説明

液晶組成物、光学異方性膜、及び位相差板

【課題】1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物を用いた場合に生じるスジ状の配向欠陥を抑制軽減する。
【解決手段】1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物の少なくとも一種と、円盤状構造(但し、1,3,5置換ベンゼン骨格は除く)を部分構造として有する化合物の少なくとも一種とを含有することを特徴とする液晶組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位相差板等の作製に有用な液晶組成物、並びに該液晶組成物を用いて作製された光学異方性膜及び位相差板に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の光学補償等に用いられる位相差板として、液晶組成物を用いて形成された光学異方性膜を利用したものが種々提案されている。また、光学異方性膜の作製に利用される液晶化合物として、1,3,5置換型ディスコティック液晶化合物が種々提案されている(特許文献1〜6)。
ところで、位相差板の作製には、液晶化合物の分子を欠陥なく配向させることが必要であるが、1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物を用いた場合には、膜中にスジ状の配向欠陥が生じやすく、改善が望まれている。
【特許文献1】特開2005−122155号公報
【特許文献2】特開2006−76992号公報
【特許文献3】特開2006−265283号公報
【特許文献4】特開2006−316013号公報
【特許文献5】特開2006−327975号公報
【特許文献6】特開2007−2220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物を含有する液晶組成物であって、スジ状の配向欠陥を生じることなく(又はスジ状の配向欠陥の発生を抑制しつつ)光学異方性膜を形成可能な液晶組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、スジ状の配向欠陥がない(又は少ない)、該液晶組成物を用いて作製された光学異方性膜、及び位相差板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者が鋭意検討した結果、1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物の分子を、配向膜表面上で配向させる際に、該分子の配向膜界面におけるチルト角を低減させ得る化合物の存在下で配向させると、形成される光学異方性膜中に生じるスジ状の配向欠陥が軽減できるとの知見を得た。この知見に基づいて、さらに鋭意検討した結果、1,3,5置換ベンゼン骨格以外の円盤状構造を有する化合物の存在下で、1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物の分子を配向させると、配向膜界面のチルト角が軽減され、その結果、形成される光学異方性膜にはスジ状の配向欠陥が生じ難くなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物の少なくとも一種と、円盤状構造(但し、1,3,5置換ベンゼン骨格は除く)を部分構造として有する化合物の少なくとも一種とを含有することを特徴とする液晶組成物。
[2] 前記円盤状構造を部分構造として有する化合物が、下記一般式(TI)で表される化合物であることを特徴とする[1]の液晶組成物:
【化1】

式中、L1はそれぞれ独立に、−O−、−S−、−NH−を表し;R1は下記式(R−IA):
式(R−IA)
*−Cy1−(L1A−Cy2p−L2A−(L3Ar−Q1A
[式(R−IA)中、*はL1に結合する位置を表し;Cy1及びCy2はそれぞれ、少なくとも1種類の環状構造を有する二価の連結基を表し;L1Aは単結合又は二価の連結基を表し;L2Aは単結合又は二価の連結基を表し;L3Aは、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、又は置換アルキニレン基を表し;Q1Aは重合性基又は水素原子を表し;pは0〜2の整数を表し;rは0又は1を表す]を表す。
【0006】
[3] 前記1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物が、下記一般式(DI)で表される化合物であることを特徴とする[1]又は[2]の液晶組成物;
【化2】

一般式(DI)中、Y11、Y12及びY13は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に下記一般式(DI−A)、下記一般式(DI−B)又は下記一般式(DI−C);
【化3】

(一般式(DI−A)中、A11、A12、A13、A14、A15及びA16は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し、X1は、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し、L11は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−又は−C≡C−を表し、L12は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−及び−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q11はそれぞれ独立に、重合性基又は水素原子を表す。)
【化4】

(一般式(DI−B)中、A21、A22、A23、A24、A25及びA26は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し、X2は、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し、L21は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−又は−C≡C−を表し、L22は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−及び−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q21はそれぞれ独立に、重合性基又は水素原子を表す。)
【化5】

(一般式(DI−C)中、A31、A32、A33、A34、A35及びA36は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し、X3は、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し、L31は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−又は−C≡C−を表し、L32は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−及び−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q31はそれぞれ独立に、重合性基又は水素原子を表す)を表す。
【0007】
[4] [1]〜[3]のいずれかの液晶組成物から形成されたことを特徴とする光学異方性膜。
[5] 支持体と、該支持体上に、[1]〜[3]のいずれかの液晶組成物から形成された光学異方性層とを有することを特徴とする位相差板。
[6] 前記支持体と前記光学異方性層との間に配向膜を有し、該配向膜が部分鹸化されたポリビニルアルコール誘導体を含有することを特徴とする[5]の位相差板。
[7] 1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物の分子を配向膜の表面上で配向させる配向工程と、配向工程で得られた配向状態を固定することを含む光学異方性膜の製造方法であって、
前記配向工程において、1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物の分子を、配向膜界面におけるチルト角1〜12°で配向させることを特徴とする光学異方性膜の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物を用いた場合に発生するスジ状の配向欠陥を抑制することが可能となった。
即ち、本発明によれば、1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物を含有する液晶組成物であって、スジ状の配向欠陥を生じることなく(又はスジ状の配向欠陥の発生を抑制しつつ)光学異方性膜を形成可能な液晶組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、スジ状の配向欠陥がない(又は少ない)、該液晶組成物を用いて作製された光学異方性膜、及び位相差板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
[液晶組成物]
本発明の液晶組成物は、1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物の少なくとも一種と、円盤状構造(但し、1,3,5置換ベンゼン骨格は除く)を部分構造として有する化合物の少なくとも一種とを含有することを特徴とする。
本発明の液晶組成物により形成された光学異方性膜には、スジ状の配向欠陥がない(又は少ない)。本発明の作用機構についての詳細は定かではないが、円盤状構造を部分構造として有する化合物の存在下で、1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物の分子を配向膜表面上で配向させると、該分子の配向膜界面におけるチルト角が軽減され、その結果、形成される光学異方性膜中に生じするスジ状の配向欠陥が少なくなると考えられる。
(配向膜側のチルト角)
本発明でチルト角とは、1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物の分子の円板面の法線の平均方向(ディスコティック液晶相のダイレクター)と、配向膜面の法線とのなす角をいう。
1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物を用いた場合に発生するスジ状の配向欠陥の発生原因を詳細に検討した結果、スジ状の欠陥は、配向膜側のチルト角が高いことにより発生することがわかってきた。具体的には、チルト角が13°以上では、配向欠陥が多くなるので、本発明では、1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物の分子の配向膜界面のチルト角を、1〜12°(さらに好ましくは、3〜10°)まで低減可能な円盤状構造を部分構造として有する化合物を用いるのが好ましい。
【0010】
(配向膜側のチルト角測定方法)
1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物の液晶状態でのチルト角の測定は、液晶の調製方法以外は既知の方法を用いて測定することができる。例えば、「液晶便覧」丸善の239頁に記載のクリスタルローテーション法を好適に用いることができる。この方法は、まずアンチパラレルラビング処理した比較的厚いセルに、液晶組成物を注入して、液晶組成物を均一配向させる。次にクロスニコルに配置した一対の偏光プルズムの間に、液晶セルのラビング方向が対角位になるように配置し、これをセル面に平行でラビングに直交する軸でセルを回転させて、入射光にレーザーなどの単色光源を用いて、透過光強度をこの回転角に対して測定することによって、プレチルト角を算出する方法である。このセルをヒータージャケットなどで覆い加熱温度制御することによって、液晶温度範囲が100℃を超えるディスコティック液晶についても測定することができる。
【0011】
測定に用いるセルは、ガラスや高分子フィルムなどの透明支持体上に配向膜を形成しラビングしたものを、アンチパラレルラビングの関係になるように、ギャップ制御用のスペーサを挟んで貼り合わせて形成する。測定する液晶のΔnが小さいほど、セルのギャップは厚いものを用いる方が、測定精度が高くなるので好ましい。例えば、Δnが0.05程度の小さいものでは100μm程度の比較的厚いものが、プレチルト角を精度よく測定するためには好ましく、またΔnが0.15程度のものでは30μmの厚さでも精度よく測定できる。
【0012】
測定用の試料、即ち液晶組成物、の調製は、位相差板を形成する塗布液に前述の重合禁止剤を添加し、攪拌、混合の後エバポレーター若しくはホットプレート上で液晶温度まで加熱して溶媒を気化、乾固させることによって行う。この方法によって重合禁止剤を液晶組成物中に均一に分散又は溶解させることができるため十分な禁止効果を発揮できるようになる。重合禁止剤の添加量は、添加量が少なすぎると充分な重合防止効果が付与できず好ましくなく、反対に含有量が多すぎると重合性液晶のプレチルト角に影響を与えるため好ましくない。従って、最適な添加量の範囲が存在し、液晶組成物(塗布液の場合固形分)の全質量に対して、0.5質量%〜5.0質量%であるのが好ましく、1.0質量%〜3.0質量%であるのがより好ましい。
本発明の液晶組成物が、空気界面側配向剤や表面張力調整剤など、塗布後に空気界面側に偏在する素材が混入されている場合は、その素材がセルの配向膜側に偏析して本来のプレチルト角に影響を与えるため、それを除いた組成物に重合禁止剤を混合して試料を調製する。
また、重合開始剤を含む液晶組成物の場合、開始剤の種類や量によっては加熱によって重合が進行することもあり得る。その場合は開始剤を除去もしくは減量した組成物を調製することによって測定を行うことができる。
【0013】
次に、溶媒を気化、乾固させた液晶中には細かい泡が混入しているため、これを加熱放置か減圧によって取り除いて、セルを加熱しながら液晶をキャピラリー注入する。注入温度は高いほど注入速度を速くできるが、熱重合しやすくなるので100℃〜150℃の範囲が好ましい。また、チルト角の値は注入時の相状態によって影響を受ける場合があるので、注入は液体相状態で行うことが好ましい。液晶上限温度が150℃以上の試料の場合は、重合を避けるためネマチック液晶相で注入し、チルト角の時間変化が無くなるまで温度保持した後に測定する。
【0014】
以下、本発明の液晶組成物に用いられる材料等について、詳細に説明する。
(1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物)
本発明に用いる1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物については、特に制限されず、1,3,5位が置換されたベンゼン骨格を、部分構造として有するディスコティック液晶化合物は、いずれも用いることができる。具体的には、特開2005−122155号公報に記載の一般式(I)及び一般式(II)で表される化合物;特開2006−76992号公報に記載の一般式(DI)及び一般式(DII)で表される化合物;特開2006−265283号公報に記載の一般式(DI)で表される化合物;特開2006−316013号公報に記載の一般式(DI)で表される化合物;特開2006−327975号公報に記載の一般式(DI)で表される化合物;及び特開2007−2220号公報に記載の一般式(DI)及び一般式(DII)で表される化合物;などが例示される。その中でも特に、特開2007−2220号公報に記載の下記一般式(DI)で表され化合物が好ましい。
【0015】
【化6】

【0016】
一般式(DI)中、Y11、Y12及びY13は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表す。
【0017】
11、Y12及びY13がメチンの場合、メチンの水素原子は置換基で置き換わってもよい。メチンが有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子及びシアノ基を好ましい例として挙げることができる。これらの置換基の中では、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子及びシアノ基がさらに好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数2〜12アルコキシカルボニル基、炭素数2〜12アシルオキシ基、ハロゲン原子及びシアノ基がより好ましい。
11、Y12及びY13は、いずれもメチンであることがより好ましく、メチンは無置換であることがさらに好ましい。
【0018】
11、R12及びR13は、それぞれ独立に下記一般式(DI−A)、下記一般式(DI−B)又は下記一般式(DI−C)を表す。波長分散性を小さくしようとする場合、一般式(DI−A)又は一般式(DI−C)が好ましく、一般式(DI−A)がより好ましい。R11、R12及びR13は、R11=R12=R13であることが好ましい。
【0019】
【化7】

【0020】
一般式(DI−A)中、A11、A12、A13、A14、A15及びA16は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表す。
11及びA12は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が窒素原子であることがより好ましい。
13、A14、A15及びA16は、それらのうち、少なくとも3つがメチンであることが好ましく、すべてメチンであることがより好ましい。さらに、メチンは無置換であることが好ましい。
11、A12、A13、A14、A15又はA16がメチンの場合の置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル置換カルバモイル基及び炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
1は、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し、酸素原子が好ましい。
【0021】
【化8】

【0022】
一般式(DI−B)中、A21、A22、A23、A24、A25及びA26は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表す。
21及びA22は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が窒素原子であることがより好ましい。
23、A24、A25及びA26は、それらのうち、少なくとも3つがメチンであることが好ましく、すべてメチンであることがより好ましい。
21、A22、A23、A24、A25又はA26がメチンの場合の置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル置換カルバモイル基及び炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
2は、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し、酸素原子が好ましい。
【0023】
【化9】

【0024】
一般式(DI−C)中、A31、A32、A33、A34、A35及びA36は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表す。
31及びA32は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が窒素原子であることがより好ましい。
33、A34、A35及びA36は、少なくとも3つがメチンであることが好ましく、すべてメチンであることがより好ましい。
31、A32、A33、A34、A35又はA36がメチンの場合、メチンは置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル置換カルバモイル基及び炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
3は、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し、酸素原子が好ましい。
【0025】
一般式(DI−A)中のL11、一般式(DI−B)中のL21、一般式(DI−C)中のL31はそれぞれ独立して、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−又は−C≡C−を表す。好ましくは、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−であり、より好ましくは、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CH2−である。上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基及び炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましい。
【0026】
一般式(DI−A)中のL12、一般式(DI−B)中のL22、一般式(DI−C)中のL32はそれぞれ独立して、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−及び−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。ここで、−NH−、−CH2−、−CH=CH−の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基及び炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましい。
【0027】
12、L22、L32はそれぞれ独立して、−O−、−C(=O)−、−CH2−、−CH=CH−及び−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれることが好ましい。
【0028】
12、L22、L32はそれぞれ独立して、炭素数1〜20であることが好ましく、炭素数2〜14であることがより好ましい。炭素数2〜14が好ましく、−CH2−を1〜16個有することがより好ましく、−CH2−を2〜12個有することがさらに好ましい。
【0029】
12、L22、L32はそれぞれ独立して、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−及び−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれ、かつ炭素数1〜20である二価の連結基であることが好ましい。なお該炭素数は、炭素数2〜14が好ましく、−CH2−を1〜16個有することがより好ましく、−CH2−を2〜12個有することがさらに好ましい。
【0030】
一般式(DI−A)中のQ11、一般式(DI−B)中のQ21、一般式(DI−C)中のQ31はそれぞれ独立して重合性基又は水素原子を表す。本発明の化合物を光学補償フィルムのような位相差の大きさが熱により変化しないものが好ましい光学フィルム等に用いる場合には、Q11、Q21、Q31は重合性基であることが好ましい。重合反応は、付加重合(開環重合を含む)又は縮合重合であることが好ましい。すなわち、重合性基は、付加重合反応又は縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。以下に重合性基の例を示す。
【0031】
【化10】

【0032】
さらに、重合性基は付加重合反応が可能な官能基であることが特に好ましい。そのような重合性基としては、重合性エチレン性不飽和基又は開環重合性基が好ましい。
【0033】
重合性エチレン性不飽和基の例としては、下記の式(M−1)〜(M−6)が挙げられる。
【0034】
【化11】

【0035】
式(M−3)、(M−4)中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、水素原子又はメチル基が好ましい。
上記式(M−1)〜(M−6)の中、(M−1)又は(M−2)が好ましく、(M−1)がより好ましい。
【0036】
開環重合性基は、環状エーテル基が好ましく、エポキシ基又はオキセタニル基がより好ましく、エポキシ基が最も好ましい。
【0037】
以下に、一般式(DI)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
【化12】

【0039】
【化13】

【0040】
【化14】

【0041】
【化15】

【0042】
【化16】

【0043】
【化17】

【0044】
【化18】

【0045】
【化19】

【0046】
【化20】

【0047】
【化21】

【0048】
【化22】

【0049】
【化23】

【0050】
【化24】

【0051】
【化25】

【0052】
【化26】

【0053】
【化27】

【0054】
【化28】

【0055】
【化29】

【0056】
【化30】

【0057】
【化31】

【0058】
【化32】

【0059】
【化33】

【0060】
【化34】

【0061】
【化35】

【0062】
【化36】

【0063】
【化37】

【0064】
【化38】

【0065】
【化39】

【0066】
【化40】

【0067】
【化41】

【0068】
【化42】

【0069】
【化43】

【0070】
(円盤状構造を部分構造として有する化合物)
本発明の液晶組成物は、円盤状構造を部分構造として有する化合物(以下、「円盤状化合物」という)の少なくとも一種を含有する。該円盤状化合物は、1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物の分子の配向膜界面におけるチルト角を低減し得る化合物である。円盤状構造は、1,3,5置換ベンゼン骨格以外であれば、その構造については特に制限されない。前記円盤状化合物は、液晶化合物であっても、非液晶化合物であってもよい。ディスコティック液晶性化合物やディスコティック液晶のコア部を有するような円盤状の形状を有する化合物を用いるのが好ましい。
【0071】
前記円盤状化合物の好ましい例として、下記一般式(D)で表わされる化合物が挙げられる。
一般式(D) D(−L−Q)n
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Qは重合性基である。また、nは3〜12の整数である。上記式の円盤状コア(D)の例を以下に示す。以下の各例において、LQ(又はQL)は、二価の連結基(L)と重合性基(Q)との組み合わせを意味する。以下に一般式(D)の具体例(D1〜D16)の構造式を示す。
【0072】
【化44】

【0073】
【化45】

【0074】
【化46】

【0075】
【化47】

【0076】
一般式(D)中のLは、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−C(=O)−、−NH−、−O−、−S−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。前記Lは、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−C(=O)−、−NH−、−O−及び−S−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた基であることがさらに好ましい。前記Lは、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−C(=O)−及び−O−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた基であることが最も好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。アリーレン基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。アルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基は、置換基(例、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基、アシルオキシ基)を有していてもよい。
【0077】
以下に二価の連結基(L)の例を示す。各々の式において、左側が円盤状コア(D)に結合し、右側が重合性基(Q)に結合する。ALはアルキレン基又はアルケニレン基を意味し、ARはアリーレン基を意味する。
【0078】
L1:−AL−C(=O)−O−AL−
L2:−AL−C(=O)−O−AL−O−
L3:−AL−C(=O)−O−AL−O−AL−
L4:−AL−C(=O)−O−AL−O−C(=O)−
L5:−C(=O)−AR−O−AL−
L6:−C(=O)−AR−O−AL−O−
L7:−C(=O)−AR−O−AL−O−C(=O)−
L8:−C(=O)−NH−AL−
L9:−NH−AL−O−
L10:−NH−AL−O−C(=O)−
L11:−O−AL−
L12:−O−AL−O−
L13:−O−AL−O−C(=O)−
【0079】
L14:−O−AL−O−C(=O)−NH−AL−
L15:−O−AL−S−AL−
L16:−O−C(=O)−AL−AR−O−AL−O−C(=O)−
L17:−O−C(=O)−AR−O−AL−C(=O)−
L18:−O−C(=O)−AR−O−AL−O−C(=O)−
L19:−O−C(=O)−AR−O−AL−O−AL−O−C(=O)−
L20:−O−C(=O)−AR−O−AL−O−AL−O−AL−O−C(=O)−
L21:−S−AL−
L22:−S−AL−O−
L23:−S−AL−O−C(=O)−
L24:−S−AL−S−AL−
L25:−S−AR−AL−
【0080】
一般式(D)の重合性基(Q)は、特に限定されない。本発明の液晶組成物を重合させる場合には、重合反応の種類に応じて決定することができる。
重合性基(Q)の好ましい具体例は、数式(I)を満たす液晶相を発現する液晶性組成物Rにおける記載と同様であり、また、より好ましい重合性基(Q)も、数式(I)を満たす液晶相を発現する液晶性組成物Rと同様である。
【0081】
一般式(D)において、nは3〜12の整数である。具体的な数字は、円盤状コア(D)の種類に応じて決定される。nは特に3〜6の整数が好ましい。なお、複数のLとQの組み合わせは、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0082】
円盤状の形状を有する化合物として、二種類以上の化合物を併用してもよい。例えば、重合性基(Q)を有する分子と有していない分子を併用してもよい。
【0083】
非重合性化合物は、前述した化合物の重合性基(Q)を、水素原子又はアルキル基に変更した化合物であることが好ましい。すなわち、非重合性化合物は、下記式で表わされる化合物であることが好ましい。
【0084】
D(−L−R)n
【0085】
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Rは水素原子又はアルキル基である。また、nは3〜12の整数である。上記式の円盤状コア(D)の例は、LQ(又はQL)をLR(又はRL)に変更する以外は、前記の重合性化合物の例と同様である。また、二価の連結基(L)の例も、前記の重合性化合物の例と同様である。Rのアルキル基は、炭素原子数が1〜40であることが好ましく、1〜30であることがさらに好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、分岐を有する鎖状アルキル基よりも直鎖状アルキル基の方が好ましい。Rは、水素原子又は炭素原子数が1〜30の直鎖状アルキル基であることが特に好ましい。
【0086】
コア部としては、上記具体例D1〜D16の中で、無着色かつ化合物の入手が容易性の点で、D4とD16が特に好ましい。
また、二価の連結基(L)としては、上記具体例L1〜L25の中で、エステル結合を有するL1〜L8、L10、L13、L16〜L20、L23が好ましい。コア部がD4の場合、二価の連結基(L)としては、L18が特に好ましい。
エステル結合が好ましい理由は、明確にはできていないが、以下のような理由が考えられる。エステル結合のカルボニル基(C=O)のダイポールモーメントは多くの場合、円盤状化合物の円板面内には存在せず、面外に向いていることが多い。また、配向膜は、例えば、後述のようにポリビニルアルコール系ポリマーを用いた場合、ポリビニルアルコール表面は、アセチル基や水酸基が多く存在する。このような配向膜表面に対して、エステル基を有する添加剤は、強い相互作用(双極子−双極子相互作用ならびに水素結合)が起こることが予想される。また、添加剤が円盤状の形状でなお且つ面外にカルボニル基を有することで、配向膜界面に円板面を平行にして吸着されることも予想される。そのような状態になることにより、円盤状化合物の排除体積効果が働き、結果として、1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物も配向膜界面と円板面を平行になりやすくなる(チルトが低下する)と考えられる。
【0087】
上記例示化合物の中でも、短工程で構築可能であり且つ少量の添加で効果の高い、D16が好ましい。D16で表される円盤状化合物の中でも、下記一般式(TI)で表される化合物が特に好ましい。
【0088】
【化48】

【0089】
一般式(TI)中、L1はそれぞれ独立に、−O−、−S−、−NH−を表す。L1は特に、−NH−が好ましい。
一般式(TI)中、R1は下記式(R−IA)を表す。
式(R−IA)
*−Cy1−(L1A−Cy2p−L2A−(L3Ar−Q1A
式(R−IA)中、*はL1に結合する位置を表す。
【0090】
前記式中、Cy1及びCy2はそれぞれ、少なくとも1種類の環状構造を有する二価の連結基を表す。二価の環状基中の環は、5員環、6員環、又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがさらに好ましく、6員環であることがよりさらに好ましい。環状基中の環は、縮合環であってもよい。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。また、環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、及び複素環のいずれでもよい。芳香族環の例には、ベンゼン環及びナフタレン環が含まれる。脂肪族環の例には、シクロヘキサン環、が含まれる。複素環の例には、ピリジン環、ピリミジン環、チオフェン環、1,3−ジオキサン環、1,3−ジチアン環が含まれる。
【0091】
ベンゼン環を有する環状基としては、1,4−フェニレンが好ましい。ナフタレン環を有する環状基としては、ナフタレン−1,5−ジイル及びナフタレン−2,6−ジイルが好ましい。シクロヘキサン環を有する環状基としては1,4−シクロへキシレンであることが好ましい。ピリジン環を有する環状基としてはピリジン−2,5−ジイルが好ましい。ピリミジン環を有する環状基としては、ピリミジン−2,5−ジイルが好ましい。チオフェン環を有する環状基としては、チオフェン−2,5−ジイルが好ましい。1,3−ジオキサン環を有する環状基としては、1,3−ジオキシレン−2,5−ジイルが好ましい。1,3−ジチアン環を有する骨格としては、1,3−ジチアニレン−2,5−ジイルが好ましい。
【0092】
Cy1及びCy2はそれぞれ、1,4−フェニレン、1,4−シクロへキシレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、1,3−ジオキシレン−2,5−ジイルが好ましく、更に1,4−フェニレン、1,4−シクロへキシレン、又は1,3−ジオキシレン−2,5−ジイルが好ましく、1,4−フェニレンが特に好ましい。
【0093】
Cy1及びCy2はそれぞれ、置換基を有していてもよく、その置換基としてはハロゲン原子(好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルキルオキシ基、炭素原子数2〜8のアシル基、炭素原子数2〜8のアシルオキシ基、炭素原子数2〜8のアルコキシカルボニル基、ニトロ基、又はシアノ基が好ましく。特に、ハロゲン原子、炭素原子数1〜3のアルキル基、炭素原子数1〜3のアルキルオキシ基、炭素原子数2〜4のアシル基、炭素原子数2〜4のアシルオキシ基、炭素原子数2〜4のアルコキシカルボニル基、又はシアノ基が好ましい。
【0094】
1Aは単結合又は二価の連結基である。L1Aが二価の連結基の場合、−O−、−S−、−C(=O)−、−NR7−、−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R7は炭素原子数が1から7のアルキル基又は水素原子であり、炭素原子数1から4のアルキル基又は水素原子であることが好ましく、メチル基、エチル基又は水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0095】
1Aは単結合、及び、*−O−CO−、*−CO−O−、*−CH2−CH2−、*−O−CH2−、*−CH2−O−、*−CO−CH2−CH2−、*−CH=CH−、*−C≡C−(ここで、*は式(R−IA)中の*を表す)が好ましく、特に単結合、*−O−CO−が好ましい。
【0096】
2Aは単結合又は二価の連結基である。L2Aが二価の連結基の場合、−O−、−S−、−C(=O)−、−NR7−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R7は炭素原子数が1から7のアルキル基又は水素原子であり、炭素原子数1から4のアルキル基又は水素原子であることが好ましく、メチル基、エチル基又は水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0097】
2Aは単結合、及び*−O−、*−O−CO−、*−CO−O−、*−O−CO−O−、*−CO−、*−S−、*−NR7−、(ここで、*は一般式(R−IA)中の二価の環状基に連結する位置を表す)が好ましく、特に、*−O−CO−、*−CO−O−、*−O−CO−O−が好ましい。
【0098】
3Aは、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、又は置換アルキニレン基を表す。中でも、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、又は置換アルケニレン基が好ましく、アルキレン基又はアルケニレン基がさらに好ましい。
前記アルキレン基は、分岐を有していてもよい。また、アルキレン基中の−CH2−は、例えば−O−、−S−で置き換えられていてもよい。アルキレン基の炭素数は1〜16であることが好ましく、2〜14であることがさらに好ましく、2〜12であることが最も好ましい。置換アルキレン基のアルキレン部分は、上記アルキレン基と同様である。置換基の例としては、アルキル基やハロゲン原子が含まれる。
【0099】
前記アルケニレン基は、主鎖中に置換又は無置換のアルキレン基を有してもよく、分岐を有していてもよい。また、アルケニレン基中に−CH2−がある場合、−CH2−は例えば−O−、−S−で置き換えられていてもよい。アルケニレン基の炭素数は2〜16であることが好ましく、2〜14であることがさらに好ましく、2〜12であることが最も好ましい。置換アルケニレン基のアルケニレン部分は、上記アルケニレン基と同様である。置換基の例としてはアルキル基やハロゲン原子が含まれる。
【0100】
前記アルキニレン基は、主鎖中に置換又は無置換のアルキレン基を有してもよく、分岐を有していてもよい。また、アルキニレン基中に−CH2−がある場合、−CH2−は例えば−O−、−S−で置き換えられていてもよい。アルキニレン基の炭素数は2〜16であることが好ましく、1〜14であることがさらに好ましく、1〜12であることが最も好ましい。置換アルキニレン基のアルキニレン部分は、上記アルキニレン基と同様である。置換基の例としてはアルキル基やハロゲン原子が含まれる。
【0101】
3Aの具体例としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、1−メチル−テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、2−ブテニレン及び2−ブチニレンなどが挙げられる。
【0102】
3Aとしては、炭素数1〜16の置換又は無置換のアルキレン基、炭素数2〜16の置換又は無置換のアルケニレン基、炭素数2〜16の置換又は無置換アルキニレン基が好ましく、特に、炭素数1〜12の置換又は無置換のアルキレン基が好ましい。鎖状基の置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基もしくはハロゲン原子が好ましい。よりさらに好ましくは、炭素数1〜12の無置換のアルキレン基である。
【0103】
1Aは重合性基又は水素原子を表す。以下に重合性基の例を示す。
【0104】
【化49】

【0105】
上記中、q1〜q10が好ましく、q1〜q8がより好ましい。
さらに、重合性基は付加重合反応が可能な官能基であることが特に好ましい。そのような重合性基としては、重合性エチレン性不飽和基又は開環重合性基が好ましい。
【0106】
重合性エチレン性不飽和基の例としては、下記の式(M−1)〜(M−6)が挙げられる。
【0107】
【化50】

【0108】
式(M−3)、(M−4)中、Rは水素原子又はアルキル基を表す。Rとしては、水素原子又はメチル基が好ましい。
上記(M−1)〜(M−6)のなかでも、(M−1)又は(M−2)が好ましく、(M−1)がよりさらに好ましい。
【0109】
開環重合性基として好ましいのは、環状エーテル基であり、中でもエポキシ基又はオキセタニル基がより好ましく、エポキシ基が最も好ましい。
【0110】
pは0〜2の整数を表す。特に0又は1が好ましい。rは0又は1を表す。
【0111】
以下に、本発明に使用可能な円盤状化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0112】
【化51】

【0113】
【化52】

【0114】
【化53】

【0115】
【化54】

【0116】
【化55】

【0117】
【化56】

【0118】
【化57】

【0119】
本発明の液晶組成物における、1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物と、円盤状化合物との割合については特に制限されず、用途や用いる化合物の構造等に応じて好ましい範囲も変動する。1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物の配向を損なうことなく、円盤状液晶化合物の添加効果を得るためには、一般的には、1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物と、円盤状化合物との質量比は、99.5:0.5〜60:40であるのが好ましく、97:3〜80:20であるのがより好ましい。
【0120】
(他の添加剤)
本発明の液晶組成物は、1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物及び円盤状化合物とともに、必要に応じて他の添加剤を加えることができる。添加剤の例としては、後述する空気界面配向制御剤、レベリング剤、重合開始剤、重合性モノマー等が挙げられる。
【0121】
・空気界面配向制御剤
本発明の液晶組成物は、空気界面配向制御剤を含有していてもよい。空気界面配向制御剤は、空気界面における液晶化合物の分子の配向を制御する。例えば、1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶性化合物の分子を、ホメオトロピック配向もしくはハイブリッド配向させるのは、空気界面配向制御剤を添加するのが好ましい。このような添加剤としては、例えば、特開2004−46038号公報明細書中の段落番号[0015]〜[0049]記載のポリマー化合物、特願2004−188333号公報明細書中の段落番号[0020]〜[0100]記載の含フッ素ポリマー化合物、特願2004−3803号公報明細書中の段落番号[0019]〜[0057]記載のマレイミド基含有ポリマー化合物、特願2003−295212号公報明細書中の段落番号[0040]〜[0069]記載の含フッ素化合物、特願2003−330303号公報明細書中の段落番号[0011]〜[0031]記載の含フッ素化合物、特願2002−212100号公報明細書中の段落番号[0031]〜[0075]記載の排除体積基含有化合物が挙げられる。チルト角制御剤の好ましい例としては、特開2002−37777号公報明細書中の(1)〜(15)、特開2002−38158号公報明細書中の(3)〜(22)、特開2004−46038号公報明細書中のP−4、P6〜P12、P15〜P40、特願2004−188333号公報明細書中のP1〜P5、P14〜P18、P31〜P40、P61〜P70、特願2004−3803号公報明細書中のP6〜P21、特願2003−295212号公報明細書中のI−1〜I−38、I−43〜I−66、特願2003−330303号公報明細書中のI−1〜I−45、特願2002−212100号公報明細書中のIb−3〜Ib−10が挙げられる。
【0122】
空気界面側の配向制御用添加剤の添加量としては、本発明の液晶組成物の総質量に対して、0.001質量%〜20質量%が好ましく、0.01質量%〜10質量%が更に好ましく、0.1質量%〜5質量%がよりさらに好ましい。
【0123】
・レベリング剤
本発明の液晶組成物には、レベリング剤を添加してもよい。該組成物を塗布液として調製し、塗布して光学異方性膜等を形成する場合は、添加するのが好ましい。レベリング剤としては、一般に高分子化合物が用いられる。レべリング剤として使用するポリマーとしては、前記液晶化合物の分子の傾斜角を変化させたり、配向を著しく阻害しない限り、特に制限はない。
レべリング剤として使用可能なポリマーの例としては、特開平8−95030号公報に記載があり、特に好ましい具体的ポリマー例としては、セルロースエステル類を挙げることができる。セルロースエステルの例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース及びセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。
レべリング剤の添加量は、本発明の液晶組成物の総質量に対して一般に0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
【0124】
・界面活性剤
本発明の液晶組成物は、界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物、特開2005−179636号公報中の段落番号[0100]〜[0118]記載の化合物が挙げられる。上記界面活性剤は、1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック化合物に対して、一般に0.005〜8質量%(好ましくは0.05〜2.5質量%)であるのが好ましい。
【0125】
・重合開始剤
本発明の液晶組成物は、硬化性であるのが好ましく、そのためには、重合開始剤を含有しているのが好ましい。重合開始剤は、熱重合開始剤であっても、光重合開始剤であってもよいが、光重合開始剤を含有し、光照射により反応が進行し、硬化する組成物として調製するのが好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同第2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同第2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
光重合開始剤の使用量は、本発明の液晶組成物(塗布液の場合は固形分)の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
【0126】
・重合性モノマー
本発明の液晶組成物には、重合性のモノマーを添加してもよい。本発明で使用できる重合性モノマーとしては、前記1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物と相溶性を有し、配向阻害を著しく引き起こさない限り、特に限定はない。これらの中では重合活性なエチレン性不飽和基、例えばビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基などを有する化合物が好ましく用いられる。上記重合性モノマーの添加量は、前記ディスコティック液晶化合物に対して0.5〜50質量%の範囲にあることが好ましく、1〜30質量%の範囲にあることがより好ましい。また反応性官能基数が2以上のモノマーを用いると、配向膜と光学異方性層間の密着性を高める効果が期待できるため、特に好ましい。
【0127】
・塗布溶剤
本発明の液晶組成物は、塗布液として調製してもよい。調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジン)、炭化水素(例えば、トルエン、ヘキサン)、アルキルハライド(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライド、エステル及びケトンが好ましい。これらは、2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0128】
[光学異方性膜]
次に、本発明の液晶組成物を利用して作製される、本発明の光学異方性膜について説明する。
本発明の光学異方性膜は、本発明の液晶組成物から形成されたことを特徴とする。例えば、本発明の液晶組成物を、塗布液として調製し、該塗布液を配向膜の表面に塗布して、配向膜上で、1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物の分子を配向させた後、その配向状態を固定することで作製することができる。
【0129】
塗布液の塗布は、公知の方法(例えば、スピンコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
【0130】
本発明の液晶組成物が、配向膜表面に塗布するのが好ましい。配向膜は、有機化合物(好ましくは、ポリマー)の膜の表面に対するラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、又は、ラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例えば、ω−トリコサン酸、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与又は光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
ラビング処理又は光照射により形成される配向膜を利用するのが好ましく、ポリマーのラビング処理により形成される配向膜がさらに好ましい。ラビング処理は、一般にはポリマー層の表面を、紙や布で一定方向に擦ることにより実施することができる。配向膜の厚さは、0.01〜10μmであることが好ましく、0.05〜3μmであることがより好ましい。
【0131】
配向膜に用いられる素材としては、ポリイミド系のポリマーやポリビニルアルコール系のポリマーが一般的に用いられる。ポリマーフィルムなどの上に形成されることが覆いため、ポリマーフィルムを侵さない水系の溶媒で塗布可能な、ポリビニルアルコール系ポリマーが配向膜素材として好ましい。
ポリビニルアルコール系ポリマーの中でも、水への溶解性の高い部分鹸化されたポリビニルアルコール系ポリマーが特に好ましい。鹸化度としては、97%〜70%が好ましく、特に、91%〜85%が好ましい。重合度としては、100〜3000が好ましく、特に200〜1000が好ましい。
特に、部分鹸化ポリビニルアルコールのヒドロキシル基が、ビニル、オキシラニル、又はアジリジニルを有する基で置換されているものが好ましい。このような置換基の置換度としては、0.2〜10%が好ましく、0.5〜3.0が特に好ましい。このようなポリマーの具体例は、特開平9−152509号公報に記載されている。
【0132】
配向膜上で所望の配向状態が得られたら、該配向状態を重合により固定する。重合の進行のために光照射することが好ましく、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ〜50J/cm2であることが好ましく、50mJ〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。また、雰囲気の酸素濃度は重合度に関与するため、空気中で所望の重合度に達しない場合には、窒素置換等の方法により酸素濃度を低下させることが好ましい。好ましい酸素濃度としては、10%以下が好ましく、7%以下がさらに好ましく、3%以下がよりさらに好ましい。
【0133】
前記光学異方性膜中における液晶組成物の配向状態については特に制限はない。一例としては、ホメオトロピック配向もしくはハイブリッド配向が固定された態様が挙げられる。
配向状態が固定化された状態とは、その配向が保持された状態が最も典型的、かつ、好ましい態様ではあるが、それだけには限定されず、例えば、通常0℃〜50℃、より過酷な条件下では−30℃〜70℃の温度範囲において、該固定化された液晶性組成物に流動性が無く、また外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態を含む趣旨である。なお、配向状態が最終的に固定化され光学異方性膜が形成された際に、本発明の液晶組成物はもはや液晶性を示す必要はない。例えば、液晶化合物として重合性基を有する化合物を用いている場合は、重合又は架橋反応が進行し、高分子量化して、結果的に、液晶性を失ってもよい。
【0134】
形成される光学異方性膜の厚みについては特に制限されないが、一般的には、0.2〜10.0μmであることが好ましく、0.4〜4.0μmであることがさらに好ましい。
【0135】
[位相差板]
次に、本発明の光学異方性膜を光学異方性層として有する位相差板について説明する。
本発明の位相差板は、支持体の上に、本発明の液晶組成物から形成される光学異方性層を有する。支持体と光学異方性層との間に、配向膜を有していてもよい。
【0136】
(支持体)
本発明の位相差板は、前記光学異方性層を支持する支持体を有する。支持体は、主に光学的等方性で、光透過率が80%以上であれば、特に材料の制限はないが、ポリマーフィルムやガラスが好ましい。
ポリマーの具体例として、セルロースアシレート類(例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート)、ノルボルネン系ポリマー、ポリ(メタ)アクリレートエステル類のフィルムなどを挙げることができ、多くの市販のポリマーを好適に用いることが可能である。このうち、光学性能の観点からセルロースエステル類が好ましく、セルロースの低級脂肪酸エステルがさらに好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下脂肪酸で、炭素原子数は、2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)又は4(セルロースブチレート)であることが好ましい。セルローストリアセテートが特に好ましい。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いてもよい。また、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであっても国際公開WO00/26705号パンフレットに記載の分子の修飾により該発現性を低下させたものも使用できる。
【0137】
以下、支持体として好ましく使用されるセルロースアシレート(特に、セルローストリアセテート)について詳述する。
セルロースアシレートとしては、酢化度が55.0〜62.5%であるセルロースアセテートを使用することが好ましい。特に酢化度が57.0〜62.0%であることが好ましい。酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定及び計算に従う。セルロースエステルの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。また、本発明に使用するセルロースエステルは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜1.7であることが好ましく、1.3〜1.65であることがさらに好ましく、1.4〜1.6であることがよりさらに好ましい。
【0138】
セルロースアシレートでは、セルロースの2位、3位、6位の水酸基が全体の置換度の1/3ずつに均等に分配されるわけではなく、6位水酸基の置換度が小さくなる傾向がある。セルロースの6位水酸基の置換度が、2位、3位に比べて多いほうが好ましい。全体の置換度に対して6位の水酸基が30〜40%のアシル基で置換されていることが好ましく、さらには31〜40%、特に32〜40%であることが好ましい。6位の置換度は、0.88以上であることが好ましい。6位水酸基は、アセチル基以外に炭素数3以上のアシル基(例えば、プロピオニル基、ブチリル基、バレロイル基、ベンゾイル基、アクリロイル基)で置換されていてもよい。各位置の置換度の測定は、NMRによって求めることができる。6位水酸基の置換度が高いセルロースエステルは、特開平11−5851号公報の段落番号0043〜0044に記載の合成例1、段落番号0048〜0049に記載の合成例2、段落番号0051〜0052に記載の合成例3の方法を参照して合成することができる。
【0139】
支持体として用いるポリマーフィルム、特にセルロースアシレートフィルムは、レターデーションを調整するために、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として含有していてもよい。このようなレターデーション上昇剤を使用する場合、レターデーション上昇剤は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲で使用することが好ましく、0.05〜15質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.1〜10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。2種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。
芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
【0140】
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがより好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。
【0141】
芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環及び1,3,5−トリアジン環が好ましく、ベンゼン環及び1,3,5−トリアジン環がさらに好ましい。芳香族化合物は、少なくとも一つの1,3,5−トリアジン環を有することが特に好ましい。
【0142】
前記芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環及び1,3,5−トリアジン環が含まれる。
【0143】
芳香族化合物が有する芳香族環の数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましく、2〜6であることが最も好ましい。二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合及び(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。このようなレターデーション上昇剤については国際公開WO01/88574A1パンフレット、国際公開WO00/2619A1パンフレット、特開2000−111914号公報、特開2000−275434号公報、特開2002−363343号公報等に記載されている。
【0144】
セルロースアシレートフィルムは、調製されたセルロースアシレート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりを製造することが好ましい。ドープには、前記のレターデーション上昇剤を添加してもよい。
ドープは、ドラム又はバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35質量%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延及び乾燥方法については、米国特許第2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許第640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。
【0145】
前記ドープは、表面温度が10℃以下のドラム又はバンド上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムをドラム又はバンドから剥ぎ取り、さらに100から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラム又はバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
【0146】
調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)を用いて、ドープを2層以上流延することによりフィルム化することもできる。ドープは、ドラム又はバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が10〜40%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。
複数のセルロースアシレート溶液を流延する場合、支持体の進行方向に間隔をおいて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて、それらを積層させながらフィルムを作製してもよい。例えば、特開昭61−158414号、特開平1−122419号、及び特開平11−198285号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによりフィルム化してもよい。例えば、特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、及び特開平6−134933号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、特開昭56−162617号公報に記載の、高粘度セルロースアセテート溶液の流れを低粘度のセルロースアセテート溶液で包み込み、高粘度及び低粘度のセルロースアセテート溶液を同時に押出すセルロースアセテートフィルムの流延方法を用いてもよい。
【0147】
セルロースアシレートフィルムは、さらに延伸処理によりレターデーションを調整することができる。延伸倍率は、0〜100%の範囲にあることが好ましい。本発明に用いるセルロースアシレートフィルムを延伸する場合には、テンター延伸が好ましく使用され、遅相軸を高精度に制御するために、左右のテンタークリップ速度、離脱タイミング等の差をできる限り小さくすることが好ましい。
【0148】
セルロースアシレートフィルムには、機械的物性を改良するため、又は乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステル又はカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)、ジフェニルビフェニルホスフェート及びトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)及びジ−2−エチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)及びO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。可塑剤の添加量は、セルロースエステルの量の0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることが最も好ましい。
【0149】
セルロースアシレートフィルムには、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)や紫外線防止剤を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−197073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、調製する溶液(ドープ)の0.01〜1質量%であることが好ましく、0.01〜0.2質量%であることがさらに好ましい。添加量が0.01質量%未満であると、劣化防止剤の効果がほとんど認められない。添加量を1質量%以上とすることにより、フィルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)をより効果的に抑止できる。
特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を挙げることができる。紫外線防止剤については、特開平7−11056号公報に記載がある。
【0150】
セルロースアシレートフィルムは、表面処理を施すことが好ましい。具体的方法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理又は紫外線照射処理が挙げられる。また、特開平7−333433号公報に記載のように、下塗り層を設けることも好ましく利用される。
フィルムの平面性を保持する観点から、これら処理においてセルロースアシレートフィルムの温度をガラス転移温度(Tg)以下、具体的には150℃以下とすることが好ましい。
【0151】
セルロースアシレートフィルムの表面処理は、配向膜などとの接着性の観点から、酸処理又はアルカリ処理、すなわちセルロースアシレートに対するケン化処理を実施することが特に好ましい。以下、アルカリ鹸化処理を例に、具体的に説明する。アルカリ鹸化処理は、フィルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられる。水酸化イオンの濃度は、0.1〜3.0 mol/Lの範囲にあることが好ましく、0.5〜2.0 mol/Lの範囲にあることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、室温(例えば、18℃)〜90℃の範囲にあることが好ましく、40〜70℃の範囲にあることがさらに好ましい。
【0152】
また、セルロースアシレートフィルムの表面エネルギーは55mN/m以上であることが好ましく、60〜75mN/mの範囲にあることがさらに好ましい。
表面エネルギーは、「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社 1989.12.10発行)に記載のように接触角法、湿潤熱法、及び吸着法により求めることができる。本発明に用いるセルロースアシレートフィルムの場合、接触角法を用いることが好ましい。具体的には、表面エネルギーが既知である2種の溶液をセルロースアシレートフィルムに滴下し、液滴の表面とフィルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフィルム表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算によりフィルムの表面エネルギーを算出できる。
【0153】
支持体として用いるセルロースアシレートフィルムの厚さは、5〜500μmの範囲が好ましく、20〜250μmの範囲がより好ましく、30〜180μmの範囲がさらに好ましく、30〜110μmの範囲が特に好ましい。
【0154】
本発明の位相差板は、偏光膜と組み合わせて楕円偏光板の用途に供することができる。さらに、透過型、反射型、及び半透過型液晶表示装置に、偏光膜と組み合わせて適用することにより、上記装置の視野角の拡大に寄与し得る。
[楕円偏光板]
本発明の位相差板と偏光膜を積層することによって楕円偏光板を作製することができる。本発明の位相差板を利用することにより、液晶表示装置の視野角を拡大しうる楕円偏光板を提供することができる。
前記偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜及び染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。偏光膜の偏光軸は、フィルムの延伸方向に垂直な方向に相当する。
【0155】
偏光膜は位相差板の光学異方性層側に積層する。偏光膜の位相差板を積層した側と反対側の面に透明保護膜を形成することが好ましい。透明保護膜は、光透過率が80%以上であるのが好ましい。透明保護膜としては、好ましくはセルロースエステルフィルム、より好ましくはトリアセチルセルロースフィルムが用いられる。セルロースエステルフィルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。透明保護膜の厚さは、20〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがさらに好ましい。
【0156】
[液晶表示装置]
本発明の位相差板の利用により、視野角が拡大された液晶表示装置を提供することができる。TNモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)は、特開平6−214116号公報、米国特許第5583679号、同5646703号、ドイツ特許公報3911620A1号の各明細書に記載がある。また、IPSモード又はFLCモードの液晶セル用光学補償シートは、特開平10−54982号公報に記載がある。さらに、OCBモード又はHANモードの液晶セル用光学補償シートは、米国特許第5805253号明細書及び国際公開WO96/37804号パンフレットに記載がある。さらにまた、STNモードの液晶セル用光学補償シートは、特開平9−26572号公報に記載がある。そして、VAモードの液晶セル用光学補償シートは、特許登録第2866372号公報に記載がある。
【0157】
本発明において、前記記載の公報を参考にして各種のモードの液晶セル用位相差板(光学補償シート)を作製することができる。本発明の位相差板は、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Super Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)モードのような様々な表示モードの液晶表示装置に用いることができる。
液晶表示装置は、液晶セル、偏光素子及び位相差板(光学補償シート)からなる。偏光素子は、一般に偏光膜と保護膜からなる。偏光膜と保護膜については、上記楕円偏光で説明したものを用いることができる。
【実施例】
【0158】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0159】
[実施例1]
[位相差板の作製]
(ポリマーフィルム(支持体)の作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、30℃に加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
───────────────────────────────────
セルロースアセテート溶液組成(質量部) 内層 外層
───────────────────────────────────
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100 100
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8 7.8
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9 3.9
メチレンクロライド(第1溶媒) 293 314
メタノール(第2溶媒) 71 76
1−ブタノール(第3溶媒) 1.5 1.6
シリカ微粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)
0 0.8
下記レターデーション上昇剤 1.7 0
───────────────────────────────────
【0160】
【化58】

【0161】
得られた内層用ドープ及び外層用ドープを、三層共流延ダイを用いて、0℃に冷却したドラム上に流延した。残留溶剤量が70質量%のフィルムをドラムから剥ぎ取り、両端をピンテンターにて固定して搬送方向のドロー比を110%として搬送しながら80℃で乾燥させ、残留溶剤量が10%となったところで、110℃で乾燥させた。その後、140℃の温度で30分乾燥し、残留溶剤が0.3質量%のセルロースアセテートフィルム(外層:3μm、内層:74μm、外層:3μm)を製造した。作製したセルロースアセテートフィルム(フィルムPK−1)について、光学特性を測定した。
【0162】
得られたフィルムPK−1の幅は1340mmであり、厚さは80μmであった。エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて、波長500nmにおけるレターデーション値(Re)を測定したところ、6nmであった。また、波長500nmにおける厚さ方向のレターデーション値(Rth)を測定したところ、83nmであった。
作製したフィルムPK−1を2.0Nの水酸化カリウム溶液(25℃)に2分間浸漬した後、硫酸で中和し、純水で水洗、乾燥した。
【0163】
(配向膜の作製)
上記のフィルムPK−1の表面(アルカリ処理面)に、下記の組成の配向膜塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28ml/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥し、膜を作製した。
【0164】
───────────────────────────────────
配向膜塗布液組成
───────────────────────────────────
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
クエン酸エステル(三協化学製 AS3) 0.35質量部
───────────────────────────────────
【0165】
【化59】

【0166】
(ラビング処理)
上記のフィルムPK−1を速度20m/分で搬送し、長手方向に対して0°にラビング処理されるようにラビングロール(300mm直径)を設定し、650rpmで回転させて、フィルムPK−1上に形成された膜の表面にラビング処理を施して、配向膜を形成した。
【0167】
(光学異方性層の形成)
配向膜のラビング処理面に、下記の組成の光学異方性層塗布液を#3.0のワイヤーバーを391回転でフィルムの搬送方向と同じ方向に回転させて、20m/分で搬送されている配向膜面に連続的に塗布した。
───────────────────────────────────
1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物(TD1)
91.00質量部
円盤状化合物(例示化合物TP−1) 9.00質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3.00質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1.00質量部
フルオロ脂肪族基含有共重合体 1.00質量部
(メガファックF780 大日本インキ(株)製)
メチルエチルケトン 226.34質量部
───────────────────────────────────
【0168】
【化60】

【0169】
室温から100℃に連続的に加温する工程で、溶媒を乾燥させ、その後、110℃の乾燥ゾーンでディスコティック液晶化合物層の膜面風速が、2.5m/secとなるように、約90秒間加熱し、ディスコティック液晶化合物をハイブリッド配向させた。次に、80℃の乾燥ゾーンに搬送させて、フィルムの表面温度が約90℃の状態で、紫外線照射装置(紫外線ランプ:出力160W/cm、発光長1.6m)により、照度600mWの紫外線を4秒間照射し、架橋反応を進行させて、ディスコティック液晶化合物をその配向に固定した。その後、室温まで放冷し、円筒状に巻き取ってロール状の形態にした。このようにして、位相差板01を作製した。
更に位相差板01の作製において、円盤状化合物として用いた例示化合物TP−1の9質量部を、下記表1に示した液晶化合物に置き換えた以外は同様にして、位相差板02〜04をそれぞれ作製した。
【0170】
[実施例2]
実施例1で用いたフィルムPK−1を用い、その表面に、実施例1と同様にして、配向膜を形成した。
次に、光学異方性層の形成では、実施例1で用いた1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物(TD1)に換えて、例示化合物D−112を同じ配合比率で用いた以外は、実施例1と同様にして光学異方性層を形成し、位相差板05を作製した。
【0171】
更に位相差板05の作製において、円盤状化合物として用いた例示化合物TP−1の9質量部を、下記表1に示した液晶化合物に置き換えた以外は同様にして、位相差板06〜08をそれぞれ作製した。
【0172】
[比較例1]
下記の組成の光学異方性層塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例用位相差板Aを作製した。
───────────────────────────────────
1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物(TD1)
100.00質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3.00質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1.00質量部
フルオロ脂肪族基含有共重合体 1.00質量部
(メガファックF780 大日本インキ(株)製)
メチルエチルケトン 226.34質量部
───────────────────────────────────
【0173】
[比較例2]
比較例1において、1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物(TD1)に換えて例示化合物D−112を同じ配合比率で用いた以外は、比較例1と同様にして光学異方性層を形成し、位相差板Bを作製した。
【0174】
[チルト角測定用セルの形成及びチルト角の測定用試料調製]
<配向膜の形成>
厚さ1.1mmのガラスを洗浄後、これに、上記配向膜塗布液をワイヤーバーコーターで20ml/m2の塗布量で塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。
次に、ラビング布としてレーヨンを巻いたローラ直径65mmのラビングローラを用いて、回転数1000rpmで一往復のラビング処理を室温で行った。この際、布の毛の押し込み長さを0.1mmとしラビング処理を実施した。
【0175】
前記製作した配向付ガラス支持体を1.5cm×2.0cmの大きさに切断し、ラビング方向がアンチパラレルラビング方向になるように対向させ、その間に厚さ100μmの高分子フィルムをスペーサとして挟んで、周囲を接着剤で固定して、重合前のプレチルト角測定用のセルを製作した。次に、チルト角の測定用塗布液(上記実施例及び比較例で用いた光学異方性層塗布液に重合禁止剤(イルガノックス1010、チバガイギー社製、分子量1176)を2質量部加えたもの)を調製し、混合攪拌の後、これをエバポレーターを用いて溶媒を取り除く処理を行い、プレチルト角測定用組成物を得た。この組成物に含まれる残留溶媒や気泡を除去するために130℃のホットプレート上で30分加熱した。これを、130℃に加熱した前記製作したプレチルト角測定用セルに注入した。
【0176】
<チルト角(重合前)の測定>
セルに注入後、均一な配向が得られるまで130℃で保持した。その後、クリスタルローテーション法を用いて、90℃の温度で測定を行い、チルト角を求めた。測定には、He−Neレーザー(633nm)を光源として用いた。なお、前記組成物の調製及び測定はすべて黄色灯下で行い、また、プレチルト角測定後に組成物を回収して重合反応が生じていないことをNMR測定により確認した。
【0177】
[位相差板の評価]
得られた位相差板のそれぞれについて、偏光顕微鏡(Nikon製ECLIPSE LV100POL)とバックライトを設けたクロスニコル中での観察により、目視で配向状態の確認を行った。その結果を表1に示す。また、位相差板01〜04の偏光顕微鏡観察写真を図1(いずれも同様の観察写真が得られたので、代表として位相差板01の観察写真を図1に表示)、位相差板Aの偏光顕微鏡観察写真を図2にそれぞれ示す。
【0178】
【表1】

【0179】
表1及び図1の結果から、実施例の位相差板01〜08のいずれも、スジ状の欠陥がないことが理解できる。一方、円盤状化合物を併用していない液晶組成物を用いて作製された位相差板A、Bでは、スジ状の欠陥が多く観察された。これは、表1に示す通り、比較例では、重合前の液晶組成物の配向膜上におけるチルト角が大きかったのに対して、実施例では、円盤状化合物の作用によりチルト角が軽減されて、12°以下となっていたことが影響しているものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】実施例の位相差板の偏光顕微鏡観察写真である。
【図2】比較例の位相差板の偏光顕微鏡観察写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物の少なくとも一種と、円盤状構造(但し、1,3,5置換ベンゼン骨格は除く)を部分構造として有する化合物の少なくとも一種とを含有することを特徴とする液晶組成物。
【請求項2】
前記円盤状構造を部分構造として有する化合物が、下記一般式(TI)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の液晶組成物:
【化1】

式中、L1はそれぞれ独立に、−O−、−S−、−NH−を表し;R1は下記式(R−IA):
式(R−IA)
*−Cy1−(L1A−Cy2p−L2A−(L3Ar−Q1A
[式(R−IA)中、*はL1に結合する位置を表し;Cy1及びCy2はそれぞれ、少なくとも1種類の環状構造を有する二価の連結基を表し;L1Aは単結合又は二価の連結基を表し;L2Aは単結合又は二価の連結基を表し;L3Aは、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、又は置換アルキニレン基を表し;Q1Aは重合性基又は水素原子を表し;pは0〜2の整数を表し;rは0又は1を表す]を表す。
【請求項3】
前記1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物が、下記一般式(DI)で表される化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶組成物;
【化2】

一般式(DI)中、Y11、Y12及びY13は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に下記一般式(DI−A)、下記一般式(DI−B)又は下記一般式(DI−C);
【化3】

(一般式(DI−A)中、A11、A12、A13、A14、A15及びA16は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し、X1は、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し、L11は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−又は−C≡C−を表し、L12は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−及び−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q11はそれぞれ独立に、重合性基又は水素原子を表す。)
【化4】

(一般式(DI−B)中、A21、A22、A23、A24、A25及びA26は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し、X2は、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し、L21は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−又は−C≡C−を表し、L22は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−及び−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q21はそれぞれ独立に、重合性基又は水素原子を表す。)
【化5】

(一般式(DI−C)中、A31、A32、A33、A34、A35及びA36は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し、X3は、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し、L31は−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−又は−C≡C−を表し、L32は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−及び−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。Q31はそれぞれ独立に、重合性基又は水素原子を表す)を表す。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶組成物から形成されたことを特徴とする光学異方性膜。
【請求項5】
支持体と、該支持体上に、請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶組成物から形成された光学異方性層とを有することを特徴とする位相差板。
【請求項6】
前記支持体と前記光学異方性層との間に配向膜を有し、該配向膜が部分鹸化されたポリビニルアルコール誘導体を含有することを特徴とする請求項5に記載の位相差板。
【請求項7】
1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物の分子を配向膜の表面上で配向させる配向工程と、配向工程で得られた配向状態を固定することを含む光学異方性膜の製造方法であって、
前記配向工程において、1,3,5置換ベンゼン型ディスコティック液晶化合物の分子を、配向膜界面におけるチルト角1〜12°で配向させることを特徴とする光学異方性膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−97002(P2009−97002A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244245(P2008−244245)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】