説明

液晶組成物および液晶表示素子

【課題】ネマチック相の温度範囲が広く、粘度が小さく、適切な光学異方性を有し、負の誘電率異方性が大きく、比抵抗が大きい液晶組成物を提供し、さらに、この組成物を含有する液晶表示素子を提供する。
【解決手段】特定構造のフッ素を1つ含む液晶性化合物である第一成分と、特定構造のフッ素を2つ以上含む液晶性化合物である第二成分とを含有する誘電率異方性が負である液晶組成物、およびこの液晶組成物を含有する液晶表示素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶組成物およびこの組成物を含有する液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子(本発明において液晶表示素子とは液晶表示パネル、液晶表示モジュールの総称を意味する。)は、液晶組成物が有する光学異方性、誘電率異方性などを利用したものであるが、この液晶表示素子の表示モードには、PC(phase change)モード、TN(twisted nematic)モード、STN(super twisted nematic)モード、BTN(Bistable twisted nematic)モード、ECB(electrically controlled birefringence)モー
ド、OCB(optically compensated bend)モード、IPS(in-plane switching)モード、VA(vertical alignment)モードなどの様々なモードが知られている。これら表示モードの中でもECBモード、IPSモード、VAモードなどはTNモード、STNモード等の従来の表示モードの欠点である視野角の狭さを改善可能であることが知られている。これら表示モードの液晶表示素子には負の誘電率異方性を有する液晶組成物を使用できる。従来から、この負の誘電率異方性を有する液晶性組成物に含まれる2,3−ジフルオロフェニレンを有する液晶性化合物が検討されている(例えば、特許文献1および2)。また従来から、これら液晶表示素子に使用可能な負の誘電率異方性を有する液晶組成物も検討されている(例えば、特許文献4、5および6)。
【0003】
特許文献3には、フッ素一置換の液晶性化合物およびそれらの化合物を含有する液晶組成物が開示されている。しかし特許文献3では、正の誘電率異方性を有する液晶組成物しか検討されておらず、負の誘電率異方性を有する液晶組成物については全く検討されていない。特許文献4、5および6には、2,3−ジフルオロフェニレンを有する液晶性化合物とフッ素無置換の液晶性化合物を組み合わせた液晶組成物が開示されている。しかし、それらの組成物は負の誘電率異方性を有さないフッ素無置換の液晶性化合物を含んでいるため、誘電率異方性を負に大きくすることができない場合があった。また、特許文献4および6には、本発明の第一成分に類似のフッ素一置換の液晶性化合物を組み合わせた液晶組成物が開示されている。しかし、実施例等で実際に開示されている組成物は負の誘電率異方性が小さく、またネマチック相の下限温度は明らかにされていない。
【0004】
なお本明細書中では、「液晶性化合物」とは、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物、および、液晶相を有さないが液晶組成物として有用な化合物の総称を意味する。成分の含有割合は液晶性化合物の全重量に基づいて算出する。この際の液晶性化合物は、下記(A)式で示される化合物である。この化合物は光学活性であってもよい。
【0005】
【化1】

【0006】
上記(A)式中、RxおよびRyは、各々独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、アシルオキシ、アシルオキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルケニル、アルケニルオキシ、アルケニルオキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルキニル、アルキニルオキシ、シアノ、−NCS、フッ素、または塩素である。これら基において炭素数は10以下である。炭素数が1〜5の基において任意の水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく、置き
換えられたフッ素と塩素との合計は、1〜11である。上記(A)式中、環Bは、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、ピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、またはナフタレン−2,6−ジイルである。これら環Bにおいて任意の水素は、
フッ素または塩素で置き換えられてもよい。環Bにおいて置き換えられたフッ素と塩素との合計は1〜4である。1,4−フェニレンにおいて任意の1つまたは2つの水素は、シアノ、メチル、ジフルオロメチル、またはトリフルオロメチルで置き換えられてもよい。上記(A)式中、Yは、単結合、−(CH22−、−COO−、−OCO−、−CH2
−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(
CH24−、−(CH23−O−、−O−(CH23−、−CH=CH−(CH22−、−(CH22−CH=CH−、−(CH22CF2O−、−OCF2(CH22−、−(CH22COO−、−(CH22OCO−、−COO(CH22−、−OCO(CH22−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OC
O−、−COO−CH=CH−、または、−OCO−CH=CH−である。上記(A)式中、nは、1、2、3、または4である。
【特許文献1】特許第2811342号
【特許文献2】特許第1761492号
【特許文献3】特開平7−053432号公報
【特許文献4】独国特許出願公開第19607043号明細書
【特許文献5】特表2004−532344号公報(国際公開02/99010号パンフレット)
【特許文献6】特開平10−176167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
IPSモードおよびVAモード等の表示モードの液晶表示素子であっても、CRTと比較すれば表示素子としてはいまだ問題があり、物性の向上が望まれている。上述したIPSモード、あるいはVAモードで表示される液晶表示素子は、主に、負の誘電率異方性を有する液晶組成物を含有しているが、物性をさらに向上させるためには、液晶組成物が以下(1)〜(5)で示す特性を有することが好ましい。すなわち、(1)ネマチック相の温度範囲が広い、(2)粘度が小さい、(3)光学異方性が適切である、(4)誘電率異方性の絶対値が大きい、(5)比抵抗が大きい、ことが好ましい。
【0008】
ネマチック相の温度範囲は、液晶表示素子を使用する温度範囲に関連をしており、(1)のようにネマチック相の温度範囲が広い液晶組成物を含有する液晶表示素子は、液晶表示素子として使用する温度範囲を広げられる。(2)のように粘度の小さい液晶組成物を含有する液晶表示素子は、応答時間を短くすることができる。液晶表示素子の応答時間が短い場合には、動画表示に好適に使用できる。また、液晶表示素子の液晶セルに液晶組成物を注入する際に、注入時間を短縮し作業性を向上できる。(3)のように光学異方性が適切な液晶組成物を含有する液晶表示素子は、コントラスト比を大きくすることができる。(4)のように誘電率異方性の絶対値が大きい液晶組成物を含有する液晶表示素子は、しきい電圧を下げ、駆動電圧を低くすることができる。そして消費電力が小さくすることができる。(5)のように比抵抗が大きい液晶組成物を含有する液晶表示素子は、電圧保持率を大きくすることができ、コントラスト比を大きくすることができる。したがって、初期に大きな比抵抗を有し、さらに長時間使用したあとでも大きな比抵抗を有する液晶組成物が好ましい。
【0009】
本発明の目的は、ネマチック相の温度範囲が広く、粘度が小さく、適切な光学異方性を有し、負の誘電率異方性が大きく、比抵抗が大きい液晶組成物を提供することにある。ま
た本発明の他の目的は、これら複数の特性が適切にバランスした液晶組成物を提供することである。さらに本発明の他の目的は、この組成物を含有する液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、1つの水素がフッ素で置き換えられた特定構造の液晶性化合物とフッ素を2つ以上含む特定構造の液晶性化合物とを含有する液晶組成物が、ネマチック相の温度範囲が広く、粘度が小さく、適切な光学異方性を有し、負の誘電率異方性が大きく、比抵抗が大きいことを見い出し、本発明を完成するに到った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下〔1〕〜〔21〕に示す構成を有している。
〔1〕:式(1−1)〜式(1−3)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第一成分と、式(2−1)〜式(2−3)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第二成分とを含有する、負の誘電率異方性を有する液晶組成物。
【0012】
【化2】

【0013】
式(1−1)〜(1−3)、および式(2−1)〜式(2−3)において、
11およびR12は独立してアルキル、アルケニル、またはアルコキシであり;
環A11は独立して2−フルオロ−1,4−フェニレンまたは3−フルオロ−1,4−フェニレンであり;
環A12は独立して1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり;
環A13は独立して1,4−シクロヘキシレン、または任意の水素がフッ素、もしくは塩素によって置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;
11およびZ12は独立して単結合、―C24―、−CH2O−、または−OCH2−である。
【0014】
ただし、式(1−2)において、環A11が2−フルオロ−1,4−フェニレン、環A12が1,4−フェニレン、Z11およびZ12が単結合である化合物、および
式(1−3)において、環A11が3−フルオロ−1,4−フェニレン、環A12が1,4−フェニレン、Z11およびZ12が単結合である化合物は除く。
【0015】
〔2〕:式(1−1−1)、式(1−1−2)、式(1−2−1)、式(1−2−2)、式(1−2−3)、および式(1−3−1)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第一成分と、式(2−1−1)、式(2−2−1)、および式(2−3−1)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第二成分とを含有する、負の誘電率異方性を有する液晶組成物。
【0016】
【化3】

【0017】
式(1−1−1)、式(1−1−2)、式(1−2−1)、式(1−2−2)、式(1−2−3)、式(1−3−1)、式(2−1−1)、式(2−2−1)、および式(2−3−1)において、Raは独立してアルキル、またはアルケニルであり;Rbは独立してアルキル、アルケニル、またはアルコキシであり;
環A21は独立して2−フルオロ−1,4−フェニレン、または3−フルオロ−1,4−フェニレンであり;
環A22は独立して1,4−シクロヘキシレン、または1,4−フェニレンであり;
環A23は独立して1,4−シクロヘキシレン、または任意の水素がフッ素によって置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;
21は独立して−CH2O−、または−OCH2−である。
【0018】
〔3〕:上記式(1−1−1)、式(1−1−2)、式(1−2−1)、式(1−2−2)、および(1−2−3)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第一成分と、上記式(2−1−1)、式(2−2−1)、および式(2−3−1)
で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第二成分とを含有する項〔2〕に記載の液晶組成物。
【0019】
〔4〕:液晶性化合物の全重量に基づいて、第一成分の含有割合が10〜80重量%であり、第二成分の含有割合が20〜90重量%である項〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0020】
〔5〕:式(3−1)〜式(3−3)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第三成分をさらに含有する項〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0021】
【化4】

【0022】
式(3−1)〜式(3−3)において、Raは独立してアルキル、またはアルケニルで
あり;Rbは独立してアルキル、アルケニル、またはアルコキシであり;Rcはアルキル、アルケニル、アルコキシ、またはアルコキシメチルであり;複数の環A22はそれぞれ独立して、1,4−シクロヘキシレン、または1,4−フェニレンであり;環A23は1,4−シクロヘキシレン、または任意の水素がフッ素によって置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;Z22は独立して単結合、−CH2O−、−OCH2−、または−COO−である。
【0023】
〔6〕:液晶性化合物の全重量に基づいて、第一成分の含有割合が5〜75重量%であり、第二成分の含有割合が20〜80重量%であり、第三成分の含有割合が5〜45重量%である項〔5〕に記載の液晶組成物。
【0024】
〔7〕:式(1−1−1−1)、式(1−1−1−2)、式(1−1−2−1)、式(1−1−2−2)、式(1−2−1−1)、式(1−2−1−2)、式(1−2−2−1)、式(1−2−3−1)、および式(1−2−3−2)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第一成分と、式(2−1−1−1)、式(2−2−1−1)、式(2−2−1−2)、式(2−2−1−3)、式(2−2−1−4)、および式(2−2−1−5)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第二成分とを含有する、負の誘電率異方性を有する液晶組成物。
【0025】
【化5−A】

【0026】
【化5−B】

【0027】
式(1−1−1−1)、式(1−1−1−2)、式(1−1−2−1)、式(1−1−2−2)、式(1−2−1−1)、式(1−2−1−2)、式(1−2−2−1)、式(1−2−3−1)、式(1−2−3−2)、式(2−1−1−1)、式(2−2−1−1)、式(2−2−1−2)、式(2−2−1−3)、式(2−2−1−4)、および式(2−2−1−5)において、Raは独立してアルキル、またはアルケニルであり;Rbは独立してアルキル、アルケニル、またはアルコキシである。
【0028】
〔8〕:上記式(1−1−1−1)、式(1−1−2−1)、式(1−2−1−1)、および式(1−2−3−1)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第一成分と、上記式(2−1−1−1)、および式(2−2−1−1)〜式(2−2−1−5)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第二成分とを含有する項〔7〕に記載の液晶組成物。
【0029】
〔9〕:上記式(1−1−1−1)、式(1−1−1−2)、式(1−2−1−1)、式(1−2−1−2)、および式(1−2−2−1)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第一成分と、上記式(2−1−1−1)、および式(2−2−1−1)〜式(2−2−1−5)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第二成分とを含有する項〔7〕に記載の液晶組成物。
【0030】
〔10〕:上記式(1−1−1−1)、式(1−1−2−1)、式(1−2−1−1)、および式(1−2−3−1)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第一成分と、上記式(2−1−1−1)、式(2−2−1−1)、および式(2−2−1−2)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第二成分とを含有する項〔7〕に記載の液晶組成物。
【0031】
〔11〕:上記式(1−1−2−1)、式(1−1−2−2)、式(1−2−3−1)、および式(1−2−3−2)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第一成分と、上記式(2−1−1−1)、式(2−2−1−1)、および式(2−2−1−2)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第二成分とを含有する項〔7〕に記載の液晶組成物。
【0032】
〔12〕:上記式(1−1−2−1)、および式(1−2−3−1)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第一成分と、上記式(2−1−1−1)、式(2−2−1−1)、および式(2−2−1−2)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第二成分とを含有する項〔7〕に記載の液晶組成物。
【0033】
〔13〕:液晶性化合物の全重量に基づいて、第一成分の含有割合が30〜75重量%であり、第二成分の含有割合が25〜70重量%である項〔7〕〜〔12〕のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0034】
〔14〕:式(3−1−1)、式(3−1−2)、式(3−2−1)、式(3−3−1)、および式(3−3−2)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第三成分をさらに含有する項〔7〕〜〔12〕のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0035】
【化6】

【0036】
式(3−1−1)、式(3−1−2)、式(3−2−1)、式(3−3−1)、および式(3−3−2)において、Raは独立してアルキル、またはアルケニルであり;Rbは独立してアルキル、アルケニル、またはアルコキシであり;Rcは独立してアルキル、アル
ケニル、アルコキシ、またはアルコキシメチルである。
【0037】
〔15〕:第三成分が、上記式(3−1−1)、式(3−1−2)、および式(3−2−1)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である項〔14〕に記載の液晶組成物。
【0038】
〔16〕:第三成分が、上記式(3−2−1)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である項〔14〕に記載の液晶組成物。
〔17〕:液晶性化合物の全重量に基づいて、第一成分の含有割合が10〜65重量%であり、第二成分の含有割合が25〜60重量%であり、第三成分の含有割合が5〜35重量%である項〔14〕〜〔16〕のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0039】
〔18〕:液晶性化合物成分が、上記式(1−1−1)、式(1−1−2)、式(1−2−1)、式(1−2−2)、式(1−2−3)、および式(1−3−1)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第一成分と、上記式(2−1−1)、式(2−2−1)、および式(2−3−1)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物である第二成分と、上記式(3−1)〜式(3−3)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物である第三成分とだけからなる、負の誘電率異方性を有する液晶組成物。
【0040】
〔19〕:液晶性化合物成分が、上記式(1−1−1)、式(1−1−2)、式(1−2−1)、式(1−2−2)、式(1−2−3)、および式(1−3−1)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第一成分と、上記式(2−1−1)、式(2−2−1)、および式(2−3−1)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物である第二成分とだけからなる、負の誘電率異方性を有する液晶組成物。
【0041】
〔20〕:誘電率異方性の値が−6.5〜−2.0の範囲である項〔1〕〜〔19〕のいずれか1項に記載の液晶組成物。
〔21〕:光学異方性の値が0.080〜0.120の範囲である項〔1〕〜〔20〕のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0042】
〔22〕:項〔1〕〜〔21〕のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
〔23〕:VAモードまたはIPSモードで表示され、アクティブマトリックス方式で駆動される項〔22〕に記載の液晶表示素子。
【発明の効果】
【0043】
本発明の液晶組成物は、ネマチック相の温度範囲が広く、粘度が小さく、適切な光学異方性を有し、負の誘電率異方性が大きく、比抵抗が大きい。また上記組成物は、これら特性のバランスにも優れる。本発明の液晶組成物は、特に光学異方性を0.080〜0.120の範囲とし、誘電率異方性を−6.5〜−2.0の範囲とすることが可能である。本発明の液晶表示素子は上記液晶組成物を含有しており、電圧保持率が高い。また、この液晶表示素子は、VAモード、IPSモードなどで表示され、アクティブマトリクス(AM)方式で駆動する液晶表示素子(以下「AM素子」ともいう)として好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明の液晶組成物は、1つの水素がフッ素で置き換えられた特定構造の液晶性化合物である第一成分と、フッ素を2つ以上含む特定構造の液晶性化合物である第二成分と、必要に応じてさらに、特定構造の液晶性化合物である第三成分とを含有している。
【0045】
以下、まず各成分につき、成分に用いる化合物の構造、成分の特徴および効果、具体例および好ましい態様について説明をする。
〔第一成分〕
本発明の液晶組成物の第一成分は、下記式(1−1)〜式(1−3)で表されるフッ素
を1つ含む少なくとも1つの液晶性化合物である。
【0046】
【化7】

【0047】
上記式(1−1)〜式(1−3)において、各々独立して、R11、R12、環A11、環A12、Z11、およびZ12は以下のように定義される。
11およびR12は独立してアルキル、アルケニル、またはアルコキシである。
【0048】
上記アルキルの中でも、炭素数が1〜20のアルキルが好ましく、炭素数が1〜10のアルキルがより好ましく、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、およびオクチルがさらに好ましく、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、およびヘプチルが特に好ましい。
【0049】
上記アルケニルの中でも、炭素数が2〜20のアルケニルが好ましく、炭素数が2〜10のアルケニルがより好ましく、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、および5−ヘキセニルがさらに好ましく、ビニル、1−プロペニル、3−ブテニル、および3−ペンテニルが特に好ましい。
【0050】
なお、R11またはR12が上記アルケニルである場合には、これらのアルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存をしている。R11またはR12が、1−プロペニル、1−ブテニル、1−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ペンテニル、3−ヘキセニル、または5−ヘキセニル等の二重結合が始まる炭素の位置番号が奇数である場合にはトランス配置が好ましい。R11またはR12が、2−プロペニル、2−ブテニル、2−ペンテニル、4−ペンテニル、2−ヘキセニル、4−ヘキセニル等の二重結合が始まる炭素の位置番号が偶数である場合にはシス配置が好ましい。
【0051】
上記アルコキシの中でも、炭素数が1〜20のアルコキシが好ましく、炭素数が1〜10のアルコキシがより好ましく、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、およびヘプチルオキシがさらに好ましく、メトキシ、エトキシ、およびブトキシが特に好ましい。
【0052】
環A11は独立して2−フルオロ−1,4−フェニレンまたは3−フルオロ−1,4−フェニレンであり、環A12は独立して1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンである。Z11およびZ12は独立して単結合、―C24―、−CH2O−、または−OCH2−である。なお、上記式(1−1)〜式(1−3)で表される化合物に含まれる環が1,4−シクロへキシレンである場合には、その立体配置はトランス配置であることが好まし
い。
【0053】
ただし、式(1−2)において、環A11が2−フルオロ−1,4−フェニレン、環A12が1,4−フェニレン、Z11およびZ12が単結合である化合物、および式(1−3)において、環A11が3−フルオロ−1,4−フェニレン、環A12が1,4−フェニレン、Z11およびZ12が単結合である化合物は除く。
【0054】
上記式(1−1)〜式(1−3)で表される化合物はフッ素を1つだけ含有しており、そのフッ素含有基が、2−フルオロ−1,4−フェニレンまたは3−フルオロ−1,4−フェニレンであることに特徴がある。第一成分である液晶性化合物がこのような構造を有することにより、本発明に係る液晶組成物では、負の誘電率異方性を大きくすること、およびネマチック相の下限温度を低くすることができる。
【0055】
これら式(1−1)〜式(1−3)で表される化合物の中でも、下記式(1−1−1)、式(1−1−2)、式(1−2−1)〜式(1−2−3)、および式(1−3−1)で表される化合物が好ましい。
【0056】
【化8】

【0057】
上記式(1−1−1)、式(1−1−2)、式(1−2−1)、式(1−2−2)、式(1−2−3)、および式(1−3−1)において、各々独立して、Ra、Rb、環A21、環A22、およびZ21は以下のように定義される。
【0058】
aはアルキル、またはアルケニルである。アルキルおよびアルケニルの好ましい態様
については、R11の場合と同様である。Rbはアルキル、アルケニル、またはアルコキシ
である。アルキル、アルケニル、およびアルコキシの好ましい態様については、R11の場合と同様である。
【0059】
環A21は2−フルオロ−1,4−フェニレン、または3−フルオロ−1,4−フェニレンである。また、環A22は1,4−シクロヘキシレン、または1,4−フェニレンである。
【0060】
21は−CH2O−、または−OCH2−である。
第一成分である液晶性化合物が上記式で表される化合物である場合には、液晶組成物の誘電率異方性をより一層負に大きくすることができ、また、ネマチック相の下限温度を低くすることができる。
【0061】
これら化合物の中でも上記式(1−1−1)、および式(1−1−2)で表される液晶性化合物は、一般的な液晶性化合物と比較すると、ネマチック相の上限温度は高くはないが、粘度が中程度であり、光学異方性が中程度であり、負の誘電率異方性が中程度であり、比抵抗が大きい点に特徴がある。
【0062】
これら化合物の中でも上記式(1−2−1)、および式(1−2−2)で表される液晶性化合物は、一般的な液晶性化合物と比較すると、ネマチック相の上限温度は高く、粘度が中程度であり、光学異方性が中程度〜大であり、負の誘電率異方性が中程度であり、比抵抗が大きい点に特徴がある。
【0063】
これら化合物の中でも上記式(1−2−3)で表される液晶性化合物は、一般的な液晶性化合物と比較すると、ネマチック相の上限温度は高く、粘度が中程度〜大であり、光学異方性が中程度であり、負の誘電率異方性が中程度であり、比抵抗が大きい点に特徴がある。
【0064】
これら化合物の中でも上記式(1−3−1)で表される液晶性化合物は、一般的な液晶性化合物と比較すると、ネマチック相の上限温度は高く、粘度が中程度〜大であり、光学異方性が中程度〜大であり、負の誘電率異方性が中程度であり、比抵抗が大きい点に特徴がある。
【0065】
上記式(1−1−1)、式(1−1−2)、式(1−2−1)〜式(1−2−3)、および式(1−3−1)で表される化合物の中でも、式(1−1−1)、式(1−1−2)、および式(1−2−1)〜式(1−2−3)で表される化合物が好ましい。
【0066】
第一成分である液晶性化合物が上記式で表される化合物である場合には、ネマチック相の温度範囲を広く調整することができ、液晶組成物の誘電率異方性を負に大きくすることができる。
【0067】
また、上記式(1−1−1)、式(1−1−2)、式(1−2−1)〜式(1−2−3)、および式(1−3−1)で表される化合物の中でも、下記式(1−1−1−1)、式(1−1−1−2)、式(1−1−2−1)、式(1−1−2−2)、式(1−2−1−1)、式(1−2−1−2)、式(1−2−2−1)、式(1−2−3−1)、および式(1−2−3−2)で表される化合物がさらに好ましい。
【0068】
【化9】

【0069】
上記式(1−1−1−1)、式(1−1−1−2)、式(1−1−2−1)、式(1−1−2−2)、式(1−2−1−1)、式(1−2−1−2)、式(1−2−2−1)、式(1−2−3−1)、および式(1−2−3−2)において、Raは独立してアルキル
、またはアルケニルであり、これらアルキルおよびアルケニルの好ましい態様については、R11の場合と同様である。また、Rbは独立してアルキル、アルケニル、またはアルコ
キシであり、これらアルキル、アルケニル、およびアルコキシの好ましい態様については、R11の場合と同様である。
【0070】
第一成分である液晶性化合物が上記式で表される化合物である場合には、液晶組成物の誘電率異方性を負に大きくすることができる。また、液晶性化合物全重量に対する第一成分の含有割合を変化させることで、ネマチック相の温度範囲を容易に変化させられる。
【0071】
これら化合物の中でも上記式(1−1−1−1)、式(1−1−2−1)、式(1−2
−1−1)、および式(1−2−3−1)で表される液晶性化合物が好ましく、上記式(1−1−2−1)および式(1−2−3−1)で表される液晶性化合物がより好ましい。第一成分が上記化合物である場合には、特に液晶組成物の誘電率異方性をより負に大きくすることができる。
【0072】
これら化合物の中でも上記式(1−1−1−1)、式(1−1−1−2)、式(1−2−1−1)、式(1−2−1−2)、および式(1−2−2−1)で表される液晶性化合物である場合には、液晶組成物の粘度をより小さくすることができる。
【0073】
これら液晶性化合物は、第一成分として、単独で用いても、複数組み合わせて用いてもよい。
〔第二成分〕
本発明の液晶組成物の第二成分は、下記式(2−1)〜式(2−3)で表される少なくとも1つの液晶性化合物である。
【0074】
【化10】

【0075】
上記式(2−1)〜式(2−3)において、R11、R12、および環A12は、上記第一成分である式(1−1)〜(1−3)で表される化合物の場合と同様である。上記式(2−1)〜(2−3)において、環A13は、1,4−シクロヘキシレン、または任意の水素がフッ素、もしくは塩素によって置き換えられてもよい1,4−フェニレンである。
【0076】
上記式(2−1)〜式(2−3)で表される化合物はフッ素を2つ以上含んでおり、フッ素含有基として、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンを少なくとも1つ有することに特徴がある。第二成分である液晶性化合物がこのような構造を有することにより、本発明に係る液晶組成物では液晶組成物の誘電率異方性を負に大きくすることができる。
【0077】
これら式(2−1)〜式(2−3)で表される化合物の中でも、下記式(2−1−1)、式(2−2−1)、および式(2−3−1)で表される化合物が好ましい。
【0078】
【化11】

【0079】
上記式(2−1−1)、式(2−2−1)、および式(2−3−1)において、Ra
b、環A22は、上記第一成分である式(1−1−1)、式(1−1−2)、式(1−2
−1)〜式(1−2−3)、および式(1−3−1)で表される化合物の場合と同様である。上記式(2−1−1)、式(2−2−1)、および式(2−3−1)において、環A23は、1,4−シクロヘキシレン、または任意の水素がフッ素によって置き換えられてもよい1,4−フェニレンである。
【0080】
第二成分である液晶性化合物が上記式で表される化合物である場合には、液晶組成物の誘電率異方性を負に大きくすることができる。
これら化合物の中でも上記式(2−1−1)で表される液晶性化合物は、一般的な液晶性化合物と比較すると、ネマチック相の上限温度は必ずしも高くはないが、粘度が中程度であり、光学異方性が中程度〜比較的大であり、負の誘電率異方性が中程度〜比較的大であり、比抵抗が大きい点に特徴がある。
【0081】
これら化合物の中でも上記式(2−2−1)で表される液晶性化合物は、一般的な液晶性化合物と比較すると、ネマチック相の上限温度は中程度〜高く、粘度が中程度〜大であり、光学異方性が中程度〜大であり、負の誘電率異方性が大であり、比抵抗が大きい点に特徴がある。
【0082】
これら化合物の中でも上記式(2−3−1)で表される液晶性化合物は、一般的な液晶性化合物と比較すると、ネマチック相の上限温度は中程度〜高く、粘度が中程度〜大であり、光学異方性が中程度〜大であり、負の誘電率異方性が大であり、比抵抗が大きい点に特徴がある。
【0083】
上記式(2−1−1)、式(2−2−1)、および式(2−3−1)で表される化合物の中でも、下記式(2−1−1−1)、式(2−2−1−1)、式(2−2−1−2)、式(2−2−1−3)、式(2−2−1−4)、および式(2−2−1−5)で表される化合物が好ましい。
【0084】
【化12】

【0085】
上記式(2−1−1−1)、式(2−2−1−1)、式(2−2−1−2)、式(2−2−1−3)、式(2−2−1−4)、および式(2−2−1−5)においてRaは独立
してアルキル、またはアルケニルであり、これらアルキルおよびアルケニルの好ましい態様については、第一成分の式(1−1)〜式(1−3)で表される化合物中のR11の場合と同様である。また、Rbは独立してアルキル、アルケニルまたはアルコキシであり、こ
れらアルキル、アルケニル、およびアルコキシの好ましい態様については、上記R11の場合と同様である。
【0086】
第二成分である液晶性化合物が上記式で表される化合物である場合には、液晶組成物の誘電率異方性を負に大きくできる。また、液晶性化合物全重量に対する第二成分の含有割合を変化させることで、光学異方性を容易に変化させることができる。
【0087】
これら化合物の中でも、上記式(2−1−1−1)、式(2−2−1−1)、および式(2−2−1−2)で表される化合物が好ましい。第二成分が上記化合物である場合には、液晶組成物のネマチック相の上限温度をより高くし、誘電率異方性を負に大きくすることができる。また、液晶性化合物全重量に対する第二成分の含有割合を変化させることで、光学異方性を容易に変化させることができる。また他の第二成分である、式(2−2−1−3)、式(2−2−1−4)および式(2−2−1−5)等で表される化合物に較べて粘度をより小さくすることができる。
【0088】
これら液晶性化合物は、第二成分として、単独で用いても、複数組み合わせて用いてもよい。
〔第三成分〕
本発明の液晶組成物は、さらに必要に応じて、下記式(3−1)〜式(3−3)で表さ
れる少なくとも1つの液晶性化合物である第三成分を含有する。
【0089】
【化13】

【0090】
上記式(3−1)〜式(3−3)において、Raは独立してアルキル、またはアルケニ
ルであり、これらアルキルおよびアルケニルの好ましい態様については、第一成分の式(1−1)〜式(1−3)で表される化合物中のR11の場合と同様である。また、Rbは独
立してアルキル、アルケニル、またはアルコキシであり、これらアルキル、アルケニル、およびアルコキシの好ましい態様については、上記R11の場合と同様である。
【0091】
上記式(3−1)〜式(3−3)において、Rcはアルキル、アルケニル、アルコキシ
、またはアルコキシメチルある。これらアルキル、アルケニル、およびアルコキシの好ましい態様については、上記R11の場合と同様である。このアルコキシメチルの中でも、炭素数2〜20のアルコキシメチルが好ましく、炭素数2〜10のアルコキシメチルがより好ましく、メトキシメチル、エトキシメチル、プロポキシメチル、ブトキシメチル、およびペンチルオキシメチルがさらに好ましく、メトキシメチルが特に好ましい。
【0092】
上記式(3−1)〜式(3−3)において、Z22は単結合、−CH2O−、−OCH2−、または−COO−である。
上記式(3−1)〜式(3−3)において、複数の環A22はそれぞれ独立して、1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり、環A23は1,4−シクロヘキシレン、または任意の水素がフッ素によって置き換えられてもよい1,4−フェニレンである。
【0093】
第三成分である液晶性化合物がこのような構造を有することにより、本発明に係る液晶組成物の粘度を小さくすることができる。また、液晶性化合物全重量に対する第三成分の含有割合を変化させることで、ネマチック相の上限温度を容易に変化させることができ、光学異方性を容易に変化させることもできる。
【0094】
これら化合物の中でも上記式(3−1)で表される液晶性化合物は、一般的な液晶性化合物と比較すると、ネマチック相の上限温度はそれほど高くはないが、粘度が小さく、光学異方性が小〜中程度であり、負の誘電率異方性が極めて小さく、比抵抗が大きい点に特徴がある。
【0095】
これら化合物の中でも上記式(3−2)で表される液晶性化合物は、一般的な液晶性化合物と比較すると、ネマチック相の上限温度は中程度であり、粘度が小さく、光学異方性が中程度であり、負の誘電率異方性が極めて小さく、比抵抗が大きい点に特徴がある。
【0096】
これら化合物の中でも上記式(3−3)で表される液晶性化合物は、一般的な液晶性化合物と比較すると、ネマチック相の上限温度は極めて高く、粘度が中程度であり、光学異方性が中程度〜大であり、負の誘電率異方性が極めて小さく、比抵抗が大きい点に特徴がある。
【0097】
上記式(3−1)〜式(3−3)で表される化合物の中でも、下記式(3−1−1)、式(3−1−2)、式(3−2−1)、式(3−3−1)、および式(3−3−2)で表される化合物が好ましい。
【0098】
【化14】

【0099】
a、Rb、およびRcは、上記(3−1)〜式(3−3)で表される化合物の場合と同
様である。
第三成分である液晶性化合物が上記式で表される化合物である場合には、液晶組成物の粘度をより小さくすることができる。
【0100】
これら化合物の中でも上記式(3−1−1)、式(3−1−2)、および式(3−2−1)で表される化合物が好ましく、上記式(3−2−1)で表される化合物がより好ましい。第三成分が上記化合物である場合には、液晶組成物の粘度をさらに小さくすることができる。
【0101】
これら液晶性化合物は、第三成分として、単独で用いても、複数組み合わせて用いてもよい。
〔液晶性化合物の合成方法〕
以下、本発明に係る液晶組成物に用いる液晶性化合物の合成法を例示する。
【0102】
上記式(2−1−1−1)、および式(2−2−1−1)〜式(2−2−1−5)で表される化合物に代表される式(2−1)および式(2−2)で表される化合物は、特許2811342号公報に記載された方法に基づいて合成をすることができる。
【0103】
また、上記式(3−1−1)等で表される化合物に代表される式(3−1)で表される化合物は、特開昭59−70624号公報、または特開昭60−16940号公報に記載
された方法に基づいて合成することができる。
【0104】
なお、上記文献のみで合成できない化合物については、さらに、オーガニック・シンセシス(Organic Synthesis, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクション(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善
)などに記載された方法に基づいて合成することができる。
【0105】
〔液晶組成物(1)〕
以下、組成物の各成分の組合せ、各成分の好ましい割合について説明をする。
本発明の液晶組成物は、上記第一成分と第二成分とを組み合わせることに特徴がある(以下「液晶組成物(1)」ともいう。)。
【0106】
これら2成分を組み合わせることにより、組成物の誘電率異方性を負に大きくすること、およびネマチック相の下限温度を低くすることができる。液晶性化合物が第二成分および第三成分だけからなる液晶組成物と比較して、第二成分の含有割合を同じままにして第三成分を第一成分に置き換えた液晶組成物では、誘電率異方性を負に大きくすることができる。また、液晶性化合物が第二成分および第三成分だけからなる液晶組成物は、ネマチック相の下限温度を低く保ちながら組成物の誘電率異方性を負に大きくすることができない場合がある。
【0107】
本発明に係る上記液晶組成物(1)の第一成分および第二成分の含有割合は特に制限はされないが、上記液晶組成物(1)中の液晶性化合物の全重量に基づいて、第一成分の含有割合が10〜80重量%であり、第二成分の含有割合が20〜90重量%であることが好ましく、第一成分の含有割合が30〜75重量%であり、第二成分の含有割合が25〜70重量%であることがより好ましい。
【0108】
第一成分と第二成分との含有割合が上記範囲にある場合には、液晶組成物のネマチック相の温度範囲を広げ、適切な光学異方性にし、適切な範囲の誘電率異方性を有し、粘度を小さくし、さらに比抵抗を大きくすることができる。
【0109】
〔液晶組成物(2)〕
本発明に係る液晶組成物では、上記第一成分、第二成分に加えて、さらに上記第三成分を組み合わせたものも好ましい(以下「液晶組成物(2)」ともいう。)。このような組合せとすることによって、組成物の誘電率異方性を負に大きくすること、およびネマチック相の温度範囲を広くすることができる。本発明に係る上記液晶組成物(2)の第一成分、第二成分、および第三成分の含有割合は特に制限はされないが、液晶性化合物の全重量に基づいて、第一成分の含有割合が5〜75重量%の範囲、第二成分の含有割合が20〜80重量%の範囲、第三成分の含有割合が5〜45重量%の範囲であることが好ましく、第一成分の含有割合が10〜65重量%の範囲、第二成分の含有割合が25〜60重量%の範囲、第三成分の含有割合が5〜35重量%の範囲であることがより好ましい。
【0110】
上記液晶組成物(2)の第一成分、第二成分、および第三成分の含有割合が上記範囲にある場合には、液晶組成物のネマチック相の温度範囲を広げ、適切な光学異方性にし、適切な範囲の誘電率異方性を有し、粘度を小さくし、さらに比抵抗を大きくすることができる。
【0111】
〔液晶組成物の態様等〕
本発明に係る液晶組成物では、上記第一成分、第二成分、および必要に応じて添加する第三成分である液晶性化合物に加えて、例えば液晶組成物の特性を調整する目的で、さら
に他の液晶性化合物を添加して使用する場合がある。また、例えばコストの観点から、本発明の液晶組成物では、上記第一成分、第二成分、および必要に応じて添加する第三成分である液晶性化合物以外の液晶性化合物は添加せずに使用する場合もある。
【0112】
また本発明に係る液晶組成物には、さらに、光学活性化合物、色素、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加物を添加してもよい。
光学活性化合物を本発明に係る液晶組成物に添加した場合には、液晶にらせん構造を誘起して、ねじれ角を与えることなどができる。
【0113】
色素を本発明に係る液晶組成物に添加した場合には、液晶組成物をGH(Guest host)モードで表示される液晶表示素子に適用することなどが可能となる。
消泡剤を本発明に係る液晶組成物に添加した場合には、液晶組成物の運搬中、あるいは液晶表示素子を製造工程中で、該液晶組成物からの発泡を抑制することなどが可能となる。
【0114】
紫外線吸収剤、あるいは酸化防止剤を本発明に係る液晶組成物に添加した場合には、液晶組成物や該液晶組成物を含有する液晶表示素子の劣化を防止することなどが可能となる。例えば酸化防止剤は、液晶組成物を加熱したときに比抵抗の低下を抑制できる。
【0115】
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、トリアゾール系紫外線吸収剤などを挙げられる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例は、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノンである。
【0116】
ベンゾエート系紫外線吸収剤の具体例は、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−
ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートである。
トリアゾール系紫外線吸収剤の具体例は、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロキシフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、および2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾー
ルである。
【0117】
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、有機硫黄系酸化防止剤などを挙げられる。
フェノール系酸化防止剤の具体例は、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエ
ン、2,2'−メチレンビス(6−t−ブチルー4−メチルフェノール)、4,4'−ブチ
リデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−(2−オクタデシルオキシカルボニル)エチルフェノール、およびペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
である。
【0118】
有機硫黄系酸化防止剤の具体例は、ジラウリル−3,3'−チオプロピオネート、ジミ
リスチル−3,3'−チオプロピオネート、ジステアリル−3,3'−チオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、および2−メルカプトベンズイミダゾールである。
【0119】
紫外線吸収剤、酸化防止剤などに代表される上記添加物は、本発明の目的を損なわず、かつ添加物を添加する目的を達成できる範囲の量を添加して用いることができる。例えば、上記紫外線吸収剤を添加する場合には、その添加割合は、液晶性化合物の全重量に基づいて、通常100ppm〜1000000ppmの範囲の量、好ましくは100〜100
00ppmの範囲の量、より好ましくは1000〜10000ppmの範囲の量である。例えば、上記酸化防止剤を添加する場合には、その添加割合は、液晶性化合物の全重量に基づいて、通常10ppm〜500ppmの範囲の量、好ましくは30〜300ppmの範囲の量、より好ましくは40〜200ppmの範囲の量である。
【0120】
なお、本発明に係る液晶組成物は、液晶組成物を構成する各化合物の合成工程、液晶組成物の調製工程等において混入する合成原料、副生成物、反応溶媒、合成触媒等の不純物を含んでいる場合もある。
【0121】
〔液晶組成物の製造方法〕
本発明に係る液晶組成物は、例えば、各成分となる化合物が液体の場合には、それぞれの化合物を混合し振とうさせることにより、また固体を含む場合には、それぞれの化合物を混合し、加熱溶解によってお互い液体にしてから振とうさせることにより調製できる。また、本発明に係る液晶組成物はその他の公知の方法により調製できる。
【0122】
〔液晶組成物の特性〕
本発明に係る液晶組成物では、通常、0.080〜0.120の範囲の光学異方性を有する。なお、本発明に係る液晶組成物では、組成等を適宜調整することで、光学異方性を0.050〜0.180の範囲、0.050〜0.200の範囲とすることもできる。
【0123】
また、本発明に係る液晶組成物では、通常、−6.5〜−2.0の範囲の誘電率異方性、好ましくは、−5.0〜−2.5の範囲の誘電率異方性を有する液晶組成物を得ることができる。上記数値範囲にある液晶組成物は、IPSモード、およびVAモードで表示される液晶表示素子として好適に使用することができる。
【0124】
本発明に係る液晶組成物では、通常、上記数値範囲の光学異方性、および上記数値範囲の誘電率異方性の両方を有する液晶組成物を得ることができる。
また、VAモード、IPSモードで表示される液晶表示素子のコントラスト比を最大にするために、液晶組成物の光学異方性(Δn)と液晶表示素子のセルギャップ(d)との積の値(Δn・d)を一定値とするように設計する。VAモードでは、この値(Δn・d)を例えば0.30〜0.35μmの範囲とすることが好ましく、IPSモードでは、例えば0.20〜0.30μmの範囲とすることが好ましい。なお、セルギャップ(d)は通常3〜6μmであるので、コントラスト比を最大とするためには液晶組成物の光学異方性は、例えば0.05〜0.11の範囲であることが好ましい。セルギャップ(d)が3μm以下である場合には、液晶組成物の光学異方性は、0.10〜0.11の範囲より大きいことが好ましい。
【0125】
〔液晶表示素子〕
本発明に係る液晶組成物は液晶表示素子に用いることができる。本発明に係る液晶表示素子は、AM方式、パッシブマトリクス(PM)方式のいずれで駆動をしてもよいし、PCモード、TNモード、STNモード、OCBモード、VAモード、IPSモード等のいずれの表示モードで表示されてもよい。これらAM方式、およびPM方式で駆動する液晶表示素子は、反射型、透過型、半透過型、いずれの液晶ディスプレイ等にも適用ができる。
【0126】
また、本発明に係る液晶組成物は、導電剤を添加させた液晶組成物を用いたDS(dynamic scattering)モード素子や、液晶組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)素子や、液晶組成物中に三次元の網目状高分子
を形成させたPD(polymer dispersed)素子、例えばPN(polymer network)素子にも使用できる。
【0127】
本発明に係る液晶組成物は上述のような特性を有するので、中でも負の誘電率異方性を利用した表示モード、例えば、VAモード、IPSモードなどで表示するAM方式の液晶表示素子に好適に用いることができ、特に、VAモードで表示するAM方式の液晶表示素子に好適に用いることができる。
【0128】
なお、TNモード、VAモード等で表示する液晶表示素子においては、電場の方向は、液晶層に対して垂直である。一方、IPSモード等で表示する液晶表示素子においては、電場の方向は、液晶層に対して平行である。VAモードで表示する液晶表示素子の構造は、K. Ohmuro, S. Kataoka, T. Sasaki and Y. Koike, SID '97 Digest of Technical Papers, 28, 845 (1997)に報告されており、IPSモードで表示する液晶表示素子の構造は
、国際公開91/10936号パンフレット(ファミリー:US5576867)に報告されている。
【0129】
〔実施例〕
以下、本発明で得られる液晶組成物を実施例により詳細に説明する。なお、実施例で用いる液晶性化合物は、下記表1の定義に基づいて記号により表す。なお、表1中、1,4−シクロへキシレンの立体配置はトランス配置である。各化合物の割合(百分率)は、特に断りのない限り、液晶性化合物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。各実施例の最後に得られた液晶組成物の特性値を示す。
【0130】
なお、各実施例で使用する液晶性化合物の部分に記載した番号は、上述した本発明の第一成分から第三成分に用いる液晶性化合物を示す式番号に対応をしており、式番号を記載せずに、単に「−」と記載をしている場合には、この化合物はこれら成分には対応をしていないその他の液晶性化合物であることを意味している。
【0131】
化合物の記号による表記方法を以下に示す。
【0132】
【表1】

【0133】
特性値の測定は以下の方法にしたがって行った。これら測定方法の多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。
【0134】
(1)ネマチック相の上限温度(NI;℃)
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。以下、ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略することがある。
【0135】
(2)ネマチック相の下限温度(Tc;℃)
ネマチック相を有する試料をガラス瓶に入れ、0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、Tcを≦−20℃と記載した。以下、ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0136】
(3)光学異方性(Δn;25℃で測定)
波長が589nmである光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により測定した。まず、主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。そして、偏光の方向がラビングの方向と平行であるときの屈折率(n‖)、および偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときの屈折率(n⊥)を測定した。光学異方性の値(Δn)は、
(Δn)=(n‖)−(n⊥)
の式から算出した。
【0137】
(4)粘度(η;20℃で測定;mPa・s)
測定にはE型粘度計を用いた。
(5)誘電率異方性(Δε;25℃で測定)
よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16ml)のエタノール(20ml)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板から、間隔(セルギャップ)が20μmであるVA素子を組み立てた。
【0138】
同様の方法で、ガラス基板にポリイミドの配向膜を調製した。得られたガラス基板の配向膜にラビング処理をした後、2枚のガラス基板の間隔が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子を組み立てた。
【0139】
得られたVA素子に試料(液晶組成物)を入れ、0.5V(1kHz、サイン波)を印加して、液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。
また、得られたTN素子に試料(液晶組成物)を入れ、0.5V(1kHz、サイン波)を印加して、液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。
【0140】
誘電率異方性の値は、(Δε)=(ε‖)−(ε⊥)の式から算出した。
この値が負である組成物が、負の誘電率異方性を有する組成物である。
(6)電圧保持率(VHR;25℃と100℃で測定;%)
ポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が6μmであるセルに試料を入れてTN素子を作製した。25℃において、このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。TN素子に印加した電圧の波形を陰極線オシロスコープで観測し、単位周期(16.7ミリ秒)における電圧曲線と横軸との間の面積を求めた。TN素子を取り除いたあと印加した電圧の波形から同様にして面積を求めた。電圧保持率(%)の値は、
(電圧保持率)=(TN素子がある場合の面積値)/(TN素子がない場合の面積値)×100
の式から算出した。
【0141】
このようにして得られた電圧保持率を「VHR−1」として示した。つぎに、このTN素子を100℃、250時間加熱した。このTN素子を25℃に戻したあと、上述した方法と同様の方法により電圧保持率を測定した。この加熱試験をした後に得た電圧保持率を
「VHR−2」として示した。なお、この加熱テストは促進試験であり、TN素子の長時間耐久試験に対応する試験である。
【0142】
(7)ガスクロ分析
測定装置は、島津製作所製のGC−14B型ガスクロマトグラフ、またはその同等の測定機器を用いた。カラムは、島津製作所製のキャピラリーカラムCBP1−M25−025(長さ25m、内径0.22mm、膜厚0.25μm;固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。キャリアーガスとしてはヘリウムを用い、流量は2ml/分に調整した。このカラムは、200℃で2分間保持した後、5℃/分の割合で280℃まで昇温した。試料気化室の温度を280℃、検出器(FID)部分の温度を300℃に設定した。
【0143】
試料はアセトンに溶解して、0.1重量%の溶液となるように調製し、得られた溶液1μlを試料気化室に注入した。
記録計としては島津製作所製のC−R5A型Chromatopac、またはその同等品を用いた
。得られたガスクロマトグラムには、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積値が示されている。
【0144】
なお、試料の希釈溶媒としては、例えば、クロロホルム、ヘキサンを用いてもよい。また、カラムとしては、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリーカラムDB−1(長
さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Agilent Technologies Inc.製のH
P−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty.Ltd製のBP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)などを用い
てもよい。化合物ピークの重なりを防ぐ目的で島津製作所製のキャピラリーカラムCBP1−M50−025(長さ50m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いてもよい。
【0145】
ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は成分化合物の割合に相当する。一般には、試料の成分化合物の重量%は、試料の各ピークの面積%とは完全に同一ではないが、本発明において、上述のカラムを用いる場合には、実質的に補正係数は1であるので、試料中の成分化合物の重量%は、試料中の各ピークの面積%とほぼ対応する。各成分の液晶性化合物における補正係数に大きな差異がないからである。ガスクロクロマトグラムにより液晶組成物中の液晶化合物の組成比をより正確に求めるには、ガスクロマトグラムによる内部標準法を用いる。一定量正確に秤量された各液晶化合物成分(被検成分)と基準となる液晶化合物(基準物質)を同時にガスクロ測定して、得られた被検成分のピークと基準物質のピークとの面積比の相対強度をあらかじめ算出する。基準物質に対する各成分のピーク面積の相対強度を用いて補正すると、液晶組成物中の液晶化合物の組成比をガスクロ分析からより正確に求めることができる。
【0146】
〔比較例1〕
本発明の第二成分および第三成分を含有する以下の組成物を調合し、上述した方法により各特性値を測定した。
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1−1−1) 14%
5−HB(2F,3F)−O2 (2−1−1−1) 14%
3−HHB(2F,3F)−O2 (2−2−1−1) 11%
5−HHB(2F,3F)−O2 (2−2−1−1) 11%
2−HHB(2F,3F)−1 (2−2−1−1) 10%
3−HHB(2F,3F)−1 (2−2−1−1) 10%
3−HH−4 (3−1−1) 7%
3−HH−5 (3−1−1) 7%
3−HB−O1 (3−1−2) 8%
5−HB−3 (3−1−2) 8%
NI=68.9℃;Tc≦−10℃;Δn=0.081;Δε=−3.3;
VHR−1=99.3%.
【実施例1】
【0147】
以下の組成物を調合し、上述した方法により各特性値を測定した。
3−HB(2F)−O2 (1−1−1−1) 8%
3−HB(3F)−O2 (1−1−1−2) 8%
3−HHB(2F)−O2 (1−2−1−1) 7%
3−HHB(3F)−O2 (1−2−1−2) 7%
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1−1−1) 14%
5−HB(2F,3F)−O2 (2−1−1−1) 14%
3−HHB(2F,3F)−O2 (2−2−1−1) 11%
5−HHB(2F,3F)−O2 (2−2−1−1) 11%
2−HHB(2F,3F)−1 (2−2−1−1) 10%
3−HHB(2F,3F)−1 (2−2−1−1) 10%
NI=84.3℃;Tc≦−10℃;Δn=0.096;Δε=−4.3;
η=38.8mPa・s;VHR−1=99.3%.
比較例1の組成物において、第三成分のハロゲン無置換の液晶性化合物を第一成分のフッ素1置換化合物に置き換えた。比較例1と較べて、この実施例1の組成物の下限温度は同等であるが、上限温度が高く、Δεが負に大きく、また大きな電圧保持率を有する。第一成分および第二成分の組合せによりネマチック相の温度範囲を広くすることができ、またΔεを負に大きくすることができた。
【実施例2】
【0148】
以下の組成物を調合し、上述した方法により各特性値を測定した。
3−HB(2F)−3 (1−1−1−1) 8%
3−HB(2F)−O2 (1−1−1−1) 8%
3−HHB(2F)−O2 (1−2−1−1) 6%
3−HHB(2F)−1 (1−2−1−1) 6%
3−HHB(3F)−O2 (1−2−1−2) 7%
3−HHB(3F)−1 (1−2−1−2) 8%
3−H1OB(2F)−O2 (1−1−2−1) 6%
3−H1OB(3F)−3 (1−1−2−2) 6%
3−H1OB(3F)−O2 (1−1−2−2) 6%
3−H1OB(2F)H−3 (1−3−1) 7%
3−H1OB(2F)H−O2 (1−3−1) 7%
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1−1−1) 5%
3−HB(2F,3F)−O4 (2−1−1−1) 5%
5O−HHB(2F,3F)−1 (2−2−1−1) 5%
3−HB(2F)B(2F,3F)−O2 (2−2−1−3) 5%
3−HB(3F)B(2F,3F)−O2 (2−2−1−4) 5%
NI=71.2℃;Tc≦−20℃;Δn=0.087;Δε=−3.3;
η=28.4mPa・s。
比較例1と較べて、この実施例2の組成物は上限温度が高く、下限温度が≦−20℃と低く、ネマチック相の温度範囲を広くすることができた。
【実施例3】
【0149】
以下の組成物を調合し、上述した方法により各特性値を測定した。
3−HB(3F)−3 (1−1−1−2) 10%
3−HB(3F)−O2 (1−1−1−2) 10%
3−H1OB(2F)H−3 (1−3−1) 7%
3−H1OB(2F)H−O2 (1−3−1) 8%
3−H1OB(2F)B−3 (1−3−1) 8%
3−H1OB(2F)B−O2 (1−3−1) 7%
3−HH1OB(2F)−O2 (1−2−3−1) 5%
3−HH1OB(2F)−1 (1−2−3−1) 5%
5−HB(2F,3F)−O2 (2−1−1−1) 5%
5−HB(2F,3F)−O4 (2−1−1−1) 5%
3−HHB(2F,3F)−1 (2−2−1−1) 5%
3−HHB(2F,3F)−2 (2−2−1−1) 5%
3−HHB(2F,3F)−O2 (2−2−1−1) 7%
5−HHB(2F,3F)−O2 (2−2−1−1) 8%
5−HBB(2F,3F)−O2 (2−2−1−2) 5%
NI=98.1℃;Tc≦−20℃;Δn=0.108;Δε=−3.4;
η=32.5mPa・s。
比較例1に較べて、この実施例3の組成物は上限温度が高く、下限温度が≦−20℃と低く、ネマチック相の温度範囲を広くすることができた。
【実施例4】
【0150】
以下の組成物を調合し、上述した方法により各特性値を測定した。
3−HHB(2F)−O2 (1−2−1−1) 5%
3−HHB(3F)−1 (1−2−1−2) 5%
3−HHB(3F)−O2 (1−2−1−2) 5%
3−HH1OB(2F)−1 (1−2−3−1) 7%
3−HH1OB(2F)−O2 (1−2−3−1) 7%
2O−HHB(2F,3F)−1 (2−2−1−1) 7%
3−HHB(2F,3F)−O2 (2−2−1−1) 7%
5−HHB(2F,3F)−O2 (2−2−1−1) 6%
5O−HHB(2F,3F)−1 (2−2−1−1) 7%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−2−1−2) 8%
5−HBB(2F,3F)−O2 (2−2−1−2) 8%
3−HB−O2 (3−1−2) 7%
5−HB−O2 (3−1−2) 7%
5−HB−3 (3−1−2) 7%
7−HB−1 (3−1−2) 7%
NI=102.8℃;Tc≦−20℃;Δn=0.098;Δε=−3.1;
η=27.7mPa・s;VHR−1=99.2%。
比較例1に較べて、この実施例4の組成物は上限温度が高く、下限温度が≦−20℃と低く、ネマチック相の温度範囲を広くすることができた。またこの組成物は、大きな電圧保持率を有する。
【実施例5】
【0151】
以下の組成物を調合し、上述した方法により各特性値を測定した。
3−HB(2F)−O2 (1−1−1−1) 7%
3−HHB(3F)−1 (1−2−1−2) 6%
3−H1OB(3F)−3 (1−1−2−2) 7%
3−H1OB(3F)−O2 (1−1−2−2) 6%
3−H1OB(2F)H−3 (1−3−1) 6%
3−H1OB(2F)B−3 (1−3−1) 5%
3−H1OB(2F)B−O2 (1−3−1) 5%
3−HH1OB(2F)−O2 (1−2−3−1) 5%
3−HH1OB(2F)−1 (1−2−3−1) 5%
3−HHB(2F,3F)−O1 (2−2−1−1) 5%
3−HHB(2F,3F)−O2 (2−2−1−1) 7%
5−HHB(2F,3F)−O2 (2−2−1−1) 8%
5−HBB(2F,3F)−O2 (2−2−1−2) 8%
3−HH−4 (3−1−1) 7%
3−HB−O2 (3−1−2) 6%
5−HB−3 (3−1−2) 7%
NI=90.5℃;Tc≦−20℃;Δn=0.098;Δε=−2.7;
η=27.5mPa・s。
比較例1と較べて、この実施例5の組成物は上限温度が高く、下限温度が≦−20℃と低く、ネマチック相の温度範囲を広くすることができた。
【実施例6】
【0152】
以下の組成物を調合し、上述した方法により各特性値を測定した。
3−HB(3F)−3 (1−1−1−2) 8%
3−HB(3F)−O2 (1−1−1−2) 8%
3−HHB(3F)−O2 (1−2−1−2) 5%
3−HHB(3F)−1 (1−2−1−2) 5%
3−H1OB(2F)−3 (1−1−2−1) 7%
3−H1OB(2F)H−3 (1−3−1) 7%
3−H1OB(2F)H−O2 (1−3−1) 7%
3−HH1OB(2F)−O2 (1−2−3−1) 5%
3−HH1OB(2F)−1 (1−2−3−1) 5%
3−HB1OB(2F)−O2 (1−2−3) 5%
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1−1−1) 8%
3−HB(2F,3F)−O4 (2−1−1−1) 8%
3−HB(2F)B(2F,3F)−O2 (2−2−1−3) 7%
3−HB(3F)B(2F,3F)−O2 (2−2−1−4) 7%
1O1−HBBH−3 (3−3−1) 5%
1O1−HBBH−5 (3−3−1) 3%
NI=85.3℃;Tc≦−20℃;Δn=0.100;Δε=−3.5;
η=32.4mPa・s。
比較例1と較べて、この実施例6の組成物は上限温度が高く、下限温度が≦−20℃と低く、ネマチック相の温度範囲を広くすることができた。
【実施例7】
【0153】
以下の組成物を調合し、上述した方法により各特性値を測定した。
3−HB(2F)−O2 (1−1−1−1) 5%
3−HHB(3F)−O2 (1−2−1−2) 3%
3−HBB(3F)−O2 (1−2−2−1) 5%
3−H1OB(3F)−3 (1−1−2−2) 6%
3−H1OB(2F)H−O2 (1−3−1) 5%
3−H1OB(2F)B−O2 (1−3−1) 6%
3−HB1OB(2F)−O2 (1−2−3) 5%
3−HB1OB(2F)−1 (1−2−3) 5%
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1−1−1) 5%
3−HB(2F,3F)−O4 (2−1−1−1) 6%
2O−HHB(2F,3F)−1 (2−2−1−1) 3%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−2−1−2) 7%
5−HBB(2F,3F)−O2 (2−2−1−2) 7%
3−HB(3F)B(2F,3F)−O2 (2−2−1−4) 7%
3−HH−4 (3−1−1) 8%
5−HB−3 (3−1−2) 7%
3−HHB−3 (3−2−1) 5%
3−HHB−O1 (3−2−1) 5%
NI=91.0℃;Tc≦−20℃;Δn=0.108;Δε=−3.4;
η=28.1mP・s。
比較例1と較べて、この実施例7の組成物は上限温度が高く、下限温度が≦−20℃と低く、ネマチック相の温度範囲を広くすることができた。
【実施例8】
【0154】
以下の組成物を調合し、上述した方法により各特性値を測定した。
3−HB(2F)−3 (1−1−1−1) 10%
3−HB(2F)−O2 (1−1−1−1) 10%
3−HHB(2F)−O2 (1−2−1−1) 7%
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1−1−1) 10%
3−HB(2F,3F)−O4 (2−1−1−1) 10%
3−HB(2F)B(2F,3F)−O2 (2−2−1−3) 8%
3−HB(3F)B(2F,3F)−O2 (2−2−1−4) 7%
3−HB(2F,3F)B(2F,3F)−O2 (2−2−1−5) 7%
3−HB−O2 (3−1−2) 8%
5−HB−O2 (3−1−2) 8%
5−HBB(3F)B−2 (3−3−2) 5%
5−HBB(3F)B−O2 (3−3−2) 5%
5−HBB(3F)B−3 (3−3−2) 5%
NI=80.3℃;Tc≦−20℃;Δn=0.116;Δε=−4.3;
η=34.1mPa・s。
比較例1と較べて、この実施例8の組成物は上限温度が高く、下限温度が≦−20℃と低く、Δεが負に大きい。
【実施例9】
【0155】
以下の組成物を調合し、上述した方法により各特性値を測定した。
3−HB1OB(2F)−O2 (1−2−3) 6%
3−HB1OB(2F)−1 (1−2−3) 6%
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1−1−1) 11%
3−HB(2F,3F)−O4 (2−1−1−1) 10%
5−HB(2F,3F)−O2 (2−1−1−1) 10%
5−HB(2F,3F)−O4 (2−1−1−1) 9%
3−HB(2F)B(2F,3F)−O2 (2−2−1−3) 7%
3−HB(3F)B(2F,3F)−O2 (2−2−1−4) 7%
3−HB(2F,3F)B(2F,3F)−O2 (2−2−1−5) 6%
V−HHB−1 (3−2−1) 8%
V2−HHB−1 (3−2−1) 8%
1O1−HBBH−4 (3−3−1) 5%
1O1−HBBH−5 (3−3−1) 4%
5−HBB(3F)B−2 (3−3−2) 3%
NI=91.8℃;Tc≦−20℃;Δn=0.110;Δε=−4.1;
η=36.7mPa・s。
比較例1と較べて、この実施例9の組成物は上限温度が高く、下限温度が≦−20℃であり、Δεが負に大きい。
【実施例10】
【0156】
以下の組成物を調合し、上述した方法により各特性値を測定した。
3−HB(3F)−3 (1−1−1−2) 10%
3−HB(3F)−O2 (1−1−1−2) 8%
3−HHB(2F)−1 (1−2−1−1) 5%
3−HHB(3F)−O2 (1−2−1−2) 5%
3−HHB(3F)−1 (1−2−1−2) 5%
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1−1−1) 5%
3−HB(2F,3F)−O4 (2−1−1−1) 5%
3−HHB(2F,3F)−O2 (2−2−1−1) 5%
5−HHB(2F,3F)−O2 (2−2−1−1) 3%
3−HB(2F)B(2F,3F)−O2 (2−2−1−3) 8%
3−HB(3F)B(2F,3F)−O2 (2−2−1−4) 8%
2−HH−5 (3−1−1) 5%
3−HH−4 (3−1−1) 12%
3−HHB−3 (3−2−1) 5%
3−HHB−O1 (3−2−1) 3%
5−HBB(3F)B−2 (3−3−2) 3%
5−HBB(3F)B−O2 (3−3−2) 5%
NI=94.3℃;Tc≦−20℃;Δn=0.096;Δε=−3.4;
η=31.5mPa・s。
比較例1と較べて、この実施例10の組成物は上限温度が高く、下限温度が≦−20℃と低く、ネマチック相の温度範囲を広くすることができた。
【実施例11】
【0157】
以下の組成物を調合し、上述した方法により各特性値を測定した。
3−HB(2F)−O2 (1−1−1−1) 13%
3−HB(3F)−O2 (1−1−1−2) 13%
3−HHB(2F)−O2 (1−2−1−1) 7%
5−HHB(2F)−O2 (1−2−1−1) 7%
3−HHB(3F)−O2 (1−2−1−2) 7%
5−HHB(3F)−O2 (1−2−1−2) 7%
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1−1−1) 13%
5−HB(2F,3F)−O2 (2−1−1−1) 13%
3−HHB(2F,3F)−O2 (2−2−1−1) 4%
2−HHB(2F,3F)−1 (2−2−1−1) 8%
3−HHB(2F,3F)−1 (2−2−1−1) 8%
NI=71.2℃;Tc≦−20℃;Δn=0.091;Δε=−3.1;
η=23.0mPa・s
比較例1と較べて、この実施例11の組成物は上限温度が高く、下限温度が≦−20℃と低く、ネマチック相の温度範囲を広くすることができた。
【実施例12】
【0158】
以下の組成物を調合し、上述した方法により各特性値を測定した。
3−HB(2F)−O2 (1−1−1−1) 5%
5−HB(3F)−O1 (1−1−1−2) 5%
3−HHB(3F)−O2 (1−2−1−2) 4%
3−HBB(3F)−O2 (1−2−2−1) 4%
3−H1OB(3F)−3 (1−1−2−2) 7%
3−H1OB(2F)H−O2 (1−3−1) 5%
3−H1OB(2F)B−O2 (1−3−1) 5%
3−HB1OB(2F)−1 (1−2−3) 5%
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1−1−1) 5%
3−HB(2F,3F)−O4 (2−1−1−1) 6%
3−HBB(2F,3F)−O2 (2−2−1−2) 7%
5−HBB(2F,3F)−O2 (2−2−1−2) 7%
3−HH−4 (3−1−1) 9%
3−HB−5 (3−1−2) 6%
3−HHB−3 (3−2−1) 6%
3−HHB−O1 (3−2−1) 4%
5−HHB(3F)−F − 5%
4−HBB(3F)−F − 5%
NI=84.7℃;Tc≦−20℃;Δn=0.101;Δε=−2.4;
η=29.3mP・s。
比較例1と較べて、この実施例12の組成物は上限温度が高く、下限温度が≦−20℃と低く、ネマチック相の温度範囲を広くすることができた。
【実施例13】
【0159】
実施例4の組成物に酸化防止剤として140ppmの3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒ
ドロキシトルエンを添加した。得られた組成物の特性は次のとおりであった。
NI=102.8℃;Tc≦−20℃;Δn=0.098;Δε=−3.1;
η=27.7mPa・s;VHR−1=99.2%。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1−1)〜式(1−3)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第一成分と、式(2−1)〜式(2−3)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第二成分とを含有する、負の誘電率異方性を有する液晶組成物。
【化1】

(式(1−1)〜式(1−3)、および式(2−1)〜式(2−3)において、
11およびR12は独立してアルキル、アルケニル、またはアルコキシであり;
環A11は独立して2−フルオロ−1,4−フェニレン、または3−フルオロ−1,4−フェニレンであり;
環A12は独立して1,4−シクロヘキシレン、または1,4−フェニレンであり;
環A13は独立して1,4−シクロヘキシレン、または任意の水素がフッ素、もしくは塩素によって置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;
11およびZ12は独立して単結合、―C24―、−CH2O−、または−OCH2−である。
ただし、式(1−2)において、環A11が2−フルオロ−1,4−フェニレン、環A12が1,4−フェニレン、Z11およびZ12が単結合である化合物、および
式(1−3)において、環A11が3−フルオロ−1,4−フェニレン、環A12が1,4−フェニレン、Z11およびZ12が単結合である化合物は除く。)
【請求項2】
式(1−1−1)、式(1−1−2)、式(1−2−1)、式(1−2−2)、式(1
−2−3)、および式(1−3−1)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第一成分と、式(2−1−1)、式(2−2−1)、および式(2−3−1)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第二成分とを含有する、負の誘電率異方性を有する液晶組成物。
【化2】

(式(1−1−1)、式(1−1−2)、式(1−2−1)、式(1−2−2)、式(1−2−3)、式(1−3−1)、式(2−1−1)、式(2−2−1)、および式(2−3−1)において、Raは独立してアルキル、またはアルケニルであり;Rbは独立してアルキル、アルケニル、またはアルコキシであり;
環A21は独立して2−フルオロ−1,4−フェニレン、または3−フルオロ−1,4−フェニレンであり;
環A22は独立して1,4−シクロヘキシレン、または1,4−フェニレンであり;
環A23は独立して1,4−シクロヘキシレン、または任意の水素がフッ素によって置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;
21は独立して−CH2O−、または−OCH2−である。)
【請求項3】
上記式(1−1−1)、式(1−1−2)、式(1−2−1)、式(1−2−2)、および式(1−2−3)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第一成分と、上記式(2−1−1)、式(2−2−1)、および式(2−3−1)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第二成分とを含有する請求項2に記載の液晶組成物。
【請求項4】
液晶性化合物の全重量に基づいて、第一成分の含有割合が10〜80重量%であり、第二成分の含有割合が20〜90重量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項5】
式(3−1)〜式(3−3)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第三成分をさらに含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【化3】

(式(3−1)〜式(3−3)において、Raは独立してアルキル、またはアルケニルで
あり;Rbは独立してアルキル、アルケニル、またはアルコキシであり;Rcはアルキル、アルケニル、アルコキシ、またはアルコキシメチルであり;複数の環A22はそれぞれ独立して、1,4−シクロヘキシレン、または1,4−フェニレンであり;環A23は1,4−シクロヘキシレン、または任意の水素がフッ素によって置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;Z22は独立して単結合、−CH2O−、−OCH2−、または−COO−である。)
【請求項6】
液晶性化合物の全重量に基づいて、第一成分の含有割合が5〜75重量%であり、第二成分の含有割合が20〜80重量%であり、第三成分の含有割合が5〜45重量%である請求項5に記載の液晶組成物。
【請求項7】
式(1−1−1−1)、式(1−1−1−2)、式(1−1−2−1)、式(1−1−2−2)、式(1−2−1−1)、式(1−2−1−2)、式(1−2−2−1)、式(1−2−3−1)、および式(1−2−3−2)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第一成分と、式(2−1−1−1)、式(2−2−1−1)、式(2−2−1−2)、式(2−2−1−3)、式(2−2−1−4)、および式(2−2−1−5)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第二成分とを含有する、負の誘電率異方性を有する液晶組成物。
【化4−A】

【化4−B】

(式(1−1−1−1)、式(1−1−1−2)、式(1−1−2−1)、式(1−1−2−2)、式(1−2−1−1)、式(1−2−1−2)、式(1−2−2−1)、式(1−2−3−1)、式(1−2−3−2)、式(2−1−1−1)、式(2−2−1−1)、式(2−2−1−2)、式(2−2−1−3)、式(2−2−1−4)、および式(2−2−1−5)において、Raは独立してアルキル、またはアルケニルであり;Rbは独立してアルキル、アルケニル、またはアルコキシである。)
【請求項8】
上記式(1−1−1−1)、式(1−1−2−1)、式(1−2−1−1)、および式(1−2−3−1)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第一成分と、上記式(2−1−1−1)、および式(2−2−1−1)〜式(2−2−1−5)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第二成分とを含有する請求項7に記載の液晶組成物。
【請求項9】
上記式(1−1−1−1)、式(1−1−1−2)、式(1−2−1−1)、式(1−2−1−2)、および式(1−2−2−1)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第一成分と、上記式(2−1−1−1)、および式(2−2−1−1)〜式(2−2−1−5)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第二成分とを含有する請求項7に記載の液晶組成物。
【請求項10】
上記式(1−1−1−1)、式(1−1−2−1)、式(1−2−1−1)、および式(1−2−3−1)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第一成分と、上記式(2−1−1−1)、式(2−2−1−1)、および式(2−2−1−2)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第二成分とを含有する請求項7に記載の液晶組成物。
【請求項11】
上記式(1−1−2−1)、式(1−1−2−2)、式(1−2−3−1)、および式(1−2−3−2)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第一成分と、上記式(2−1−1−1)、式(2−2−1−1)、および式(2−2−1−2)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第二成分とを含有する請求項7に記載の液晶組成物。
【請求項12】
上記式(1−1−2−1)、および式(1−2−3−1)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第一成分と、上記式(2−1−1−1)、式(2−2−1−1)、および式(2−2−1−2)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第二成分とを含有する請求項7に記載の液晶組成物。
【請求項13】
液晶性化合物の全重量に基づいて、第一成分の含有割合が30〜75重量%であり、第二成分の含有割合が25〜70重量%である請求項7〜12のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項14】
式(3−1−1)、式(3−1−2)、式(3−2−1)、式(3−3−1)、および式(3−3−2)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第三成分をさらに含有する請求項7〜12のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【化5】

(式(3−1−1)、式(3−1−2)、式(3−2−1)、式(3−3−1)、および式(3−3−2)において、Raは独立してアルキル、またはアルケニルであり;Rbは独立してアルキル、アルケニル、またはアルコキシであり;Rcは独立してアルキル、アル
ケニル、アルコキシ、またはアルコキシメチルである。)
【請求項15】
第三成分が、上記式(3−1−1)、式(3−1−2)、および式(3−2−1)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項14に記載の液晶組成物。
【請求項16】
第三成分が、上記式(3−2−1)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項14に記載の液晶組成物。
【請求項17】
液晶性化合物の全重量に基づいて、第一成分の含有割合が10〜65重量%であり、第
二成分の含有割合が25〜60重量%であり、第三成分の含有割合が5〜35重量%である請求項14〜16のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項18】
液晶性化合物成分が、上記式(1−1−1)、式(1−1−2)、式(1−2−1)、式(1−2−2)、式(1−2−3)、および式(1−3−1)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第一成分と、上記式(2−1−1)、式(2−2−1)、および式(2−3−1)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物である第二成分と、上記式(3−1)〜式(3−3)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物である第三成分とだけからなる、負の誘電率異方性を有する液晶組成物。
【請求項19】
液晶性化合物成分が、上記式(1−1−1)、式(1−1−2)、式(1−2−1)、式(1−2−2)、式(1−2−3)、および式(1−3−1)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物である第一成分と、上記式(2−1−1)、式(2−2−1)、および式(2−3−1)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物である第二成分とだけからなる、負の誘電率異方性を有する液晶組成物。
【請求項20】
誘電率異方性の値が−6.5〜−2.0の範囲である請求項1〜19のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項21】
光学異方性の値が0.080〜0.120の範囲である請求項1〜20のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【請求項23】
VAモードまたはIPSモードで表示され、アクティブマトリックス方式で駆動される請求項22に記載の液晶表示素子。

【公開番号】特開2007−31694(P2007−31694A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−161127(P2006−161127)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】