説明

液晶表示装置

【課題】 視野角の広い液晶表示装置を提供する。
【解決手段】 それぞれの内面に透明電極を有する上下基板との間に液晶を封入した液晶表示装置において、前記上基板の透明電極73と下基板の透明電極63とが対向し合って表示画素領域Aを形成するところの上基板の透明電極73、又は下基板の透明電極63の少なくとも一方の透明電極に小孔からなる開口部73aを複数設ける。開口部73aの大きさは4〜30μmの大きさとし、複数の開口部の総面積を表示画素領域Aの面積に対して10〜70%の範囲にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置に関し、特に、広視野角の表示に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示装置としては、TN(ツイステッドネマティック)型液晶やSTN(スーパーツイステッドネマティック)型液晶などのものが多く利用されている。そして、これらの液晶表示装置は、表示を明るくするために、液晶表示装置の裏面側にバックライトを備えて使用するものが多い。
【0003】
図11に示すものは極シンプルな構成を取る液晶表示装置の要部断面図を示したものである。ここでの液晶表示装置20は、下基板1と上基板11とを一定の間隙を設けて対向に配置し、封止材19を介して液晶17を封入した構成を取る。そして、上基板11の外側に上偏光板15、下基板1の外側に下偏光板5を貼付けて液晶表示装置20ができあがる。ここで、下基板1は透明なガラスからなる下透明基板2と、その上面に設けられた透明なITO膜からなり、コモン電極とも呼ばれる下透明電極3と、この下透明電極3並びに下透明基板2上に設けられた下配向膜4とから構成される。一方、上基板11は、透明なガラスからなる上透明基板12と、その下面に設けられた透明なITO膜からなり、セグメント電極とも呼ばれる上透明電極13と、この上透明電極13並びに上透明基板12上に設けられた上配向膜14とから構成される。そして、図示はしていないが、一定の粒径のスペーサボールを上下基板11、1の間に挟んで一定の間隙を設けて対向して配置し、封止剤19で液晶17を封止する構造を取る。
【0004】
図11は上下の透明電極13、3に電圧を印加した状態の図を示していて、液晶17は、上下に向かって起立した状態の液晶分子17bと、左右に寝た状態の液晶分子17aに分けた状態で示してある。上下の透明電極13、3に所定の電圧を印加したとき、上下の透明電極13、3に挟まれた部分の液晶分子17bは起立する。この上下の透明電極13、3に挟まれた部分、即ち、図中Aで示す領域部分が表示を示す部分で、1つの表示画素を示す領域部分となっている。
【0005】
図12は液晶表示素子20の下方にバックライトを配設した要部断面図を示している。一般に、液晶表示装置の下方側にバックライトを配設して使用する。液晶表示装置20の下面側に半透過反射板21を配設し、その下に拡散板22を配設し、更にその下に導光板23を配設する。この導光板23には反射板24が設けられている。また、導光板23の側面には照明の光源25が配設されている。ここでは、拡散板22と反射板24を設けた導光板23と光源25とでバックライト装置26を構成している。
【0006】
光源25の光を導光板23で奥方まで導光し、その光を反射板24で導光板23の上方に出射させ、拡散板22で光を拡散して半透過反射板21を透過させる。半透過反射板21を透過した光は液晶表示装置20の起立した液晶分子17bの領域部分、即ち、表示画素Aの部分を透過して外に放射される。これによって、表示が明るく視認される。
【0007】
しかしながら、上記で示した従来の液晶表示装置の構成は視野角が狭く、表示部分を中心とすると、上下左右共±45°以内位が表示が確認できる範囲となつている。従って、それよりも外れた位置で表示を見ると、表示が良く視認できないと云う問題を持っていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この表示が確認できる範囲を広げるために、視野角を広げる技術として過去に様々な技術の報告がなされてきている。その一つとして下記の特許文献1の技術開示を見ることができる。
【0009】
【特許文献1】特開平9−152606号公報
【0010】
ここで、上記特許文献1に開示されたところの視野角を広くする技術について図13を用いて簡単に説明する。図13は上記特許文献1に示されたところのバックライトを備えた液晶表示装置の側面図を示したものである。図13より、液晶表示装置は、液晶表示素子40と、液晶表示素子40の背後に配設されたバックライト30と、液晶表示素子40の表面に設けられた拡散板50とから構成されている。ここでのバックライト30は、導光板32と、導光板32上に貼付けたプリズムシート34と、光源ランプ33と、これらを覆う形で設けたケース3とから構成されている。そして、導光板32は底面にV状溝32aを中央部に向かうに従って徐々にピッチを小さくして設けている。プリズムシート34は微細幅のプリズム部34aを液晶表示素子40の法線Hと視角方向Fとを含む面に対して直交する方向、つまり導光板32のV状溝と平行な方向に沿わせて直線状に設けている。液晶表示素子40は、上下の基板42a、42bに透明電極と配向膜を設けて液晶を封入した液晶セル41の上下面に偏光板43、44を貼付けたものからなっている。拡散板50は偏光板43に貼付けて設けられているが、所定の方向と平行な入射面に沿って入射する光の散乱率が、入射面の法線からの傾き角が大きくなるに伴って大きくなるような変化範囲を持つ拡散特性を有し、且つ、散乱率の変化範囲に対応する入射角の範囲を含む散乱入射角範囲が所定の角度に設定された光学フィルムになっている。即ち、拡散板50は、透過光の拡散特性に指向性を有するもので、拡散板の法線を含み特定の方向と直交する面に沿った光は高い透過率で透過させるが、特定の方向と直交する方向に傾いた面に沿って透過する光は、その入射角に応じた散乱率で散乱させるものとなっている。そして、液晶表示装置においては、散乱入射角範囲を15°〜45°に設定するのが望ましいとしている。
【0011】
しかしながら、拡散板を設ける構成は、視野角は広がるものの極端に広がるものでもなく、また、散乱光を利用して視野角を広げるものであることから表示画像がぼやけるなどの問題も生じる。また、拡大視野角として140°程度の角度が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、高いコントラストの下で画像を表示すると共に視野角を飛躍的に広げることを目的とするものである。そして、この目的を達成する手段として、請求項1に記載の発明は、それぞれの内面に透明電極を有する上下基板との間に液晶を封入した液晶表示装置において、前記上基板の透明電極と下基板の透明電極とが対向し合って表示画素領域を形成するところの上基板の透明電極、又は下基板の透明電極の少なくとも一方の透明電極に小孔からなる開口部を複数設けたことを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、その小孔からなる開口部の形状が、円形又は多角形形状であることを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、その小孔からなる開口部の大きさが、短径及び長径が4〜30μmの範囲の大きさであることを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、複数の開口部の総面積が表示画素領域の面積に対して10〜70%であることを特徴とするものである。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、複数の開口部は、同一形状、同一大きさ、等間隔に形成していることを特徴とするものである。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、複数の開口部は、表示画素領域の外周にいくに従って開口部の大きさが大きくなっていることを特徴とするものである。
【0018】
また、請求項7に記載の発明は、表示画素領域が複数有し、どの表示画素領域も同じパターン模様をもって開口部を形成していることを特徴とするものである。
【0019】
また、請求項8に記載の発明は、表示画素領域を形成するところの上基板の透明電極と下基板の透明電極の両方の電極に小孔からなる開口部を複数設けたときは、上基板側の開口部と下基板側の開口部は重なり合わないことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
液晶は正の誘電異方性を持っている場合、上下基板の透明電極が対向した部分、即ち、上下の透明電極が対向して表示画像を形成する表示画素領域部分の少なくともいずれか一方の透明電極に非常に小さい小孔からなる開口部を設けると、上下の透明電極に電圧を印加したとき、小孔を設けた表面には電圧が加わらないので小孔表面近傍の電界強度が弱くなる。液晶分子は電界強度の強い方を向いて配向を示すので、電界強度の弱い部分があると、その部分の液晶分子は傾いた配向を示す。従って、その部分の液晶分子は傾きを持った状態で起立する。即ち、開口部を設けてある近傍の液晶分子は、傾きを持った配向を示す。このため、光は液晶分子の傾きのある配向方向に沿って進んで行くので、そこで光が分散し、分散した光が液晶表示装置から出射される。これにより、出射角度が広くなって視野角が広くなる。ここで、開口部の形状は円形又は多角形形状が望ましい。電界内にある液晶分子は横に寝ている状態から回転しながら段々と立ち上がっていく。電界が切れる境界辺が円形であると液晶分子の立ち上がりが連続してつながることができる。従って、円形の孔がある面の対辺の中央部分から光を円形の周りに効率的に導いてくることができる。円形形状には丸形、楕円形、長円形などが含まれる。また、多角形形状の場合は、特に円形に近くなるような角数の多い多角形形状がより望ましい。角部の所では液晶分子の立ち上がりが連続しなくなり導光する傾きの大きい光を効率的に導くことができなくなる。このことから、角部の角度が大きいほど連続性が確保でき、傾きのある光の導光の効率も良くなる。また、直線ラインとラビングの向きとが異なるので、各々の直線ライン部分の液晶分子の傾きが異なって現れる。このことは、見る場所によって視野角の違いとなって現れる。また、色ムラなどの発生要因にもなる。この傾きの方向性の異なりは、角数の少ない多角形、即ち、三角形や四角形などには著しく現れ、角数の多い多角形、即ち、円形に近くなる多角形ほど小さくなる。多角形の場合は、このことから、液晶分子の配向傾きを、極力、一様な方向性を持たせるように設計すると安定した視野角が得られる。また、色ムラなどのバラツキが非常に小さくなる。多角形形状としては六角形以上の形状を選択するのが好ましい。
【0021】
また、本発明においては、開口部の大きさを4〜30μmに規制する。これによって、最大、片側70°(左右の角度を合わせた範囲として140°)の範囲まで視野角を広げている。片側70°の視野角はほぼどの位置から見ても表示がはっきりと視認できる視野角の範囲になっている。開口部の大きさが4μmより小さいと従来得られていた視野角と余り変わらず、広視野角の効果が現れない。また、30μmより大きいと、広視野角の顕著な効果は得られるものの、カラー表示の場合には色ズレが現れてくる。白黒表示の場合には粗さが目立つようになり、白・黒のコントラストが悪くなる。好適な開口部の大きさとして4〜30μmの大きさを選択する。
【0022】
また、複数の開口部の総面積は表示画素領域の面積に対して10〜70%に規制する。面積が10%より少ないと広視野角の効果が顕著に現れない。また、70%より多いと電極面積が小さくなり、正面に向かう透過光量が少なくなって表示画像が暗くなり視認し難くなる。
【0023】
また、複数の開口部を同一形状、同一大きさ、等間隔に形成すると、表示画像の明るさも均一に現れる。また、液晶分子の傾き角度も同じとなってくるので、同じ視野角が得られる。
【0024】
また、開口部を表示画素領域の外周に行くに従って大きく形成すると、外周に行くに従って液晶分子の立ち上がり角が小さくなる。これにより、光の傾き角が大きくなり、傾き角の大きな光が多量に外に放射され、視野角が広くなる。そして、斜視の状態にても模様の輪郭が明瞭となり、識別が可能となる。
【0025】
また、どの表示画素領域も同じパターンでの開口部を設けてあると、画面全面において同じ視野角になり、明るさも同じである表示画像が得られ、表示画像の均一性が現れてくる。
【0026】
また、上基板の透明電極と下基板の透明電極の両方の電極に開口部を設けるときは、上基板側の開口部と下基板側の開口部は重なり合わないように設ける。開口部が重なり合うと、重なり合った部分は液晶分子が起立せず光が透過しない。従って、光の利用効率が下がるので明るさが低下してくる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図1、図2を用いながら説明する。図1、図2は、沢山ある表示画素領域の内1個のみを取りだして示したもので、図1は1個の表示画素領域を示す平面図、図2は図1における要部断面の中での光の透過状態を説明する説明図を示している。図1、図2より、表示画素領域Aは方形の形状になっており、上透明基板72の下面に方形形状に形成された上透明電極73(セグメント電極とも云う)と、下透明基板62の上面にほぼ全面に渡って形成された下透明電極63(コモン電極とも云う)とで挟まれた領域が画像を表示する表示画素領域Aを形成する。従って、上透明電極73の形成部分が表示画素領域となって現れてくる。上透明電極73、下透明電極63の上面にはそれぞれラビング処理が施された配向膜74、64が設けられ、更に、配向膜74、64との間には液晶77が封止された構造を取っている。尚、上下の透明基板72、62の外側に設ける偏光板は図示していない。
【0028】
上透明電極73には丸い円形の小孔からなる開口部73aを複数設けてある。この開口部73aは、全て同じ大きさを取っており、また、等間隔に配列してある。液晶77を封入するギャップ量(間隙量)は2〜10μmの範囲に設けられ、封入される液晶77はTN(ツイステッドネマティック)型液晶を用いている。そして、表示画素領域Aの液晶77には上下の透明電極73、63を介して、一般に、5〜15Vの電圧が印加される。
【0029】
液晶は正の誘電異方性を持っている場合、電圧無印加では横に寝た状態を示し、上下の両方から電圧を印加すると起立する。上下の透明電極73、63に所要の電圧を印加すると、上透明電極73では、小孔からなる開口部73aを形成した部分は電界が発生せず、電極の形成した部分には強い電界が発生する。一方、下透明電極63では全面に渡って強い電界が発生する。このため、図2に示すように、上透明電極73が形成された部分で、開口部73aの領域部分にある液晶分子77cは、電極がある面に向かって液晶分子が傾いた状態で起立する。また、開口部73aがない部分の液晶分子77bは両電極に向かって配向し、起立する。上透明電極73が形成されていない部分にあっては、液晶分子77aは寝た状態になる。
【0030】
このことによって、液晶分子77cが傾いた部分では、そこを透過する光は液晶分子77cの傾いた方向に沿って曲がって進行し(光L1、L2、L3、L4、L5、L6)、液晶分子77bが起立した部分は、そこを透過する光は起立した液晶分子77bの間を進行する。一方、液晶分子77aが寝た状態の部分は、光は透過しない。図2から分かるように、傾いた液晶分子77cに沿って進行した光で、光L1、L2、L5、L6は液晶分子の傾きに沿って傾いた出射角を持つ。このように、光の傾き角αが現れることで視野角が拡大する。
【0031】
この光の傾き角αは小孔からなる開口部73aの大きさと両電極(上下の透明電極73、63)間のギャップ量に影響を受ける。本発明においては、液晶表示装置のギャップ量が2〜10μmであることから、開口部73aの大きさを4〜30μmに設定する。図3は開口部73aの大きさを設定するために用いた説明図を示していて、図3の(a)は光の傾き角αを大きく取った場合を示し、図3の(b)は光の傾き角αを小さく取った場合を示している。一般に、上下の透明電極に開口部がない場合には、光の傾き角(片側の視野角)は30°±15°(両側合わせると60°±30°)の角度を持つ。即ち、片側最大45°の光の傾き角を持つ。従って、視野角を広げるには45°以上の光の傾き角に設定しなければならない。視野角は光の傾き角によって決まり、光の傾き角とほぼ等しい状態で視野角が設定されることから、光の傾き角を大きくすることによって視野角を広くすることができる。図3の(a)は光の傾き角を55°に大きく取った場合を示し、図3の(b)は光の傾き角を45°に小さく取った場合を示している。ここで、光の傾き角55°は片側の視野角55°(左右両側で110°の視野角)の角度に、片側±15°のバラツキが現れることから、片側の視野角としてはmax70°(左右両側でmax140°)の最大角度が得られる。片側の視野角がmax70°の範囲にあれば表示画像の視認性には何ら支障のない範囲である。一方、光の傾き角45°の下では通常の液晶表示装置の中でmaxの視野角が得られる。本発明においては、通常得られるmaxの視野角以上の視野角を得ることを目的とすることから、光の傾き角をminとして45°に設定するものである。
【0032】
図3の(a)において、Gは上透明電極73と下透明電極63とのギャップ量を示していて、2〜10μmの数値が与えられる。Dは上透明電極73の小孔からなる開口部73aの大きさを示している。rは開口部73aの大きさDの1/2を示していて、D=2rになっている。Lmは光の傾き角55°の勾配線を示している。尚、図3の(a)は上透明電極73の小孔の開口部73aの大きさを求めるための説明図であるので、開口部73aの大きさに影響を及ぼさない要因の構成部品は省略してある。ここで、図3の(a)から、開口部73aの大きさDは、D=2rで与えられるが、r=Gtan55°であることからD=2Gtan55°で与えられる。従って、G=2μmのときは、D≒6μm、G=10μmのときは、D≒30μmの大きさが得られる。このことから、光の傾き角55°以下にするには開口部73aの大きさDが最大30μmまで許容できる。
【0033】
次に、図3の(b)において、Lnは光の傾き角45°の勾配線を示している。Gは上透明電極73と下透明電極63とのギャップ量を示していて、2〜10μmの数値が与えられる。Dは上透明電極73の小孔からなる開口部73aの大きさを示している。図3の(b)から、開口部73aの大きさDは、D=2rで与えられ、r=Gtan45°であることからD=2Gtan45°で与えられる。従って、G=2μmのときは、D=4μm、G=10μmのときは、D=20μmの大きさが得られる。このことから、光の傾き角45°以上にするには開口部73aの大きさDは最小4μmまで許容できる。
【0034】
以上のことから、開口部73aの大きさを4μm〜30μmの範囲に設定することによって、視野角の範囲を通常の範囲(片側30°±15°)より更に大きくすることができ、maxの視野角として140°の範囲まで広げることができる。尚、開口部73aの大きさを更に大きくして視野角を更に広げることは可能である。しかしながら、開口部73aの大きさが目に見える大きさになってくると黒点が現れ外観的な影響が現れる。更にまた、カラー画像の場合は色ズレなどが目立ちはじめ、白黒画像の場合は粗さが目立ち、白黒のコントラストが悪くなるなどの影響が現れる。開口部73aの大きさmax30μmの範囲にあっては目に視認できない大きさであることから外観的な影響も現れず、また、何ら支障のない視野角が得られて表示画像をどの位置からもはっきりと視認することができる。
【0035】
また、表示画素領域Aにおける開口部73aの総面積も視野角や表示画像の明るさに影響を及ぼす。本発明においては、開口部73aの総面積を表示画素領域Aの面積に対して10〜70%が好ましい範囲として設定する。下記に示す表1は、丸円形の開口部を30μm大きさで均等間隔に形成し、表示画素領域の面積に対して開口部の総面積を変化させることによって表示画像の視認性と表示画像の明るさを評価した表である。
【0036】
【表1】

【0037】
ここで、評価の方法は次の基準に基づいて行っている。
表示画像の視認性・・・・正面方向からと、正面より70°傾いた方向からとの両方向から表示画像を見、画像が視認できるか否かのを主観的判断に基づいて評価したもので、×印は、どちらかの向きにて表示画像が全体的にはっきり視認できない。○印は、どちらかの向きにて全体的にほぼ視認できる程度に鮮明度が低下した。◎印は、両方向からの向きにて全体がはっきり視認できる。の評価を表している。
表示画像の明るさ・・・・正面方向から見た場合の表示画像の明るさが充分か否かを主観的判断に基づいて評価したもので、×印は表示画像が暗過ぎて画像がはっきりしない。△印は画像は見えるものの明るさに欠ける。○印は一応評価できる明るさが確保されていて画像がはっきり視認できる。◎印は全く問題ない明るさである。
【0038】
以上の結果から、開口部73aの総面積が10〜70%の範囲が表示画像の視認性や明るさの面において問題のない範囲であることが判明した。そして、総面積が10%より少ないと、明るさは十分得られるものの開口部によって生じる傾き角を持った光の光量が少ないために広い視野角での視認性が十分得られないと云うことが判明した。また、総面積が70%より多いと、表示画像に明るさが欠け、満足する明るさが得られないと云うことが判明した。上記の評価実験を通してより好ましい開口部の面積としては30%が好適との評価を得ている。
【0039】
図4は開口部73aの形状を示した1例としての平面図である。図4の(a)は丸い円形、図4の(b)は長円形、図4の(c)は正八角形、図4の(d)は細長い八角形の形状を示している。開口部73aの形状としては、図4の(a)に示す丸い円形のもの、図4の(b)に示す長円形のもの、また、図示はしていないが楕円形のものなどの円形の形状のものがより好ましい。開口部73aが円形であると、上下の透明電極73、63に電圧を印加したときに電界内にある液晶分子は横に寝ている状態から回転しながら段々と立ち上がっていくが、電界が切れる境界辺が円形であると液晶分子の立ち上がりが連続してつながる。従って、円形の孔がある面の対辺の中央部分から光を円形の周り全周に渡って効率的に導いてくることができる。また、開口部の形状は円形形状ばかりでなく、図4の(c)に示す正八角形のもの、図4の(d)に示す細長い八角形のものなどの極力角数が多く、円形に近い多角形の形状のものでも良い。多角形の場合、角部の所では液晶分子の立ち上がりが連続しなくなり導光する傾きの大きい光を効率的に傾きを持たせて導くことができなくなる。また、ラビングの向きと直線ラインの向きとの違いより各直線ラインEの所での液晶分子の傾きが異なる方向性と傾きとを持って現れる。この傾きの方向性の違いは、三角形や四角形などには著しく現れ、見る場所によって視野角の違いとなって現れる。また、色ムラなどの発生要因にもなる。角部の角度が大きい角数の多い多角形、即ち、円形に近くなる多角形になってくると、電界が切れる境界辺での液晶分子の立ち上がりに連続性が確保できるようになって傾きのある光の導光の効率も良くなる。従って、三角形や四角形などの形状は避けるべきで、少なくとも六角形以上の多角形を選択するのが好ましい。このことから、液晶分子の配向傾きを、極力、一様な方向性を持たせるように設計すると安定した視野角が得られる。
【0040】
開口部73aの大きさは4〜30μmの範囲が好適であると前述した。ここで、開口部73aの大きさを図4を用いて説明する。図4の(a)は丸い円形を示しているので、直径aの大きさが開口部の大きさになる。図4の(b)は長円形を示しているから、短径bと長径cとでもって開口部のおおきさを示す。短径b及び長径cが4〜30μmの範囲内に納められる。同様に、図4の(c)は正八角形を示しているから、短径dと長径(対角線)eとで開口部の大きさを示す。また、図4の(d)は細長い八角形を示しているから、短径fと長径gとで開口部の大きさを示す。短径及び長径共に4〜30μmの範囲に納められる。
【0041】
本実施形態の開口部73aは、丸い円形形状で、同一大きさで、同一間隔に形成してある。同一形状で、同一大きさで、同一間隔で開口部を設けると、透過・放射光量にムラなどが少なくなるので白黒の良いコントラストが現れる。また、表示画像に対してどの方向からも同じ視野角が得られる。従って、開口部は同一形状、同一大きさ、同一間隔に設けるのが一番好ましいことではある。しかしながら、特に、同一形状、同一大きさ、同一間隔にこだわるものではない。形状に関しては、丸い円形や長円形のものが混ざり合っても良い。尚、長円形の場合は、配向膜の配向の方向に長軸を合わせるようにすると効率が良い。また、大きさも4〜30μmの範囲の中で大小様々なものが混ざり合っても良い。
【0042】
また、開口部73aの配列はランダム配列でも良い。何れにしても、カラー画像の色ムラやコントラスト不良が現れない程度の配列間隔が取られていれば良い。
【0043】
以下、本発明の実施例を図5〜図10を用いて説明する。ここで、図の説明を簡単に行う。図5は本発明の実施例1に係る液晶表示装置の要部平面図、図6は図5における液晶表示装置の要部断面図を示している。図7は本発明の実施例2に係る液晶表示装置の1個の表示画素領域のみを取りだして描いた液晶表示装置の平面図で、図8は図7における表示画素領域の要部断面図を示している。また、図9は本発明の実施例3に係る液晶表示装置の1個の表示画素領域のみを取りだして描いた液晶表示装置の平面図で、図10は図9における表示画素領域の要部断面図を示している。
【実施例1】
【0044】
最初に、本発明の実施例1に係る液晶表示装置を図5、図6を用いて説明する。実施例1の液晶表示装置80は単純マトリックス型の液晶表示装置になっている。ガラスからなる上透明基板92の下面にストライプ形状に複数のITO膜からなる上透明電極93(図5においては縦方向に平行に設けた電極)を設け、一方、ガラスからなる下透明基板82の上面にも複数のITO膜からなる下透明電極83(図5においては横方向に平行に設けた電極)を、上透明基板92の上透明電極93と90度に交差する形でストライプ形状に設けている。そして、上透明電極93と下透明電極83とが90度に交差しており、その交差している部分が表示画素領域Aなっている。この表示画素領域Aはカラー画像が表示できるようになっており、赤色の表示画素領域A(R)と、青色の表示画素領域A(B)と、緑色の表示画素領域A(G)とに分かれている。また、それぞれの表示画素領域A(R)、A(B)、A(G)との間にはブラックマトリックス98を設けていて、表示画素領域A(R)、A(B)、A(G)がマトリックス状、ブラックマトリックス98が格子形状をなして配置されている。また、これらの表示画素領域A(R)、A(B)、A(G)の位置での上透明基板92の下面には、赤色、青色、緑色からなるカラーフィルタ96R、96B、96Gが所定の配置されるパターンで設けられている。そして、電圧が印加される上透明電極93と下透明電極83との交差したところの表示画素領域Aにカラーの表示画像が現れるようになっている。
【0045】
以下、実施例1の液晶表示装置80の構成を図6を用いて説明する。液晶表示装置80は、上基板91と下基板81とを対向して配置し、スペーサ86で一定のギャップ量(本実施例では10μmに設定)を設け、その間隙の間に液晶87を封止材(図示していない)で封止した構成を取っている。液晶はTN(ツイステッドネマティック)型液晶を用いている。そして、上基板91の外側面には偏光板95が、下基板81の外側面には偏光板85と光の透過と反射の両方の機能を持つ半透過反射膜89が設けられて液晶表示装置80を構成している。また、更に、液晶表示装置80の下方にはバックライト99を配設した構造になっている。
【0046】
上基板91は、0.7〜1.1mm厚の透明なガラスからなる上透明基板92と、その下面に所定の配列に従って設けられた赤色、青色、緑色からなるカラーフィルター96R、96B、96Gと、このカラーフィルター96R、96B、96Gの間を仕切る形で格子形状に設けたブラックマトリックス98と、カラーフィルター96R、96B、96G上に平坦に設けた透明な保護膜97と、この保護膜97上に設けた透明なITO膜からなる上透明電極93と、ラビング処理を施した配向膜94とから構成されている。そして、ここでの上透明電極93は、前述したように、ストライプ状に形成されて、更に、各表示画素領域Aにおいて、楕円形状の小孔からなる開口部93aが整列した状態で複数設けられている。
【0047】
一方、下基板81は、0.7〜1.1mm厚の透明なガラスからなる下透明基板82と、この下透明基板82上に所定の幅を持ってストライプ状に設けたITO膜からなる下透明電極83と、ラビング処理を施した配向膜84とから構成されている。
【0048】
バックライト99は、前述の従来技術で述べた構成と同じ構成を取っている。即ち、拡散板の下側に反射板を設けた導光板を配設し、導光板の側面に光源を配設した構成を取っている。そして、導光板の側面から入射した光源の光が導光板の奥方に光を導光すると共に、下面に設けた反射板でもって導光板の上方に光を反射させ、導光板の上方に出射した光を拡散板でもって拡散させて半透過反射膜89及び液晶表示装置80に入射させる構造を取っている。
【0049】
上記の構成を取る各々の構成部品は次のようになっている。上透明基板92と下透明基板82は、透明なガラスからなり、ガラスとしてはソーダガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、普通板ガラスなどのものが利用される。剛性を必要とされることから、多くは、0.7〜1.1mm厚みのものが選択される。格子状に設けたブラックマトリックス98は、酸化クロム(CrO)膜からなり、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法などの方法で形成した後、フォトリソ法により不要部分を除去して所要の形状に仕上げる。赤色、青色、緑色からなるカラーフィルター96R、96B、96Gは、透明なアクリル樹脂などの樹脂に赤色、青色、緑色の顔料を混ぜ合わせてインク化し、スクリーン印刷方法などで形成する。透明な保護膜97は、カラーフィルターを保護する目的、上透明電極93を平坦面に形成する目的などで設けるが、これは、透明なアクリル樹脂やエポキシ樹脂、ウレタン樹脂などを用いて印刷方法などで平坦面に形成する。上透明電極93及び下透明電極83は、錫をドープした酸化インジウムのITO(Indium Tin Oxide)粉末を用いて、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法などの方法で500Å〜600Åの膜厚に形成した後、ホトマスク、ホトエッチング方法でストライプ状に仕上げる。上透明電極93に設ける開口部93aは、この時に一緒に形成する。配向膜84、94は、透明なポリイミド樹脂などを用いて印刷方法などで薄膜を形成し、その表面にラビング処理を施して仕上げる。偏光板85、95は、ポリビニールアルコールフィルムを常法により一軸延伸することによって厚さが20μmの偏光フィルムを作成し、この両面に厚さが80μmのセルロース系フィルムを貼合わせて厚さ180μmの偏光板としたものなどが利用される。半透過反射膜89、透明なフィルム上にアルミや銀などの反射率の高い金属膜を真空蒸着法などで薄く形成したもので、光の透過と反射の両方の機能を持たせたものである。
【0050】
ここで、上透明電極93に設けた小孔からなる複数の開口部93aは、本実施例1では楕円形状に形成している。形状は楕円形状に限らず、前述の実施形態で述べた如く、丸い円形、長円形、多角形のものが選択できる。開口部93aの大きさは、楕円の短径を15μm、長径を30μmの大きさに設定している。また、開口部93aの配列は、表示画素領域A内における開口部93aの総面積が表示画素領域Aの面積に対して30%になるように設定して、縦、横それぞれ一定の間隔を持たせて設けている。
【0051】
液晶が正の誘電異方性を持っている場合、上下の透明電極93、83に電圧を印加していない状態、或いは、片方のみの印加状態では液晶分子は横に寝た状態を示す。また、上下の透明電極93、83の両方に電圧を印加すると真直ぐに起立する。本実施例1では、上透明電極93には短径15μm、長径30μmの楕円形の開口部93aを持っている。従って、上下の透明電極93、83に所要の電圧を印加すると、上透明電極93の開口部93aを除いた電極のある面に向かって液晶分子が配向する。従って、開口部93a領域にある液晶分子は傾きのある配向がなされ、そして、そこを透過する光は傾きのある配向に沿って進行して液晶表示装置80の外に出射される。これによって、視野角が広がり広視野角の液晶表示装置が得られることになる。本実施例1では、開口部93aを短径15μm、長径30μmの楕円形にし、開口部93aの総面積を表示画素領域Aの面積に対して30%にした結果、最大片側70°の視野角が得られた。
【0052】
本実施例1においては、小孔からなる開口部93aを楕円形状に形成し、短径15μm、長径30μmの開口部とした。開口部の大きさは視野角に影響を与えるが、その大きさはこの数値に限定するものではく、前述の実施形態で述べたように4〜30μmの範囲の中で適宜に設定することができる。また、開口部93aの総面積は視野角にも影響を及ぼす。本実施例1においては、開口部93aの総面積を表示画素領域Aの面積に対して30%にした。しかしながら、この開口部93aの総面積も30%に限定するものではなく、10〜70%の範囲の中で適宜に設定することができる。
【0053】
本実施例1の液晶表示装置80は、赤色の表示画素領域A(R)と、青色の表示画素領域A(B)と、緑色の表示画素領域A(G)との3種類に分かれた表示画素領域Aを複数持っている。これらの複数の表示画素領域Aの上透明電極93に形成した開口部93aは全て同じパターン模様の形状を成して設けてある。即ち、どの表示画素領域Aも同じ大きさの楕円形の形状で、配列間隔も同じにして設けてある。このようにすると、どの表示画素領域Aのどの画像も同じ視野角が得られると共に、色こそ違うが同じ色合い(色ズレなどの程度)の画像が得られる。そして、表示画素領域A毎にバラツキのない均一な画像が得られる。
【0054】
また、本実施例1の液晶表示装置80にあっては、上透明電極93に小孔の開口部93aを設けた構成を取っているが、下透明電極83側に小孔の開口部を設けた構成を取ってもかまわない。
【0055】
また、本実施例1の液晶表示装置80は、上透明電極93と下透明電極83がそれぞれストライプ状に形成されて、それらが直交して交差するタイプの単純マトリックス型の液晶表示装置のものになっているが、TFT素子を用いたアクティブマトリックス型の液晶表示装置でも同じように適用できる。本実施例1の液晶表示装置80はTN液晶を用いている。液晶にては、STN(スーパーツイステッドネマティック)型の液晶を含む複屈折モードの液晶があり、当モードの液晶では電圧を印加すると、当印加電圧によって色が変化して色表示ができることが知られている。このモードの液晶を用いたものでも同じように適用できる。
【実施例2】
【0056】
次に、本発明の実施例2の液晶表示装置を図7、図8を用いて説明する。図7は本発明の実施例2に係る液晶表示装置の1個の表示画素領域のみを取りだして描いた液晶表示装置の平面図で、図8は図7における表示画素領域の要部断面図を示している。ここに示す液晶表示装置は高分子分散型液晶表示装置であって配向膜や偏光板を用いていない。図8に示すように、液晶表示装置100は、下基板101と上基板111とを一定の間隙を持たせて対向して配置し、間隙に液晶107を封止した構成を取っている。下基板101は、ガラスからなる透明な下透明基板102の上面にITO膜から成る下透明電極103を設けたものから構成される。また、上基板111は、透明なガラスからなる上透明基板112の下面にITO膜からなる上透明電極113を設けたものから構成される。上透明電極113は表示画素領域A毎に設けられており、下透明電極103と上透明電極113とが対向している領域でもって表示画素領域Aを形成している。また、本実施例における上透明電極113は、図7に示すように、複数の非常に小さい丸い小孔からなる開口部113aを形成している。そして、この開口部113aは表示画素領域Aの外周に行くに従ってその大きさが大きくなっている。即ち、表示画素領域Aの中心部付近は開口部113aの大きさが小さく、外周に行くに従って大きさを大きく形成してある。
【0057】
液晶107は高分子分散液晶を用いている。この高分子分散液晶は、0.5〜数μmの液晶微粒子が高分子材料中に分散されているものであり、電界の有無により光透過(透明)の状態と光散乱(白濁)の状態の間を変化する。このような液晶の代表的なものとしてはDSモード液晶、コレステリックモード液晶、高分子分散型液晶、スメクチックモード液晶がある。本実施例2では高分子分散型液晶であるPNLCD(ポリマーネットワーク液晶)を用いている。このPNLCDは高分子材料(モノマー)と液晶材料(例えば、ネマティック液晶)の混合材料で、紫外線照射によってモノマーが重合してポリマーネットワークを形成する液晶である。所定の電圧印加状態で透明になり、無印加状態で白濁を示す。液晶材料そのものはTN液晶を使用しているので、上下の透明電極に電圧を印加すると液晶分子は真直ぐに起立する。
【0058】
上記の構成を取る液晶表示装置100は、図8に示すように、表示画素領域Aの外周領域に行くに従って開口部113aの大きさが大きくなっていくことより、開口部113a周りでの液晶分子の立ち上がり角が表示画素領域Aの外周に行くに従って低くなり、透過する光の傾き角が表示画素領域Aの外周に行くに従って大きくなっていく。これにより、開口部113a周りの透過する光の傾き角は表示画素領域Aの中心領域と外周領域は異なる。これにより、斜視の状態にて表示面が小さくなるが、模様の輪郭が明瞭となり、模様の識別ができるようになる。開口部113aの大きさを多段階(例えば、10μm、20μm、30μmと云う具合)に設けることにより光の傾き角の極端な変化がないので、模様の輪郭が自然の状態で認識でき、より明瞭な模様の識別が可能となる。そして、色ズレなどのない均一な表示画像を得ることができる。
【0059】
開口部113aの大きさは4〜30μmの範囲の中から何段階に分けて設定する。できるだけ多くの階数に分けて設けるのが好ましいが、表示画素領域Aの大きさに応じて適宜に設定するのが良い。また、形成する開口部113aの総面積は表示画素領域Aに対して10〜70%の範囲の中で設定する。
【0060】
また、本実施例2においては、開口部113aは丸い円形形状で設けているが、4〜30μmの大きさの範囲の中で、長円形、楕円形、多角形などの形状で形成しても良い。また、本実施例2ではPNLCDを用いて説明したが、DSモード液晶、コレステリックモード液晶、スメクチックモード液晶であっても同様の効果が得られる。
【実施例3】
【0061】
次に、本発明の実施例3に係る液晶表示装置を図9、図10用いて説明する。図9は本発明の実施例3に係る液晶表示装置の1個の表示画素領域のみを取りだして描いた液晶表示装置の平面図で、図10は図9における表示画素領域の要部断面図を示したものである。実施例3も1個の表示画素領域を取り上げて説明する。多数の表示画素領域を持ったものでも、それぞれ単個の表示画素領域は全て同じ構成・構造を取っている。従って、1個の表示画素領域における効果は他の表示画素領域でも同じ効果が得られる。
【0062】
実施例3の液晶表示装置120は、図9、図10に示すように、上透明電極133と下透明電極123の両方に楕円形の小孔からなる開口部133a、123aを設けている。図9において、実線で示した楕円形の開口部133aは上透明電極133に設けた開口部で、破線で示した楕円形の開口部123aは下透明電極123に設けた開口部を示している。それぞれ重なることなく、ほぼ等間隔に設けてある。楕円の長軸はラビングの向きに合わせるとより効果的である。従って、TN液晶の場合は、開口部133aと開口部123aとは直交する向きにすると効率が良い。PNLCDの場合は、開口部133aと開口部123aとは平行で構わない。
【0063】
また、実施例3の液晶表示装置120は、前述の実施例1の液晶表示装置と対比して、上透明電極133と下透明電極123以外の部分は実施例1の液晶表示装置の構成・構造と同じ構成・構造を取っている。即ち、液晶表示装置120は、上基板131と下基板121とを対向して配置し、スペーサを介して一定の間隙量を設け、その間隙の間に液晶127を封止材で封止した構成を取っている。液晶はTN(ツイステッドネマティック)型液晶を用いている。そして、上基板131の外側面には偏光板135が、下基板121の外側面には偏光板125と光の透過と反射の両方の機能を持つ半透過反射膜128が設けられて液晶表示装置120を構成している。また、更に、液晶表示装置120の下方にはバックライト129を配設した構造になっている。
【0064】
上基板131は、0.7〜1.1mm厚の透明なガラスからなる上透明基板132と、その下面に所定の配列に従って設けられた赤色、青色、緑色からなるカラーフィルター136と、この3色のカラーフィルター136のそれぞれの間を仕切る形で格子形状に設けたブラックマトリックス138と、カラーフィルター136上に平坦に設けた透明な保護膜137と、この保護膜137上に設けた透明なITO膜からなる上透明電極133と、ラビング処理を施した配向膜134とから構成されている。また、下基板121は、0.7〜1.1mm厚の透明なガラスからなる下透明基板122と、この下透明基板122上に設けたITO膜からなる下透明電極123と、ラビング処理を施した配向膜124とから構成されている。
【0065】
ここで、上透明電極133は、図9に示すように、楕円形の開口部133aを設けており、下透明電極123は、同じく、楕円形の開口部123aを上透明電極133の楕円形の開口部133aと位置を異にして設けている。この上透明電極133と下透明電極123の2つ構成部品において前述の実施例1の構成と異なっているところであって、他の構成は全て実施例1と同じ構成を取っている。また、その構成部品も同じ仕様のものを用いている。
【0066】
本実施例3の上透明電極133及び下透明電極123は、図9、図10に示すように、上透明電極133には同一大きさなる楕円形の開口部133aを横方向、縦方向それぞれに一定の間隔を持って設けてある。また、同様に、下透明電極123にも同一大きさなる楕円形の開口部123aを横方向、縦方向それぞれに一定の間隔を持って設けてあり、上透明電極133の開口部133aと下透明電極123の開口部123aとがそれぞれ重ならない位置に設けてある。
【0067】
ブラックマトリックス138によって表示画素領域Aが決められる。この表示画素領域Aにおいては、上透明電極133と下透明電極123が対向し合っている。そして、対向し合ってる面にそれぞれ、図9に示すような楕円形形状の開口部133a、123aが設けられている。この開口部133aと123aは重なり合うことなくそれぞれ位置を異にして設けられている。この楕円形の開口部133a、123aは、4〜30μmの大きさの中に設定されている。
【0068】
開口部133a、123aを重なり合うことなく設けた上透明電極133と下透明電極123とに所定の電圧を印加すると、図10に示すように、開口部133a、123aの領域の液晶分子127cは傾斜を持った立ち上がり方をなす。バックライトからの光は液晶分子127cの傾斜を持った配向方向に進行していくので、光は液晶分子127cの傾斜を持った配向部分で曲がって進行する。即ち、その部分で光が傾き角を持って進み、表示画素領域Aの外側に向かって放射される。この作用によって、表示画像の視野角が拡大される。
【0069】
尚、上透明電極133の開口部133aと下透明電極123の開口部123aとに重なりががあると、その重なっている部分では液晶分子が寝てしまい光が透過しなくなる。このため、光の利用効率が下がり明るさが低下してくる。このことは、表示画素領域Aにおけるカラー表示画像の品質を悪くする。このため、上透明電極133の開口部133aと下透明電極123の開口部123aは重ならない設計をする。
【0070】
開口部133a、123aの形状については、前述の実施例1でも述べたように、特に楕円形状にこだわらない。丸い円形、長円形、多角形の形状を用いても良い。開口部133a、123aの大きさは4〜30μmの大きさの範囲で設定する。また、開口部133a及び、開口部123aの総面積は、両者の開口部133a、123aを全て合わせた総面積として、表示画素領域Aの面積の10〜70%の範囲の中に入れるようにする。
【0071】
以上、3つの実施例を上げて本発明を説明した。本発明は、上透明電極、又は下透明電極の少なくとも一方側に非常に小さい開口部(小孔)を設けることで、表示画面の明瞭さを損なうことなく、視野角が飛躍的に拡大する。構成部品を増やすことなく、また、従来の工程の中で製作することができるので、コストアップすることなく視野角拡大を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の液晶表示装置の1個の表示画素領域を取り出して描いた平面図である。
【図2】図1における要部断面の中での光の透過状態を説明する説明図である。
【図3】開口部の大きさを設定するために用いた説明図で、図3の(a)は光の傾き角αを大きく取った場合を示し、図3の(b)は光の傾き角αを小さく取った場合を示している。
【図4】開口部の形状を示した1例としての平面図で、図4の(a)は丸い円形、図4の(b)は長円形、図4の(c)は正八角形、図4の(d)は細長い八角形の形状を示したものである。
【図5】本発明の実施例1に係る液晶表示装置の要部平面図である。
【図6】図5における液晶表示装置の要部断面図である。
【図7】本発明の実施例2に係る液晶表示装置の1個の表示画素領域のみを取りだして描いた液晶表示装置の平面図である。
【図8】図7における表示画素領域の要部断面図である。
【図9】本発明の実施例3に係る液晶表示装置の1個の表示画素領域のみを取りだして描いた液晶表示装置の平面図である。
【図10】図9における表示画素領域の要部断面図である。
【図11】従来の極シンプルな構成を取る液晶表示装置の要部断面図である。
【図12】液晶表示装置の下方にバックライトを配設した要部断面図である。
【図13】特許文献1に示されたところのバックライトを備えた液晶表示装置の側面図である。
【符号の説明】
【0073】
62、82、102、122 下透明基板
63、83、103、123 下透明電極
64、74、84、94、124、134 配向膜
72、92、112、132 上透明基板
73、93、113、133 上透明電極
73a、93a、113a、133a 開口部
77、87、107、127 液晶
80、100、120 液晶表示装置
81、101、121 下基板
85、95、125、135 偏光板
86 スペーサ
89、128 半透過反射膜
91、111、131 上基板
96、136 カラーフィルター
97、137 保護膜
98、138 ブラックマトリックス
99、129 バックライト
A 表示画素領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの内面に透明電極を有する上下基板との間に液晶を封入した液晶表示装置において、前記上基板の透明電極と下基板の透明電極とが対向し合って表示画素領域を形成するところの上基板の透明電極、又は下基板の透明電極の少なくとも一方の透明電極に小孔からなる開口部を複数設けたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記小孔からなる開口部の形状は、円形又は多角形形状であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記小孔からなる開口部の大きさは、短径及び長径が4〜30μmの範囲の大きさであることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記複数の開口部の総面積は、前記表示画素領域の面積に対して10〜70%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記複数の開口部は、同一形状、同一大きさ、等間隔に形成していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記複数の開口部は、表示画素領域の外周にいくに従って開口部の大きさが大きくなっていることを特徴とする請求項乃至4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記表示画素領域は複数有し、どの表示画素領域も同じパターン模様をもって開口部を形成していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記表示画素領域を形成するところの上基板の透明電極と下基板の透明電極の両方の電極に小孔からなる開口部を複数設けたときは、上基板側の開口部と下基板側の開口部は重なり合わないことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−162647(P2006−162647A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349499(P2004−349499)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000124362)シチズンセイミツ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】