説明

液晶表示装置の製造方法

【課題】液晶セル内への液晶注入不良を良好に抑制する液晶表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】液晶表示装置の製造方法は、液晶皿21を準備する第1ステップと、液晶皿21の液晶収容部22の表面に液晶25を薄膜状に設ける第2ステップと、液晶皿21に設けられた液晶25を脱泡する第3ステップと、脱泡した液晶25が設けられた液晶皿21の液晶収容部22にさらに所定量の液晶25を設け、液晶25を脱泡する第4ステップと、液晶セルを内部に備える貼り合わせ基板を準備し、液晶セル内に液晶皿21の脱泡した液晶25を注入する第5ステップと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、2枚の基板を対向させて貼り合わせ基板を形成し、この貼り合わせ基板内の液晶セルに液晶を注入することにより作製している。液晶の注入は、まず、液晶を設けた液晶皿を処理室内に準備し、その液晶に脱泡処理を施す。ここで、脱泡処理は、液晶中に混入している気泡や、液晶中に溶け込んでいる不純ガス成分等を放出するために行う。続いて液晶に貼り合わせ基板の液晶注入口を接触させた後、処理室内を真空雰囲気にすることにより行っている。また、このような従来の液晶注入に関する技術が、例えば、特許文献1等に開示されている。
【特許文献1】特開2006-072131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図7〜10は、従来の液晶注入法を説明するための液晶皿100の断面図である。液晶皿100は、本体部101と、本体部101上に設けられた周壁部102と、を備え、これらで囲まれた部分で液晶収容部103を構成している。
【0004】
液晶注入は、まず、図7に示すように、液晶皿100の液晶収容部103に液晶104を設ける。液晶皿100には、本体部101と周壁部102とによって構成される液晶収容部103に収まる量の液晶104が設けられている。
【0005】
ここで、液晶皿100は、通常、アルミニウム等の金属にテフロン(登録商標)等で表面加工をすることにより形成されているため、製造時にその表面に微小な凹凸部108が生じやすい。このような液晶皿100に液晶104を設けた場合、図8に示すように、本体部101表面の凹凸部108には液晶104が入り込めず、凹凸部108内に空気109が残った状態となっている。
【0006】
次に、液晶皿100の液晶104に脱泡処理を施す。液晶皿100の液晶104を脱泡すると、図9に示すように、脱泡の勢いで液晶皿100の本体部101表面の液晶104が弾かれて、液晶104が存在しない領域Aが生じる。ここで、図10は、図9の領域A’の拡大図を示す。
【0007】
このように、液晶皿100の液晶収容部103に液晶104が存在しない領域が生じると、液晶セル内への液晶104の注入不良が発生し、液晶表示装置の表示不良の原因となる。
【0008】
本発明は、斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、液晶セル内への液晶注入不良を良好に抑制する液晶表示装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る液晶表示装置の製造方法は、液晶皿を準備する第1ステップと、液晶皿の液晶収容部の表面に液晶を薄膜状に設ける第2ステップと、液晶皿に設けられた液晶を脱泡する第3ステップと、脱泡した液晶が設けられた液晶皿の液晶収容部にさらに所定量の液晶を設け、液晶を脱泡する第4ステップと、液晶セルを内部に備える貼り合わせ基板を準備し、液晶セル内に液晶皿の脱泡した液晶を注入する第5ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、液晶皿の液晶収容部表面に、初めに液晶を薄膜状に設け、この薄膜状の液晶を脱泡する。このため、脱泡の勢いで液晶収容部表面の液晶が弾かれても、液晶収容部表面の凹凸部内に液晶が良好に入り込み、さらに液晶収容部表面上を液晶の薄膜が覆う。このように、液晶収容部表面の凹凸部内から空気を良好に除去した状態で、さらに所定量の液晶を液晶皿に設けて脱泡する。このとき、脱泡時に液晶収容部表面の凹凸部内から気泡が発生せず、そのため液晶皿の液晶収容部に液晶が存在しない領域が生じない。したがって、液晶セル内への液晶の注入不良の発生が良好に抑制される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液晶セル内への液晶注入不良を良好に抑制する液晶表示装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る液晶表示装置の構成及びその製造方法を、図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
(液晶表示装置の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る液晶表示装置10の断面図を示す。液晶表示装置10は、液晶表示パネル20及びバックライト(不図示)で構成されている。
【0014】
液晶表示パネル20は、それぞれ偏光板15,17が外表面に配置された薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)基板11、カラーフィルタ(CF)基板12、及び、それらの間に挟持された液晶層13を備えている。
【0015】
TFT基板11には、X軸方向に伸びる複数のゲート線と、Y軸方向に伸びる複数のソース線とが形成されている(それぞれ不図示)。これらのゲート線及びソース線により区画される矩形の領域がそれぞれ画素領域である。ゲート線とソース線の各交差部にはスイッチング素子としてのTFT(不図示)が形成されている。TFT基板11の液晶層13側表面には、配向膜14が形成されている。
【0016】
CF基板12には、ブラックマトリクス(遮光膜)、カラーフィルタ、及び、対向電極等(それぞれ不図示)が形成されている。CF基板12の液晶層13側表面には、配向膜16が形成されている。
【0017】
液晶層13は、TFT基板11とCF基板12との間に設けられ、外周はTFT基板11とCF基板12とを貼り合わせるためのシール材18で囲まれている。
【0018】
(液晶表示装置10の製造方法)
次に、本発明の実施形態に係る液晶表示装置10の製造方法について説明する。尚、以下に示す製造方法は単なる例示であり、本発明に係る液晶表示装置10は以下に示す方法により製造されたものに限定されるものではない。
【0019】
まず、周知のTFT基板製造工程により、ゲート線、ソース線、及び、TFT等を備えたTFT基板11を形成する。
【0020】
次に、周知のCF基板製造工程により、ブラックマトリクス、カラーフィルタ、及び、対向電極等を備えたCF基板12を形成する。
【0021】
このようにして形成したTFT基板11に対し、その周縁部に沿って、紫外線硬化樹脂等を用いてシール材18を枠状に設ける。このとき、枠状のシール材18の一部は欠損させておく。
【0022】
続いて、シール材18を設けたTFT基板11と、上述のように形成したCF基板12とをスペーサ(不図示)を挟んで相互に対向させて貼り合わせ、シール材18を紫外線照射等によって硬化させる。このようにしてTFT基板11とCF基板12とで構成された貼り合わせ基板を作製する。このとき、シール材18をTFT基板11に設けたときの欠損部が貼り合わせ基板の液晶注入口となり、TFT基板11とCF基板12との間に形成された空間が液晶セルとなる。
【0023】
次に、貼り合わせ基板内に液晶を注入する工程について説明する。
【0024】
貼り合わせ基板への液晶の注入は、液晶注入装置(不図示)を用いて行う。液晶注入装置は、注入室と、ゲートバルブを介して注入室に連通する脱泡室とを備えている。注入室および脱泡室には、個別に真空排気装置が設けられている。脱泡室には液晶トレイが設けられており、液晶トレイ上には液晶を収容する液晶皿21が装着されている。
【0025】
液晶皿21は、液晶収容部22を構成する本体部23と周壁部24とを備えている。液晶皿21は、どのようなものを用いてもよいが、例えば、アルミニウム等の金属にテフロン(登録商標)等で表面加工をすることにより構成されている。
【0026】
液晶注入の際には、液晶トレイが注入室に搬送され、所定位置まで移送される。注入室には貼り合わせ基板の液晶セルを装填する際の扉が設けられており、この扉を介して液晶セルが注入室に装填される。
【0027】
液晶注入装置において、まず、ゲートバルブを閉じて、脱泡室の液晶トレイ上の液晶皿21に液晶25を、図2に示すように、液晶収容部22の表面に薄膜状に広がるようにシリンジ等を用いて充填する。このとき、液晶25の充填量は、後段で行う脱泡処理の際に液晶収容部22の表面の凹凸部28に液晶25が良好に入り込む量であればよく、例えば、0.3〜0.5mm程度の厚さの膜となるように液晶皿21に設ける。
【0028】
次に、脱泡室内を真空排気装置により真空排気する。この真空排気と共に、液晶皿21の液晶収容部22に設けられた薄膜状の液晶25が脱泡される。このとき、図3に示すように、脱泡の勢いによって液晶収容部22表面の液晶25が弾かれても、図4に示すように、液晶収容部22表面の凹凸部28内に液晶25が良好に入り込み、さらに液晶収容部22表面上を液晶25の薄膜が覆う。ここで、図4は、図3の領域Aの拡大図を示す。
【0029】
また、このとき、液晶皿21の液晶収容部22に設けた液晶25を脱泡した後、例えば、シリンジ等を用いて液晶25を薄膜状に整え、続いて、薄膜状に整えた液晶25をさらに脱泡してもよい。これによれば、液晶収容部22表面の凹凸部28内に液晶25をさらに良好に入り込ませることができる。
【0030】
このように液晶収容部22表面の凹凸部28に良好に液晶25を充填した後、脱泡室内を開放して常圧雰囲気に戻す。
【0031】
続いて、図5に示すように、液晶収容部22に再度液晶25を充填する。液晶25の充填量は、特に限定されず、液晶皿21の収容部内に収まる所定の量に設定する。
【0032】
次に、再度脱泡室内を真空排気装置により真空排気する。この真空排気と共に、液晶皿21の液晶収容部22に設けられた所定量の液晶25が脱泡される。このとき、図6に示すように、液晶収容部22表面の凹凸部28内が液晶25で良好に満たされているため、脱泡の勢いによる気泡の発生がなく、液晶25が弾かれない。したがって、液晶皿21の液晶収容部22に液晶25が存在しない領域が生じない。ここで、図6は、図5の領域Aの拡大図を示す。
【0033】
続いて、脱泡室内を開放して常圧雰囲気に戻す。
【0034】
また、注入室では、あらかじめ貼り合わせ基板が配置されており、液晶セルの真空引きを行っておく。すなわち、大気圧状態の注入室の扉を開けて液晶セルを装填した後に、再び扉を閉じて注入室内を真空排気装置で真空排気し、液晶セル内を真空排気(セル内排気と呼ぶ)する。このとき、液晶セルを加熱して、液晶セルを構成するガラス基板の脱ガス(基板表面に付着しているガス分子の放出)の促進を図る場合もある。
【0035】
次に、ゲートバルブを開いて、脱泡室から、液層皿が装着された液晶トレイを注入室に搬送し、ゲートバルブを閉じる。液晶トレイは、貼り合わせ基板の液晶注入口に対向する位置に搬送する。
【0036】
続いて、貼り合わせ基板の液晶セル内へ、液晶皿21の液晶25を注入する。このとき、まず、貼り合わせ基板の液晶注入口を液晶皿21の液晶収容部22に入れて、窒素ガス供給装置等を用いて窒素ガスを注入室内に供給する。窒素ガスを供給することにより、注入室内を大気圧(または加圧)状態にすると、液晶セル内は真空状態になっているため、差圧により液晶皿21の液晶収容部22に充填された液晶25が、液晶セル内に注入される。
【0037】
液晶25の注入が完了した後、注入室内を大気圧(加圧注入の場合)に戻した後に液晶セルを注入室から取り出し、液晶注入口を接着剤等により封止する。
【0038】
以上のようにして、貼り合わせ基板の液晶セル内に、良好に脱泡された液晶25を注入不良を起こすことなく注入することにより、液晶層13が構成され、これにより液晶表示パネル20を作製する。
【0039】
なお、上記実施形態では、液晶皿21に初めに薄膜状に液晶25を設けて脱泡した後に、液晶25の再充填及び再脱泡を1度行ったが、この液晶25の再充填及び再脱泡は、複数回繰り返して行うとともに、各回ごとに液晶皿21に設ける液晶25の量を徐々に増大させても良い。その場合、より良好に液晶25中の気泡や不純物ガス成分等が除去される。このため、液晶表示装置10の表示品質がより良好となる。
【0040】
次に、液晶表示パネル20の厚さ方向の両側にそれぞれ偏光板15,17を配置し、さらに駆動回路及びバックライトを取り付ける。これにより、液晶表示装置10が完成する。
【0041】
(作用効果)
次に、本発明の実施形態に係る液晶表示装置10の製造方法の作用効果について説明する。
【0042】
液晶皿21を準備する第1ステップと、液晶皿21の液晶収容部22の表面に液晶25を薄膜状に設ける第2ステップと、液晶皿21に設けられた液晶25を脱泡する第3ステップと、脱泡した液晶25が設けられた液晶皿21の液晶収容部22にさらに所定量の液晶25を設け、液晶25を脱泡する第4ステップと、液晶セルを内部に備える貼り合わせ基板を準備し、液晶セル内に液晶皿21の脱泡した液晶25を注入する第5ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0043】
このような構成によれば、液晶皿21の液晶収容部22表面に、初めに液晶25を薄膜状に設け、この薄膜状の液晶25を脱泡する。このため、脱泡の勢いで液晶収容部22表面の液晶25が弾かれても、液晶収容部22表面の凹凸部28内に液晶25が良好に入り込み、さらに液晶収容部22表面上を液晶25の薄膜が覆う。このように、液晶収容部22表面の凹凸部28内から空気を良好に除去した状態で、さらに所定量の液晶25を液晶皿21に設けて脱泡する。このとき、脱泡時に液晶収容部22表面の凹凸部28内から気泡が発生せず、そのため液晶皿21の液晶収容部22に液晶25が存在しない領域が生じない。したがって、液晶セル内への液晶25の注入不良の発生が良好に抑制される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したように、本発明は、液晶表示装置の製造方法について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】液晶表示装置の断面図である。
【図2】液晶を薄膜状に充填した液晶皿の断面図である。
【図3】脱泡後の液晶皿の断面図である。
【図4】図3の領域Aの拡大図である。
【図5】再度液晶を充填した液晶皿の断面図である。
【図6】図5の領域Aの拡大図である。
【図7】従来の液晶注入法における液晶を充填した液晶皿の断面図である。
【図8】図7の領域A’の拡大図である。
【図9】従来の液晶注入法における液晶を脱泡した液晶皿の断面図である。
【図10】図9の領域A’の拡大図である。
【符号の説明】
【0046】
10 液晶表示装置
11 TFT基板
12 CF基板
13 液晶層
18 シール材
20 液晶表示パネル
21 液晶皿
22 液晶収容部
23 本体部
24 周壁部
25 液晶
28 凹凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶皿を準備する第1ステップと、
上記液晶皿の液晶収容部の表面に液晶を薄膜状に設ける第2ステップと、
上記液晶皿に設けられた液晶を脱泡する第3ステップと、
上記脱泡した液晶が設けられた液晶皿の液晶収容部にさらに所定量の液晶を設け、該液晶を脱泡する第4ステップと、
液晶セルを内部に備える貼り合わせ基板を準備し、該液晶セル内に上記液晶皿の脱泡した液晶を注入する第5ステップと、
を備えた液晶表示装置の製造方法。
【請求項2】
上記第4ステップを複数回繰り返して行うとともに、各回ごとに上記液晶皿に設ける液晶の量を徐々に増大させる請求項1に記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項3】
上記第3ステップにおいて、上記液晶皿に設けられた液晶を脱泡した後、該液晶皿内の液晶を薄膜状に整え、さらに該液晶を脱泡する請求項1に記載の液晶表示装置の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−186898(P2009−186898A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28871(P2008−28871)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】