説明

液晶表示装置、液晶配向制御膜の製造方法

【課題】ドメイン特性が良好で、プレチルト角を小さくできる液晶表示装置を提供する。
【解決手段】液晶表示装置100の液晶配向制御膜は、共に光透過性の絶縁性金属化合物からなり表面に凹凸を有する下地層20と、この凹凸の表面に非連続に形成される表面層30と、で構成され、表面層30が、下地層20よりも薄く、且つ下地層20とは異なる物質からなる。そして、表面層30による下地層20の表面被覆率を、基板10の表面10aに対して垂直方向と液晶のチルト方向を含む平面内で基板10の垂直方向に対し非対称とする。このことにより、液晶の配向制御範囲の拡大、配向制御の規制力を高めることが可能であり、特に、動画ドメインの発生を抑制しつつプレチルト角を小さくできること効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置、液晶配向制御膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置では、液晶分子のプレチルト角を規制するために、ポリイミド膜等の有機配向膜が用いられていた。しかし、液晶プロジェクターのように高出力光源を備えた機器に有機配向膜を用いる場合、光エネルギーにより有機配向膜がダメージを受けて配向不良が生じることがあるという課題を有していた。そこで、有機配向膜に代わって無機配向膜の採用が進められている。
【0003】
無機配向膜の構造としては、基板の表面に凹凸が存在する場合に、凸部周縁に配向膜が不均一になることから、基板の液晶層側の表面に無機材料を斜め蒸着した第1無機配向膜を形成し、この第1無機配向膜の表面に、第1無機配向膜の蒸着方向、及びその反対方向から斜め蒸着して第2無機配向膜を形成し、凸部周縁に均一の配向膜を形成しようとするものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、対向ターゲットスパッタリング法を用いて、膜質が異なる2層を積層して無機配向膜を形成するものがある。このような無機配向膜形成方法では、放射状に飛散しているスパッタリング粒子を、スリットを介して基板に入射する角度を選択して成膜することや、スパッタリング装置の制御条件を変えることで、膜質を調整している(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−26274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような特許文献1では、配向膜の積層構造を制御することで、配向膜の不均一性を改善することは可能であるが、これだけでは配向特性を制御することは困難である。
また、第2無機配向膜は、第1無機配向膜の配向方向と、この配向方向とは反対方向と、の2方向からの斜め蒸着を行なわなければならないことから、生産性が低いという課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例に係る液晶表示装置は、基板表面に光透過性の絶縁性金属化合物を有する液晶配向制御膜を形成した一対の電極膜を、対向させた前記液晶配向制御膜の間に液晶を挟み込んで設置し、前記一対の電極膜間に電圧を印加することにより前記液晶の配向を変化させ偏光の透過率を制御する液晶表示装置において、前記液晶配向制御膜が、表面に凹凸を有する下地層と、前記凹凸の表面に非連続に形成される表面層と、を有し、前記表面層が、前記下地層よりも薄く、且つ前記下地層とは異なる物質を有し、前記表面層による前記下地層の表面被覆率が、前記基板表面に対して垂直方向と液晶のチルト方向を含む平面内で前記基板の垂直方向に対し非対称であること、を特徴とする。
【0009】
一般に、液晶のプレチルト角を大きくするほど液晶配向制御膜の配向規制力が高くなり、動画ドメインの発生が抑制される。逆に、配向規制力の高い液晶配向制御膜であればあまり大きなプレチルト角を発生させなくとも十分な配向規制力を生むことが出来、動画ドメイン発生を抑制可能である。プレチルト角を大きくするとオン―オフ間でのコントラスト比が小さくなり画面の表示品質が低下するため、動画ドメインの発生しない範囲でプレチルト角を出来るだけ小さくすることが求められている。
本適用例によれば、下地層の凹凸表面に、下地層とは異なる物質、且つ薄い表面層を、下地層の表面被覆率(または表面露出率)を非対称に設けることにより、前述した従来技術よりも大きな異方性を発生させることができる。このことから、液晶の配向制御範囲を拡大すると同時に、動画ドメインの発生を抑制しつつプレチルト角を小さくできるという効果がある。
【0010】
[適用例2]上記適用例に係る液晶表示装置は、前記表面層の厚さが、1nmないし3nmの範囲であることが好ましい。
【0011】
下地層の厚さは、電極表面を露出させずデバイスの長期信頼性を確保するために50nmないし200nmの範囲で成膜される。従って、下地層の表面凹凸は、この厚さを超えることはなく、最小でも5nm以上となる。従って、表面層の厚さを1nmないし3nmの範囲とすることで、表面層の下地層の表面被覆率を、前記基板の前記電極膜の形成平面に対して垂直方向と液晶のチルト方向を含む平面内で前記基板の垂直方向に対し非対称な不連続膜とすることができる。
[適用例3]本適用例に係る液晶表示装置は、基板表面に光透過性の絶縁性金属化合物を有する液晶配向制御膜を形成した一対の電極膜を、対向させた前記液晶配向制御膜の間に液晶を挟み込んで設置し、前記一対の電極膜間に電圧を印加することにより前記液晶の配向を変化させ偏光の透過率を制御する液晶表示装置であって、前記液晶配向制御膜が、表面に凹凸を有する下地層と、前記凹凸の表面に非連続に形成される表面層と、を有し、前記表面層が、前記下地層よりも薄く、且つ前記下地層とは異なる物質を有し、前記表面層による前記下地層の表面被覆率が、前記基板表面に対して垂直方向と液晶のチルト方向を含む平面内で前記基板の垂直方向に対し非対称であること、を特徴とする。
【0012】
本適用例によれば、下地層と表面層からなる液晶配向制御膜を設けているため、液晶の配向規制力を高めることが可能で、効果的に液晶の動画ドメイン発生を抑制することができる。その結果、プレチルト角を小さくすることができ、オン―オフ間でのコントラスト比が大きくなり画面の表示品質が向上するという効果がある。
【0013】
[適用例4]本適用例に係る液晶配向制御膜の製造方法は、基板表面に光透過性の絶縁性金属化合物を有する液晶配向制御膜を形成した一対の電極膜を、対向させた前記液晶配向制御膜の間に液晶を挟み込んで設置し、前記一対の電極膜間に電圧を印加することにより前記液晶の配向を変化させ偏光の透過率を制御する液晶表示装置における前記液晶配向制御膜の製造方法であって、前記電極膜の表面に、膜厚よりも小さい凹凸表面を有する光透過性の絶縁性金属化合物を有する下地層を形成する工程と、前記下地層の凹凸表面に、前記基板表面に対して垂直方向と液晶のチルト方向を含む平面内の基板垂直方向より所定の方向から基板表面に対して斜めに、前記下地層とは異なる物質からなる粒子を入射して、前記下地層よりも薄い表面層を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
下地層の凹凸表面には、液晶の配向性を規制する表面層を形成する。従って、下地層単独では異方性がなくてもよく、凹凸の向きを規制しなくてもよい。また、表面層は、所定の一方向(斜め上方)から粒子を入射させ、入射方向に向いた凹凸面に極薄く形成すれば、液晶の配向性の制御範囲を広くできることから、成膜条件の管理を含め生産性を従来技術よりも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】液晶配向制御膜の構造を模式的に表す断面図。
【図2】液晶層側から視認したときの液晶配向制御膜の最表面層を模式的に現す平面図。
【図3】表面層の形成範囲を模式的に示す図。
【図4】下地層の形成工程を模式的に表し、(a)は部分断面図、(b)は液晶層側から視認した部分平面図。
【図5】液晶配向制御膜を液晶側から視認したAMF撮像図。
【図6】液晶表示装置を構成するTFTアレイ基板の平面図。
【図7】液晶表示装置の模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
なお、以下の説明で参照する図は、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
(液晶配向制御膜の構造)
【0017】
図1は、液晶表示装置に用いられる液晶配向制御膜の構造を模式的に表す断面図、図2は、液晶層側から視認したときの液晶配向制御膜の最表面層を模式的に現す平面図である。図1、図2において、液晶配向制御膜は、X−Y平面に展在される基板10の表面10aに形成される電極膜15の表面に形成される下地層20と、下地層20の最上層表面に非連続に形成される表面層30とから構成されている。
【0018】
下地層20は光透過性の絶縁性金属化合物からなり、通常、成膜時に形成される粒状構造物21がランダムに積み重なって構成され、最上層の表面SFには小さな凹凸が形成されている。下地層20は、下層の電極膜15が露出しない程度の厚さ(50nmないし200nm)を有している。この凹凸の大きさは、粒子の直径の数nmないし最大でも膜厚200nm以下である。
【0019】
下地層20の材質としては、シリコン酸化物(SiO2)、アルミニウム酸化物(Al23)、ジルコン酸化物(ZrO2)、チタン酸化物(Ti2)等の光透過性の絶縁性金属化合物であって、スタッパリング法や蒸着法等の成膜手段を用いて形成されている。
【0020】
表面層30は、基板10の表面10aに対して所定の斜め上方(図示Za方向:基板表面に対して垂直方向から角度θ)から粒子を入射して形成されている。従って、凹凸の上面の斜め上方に表面層30が形成される。表面層30は、アルミニウム酸化物(Al23)、ジルコン酸化物(ZrO2)、チタン酸化物(Ti2)、シリコン酸化物(SiO2)等の光透過性の絶縁性金属化合物(酸化物)等を用いることが可能で、下地層20とは異種材料の組み合わせとなるように選択される。表面層30は、下地層20の斜め上方に主となる膜が形成される。
表面層30の形成範囲については、図3を参照して説明する。
【0021】
図3は、表面層の形成範囲を模式的に示す図である。なお、図3では、下地層20の最上層にある1個の粒子21を球形として例示的に示している。粒子21には斜め上方(Za方向)から表面層30を構成する粒子が入射される。従って、粒子21のZa方向の表面は粒子21の密度が高く、Za方向に対して影になる方向に向かって粒子21の密度は徐々に低くなり、Za方向とは反対側には粒子は付着しない。ここで、入射方向に近い表面の図示領域30aでは液晶の配向性を強く規制し、領域30bは配向性にほとんど影響しない領域となる。
【0022】
領域30aの厚さは、1nmないし3nmの範囲で成膜されている。なお、下地層20の厚さは50nmないし200nmの範囲であって、下地層の表面凹凸は、この厚さを超えることはなく、最小でも5nm以上となる。従って、領域30a表面層の厚さを1nmないし3nmとし、その周囲の30b領域の厚さを1nm以下とすれば、表面層30は、図1に示すように、凹凸表面において非連続となる。なお、30a領域の厚さは、表面凹凸の大きさが5nm以上であれば、1nmないし5nm以下の範囲であってもよい。
【0023】
また、表面層30の下地層20の表面被覆率は、基板10の表面10aに対して垂直方向(Z方向)と液晶のチルト方向を含む平面A内で、基板表面10aの垂直方向に対し非対称となる。
【0024】
従って、上述した液晶配向制御膜の構造によれば、下地層20の凹凸表面に、下地層20とは異なる物質、且つ薄い表面層30を、下地層20の表面被覆率(または表面露出率)を非対称に設けることにより、前述した従来技術よりも大きな異方性を発生させることができる。このことから、液晶の配向制御範囲を拡大し、配向制御の規制力を高めることが可能であり、特に、小さなプレチルト角で動画ドメイン発生を抑制できるという効果がある。
【0025】
また、表面層の厚さを1nmないし3nmの範囲とすることで、表面層30による下地層20の表面被覆率を、基板10の表面10aに対して垂直方向と液晶のチルト方向を含む平面A内で基板10の垂直方向に対し非対称な不連続膜を形成することができる。
なお、表面層30(領域30aにおいて)の厚さは、下地層20の凹凸表面において非連続となる厚さであればよいが、液晶のプレチルト角を小さくするために5nm以下にすることが望まれる。
(液晶配向制御膜の製造方法)
【0026】
続いて、液晶配向制御膜の製造方法について図面を参照して説明する。なお、液晶配向制御膜を構成する下地層20及び表面層30の製造方法としては、スパッタリング法または蒸着法を用いることが可能であるが、本実施例では、スパッタリング法を例示して説明する。従って、ここで説明する粒子は、スパッタリング粒子である。
まず、液晶配向制御膜のうちの下地層20を形成する。
図4は、下地層の形成工程を模式的に表し、(a)は部分断面図、(b)は液晶層側から視認した部分平面図である。
【0027】
本実施例では液晶配向制御膜の製造方法として、対向ターゲットスパッタ法(FTS法)を適用した。まず真空チャンバ内に、表面10aに電極膜15を形成した基板10を用意する。この基板に向け、平行配置されたターゲット間の空間にArガスを導入しつつ高電圧を印加してプラズマを発生させ、Arイオンをターゲットに衝突させ、ターゲット間より漏れ出てくるスパッタ粒子を基板上に堆積させ膜とする。
【0028】
本実施例では、ターゲット材料をシリコン(Si)として説明する。成膜室内に配置される基板10の上方から飛来した粒子と、成膜室に流通する酸素ガスとを基板10上で反応させることで、シリコン酸化物(SiO2)からなる無機配向膜を基板10上に形成する。シリコン酸化物(SiO2)からなる粒状構造物21は、多数個ランダムに積み重ねて構成され、最上層の表面SFは小さな凹凸を有する。
【0029】
下地層20は、下層の電極膜15が露出しない程度の厚さ(50nmないし200nm)を有している。この凹凸の大きさは、粒子の直径に相当する数nmないし最大でも膜厚200nm以下である。
【0030】
下地層20の材質としては、シリコン酸化物(SiO2)に限らず、光透過性の絶縁性金属化合物であればよく、アルミニウム酸化物、亜鉛酸化物、インジウム酸化物、チタン酸化物等を用いることが可能である。
【0031】
また、下地層20は、従来技術のように基板10の表面上(具体的には電極膜15)に斜め方向から飛来したスパッタリング粒子を一方向に配向した柱状構造にする必要性はない。
【0032】
次に、下地層20の表面に、同じスパッタリング装置を用いて、FTS法で表面層30を形成する。この工程は図1、図2、図3を参照する。表面層30は、基板10の表面10aに対して垂直方向と液晶のチルト方向を含む平面A内の基板垂直方向より所定の方向から基板面に斜めに下地層20とは異なる物質からなる粒子21を入射して、下地層20よりも薄い絶縁性金属化合物からなる無機配向膜が形成される。
【0033】
表面層30の形成方法は、下地層20の形成方法とほぼ同じであるが、基板10に対して所定の斜め方向からスパッタリング粒子を入射することが異なる。従って、表面層30は、図1、図2、図3に示すように下地層20の凹凸表面に形成される。また、液晶配向制御膜の表面状態の1例を図5に示す。
【0034】
図5は、液晶配向制御膜を液晶層側から視認したAMF(Atomic Force Microscope:原子間力顕微鏡)撮像である。図5に示すように、基板10表面10aには、液晶配向制御膜を構成する粒子21(スパッタリング粒子)がランダムに配置されていることが分かる。ここで、白色の部分が凹凸表面の上層を表している。
【0035】
表面層30の材質は、下地層20と異なる物質より選択する。無機配向制御膜にはSiO2を用いることが一般的であることから、本実施例においても配向制御膜の大半を構成する下地層20にはSiO2を選択した。SiO2膜をFTS法で形成する場合は、ターゲット材にSiを用い、ターゲット間にArガスを供給してArプラズマを発生させ、放出されるSiスパッタ粒子を、成膜室中に導入するO2と反応させる、反応性FTS法を適用することが出来る。
【0036】
当然ながらこの反応性FTS法により、Al23、ZrO2、Ta25等の金属酸化膜を形成し、下地層20に適用することも可能である。表面層30として、本実施例ではAl23もしくはZrO2を反応性FTS法により、基板に対し斜め上方よりスパッタ粒子を入射させ1nmないし3nm形成した。下地層のSiO2と、表面層のAl23AもしくはZrO2では液晶との相互作用の強さが全く異なると考えられ、下地層が有する凹凸の両面で双方の被覆率(または露出率)が異なれば、凹凸の左右面で液晶との相互作用に差が生まれ、配向規制力が発生するのである。
【0037】
この場合、凹凸の形状には僅かな非対称しかないため、表面形状の非対称性により発生するプレチルト角は、通常の斜方入射によるSiO2蒸着膜等の無機配向制御膜に比べ小さい。ただし、電極間に電圧印加した際の配向制御膜表面の電気化学特性には、凹凸の左右表面がSiO2とAl23もしくはZrO2という違いに起因して、通常の単層無機配向制御膜よりはるかに大きな非対称が発生し、液晶の配向を強く規制することが出来るのである。
【0038】
このように本実施例では、表面層と下地層の電気化学的特性が異なっていることが重要であることから、必ずしも両層が異種金属の化合物でなくとも同様の効果を生むことが可能である。すなわち、下地層をSiO2膜とし、表面層を窒素を含有させたSiO2膜としたり、下地層を化学量論組成(Si:O=1:2)付近の組成とし、表面層を酸素不足の組成(Si:O=1:x(x<2)とする、といった手法も可能である。
【0039】
以上説明した液晶配向制御膜の製造方法によれば、下地層20の凹凸表面には、液晶の配向性を規制する表面層30を形成する。従って、下地層20の単独では異方性がなくてもよく、凹凸の向きを規制しなくてもよい。また、表面層30は、所定の一方向(斜め上方)から粒子を入射させ、入射方向に向いた凹凸面に極薄く形成すれば、液晶の配向性を強く規制でき、液晶の配向性の制御範囲を広くできる。
【0040】
また、下地層20のスパッタリング粒子の入射方向は、特に限定しなくてよく、表面層30の形成時のみ管理すればよいことから、成膜条件の管理を含め生産性を従来技術よりもはるかに向上させることができる。
(液晶表示装置)
【0041】
続いて、上述した液晶配向制御膜を用いて製造することができる液晶表示装置の1例について図面を参照して説明する。
本実施例の液晶表示装置は、対向配置されたTFTアレイ基板と、対向基板との間に液晶層を挟持した構成を備えたTFTアクティブマトリクス方式の透過型液晶表示装置である。
図6は本実施形態の液晶表示装置を構成するTFTアレイ基板の平面図である。図7は液晶表示装置の模式断面図である。
【0042】
図6に示すように、TFTアレイ基板110は、中央に画像表示領域101が形成されている。画像表示領域101の周縁部にシール材102が配設され、このシール材102によりTFTアレイ基板110と対向基板120とを貼り合わせて、TFTアレイ基板110、対向基板120とシール材102とに囲まれる領域内に液晶層(図示せず)が封止されている。
【0043】
シール材102の外側には、走査線に走査信号を供給する走査線駆動回路103と、データ線に画像信号を供給するデータ線駆動回路104とが実装されている。TFTアレイ基板110の端部には外部回路に接続する複数の接続端子106が設けられており、接続端子106には走査線駆動回路103、データ線駆動回路104から延びる配線が接続されている。また、シール材102の四隅にはTFTアレイ基板110と対向基板120とを電気的に接続する基板間導通部105が設けられており、配線を介して接続端子106と電気的に接続されている。
【0044】
図7に示すように、本実施例の液晶表示装置100は、TFTアレイ基板110と、これに対向配置された対向基板120と、これらの間に挟持された液晶層130とを備えて構成されている。
TFTアレイ基板110は、ガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体111、及びその内側(液晶層130側)に形成されたTFT(Thin Film Transistor)118、電極膜としての画素電極112、さらにこれを覆う配向下地膜113、液晶配向制御膜114などを備えている。
【0045】
対向基板120は、ガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体121、およびその内側(液晶層130側)に形成された透明導電材料からなる電極膜としての共通電極122、さらにこれを覆う配向下地膜123、液晶配向制御膜124などを備えている。
液晶配向制御膜114,124は、前述した下地層20と表面層30(図1、参照)により構成されている。
なお、基板本体111,121のそれぞれの外側(液晶層130と反対側)には、偏光板115,125が互いの透過軸を直交させた状態(クロスニコル)で配置されている。
【0046】
液晶表示装置100は、互いに液晶層130を挟んで対向する基板本体111,121とが、下地層20と表面層30からなる液晶配向制御膜を設けているため、液晶の配向規制力を高めることが可能で、従来は動画ドメインの発生を抑制するために3°以上のプレチルト角が必要だったものを、プレチルト角2°で動画ドメインの発生を抑制することが出来る。これにより、オン―オフ間でのコントラスト比が大きくなり画面の表示品質が向上するという効果がある。
【0047】
なお、本実施例の液晶表示装置100は、光透過性の液晶表示装置を例示しており、プロジェクター等の光変調手段として用いることができ、配向規制力が高く、プレチルト角を小さくできることから、動画ドメインの発生を抑制することができると共に、光透過率を高め明るい表示画面を実現できるのでプロジェクター等に好適に採用することができる。
【0048】
また、以上説明した液晶配向制御膜は、反射型の液晶表示装置にも適合可能であって、反射型の場合は、対向する基板のうちの一方の基板本体、画素電極を光透過性の物質とすれば、光透過性の液晶表示装置と同様な、ドメイン特性、明るさを実現でき、携帯電話等の様々な電子機器の表示装置として採用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10…基板、10a…基板の表面、15…電極膜、20…液晶配向制御膜の下地層、21…粒子、30…液晶配向制御膜の表面層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面に光透過性の絶縁性金属化合物を有する液晶配向制御膜を形成した一対の電極膜を、対向させた前記液晶配向制御膜の間に液晶を挟み込んで設置し、前記一対の電極膜間に電圧を印加することにより前記液晶の配向を変化させ偏光の透過率を制御する液晶表示装置において、
前記液晶配向制御膜が、表面に凹凸を有する下地層と、前記凹凸の表面に非連続に形成される表面層と、を有し、
前記表面層が、前記下地層よりも薄く、且つ前記下地層とは異なる物質を有し、
前記表面層による前記下地層の表面被覆率が、前記基板表面に対して垂直方向と液晶のチルト方向を含む平面内で前記基板の垂直方向に対し非対称であること、
を特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶表示装置において、
前記表面層の厚さが、1nmないし3nmの範囲であること、を特徴とする液晶表示装置。
【請求項3】
基板表面に光透過性の絶縁性金属化合物を有する液晶配向制御膜を形成した一対の電極膜を、対向させた前記液晶配向制御膜の間に液晶を挟み込んで設置し、前記一対の電極膜間に電圧を印加することにより前記液晶の配向を変化させ偏光の透過率を制御する液晶表示装置であって、
前記液晶配向制御膜が、表面に凹凸を有する下地層と、前記凹凸の表面に非連続に形成される表面層と、を有し、
前記表面層が、前記下地層よりも薄く、且つ前記下地層とは異なる物質を有し、
前記表面層による前記下地層の表面被覆率が、前記基板表面に対して垂直方向と液晶のチルト方向を含む平面内で前記基板の垂直方向に対し非対称であること、
を特徴とする液晶表示装置。
【請求項4】
基板表面に光透過性の絶縁性金属化合物を有する液晶配向制御膜を形成した一対の電極膜を、対向させた前記液晶配向制御膜の間に液晶を挟み込んで設置し、前記一対の電極膜間に電圧を印加することにより前記液晶の配向を変化させ偏光の透過率を制御する液晶表示装置における前記液晶配向制御膜の製造方法であって、
前記電極膜の表面に、膜厚よりも小さい凹凸表面を有する光透過性の絶縁性金属化合物を有する下地層を形成する工程と、
前記下地層の凹凸表面に、前記基板表面に対して垂直方向と液晶のチルト方向を含む平面内の基板垂直方向より所定の方向から基板表面に対して斜めに、前記下地層とは異なる物質からなる粒子を入射して、前記下地層よりも薄い表面層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする液晶配向制御膜の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図5】
image rotate