説明

液晶材料の処理方法

【課題】 液晶パネルから取り出した液晶材料を再利用するための処理方法において、液晶材料の電圧保持率を十分に回復させることが可能な処理方法を提供する。
【解決手段】 液晶パネルから取り出した液晶材料を再利用するための処理方法において、液晶材料に含有されるエステル化合物やシアノ基を有する化合物を除去することを特徴とする処理方法。本願発明の方法は、意図的にエステル化合物やシアノ基を有する化合物を添加してあるアクティブマトリクス用液晶材料及び液晶パネルの厳格な分別がなされず、エステル化合物やシアノ基を有する液晶材料が混入した、アクティブマトリクス用液晶材料からの液晶材料の再使用も可能となり、廃棄液晶表示素子による環境負荷の低減に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶パネルの製造工程で排出される不良パネルや市場で廃棄された液晶表示素子に利用されている液晶パネル中に含まれる液晶材料を再利用するための処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は人とコンピュータ等とのインターフェースとして様々な用途に使用されており、その生産量及び市場での使用量は急激に増大している。それに伴い、液晶表示素子の生産量に対応する量の使用済み液晶表示素子の発生が予想される。液晶表示素子は従来型の表示装置であるCRT等とは異なった部材により構成されているため、従来とは異なる方法により廃棄する必要がある。又、最近の環境意識の高まりから、環境に負担をかけない廃棄方法や、廃棄する量をできる限り削減し再使用できる部材を積極的に再利用する方法も検討されている。
【0003】
廃液晶パネルから使用可能な部材を再使用できる状態に処理する方法として、液晶材料を回収した後、精製工程、物性測定工程、物性値調節工程を施すことを特徴とする処理方法が開示されていおり(特許文献 1)、当該引用文献に記載の方法により液晶組成物を再利用することが可能となった。
【0004】
一方、アクティブマトリクス用液晶材料においては、電圧保持率を十分高い値とする必要がある。電圧保持率とは液晶材料の性能指標の一つで、いわばコンデンサを構成する誘電体材料として如何に優れているかを示すものである。液晶材料の回収時に電圧保持率は悪化してしまうが、これを回復させないと表示品位が悪化し実用に耐えない。特に、回収した液晶組成物には不純物を含めて極めて多くの成分が含まれていることから、電圧保持率を高くすることは簡単では無かった。さらに、回収液晶中の成分は、不純物だけではなく種々の液晶材料が含まれるが、成分中のどの物質を積極的に回収し、どの成分を取り除くことが効率的な回収に結びつくかについての検討は不十分であり、重要な特性パラメータである電圧保持率を十分回復できない場合があるという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2004−137467
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、液晶パネルから取り出した液晶材料を再利用するための処理方法において、液晶材料の電圧保持率を十分に回復させることが可能な処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、回収した液晶材料からシアノ基を有する化合物及びエステル化合物を除去する精製工程を導入すれば良いことを見出した。即ち、本発明は、液晶パネルから取り出した液晶材料を再利用するための処理方法において、液晶材料に含有されるエステル化合物やシアノ基を有する化合物を除去することを特徴とする処理方法を提供する。
【0008】
アクティブマトリクス用液晶材料において一般に、高い電圧保持率を確保するためにエステル結合を有する化合物を使用しないことが好ましい。また、誘電率の異方性を付与するための極性基としても高い電圧保持率を確保するためにはシアノ基を使用せず、フッ素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基等を使用することが好ましい。すなわち、シアノ基を有する化合物やエステル化合物はアクティブマトリクス用液晶材料に電圧保持率の観点から向かないとされている。しかしながら、アクティブマトリクス材料の求められる高速応答、低駆動電圧、広い液晶温度範囲、複屈折率の調整等に対する要求から、数%から20%程度エステル化合物が添加されたアクティブマトリクス材料が一部実用化されているのが実情である。この程度の添加量であれば、電圧保持率は悪化しない。また、場合によっては数%のシアノ基を有する化合物が添加されている。そのため、回収した液晶材料には必然的にシアノ基を有する化合物やエステル化合物が含まれる。
【0009】
前述のように、シアノ基を有する化合物やエステル化合物を含有していたとしても、その含有量が少ない場合には、保持率に与える影響は実質的に少ない。ところが、液晶パネルから回収した液晶材料においては、数%から20%程度エステル化合物やシアノ基を有する化合物が含有している場合、エステル化合物やシアノ基を有する化合物を含有していない材料と比較して、精製による電圧保持率改善効果が著しく劣ることが我々の検討で明らかになった。つまり、エステル化合物やシアノ基を有する化合物を含有していない回収液晶材料は精製処理によって電圧保持率を実用上十分なレベルまで回復できるものの、エステル化合物やシアノ基を有する化合物を含有している回収液晶材料は同じ精製処理をしても電圧保持率を実用上十分なレベルまで回復できないことを明らかとなった。
【発明の効果】
【0010】
液晶パネルから取り出した液晶材料の電圧保持率を確実に実用上十分なレベルまで回復させることができる。
【0011】
本願発明の方法は、意図的にエステル化合物やシアノ基を有する化合物を添加してあるアクティブマトリクス用液晶材料からの液晶材料の再使用を可能とする。又、経済上の理由又は人為ミスから液晶パネルの厳格な分別がなされず、エステル化合物やシアノ基を有するTN(ツイステッド・ネマチック)液晶やSTN(スーパー・ツイステッド・ネマチック)液晶材料が混入した、アクティブマトリクス用液晶材料からの液晶材料の再使用も可能となり、廃棄液晶表示素子による環境負荷の低減に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の一例について説明する。回収された液晶材料から除去することが好ましいシアノ基を有する化合物としては一般式(I)
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、Rは炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基を表し、該アルキル基又は該アルケニル基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のF、Cl、CN、CH又はCFを有することができ、該アルキル基又は該アルケニル基中に存在する1個又は2個以上のCH基は、O原子が相互に直接結合しないものとして、O、CO又はCOOで置換されていてもよく、A及びBはそれぞれ独立的に1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、2−クロロ−1,4−フェニレン基、3−クロロ−1,4−フェニレン基、2,3−ジクロロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジクロロ−1,4−フェニレン基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、トランス−1,4−シクロへキシレン、トランス−1,4−シクロへキセニレン、トランス−1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、トランス−1−シラ−1,4−シクロヘキシレン、トランス−4−シラ−1,4−シクロヘキシレン、ナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、フェナントレン−2,7−ジイル基又はフルオレン−2,7−ジイル基を表し、ナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のF、Cl、CF、OCF又はCHを有することができ、iは0、1又は2を表し、Y及びYはそれぞれ独立的に単結合、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−(CH−、−(CH−、−CH=CH−(CH−、−(CH−、−CH=CH−、−CH=N−、−CH=N−N=CH−又は−N(O)=N−を表し、Z及びZはそれぞれ独立的にH、F又はClを表す。)フェナントレンで表される化合物を例示することができる。このような材料の中でも、以下の一般式(a-1)又は一般式(a-2)で表される化合物を除去することが好ましい。
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、Rはそれぞれ独立的に炭素原子数1から7のアルキル基を表す。)
また、回収された液晶材料から除去することが好ましいエステル化合物としては一般式(II)
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、R及びRはそれぞれ独立的に炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基を表し、該アルキル基又は該アルケニル基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のF、Cl、CN、CH又はCFを有することができ、該アルキル基又は該アルケニル基中に存在する1個又は2個以上のCH基は、O原子が相互に直接結合しないものとして、O、CO又はCOOで置換されていてもよく、
C、D及びEはそれぞれ独立的1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、2−クロロ−1,4−フェニレン基、3−クロロ−1,4−フェニレン基、2,3−ジクロロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジクロロ−1,4−フェニレン基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、トランス−1,4−シクロへキシレン、トランス−1,4−シクロへキセニレン、トランス−1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、トランス−1−シラ−1,4−シクロヘキシレン、トランス−4−シラ−1,4−シクロヘキシレン、ナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、フェナントレン−2,7−ジイル基又はフルオレン−2,7−ジイル基を表し、ナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のF、Cl、CF、OCF又はCHを有することができ、
jは0、1又は2を表し、Y及びYはそれぞれ独立的に単結合、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−(CH−、−(CH−、−CH=CH−(CH−、−(CH−、−CH=CH−、−CH=N−、−CH=N−N=CH−又は−N(O)=N−を表し、Y及びYのうち少なくとも一つは−COO−、又は−OCO−を表す。)で表される化合物を例示することができる。このような材料の中でも、以下の一般式(b-1)から一般式(b-6)で表される化合物を除去することが好ましい。
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、R及びR’はそれぞれ独立的に炭素原子数1から7のアルキル基を表す。)
エステル化合物やシアノ基を有する化合物を除去する手段としては、他の液晶材料の影響が少なくこれらの化合物を除くことが可能であれば特に制限は無いが、カラムクロマトグラフィーの利用が有効である。
【0021】
カラムクロマトグラフィーを用いることによって、シアノ基を有する化合物やエステル化合物をそのまま、極性の違いによって分離・除去することができる。カラムクロマトグラフィーに使用する充填剤としてはシリカゲル、アルミナ等が挙げられる。充填剤には主として順相系及び逆相系があるが、本発明の処理方法としては順相系が好ましい。充填剤は回収液晶の質量に対して、5倍から200倍の質量を使用することが好ましい。充填剤の量を5倍以下にすれば作業時間が少なくてすむものの、分離能が下がり、シアノ基を有する化合物やエステル化合物を精度良く除去することが困難となる。200倍以上の質量の充填剤を使用すると、シアノ基を有する化合物やエステル化合物を精度良く分離・除去することが可能になるが作業時間が長くなってしまう問題がある。流出溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼンなどが好ましく、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン等の低極性の炭化水素系溶媒が特に好ましい。 加水分解を利用すると、カラムクロマトグラフィーによる除去を効率良く行える。シアノ基を有する化合物をアミド化合物、又はカルボン酸化合物にまで加水分解することによって、また、エステル化合物の場合、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物まで加水分解することによって、化合物の極性を変化させることができる。加水分解の条件としては、シアノ基を有する化合物やエステル化合物以外のアクティブ液晶材料を構成する他の化合物が分解を受けないか、分解が最小限にとどまるような条件を設定する必要がある。加水分解を行う溶媒としては水、アルコール等のプロトン性溶媒又はこれらの混合物が好ましく、これらの溶媒と非プロトン性有機溶媒との併用も可能である。触媒としては、硫酸、塩酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸などの酸触媒や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、ジアザビシクロウンデセン、ヒドラジンなどの塩基性触媒を挙げることができる。反応温度は室温から100℃の間に設定することが好ましい。シアノ基を有する化合物やエステル化合物の加水分解物は概して、シアノ基を有する化合物やエステル化合物以外のアクティブマトリクス液晶材料を構成する化合物類と比較して極性が高くなるため、カラムクロマトグラフィーによる分離・除去が容易になる。
【0022】
また、加水分解物の除去はカラムクロマトグラフィーだけではなく、アルカリ水溶液洗浄によっても行うことができる。例えば、加水分解物をアルカリ水溶液と混合すると、加水分解物は水層に多く移行するので、加水分解物を除去することが可能になる。水層に移行しなかった成分を集めれば、加水分解物が除去された材料を得ることが可能である。勿論、加水分解後にアルカリ水溶液洗浄を行い、さらにカラムクロマトグラフィーを行って、分離・除去の効率や精度を向上させても良い。このような目的でカラムクロマトグラフィーを使用する場合、充填剤は回収液晶の質量に対して、0.5倍から50倍の質量を使用することが好ましい。
【実施例】
【0023】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。電圧保持率の測定は(株)東陽テクニカ製の「VHR-1A」を用い、フレーム周期が200ミリ秒、パルス幅が64マイクロ秒、印加電圧5Vに設定して行った。イオン密度の測定は(株)東陽テクニカ製の「MTR-1」を用い、±20Vの三角波(周波数0.5Hz)で行った。電圧保持率、イオン密度の測定いずれも、ポリイミド配向膜を形成した、電極面積1cm2、セルギャップ6μmのガラスセルを用いて行った。
(参考例1) 液晶材料の回収
市中に出回ったアクティブマトリクス液晶ディスプレイからディスプレイパネルを取り出し、そのディスプレイパネルを金槌で1cm角程度まで粉砕した。この粉砕物20kgをアセトン4000mlで3回洗浄した。このアセトン洗浄液(計12000ml)を減圧留去して回収液晶(A)を20g得た。この回収液晶(A)は若干赤色に着色しており、ネマチック液晶−等方性液体相転移温度(TNI)は96℃、複屈折率は0.083、誘電率の異方性は+4.2であった。80℃での電圧保持率は4%であった。イオン密度は、イオン密度が大きすぎるため測定不能であった。また、この回収液晶には以下の式(e-1)から式(e-60)化合物が含有されていた。
【0024】
【化5】

【0025】
【化6】

【0026】
【化7】

【0027】
【化8】

【0028】
(実施例1) 回収液晶(A)の精製(エステル化合物の除去)
参考例1で回収した回収液晶(A)において、式(e-49)、式(e-51)及び式(e-53)で表されるエステル化合物が含有されていることがわかった。回収液晶の薄層クロマトグラフィー(流出溶媒:ヘキサン)を行ったところ、Rf値が0.46、0.55、0.69の大きく分けて三つのスポットが観察された。Rf値が0.55のスポットにエステル化合物が含まれる。回収液晶3gを300gのシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー(流出溶媒:ヘキサン)によって精製処理して、Rf値が0.55のフラクションを除去することによって、式(e-49)、式(e-51)、式(e-53)のエステル化合物を除去した。除去して得られた液晶材料は2.2gであった。また、TNIは95℃、複屈折率は0.0850、誘電率の異方性は4.4であった。80℃における電圧保持率は97.6%で、イオン密度は14pC/cm2であった。
(比較例1) 回収液晶(A)の精製(エステルの除去は行わない)
参考例1で回収した回収液晶13.7gを、41gのシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー(流出溶媒:ヘキサン)によって原点成分の除去、及び着色成分の除去を行った(エステル成分の除去は行わなかった)。得られた液晶材料は12.3gであった。また、TNIは92℃、複屈折率は0.0890、誘電率の異方性は4.5であった。80℃での電圧保持率は95.0%で、イオン密度は53pC/cm2であった。
(参考例2) 液晶材料の回収
市中に出回ったモニタ用アクティブマトリクス液晶ディスプレイからディスプレイパネルを取り出し、そのディスプレイパネルを金槌で1cm角程度まで粉砕した。この粉砕物1kgをアセトン200mlで3回洗浄した。このアセトン洗浄液(計600ml)を減圧留去して回収液晶(B)を1.1g得た。この回収液晶(B)は若干紫色に着色しており、ネマチック液晶−等方性液体相転移温度は70℃であった。また、この回収液晶には以下の式(f-1)から式(f-13)の化合物が含有されていた。
【0029】
【化9】

【0030】
(実施例2) 回収液晶(B)の精製(シアノ基を有する化合物、エステル化合物の除去)
参考例2で回収した回収液晶(B)において、式(f-1)及び式(f-4)のシアノ基を有する化合物、式(f-10)及び式(f-11)のエステル化合物が含有されていることがわかった。この回収液晶0.7gを70gのシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー(流出溶媒:ヘキサン)によって精製処理して、含有されるシアノ基を有する化合物、エステル化合物を除去した。除去して得られた液晶材料は0.2gであった。また、TNIは88℃、複屈折率は0.0776、誘電率の異方性は5.6であった。60℃での電圧保持率は97.1%で、イオン密度は44pC/cm2であった。
(比較例2) 回収液晶(A)の精製(シアノ基を有する化合物、エステル化合物の除去は行わない)
参考例2で回収した回収液晶0.3gを、0.9gのシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー(流出溶媒:ヘキサン)によって原点成分の除去、及び着色成分の除去を行った(シアノ基を有する化合物、エステル化合物の除去は行わなかった)。得られた液晶材料は0.2gであった。また、TNIは70℃、複屈折率は0.0767、誘電率の異方性は8.6であった。60℃での電圧保持率は87.0%で、イオン密度は300pC/cm2であった。
【0031】
以上の実施例、比較例から本発明の処理方法を用いると、実用上十分な電圧保持率が得られることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶パネルから取り出した液晶材料を再利用するための処理方法において、液晶材料に含有されるシアノ基を有する化合物及びエステル化合物を除去することを特徴とする処理方法。
【請求項2】
シアノ基を有する化合物及びエステル化合物の除去手段が、カラムクロマトグラフィー工程である請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
シアノ基を有する化合物及びエステル化合物の除去手段が、シアノ基を有する化合物及びエステル化合物の加水分解工程を有する請求項1又は2記載の処理方法。
【請求項4】
シアノ基を有する化合物が一般式(I)
【化1】

(式中、Rは炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基を表し、該アルキル基又は該アルケニル基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のF、Cl、CN、CH又はCFを有することができ、該アルキル基又は該アルケニル基中に存在する1個又は2個以上のCH基は、O原子が相互に直接結合しないものとして、O、CO又はCOOで置換されていてもよく、A及びBはそれぞれ独立的に1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、2−クロロ−1,4−フェニレン基、3−クロロ−1,4−フェニレン基、2,3−ジクロロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジクロロ−1,4−フェニレン基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、トランス−1,4−シクロへキシレン、トランス−1,4−シクロへキセニレン、トランス−1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、トランス−1−シラ−1,4−シクロヘキシレン、トランス−4−シラ−1,4−シクロヘキシレン、ナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、フェナントレン−2,7−ジイル基又はフルオレン−2,7−ジイル基を表し、ナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のF、Cl、CF、OCF又はCHを有することができ、iは0、1又は2を表し、Y及びYはそれぞれ独立的に単結合、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−(CH−、−(CH−、−CH=CH−(CH−、−(CH−、−CH=CH−、−CH=N−、−CH=N−N=CH−又は−N(O)=N−を表し、Z及びZはそれぞれ独立的にH、F又はClを表す。)で表される請求項1から3の何れかに記載の処理方法。
【請求項5】
エステル化合物が一般式(II)
【化2】

(式中、R及びRはそれぞれ独立的に炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基を表し、該アルキル基又は該アルケニル基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のF、Cl、CN、CH又はCFを有することができ、該アルキル基又は該アルケニル基中に存在する1個又は2個以上のCH基は、O原子が相互に直接結合しないものとして、O、CO又はCOOで置換されていてもよく、
C、D及びEはそれぞれ独立的1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、2−クロロ−1,4−フェニレン基、3−クロロ−1,4−フェニレン基、2,3−ジクロロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジクロロ−1,4−フェニレン基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、トランス−1,4−シクロへキシレン、トランス−1,4−シクロへキセニレン、トランス−1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、トランス−1−シラ−1,4−シクロヘキシレン、トランス−4−シラ−1,4−シクロヘキシレン、ナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、フェナントレン−2,7−ジイル基又はフルオレン−2,7−ジイル基を表し、ナフタレン−2,6−ジイル基及び1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のF、Cl、CF、OCF又はCHを有することができ、
jは0、1又は2を表し、Y及びYはそれぞれ独立的に単結合、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−(CH−、−(CH−、−CH=CH−(CH−、−(CH−、−CH=CH−、−CH=N−、−CH=N−N=CH−又は−N(O)=N−を表し、Y及びYのうち少なくとも一つは−COO−、又は−OCO−を表す。)で表される請求項1から4の何れかに記載の処理方法。





【公開番号】特開2006−89519(P2006−89519A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−273184(P2004−273184)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】