説明

液晶表示素子の連続製造システムおよび液晶表示素子の連続製造方法

【課題】スジ不良発生を抑制できる液晶表示素子の連続製造システムおよび液晶表示素子の連続製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】キャリアフィルム搬送手段と、キャリアフィルムから偏光フィルムのシート片を粘着剤とともに剥離する剥離手段と、キャリアフィルムを巻き取る巻取手段と、シート片を粘着剤を介して液晶パネルに貼り付けて液晶表示素子を形成する貼付手段と、少なくとも前記キャリアフィルムから前記シート片を剥離し終える剥離完了時点において、当該キャリアフィルムを前記剥離手段の先端よりも前記貼付手段側に張り出させながら折り返すように、前記巻取手段及び前記貼付手段を制御する速度制御手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアフィルムから剥離された偏光フィルムのシート片を粘着剤を介して液晶パネルに貼り付けて液晶表示素子を形成する液晶表示素子の連続製造システムおよび液晶表示素子の連続製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤を介して偏光フィルムのシート片が形成されているキャリアフィルムを内側にして先端で折り返して当該キャリアフィルムから偏光フィルムのシート片を粘着剤とともに剥離するとともに、剥離された偏光フィルムのシート片を粘着剤を介して液晶パネルに貼り付ける方法が知られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57−052017号公報
【特許文献2】特開2004−361741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1または2のように、単に、キャリアフィルムを内側に折り返して剥離しながら、当該剥離された偏光フィルムのシート片と液晶パネルとを貼付ロールで挟んで貼り付ける方法の場合、液晶表示素子内に、いわゆるスジ不良(線状の気泡)が発生することがあった。
【0005】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであって、スジ不良発生を抑制できる液晶表示素子の製造システムおよび液晶表示素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、以下の本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
本発明は、粘着剤を介して偏光フィルムのシート片が形成されているキャリアフィルムを搬送するキャリアフィルム搬送手段と、前記キャリアフィルム搬送手段により搬送されたキャリアフィルムを内側にして先端で折り返して当該キャリアフィルムからシート片を粘着剤とともに剥離する剥離手段と、前記剥離手段によりシート片が剥離されたキャリアフィルムを巻き取る巻取手段と、液晶パネルを搬送しながら、前記剥離手段でキャリアフィルムから剥離されたシート片を粘着剤を介して当該液晶パネルに貼り付けて液晶表示素子を形成する貼付手段とを有する、液晶表示素子の連続製造システムであって、
少なくとも前記キャリアフィルムから前記シート片を剥離し終える剥離完了時点において、当該キャリアフィルムを前記剥離手段の先端よりも前記貼付手段側に張り出させながら折り返すように、前記巻取手段及び前記貼付手段を制御する速度制御手段を有する。
【0008】
この構成によって、液晶パネルへの貼付処理中である偏光フィルムのシート片に引張られるようにしてキャリアフィルムを剥離手段先端よりも張り出させ、偏光フィルムのシート片の後方部分の剥離時期を遅くし、偏光フィルムのシート片の終端の剥離を、剥離手段先端よりも貼付方向に張り出させて近付けてから行える。また、キャリアフィルムを張り出させたことで、偏光フィルムのシート片の剥離位置での剥離の曲率半径R1を剥離手段先端での剥離の曲率半径R2よりも小さくできるので剥離角度を小さくできる。その結果、偏光フィルムのシート片の後端部をキャリアフィルムから小さな剥離角度で安定に剥離しながら(例えば、偏光フィルムの振幅による振動を防止しながら)、当該偏光フィルムのシート片を液晶パネルに貼り付けることができるため、いわゆるスジ不良の発生を抑制することができる。
【0009】
上記発明の一実施形態として、前記速度制御手段は、前記巻取手段による前記キャリアフィルムの巻取速度をV1とし、前記貼付手段による前記シート片の貼付速度をV2としたときに、シート片を貼り付け始める貼付開始時点からシート片の剥離完了時点までの間に、少なくともV1<V2となる特定期間を設けることが好ましい。これによって、上記本発明の作用効果を容易に得ることができる。
【0010】
上記発明の一実施形態として、前記速度制御手段は、前記貼付開始時点から前記剥離完了時点に至る途中の時点まではV1=V2とし、当該途中の時点から当該剥離完了時点まではV1<V2となるように、前記巻取手段及び前記貼付手段を制御する。これによって、上記本発明の作用効果を容易に得ることができる。また、前記速度制御手段は、前記途中の時点よりも前に、前記巻取速度V1と前記貼付速度V2とを同速にしながら減速し、当該途中の時点から当該剥離完了時点まではV1<V2となるように、前記巻取手段及び前記貼付手段を制御することが好ましい。この構成によって、低速度で剥離完了させることで剥離をより安定させ、スジ不良の発生をより抑制できる。
【0011】
上記発明の一実施形態として、前記キャリアフィルム搬送手段は、ダンサーロールを介して当該キャリアフィルムを剥離手段に搬送する。これによって、剥離完了後のキャリアフィルムが自動的に上流側に戻るため、次の偏光フィルムのシート片の貼付けのための復帰が容易である。なお、剥離完了後のキャリアフィルムを自動的に戻す方法としては、剥離手段よりも上流にフィードロールを設け、当該フィードロールを逆回転させる方法も採用し得る。
【0012】
また、他の本発明は、粘着剤を介して偏光フィルムのシート片が形成されているキャリアフィルムを搬送するキャリアフィルム搬送工程と、前記キャリアフィルム搬送工程により搬送されたキャリアフィルムを内側にして先端で折り返して当該キャリアフィルムから偏光フィルムを粘着剤とともに剥離手段で剥離する剥離工程と、前記剥離工程によりシート片が剥離されたキャリアフィルムを巻取手段で巻き取る巻取工程と、液晶パネルを搬送しながら、前記剥離工程によりキャリアフィルムから剥離されたシート片を粘着剤を介して当該液晶パネルに貼付手段で貼り付けて液晶表示素子を形成する貼付工程とを有する、液晶表示素子の連続製造方法であって、
少なくとも前記キャリアフィルムから前記シート片を剥離し終える剥離完了時点において、当該キャリアフィルムを前記剥離手段の先端よりも前記貼付手段側に張り出させながら折り返すように、前記巻取手段及び前記貼付手段を制御する速度制御工程を有する。
【0013】
この構成によって、液晶パネルへの貼付処理中である偏光フィルムのシート片に引張られるようにしてキャリアフィルムを剥離手段先端よりも張り出させ、偏光フィルムのシート片の後方部分の剥離時期を遅くし、偏光フィルムのシート片の終端の剥離を、剥離手段先端よりも貼付方向に張り出させて近付けてから行える。また、キャリアフィルムを張り出させたことで、偏光フィルムのシート片の剥離位置での剥離の曲率半径R1を剥離手段先端での剥離の曲率半径R2よりも小さくできるので剥離角度を小さくできる。その結果、偏光フィルムのシート片の後端部をキャリアフィルムから小さな剥離角度で安定に剥離しながら(例えば、偏光フィルムの振幅による振動を防止しながら)、当該偏光フィルムのシート片を液晶パネルに貼り付けることができるため、いわゆるスジ不良の発生を抑制することができる。
【0014】
本発明の一実施形態として、前記速度制御工程は、前記巻取手段による前記キャリアフィルムの巻取速度をV1とし、前記貼付手段による前記シート片の貼付速度をV2としたときに、シート片を貼り付け始める貼付開始時点からシート片の剥離完了時点までの間に、少なくともV1<V2となる特定期間を設けることが好ましい。これによって、上記本発明の作用効果を容易に得ることができる。
【0015】
本発明の一実施形態として、前記速度制御工程は、前記貼付開始時点から前記剥離完了時点に至る途中の時点まではV1=V2とし、当該途中の時点から当該剥離完了時点まではV1<V2となるように、前記巻取手段及び前記貼付手段を制御する。これによって、上記本発明の作用効果を容易に得ることができる。また、前記速度制御工程は、前記途中の時点よりも前に、前記巻取速度V1と前記貼付速度V2とを同速にしながら減速し、当該途中の時点から当該剥離完了時点まではV1<V2となるように、前記巻取手段及び前記貼付手段を制御することが好ましい。この構成によって、低速度で剥離完了させることで剥離をより安定させ、スジ不良の発生をより抑制できる。
【0016】
本発明の一実施形態として、前記キャリアフィルム搬送工程は、ダンサーロールを介して当該キャリアフィルムを剥離手段に搬送する工程を有する。これによって、剥離完了後のキャリアフィルムが自動的に上流側に戻るため、次の偏光フィルムのシート片の貼付けのための復帰が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】液晶表示素子の製造システムの一例を示した概略図。
【図2】液晶表示素子の製造システムの一例を示した概略図。
【図3】液晶表示素子の製造システムの一例を示した概略図。
【図4】偏光フィルムの剥離の曲率半径(R1、R2)を説明するための図。
【図5】搬送速度(V1、V2)の一例を説明するための図。
【図6】実施例における搬送速度(V1、V2)条件を示す図。
【図7】比較例における搬送速度(V1、V2)条件を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(偏光フィルムおよび連続ロール)
本実施形態において、偏光フィルムがキャリアフィルムに形成されている形態は特に制限されない。例えば、ロール状に巻かれた連続ロールで構成されていてもよい。連続ロールとしては、例えば、(1)キャリアフィルムと当該キャリアフィルム上に粘着剤を介して形成された偏光フィルムとを有する光学フィルム積層体をロール状に巻いたものが挙げられる。この場合、液晶表示素子の連続製造システムは、偏光フィルムから偏光フィルムのシート片を形成するために、キャリアフィルムを切断せずに残して、当該偏光フィルムおよび粘着剤を所定間隔に切断(ハーフカット)する切断手段を有する。この切断において、例えば、連続製造システム内の欠点検査装置の検査結果に基づいて、良品のシート片と、不良品のシート片を区別するように切断が行われてもよい。
【0019】
また、連続ロールとして、例えば、(2)キャリアフィルムと当該キャリアフィルム上に粘着剤を介して形成された偏光フィルムのシート片とを有する光学フィルム積層体をロール状に巻いたもの(いわゆる切り目入り偏光フィルムの連続ロール)が挙げられる。
【0020】
例えば、図1に示す第1連続ロール1は、第1キャリアフィルム12と、第1キャリアフィルム12に第1粘着剤を介して形成された第1偏光フィルム13を有する第1光学フィルム積層体11をロール状に巻いたものである。
【0021】
偏光フィルムは、例えば、偏光子(厚さは5〜80μm程度)と、偏光子の片面または両面に偏光子保護フィルム(厚さは一般的に1〜500μm程度)が接着剤または接着剤なしで形成される。第1光学フィルム積層体11を構成する他のフィルムとして、例えば、位相差フィルム(厚さは一般的に10〜200μm)、視角補償フィルム、輝度向上フィルム、表面保護フィルム等が挙げられる。光学フィルム積層体の厚みは、例えば、10μm〜500μmの範囲が挙げられる。偏光フィルムとキャリアフィルムとの間に介在する粘着剤は、特に制限されず、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等が挙げられる。粘着剤の層厚みは、例えば、10〜50μmの範囲が好ましい。キャリアフィルムは、例えばプラスチックフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート系フィルム、ポリオレフィン系フィルム等)等の従来公知のフィルムを用いることができる。また、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。
【0022】
(液晶表示素子)
液晶表示素子は、液晶パネルの片面または両面に少なくとも偏光フィルムのシート片が形成されたものであり、必要に応じて駆動回路が組込まれる。液晶パネルは、例えば、垂直配向(VA)型、面内スイッチング(IPS)型などの任意なタイプのものを用いることができる。図1に示す液晶パネル4は、対向配置される一対の基板(第1基板41、第2基板42)間に液晶層が封止された構成である。
【0023】
(実施形態1)
本実施形態に係る液晶表示素子の連続製造システムは、粘着剤を介して偏光フィルムのシート片が形成されているキャリアフィルムを搬送するキャリアフィルム搬送手段と、前記キャリアフィルム搬送手段により搬送されたキャリアフィルムを内側にして先端で折り返して当該キャリアフィルムからシート片を粘着剤とともに剥離する剥離手段と、前記剥離手段によりシート片が剥離されたキャリアフィルムを巻き取る巻取手段と、液晶パネルを搬送しながら、前記剥離手段でキャリアフィルムから剥離されたシート片を粘着剤を介して当該液晶パネルに貼り付けて液晶表示素子を形成する貼付手段とを有する。そして、少なくとも前記キャリアフィルムから前記シート片を剥離し終える剥離完了時点において、当該キャリアフィルムを前記剥離手段の先端よりも前記貼付手段側に張り出させながら折り返すように、前記巻取手段及び前記貼付手段を制御する速度制御手段を有する。以下、図1を参照しながら、本実施形態に係る液晶表示素子の連続製造システムおよび液晶表示素子の連続製造方法をさらに具体的に説明するが、本発明は本実施形態の態様に限定されるものではない。
【0024】
液晶表示素子の連続製造システムは、第1キャリアフィルム搬送手段101と、第1液晶パネル搬送手段102と、第1貼付手段103(第1貼付ロール50a、第1駆動ロール50b)と、第2液晶パネル搬送手段104と、第2キャリアフィルム搬送手段と、第2貼付手段(第2貼付ロール、第2駆動ロール)と、液晶表示素子搬送手段とを有する。本実施形態では、液晶パネルの上側から第1偏光フィルムの第1シート片を貼り付けて、次いで、第1シート片を貼り付けた液晶パネルを反転(裏表反転、必要に応じて90°旋回)させて、当該液晶パネルの上側から第2偏光フィルムの第2シート片を貼り付けているが、液晶パネルの下側から第1シート片を貼り付け、液晶パネルを反転させて、液晶パネルの下側から第2シート片を貼り付けてもよく、液晶パネルの上側から第1シート片を貼り付け、液晶パネルを反転させないで、液晶パネルの下側から第2シート片を貼り付けてもよく、液晶パネルの下側から第1シート片を貼り付け、液晶パネルを反転させないで、液晶パネルの上側から第2シート片を貼り付けてもよい。
【0025】
(第1液晶パネル搬送手段)
第1液晶パネル搬送手段102は、第1貼付手段103に液晶パネル4を供給し搬送する。本実施形態では、第1液晶パネル搬送手段102は、搬送ローラ80および吸着プレート等を有して構成される。搬送ローラ80を回転させることで、あるいは吸着プレートを移送させることで、液晶パネル4を製造ライン下流側へ搬送する。
【0026】
(第1キャリアフィルム搬送手段)
第1キャリアフィルム搬送手段101は、第1連続ロール1から第1光学フィルム積層体11を繰り出し、第1偏光フィルムおよび粘着剤を所定間隔で切断して第1偏光フィルムのシート片(第1シート片)13を第1キャリアフィルム12上に形成し、第1剥離手段40の先端で第1キャリアフィルム12を内側にして折り返して、第1キャリアフィルム12から第1シート片13および粘着剤を剥離し、第1貼付手段103に供給する。そのために、第1キャリアフィルム搬送手段101は、第1切断手段20、第1ダンサーロール30、第1剥離手段40、第1巻取手段60を有する。
【0027】
第1切断手段20は、吸着手段21で第1キャリアフィルム12側から第1光学フィルム積層体11を固定しておいて、第1偏光フィルムおよび粘着剤を切断し、第1キャリアフィルム12上に第1シート片13を形成する。第1切断手段20としては、例えばカッター、レーザー装置などが挙げられる。
【0028】
第1ダンサーロール30は、第1キャリアフィルム12の張力を保持する(張力変動を吸収する)機能を持つ。第1キャリアフィルム搬送手段101は、第1ダンサーロール30を介して第1キャリアフィルム12を搬送する。第1ダンサーロール30は、第1キャリアフィルム12を第1剥離手段40の先端から張り出させるように動作可能である。そして、貼付過程の第1シート片13が第1キャリアフィルムから剥離完了した後に、第1剥離手段40の先端から張り出した状態の第1キャリアフィルム12を自動的に上流側に戻す。
【0029】
第1剥離手段40は、液晶パネル4に第1シート片13を貼り付ける場合に、その先端で第1キャリアフィルム12を内側にして折り返して、第1キャリアフィルム12から第1シート片13および粘着剤を剥離する。本実施形態では、第1剥離手段40としては、先端に先鋭ナイフエッジ部を用いているが、これに限定されるものではない。図4に示す、先鋭ナイフエッジ部の曲率半径R2(剥離の曲率半径に相当する)は、例えば、0.3mm〜5.0mmが挙げられる。
【0030】
第1巻取手段60は、第1シート片13および粘着剤が剥離された第1キャリアフィルム12を巻き取る。第1シート片13の貼付過程において、第1巻取手段60による第1キャリアフィルム12の巻取速度V1は、後述する第1速度制御手段110によって制御される。
【0031】
(第1貼付手段)
第1貼付手段103は、第1液晶パネル搬送手段102により供給された液晶パネル4の上側から第1キャリアフィルム搬送手段101により供給された第1シート片13を粘着剤を介して貼り付ける。本実施形態では、第1貼付手段103は、第1貼付ローラ50a、第1駆動ローラ50bで構成される。第1シート片13の貼付過程において、第1駆動ローラ50bの回転速度は、後述する速度制御手段110によって制御される。なお、第1駆動ローラ50bの駆動に応じて、第1貼付ローラ50aが従動する機構であるが、これに制限されず、駆動と従動が逆の機構でもよく、両方が駆動機構であってもよい。
【0032】
(第1速度制御手段)
第1速度制御手段110は、前述の第1巻取手段60および第1駆動ロール50bを連動するように制御して、第1シート片13の貼付過程における、第1キャリアフィルム12の巻取速度V1(搬送速度)、液晶パネル4の貼付速度V2(搬送速度)を制御する(図2、3参照)。
【0033】
第1速度制御手段110は、例えば、第1キャリアフィルム搬送手段101を構成する第1巻取手段160を制御することで、第1キャリアフィルム12の巻取速度(搬送速度)を制御することができる。また、第1剥離手段40よりも下流側にあるフィードローラ(不図示)を制御することで、第1キャリアフィルム12の搬送速度を制御することができる。また、第1速度制御手段110は、第1駆動ローラ50bの回転速度を制御することで、液晶パネル4の貼付速度V2(搬送速度)を制御する。
【0034】
第1速度制御手段110は、例えば、偏光フィルムを貼り付け始める貼付開始時点から第1シート片13の剥離完了時点までの間に、少なくともV1<V2となる特定期間を設けるように第1巻取手段60および第1駆動ロール50bを制御する。
【0035】
また、第1搬送速度制御手段110は、第1キャリアフィルム12の巻取速度V1を液晶パネル4の貼付速度V2より小さく(V1<V2)することで、図3、4に示すように、第1シート片13の剥離位置(キャリアフィルムの折り返し位置)を第1貼付ロール50aによる貼付位置方向へ、第1剥離手段40の先端より張り出させ、かつ、当該張り出させた第1シート片13の剥離位置の剥離の曲率半径R1を第1剥離手段40の先端の剥離の曲率半径R2よりも小さくさせて、第1シート片13および粘着剤を第1キャリアフィルム12から剥離させることができる。これによって、第1シート片13および粘着剤を第1キャリアフィルム12から安定に剥離でき(例えば、第1シート片13の振幅による振動を防止でき)、第1シート片13を液晶パネル4に好適に貼り付けでき、液晶パネル4内の、いわゆるスジ不良の発生を抑制できる。
【0036】
また、第1速度制御手段110は、例えば、図5に示すように、貼付開始時点から剥離完了時点に至る途中の時点(以下では「速度切換時点」と呼ぶ。)まではV1=V2とし、当該速度切換時点から当該剥離完了時点まではV1<V2となるように、第1巻取手段60および第1駆動ロール50bを制御する。また、第1速度制御手段110は、速度切換時点よりも前に、巻取速度V1と貼付速度V2とを同速にしながら減速し、当該速度切換時点から当該剥離完了時点まではV1<V2となるように、第1巻取手段60および第1駆動ロール50bを制御することが好ましい。これによって、低速度で剥離完了させることで剥離をより安定させ、スジ不良の発生をより抑制できる。
【0037】
(第2液晶パネル搬送手段)
第2液晶パネル搬送手段104は、第1貼付手段103により第1シート片13が貼り付けられた液晶パネル4を搬送して第2貼付手段に供給する。第2液晶パネル搬送手段104には、第1シート片13が貼り付けられた液晶パネル4を90°水平回転させる旋回機構(不図示)と、第1シート片13が貼り付けられた液晶パネル4を上下反転させる反転機構が備えられている。
【0038】
前述したように、液晶パネル4の他方面に偏光フィルムのシート片を貼り付けるための各種手段は、上記で説明した各種手段、装置等を用いることができる。第2キャリアフィルム搬送手段は、第1帯状キャリア手段と同様の装置で構成でき、第2貼付手段は、第1貼付手段と同様の装置で構成できる。例えば、第2ダンサーロールは第1ダンサーロール30と同様の装置で構成でき、第2巻取手段は第1巻取手段60と同様の装置で構成でき、第2貼付ローラおよび第2駆動ローラは第1貼付ローラ50aおよび第1駆動ローラ50bと同様の機構で構成できる。また、第2速度制御手段は第1速度制御手段と同様の機能を有して構成される。
【0039】
液晶表示素子搬送手段(不図示)は、搬送ローラや吸着プレート等で構成でき、第2貼付手段により作製された液晶表示素子Yを下流へ搬送する。また、搬送下流側に、液晶表示素子Yを検査するための検査装置が設置されていてもよい。この検査装置の検査目的、検査方法は特に制限されない。
【0040】
(連続製造方法)
本実施形態に係る液晶表示素子の製造方法は、粘着剤を介して偏光フィルムのシート片が形成されているキャリアフィルムを搬送するキャリアフィルム搬送工程と、前記キャリアフィルム搬送工程により搬送されたキャリアフィルムを内側にして先端で折り返して当該キャリアフィルムから偏光フィルムを粘着剤とともに剥離手段で剥離する剥離工程と、前記剥離工程によりシート片が剥離されたキャリアフィルムを巻取手段で巻き取る巻取工程と、液晶パネルを搬送しながら、前記剥離工程によりキャリアフィルムから剥離されたシート片を粘着剤を介して当該液晶パネルに貼付手段で貼り付けて液晶表示素子を形成する貼付工程と、少なくとも前記キャリアフィルムから前記シート片を剥離し終える剥離完了時点において、当該キャリアフィルムを前記剥離手段の先端よりも前記貼付手段側に張り出させながら折り返すように、前記巻取手段及び前記貼付手段を制御する速度制御工程を有する。
【0041】
(第1貼付工程)
第1貼付工程は、第1連続ロールから繰り出し供給された第1偏光フィルムの第1シート片を、液晶パネルの第1基板に貼り付ける工程である。本実施形態では、第1キャリアフィルム12と、第1キャリアフィルム12上に形成された第1偏光フィルムとを有する第1光学フィルム積層体11をロール状に巻いた第1連続ロール1から第1光学フィルム積層体11を繰り出す。次いで、第1キャリアフィルム12を残して(切断せずに)第1偏光フィルムおよび粘着剤を切断して、第1キャリアフィルム12上に第1偏光フィルムの第1シート片13を形成する。次いで、第1剥離手段40の先端で第1キャリアフィルム12を内側に折り返し搬送して、第1キャリアフィルム12から第1シート片13および粘着剤を剥離する。次いで、第1キャリアフィルム12が剥離された第1シート片13を、粘着剤を介して液晶パネル4の第1基板に貼り付ける。
【0042】
(第1速度制御工程)
第1速度制御工程は、少なくとも第1キャリアフィルム12から第1シート片13を剥離し終える剥離完了時点において、当該第1キャリアフィルム12を第1剥離手段40の先端よりも第1貼付手段103側に張り出させながら折り返すように、第1巻取手段60および第1貼付手段103を制御する。
【0043】
また、第1速度制御工程は、第1巻取手段60による第1キャリアフィルム12の巻取速度をV1とし、第1貼付手段103による第1偏光フィルムの第1シート片13の貼付速度をV2としたときに、第1シート片13を貼り付け始める貼付開始時点から第1シート片13の剥離完了時点までの間に、少なくともV1<V2となる特定期間を設ける。
【0044】
また、別の実施態様では、第1速度制御工程は、貼付開始時点から剥離完了時点に至る途中の時点まではV1=V2とし、当該途中の時点から当該剥離完了時点まではV1<V2となるように、第1巻取手段60及び第1貼付手段103を制御する。また、第1速度制御工程は、前記途中の時点よりも前に、巻取速度V1と貼付速度V2とを同速にしながら減速し、当該途中の時点から当該剥離完了時点まではV1<V2となるように、第1巻取手段60および第1貼付手段103を制御することが好ましい。
【0045】
また、本連続製造方法において、キャリアフィルム搬送工程は、キャリアフィルムの張力を保持可能に当該キャリアフィルムを搬送する工程を有している。本実施形態では、第1キャリアフィルム12の張力を保持するために、第1ダンサーロール30を用いている。
【0046】
また、液晶パネル4の他方基板にも偏光フィルムを貼り付ける場合には、液晶パネルの旋回および上下反転工程を有する。旋回および上下反転工程は、第1偏光フィルム14が貼り付けられた液晶パネル4を90°水平回転および上下反転させる工程である。そして、第2偏光フィルムのシート片を貼り付ける工程は、上記の第1貼付工程と同様であり、第2速度制御工程も上記の第1速度制御工程と同様である。
【0047】
(別実施形態)
上記実施形態1では、連続ロールから繰り出された光学フィルム積層体を所定間隔で切断するものであったが、本発明はとくにこの構成に制限されない。例えば、連続ロールから繰り出された光学フィルム積層体を欠点検査し、当該検査結果に基づいて欠点を避けるように切断(いわゆるスキップカット)してもよい。また、光学フィルム積層体に予め付された欠点情報を読み取り、当該欠点情報に基づいて欠点を避けるように切断してもよい。
【0048】
また、第1および第2連続ロールの第1および第2偏光フィルムは予め切断されていてもよい。すなわち、第1および第2連続ロールとして、いわゆる切り目入り連続ロールを用いてもよい。この場合、第1切断手段及び第2切断手段が不要となるため、タクトタイムを短縮することができる。
【実施例】
【0049】
図1の製造システムを用い、図6(実施例1〜3)、図7(比較例1〜3)の速度条件で、偏光フィルムを液晶パネル(40インチ)にその長辺側から貼り付けた。
【0050】
実施例1では、最高速度から巻取速度(V1:キャリアフィルムの搬送速度)及び貼付速度(V2:液晶パネルの搬送速度)を共に減速後、巻取速度(V1)のみさらに減速させ、剥離完了時点の前後の貼付速度(V2)を一定速度に設定した。実施例2では、最高速度から差(V1<V2)をつけながら巻取速度(V1)および貼付速度(V2)を減速させ、剥離完了時点の前後の貼付速度(V2)を減速中に設定した。実施例3は、剥離完了時点より前に最高速度から巻取速度(V1)のみを減速させ、剥離完了時点の前後の貼付速度(V2)を一定速度に設定した。
【0051】
比較例1では、最高速度から巻取速度(V1)及び貼付速度(V2)を共に減速後、剥離完了時点の前後の貼付速度(V2)および巻取速度(V1)を一定速度とし、その後に、貼付速度(V2)を一定速度の状態で、巻取速度(V1)を減速させた。比較例2では、最高速度から巻取速度(V1)及び貼付速度(V2)を共に減速後、剥離完了時点の後で、差(V1<V2)をつけながら巻取速度(V1)および貼付速度(V2)を減速させた。比較例3は、剥離完了時点と同時に最高速度から巻取速度(V1)のみを減速させ、剥離完了時点の前後の貼付速度(V2)を一定速度に設定した。
【0052】
(評価方法)
実施例および比較例ともにn=300枚でのスジ発生率を目視検査で評価した。表1にその結果を示す。
【0053】
【表1】

【0054】
表1の結果から、実施例1〜3は、比較例1〜3よりもスジ発生率が低くかった。また、実施例1の結果から、巻取速度と貼付速度(V1、V2)を最高速度から減速させ、次いで貼付速度(V2)を一定速度にしておいて、キャリアフィルムの巻取速度(V1)を貼付速度(V2)よりも減速させて剥離完了させる速度制御が、実施例2および3の速度制御より効果的であったことが分かった。
【符号の説明】
【0055】
4 液晶パネル
11 第1光学フィルム積層体
12 第1キャリアフィルム
13 第1偏光フィルムのシート片
30 第1ダンサーロール
40 第1剥離手段
50a、50a 第1、第2貼付ローラ
60 第1巻取手段
101 第1キャリアフィルム搬送手段
102 第1液晶パネル搬送手段
103 第1貼付手段
110 第1速度制御手段
Y 液晶表示素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤を介して偏光フィルムのシート片が形成されているキャリアフィルムを搬送するキャリアフィルム搬送手段と、前記キャリアフィルム搬送手段により搬送されたキャリアフィルムを内側にして先端で折り返して当該キャリアフィルムからシート片を粘着剤とともに剥離する剥離手段と、前記剥離手段によりシート片が剥離されたキャリアフィルムを巻き取る巻取手段と、液晶パネルを搬送しながら、前記剥離手段でキャリアフィルムから剥離されたシート片を粘着剤を介して当該液晶パネルに貼り付けて液晶表示素子を形成する貼付手段とを有する、液晶表示素子の連続製造システムであって、
少なくとも前記キャリアフィルムから前記シート片を剥離し終える剥離完了時点において、当該キャリアフィルムを前記剥離手段の先端よりも前記貼付手段側に張り出させながら折り返すように、前記巻取手段及び前記貼付手段を制御する速度制御手段を有する液晶表示素子の連続製造システム。
【請求項2】
前記速度制御手段は、前記巻取手段による前記キャリアフィルムの巻取速度をV1とし、前記貼付手段による前記シート片の貼付速度をV2としたときに、シート片を貼り付け始める貼付開始時点からシート片の剥離完了時点までの間に、少なくともV1<V2となる特定期間を設ける、請求項1に記載の液晶表示素子の連続製造システム。
【請求項3】
前記速度制御手段は、前記貼付開始時点から前記剥離完了時点に至る途中の時点まではV1=V2とし、当該途中の時点から当該剥離完了時点まではV1<V2となるように、前記巻取手段及び前記貼付手段を制御する、請求項1または2に記載の液晶表示素子の連続製造システム。
【請求項4】
前記速度制御手段は、前記途中の時点よりも前に、前記巻取速度V1と前記貼付速度V2とを同速にしながら減速し、当該途中の時点から当該剥離完了時点まではV1<V2となるように、前記巻取手段及び前記貼付手段を制御する、請求項3に記載の液晶表示素子の連続製造システム。
【請求項5】
前記キャリアフィルム搬送手段は、ダンサーロールを介して当該キャリアフィルムを剥離手段に搬送する、請求項1から4のいずれかに記載の液晶表示素子の連続製造システム。
【請求項6】
粘着剤を介して偏光フィルムのシート片が形成されているキャリアフィルムを搬送するキャリアフィルム搬送工程と、前記キャリアフィルム搬送工程により搬送されたキャリアフィルムを内側にして先端で折り返して当該キャリアフィルムから偏光フィルムを粘着剤とともに剥離手段で剥離する剥離工程と、前記剥離工程によりシート片が剥離されたキャリアフィルムを巻取手段で巻き取る巻取工程と、液晶パネルを搬送しながら、前記剥離工程によりキャリアフィルムから剥離されたシート片を粘着剤を介して当該液晶パネルに貼付手段で貼り付けて液晶表示素子を形成する貼付工程とを有する、液晶表示素子の連続製造方法であって、
少なくとも前記キャリアフィルムから前記シート片を剥離し終える剥離完了時点において、当該キャリアフィルムを前記剥離手段の先端よりも前記貼付手段側に張り出させながら折り返すように、前記巻取手段及び前記貼付手段を制御する速度制御工程を有する液晶表示素子の連続製造方法。
【請求項7】
前記速度制御工程は、前記巻取手段による前記キャリアフィルムの巻取速度をV1とし、前記貼付手段による前記シート片の貼付速度をV2としたときに、シート片を貼り付け始める貼付開始時点からシート片の剥離完了時点までの間に、少なくともV1<V2となる特定期間を設ける、請求項6に記載の液晶表示素子の連続製造方法。
【請求項8】
前記速度制御工程は、前記貼付開始時点から前記剥離完了時点に至る途中の時点まではV1=V2とし、当該途中の時点から当該剥離完了時点まではV1<V2となるように、前記巻取手段及び前記貼付手段を制御する、請求項6または7に記載の液晶表示素子の連続製造方法。
【請求項9】
前記速度制御工程は、前記途中の時点よりも前に、前記巻取速度V1と前記貼付速度V2とを同速にしながら減速し、当該途中の時点から当該剥離完了時点まではV1<V2となるように、前記巻取手段及び前記貼付手段を制御する、請求項8に記載の液晶表示素子の連続製造方法。
【請求項10】
前記キャリアフィルム搬送工程は、ダンサーロールを介して当該キャリアフィルムを剥離手段に搬送する工程を有する、請求項6から9のいずれかに記載の液晶表示素子の連続製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−73423(P2012−73423A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218238(P2010−218238)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【特許番号】特許第4689763号(P4689763)
【特許公報発行日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】