説明

液晶材料、光部品及びディスプレー並びに液晶材料の製造方法

【課題】偏波の影響を受けず、かつ通信波長帯においても十分な消光比を実現することができる液晶材料、光部品及びディスプレー並びに液晶材料の製造方法を提供する。
【解決手段】ネマチック液晶である母液晶3と、前記母液晶3をランダムに配向させる光重合性モノマと、前記光重合性モノマの光重合を加速させる光重合開始剤と、特定の波長の光について散乱もしくは吸収又は散乱及び吸収の両方を増強する二色性色素4とを混合し攪拌して得た混合物に紫外線を照射して光重合させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶材料、光部品及びディスプレー並びに液晶材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に可視光域で使用される従来の液晶ディスプレー(以下、LCDという)は、主としてネマチック液晶を用いており、消光比を得るためにネマチック液晶素子の両側に偏光子と検光子を配置して使用されている(下記非特許文献1参照)。
【0003】
図3は、従来のLCDの構造を示した模式図である。
図3に示すように、従来のLCDは、上面側にガラス基板101aと下面側にガラス基板101bを備えている。ガラス基板101aの下面には透明電極102aを備えており、ガラス基板101bの上面には透明電極102bを備えている。透明電極102aと透明電極102bの間には、液晶103を備えている。ガラス基板101bの下面には偏光子104を備えており、ガラス基板101aの上面には検光子105を備えている。
【0004】
なお、図3においては図示は省略したが、透明電極102aと透明電極102bの液晶103側には配向膜がコートされている。液晶103は一般的なネマチック液晶であり、上下の配向処理については、上面側が図3における紙面左右方向となっており、下面側が図3における紙面裏表方向となっているため、互いに直交する。すなわち、液晶103はツイストネマチック・モードで動作する。また、偏光子104と検光子105の偏光方向は、下面側の配向の方向に合わせており、すなわち平行ニコルである。
【0005】
図3(a)は電圧が印加されていない状態(電圧オフ)を示している。液晶103の分子は配向に支配されており、ガラス基板101aからガラス基板101bに向かって、緩やかに90度回転して配向されている。したがって、入射光のうち単一偏光成分のみが偏光子104を透過して、液晶103へと入射する。ツイストネマチック液晶の効果によって、液晶103中を伝搬しながら入射光の偏光は90度回転する。偏光子104と検光子105は平行であるため、出射時には光は検光子105を通過することができない。このため、このときの従来のLCDは肉眼で見た場合、不透明である。
【0006】
一方、図3(b)は透明電極102aと透明電極102bとの間に数Vの電圧を印加した状態を示している。このとき、液晶103の分子は電圧(電界)の方向に並ぶ。この場合、入射光の偏光は液晶103の中で変わらない。偏光子104と検光子105は平行であるため、出射時には光は検光子105を通過することができる。このため、このときの従来のLCDは肉眼で見た場合、透明である。よって、従来のLCDは電圧のオンとオフとにより、LCDの透明と不透明とをスイッチングすることができる。ただし、偏光子104を用いるため最善のケースでも50%は光量の損失があった。
【0007】
従来、この光量の損失の問題を解決するために、ネマチック液晶と光重合性モノマを用いた材料系(下記非特許文献2参照)が発明されており、偏光を使わずに散乱で光のスイッチングを行うために偏波依存損失はほとんどなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】液晶若手研究会編、「液晶:LCDの基礎と新しい応用」、シグマ出版、1997年9月25日、p.27−28
【非特許文献2】Tisato Kajiyama、外3名、“Aggregation states and Electro‐optical Properties Based on Light Scattering of Polymer/(Liquid Crystal)Composite Films”、CHEMISTRY LETTERS、1989年、p.813−816
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した従来のLCDを光通信用部品に適用できるか検討してみる。現在の光通信で使用されている光の波長は、およそ1.3〜1.6μm帯が主流である。従来のLCDと同じ構成を光通信用部品に適用した場合、以下の問題が発生する。
(1)主な液晶材料は可視光域において最適化されており、より長波長では偏光子104と検光子105を用いても、必要な消光比を得ることができない。あるいは、同じ消光比を得るためには、液晶103の層の厚さを厚くすることや、印加電圧を大きくすることが必要となる。
(2)光ファイバの中を伝搬する光は無偏光であるため、偏波依存損失なく(すなわち、偏光子104と検光子105を用いることなく)光スイッチングや光変調や減衰の効果を得ることは容易ではない。
(3)偏光子104の作用により、最善でも光量に50%の損失が生じる。
【0010】
また、ネマチック液晶と光重合性モノマを用いた材料系(上記非特許文献2参照)を用いた散乱型の部品であっても、通信波長帯では十分な消光比を得ることは容易ではなかった。
【0011】
以上のことから、本発明は、偏波の影響を受けず、かつ通信波長帯においても十分な消光比を実現することができる液晶材料、光部品及びディスプレー並びに液晶材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決する第1の発明に係る液晶材料は、
ネマチック液晶である母液晶と、前記母液晶をランダムに配向させる光重合性モノマと、前記光重合性モノマの光重合を加速させる光重合開始剤と、特定の波長の光について散乱もしくは吸収又は散乱及び吸収の両方を増強する二色性色素とを混合し攪拌して得た混合物に紫外線を照射して光重合させた
ことを特徴とする。
【0013】
上記の課題を解決する第2の発明に係る液晶材料は、
ネマチック液晶である母液晶と、前記母液晶をランダムに配向させる光重合性モノマと、前記光重合性モノマの光重合を加速させる光重合開始剤と、特定の波長の光について散乱もしくは吸収又は散乱及び吸収の両方を増強する二色性色素とを混合し攪拌して得た混合物を濾過フィルタで濾過して得た濾過混合物に紫外線を照射して光重合させた
ことを特徴とする。
【0014】
上記の課題を解決する第3の発明に係る液晶材料は、第1の発明又は第2の発明に係る液晶材料において、
前記二色性色素は、アントラキノン誘導体、アゾ誘導体、フタロシアニン誘導体又は金属錯体のうち少なくともいずれかひとつを含有する
ことを特徴とする。
【0015】
上記の課題を解決する第4の発明に係る光部品は、
それぞれの表面に透明電極が形成された一対のガラス基板と、
前記一対のガラス基板の間隔を一定にするスペーサと、
前記一対のガラス基板を固定する接着剤と、
前記一対のガラス基板の間に、第1の発明から第3の発明のいずれかひとつに係る液晶材料と
を備える
ことを特徴とする。
【0016】
上記の課題を解決する第5の発明に係るディスプレーは、
請求項4に記載の光部品を備え、
前記透明電極は、それぞれ直交するように配置されたマトリクス形状である
ことを特徴とする。
【0017】
上記の課題を解決する第6の発明に係る液晶材料の製造方法は、
ネマチック液晶である母液晶と、前記母液晶をランダムに配向させる光重合性モノマと、前記光重合性モノマの光重合を加速させる光重合開始剤と、特定の波長の光について散乱もしくは吸収又は散乱及び吸収の両方を増強する二色性色素とを混合し攪拌して混合物を得る工程と、
前記混合物に紫外線を照射して光重合させる工程と
を備えた
ことを特徴とする。
【0018】
上記の課題を解決する第7の発明に係る液晶材料の製造方法は、
ネマチック液晶である母液晶と、前記母液晶をランダムに配向させる光重合性モノマと、前記光重合性モノマの光重合を加速させる光重合開始剤と、特定の波長の光について散乱もしくは吸収又は散乱及び吸収の両方を増強する二色性色素とを混合し攪拌して混合物を得る工程と、
前記混合物を濾過フィルタで濾過して濾過混合物を得る工程と、
前記濾過混合物に紫外線を照射して光重合させる工程と
を備えた
ことを特徴とする。
【0019】
上記の課題を解決する第8の発明に係る光部品の製造方法は、
ネマチック液晶である母液晶と、前記母液晶をランダムに配向させる光重合性モノマと、前記光重合性モノマの光重合を加速させる光重合開始剤と、特定の波長の光について散乱もしくは吸収又は散乱及び吸収の両方を増強する二色性色素とを混合し攪拌して混合物を得る工程と、
それぞれの表面に透明電極が形成された一対のガラス基板と、前記一対のガラス基板の間隔を一定にするスペーサと、前記一対のガラス基板を固定する接着剤とを備え、前記スペーサと前記接着剤とにより一定の間隔に固定された前記一対のガラス基板の間に前記混合物を浸透させる工程と、
前記混合物に紫外線を照射して光重合させる工程と
を備えた
ことを特徴とする。
【0020】
上記の課題を解決する第9の発明に係る光部品の製造方法は、
ネマチック液晶である母液晶と、前記母液晶をランダムに配向させる光重合性モノマと、前記光重合性モノマの光重合を加速させる光重合開始剤と、特定の波長の光について散乱もしくは吸収又は散乱及び吸収の両方を増強する二色性色素とを混合し攪拌して混合物を得る工程と、
前記混合物を濾過フィルタで濾過して濾過混合物を得る工程と、
それぞれの表面に透明電極が形成された一対のガラス基板と、前記一対のガラス基板の間隔を一定にするスペーサと、前記一対のガラス基板を固定する接着剤とを備え、前記スペーサと前記接着剤とにより一定の間隔に固定された前記一対のガラス基板の間に前記濾過混合物を浸透させる工程と、
前記濾過混合物に紫外線を照射して光重合させる工程と
を備えた
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、偏波の影響を受けず、かつ通信波長帯においても十分な消光比を実現することができる液晶材料、光部品及びディスプレー並びに液晶材料の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施例に係る光部品の模式図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る液晶材料のサンプルの透過率対電圧特性を示した図である。
【図3】従来のLCDの構造を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る液晶材料、光部品及びディスプレー並びに液晶材料の製造方法を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0024】
以下、本発明の第1の実施例について説明する。
はじめに、本発明の第1の実施例に係る液晶材料のサンプルの組成について、表1を用いて説明する。
表1は、本発明の第1の実施例に係る液晶材料におけるサンプルの組成について示した表である。
【表1】

【0025】
表1に示すように、本実施例に係る液晶材料のサンプルには、光重合開始剤、光重合性モノマ、母液晶3(図1参照)及び二色性色素4(図1参照)が含まれる。本実施例においては、光重合開始剤として「2,2‐dimethoxy‐2‐phenylacetopnenone」(DMPAP)を1%、光重合性モノマとして「3,5,5‐trimethylhexyl acrylate」(TMHA)を10%と、「1,6‐hexandiol diacrylate」(HDDA)を10%、母液晶3としてメルクE7を78%、二色性色素4として金属錯体(三井東圧SIR‐132)を1%を用いた。なお、これらの材料の比率は、いずれも重量%(wt%)で表している。
【0026】
そして、光重合開始剤、光重合性モノマ、母液晶3及び二色性色素4を混合し、十分に攪拌してこれら材料の混合物を用意する。なお、本発明に係る液晶材料の製造方法は本発明に係る光部品の製造方法に含まれるため、本実施例に係る液晶材料の製造方法についても、図1を用いて本実施例に係る光部品の製造方法の説明により同時に説明するものとする。
【0027】
図1は、本発明の第1の実施例に係る光部品の模式図である。
図1に示すように、本実施例に係る光部品は、上面側にガラス基板(コーニング7059)1aと下面側にガラス基板1bを備えている。ガラス基板1aの下面には透明電極(Indium Tin Oxide,ITO)2aを備えており、ガラス基板1bの上面には透明電極2bを備えている。透明電極2aと透明電極2bの間には、母液晶(メルクE7)3と、二色性色素(三井東圧SIR‐132)4と、高分子ネットワーク5と、スペーサを含有する接着剤6とを備えている。なお、高分子ネットワーク5については、後述する光重合の際に現れる。
【0028】
次に、本実施例に係る光部品の製造方法について説明する。
はじめに、ガラス基板1aの下面に透明電極2aを、ガラス基板1bの上面に透明電極2bをスパッタ法や蒸着法によって成膜して形成する。
【0029】
次に、所望のガラス基板1a,1bの間隔(例えば、15μm)を保持するために、直径15μmのスペーサ球を混ぜた接着剤で2枚のガラス基板1a,1bを接着する。なお、スペーサは接着剤に混ぜる方法以外に、ガラス基板1a,1bの間にランダムに散布する方法も有効であることを確認した。
【0030】
また、ガラス基板1a,1bの接着に際しては、光重合開始剤、光重合性モノマ、母液晶3及び二色性色素4の混合物を接着したガラス基板1a,1bの間に浸透させられるように、ガラス基板1a,1bの全周を接着するのではなく、少なくとも一部はあけて接着する。
【0031】
次に、スペーサを含有する接着剤6が硬化した時点で、予め用意しておいた光重合開始剤、光重合性モノマ、母液晶3及び二色性色素4の混合物を、2枚のガラス基板1a,1bの間に浸透させる。なお、ガラス基板1a,1bの接着剤封止のうち、あいている部分を混合物に浸せば、混合物は液状であるため、毛細管現象により自然にガラス基板1a,1bの内部へと入っていく。
【0032】
次に、ガラス基板1a,1bの間に混合物を満たした状態で混合物の光重合を行う。本実施例においては、周囲温度25℃にて、ガラス基板1aの上方からメタルハライドランプ(波長365nm、強度15mW/cm2)により紫外線を70秒間照射した。これにより混合物は重合し、高分子ネットワーク5を形成する。
【0033】
そして、このときの状態が図1(a)に示した状態であり、ガラス基板1a,1bの間に高分子ネットワーク5が形成され、ガラス基板1a,1bの間の高分子ネットワーク5の隙間に母液晶3及び二色性色素4が収まる。母液晶3及び二色性色素4は高分子ネットワーク5の中の、最も安定な位置で、ほぼランダムな状態に配向する。
【0034】
これにより、図1(a)に示すように、本実施例に係る光部品は、透明電極2a,2bの間に電圧を印加していない状態(電圧オフ)では、微細に分布した高分子ネットワーク5、母液晶3及び二色性色素4の影響により、入射光が散乱される。そして、このときの本実施例に係る光部品を肉眼で見た場合、白濁して見える。このように、本実施例に係る光部品は、上述した従来のLCDと異なり、偏光子104も検光子105も不要である。
【0035】
また、図1(b)に示すように、本実施例に係る光部品は、透明電極2a,2bの間に電圧を印加した状態(電圧オン)では、母液晶3及び二色性色素4は電界に平行に配向する。このとき、入射光は光部品を透過することができる。そして、このときの本実施例に係る光部品を肉眼で見た場合、透明に見える。
【0036】
図2は、本発明の第1の実施例に係る液晶材料のサンプルの透過率対電圧特性を示した図である。なお、図2においては、実効値表示の印加電圧V(Vrms)を横軸に、透過率T(dB)を縦軸に示す。また、印加した電圧は正弦波交流で、周波数は1kHzである。また、測定する光の波長は1520nmである。また、図2において、実線は本実施例に係る液晶材料のサンプルの結果を、破線は後述する金属錯体ドープの本発明の第2の実施例に係る液晶材料のサンプルの結果を、一点鎖線は金属錯体をドープしていないことを除けば本実施例に係る液晶材料のサンプルと同じ組成比率の標準サンプルの結果を示している。
【0037】
図2に示すように、本実施例に係る液晶材料のサンプルでは、印加する電圧を増すにしたがって透過率が上昇する。すなわち、印加する電圧のないとき(電圧オフ)は、散乱と吸収によって通信波長帯の入射光は透過しない。そして、本実施例に係る液晶材料のサンプルでは、10Vrms程度の電圧を印加するとほぼ透過状態となり、実験の範囲内においては透過率−3dBが得られた。さらに、印加する電圧を上げることで−1dB程度の透過率を得ることができる。
【0038】
一方、標準サンプルでは、印加する電圧の大小にかかわらず全域で−7dB一定であった。この結果は、常に弱い散乱と吸収が起きていて、その状態は印加する電圧によっては制御することができないことを示している。
【0039】
なお、本実施例においては、二色性色素4として金属錯体を用いたが、この他にアントラキノン誘導体(三井東圧M‐370)、アゾ誘導体(三井東圧M‐618)又はフタロシアニン誘導体(三井東圧SIR‐103)を用いた場合も良好な結果を得ることができた。ただし、それぞれに良好な消光比が得られる波長は異なっていた。さらに、複数種の二色性色素4を混合すると、より広い温度範囲で良好な消光比が得られることも確認した。
【実施例2】
【0040】
以下、本発明の第2の実施例について説明する。
本実施例に係る光部品においては、液晶材料の製造方法が第1の実施例と異なっている。なお、本実施例に係る液晶材料の製造方法においても、光重合開始剤、光重合性モノマ、母液晶3及び二色性色素4を混合し、攪拌することによりこれらの材料の混合物を得て、混合物を一対のガラス基板1a,1bの間に浸透させた上で光重合させることは、第1の実施例に係る液晶材料の製造方法とほぼ同様である。
【0041】
本実施例における光部品の製造方法においては、光重合開始剤、光重合性モノマ、母液晶3、二色性色素4を混合し、攪拌することにより混合物を得た後に、その混合物を濾過フィルタで濾過する。
【0042】
ここで、本実施例における光部品の製造方法における混合物を濾過する意味について説明する。
一般に、二色性色素4は、光重合開始剤、光重合性モノマ及び母液晶3に対し、ある一定の濃度(すなわち、固溶度)までしか溶けることができない。もちろん、二色性色素4の濃度を厳密に管理して、その濃度を固溶度以下にするという手段も可能である。しかしながら、これは煩雑でコストのかかる手段である。そこで、本実施例においては、溶けきれなかった二色性色素4は、濾過フィルタで濾しとるという手段を見出した。これは簡単で低コストな手段である。
【0043】
上述したように、本実施例においては、混合物を濾過フィルタ(例えば、テフロン(登録商標)製、孔系0.2μm)で濾して濾過混合物を得た。これにより、濾過前の混合物には顕微鏡観察により溶けきれなかった二色性色素4が観察されたが、濾過後の濾過混合物には顕微鏡観察では溶けきれていない二色性色素4は観察されなかった。
【0044】
本実施例に係る光部品と第1の実施例に係る光部品とを比較すると、以下の結果が得られた。
(1)駆動電圧の比較
図2に示すように、透過率が−10dBとなる電圧は、第1の実施例に係る光部品では7Vであったが、本実施例に係る光部品では4.5Vに低電圧化された。
(2)応答時間の比較
第1の実施例に係る光部品では0.7msであったが、本実施例に係る光部品では0.5msに高速化された。
【0045】
このように、濾過の有無によって、駆動電圧と応答時間に変化が生じることから、固溶度を超えることにより機能していない二色性色素4は不必要に電圧降下を生じさせている、あるいは、固溶度を超えることにより機能していない二色性色素4は周囲の分子の運動性を低下させているものと思われる。したがって、本実施例に係る光部品の製造方法は、第1の実施例に係る光部品の製造方法より、さらに高性能な光部品を製造することができることが確認された。
【0046】
なお、本発明に係る光部品は、例えば、可変光減衰器や光シャッタとして使用することが可能であるが、さらに、本発明に係る光部品において、透明電極2a,2bをそれぞれ直交するように配置されたマトリクス形状に加工し薄膜トランジスタを搭載することにより、単純マトリクス型液晶ディスプレーやアクティブマトリクス型液晶ディスプレーとして使用することも可能であることを確認した。
【0047】
以上説明したように、本発明によれば、高効率、波長選択性(可視光〜赤外線)、低コストの液晶材料、光部品及びディスプレー並びに液晶材料の製造方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、例えば、光部品、例えば、可変光減衰器や光シャッタに利用することが可能であり、さらに、透明電極の加工と薄膜トランジスタの搭載によって単純マトリクス型液晶ディスプレーやアクティブマトリクス型液晶ディスプレーに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1a,1b ガラス基板
2a,2b 透明電極
3 母液晶
4 二色性色素
5 高分子ネットワーク
6 スペーサを含有する接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネマチック液晶である母液晶と、前記母液晶をランダムに配向させる光重合性モノマと、前記光重合性モノマの光重合を加速させる光重合開始剤と、特定の波長の光について散乱もしくは吸収又は散乱及び吸収の両方を増強する二色性色素とを混合し攪拌して得た混合物に紫外線を照射して光重合させた
ことを特徴とする液晶材料。
【請求項2】
ネマチック液晶である母液晶と、前記母液晶をランダムに配向させる光重合性モノマと、前記光重合性モノマの光重合を加速させる光重合開始剤と、特定の波長の光について散乱もしくは吸収又は散乱及び吸収の両方を増強する二色性色素とを混合し攪拌して得た混合物を濾過フィルタで濾過して得た濾過混合物に紫外線を照射して光重合させた
ことを特徴とする液晶材料。
【請求項3】
前記二色性色素は、アントラキノン誘導体、アゾ誘導体、フタロシアニン誘導体又は金属錯体のうち少なくともいずれかひとつを含有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液晶材料。
【請求項4】
それぞれの表面に透明電極が形成された一対のガラス基板と、
前記一対のガラス基板の間隔を一定にするスペーサと、
前記一対のガラス基板を固定する接着剤と、
前記一対のガラス基板の間に、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の液晶材料と
を備える
ことを特徴とする光部品。
【請求項5】
請求項4に記載の光部品を備え、
前記透明電極は、それぞれ直交するように配置されたマトリクス形状である
ことを特徴とするディスプレー。
【請求項6】
ネマチック液晶である母液晶と、前記母液晶をランダムに配向させる光重合性モノマと、前記光重合性モノマの光重合を加速させる光重合開始剤と、特定の波長の光について散乱もしくは吸収又は散乱及び吸収の両方を増強する二色性色素とを混合し攪拌して混合物を得る工程と、
前記混合物に紫外線を照射して光重合させる工程と
を備えた
ことを特徴とする液晶材料の製造方法。
【請求項7】
ネマチック液晶である母液晶と、前記母液晶をランダムに配向させる光重合性モノマと、前記光重合性モノマの光重合を加速させる光重合開始剤と、特定の波長の光について散乱もしくは吸収又は散乱及び吸収の両方を増強する二色性色素とを混合し攪拌して混合物を得る工程と、
前記混合物を濾過フィルタで濾過して濾過混合物を得る工程と、
前記濾過混合物に紫外線を照射して光重合させる工程と
を備えた
ことを特徴とする液晶材料の製造方法。
【請求項8】
ネマチック液晶である母液晶と、前記母液晶をランダムに配向させる光重合性モノマと、前記光重合性モノマの光重合を加速させる光重合開始剤と、特定の波長の光について散乱もしくは吸収又は散乱及び吸収の両方を増強する二色性色素とを混合し攪拌して混合物を得る工程と、
それぞれの表面に透明電極が形成された一対のガラス基板と、前記一対のガラス基板の間隔を一定にするスペーサと、前記一対のガラス基板を固定する接着剤とを備え、前記スペーサと前記接着剤とにより一定の間隔に固定された前記一対のガラス基板の間に前記混合物を浸透させる工程と、
前記混合物に紫外線を照射して光重合させる工程と
を備えた
ことを特徴とする光部品の製造方法。
【請求項9】
ネマチック液晶である母液晶と、前記母液晶をランダムに配向させる光重合性モノマと、前記光重合性モノマの光重合を加速させる光重合開始剤と、特定の波長の光について散乱もしくは吸収又は散乱及び吸収の両方を増強する二色性色素とを混合し攪拌して混合物を得る工程と、
前記混合物を濾過フィルタで濾過して濾過混合物を得る工程と、
それぞれの表面に透明電極が形成された一対のガラス基板と、前記一対のガラス基板の間隔を一定にするスペーサと、前記一対のガラス基板を固定する接着剤とを備え、前記スペーサと前記接着剤とにより一定の間隔に固定された前記一対のガラス基板の間に前記濾過混合物を浸透させる工程と、
前記濾過混合物に紫外線を照射して光重合させる工程と
を備えた
ことを特徴とする光部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−46822(P2011−46822A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196189(P2009−196189)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】