマアドレス)LCDにおけるコントラストの良好な視野角依存性が達成される。
【0005】
IPS(“in plane switching”、面内応答)効果は、最近ではその使用が増加しているが、誘電性が正である液晶媒体および誘電性が負である液晶媒体の両方を用い得る点において「ゲスト/ホスト」ディスプレイと同様である。「ゲスト/ホスト」ディスプレイにおいては、染料を誘電性が正である液晶媒体および誘電性が負である液晶媒体のいずれにおいても、用いるディスプレイ方式に対応して用いることができる。
【0006】
動作電圧はディスプレイにおいて一般的に極力低くするべきであり、これらの効果を用いるディスプレイにおいても同様であるため、液晶媒体として比較的大きい誘電異方性を有するものが用いられるところ、該液晶媒体は優占的に、および多くの場合ほぼ実質的であるまで、液晶化合物として対応する誘電性を有するものからなる。すなわち、誘電性が正である媒体は正の誘電異方性を有するものからなり、誘電性が負である媒体は負の誘電異方性を有するものからなる。これらのそれぞれの種類の媒体(誘電性が正であるか誘電性が負であるもの)においては、化合物として誘電異方性の符号が媒体の誘電異方性の符号と反対であるものは、実質的にまたは全く、典型的には用いられることはない。
【0007】
適用場面によっては、比較的高濃度の、大きい誘電異方性を有する化合物が用いられる。この種の媒体は、好ましくは誘電異方性がニュートラルであり、粘度、とくに回転粘度、の値が極めて低い化合物を高濃度で含む。
【0008】
ここで例外とされるのは、液晶媒体のうちMIM(“metal insulator metal”、金属−絶縁体−金属)ディスプレイに用いられるもので(非特許文献1および2)、該ディスプレイにおいては、液晶媒体は薄膜トランジスタのアクティブマトリクスによってアドレスされる。この種のスイッチングにおいては、ダイオードスイッチングの非線形特性曲線を用いるところ、保存キャパシタを液晶媒体の素子(画素)の電極とともに荷電せしめることは不可能であり、この点においてTFTディスプレイと対照をなす。そのため、アドレスサイクル中における電圧降下の影響を低減するために、極力高い誘電定数の基底値が必要である。したがって、誘電異方性が正である媒体の場合、例えばMIM−TNディスプレイにおいて用いられるようなものにおいては、誘電定数のうち分子軸に直交するもの(ε)は、できるだけ大きくなければならない。なぜなら、それによって画素の基礎となるキャパシタンスが決定されるからである。この目的のために、負の誘電異方性を有する化合物が正の誘電異方性を有する媒体に、正の誘電異方性を有する化合物に追加して用いられる(特許文献1〜3)。
【0009】
他の例外はSTNディスプレイであり、これは、例えば特許文献4に記載されているように、正の誘電異方性を有する液晶媒体として負の誘電異方性を有する化合物を含むものに用い、電気光学特性曲線の急峻性を高めている。
前記液晶ディスプレイの画素のアドレスは、直接時系列的に、すなわち時分割モード(time multiplex mode)によって、またはアクティブな電気的に非線形性の素子を用いて、行うことができる。
【0010】
最も普通なAMDとしてこれまで用いられているのは、個別のアクティブな電気スイッチング素子を用いるものであって、例えば3極スイッチング素子としてMOS(金属酸化物シリコン)トランジスタもしくはTFTのトランジスタまたはバリスターなど、または2極スイッチング素子として、例えばMIM(“metal insulator metal”、 金属−絶縁体−金属)ダイオード、環状ダイオード、バック−トゥ−バック(“back-to-back”)ダイオードなど、である。TFTの場合、種々の半導体材料、主としてシリコンが、またはセレン化カドミウムも用いられる。とくに、無定形(アモルファス)シリコンまたは多結晶シリコンが用いられる。
【0011】
この種のディスプレイは、短い〜極めて短い応答時間を有していなければならず、とくに動画再生、例えばビデオ信号の再生、に用いられる場合にはこのことが当てはまる。同時に、これらのディスプレイは、十分に低い動作電圧および十分に大きい使用温度幅を有していることが望まれ、ならびに良好な信頼性、すなわち要求される環境下における、ディスプレイの長い寿命およびその信頼できる動作が望まれる。この目的のために、とくに、液晶媒体として極力少量のイオン性不純物しか含まず、イオン性不純物を溶解し難いもの、またはこれらの不純物が分解しないものが要求されている。さらに、ディスプレイの基板を一緒に保持したりまたは充填孔を封止する接着剤との相互作用は、極力小さいものであるべきである。この目的のためには、比較的非極性である化合物が、とくに好適である。したがって、末端−CNまたは−NCS基を有する化合物の使用は、極力少量とするかまたは好ましくは完全に避けるべきである。また、エステル類やエーテル類、とくにフェノール性エステル類やエーテル類は、一般には好ましくない。
【0012】
【非特許文献1】J.G. Simmons, Phys. Rev. Vol. 155 No. 3, pp. 657-660
【非特許文献2】K. Niwa et al., SID 84 Digest, pp. 304-307, June (1984)
【特許文献1】WO 93/01253
【特許文献2】EP 0 663 502
【特許文献3】DE 195 21 483
【特許文献4】DE 41 00 287
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
十分に低い動作電圧のために、対応する誘電異方性Δεを有する物質が必要である。しかし、この種の媒体は、多くの場合高い粘度を有し、そのため応答時間が劣る傾向にある。これに対して、該ディスプレイにおける応答時間を短縮するために、誘電性がニュートラルである化合物が用いられている。これらの化合物は、極めて低い回転粘度を有していなければならない。なぜなら、これらの化合物が、比較的少量で用いられた場合でも媒体の粘度を効果的に低減せしめることが必要なためである。
【0014】
広い使用温度幅に対する要求も短い応答時間に対する要求と相容れない。なぜなら、使用温度幅の上限は、液晶媒体の透明点によって決定されるところ、該透明点が高くなるのは、とくに媒体が化合物として、複数の、多くの場合3つまたは4つの、多くの場合六員環を有するものを含む場合には高くなるからである。該化合物は、一般にそれら自体が高い粘度を有し、媒体にも高い粘度をもたらす傾向がある。
【0015】
したがって、液晶媒体として、とくに正の誘電異方性および極めて小さい回転粘度を有するものに対する需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の液晶媒体は、1種または2種以上の式Iの化合物からなる成分Aを含む:
【化1】

式中、
は、水素、炭素原子を1〜7個、好ましくは1〜5個有するアルキルもしくはアルコキシまたは炭素原子を2〜7個、好ましくは2〜5個有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルキニルもしくはアルキニルオキシを表し、1個、2個または3個の−CH−基であってこれらの6種類の基に存するものは、それぞれ−O−、−C=O−または−S−によって置換されていてもよいが2つのO原子は相互に直接結合せず、そして前記6種類の基はハロゲン、好ましくはフッ素によって置換されていてもよく、好ましくはアルキルまたはアルケニルであり、
は、−CH−CH−、−CH−O−、−CF−O−、−COO−、−OCO−または単結合を表し、好ましくは−CF−O−、−COO−または単結合であり、とくに好ましくは−CF−O−または単結合であり、
は、ハロゲン、炭素原子を1〜5個、好ましくは1〜2個有するフッ素化アルキルもしくはフッ素化アルコキシまたは炭素原子を2〜4個、好ましくは2〜3個有するフッ素化アルケニル、アルケニルオキシもしくはオキサアルキルを表し、好ましくはF、ClまたはOCFであり、とくに好ましくはClであり、
11およびY12は、それぞれ相互に独立して、HまたはFを表し、好ましくはY12はHを表し、Y11はHまたはFを表し、とくに好ましくはいずれもHを表す。
【0017】
本明細書全体においては、化合物の語は1つの化合物および複数の化合物群のいずれの意味も表すが、他に記述がある場合はその限りでない。
【発明の効果】
【0018】
本発明の媒体においては、好ましくは化合物として誘電異方性が正であるものを少量含み、全般的に誘電異方性がニュートラルである液晶化合物を相当量含む。これらの化合物によって達成されるのは、低い粘度(η)およびとくに低い回転粘度(γ)であり、これらはもたらされる応答時間に必須である。粘度を極力低減せしめるために、前記化合物のうち比較的大きい誘電異方性(正または負)を有するものは、極力低い濃度で用いる。これらの化合物の濃度は、所望の動作電圧を達成するために十分でありさえすればよい。
また、本発明によって、液晶媒体として格別優れた特性を有するものが提供される。これらには、ネマチック相を有し、特徴として70℃以上の透明点、20℃および599nmにおける0.15以下の複屈折率、0.5以上11.0以下の範囲の誘電異方性および90mPa・s以下の回転粘度を有する。
本発明の液晶媒体は、好ましくはしきい値電圧として2.0V以下を、とくに好ましくは1.80V以下を、TNディスプレイの20℃および0.25μm〜0.50μmの範囲の光学リタデーションにおいて有し、したがって動作電圧として5Vまたは4Vを有する駆動装置に格別に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の液晶媒体は、好ましくは以下を含む。
a)1〜28%、好ましくは1〜20%、とくに好ましくは2〜16%、きわめてとくに好ましくは3〜12%の、1種または2種以上の式Iの化合物からなる成分A、
b)10〜70%、好ましくは15〜65%、とくに好ましくは20〜60%、きわめてとくに好ましくは25〜55%の、1種または2種以上の、10.5より大きい誘電異方性を有する化合物からなる成分B、
c)1〜60%、好ましくは4〜33%、とくに好ましくは6〜29%、きわめてとくに好ましくは11〜26%の、1種または2種以上の、2.0より大きく10.5までの誘電異方性を有する化合物からなる成分C、および
d)5〜80%、好ましくは20〜55%、とくに好ましくは25〜50%、きわめてとくに好ましくは30〜45%の、1種または2種以上の、−1.0〜2.0の範囲の誘電異方性を有する化合物からなる成分D。
【0020】
第一の好ましい態様において、本発明の液晶媒体は以下を含む。
a)1〜12%、好ましくは2〜9%、とくに好ましくは2〜7%の、1種または2種以上の式Iの化合物からなる成分A、
b)39〜56%、好ましくは41〜53%、とくに好ましくは44〜51%の、1種または2種以上の、10.5より大きい誘電異方性を有する化合物からなる成分B、
c)5〜22%、好ましくは10〜20%、とくに好ましくは12〜18%の、1種または2種以上の、2.0より大きく10.5までの誘電異方性を有する化合物からなる成分C、および
d)22〜52%、好ましくは26〜43%、とくに好ましくは30〜39%の、1種または2種以上の、−1.0〜2.0の範囲の誘電異方性を有する化合物からなる成分D。
【0021】
他の好ましい態様において、本発明の液晶媒体は以下を含む。
a)4〜25%、好ましくは5〜15%、とくに好ましくは6〜12%の、1種または2種以上の式Iの化合物からなる成分A、
b)15〜45%、好ましくは20〜38%、とくに好ましくは22〜33%の、1種または2種以上の、10.5より大きい誘電異方性を有する化合物からなる成分B、
c)10〜33%、好ましくは15〜30%、とくに好ましくは20〜25%の、1種または2種以上の、2.0より大きく10.5までの誘電異方性を有する化合物からなる成分C、および
d)30〜55%、好ましくは35〜50%、とくに好ましくは38〜44%の、1種または2種以上の、−1.0〜2.0の範囲の誘電異方性を有する化合物からなる成分D。
【0022】
式Iの化合物は、好ましくは式I−1〜I−3の群から選択される。
【化2】

【化3】

式中、パラメータは上記において式Iについて与えられた意味を有し、好ましくは
は炭素原子を1〜7個有するアルキルもしくはアルコキシまたは炭素原子を2〜7個有するアルケニルを表し、
はF、Cl、CFまたはOCFを表し、好ましくはClを表す。
本液晶媒体は、好ましくは式I−1の化合物および/または式I−3の化合物を1種または2種以上含み、とくに好ましくは式I−1の化合物を含む。
【0023】
本発明の液晶媒体の成分Bは、好ましくは1種または2種以上の式IIの化合物を含み、とくに好ましくはこれらの化合物から優占的になり、極めてとくに好ましくは実質的にこれらの化合物のみからなる。
【化4】

式中
【化5】

および
【化6】

は、それぞれ相互に独立して、また2個以上存在する場合にはいずれもが相互に独立して、
【化7】

を表し、
、Y21〜Y24およびXは、それぞれ上記において対応するパラメータであるR、Y11〜Y14およびXに式Iにおいて与えられた意味を有し、好ましくはY21〜Y23はHを表し、Y24はFを表し、XはOCFまたはFを表し、好ましくはFを表し、
は、単結合、−COO−、−CF−CF−、−CF−CH−、−CH−CF−、−CH−CH−、−CH−O−、−O−CH−、−CF−O−または−O−CF−を表し、好ましくは単結合、−CF−O−または−COO−を表し、
nは1または2を表す。
【0024】
本明細書全体において、「化合物を含む」の表現は、他に記述がない限り、好ましくは10%以上、とくに好ましくは20%以上、極めてとくに好ましくは30%以上のこれらの化合物を含むことを意味し、「優占的に〜からなる」の表現は、好ましくは50%以上、とくに好ましくは60%以上、極めてとくに好ましくは70%以上のこれらの化合物を含むことを意味し、「実質的に〜のみからなる」の表現は、好ましくは80%以上、とくに好ましくは90%以上、極めてとくに好ましくは95%以上のこれらの化合物を含むことを意味する。
【0025】
式IIの化合物は好ましくは式II−1〜II−4の群から選択される。
【化8】

【0026】
式中、パラメータは上記において式IIについて与えられた意味を有し、好ましくは
は炭素原子を1〜5個有するアルキルを表し、
はOCFまたはFを表し、
21〜Y26はHまたはFを表し、好ましくはY21〜Y26の少なくとも1つはFを表し、とくに好ましくは存在する場合には、最大で5つが、好ましくは最大で4つが、Fを表し、
がFのとき、好ましくは2つ以上、とくに好ましくは少なくともY21およびY22が、Fを表し、
がOCFのとき、好ましくは1つ以上、とくに好ましくは少なくともY21が、Fを表し、
は、単結合、−COO−、−CF−CF−、−CF−CH−、−CH−CF−、−CH−CH−、−CH−O−、−O−CH−、−O−CO−、−CF−O−または−O−CF−を表し、好ましくは単結合、−COO−または−CF−O−を表し、とくに好ましくは−COO−を表す。
【0027】
式II−1の化合物は、好ましくは式II−1a〜II−1cの群から選択される。
【化9】

式中、パラメータは上記において式IIについて与えられた意味を有し、好ましくはXはFを表す。
【0028】
式II−2の化合物は、好ましくは式II−2a〜II−2eの群から選択される。
【化10】

【0029】
式中、パラメータは上記において式IIについて与えられた意味を有し、Xは好ましくはFを表すか、代わりに、とくに式II−2bにおいてXは好ましくはFを表す。
【0030】
式II−3の化合物は、好ましくは式II−3a〜II−3dの群から選択される。
【化11】

式中、パラメータは上記において式IIについて与えられた意味を有し、Xは好ましくはFを表す。
【0031】
本発明の液晶媒体の成分Cは、好ましくは1種または2種以上の式IIIの化合物を含み、とくに好ましくはこれらの化合物から優占的になり、極めてとくに好ましくは実質的にこれらの化合物のみからなる。
【化12】

式中
【化13】


【化14】

または
【化15】

を表し、好ましくは
【化16】

を表し、nは0または1を表し、
【0032】
、Y31、Y32およびXは、それぞれ上記において式Iについて対応するパラメータであるR、Y11、Y12およびXに与えられた意味を有し、
はアルキルまたはアルケニルを表し、
31およびZ32は、それぞれ相互に独立して、単結合、−COO−、−CF−CF−、−CF−CH−、−CH−CF−、−CH−CH−、−CH−O−、−O−CH−、−CF−O−または−O−CF−を表し、好ましくは単結合、−CF−O−または−COO−を表し、好ましくはZ31およびZ32の少なくとも1つ、好ましくはZ32は、単結合を表し、
はF、CFまたはOCFを表し、
31およびY32は、HまたはFを表し、
がFを表すとき、好ましくはZ31およびZ32の少なくとも1つ、好ましくはZ31は、Fを表し、
がFを表すとき、Z31およびZ32、好ましくはZ31は、Hを表し、
式IIの化合物は除外される。
【0033】
式IIIの化合物は好ましくは式III−1〜III−3の群から選択される。
【化17】

【0034】
式中、パラメータは上記において式IIIについて与えられた意味を有し、好ましくは
は炭素原子を1〜5個有するアルキルもしくはアルコキシまたは炭素原子を2〜5個有するアルケニルを表し、
31は、−CF−CF−または単結合を表し、
はF、−CFまたは−OCFを表し、
31はHまたはFを表し、
が式III−2および式III−3においてFのとき、Y31は好ましくはFを表し、
【0035】
とくに好ましくは
はアルキルまたはアルケニルを表し、
式III−1において、
31は、単結合を表し、
はCFを表し、
式III−2において、
はFを表し、Y31はFまたはHを表し、RはHまたはアルケニルを表し、
または
は−OCFを表し、Y31はHを表し、
式III−1において、
およびY31はいずれもFを表す。
【0036】
本発明の液晶媒体の成分Dは、好ましくは1種または2種以上の式IVの化合物を含み、とくに好ましくはこれらの化合物によって優占的になり、極めてとくに好ましくは実質的にこれらの化合物のみからなる。
【化18】

41およびR42は、それぞれ相互に独立して請求項1または上記においてRに与えられた意味を有し、
41は好ましくはアルケニルを表し、
【0037】
【化19】

および
【化20】

は、それぞれ相互に独立して
【化21】

を表し、好ましくは
【化22】

を表し、
は単結合、−CH=CH−、−CH−CH−または−CF―CF―を表し、好ましくは単結合を表し、
式IIIの化合物は除外される。
【0038】
式IVの化合物は好ましくは式IV−1〜式IV−3の群から選択され、好ましくは式IV−1および式IV−3の群から選択され、とくに好ましくは式IV−1から選択される。
【化23】

式中、パラメータは上記において式IVについて与えられた意味を有し、好ましくは
41はアルキルまたはアルケニルを表し、
42はアルキルまたはアルケニルを表し、式IV−2においてはFも表し、
は、−CH−CH−、−CF−CF−、−CFO−または単結合を表し、好ましくは−CF−CF−または単結合を表す。
【0039】
好ましいものとして、さらに、液晶媒体として、成分Dが式IVの化合物に追加してまたは代わりに、1種または2種以上の式Vの化合物を含むものがある。
【化24】

式中、
51、R52およびYは、それぞれ相互に独立して上記において式IについてRまたはY11に与えられた意味を有し、
51は好ましくはアルキルまたはアルケニルを表し、
【化25】


【化26】

を表し、
は、単結合、−CH=CH−、−CH−CH−、CF−CF−または−CF−O−を表し、好ましくは単結合を表し、
は、HまたはFを表し、好ましくはHを表す。
【0040】
式Vの化合物は好ましくは式V−1〜式V−5の群から選択される。
【化27】

式中、パラメータは上記において式Vについて与えられた意味を有し、好ましくは
51およびR52は、それぞれ相互に独立して、炭素原子を1〜5個有するアルキルまたは炭素原子を2〜5個有するアルケニルを表し、R52は好ましくはアルキルを表す。
【0041】
ジオキサン環を有する化合物および末端シアノ置換芳香環を有する化合物の本発明の媒体における合計の割合は、好ましくはそれぞれにおいて10%以下であり、とくに好ましくは5%以下である。前記2種の化合物の合計の、本発明の媒体における合計の割合は、極めてとくに好ましくは7%以下であり、好ましくは3%以下である。
【0042】
本願は本発明の媒体の電気光学ディスプレイにおける使用および本発明の媒体を含む電気光学ディスプレイにも関し、とくにアクティブ切り換え素子によって切り換えられる電気光学ディスプレイに関する。
【0043】
好ましい態様において、本発明の液晶媒体は以下を含む。
a)1種または2種以上の、誘電性が正である式Iの化合物、
b)1種または2種以上の、誘電性が正である式IIの化合物、
c)1種または2種以上の、誘電性が正である式IIIの化合物、および任意に
d)1種または2種以上の、誘電性がニュートラルである式IVの化合物。
【0044】
本発明の液晶媒体は、とくに好ましくは式II−3b−i、II−3b−ii、II−3c−iおよびII−3c−ii、II−3d−iおよびII−3d−iiの群からの化合物を1種または2種以上含む。
【化28】

【化29】

式中、Rは上記において式IIについて与えられた意味を有し、好ましくはアルキルまたはアルケニルを表す。
【0045】
本液晶媒体は、とくに好ましくは式II−3b−i、II−3b−ii、II−3c−ii、II−3d−iおよびII−3d−iiの群からの化合物を1種または2種以上含み、とくに好ましくは式II−3b−i、II−3b−iiおよびII−3d−iの群からの化合物を1種または2種以上含む。
【0046】
本発明の液晶媒体は、とくに好ましくは式IV−1a〜IV−1gおよび/またはIV−2a〜IV−2cおよび/またはIV−3a〜IV−3cの群からの化合物を1種または2種以上含み、とくに好ましくは式IV−1bおよび/または式IV−1cおよび/または式IV−3cの群からの化合物を1種または2種以上含む。
【化30】

【0047】
【化31】

【0048】
式中、
alkylは炭素原子を1〜7個、好ましくは炭素原子を1〜5個有するアルキルを表し、好ましくは炭素原子を1〜3個有するアルキルを表し、好ましくはn−アルキルを表し、
alkoxyは炭素原子を1〜7個、好ましくは直鎖アルキル鎖を有し、好ましくは炭素原子を1〜3個有するアルコキシを表し、
alkenylは炭素原子を2〜7個、好ましくは炭素原子を2〜5個、とくに好ましくは炭素原子を2個または3個有するアルケニルを表し、とくに好ましくは1E−アルケニルを表し、とくに好ましくはビニルを表す。
【0049】
好ましい態様において、本発明の液晶媒体は、合計して、混合物全体に対して以下を含む。
1〜35%の式Iの化合物、
10〜60%の式IIの化合物、
4〜32%の式IIIの化合物、
10〜60%の式IVの化合物、
0%〜15%の式Vの化合物。好ましくは合計で80%より多い、好ましくは80%〜100%、好ましくは90%〜100%の、式I〜Vの化合物を含む。
【0050】
個々の化合物は一般に本発明の媒体においては、濃度として1%〜30%、好ましくは2%〜20%、とくに好ましくは4%〜16%用いられる。
好ましい態様において、本媒体は、好ましくは合計で以下を含む。
5〜25%の式Iの化合物、
15〜50%の式IIの化合物、
7〜27%の式IIIの化合物、
15〜52%の式IVの化合物、
0%〜10%、好ましくは0%〜5%の式Vの化合物。
【0051】
この態様における媒体は、極めてとくに好ましくは合計で90%〜100%、好ましくは90%〜100%の式I〜Vの化合物を含み、好ましくは式I、IIおよびIVの化合物を含む。
とくに好ましい態様において、上記好ましい態様と同一であり得るものとして、本媒体は式I、IIおよびIII−1の化合物の群から選択される化合物を1種または2種以上含む。本媒体は、とくに極めて好ましくは、それぞれこれらの式のうち2つまたは3つの化合物を1種または2種以上含み、好ましくはこれらの式の3つ全ての化合物を含む。
【0052】
とくに好ましい態様において、上記好ましい態様と同一であり得、好ましくは同一のものとして、本発明の液晶媒体は下記各式からの化合物の群から選択される化合物を1種または2種以上含む。
I−1のうちXが好ましくはClを表し、I−3としてXがFを表すもの、
II−1のうち好ましくはZが−COO−を表し、Y21〜Y23がHを表し、Y24がFを表しXが−OCFを表すもの、
II−2のうち好ましくはZが−COO−を表し、Y21〜Y23およびXがFを表すもの、
II−2bのうちXが好ましくはFを表すもの、
IV−1のうち好ましくはZが単結合を表し、R41がn−アルキルを表し、R42がアルキル、好ましくはn−アルキル、アルコキシ、またはアルケニルを表すもの。
【0053】
本発明の液晶媒体は、ネマチック相として、好ましくはそれぞれの場合において少なくとも−20℃〜80℃を有し、好ましくは−30℃〜80℃を有し、極めてとくに好ましくは−40℃〜90℃を有する。「ネマチック相を有する」の表現は、本明細書においては一方においてスメクチック相および結晶化が対応する温度における低温において観察されず、他方において加熱したときにネマチック相から透明化が起こらないことを意味する。低温下における試験は、テストセル内に保存することによって、電気光学的使用に対応するセルの厚さとし、対応する温度で行う。前記セルはここで少なくとも500時間、好ましくは1000時間保存される。透明点の測定は通常の方法に基づきキャピラリ内にて行う。
【0054】
本発明の液晶媒体は、さらに、低い光学異方性を特徴とする。複屈折率値は、0.150以下であり、好ましくは0.120以下であり、極めてとくに好ましくは0.110であり、0.100以下の場合もある。
【0055】
本発明の液晶媒体は、極めて小さい回転粘度を有する。その回転粘度は、90mPa・s以下であり、好ましくは80mPa・s以下であり、好ましくは70mPa・s以下であり、とくに好ましくは65mPa・s以下であり、極めてとくに好ましくは60mPa・s以下である。
【0056】
さらに、本発明による液晶媒体は、比較的低い2.5V以下のしきい値電圧(V10)を有し、好ましくは2.0V以下であり、とくに好ましくは、1.8V以下であり、極めてとくに好ましくは、1.6V以下であり、したがって、5V駆動装置にとくに好適であり、4V駆動装置に好ましい。
【0057】
これらの好ましい個々の物性値は、それぞれの場合において互いに組み合わされて保持される場合もある。したがって、本発明の媒体は、とくに以下の物性の組み合わせを有する:
【表1】

上記表中において、本明細書全体と同様に、「≦」は以下を意味し、「≧」は以上を意味する。
【0058】
本発明の液晶媒体は、500時間以上、好ましくは1000時間の安定性を−20℃の温度における保存において有し、250時間以上、とくに好ましくは500時間以上、極めてとくに好ましくは1000時間以上の安定性を−30℃の温度における好ましい保存において有し、168時間以上、好ましくは250時間以上、とくに好ましくは500時間以上の安定性を−40℃の温度におけるとくに好ましい保存において有する。これらの安定性は、セル中および/またはバルク中においてであり、好ましくはバルク中においてである。
【0059】
本発明の好ましい態様において、液晶媒体は以下を含む。
−1種または2種以上の式Iの化合物、好ましくは式I−1の化合物および/またはI−3の化合物、好ましくはI−1の化合物として、Xがとくに好ましくはClを表すもの、および/または
−1種または2種以上の式IIの化合物、好ましくは式II−2の化合物、好ましくは式II−2cの化合物として、Xがとくに好ましくはF表すもの、および/または
−1種または2種以上の化合物式IVの化合物、好ましくは式IV−1の化合物、好ましくは式IV−1bの化合物として、alkylが好ましくはエチル、n−プロピル、n−ブチルおよびn−ペンチルの基の群から選択され、そしてalkenylがビニルおよび1E−プロペニルの基の群から選択され、とくに好ましくは1種または2種以上の式IVの化合物として、(alkyl、alkenyl)の組が(n−プロピル、ビニル)、(n−プロピル、1E−プロペニル)、(n−ブチル、ビニル)および(n−ペンチル、ビニル)である化合物の群から選択されるもの:
−前記媒体はとくに好ましくは式 IV−1bの化合物として、(alkyl、alkenyl)の組が(n−ブチル、ビニル)を表すものを含み、
−前記媒体は極めてとくに 好ましくは式IV−1bの化合物を2種または3種以上、好ましくは3種または4種以上含む。
【0060】
「alkyl」の語は、好ましくは直鎖状または分枝状のアルキル基であって、1〜7個の炭素原子を有するものを包含し、とくに直鎖状基であるメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびヘプチルである。2〜5個の炭素原子を有する基が一般に好ましい。
【0061】
「alkenyl」の語は、好ましくは2〜7個のC原子を有する直鎖状および分枝状アルケニル基を包含し、とくに直鎖状基である。とくに好ましいアルケニル基は、C2〜C7−1E−アルケニル、C4〜C7−3E−アルケニル、C5〜C7−4−アルケニル、C6〜C7−5−アルケニルおよびC7−6−アルケニルであり、とくにC2〜C7−1E−アルケニル、C4〜C7−3E−アルケニルおよびC5〜C7−4−アルケニルである。他の好ましいアルケニル基の例は、ビニル、1E−プロペニル、1E−ブテニル、1E−ペンテニル、1E−ヘキセニル、1E−ヘプテニル、3−ブテニル、3E−ペンテニル、3E−ヘキセニル、3E−ヘプテニル、4−ペンテニル、4Z−ヘキセニル、4E−ヘキセニル、4Z−ヘプテニル、5−ヘキセニル、6−ヘプテニルなどである。5個までのC原子を有するアルケニル基は、一般に好ましい。
【0062】
「フルオロアルキル」の語は、好ましくは末端にフッ素を有する直鎖状基、すなわちフルオロメチル、2−フルオロエチル、3−フルオロプロピル、4−フルオロブチル、5−フルオロペンチル、6−フルオロヘキシルおよび7−フルオロヘプチルを包含する。しかしながら、別の位置のフッ素も除外されない。
「オキサアルキル」または「アルコキシアルキル」の語は好ましくは直鎖状基として式C2n+1−O−(CHで表されるものを包含する。式中、nおよびmは、それぞれ相互に独立して1〜6を表す。好ましくはnは1であり、mは好ましくは1〜6である。
【0063】
本明細書において、正の誘電性を有する(誘電性が正である)化合物という語は、>1.5のΔεを有する化合物を意味し、ニュートラルの誘電性を有する化合物とは、−1.5≦Δε≦ 1.5を有する化合物を意味し、負の誘電性を有する(誘電性が負である)化合物とは、<−1.5のΔεを有する化合物を意味する。化合物の誘電異方性の測定は、ここでは液晶ホスト中に化合物を10%溶解し、混合物のキャパシタンスの測定をそれぞれの場合において少なくとも1つのテストセルとして10μmの厚みを有し、1kHzでホメオトロピック表面配向およびホモジニアス表面配向を有するものの中で行う。測定電圧は、典型的には0.5V〜1.0Vであるが、それぞれの液晶混合物において常に容量しきい値より小さい。
【0064】
正の誘電性を有する化合物群として用いられるホスト混合物は、ZLI−4792であり、ニュートラルの誘電性を有する化合物群および負の誘電性を有する化合物群として用いられるホスト混合物は、ZLI−3086であり、ともにMerck KGaA、Germanyからのものである。それぞれの試験化合物についての値は、試験化合物を添加した後におけるホスト混合物の誘電定数の変化および用いた化合物の100%の外挿によって得られる。
しきい値電圧の語は、多くの場合光学しきい値として10%の相対コントラストに対するもの(V10)に関する。
本明細書において、フレデリクスしきい値の語は、容量しきい値電圧(V)を表すものとして用いられるが、他に明記されている場合にはこの限りではない。
【0065】
この出願のすべての濃度は、他の記載がない限り対応する混合物全体に対する重量パーセントである。すべての物性は“メルク液晶、液晶の物性”、1997年11月のもの、Merck KGaA、Germanyに従い、測定され、20℃の温度において適用されるが、他の記載がある場合はこの限りではない。Δnは589nmで測定され、Δεは1kHzで測定される。しきい値電圧およびその他の光学特性の測定は、テストセルとしてMerck KGaA、Germany製のものの中で、白色光を用い、Otsuka, Japanからの市販の測定器具によって行った。この目的のために、セルの厚さは、液晶媒体のΔnに応じて、厚さ約0.50μmのセルの光学リタデーションd・Δnに相当するようになるものを用いた。セルの操作は、いわゆる通常白色モード(normally white mode)において平行偏光器を用いて行った。特性電圧の測定は、全て垂直観察によって行った。しきい値電圧は、V10として10%の相対コントラストを表すものによって示し、中間グレー電圧をV50をとして50%の相対コントラストを表すものによって示し、飽和電圧をV90として90%の相対コントラストを表すものによって示した。
【0066】
負の誘電異方性を有する液晶媒体の場合、しきい値電圧の測定は、容量しきい値V(フレデリクスしきい値としても知られている)として、レシチンによってホメオトロピックに配向せしめた液晶を用いてMerck KGaA、Germanyで製造されたテストセル中で行った。
本発明による液晶媒体は、必要であれば、通常の量でさらに添加剤およびカイラルドーピング剤を含んでもよい。これらの用いられる添加剤を量は、混合物全体量に対して、合計で0%〜10%であり、好ましくは0.1%〜6%である。個々の用いられる化合物の濃度は、好ましくは0.1〜3%である。これらの濃度および同様な添加剤の濃度は、液晶媒体中における液晶化合物の濃度および濃度範囲を表すときには除かれている。
【0067】
前記組成物は複数の化合物からなり、好ましくは3種〜30種、とくに好ましくは4種〜20種、極めてとくに好ましくは5種〜16種の化合物からなり、通常の方法によって混合される。一般に、所望量のより少量で用いる成分を主たる構成成分を占める成分中に溶解するところ、これは温度を高めて行うと有利である。選択された温度が、前記主たる構成成分の透明点よりも高い場合には、溶解工程の終了をとくに容易に観測することができる。しかし、他の通常の方法、例えばプレミックスまたは、いわゆる“マルチボトルシステム”によって本液晶混合物を製造することもできる。
本発明による液晶媒体の改変して、好適な添加剤を用いて、これまでに記載したあらゆる種類のTNディスプレイ、とくにAMD LCDに、用いることができるようすることができる。
【0068】
以下の例は本発明を説明するためのものであるが限定はするものではない。これらの例では、透明点T(C,N)、スメクチック(S)相からネマチック(N)相への転移T(S,N)および透明点T(N,I)は、液晶物質についてセ氏温度で示されている。上記および下記におけるパーセントによるデータは重量パーセントであるが他の記載がある場合はこの限りでなく、また、物性は20℃におけるものであるが、他の記載がある場合はこの限りでない。
【0069】
本明細書におけるすべての温度の値は℃であり、全ての温度差は対応する温度差であるが他に記載がある場合はこの限りでない。
回転粘度の測定は20℃の温度において、永久磁石として、NMRチューブ中の液晶サンプルの周りを回転しているものを用いて行った。レファレンスとして、2つの市販のネマチック混合物であり、いずれもMerck KGaA, DarmstadtからのZLI−4792およびMLC−6848−000を用いた。これら2つの混合物の20℃における値は、それぞれ133mPa・sおよび178mPa・sであった。
【0070】
本明細書および以下の例において、液晶化合物の構造は略号、頭字語としても知られているものを用いて示されており、その化学式への変換は下記表AおよびBに従って得られる。基C2n+1およびC2m+1は、全てそれぞれn個およびm個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基である。表Bのコードは自明である。表Aにおいては、基本構造に関わる頭字語のみが示されている。個々の場合において、この基本構造に関わる頭字語の後にハイフンで分離され、置換基R、R、LおよびLに係るコードが示されている:
【0071】
【表2】

【0072】
【化32】

【0073】
【化33】

【0074】
【化34】

【0075】
【化35】

【0076】
【化36】

【0077】
【化37】

【0078】
【化38】

【0079】
【化39】

【0080】
【化40】

【0081】
【化41】

【0082】
【化42】

【0083】
【化43】

【0084】
【化44】

【0085】
【化45】

【0086】
【化46】

【0087】
【化47】

【0088】
【化48】

【0089】
【化49】

【0090】
【化50】

【0091】
【化51】

【0092】
本発明のメソゲン性媒体は、好ましくは以下を含む。
−4種または5種以上、好ましくは6種または7種以上の、表Aおよび表Bの化合物群から選択される化合物、および/または
−5種または6種以上表Bの化合物群から選択される化合物、および/または
−2種または3種以上表Aの化合物群から選択される化合物。
【0093】

以下の例は、本発明の説明を、限定することなく行うためのものである。しかし、これらの例において、物性の範囲は好ましくは達成されるものを示すとともに、好ましく用いられる化合物、好ましく用いられるそれらの同種およびとくに好ましい化合物の組み合わせを示している。
上記および下記において、パーセント表記は重量パーセントを表す。全ての温度はセ氏度を示す。Δnは光学異方性(589nm、20℃)を表し、Δεは誘電異方性(1kHz、20℃)を表し、H.R.は電圧保持率(100℃において、オーブン中の5分後、1V)を表す。V10、V50およびV90は、しきい値電圧、中間グレー電圧および飽和電圧をそれぞれ表し、容量しきい値電圧Vは20℃において測定した。
【0094】
比較例1
液晶媒体として下表の特性を有するものを調製する。
【表3】

この混合物は、複屈折率(Δn)値として大部分の用途に好ましいもの、比較的低いしきい値電圧および比較的好ましい透明点と回転粘度の組み合わせ(T(N,I)/γ)を有し、そのため短い応答時間を達成している。しかし、この混合物のネマチック相の、低温下の保存およびUV照射に対する安定性は、多くの用途において好ましいものではない。
【0095】
比較例2
液晶媒体として下表の特性を有するものを調製する。
【表4】

【0096】
この混合物は、複屈折率(Δn)値として大部分の用途に好ましいもの、比較的低いしきい値電圧および比較的好ましい透明点と回転粘度の組み合わせ(T(N,I)/γ)を有し、そのため短い応答時間を達成している。しかし、この混合物のネマチック相の、低温下の保存およびUV照射に対する安定性は、比較例1と同様に、多くの用途において好ましいものではない。
【0097】
比較例3
液晶媒体として下表の特性を有するものを調製する。
【表5】

【0098】
この混合物は、複屈折率(Δn)値として大部分の用途に好ましいもの、比較的低いしきい値電圧および比較的好ましい透明点と回転粘度の組み合わせ(T(N,I)/γ)を有し、そのため短い応答時間を達成している。しかし、この混合物のネマチック相の、低温下の保存およびUV照射に対する安定性は、比較例1と同様に、多くの用途において好ましいものではない。
【0099】
例1
それぞれの場合において、20%の、本発明の式Iの化合物に包含される化合物“AP−3−Cl”および“AP−4−Cl”のいずれか一方を、比較例1の混合物をホスト混合物として、該混合物に二者択一的に添加する。このようにして得た混合物をHeraeus Suntestのテストセル中においてUV照射に2時間付す。次に電圧保持率(H.R.)の測定を、5分間オーブン内に100℃で置いた後に、Autronic Melchers, Karlsruhe, Germanyからの器具を用いて行う。結果を下表に示す。
【表6】

注:n.d.は未測定(not detremined)
【0100】
例2
それぞれの場合において、10%の、本発明の式Iの化合物に包含される化合物“AP−3−Cl”および“AP−4−Cl”のいずれか一方を、比較例2の混合物をホスト混合物として、該混合物に二者択一的に添加する。このようにして得た混合物の試験を例1に記載のように行う。結果を下表に示す。
【表7】

注:n.d.は未測定
【0101】
例3
それぞれの場合において、10%の、本発明の式Iの化合物に包含される化合物“AP−3−Cl”および“AP−4−Cl”のいずれか一方を、比較例3の混合物をホスト混合物として、該混合物に二者択一的に添加する。このようにして得た混合物の試験を例1に記載のように行う。結果を下表に示す。
【表8】

【0102】
例4
本発明の液晶媒体として、組成および物資液晶媒体が下表に示したものであるものを調製する。
【表9】

【0103】
この混合物の組成は、例3−1および3−2と同様に、比較例3の組成とわずかに異なるのみである。例3−2の混合物と同様に、この混合物は“AP−4−Cl”を比較例3の混合物に存在する化合物群に追加して含む。また、この混合物は化合物”PCH−302”を含まない。他の化合物の濃度および用いられる類縁化合物の個数は、それぞれの場合において、容易に比較例3の混合物のものに対応せしめることができる。
【0104】
媒体同士の対応の実施は、本新規混合物が比較例と実質的に同一の物性を有するように行う。しかし、同時に、本新規混合物の低温における保存安定性は比較例3の混合物に比較して顕著に向上している。
【0105】
例5
本発明の液晶媒体として、組成および物資液晶媒体が下表に示したものであるものを調製する。
【表10】

この混合物は格別な適用上の特性を有する。
【0106】
例6
本発明の液晶媒体として、組成および物資液晶媒体が下表に示したものであるものを調製する。
【表11】

この混合物は格別な適用上の特性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種または2種以上の式Iの化合物からなる成分Aを含む、ネマチック相を有する液晶媒体:
【化1】

式中、
は、水素、炭素原子を1〜7個有するアルキルもしくはアルコキシまたは炭素原子を2〜7個有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルキニルもしくはアルキニルオキシを表し、1個、2個または3個の−CH−基であってこれらの6種類の基に存するものは、それぞれ−O−、−C=O−または−S−によって置換されていてもよいが2つのO原子は相互に直接結合せず、そして前記6種類の基はハロゲンによって置換されていてもよく、
は、−CH−CH−、−CH−O−、−CF−O−、−COO−、−OCO−または単結合を表し、
は、ハロゲン、炭素原子を1〜5個有するフッ素化アルキルもしくはフッ素化アルコキシまたは炭素原子を2〜4個有するフッ素化アルケニル、アルケニルオキシもしくはオキサアルキルを表し、
11およびY12は、それぞれ相互に独立して、HまたはFを表す。
【請求項2】
70℃以上の透明点、20℃および599nmにおける0.15以下の複屈折率、20℃および1kHzにおける3.0以上14.0以下の範囲の誘電異方性および20℃における90mPa・s以下の回転粘度を有する請求項1に記載の液晶媒体。
【請求項3】
TNディスプレイおける20℃および0.50μmの光学リタデーションにおいて、2.0V以下のしきい値電圧を有する請求項1または2に記載の液晶媒体。
【請求項4】
10.5より大きい誘電異方性を有する化合物からなる成分B、
2より大きく10.5までの誘電異方性を有する化合物からなる成分C、
−1.0〜2の範囲の誘電異方性を有する化合物からなる成分D、
を含む請求項1または2に記載の液晶媒体。
【請求項5】
成分Bが、式IIの化合物を1種または2種以上含むか、
【化2】

式中、
【化3】

は、それぞれ相互に独立して、また2個以上存在する場合にはいずれもが相互に独立して、
【化4】

を表し、
、Y21〜Y24およびXは、それぞれ請求項1において対応するパラメータであるR、Y11〜Y14およびXに与えられた意味を有し、
は、単結合、−COO−、−CF−CF−、−CF−CH−、−CH−CF−、−CH−CH−、−CH−O−、−O−CH−、−CF−O−または−O−CF−を表し、
nは1または2を表し、
および/または成分Cが式IIIの化合物を1種または2種以上含むか、
【化5】

式中、
【化6】


【化7】

または
【化8】

を表し、
nは0または1を表し、
、Y31、Y32およびXは、それぞれ請求項1に記載の式Iにおいて対応するパラメータであるR、Y11、Y12およびXに式Iにおいて与えられた意味を有し、
31およびZ32は、それぞれ相互に独立して、単結合、−COO−、−CF−CF−、−CF−CH−、−CH−CF−、−CH−CH−、−CH−O−、−O−CH−、−CF−O−または−O−CF−を表し、
はF、CFまたはOCFを表し、
31およびY32は、HまたはFを表し、
および/または成分Dが式IVの化合物を1種または2種以上含む、請求項1〜4のいずれかに記載の液晶媒体:
【化9】

式中、
41およびR42は、それぞれ相互に独立して請求項1においてRに与えられた意味を有し、
【化10】

および
【化11】

は、それぞれ相互に独立して
【化12】

を表し、Zは単結合、−CH=CH−、−CH−CH−または−CF―CF―を表し、式IIIの化合物は含まれない。
【請求項6】
1〜35%の式Iの化合物、
10〜60%の式IIの化合物、
4〜32%の式IIIの化合物、
10〜60%の式IVの化合物、
0%〜15%の下記式Vの化合物を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の液晶媒体:
【化13】

式中、
51、R52およびYは、それぞれ相互に独立して請求項1において式IについてRまたはY11に与えられた意味を有し、
【化14】


【化15】

を表し、
は、単結合、−CH=CH−、−CH−CH−、CF−CF−または−CF−O−を表し、
は、HまたはFを表す。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の液晶媒体の電気光学ディスプレイにおける使用。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の液晶媒体を含む電気光学ディスプレイ。
【請求項9】
アクティブ切り換え素子によってアドレスされる、請求項8に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項10】
TNディスプレイ、OCBディスプレイまたはIPSディスプレイである、請求項8または9に記載の電気光学ディスプレイ。

【公開番号】特開2006−328400(P2006−328400A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−144876(P2006−144876)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】