説明

液晶媒体

本発明は、極性化合物の混合物に基づいた液晶媒体であって、式Iで示される化合物の1種または2種以上を含有する液晶媒体、およびその電気光学目的、特にTNモニター用途における使用に関する。


(Rは、アルキルまたはアルコキシ基を表し、これらの基のCH基は、O原子同士が直接結合しないことを条件として、−C≡C−、−CH=CH−、−O−、−CO−O−、−O−CO−で置換されていても良く、Xは、F、Cl、ハロゲン化アルキル基等であり、LおよびLは、HまたはFを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶媒体、その電気光学の目的のための使用、およびこの媒体を含むディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶は、印加電圧によって物質の光学的性質を変化させることができるので、主に表示装置の中の誘電体として使用される。液晶に基づいた電気光学装置は、当業者に公知であり、種々の効果に基づくことができる。そのような装置の例として、動的散乱を有するセル、DAP(整列相の変形:deformation of aligned phases)セル、ゲスト/ホストセル、ねじれネマチック構造を有するTNセル、STN(スーパーツイストネマチック)セル、SBE(超複屈折効果:superbirefringence effect)セルおよびOMI(光学モード干渉:optical mode interference)セルが挙げられる。最も一般的な表示装置は、Schadt Helfrich効果に基づく、ツイストネマチック構造を有する。
【0003】
液晶材料としては、良好な化学的および熱的安定性を有すると共に、電場と電磁線放射に対しても優れた安定性を有することが必要である。また、液晶材料は、低粘度であり、セル中で使用されて、短アドレス時間、低しきい電圧および高いコントラストをもたらすものでなければならない。
【0004】
それらは、さらに通常の動作温度において(つまり、室温以上または室温以下のできるだけ広い範囲において)、適切な中間相、例えば前述のセル用のネマチック中間相またはコレステリック中間相を有していなければならない。液晶は通常、複数成分の混合物として使用されるので、成分が互いに容易に混和することが重要である。さらに導電率、誘電率異方性および光学異方性のような特性は、セルタイプ、用途分野に応じて、種々の要求を満足しなければならない。 例えば、ツイストネマチック型セルの材料は、正の誘電異方性および低い導電率を有しているべきである。
【0005】
例えば、個々のピクセルのスイッチングのために集積非線形素子を有するマトリックス型液晶ディスプレイ(MLCディスプレイ)については、大きな正の誘電異方性、広いネマチック相、比較的低い複屈折率、非常に高い比抵抗、優れたUVおよび温度安定性、および低い蒸気圧を有する媒体が望まれる。
【0006】
このタイプのマトリックス型液晶ディスプレイは公知である。個々のピクセルのそれぞれのスイッチングに使用することができる非線形素子は、例えばアクティブ素子(つまりトランジスター)である。この用語「アクティブマトリックス」は、2つの区別されるタイプに分けられる。
【0007】
1. 基板としてのシリコンウエハー上のMOS(金属酸化物半導体)あるいは他のダイオード。
【0008】
2. 基板としてのガラス板上の薄膜トランジスター(TFT)。
【0009】
基板材料として単結晶シリコンを使用すると、色々な部品ディスプレイのモジュール組み立てでさえ、接続部での問題が生じるので、ディスプレイ・サイズが制限される。
【0010】
好適であってより有望なタイプ2の場合には、TN効果が電気光学効果として使用される。ここには、区別される2つの技術がある。即ち、例えばCdSeのように、化合物半導体を含むTFTと、多結晶かアモルファスシリコンに基づいたTFTである。後者の技術に関して、集中的な研究が世界的に行われている。
【0011】
TFTマトリックスは、ディスプレイの1つのガラス板の内面に形成され、もう一方のガラス板は、内面に透明な対向電極を有する。ピクセル電極のサイズと比較して、TFTは非常に小さく、事実上、画像に対する悪影響はない。この技術は、フルカラー対応のディスプレイにも適用できる。そこでは、フィルタ素子がスイッチング可能なピクセルの各々に対向するように、赤、緑および青フィルターのモザイクが配置される。
【0012】
TFTディスプレイは、通常、透過光に対してクロスした偏光板を備えたTNセルとして動作し、背面から照らされる。
【0013】
ここで用語MLCは、集積非線形素子を備えたどのようなマトリックスディスプレイも含む。即ち、アクティブマトリックスに加えて、バリスターやダイオード(MIM=metal−insulator−metal)のような受動素子を備えたディスプレイも含む。
【0014】
このタイプのMLCディスプレイは、特にテレビ用途(例えばポケット・テレビ)、またはコンピュータ用(ラップトップ)および自動車もしくは航空機内で使用される高度情報表示装置用途に適している。コントラストの角度依存性と応答時間の問題に加えて、MLCディスプレイにおいては、液晶混合物の不十分に高い比抵抗に起因する問題がある(TOGASHI, S., SEKIGUCHI, K.,
TANABE, H., YAMAMOTO, E., SORIMACHI, K., TAJIMA, E., WATANABE, H., SHIMIZU, H.,
Proc. Eurodisplay 84, Sept. 1984: A 210-288 Matrix LCD Controlled by Double Stage Diode Rings,
p. 141 ff, Paris;および STROMER, M., Proc. Eurodisplay 84, Sept. 1984: Design of
Thin Film Transistors for Matrix Addressing of Television Liquid Crystal
Displays, p.145 ff, Paris)。抵抗が低下するほど、MLCディスプレイのコントラストが劣化し、また、残像消去の問題も生じうる。液晶混合物の比抵抗は、ディスプレイの内部表面との相互作用のために、一般に、MLCディスプレイの寿命の全体に渡って低下するので、許容される耐用年数を得るためには、高い(初期)抵抗を有することが非常に重要である。特に、低電圧用混合物の場合には、高い抵抗値を達成することは従来不可能であった。さらに、比抵抗の上昇が、温度の上昇に伴い、および加熱および/またはUV照射後に可能な限り小さいことも重要である。さらに、従来技術の混合物の低温特性もまた特に不利である。低温であっても、結晶および/またはスメクチック相が生じないことが要求され、さらに、粘性の温度依存性もできるだけ低いことが要求される。先行技術で公知のMLCディスプレイは今日の必要条件を満たさない。
【0015】
したがって、非常に高い比抵抗と同時に、広い動作温度範囲、低温でも短い応答時間および低いしきい電圧を有しているMLCディスプレイであって、これらの不都合を有していないか、有していたとしてもより少ない程度であるようなものが、引き続き要求されている。
【0016】
TN(Schadt−Helfrich)セルでは、セル中で次の利点を容易ならしめるような媒体が望まれる。
【0017】
−拡大されたネマチック相範囲(特に、低い温度までの)
−貯蔵における安定性、特に、極度に低い温度でさえ
−極度に低い温度でのスイッチ能力(アウトドア用途、自動車、航空電子工学)
−紫外線照射に対する増大された抵抗(より長い寿命)
先行技術から入手可能な媒体では、これらの利点を、同時に他のパラメーターを保持しながら達成することはできない。
【0018】
スーパーツイスト型(STN)セルの場合には、より大きな時分割駆動および/または低いしきい電圧および/またはより広いネマチック相範囲(特に、低温において)を可能にする媒体が望まれる。この目的のために、利用可能なパラメーターの範囲(透明点、スメクチック−ネマチックの相転移または融点、粘度、誘電パラメーター、弾性パラメーター)を一層広げることが、至急望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、特に、前述の不都合を有していないか、有していたとしてもより少ない程度であるような媒体、特にMLC、TNまたはSTNディスプレイ用の媒体であって、好ましくは同時に非常に高い比抵抗値、低しきい電圧を有するものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的は、本発明の媒体をディスプレイの中で使用することにより達成されることが見出された。
【0021】
本発明は、従って、極性化合物の混合物に基づいた液晶媒体であって、下記式Iの化合物の1種または2種以上を含有する液晶媒体に関する。
【0022】
【化1】

【0023】
式中、
は、ハロゲン置換または無置換の1〜15個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を表し、但し、これらの基において1または2以上のCH基は、O原子同士が直接結合しないことを条件として、−C≡C−、−CH=CH−、−O−、−CO−O−、−O−CO−で置換されていても良く、
Xは、F、Cl、CN、SF、または炭素数6までのハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アルコキシ基もしくはハロゲン化アルケニルオキシ基であり、
およびLは、互いに独立して、それぞれHまたはFを表す。
【0024】
正の誘電異方性の極性化合物の混合物に基づいた発明の混合物は、それらが、低い回転粘度(γ1)および高いΔn値によって際立っているので、好ましくはモニターおよびテレビ用途に適している。発明の混合物は、特にTN TFTモニター用途、5Vドライバーまたはより高電圧ドライバーを備えた用途に適している。式Iの化合物の広いネマチック相および非常によいγ1/TNI比により、発明の混合物はTN−TFTおよびIPS用途に特に適している。
【0025】
式Iの化合物は広範囲の応用を有しており、それらのいくつかは公開公報EP 0727406 A1、WO 95/30723およびEP 0571916 A1に知られている。置換基の選択により、液晶媒体が大部分が構成されるベース材料として働かせることができる。しかし、例えば、このタイプの誘電体の誘電および/または光学異方性を修正するため、および/またはそのしきい電圧および/またはその粘度を最適化するために、他の化合物のクラスからの液晶ベース材料に式Iの化合物を添加することも可能である。
【0026】
純粋な状態では、式Iの化合物は無色であり、電気光学の使用のために好ましい温度範囲で液晶中間相を形成する。それらは化学的、熱的に安定であり、また光に対して安定である。
【0027】
式Iの化合物において、Xは好ましくは、F、Cl、CN、NCS、CF、SF、CFH、OCF、OCFH、OCFHCF、OCFHCFH、OCFHCFH、OCFCH、OCFCFH、OCFCFH、OCFCFCFH、OCFCFCFH、OCFHCFCF、OCFHCFCFH、OCFHCFHCF、OCHCFCF、OCFCFCF、OCFCFHCFH、OCFCHCFH、OCFHCFCFH、OCFHCFHCFH、OCFHCHCF、OCHCFHCF、OCHCFCFH、OCFCFHCH、OCFCHCFH、OCFHCFCH、OCFHCFHCFH、OCFHCHCF、OCHCFCFH、OCHCFHCFH、OCFCHCH、OCFHCFHCH、OCFHCHCFH、OCHCFCH、OCHCFHCFH、OCHCHCFH、OCHCHCH、OCHCFHCH、OCHCHCFH、OCClFCF、OCClFCClF、OCClFCFH、OCFHCClF、OCClFCFH、OCClFCClF、OCFCClH、OCFCClH、OCFCClF、OCFCClFH、OCFCClF、OCFCFCClF、OCFCFCClF、OCClFCFCF、OCClFCFCFH、OCClFCFCClF、OCClFCFHCF、OCClFCClFCF、OCClCFCF、OCClHCFCF、OCClFCFCF、OCClFCClFCF、OCFCClFCFH、OCFCFCClF、OCFCClCFH、OCFCHCClF、OCClFCFCFH、OCFHCFCClF、OCClFCFHCFH、OCClFCClFCFH、OCFHCFHCClF、OCClFCHCF、OCFHCClCF、OCClCFHCF、OCHCClFCF、OCClCFCFH、OCHCFCClF、OCFCClFCH、OCFCFHCClH、OCFCClCFH、OCFCHCClF、OCClFCFCH、OCFHCFCClH、OCClFCClFCFH、OCFHCFHCClF、OCClFCHCF、OCFHCClCF、OCClCFCFH、OCHCFCClF、OCClCFHCFH、OCClHCClFCFH、OCFCClHCClH、OCFCHCClH、OCClFCFHCH、OCFCClFCClH、OCClFCHCFH、OCFHCClCFH、OCClCFCH、OCHCFCClH、OCClCFHCFH、OCHCClFCFCl、OCHCHCFH、OCClHCClHCFH、OCHCClCFH、OCClFCHCH、OCFHCHCClH、OCClHCFHCClH、OCHCFHCClH、OCClCHCFH、OCHCClCFH、CH=CF、CF=CF、OCH=CF、OCF=CF、CH=CHF、OCH=CHF、CF=CHF、OCF=CHF、特に、F、Cl、CN、NCS、CF、SF、CFH、OCF、OCFH、OCFHCF、C、C、OCFHCFH、OCFHCFH、OCFCH、OCFCFH、OCFCFH、OCFCFCFH、OCFCFCFH、OCFHCFCF、OCFHCFCFH、OCFCFCFまたはOCFCHFCFである。
【0028】
式Iの化合物において、Xは好ましくはFまたはOCFである。LおよびLは好ましくはHである。Rは好ましくはアルケニルである。
【0029】
式I中、Rがアルキル基および/またはアルコキシ基であるときは、それは直鎖でも分岐でもよい。好ましくは直鎖であり、2、3、4、5、6または7個の炭素液原子を有しており、従って、好ましくは、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシまたはヘプチルオキシ、更にメチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、メトキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、トリデシルオキシまたはテトラデシルオキシである。
【0030】
オキサアルキルは、好ましくは直鎖2−オキサプロピル(=メトキシメチル)、2−(=エトキシメチル)もしくは3−オキサブチル(=2−メトキシエチル)、2−,3−もしくは4−オキサペンチル、2−,3−,4−もしくは5−オキサヘキシル、2−,3−,4−,5−もしくは6−オキサヘプチル、2−,3−,4−,5−,6−もしくは7−オキサオクチル、2−,3−,4−,5−,6−,7−もしくは8−オキサノニル、または2−,3−,4−,5−,6−,7−,8−もしくは9−オキサデシルである。
【0031】
もし、Rが、1つのCH基が−CH=CH−で置き換えられたアルキル基である場合、これは直鎖でも分岐であってもよい。好ましくは直鎖であり、2〜10個の炭素原子を有する。従って、それらは特にビニル、プロプ−1−もしくは−2−エニル、ブト−1−,−2−もしくは−3−エニル、ペント−1−,−2−,−3−もしくは−4−エニル、ヘクス−1−,2−,−3−,−4−もしくは−5−エニル、ヘプト−1−,−2−,−3−,−4−,−5−もしくは−6−エニル、オクト−1−,−2−,−3−,−4−,−5−,−6−もしくは−7−エニル、ノノ−1−,−2−,−3−,−4−,−5−,−6−,−7−もしくは−8−エニル、またはデク−1−,−2−,−3−,−4−,−5−,−6−,−7−,−8−もしくは−9−エニルである。Rは好ましくは、CH=CH、CHCH=CH、CH=CHCHCHまたはCHCH=CHCHCHである。
【0032】
もし、Rが、1つのCH基が−O−で置き換えられ、1つのCH基が−CO−で置き換えられたアルキル基である場合、これらは好ましくは隣接している。これらは、従って、アシルオキシ基−COO−またはオキシカルボニル基−OCO−を含有する。これらは、好ましくは直鎖であり、2〜6個の炭素原子を有する。従って、それらは特に、アセトキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、アセトキシメチル、プロピオニルオキシメチル、ブチリルオキシメチル、ペンタノイルオキシメチルメチル、2−アセトキシエチル、2−プロピオニルオキシエチル、2−ブチリルオキシエチル、3−アセトキシプロピル、3−プロピオニルオキシプロピル、4−アセトキシブチル、メトキシカルボニル、エトキシルカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチル、プロポキシカルボニルメチル、ブトキシカルボニルメチル、2−(メトキシカルボニル)エチル、2−(エトキシカルボニル)エチル、2−(プロポキシカルボニル)エチル、3−(メトキシカルボニル)プロピル、3−(エトキシカルボニル)プロピルまたは4−(メトキシカルボニル)ブチルである。
【0033】
もし、Rが、1つのCH基が無置換または置換された−CH=CH−で置き換えられ、隣接する1つのCH基が−CO−またはCO−OまたはO−COで置き換えられたアルキル基である場合、これらは直鎖でも分岐でもよい。それば、好ましくは、直鎖であり4〜12個の炭素原子を有する。従って、それは特に、アクリロイルオキシメチル、2−アクリロイルオキシエチル、3−アクリロイルオキシプロピル、4−アクリロイルオキシブチル、5−アクリロイルオキシペンチル、6−アクリロイルオキシヘキシル、7−アクリロイルオキシヘプチル、8−アクリロイルオキシオクチル、9−アクリロイルオキシノニル、10−アクリロイルオキシデシル、メタクリロイルオキシメチル、2−メタクリロイルオキシエチル、3−メタクリロイルオキシプロピル、4−メタクリロイルオキシブチル、5−メタクリロイルオキシペンチル、6−メタクリロイルオキシヘキシル、7−メタクリロイルオキシヘプチル、8−メタクリロイルオキシオクチルまたは9−メタクリロイルオキシノニルである。
【0034】
もし、Rが、CNまたはCFでモノ置換されたアルキルまたはアルケニルであるときは、これらの基は好ましくは直鎖である。CNまたはCFによる置換はどの任意の位置でよい。
【0035】
もし、Rが、ハロゲンで少なくともモノ置換されたアルキルまたはアルケニルであるときは、これらの基は好ましくは直鎖であり、ハロゲンは好ましくはFまたはClである。ポリ置換の場合は、ハロゲンは好ましくはFである。その結果の基は、過(完全)フッ化された基を含む。モノ置換の場合、フッ素または塩素の置換記載のはどの望みの位置にあってもよいが、好ましくはω−位である。
【0036】
分岐した翼の基(wing group)Rを含有する化合物は、従来の液晶ベース材料中での良好な溶解性のために、しかし、それらが光学活性である場合には、特にキラルドーパントとして、しばしば重要である。このタイプのスメクチック化合物は、強誘電材料の成分として適している。
【0037】
このタイプの分岐した基は、一般に、1以下の鎖分岐を含む。好ましい分岐基Rは、イソプロピル、2−ブチル(=1−メチルプロピル)、イソブチル(=2−メチルプロピル)、2−メチルブチル、イソペンチル(=3−メチルブチル)、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、イソプロポキシ、2−メチルプロポキシ、2−メチルブトキシ、3−メチルブトキシ、2−メチルペントキシ、3−メチルペントキシ、2−エチルヘキシルオキシ、1−メチルヘキシルオキシおよび1−メチルヘプチルオキシである。
【0038】
もし、Rが、2つ以上のCH基が−O−および/または−CO−O−で置き換えられたアルキル基である場合、これらは直鎖でも分岐でもよい。好ましくは分岐しており、3〜12個の炭素原子を有する。従って、これは特に、ビスカルボキシメチル、2,2−ビスカルボキシエチル、3,3−ビスカルボキシプロピル、4,4−ビスカルボキシブチル、5,5−ビスカルボキシペンチル、6,6−ビスカルボキシヘキシル、7,7−ビスカルボキシヘプチル、8,8−ビスカルボキシオクチル、9,9−ビスカルボキシノニル、10,10−ビスカルボキシデシル、ビス(メトキシカルボニル)メチル、2,2−ビス(メトキシカルボニル)エチル、3,3−ビス(メトキシカルボニル)プロピル、4,4−ビス(メトキシカルボニル)ブチル、5,5−ビス(メトキシカルボニル)ペンチル、6,6−ビス(メトキシカルボニル)ヘキシル、7,7−ビス(メトキシカルボニル)ヘプチル、8,8−ビス(メトキシカルボニル)オクチル、ビス(エトキシカルボニル)メチル、2,2−ビス(エトキシカルボニル)エチル、3,3−ビス(エトキシカルボニル)プロピル、4,4−ビス(エトキシカルボニル)ブチルまたは5,5−ビス(エトキシカルボニル)ペンチルである。
【0039】
式Iの化合物は、好ましくはそれ自身文献に公知の方法で合成される(例えば一般的文献、Houben-Weyl, Methoden der
Organischen Chemie [Methods of Organic Chemistry], Georg-Thieme-Verlag,
Stuttgart等)。正確にはこのような合成に知られており適した条件が選ばれる。また、ここにはより詳しくは述べないが、それ自身公知の異なる方法によることもできる。式Iの化合物は、例えばWO95/30723に記載された方法により合成することができる。
【0040】
本発明は、またこのタイプの液晶媒体を含む電気光学ディスプレイ(特に、セル、各ピクセルをスイッチングするための外板上の集積非線形素子、および正の誘電異方性および高比抵抗のネマチック液晶混合物を、外枠と共に構成する2つの平行の外板を有するSTNまたはMLCディスプレイ)に関し、またこれらの媒体の電気光学目的への使用に関する。
【0041】
本発明の液晶混合物により、利用可能なパラメーター範囲を著しく広げることが可能である。
【0042】
透明点、低温での粘度、熱およびUV安定性および誘電異方性の達成可能な組合わせは、先行技術の従来材料よりはるかに優れている。
【0043】
高い透明点、低温でのネマチック相および高い正のΔεに対する要求は、従来は不十分な程度までしか達成できなかった。例えばZLI−3119のようなシステムは、匹敵する透明点、匹敵する好ましい粘度を有するが、わずかに+3のΔεしか有していない。他の混合物系では、匹敵する粘度とΔε値を有しているが、60℃の領域に透明点を有しているに過ぎない。
【0044】
本発明の液晶混合物は、−20℃、好ましくは−30℃まで、特に好ましくは−40℃までネマチック相を保持しながら、60℃を超える、好ましくは65℃を超える、特に好ましくは70℃を超える透明点を可能にして、同時に6以上、好ましくは8以上の誘電異方性Δε、および高い比抵抗を達成可能として、優れたSTNおよびMLCディスプレイを達成可能とする。特に、この混合物は、低電圧駆動によって特徴づけられる。TNしきい値は、一般に2.0V未満であり、好ましくは1.9V未満であり、特に好ましくは1.8V以下である。
【0045】
言うまでもなく、本発明の混合物成分の適切な選択により、他の有利な性質を保持しながら、より高いしきい電圧でより高い透明点(例えば110℃を超える)が達成されるか、またはより低いしきい電圧でより低い透明点が達成されることも可能である。粘度の上昇をわずかにとどめながら、より大きなΔεと従ってより低いしきい電圧の達成も同じように可能である。本発明のMLCディスプレイは、好ましくはグーチ・タリーの第1次透過極小で動作させることが好ましい(C.H. Gooch and H.A. Tarry, Electron. Lett. 10, 2-4, 1974; C.H. Gooch and H.A. Tarry, Appl. Phys., Vol. 8, 1575-1584, 1975)。ここで、例えば特性曲線の急峻性およびコントラストの低視野角依存性のような特に好ましい電気光学特性(ドイツ特許3022818)に加えて、より小さな誘電異方性でも、第2次透過極小での類似のディスプレイと同じしきい電圧にするのに十分である。これにより、第1次透過極小で本発明の混合物を使用することにより、シアノ化合物を含む混合物の場合に比べて、極めて高い比抵抗値を達成することができる。個々の成分とその量の適切な選択を通して、当業者は簡単なルーチンの方法によりMLCのあらかじめ指定された層の厚さに必要な複屈折率を定めることができる。
【0046】
20℃における流動粘度ν20は、好ましくは60mm・s−1未満であり、特に好ましくは50mm・s−1未満である。本発明の混合物の20℃における回転粘度γは、好ましくは120mPa・s未満であり、特に好ましくは100mPa・s未満であり、極めて好ましくは80mPa・s未満である。ネマチック相範囲は、少なくとも90度あることが好ましく、さらに少なくとも100度あることが好ましい。この範囲は少なくとも−20℃から+80℃にわたることが好ましい。
【0047】
液晶ディスプレイにおいては、短応答時間が望まれる。これは特にビデオ再生が可能なディスプレイに当てはまる。このタイプのディスプレイでは、応答時間(合計:ton+toff)は大きくても25ミリ秒が要求される。応答時間の上限は画像リフレッシュ周波数により決定される。
【0048】
電圧保持率(HR)の測定[S. Matsumoto et al., Liquid Crystals 5, 1320 (1989);
K. Niwa et al., Proc. SID Conference, San Francisco, June 1984, p. 304 (1984);
G. Weber et al., Liquid Crystals 5, 1381 (1989)]により、式Iの化合物を含有する本発明の混合物は、式:
【0049】
【化2】

【0050】
のシアノフェニルシクロヘキサン類や、式:
【0051】
【化3】

【0052】
のエステル化合物類を式Iの化合物の代わりに含有する混合物に比べて、高い温度でもHRの低下が著しく小さいことが示された。
【0053】
本発明の混合物のUV安定性は極めて優れている。即ち、それらはUV照射によってもHRの低下が著しく小さい。
【0054】
本発明の混合物は、ニトリル化合物を、好ましくはほとんど含まないか(≦10wt%)、全く含まない。本発明の混合物の保持率の値は、20℃において好ましくは98%より大きく、非常に好ましくは99%より大きい。
【0055】
式Iの化合物の特に好ましい化合物は、式I−1〜I−15である。
【0056】
【化4】

【0057】
【化5】

【0058】
ここで、Rは式Iで定義されたとおりである。
【0059】
これらの好ましい化合物の中で、特にI−1、I−2、I−3およびI−4が好ましく、さらに、式I−1およびI−2が好ましい。
【0060】
式I−1〜I−15の化合物の中で、Rは好ましくはアルケニルであり、特に1−アルケニルまたは3−アルケニルである。Rは特に好ましくはCHCH=CHまたはCH=CHである。
【0061】
好ましい実施形態を次に示す。
【0062】
−好ましい実施形態において、媒体は、式I−1〜I−15の化合物の1、2または3種以上を含む。
【0063】
−好ましい実施形態において、媒体は、化合物:
【0064】
【化6】

を含む。
【0065】
−好ましい実施形態において、媒体は、好ましくは1種または2種以上の式Kの2環化合物を含む。
【0066】
【化7】

【0067】
ここで、R、X、LおよびLは上で定義されたとおりであり、Zは、単結合、−COO−、−OOC−、−OCF−、−C−、−CFO−、−CF=CF−、−C−、−(CH−、−OCH−または−CH−である。
【0068】
混合物中における化合物Kの割合は、5〜40%、好ましくは5〜30%、特に5〜20%である。
【0069】
特に好ましい2環化合物は式K−1〜K−27の化合物である。
【0070】
【化8】

【0071】
【化9】

【0072】
【化10】

【0073】
−好ましい実施形態において、媒体は、さらに付加的に一般式II〜VIからなる群より選ばれる1種または2種以上の化合物を含有する。
【0074】
【化11】

【0075】
式中、各基は次の意味を有する。
【0076】
は、それぞれ炭素数9までのn−アルキル、オキサアルキル、アルコキシ、フルオロアルキル、アルケニルオキシまたはアルケニルであり、
は、F、Cl、それぞれ炭素数6までのハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルケニルオキシまたはハロゲン化アルコキシであり、
は、−C−、−CF=CF−、−C−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−CFO−または−OCF−であり、
〜Yは、互いに独立して、それぞれHまたはFであり、
rは、0または1である。
【0077】
式IVの化合物は好ましくは次の化合物である。
【0078】
【化12】

【0079】
−好ましい実施形態において、媒体は、追加して一般式VII〜XIIIからなる群より選ばれる1種または2種以上の化合物を含有する。
【0080】
【化13】

【0081】
式中、R、XおよびY〜Yは互いに独立して、請求項3に定義されたとおりである。Xは好ましくは、F、Cl、CF、OCFまたはOCHFである。Rは好ましくは、それぞれ6までの炭素原子を有するアルキル、オキサアルキル、フルオロアルキルあるいはアルケニルである。
【0082】
−好ましい実施形態において、媒体は、追加して式E−a〜E−dの化合物の1種または2種以上を含む。
【0083】
【化14】

【0084】
式中、Rは請求項3で定義されたとおりである。
【0085】
−好ましい実施形態において、式E−a〜E−dの化合物の割合は、好ましくは10〜30重量%、特に15〜25重量%である。
【0086】
−好ましい実施形態において、混合物全体中における式I〜VIの化合物の割合は、合わせて少なくとも50重量%である。
【0087】
−好ましい実施形態において、混合物全体中における式Iの化合物の割合は、0.5〜40重量%、特に好ましくは1〜30重量%である。
【0088】
−好ましい実施形態において、混合物全体中における式II〜VIの化合物の割合は、30〜80重量%である。
【0089】
−好ましい実施形態において、
【0090】
【化15】

【0091】
である。
【0092】
−好ましい実施形態において、媒体は、式II、III、IV、Vおよび/またはVIの化合物を含有する。
【0093】
−好ましい実施形態において、Rは、2〜7個の炭素原子を有する直鎖アルキルまたはアルケニルである。
【0094】
−好ましい実施形態において、媒体は、式I〜VIおよびXIIIの化合物から実質的になる。
【0095】
−好ましい実施形態において、媒体は、好ましくは一般式XIV〜XVIIIからなる群より選ばれるさらなる化合物を含有する。
【0096】
【化16】

【0097】
式中、RおよびXは上で定義されたとおりである。1,4−フェニレン環は、付加的にCN、塩素またはフッ素によって置換されていてもよい。1,4−フェニレン環は、好ましくはフッ素原子によりモノ置換またはポリ置換されている。
【0098】
−好ましい実施形態において、媒体は、追加して1、2、3、または4種以上、好ましくは2または3種の次の式の化合物を含む。
【0099】
【化17】

【0100】
式中、「alkyl」および「alkyl」は下に定義されるとおりである。発明の混合物中における式O1および/またはO2の化合物の割合は、好ましくは5〜10重量%である。
【0101】
−好ましい実施形態において、媒体は、好ましくは化合物IVaを5〜35重量%含む。
【0102】
−好ましい実施形態において、媒体は、好ましくはXがFまたはOCFである式IVaの1、2または3つの化合物を含む。
【0103】
−好ましい実施形態において、媒体は、好ましくは式IIa〜IIgの化合物の1種または2種以上を含む。
【0104】
【化18】

【0105】
式中、Rは上で定義されたとおりである。式IIa〜IIgの化合物の中で、Rは好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチルまたはn−ペンチルである。
【0106】
−好ましい実施形態において、媒体は、好ましくは式Q−1〜Q−15のCFOブリッジを有する2環および/または3環化合物の1種または2種以上を含む。
【0107】
【化19】

【0108】
【化20】

【0109】
式中、Rは上で定義されたとおりである。
【0110】
特にQ−12、加えてQ−6の化合物が好ましい。
【0111】
発明の混合物は、好ましくは式Q−1〜Q−15の化合物を、3〜20%、特に3〜15%含有する。
【0112】
−好ましい実施形態において、重量比(I):(II+III+IV+V+VI)は、1:10から10:1である。
【0113】
−好ましい実施形態において、媒体は、一般的式I〜XIIIからなる群より選ばれる化合物から実質的になる。
【0114】
−好ましい実施形態において、Xがフッ素で、RがCH、C、n−C、n−Cまたはn−C11である式IVbおよび/またはIVcの化合物の混合物全体中での割合が、2〜20重量%、特に2〜15重量%である。
【0115】
−好ましい実施形態において、媒体は、好ましくはRがメチルである式II〜VIの化合物を含む。
【0116】
媒体は特に好ましくは、次の化合物を含む。
【0117】
【化21】

【0118】
−好ましい実施形態において、好ましくは次の式のジオキサン化合物の1、2または3種以上、好ましくは1または2種を含有する。
【0119】
【化22】

【0120】
−好ましい実施形態において、媒体は追加して式Z−1〜Z−8の2環化合物の1、2または3種以上を含有する。
【0121】
【化23】

【0122】
式中、R1aおよびR2aは互いに独立してH、CH、Cまたはn−Cである。R、alkylおよびalkylは請求項3または下で定義されるとおりである。
【0123】
特に好ましい式Z−5の化合物は次のものである。
【0124】
【化24】

【0125】
これら2環化合物の中で、特に好ましいものは、Z−1、Z−2、Z−5、Z−6、Z−7およびZ−8である。発明の混合物は、好ましくは式Z−1〜Z−8の化合物を、5〜40%、特に5〜30%含む。
【0126】
−好ましい実施形態において、媒体は追加して式P−1〜P−8の化合物の1または2種以上を含む。
【0127】
【化25】

【0128】
式中、Rは上で定義されたとおりである。
【0129】
−好ましい実施形態において、媒体は追加して式AN1〜AN11の縮合環を有する化合物の1または2種以上を含む。
【0130】
【化26】

【0131】
【化27】

【0132】
式中、Rは上で定義されたとおりである。
【0133】
従来の液晶材料(しかし、特に式II、III、IV、Vおよび/またはVIの1種または2種以上の化合物)に対して、式Iの化合物の比較的少量の混合ですら、しきい電圧の低下および低複屈折率の達成にきわめて効果があり、しかも広いネマチック相であって同時に低いスメクチック−ネマチックの遷移温度が観察され、貯蔵安定性が改善されることが見出された。特に好ましい媒体は、式Iの化合物の1種または2種以上に加えて、式IVの1種または2種以上の化合物を含み、特にXがF、OCHFまたはOCFである式IVaを含むことが好ましい。式I〜VIの化合物は無色で、安定で、互いにおよび他の液晶材料と容易に混和する。さらに、本発明の混合物は、非常に高い透明点、回転粘度γ1の値が比較的低いことで際立っている。
【0134】
用語「アルキル:alkyl」または「アルキル:alkyl」は、炭素数1〜7を有する直鎖および分岐のアルキル基を包含し、特に直鎖基のメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびヘプチルである。炭素数1〜5を有する基が一般に好ましい。
【0135】
用語「アルケニル(alkenyl)」は、炭素数2〜7の直鎖および分岐アルケニル基を含み、特に直鎖基である。特に好ましいアルケニル基は、C−C−1E−アルケニル、C−C−3E−アルケニル、C−C−4−アルケニル、C−C−5−アルケニルおよびC−6−アルケニル、特にC−C−1E−アルケニル、C−C−3E−アルケニルおよびC−C−4−アルケニルである。好ましいアルケニルとしては、ビニル、1E−プロペニル、1E−ブテニル、1E−ペンテニル、1E−ヘキセニル、1E−ヘプテニル、3−ブテニル、3E−ペンテニル、3E−ヘキセニル、3E−ヘプテニル、4−ペンテニル、4Z−ヘキセニル、4E−ヘキセニル、4Z−ヘプテニル、5−ヘキセニル、6−ヘプテニル等を挙げることができる。5までの炭素原子を有する基が一般に好まれる。
【0136】
用語「フルオロアルキル」は、好ましくは、末端フッ素を有する直鎖基、即ち、フルオロメチル、2−フルオロエチル、3−フルオロプロピル、4−フルオロブチル、5−フルオロペンチル、6−フルオロヘキシルおよび7−フルオロヘプチルを含む。しかしながら、フッ素のその他の置換位置を除外するものではない。
【0137】
用語「オキサアルキル」は、好ましくは式C2n+1−O−(CHの直鎖基を含む。但し、nおよびmは互いに独立してそれぞれ1〜6である。好ましくはn=1であり、mは1〜6である。
【0138】
とXの意味の適切な選択により、アドレス時間、しきい電圧、透過特性曲線の急峻性等を所望の様式に修正することができる。例えば、1E−アルケニル基、3E−アルケニル基、2E−アルケニルオキシ基などを使用すると、アルキルまたはアルコキシ基と比較して、一般により短いアドレス時間、ネマチック性向の改善、および弾性定数k33(ベンド)とk11(スプレイ)のより高い比率を達成することができる。4−アルケニル基、3−アルケニル基等は、アルキルおよびアルコキシ基と比較して、一般に低しきい電圧およびより小さなk33/k11値を与える。
【0139】
CHCH基は、単結合の場合と比較して、一般により高いk33/k11値を与える。k33/k11がより高いと、例えば90°ねじれのTNセルにおいてよりなだらかな透過曲線(グレイスケールを達成するため)とすることが容易になり、STN、SBEおよびOMIセルにおいては、より急峻な透過曲線(より大きな時分割駆動)が容易になり、また逆も可能である。
【0140】
式IおよびII+III+IV+V+VIの化合物の最適な混合比は、実質上望まれる特性、式I、II、III、IV、Vおよび/またはVIの成分の選択、およびさらに存在しているかもしれないその他の成分の選択に依存する。前述の与えられた範囲内での適切な混合比は、場合ごとに容易に決めることができる。
【0141】
本発明の混合物で、式I〜XIIIの化合物の合計量は、決定的なものではない。したがって、混合物は、様々な特性の最適化のためにさらに1種または2種以上の成分を含むことができる。しかしながら、アドレス時間およびしきい電圧に対する観察される効果は、一般に式I〜XIIIの化合物の合計濃度がより大きい方がより大きい。
【0142】
特に好ましい実施形態において、本発明の媒体は、Xが、F、OCF、OCHF、OCH=CF、OCF=CFまたはOCF−CFHである式II〜VI(好ましくはII、IIIおよび/またはIV、特にIVa)の化合物を含む。式Iの化合物との好ましいシナジー効果により特に有利な特性が得られる。特に、式Iの化合物を含む混合物、そして特に式IVaの化合物を含む混合物は、低しきい電圧で際立っている。
【0143】
本発明の媒体に使用される式I〜XVIIIおよびそれらのサブ式の個々の化合物は、公知であるか、または公知の化合物に類似の方法により合成することができる。
【0144】
偏光板、電極基板および表面処理電極を伴う本発明のMLCディスプレイの構成は、このタイプのディスプレイの従来の構成に対応する。「従来の構成」という用語は、ここでは広い意味で用いられ、MLCディスプレイに関するすべての誘導・変形を含み、特にポリ−Si TFTまたはMIMに基づくマトリックスディスプレイ素子を含む。
【0145】
しかしながら、本発明のディスプレイと従来のツイストネマチックセルに基づくディスプレイの大きな相違点は、液晶層の液晶パラメーターの選択にある。
【0146】
本発明に従って使用できる液晶混合物は、それ自体公知の方法で調製される。一般に、より少ない量で使用される成分が、主要な組成を構成する成分中で、好ましくは加温されて溶解される。さらに、例えばアセトン、クロロホルムまたはメタノール等の有機溶媒の液晶成分溶液を混合して、完全に混合した後、例えば蒸留によって溶媒を再度除去することも可能である。
【0147】
誘電体は、当業者に公知で文献記載の添加剤をさらに含んでもよい。例えば0〜15%で、多色性染料、UV安定剤、酸化防止剤またはキラルドーパントを加えることができる。適切なドーパントおよび安定剤は表Cおよび表Dにリストされている。
【0148】
Cは結晶相、Sはスメクチック相、SはスメクチックC相、Nはネマチック相およびIはアイソトロピック相を表す。
【0149】
10は、10%の透過(基板表面に垂直な視角)の電圧を表す。tonおよびtoffは、V10の2倍に対応する動作電圧におけるスイッチオン時間およびスイッチオフ時間を表す。Δnは光学異方性を表す。Δεは、誘電異方性(Δε=ε‖−ε⊥、ここでε‖は分子軸に平行な誘電率、ε⊥は垂直の誘電率を表す。)を表わす。電気光学のデータは、特に別に述べない限り20℃で、TNセルにおいて第1次透過極小で(すなわち、0.5μmのd・Δn値で)測定した。光学的データは、特に別に述べない限り20℃で測定した。
【0150】
本出願および以下に示す例において、液晶化合物の構造は頭文字で示されており、その化学式への変換は下記表AおよびBに従って行われる。基C2n+1およびC2m+1は全部が、n個またはm個の炭素原子をそれぞれ有する直鎖状アルキル基である。ここでnおよびmは整数であり、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12である。表Bのコードは、それ自体で明らかである。表Aには、親構造にかかわる頭文字のみが示されている。それぞれの場合において、この親構造の頭文字の後に、ダッシュにより分離されて、置換基R1*、R2*、L1*およびL2*のためのコードが続く。
【0151】
【表1】

【0152】
好適な混合物成分を、表Aおよび表Bに示す。
【0153】
表A
【0154】
【化28】

【0155】
【化29】

【0156】
【化30】

【0157】
表B:
【0158】
【化31】

【0159】
【化32】

【0160】
【化33】

【0161】
【化34】

【0162】
特に、式Iの化合物に加えて、表Bからの少なくとも1、2、3または4種の化合物を含む液晶混合物が好ましい。
【0163】
表C:
表Cは、一般に本発明の混合物に添加される使用可能なドーパントを示す。ドーパントは、好ましくは混合物に対して、0.1から10重量%、特に0.1から6重量%の量で添加される。
【0164】
【化35】

【0165】
【化36】

【0166】
表D:
例えば本発明の混合物に、最大10重量%まで、好ましくは0.001〜8重量%、特に0.05〜5重量%で、添加することができる安定剤を下に示す。
【0167】
【化37】

【0168】
【化38】

【0169】
【化39】

【0170】
【化40】

【0171】
下記の例は、制限することなく、本発明を説明するものである。上および下において、パーセンテージは重量パーセントである。温度はすべて摂氏で示される。m.p.は融点を表わし、cl.p.は透明点を表わす。さらにまた、C=結晶状態、N=ネマチック相、S=スメクチック相、およびI=アイソトロピック相である。これらの記号間のデータは相転移温度である。Δnは光学異方性、nは屈折率を表わす(589nm、20℃)。流動粘度ν20(mm/sec)、回転粘度γ(mPa・s)はそれぞれ20℃で測定した。
【0172】
【表2】

【0173】
【表3】

【0174】
【表4】

【0175】
【表5】

【0176】
【表6】

【0177】
【表7】

【0178】
【表8】

【0179】
【表9】

【0180】
【表10】

【0181】
【表11】

【0182】
【表12】

【0183】
【表13】

【0184】
【表14】

【0185】
【表15】

【0186】
【表16】

【0187】
【表17】

【0188】
【表18】

【0189】
【表19】

【0190】
【表20】

【0191】
【表21】

【0192】
【表22】

【0193】
【表23】

【0194】
【表24】

【0195】
【表25】

【0196】
【表26】

【0197】
【表27】

【0198】
【表28】

【0199】
【表29】

【0200】
【表30】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性化合物の混合物に基づいた液晶媒体であって、
式Iで示される化合物の1種または2種以上を含有することを特徴とする液晶媒体。
【化1】


(式中、
は、ハロゲン置換または無置換の1〜15個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を表し、但し、これらの基において1または2以上のCH基は、O原子同士が直接結合しないことを条件として、−C≡C−、−CH=CH−、−O−、−CO−O−または−O−CO−で置換されていても良く、
Xは、F、Cl、CNまたは炭素数6までのハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アルコキシ基もしくはハロゲン化アルケニルオキシ基であり、
およびLは、互いに独立して、それぞれHまたはFを表す。)
【請求項2】
式Iの化合物中で、R=アルケニルであることを特徴とする請求項1記載の液晶媒体。
【請求項3】
式I−1〜I−15の化合物の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2記載の液晶媒体。
【化2】

【化3】

(式中、Rは請求項1で定義されたとおりである。)
【請求項4】
式Z−1〜Z−8の2環化合物の1、2または3種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化4】

(式中、R1aおよびR2aは互いに独立してH、CH、Cまたはn−Cであり、alkylおよびalkylは互いに独立して、1〜7個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基である。
【請求項5】
式Q−1〜Q−15の化合物の1種または2種以上を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化5】

【化6】

(式中、Rは、それぞれ9個までの炭素原子を有するn−アルキル、オキサアルキル、アルコキシ、アルケニルオキシ、フルオロアルキルまたはアルケニルである。)
【請求項6】
さらに、一般式II、III、IV、VおよびVIからなる群より選ばれる1種または2種以上の化合物を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化7】

(式中、各基は次の意味を有する。
は、それぞれ炭素数9までのn−アルキル、オキサアルキル、アルコキシ、アルケニルオキシ、フルオロアルキルまたはアルケニルであり、
は、F、Cl、それぞれ炭素数6までのハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルケニルオキシまたはハロゲン化アルコキシであり、
は、−C−、−CF=CF−、−C−、−(CH−、−OCH−、−CHO−、−CFO−または−OCF−であり、
〜Yは、互いに独立して、それぞれHまたはFであり、
rは、0または1である。)
【請求項7】
式I〜VIの化合物の合計の割合が、混合物全体中で少なくとも50重量%であることを特徴とする請求項6記載の液晶媒体。
【請求項8】
式K−1〜K−27の化合物の1または2種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化8】

【化9】

【化10】

(式中、Rは請求項6で定義したとおりである。)
【請求項9】
式IIa〜IIgの化合物の1または2種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化11】

(式中、Rは請求項6で定義したとおりである。)
【請求項10】
式O1およびO2の化合物の1または2種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化12】

(式中、alkylおよびalkylは、互いに独立して、1〜7個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基である。)
【請求項11】
式Iの化合物の割合が、混合物全体中で、0.5〜40重量%であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の液晶媒体の電気光学用途における使用。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか1項に記載の液晶媒体を含む電気光学液晶ディスプレイ。

【公表番号】特表2007−504340(P2007−504340A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529835(P2006−529835)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005234
【国際公開番号】WO2004/104137
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】