説明

液晶表示素子及びその製造方法

【課題】 良好な表示を実現する。
【解決手段】 液晶表示素子は、複数の螺旋状パターンまたは放射状パターンをもつ第1の偏光膜、及び第1の透明電極を備える第1の透明基板と、前記第1の透明基板に対向配置され、複数の螺旋状パターンまたは放射状パターンをもつ第2の偏光膜、及び第2の透明電極を備える第2の透明基板と、前記第1の透明基板と前記第2の透明基板との間に挟持された液晶層とを有し、前記第1及び第2の透明基板の法線方向から見たとき、前記第1の透明電極と前記第2の透明電極とが対向する位置に画素が画定され、前記第1の偏光膜の螺旋状パターンまたは放射状パターンの中心と、前記第2の偏光膜の螺旋状パターンまたは放射状パターンの中心とが一致し、かつ、前記画素外に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子(Liquid Cristal Display; LCD)とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な液晶表示素子においては、液晶セルの外側に延伸フィルム型の偏光板が配置される。偏光板は、ヨウ素または染料を分散した樹脂をフィルム化し、一軸方向に延伸して作製する。
【0003】
図9に、延伸フィルム型の偏光板を液晶セルの外側に配置したツイストネマチック(Twisted Nematic; TN)型液晶表示素子の等コントラスト曲線を示す。円の周方向に沿う0°、90°、180°及び270°の方位角で液晶表示素子の基板面内における方位を表す。270°−90°方位が液晶表示素子の左右方位を表し、180°−0°方位が液晶表示素子の上下方位を表す。円の半径方向に沿う0°〜50°の角度は、基板法線方向からの傾き角を表す。0°の位置(円の中心)は基板法線方向から観察される液晶表示素子のコントラストを示す。黒丸を結んだ曲線で、コントラストが10となる観察位置を表示する。また、白丸を結んだ曲線、黒四角を結んだ曲線でそれぞれコントラストが20、50となる観察位置を表示する。
【0004】
コントラストが大きな視角依存性を有していることが瞭然と認められる。図9からわかるように延伸フィルム型の偏光板を液晶セルの外側に配置した構成の液晶表示素子においては、良好な視角特性を実現することに困難が伴う。
【0005】
また、延伸フィルム型の偏光板は、熱、湿度、光などに対する耐久性が低い。このため、液晶セルの外側に延伸フィルム型の偏光板が配置された液晶表示素子においては、液晶セルの品質が維持されていても、偏光板の劣化により、液晶表示素子の信頼性が低下するという問題がある。
【0006】
更に、一軸方向に延伸して作製される延伸フィルム型の偏光板においては、偏光軸(透過軸または吸収軸)を一方向にしか制御できないため、偏光板自体に起因して視角依存性が生じる。
【0007】
図10(A)〜(C)を参照して、偏光板自体に起因する視角依存性について説明する。
【0008】
図10(A)に示すように、一軸方向に延伸して作製された偏光板が2枚、クロスニコルに配置されている。これを偏光板の法線方向から観察した場合、2枚の偏光板の偏光軸のなす角度は90°となる。
【0009】
図10(B)を参照する。クロスニコルに配置された偏光板を、偏光板の法線方向から偏光軸の方位に傾いた方向から観察した場合も、2枚の偏光板の偏光軸のなす角度は90°である。
【0010】
図10(C)を参照する。クロスニコルに配置された偏光板を、偏光板の法線方向から偏光軸の方位とは異なる方位(たとえば、偏光軸の方位から45°ずれた方位)に傾いた方向から観察した場合には、2枚の偏光板の偏光軸のなす角度は90°より大きくなる。このように2枚の偏光板の偏光軸が90°とは異なる角度をなす方向から観察する場合には、光抜けが多く生じるため、液晶表示素子の表示品質が悪化する。
【0011】
偏光板に起因する光抜けを補償するために、ポジティブAプレートとポジティブCプレートを組み合わせて用いたり、二軸性位相差フィルムを使用する方法が提案されているが、これらの光学フィルムはいずれも高価であるため、液晶表示素子のコスト高を招来する。また、液晶表示素子の厚さを増す要因ともなるため、特にモバイルLCDや携帯電話など、薄さを要求される製品に採用するのは不向きである。
【0012】
高コントラストであり、熱的に安定かつ容易に作製することのできる軸対称偏光板の発明が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1において、軸対称状とは、点対称な平面形状であって、その形状を中心点の回りに回転させたとき、所要の回転角度あるいはその近傍で元の形状と重ね合わせることができる形状をいう。
【0013】
二色性物質を保持してそれによる偏光軸の方向が相違することを特徴とする多軸偏光子の発明も公知である(たとえば、特許文献2参照)。特許文献2には、(a)トリアセチルセルロースフィルムのケン化処理面上に、二色性染料含有のリオトロピック液晶からなるブラック偏光インクをスピンコートして得られる、放射状の偏光軸を示す多軸偏光子、(b)トリアセチルセルロースフィルムのケン化処理面上に、ブラック偏光インクを、回転する円盤状基材で剪断力を付加しながらコートして得られる、同心円状の偏光軸を示す多軸偏光子が、実施例として記載されている。
【0014】
また、液晶の配向方向を制御する様々な技術が知られている(たとえば、特許文献3参照)。特許文献3には、光照射によって表面性状が変化する配向膜の外側に、スリット状の光透過部を有するフォトマスクと光源とを配置し、フォトマスクと光源との相対的な位置関係を一定に保った状態で、配向膜をフォトマスクに対して相対的に旋回運動させながら、光透過部を介して配向膜に一定の斜め入射角度で光を照射し、これによって配向膜に光配向処理を施す光配向法が記載されている。特許文献3記載の光配向法により、同心円状もしくは放射状の液晶配向を得ることができる。連続的に液晶配向を変えられるため、ディスクリネーションラインなどの欠陥が生じず、マルチドメイン配向が得られ、広視角の液晶表示素子を実現することが可能となる。
【0015】
図11に、特許文献3に記載の方法で配向処理を行った液晶セルに、延伸フィルム型の一軸偏光板をクロスニコルに配置した液晶表示素子の等コントラスト曲線を示す。円の周方向に沿う0°、90°、180°、270°の方位角、及び、円の半径方向に沿う0°〜50°の傾き角度の意味するところは、図9における場合と等しい。また、コントラストが10、20、50となる等コントラスト曲線の表示方法も図9における場合と同じである。一軸偏光板の偏光軸は、270°−90°方位、及び、180°−0°方位に配置されている。
【0016】
比較的広い視野特性を示しているものの、偏光軸方位(270°−90°方位、180°−0°方位)に比べ、偏光軸方位からずれた方位、特に45°、135°、225°及び315°方位のコントラストが低いことがわかる。これは偏光板自体に起因する視角依存性(観察方向による光抜け)によるものであると考えられる。このように、特許文献3記載の発明を一軸偏光板と組み合わせて液晶表示素子を作製すると、発明の利点が十分に生かされない場合がある。
【0017】
また、図11に等コントラスト曲線を示す液晶表示素子は、図9のコントラスト特性を有する液晶表示素子より、平均的なコントラスト値がやや低いことがわかる。特許文献3記載の技術を適用した液晶表示素子においては、液晶分子が同心円状または放射状に配向されているため、クロスニコルに配置された偏光板の偏光軸方位とは異なる方位に並ぶ液晶分子が必ず存在する。そのような液晶分子は、偏光軸方位と平行または直交する方位に配向する液晶分子に比べ、光透過率の波長分散性が大きい。このためコントラストが低下する。
【0018】
円状の偏光板を作製するには、量産性の面からナノインプリント技術を用いることが望ましい。ナノプリント技術は、モールドと呼ばれる型を反転転写する精密な金型技術の一種である。具体的には、表面に金属層及びレジスト層を積層したシリコン基板を200℃程度に昇温することにより、レジスト層を軟化させ、軟化させたレジスト層に別に作製した円状のパターンを有するモールドを押し付け、加圧保持(13Mpa)して冷却させてレジスト層を硬化させ、モールドをレジスト層から剥離し、酸素RIE等によりモールド押し付けにより生じたレジスト層の凹部の残膜を除去する。その後、金属層をエッチングして、レジスト層を除去することにより、円状のパターンを有する偏光板を作製する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平9−21913号公報
【特許文献2】特開2001−215489号公報
【特許文献3】特開2002−82333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
円状のパターンを有するモールドの場合、当該モールドをシリコン基板上に形成されるレジスト層に対して押し付ける際に、軟化したレジストの流れを作ることができずに、細かな気泡が残ることがある。残留する気泡が非常に細かなものであったとしても、当該部分は偏光板としての機能が失われることとなり、液晶表示装置としての性能を大幅に低下させてしまう。
【0021】
また、加圧保持する工程では、本来気泡が全く無いものとして(全て液体のレジスト材として)加圧条件を設定しているが、気泡が入ってしまうと、その分実質的にレジストに加えられる圧力が低くなったり、気泡の発生場所にばらつきがあると加圧状態が場所により不均一になったりすることがある。このような状態になると、レジスト層の凹部の残膜の厚さが場所により異なることとなり、場所によって金属部分の間隔が異なったり、ひどい場合には、金属層が完全にエッチングされず、場所により又は最悪の場合は全面において偏光板の機能を発揮できなくなったりする。
【0022】
本発明の目的は、良好な表示を実現することのできる液晶表示素子を提供することである。
【0023】
また、良好な表示を実現可能な液晶表示素子を製造することのできる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の一観点によれば、液晶表示素子は、複数の螺旋状パターンまたは放射状パターンをもつ第1の偏光膜、及び第1の透明電極を備える第1の透明基板と、前記第1の透明基板に対向配置され、複数の螺旋状パターンまたは放射状パターンをもつ第2の偏光膜、及び第2の透明電極を備える第2の透明基板と、前記第1の透明基板と前記第2の透明基板との間に挟持された液晶層とを有し、前記第1及び第2の透明基板の法線方向から見たとき、前記第1の透明電極と前記第2の透明電極とが対向する位置に画素が画定され、前記第1の偏光膜の螺旋状パターンまたは放射状パターンの中心と、前記第2の偏光膜の螺旋状パターンまたは放射状パターンの中心とが一致し、かつ、前記画素外に配置されている。
【0025】
本発明の他の観点によれば、液晶表示素子の製造方法は、(a)第1の透明電極の形成された第1の透明基板、第2の透明電極の形成された第2の透明基板、及び前記第1及び第2の透明基板間に挟持された液晶層を備え、前記第1及び第2の透明基板の法線方向から見たとき、前記第1の透明電極と前記第2の透明電極とが対向する位置に画素が画定される液晶セルを準備する工程と、(b)前記第1の透明基板に、複数の螺旋状パターンまたは放射状パターンをもつ第1の偏光膜を配置し、前記第2の透明基板に、複数の螺旋形状パターンまたは放射状パターンをもつ第2の偏光膜を配置する工程とを有し、前記工程(b)において、前記第1及び第2の透明基板の法線方向から見たとき、前記第1の偏光膜の螺旋状パターンまたは放射状パターンの中心と、前記第2の偏光膜の同心形状パターンまたは放射状パターンの中心とを一致させ、かつ、前記画素外に配置する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、良好な表示を実現可能な液晶表示素子を提供することができる。
【0027】
また、良好な表示を実現可能な液晶表示素子を製造することのできる製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(A)〜(G)は、第1の実施例による液晶表示素子の偏光膜付基板の作製方法を示す概略的な断面図である。
【図2】(A)及び(B)は、マスク70aのパターンを示す概略的な平面図である。
【図3】(A)及び(B)は、マスク70bのパターンを示す概略的な平面図である。
【図4】(A)〜(G)は、モールド90の作製工程を示す概略断面図である。
【図5】(A)〜(E)は、第1の実施例による液晶表示素子の製造方法を説明するための図である。
【図6】第1の実施例による液晶表示素子の等コントラスト曲線を示す。
【図7】(A)〜(E)は、第2の実施例による液晶表示素子の製造方法を説明するための図である。
【図8】第2の実施例による液晶表示素子の等コントラスト曲線を示す。
【図9】延伸フィルム型の偏光板を液晶セルの外側に配置したツイストネマチック型液晶表示素子の等コントラスト曲線を示す。
【図10】(A)〜(C)は、偏光板自体に起因する視角依存性について説明するための図である。
【図11】特許文献3に記載の方法で配向処理を行った液晶セルに、延伸フィルム型の一軸偏光板をクロスニコルに配置した液晶表示素子の等コントラスト曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1(A)〜(G)は、第1の実施例による液晶表示素子の偏光膜付基板の作製方法を示す概略的な断面図である。
【0030】
図1(A)を参照する。たとえば厚さ0.7mmtの洗浄したガラス基板51上に、厚さ1000Åのモリブデン(Mo)膜(金属膜52)をスパッタにて形成する。金属膜52の厚さは300Å以上であればよいが、薄いと光抜けが生じ、厚いとパターニング性が低下するため、500Å〜2000Åが適当である。なお、ガラス基板51上の導電性膜は、Moに限らず、アルミ、クロムやチタンなどの金属で形成することもできる。
【0031】
金属膜52上に、UV硬化性の樹脂からなるレジスト材料を1μmの厚さに、スピンコートでコーティングし、レジスト膜53を形成する。スピンコートに限らず、スリットコート、ロールコート、スピンコートとスリットコートの併用等により行ってもよい。レジスト膜53の厚さは、0.8〜1.5μmが適当である。
【0032】
続いて、金属膜52上に、マスクパターン(レジスト膜)53を形成する。マスクパターン(レジスト膜)53は、図2(A)に示すような螺旋状パターン70aを有するモールド90を用いて、ナノインプリント技術で反転転写を行い形成する。本実施例では、光ナノインプリント技術を用いるが、熱サイクルナノインプリント技術を用いても良い。
【0033】
図2(A)は、ナノインプリント技術を用いてガラス基板51上に形成されるマスク70aのパターンを示す概略的な平面図である。マスク70aには、縦方向及び横方向に一定間隔で螺旋状のパターンが形成されている。螺旋状パターンの半径方向に沿う、ライン(金属線部分、遮光部分)の線幅とスリット(開口部分)の線幅とは、ともに0.1μm程度である。螺旋状パターンは、半径方向に0.2μmのパターンピッチで形成されている。
【0034】
螺旋状のパターンを用いることにより、レジストが流れを作ることができるので、基板上のレジストの間に気泡が残留する可能性を著しく低下させることができる。
【0035】
なお、ナノインプリントにより得られたパターンは厚い部分で約1.5μm、薄い部分(図1(C)の残膜53a)で約0.1μmであった。
【0036】
螺旋状のパターンは、LCD基板内の画素パターン(ドットマトリックス)とは、図2(B)に示すように対応する。図中、点線で示した四角いパターンが1つの画素になる。1つの螺旋状パターンで4つの画素に対応していることが分かる。
【0037】
図1(B)に戻り、大気中でレジスト膜53にモールド90を押し付ける。モールド90の押し付け時には、装置全体を真空引きし、モールド90とガラス基板51上のレジスト膜53との間に気泡が入らないようにすることが理想的であるが、装置が非常に高価なものとなってしまうので、本実施例では、真空引きを行わずに大気中でモールド90の押し付けを行う。モールド90を加圧保持(例えば、13Mpa)したまま、ガラス基板51側から紫外線露光を行う。露光はレジストの感度に合わせて、たとえば80mJ/cmのフルエンスで行う。
【0038】
図1(C)を参照する。露光後、モールド90を剥離し、プリベークを行い、現像を実施する。現像液として、KOHの無機アルカリ系水溶液を用いた。市販の現像液を使用することもできる。市販の現像液として、たとえばリソグラフィ用ポジ型レジストの現像に一般的に用いられる、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)が利用可能である。金属膜52上に、マスク70aのマスクパターンと等しいパターンに、レジスト膜53が残存する。
【0039】
なお、この時、マスク70aのマスクパターンの線間のモールド90の凸部94に対応する部分に残膜53aが残留する。この残膜をRIE等によりエッチングして除去し、図1(D)に示すような状態とする。
【0040】
図1(E)を参照する。金属膜52のエッチングを、たとえばドライエッチで行う。なお、本実施例では、SFとNの混合ガスを用いる。
【0041】
金属膜52がモリブデンやチタンで形成されている場合、CF、C、C、C、C、C、C10、C、C14、CFCFOCF、CCFCFCF、CFBr、CFI、CI、SF、NF、WF、CCl、Cl2、CFCl、CFCl、CFCl、CHF、CH、CHFCF、CHFCF、CHCHF、C、CHF、CFCHCF、CCHCH等を用いることができる。また、金属膜52がクロムで形成されている場合、Cl、CCl、SiCl、BCl、PCl、CBrF、BBr、CClF、CCl、CClF、CCl、CClF、HCl、CHCl、CHCl、HBr等を用いることができる。
【0042】
なお、リン酸、硝酸、酢酸、水の混合液を、エッチャントとして用いたウェットエッチで行ってもよい。ウェットエッチングは室温で行い、約10秒で完了する。
【0043】
図1(F)を参照する。NaOH水溶液を用いてレジスト膜53を除去する。有機系のリムーバやアッシングを使ってもよい。ドライエッチングを行った場合、Oプラズマなどによるアッシングが望ましい。こうして、本実施例においては、ガラス基板51上に、マスク70aのパターンを有する金属膜(偏光膜54)を備える偏光膜付基板50が作製される。
【0044】
図1(G)を参照する。図1(A)〜(F)を参照して説明した手順と同様の手順で、ガラス基板61上に、マスク70bのパターンと相似(本実施例においては、相似比は1:1.25)の放射状パターンを有するMo膜(偏光膜64)を備える偏光膜付基板60が作製される。
【0045】
図3(A)は、他の偏光膜付基板60を作製する際に、ナノインプリント技術によりガラス基板61上に形成されるマスク70bのパターンを示す概略的な平面図である。
【0046】
マスク70bには、縦方向及び横方向に一定間隔で放射状のパターンが形成されている。放射状パターンの縦横方向に沿う形成間隔は、図2(A)に示すマスク70aにおける螺旋状パターンのそれと等しい。各放射状パターンにおいては、すべてのライン及びスリットが1点(放射状パターンの中心)に向く。ただし、双方の幅を保ったまま中心の1点を向くのは不可能であるため、スリットの向きが中心向きになり、かつ、スリットの幅が常にほぼ0.08μm〜0.1μmとなるようにする。発明者らが実際に作成したところ、マスク上で0.08μmになるように設計した時、仕上がりで0.1μmのスリットパターンが得られた。ラインの幅はできる限り、向きを中心に向け、幅を0.1μmに近くなるようにするが、特にライン幅は場所により変動し、最大で0.2μm程度になる。放射状パターンの中心から離れるに従い、隣り合うラインの中心間距離は大きくなる。このときにスリット幅をほぼ一定になるように保つ。縦方向または横方向に沿って、隣り合うライン間の距離が0.3μmとなったところで、各ライン及びスリットは隣接する放射状パターンのそれらと連続する。
【0047】
放射状のパターンは、LCD基板内の画素パターン(ドットマトリックス)とは、図3(B)に示すように対応する。図中、点線で示した四角いパターンが1つの画素になる。1つの放射状パターンで4つの画素に対応していることが分かる。
【0048】
本願発明者らは、作製した偏光膜付基板50、60の光透過率を、基板法線方向より測定した。偏光膜付基板50、60と同厚(0.7mmt)のガラス基板を透過する光量を100%としたとき、螺旋状パターンのMo偏光膜54を備える偏光膜付基板50の光透過率は44%であった。この値は、一般的な偏光フィルムの光透過率(同じ測定方法による測定で42%程度)よりも高い値である。一方、放射状パターンのMo偏光膜64を備える偏光膜付基板60の光透過率は40%であり、偏光膜付基板50の光透過率よりも小さかった。偏光膜付基板60のMo偏光膜64(ライン部分、遮光部分)の面積が、偏光膜付基板50におけるそれよりも大きいことが原因であると考えられる。
【0049】
また、偏光膜付基板50及び60を、螺旋状パターンの中心と、放射状パターンの中心とが一致するように重ねたときの光透過率は約0.02%であった。この値は、一般的なワイヤーグリッド型偏光板をクロスニコルに配置した場合の光透過率と同等である。
【0050】
更に、このように重ねた偏光膜付基板50及び60を、様々な方位、及び極角方向から観察したときの遮光性は、観察方位及び極角方向によらずほぼ一定であった。たとえば一軸方向に偏光方向をもつ偏光板をクロスニコルに配置する場合に発現する、観察方位及び極角方向に依存する光抜けが防止されることがわかる。
【0051】
図4は、図1(B)に示すモールド押し付け工程で用いられるモールド90の作製工程を示す概略断面図である。モールド90は、一般的な電子線マスク描画装置を用いて作製する。
【0052】
図4(A)を参照する。表面に熱酸化SiO膜92を形成したシリコン基板91にポジ型レジスト材料を塗布してレジスト膜93を形成する。
【0053】
図4(B)を参照する。レジスト膜93に対して図3(A)に示す螺旋状パターンで電子ビーム露光を行う。その後、図4(C)に示すように、現像を行い図3(A)に示す螺旋状パターンと等しいパターンで熱酸化SiO膜92上にレジスト膜93が残存する。
【0054】
図4(D)を参照する。パターンニングされたレジスト膜93及び露出している熱酸化SiO膜92上に、クロムコーティングを施し、クロム膜95を形成する。その後、レジスト膜93を、例えば、アセトン等を用いて溶かして除去する。これにより、図4(E)に示すように、図3(A)に示す螺旋状パターンを反転させたパターンでクロム膜95が熱酸化SiO膜92上に残存する。
【0055】
図4(F)を参照する。反転パターンを有するクロム膜95をマスクとして用いてドライエッチングを行い、クロム膜95のパターン間に露出する熱酸化SiO膜92を除去する。その後、クロムエッチングを行い、クロム膜95を除去することにより図4(G)に示すような図3(A)に示す螺旋状パターンを反転させたパターンを有するモールド90が完成する。
【0056】
なお、偏光膜付基板60の放射状パターンを作製するためのモールドも図4に示す工程と同様の工程で作製される。なお、この際用いられるパターンは図3(A)に示すものである。
【0057】
図1に示す偏光膜付基板50、60を作製する工程に続いて、セグメント電極を形成したセグメント基板、及び、コモン電極を形成したコモン基板を作製する。
【0058】
図5は、セグメント電極を形成したセグメント基板、及び、コモン電極を形成したコモン基板を作製する工程を説明するための概略断面図である。
【0059】
図5(A)を参照する。透明基板、たとえば厚さ0.7mmtのガラス基板31上に、ITO膜32を、蒸着またはスパッタで形成する。
【0060】
図5(B)を参照する。ITO膜32を、フォトリソ工程で所望のパターン、たとえばドットマトリクスパターンにパターニングすることで、透明電極(セグメント電極)33を形成し、セグメント基板30を得る。なお、透明電極33上には配向膜を形成する。
【0061】
図5(C)を参照する。透明基板、たとえば厚さ0.7mmtのガラス基板21上に形成したITO膜のパターニングを行って、透明電極(コモン電極)23を作製し、コモン基板20を得る。コモン基板20の配向処理は行わない。
【0062】
セグメント基板30には、TFT(Thin Film Transistor)マトリクスを形成してもよい。コモン基板20にはカラーフィルタ(Color Filter; CF)パターンを形成することができる。
【0063】
なお、偏光膜付基板50、60の偏光膜54、64形成面とは異なる面に、セグメント基板30のITOパターンと同様のパターンを作製してもよい。その場合、偏光膜54、64の表面を、保護フィルムの貼付、コーティング膜の形成等で保護することが望ましい。また、偏光膜付基板50、60の偏光膜54、64形成面とは異なる面に、コモン基板20のCFパターンと同様のパターンを作製することも可能である。
【0064】
図5(D)を参照する。平行に対向配置されたセグメント基板30及びコモン基板20間に挟持される液晶層40を形成し、液晶セルを作製する。一方の基板、たとえばセグメント基板30にメインシールパターンを印刷し、他方の基板、たとえばコモン基板20にギャップコントロール剤を散布して重ね合わせ、真空注入法を用いてカイラル剤入りの液晶を注入する。液晶滴下注入法(One Drop Filling; ODF)を利用してもよい。公知の技術、たとえば特許第2621110号公報に記載の技術を用いることが可能である。たとえばアモルファス配向を有するTN型の液晶セルが作製される。セグメント基板30の透明電極(セグメント電極)33と、コモン基板20の透明電極(コモン電極)23とが対向配置される基板内の領域に画素が1つ画定される。
【0065】
図5(E)を参照する。液晶セルのセグメント基板30上に偏光膜付基板50を、螺旋状パターンを有する偏光膜54がセルに接触する向きに重ね合わせる。また、コモン基板20上に偏光膜付基板60を、放射状パターンを有する偏光膜64がセルに接触する向きに重ね合わせる。重ね合わせにおいては、基板20、30の法線方向から液晶セルを見たときに、偏光膜54、64の各螺旋状パターン、及び各放射状パターンの中心が一致するように、かつ、中心が画素外に配置されるように位置合わせを行う。更に、バックライト80を、たとえば液晶セルの偏光膜付基板50側に配置する。
【0066】
図2(B)及び図3(B)を参照して、偏光膜付基板50、60の配置について詳細に説明する。両図において、点線で示す正方形のパターンが1つの画素(セグメント電極33の形成位置)を示す。偏光膜付基板50、60は、螺旋状、放射状の偏光膜パターンがドットマトリクスの画素パターンと対応する位置に設置される。たとえば基板20、30の法線方向から見たとき、螺旋状、放射状の各パターンと、4つの画素とが対応するように、基板30、20上に偏光膜付基板50、60を配置する。
【0067】
第1の実施例による液晶表示素子の概略的な断面は、図5(E)に示されるように、相互に平行に対向配置されたコモン基板20、セグメント基板30、両基板20、30間に挟持された液晶層40、及び、偏光膜付基板50、60を含んで構成される。
【0068】
コモン基板20は、ガラス基板21、及びガラス基板21上にITOで形成された透明電極(コモン電極)23を含む。セグメント基板30は、ガラス基板31、及びガラス基板31上にITOで形成された透明電極(セグメント電極)33を含む。液晶層40は、アモルファス配向する(液晶分子の配向状態がランダムである)TN型の液晶層である。
【0069】
コモン基板20、セグメント基板30の液晶層40と反対側の面には、それぞれ偏光膜付基板60、50が配置される。偏光膜付基板50は、ガラス基板51、及びガラス基板51上に形成された偏光膜54を含む。偏光膜54は、直交する2方向に一定間隔で螺旋状のパターンが形成された金属偏光膜である。また、偏光膜付基板60は、ガラス基板61、及びガラス基板61上に形成された偏光膜64を含む。偏光膜64は、直交する2方向に、偏光膜54の螺旋状パターンの形成間隔と等しい一定間隔で、放射状のパターンが形成された金属偏光膜である。偏光膜付基板50、60は、それぞれ偏光膜54、64が、セグメント基板30、コモン基板20のガラス基板31、21と接するように配置される。偏光膜54、64は、偏光機能を有する金属膜であり、それぞれ金属線部分(ライン部分)に沿って、螺旋状パターン、放射状パターンに偏光軸が配置されている。
【0070】
バックライト80は、液晶セルの偏光膜付基板50側に配置される。第1の実施例による液晶表示素子は、ノーマリホワイトモードの液晶表示素子である。
【0071】
第1の実施例による液晶表示素子を、偏光膜付基板50、60の法線方向から見た場合、それぞれ図2(B)及び図3(B)に示すように、縦横2つずつ、計4つの画素で構成される1単位に偏光膜54、64の各螺旋状パターン、及び各放射状パターンが対応して配設される。各螺旋状及び放射状パターンの中心は一致して、当該4つの画素の中央となる画素外の1点に配置される。
【0072】
図6に、第1の実施例による液晶表示素子の等コントラスト曲線を示す。円の周方向に沿う0°、90°、180°、270°の方位角、及び、円の半径方向に沿う0°〜50°の傾き角度の意味するところは、図9における場合と等しい。また、コントラストが10、20、50となる等コントラスト曲線の表示方法も図9における場合と同じである。
【0073】
極めて広い視角特性を示しているのがわかる。第1の実施例による液晶表示素子は、いずれの方位、方向から見ても反転表示や中間調表示のない、良好な表示を実現することができる。
【0074】
図7(A)〜(E)を参照して、第2の実施例による液晶表示素子の製造方法を説明する。第3の実施例による液晶表示素子においては、セグメントガラス基板31、コモンガラス基板21の液晶層40側に、直接偏光膜54、偏光膜64を形成する。
【0075】
図7(A)を参照する。透明基板、たとえば厚さ0.7mmtのガラス基板31上に、Mo膜を成膜し、これをパターニング等して、螺旋状のパターンを有する偏光膜54を形成する。形成方法や形成厚さ等は第1の実施例における偏光膜54の場合と同様である。その後、偏光膜54上に絶縁膜55を形成する。絶縁膜55の形成は、たとえばSUSで形成されたマスクを用いたスパッタ、CVD、印刷等で行うことができる。第2の実施例においては、フレキソ印刷したレジスト材料をマスクとしてSiOをスパッタし、リフトオフ法を用いて、必要な部分の偏光膜54上にのみ絶縁膜55パターンを形成した。
【0076】
図7(B)を参照する。図5(A)及び(B)を参照して説明した工程と同様の工程により、絶縁膜55上にITO膜を形成し、パターニング等を行って、ドットマトリクスパターンの透明電極(セグメント電極)33を形成する。ここで、ガラス基板31の法線方向から見た場合、第1の実施例を説明するに当たって、図2(B)に示したように、縦横2つずつ、計4つのドットマトリクス電極で構成される1単位に偏光膜54の各螺旋状パターンを対応して配設する。各螺旋状パターンの中心は、当該4つのドットマトリクス電極の中央となるドットマトリクス電極外の1点に配置される。
【0077】
こうして、ガラス基板31、偏光膜54、絶縁膜55、及び透明電極33を含んで構成されるセグメント基板30を得る。なお、セグメント基板30には、TFTマトリクスを形成してもよい。
【0078】
図7(C)及び(D)を参照する。図4(A)及び(B)を参照して説明した工程と同様の工程により、コモン基板20を作製する。コモン基板20は、ガラス基板21、ガラス基板21上に形成され、放射状パターンをもつ偏光膜64、偏光膜64上に形成された絶縁膜65、及び絶縁膜65上に形成された透明電極(コモン電極)23を備える。なお、コモン基板20にはカラーフィルタパターンを形成することができる。
【0079】
セグメント基板30及びコモン基板20に、配向処理を施す。セグメント基板30の偏光膜54パターンと対応する位置に、螺旋円状パターンもしくは同心円状パターンの配向処理を施す。また、コモン基板20の偏光膜64パターンと対応する位置に、偏光膜64の放射状パターンに等しい放射状パターンの配向処理を施す。セグメント基板30に放射状パターン、コモン基板20に同心円状パターンの配向処理を施してもよい。配向処理には、たとえば特許文献3に記載の方法を用いることができる。このような配向処理により、液晶層の液晶分子を螺旋状に配向させることができる。
【0080】
図7(E)を参照する。透明電極33、23が向き合うように平行に対向配置したセグメント基板30及びコモン基板20間に挟持される液晶層40を、液晶滴下注入法(ODF)で形成し、液晶セルを作製する。一方の基板、たとえばセグメント基板30上に、閉じられた形状のメインシールパターンを印刷し、他方の基板、たとえばコモン基板20上にギャップコントロール剤を散布する。あらかじめリブを形成した基板を用いてもよい。そしてシールパターンの内側に所定量の液晶を滴下し、真空中で両基板を重ね合わせる。
【0081】
両基板20、30の重ね合わせに当たり、偏光膜54、64の各螺旋状パターン、及び各放射状パターンは、たとえば図2(B)及び図3(B)に示されるように、第1の実施例と同様に配置される。
【0082】
バックライト80は、液晶セルのセグメント基板30側に配置される。
【0083】
こうして作製される第2の実施例による液晶表示素子は、たとえばノーマリホワイトモードのTN型液晶表示素子である。
【0084】
図8に、第2の実施例による液晶表示素子の等コントラスト曲線を示す。円の周方向に沿う0°、90°、180°、270°の方位角、及び、円の半径方向に沿う0°〜50°の傾き角度の意味するところは、図6及び図9における場合と等しい。また、コントラストが10、20、50となる等コントラスト曲線の表示方法も図6及び図9における場合と同じである。
【0085】
極めて広い視角特性を示しており、いずれの方位から見ても高コントラスト比の表示が得られることがわかる。TNモードの液晶表示素子においては、最高水準の視角特性を実現することができると考えられる。
【0086】
第1及び第2の実施例による液晶表示素子においては、延伸フィルム型の偏光板ではなく、金属膜を、線間距離が光の波長以下である極めて細い線状にパターニングした、ワイヤーグリッドタイプの偏光膜を用いて、光を偏光させる。このため、液晶表示素子の信頼性を向上させることができる。ガラス基板の液晶層側に偏光膜が配置されている第2の実施例においては、湿度の影響を受けないため信頼性が一層高まる。
【0087】
また、第1及び第2の実施例による液晶表示素子においては、液晶層40を挟んで、螺旋状パターンを備える偏光膜54と放射状パターンを有する偏光膜64とが配置されている。偏光膜54、64の偏光軸方向は各パターンのラインに沿う。偏光膜の視角による光抜けを防止することができるため、液晶表示素子の視角特性を飛躍的に向上させることができる。偏光膜パターンに対応する、または類似する配向処理を施した場合には、一層高い視角改善効果を得ることができる。
【0088】
実施例においては、螺旋状及び放射状パターンによる1つの画素内における偏光方向の変化(相違)は約90°である。1つの画素内で偏光膜偏光軸がずれる角度を90°としたことで、どの方向から観察した場合にも、等方的な視角特性を得ることができる。たとえば約180°、270°、360°となるように、螺旋状及び放射状パターン同士を一対として設定しても同様の効果が得られる。この場合、放射状同士よりも螺旋状同士の方が、開口率を高めやすいため好ましい。
【0089】
また、第1及び第2の実施例による液晶表示素子においては、螺旋状及び放射状の偏光膜パターンの中心部を画素の外に配置している。このような構成を採用することにより、螺旋状及び放射状パターンの中心部近傍では十分な偏光度を得にくいという問題や、観察方位(視角)を変化させたときに、偏光軸のなす角度が90°からずれやすくなるという問題を回避することができる。また、光透過率の低い螺旋状及び放射状パターンの中心部近傍を画素外に配置することで、明るい表示を実現することができる。
【0090】
第1及び第2の実施例による液晶表示素子は、液晶層40とバックライト80との間に金属偏光膜54があるため、バックライト80を出射した光のうち、偏光膜54を透過しない偏光成分は、偏光膜54表面でバックライト80側に反射された後、偏光解消しながら再反射、再利用される。このため、実施例による液晶表示素子は、高輝度で表示を行うことができる。
【0091】
また、第1及び第2の実施例による液晶表示素子の製造方法においては、高精度のスタンパを用いてパターンを転写する技術(ナノインプリント技術)を利用したので、螺旋状及び放射状のマスターパターンを一度作れば、あとは一軸偏光板を作製する工程と同様の工程を用いることができる。すなわちワイヤーグリッドタイプの偏光膜を作製するにあたっては、マスクまたはスタンパのパターンを変えるだけでよいので、一軸偏光板を作製する場合と比較して、追加工程がない。
【0092】
さらに、第1及び第2の実施例による液晶表示素子の製造方法においては、円状ではなく螺旋状のパターンを用いるため、ナノインプリント技術でのモールド転写工程(押し付け工程)において、レジストが流れを作ることが可能となり、モールドとガラス基板上のレジストとの間に気泡が残留する可能性が著しく低くなる。よって、常に良好な偏光板を作成することができるとともに、歩留まりを向上させることができる。
【0093】
以上、実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0094】
たとえば、実施例においては、TN型の液晶表示素子について説明したが、垂直配向型の液晶表示素子でもよい。
【0095】
また、実施例は、一方の基板側に螺旋状パターンの偏光膜を配置し、他方の基板側に放射状パターンの偏光膜を配置することによって、ノーマリホワイトタイプの液晶表示素子としたが、双方の基板側に螺旋状パターンの偏光膜を配置する、または双方の基板側に放射状パターンの偏光膜を配置することによって、ノーマリブラックタイプの液晶表示素子とすることができる。ノーマリブラックタイプの液晶表示素子の場合、液晶セルの厚さを厚くして液晶層のリターデーションを大きくした方が、高コントラスト比を得やすい。
【0096】
偏光膜パターンは真円状の螺旋状に限らず、楕円状の螺旋状又は螺旋状の多角形でもよい。それらの多角形や楕円は、パターン中心の周囲に回転させなくても、拡大または縮小することで相互に重なり合うように配置される。たとえば楕円状パターンの偏光膜と放射状パターンの偏光膜とを組み合わせる場合、楕円状パターンの各ラインと直交する略放射状パターンの偏光膜を形成する。多角形状パターンの偏光膜と放射状パターンの偏光膜とを組み合わせる場合は、多角形状パターンの各辺と直交する平行線の集合体とした略放射状パターンの偏光膜を形成する。たとえば画素形状が長方形である場合、または一対の偏光膜パターンに対応するドットマトリクスの集合が長方形状である場合に、楕円状パターンの偏光膜と略放射状パターンの偏光膜との組み合わせが有効であろう。
【0097】
なお、前述のように、コモン基板20またはセグメント基板30に、偏光膜パターンに対応する、または類似する配向処理を施した場合、たとえば偏光膜が螺旋楕円状パターンを備えるときは当該パターンに対応する螺旋楕円状又は同心楕円状パターンに配向処理を施して、液晶分子の配向状態を螺旋楕円状又は同心楕円状とした場合には、一層高い視角改善効果を得ることができる。偏光膜パターンが螺旋多角形状であるときも同様で、液晶分子の配向状態を対応する螺旋多角形状又は同心多角形状とすることにより、優れた視角改善効果を得ることができる。両基板20、30側の偏光膜パターンがともに放射状、または略放射状である場合、対応する放射状、または略放射状パターンに配向処理を施して、液晶分子の配向状態を放射状、または略放射状とすればよい。
【0098】
また、実施例においては、偏光膜の螺旋状パターンは半径方向に0.2μmのパターンピッチで形成されていたが、ライン幅とスリット幅とをほぼ等しくする場合、パターンピッチは0.1μmより大きく、0.4μmより小さくすることができる。パターンピッチが0.1μm以下になると可視光に対する偏光度が低下する。また、0.4μm以上になると干渉色が観察される。楕円状パターン、多角形状パターンの場合も同様である。
【0099】
延伸フィルム型の一軸偏光板を用いる液晶表示素子の製造工程においては、一軸偏光板を切り出し小割した液晶セルに個別に貼る工程が必要であるが、実施例による液晶表示素子の製造方法においては、基板上に偏光膜を形成するため、一軸偏光板の貼付工程が不要となる。したがって、高い生産効率と低コストによる製造とを実現することができる。特に液晶セルをODFで作製する場合、大きな利点となる。
【0100】
その他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者には自明であろう。
【産業上の利用可能性】
【0101】
たとえば車載用ディスプレイ、遊戯用表示、携帯電話・DSC用表示、オーディオ表示、パソコンモニタ表示、液晶テレビ表示、モバイルテレビ表示など液晶ディスプレイ関連全般に利用可能である。殊に、広視角表示、高信頼性が求められる液晶表示素子に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0102】
20 コモン基板
21 ガラス基板
22 ITO膜
23 透明電極
30 セグメント基板
31 ガラス基板
32 ITO膜
33 透明電極
40 液晶層
50 偏光膜付基板
51 ガラス基板
52 金属膜
53 レジスト膜
54 偏光膜
55 絶縁膜
60 偏光膜付基板
61 ガラス基板
62 金属膜
64 偏光膜
65 絶縁膜
70a、70b マスクパターン
80 バックライト
90 モールド
91 シリコン基板
92 熱酸化SiO
93 レジスト膜
95 クロム膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の螺旋形状パターンまたは放射状パターンをもつ第1の偏光膜、及び第1の透明電極を備える第1の透明基板と、
前記第1の透明基板に対向配置され、複数の螺旋状パターンまたは放射状パターンをもつ第2の偏光膜、及び第2の透明電極を備える第2の透明基板と、
前記第1の透明基板と前記第2の透明基板との間に挟持された液晶層と
を有し、
前記第1及び第2の透明基板の法線方向から見たとき、
前記第1の透明電極と前記第2の透明電極とが対向する位置に画素が画定され、
前記第1の偏光膜の螺旋状パターンまたは放射状パターンの中心と、前記第2の偏光膜の螺旋状パターンまたは放射状パターンの中心とが一致し、かつ、前記画素外に配置されている液晶表示素子。
【請求項2】
前記第1または第2の偏光膜の螺旋状パターンが、螺旋状に形成された円パターン、楕円パターン、または多角形パターンである請求項1記載の液晶表示素子。
【請求項3】
前記第1または第2の偏光膜の同心形状パターンの、半径方向に沿うパターンピッチが、0.1μmより大きく、0.4μmより小さい請求項1又は2記載の液晶表示素子。
【請求項4】
(a)第1の透明電極の形成された第1の透明基板、第2の透明電極の形成された第2の透明基板、及び前記第1及び第2の透明基板間に挟持された液晶層を備え、前記第1及び第2の透明基板の法線方向から見たとき、前記第1の透明電極と前記第2の透明電極とが対向する位置に画素が画定される液晶セルを準備する工程と、
(b)前記第1の透明基板に、複数の螺旋状パターンまたは放射状パターンをもつ第1の偏光膜を配置し、前記第2の透明基板に、複数の螺旋形状パターンまたは放射状パターンをもつ第2の偏光膜を配置する工程と
を有し、
前記工程(b)において、前記第1及び第2の透明基板の法線方向から見たとき、前記第1の偏光膜の螺旋状パターンまたは放射状パターンの中心と、前記第2の偏光膜の同心形状パターンまたは放射状パターンの中心とを一致させ、かつ、前記画素外に配置する液晶表示素子の製造方法。
【請求項5】
前記偏光膜が、前記透明基板と前記透明電極の間に形成され、かつ前記透明電極との間には絶縁膜を介して形成されていることを特徴とする請求項4記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項6】
前記偏光膜の螺旋状又は放射状パターンは、ナノインプリント技術により転写形成される請求項4又は5記載の液晶表示素子の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate