液晶表示装置
【課題】TFT基板と対向基板の間隔を規定する対向基板に形成された柱状スペーサが、液晶表示パネルが外部から押し圧力を受けた場合、基板と平行な方向にずれることを防止する。
【解決手段】TFT基板100あるいは対向基板200が外部から押し圧力を受けた場合に、TFT基板100と対向基板200の間隔を規定する柱状スペーサ203が矢印の方向にずれると液晶分子の配向を乱したり、配向膜111が削れることによる配向膜屑によって光漏れが発生し、画像のコントラストを低下させる。TFT基板側に、対向電極の電圧降下を防止するためのバス電極108を用いて突起を形成し、TFT基板100あるいは対向基板200が外部から押し圧力を受けた場合に、突起が柱状スペーサ203の先端に食い込むことによって柱状スペーサ203の矢印方向へのずれを防止する。
【解決手段】TFT基板100あるいは対向基板200が外部から押し圧力を受けた場合に、TFT基板100と対向基板200の間隔を規定する柱状スペーサ203が矢印の方向にずれると液晶分子の配向を乱したり、配向膜111が削れることによる配向膜屑によって光漏れが発生し、画像のコントラストを低下させる。TFT基板側に、対向電極の電圧降下を防止するためのバス電極108を用いて突起を形成し、TFT基板100あるいは対向基板200が外部から押し圧力を受けた場合に、突起が柱状スペーサ203の先端に食い込むことによって柱状スペーサ203の矢印方向へのずれを防止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置に係り、スペーサによってTFT基板と対向基板の間の間隔を適正化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では画素電極や薄膜トランジスタ(TFT)が形成されたTFT基板とカラーフィルタ等が形成された対向基板との間に液晶を充填し、この液晶の分子を画素電極と対向電極の間に映像信号によって発生する電界によって制御することによって画像を形成する。TFT基板と対向基板の間の間隔は数ミクロンと非常に小さい。
【0003】
TFT基板と対向基板の間隔は、従来は小さなビーズを分散することによって保たれてきた。しかし、ビーズを分散させることによって間隔を制御する方法は、ビーズの多い場所と少ない場所が生ずる。そうするとTFT基板と対向基板との間隔のムラが生ずる。TFT基板と対向基板との間隔のムラが生ずると、液晶表示装置の画像のコントラストが低下したり、画像のムラが生じたりする問題が生ずる。
【0004】
このような間隔のムラを対策する方法として、TFT基板と対向基板との間隔を規定する方法として、対向基板上に有機膜による柱状スペーサを形成する方法(支柱方式)が開発されている。柱状スペーサは対向基板に固定されているために、TFT基板と対向基板の間隔を安定して制御することが出来る。また、柱状スペーサ方式は、液晶を滴下して充填する方式(液晶滴下封入方式)の場合は、ビーズと異なり、液晶滴下の際に柱状スペーサの位置がずれないので、好適である。
【0005】
TFT基板にはTFT、映像信号線、走査線等を形成するための多層配線が形成されており、多層配線を接続するためのコンタクトホールが形成されている。このコンタクトホールが形成された部分は凹部となっている。一方、柱状スペーサは対向基板に形成されている。柱状スペーサがコンタクトホール部に入ってしまうとTFT基板と対向基板を所定の間隔に維持することが出来なくなる。「特許文献1」には、柱状スペーサはコンタクトホールに入らないほうが良いが、入るような場合であっても、コンタクトホールに入らない残りの柱状スペーサがTFT基板と対向基板の間隔を維持する構成が記載されている。
【0006】
TFT基板上のコンタクトホール部以外の部分でも配線の交差部等では凸部が形成されており、表面は平らではない。「特許文献2」には、対向基板に一定の高さの柱状スペーサを形成しておき、一部の柱状スペーサはTFT基板の平坦部に接触させ、他の柱状スペーサは凸部に接触させる構成が記載されている。すなわち、他の柱状スペーサは配線等による凸部の高さ分だけ圧縮されており、この圧縮された量が、いわゆる重力マージンとして作用することが記載されている。この場合の他の柱状スペーサが圧縮される量は200nmから600nm程度である。
【0007】
【特許文献1】特開2005−345819号公報
【特許文献2】特開2005−242310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
柱状スペーサは一般的に感光性の有機樹脂によって形成される。液晶表示装置のセルギャップは、通常2〜5μmであり、柱状スペーサも同じ高さが必要である。一般的に、感光性の材料では、膜厚の大きい状態でパターン加工幅を縮小することは困難であり、例えば、JSR社製柱状スペーサ形成材料(NN−777)では高さ3.5μmの突起を形成する場合、直径12μmの幅となる。
【0009】
一方、近年、液晶表示装置の高精細化が求められるようになっている。高精細化のために、1画素の大きさは小さくなる。その一方で、液晶表示装置の明るさを確保するためには液晶表示装置の透過率を下げないことが要求されている。そのために、画素周辺の配線を極力細くする努力が払われている。
【0010】
このような液晶表示装置においては、柱状スペーサの直径よりも配線幅のほうが小さい構成となることも多い。なお、配線は画素電極やTFTが形成されるTFT基板に形成され、これらの配線は、対向基板に形成された遮光膜(ブラックマトリクス)によって覆われている。
【0011】
柱状スペーサは対向基板に形成され、柱状スペーサの先端は、TFT基板に接触しているが接着はしていない。したがって、外部から対向基板、あるいは、TFT基板に押し圧力が加わると柱状スペーサが当初の位置からずれるという現象を生ずる。柱状スペーサがずれると、付近の液晶の配向乱れが生じ、光漏れが生じてコントラストを低下させる。
【0012】
また、柱状スペーサがずれると、柱状スペーサの先端付近の配向膜が削れて、配向膜の屑が柱状スペーサ周辺に撒き散らされ。この屑が液晶の配向に影響を与えて光漏れを生じてコントラストを低下させる場合もある。
【0013】
柱状スペーサが外部からの押し圧力によって動くことによるコントラストが低下する問題点は、対向基板に形成されているブラックマトリクスの幅を大きくすることによって対策することが出来きるが、この場合は、光の透過率が減少し、画面の明るさが低下する。
【0014】
本発明の課題は、柱状スペーサが外部からの押し圧力によって動くことによるコントラストの低下を画面の明るさの低下を引き起こすことなく対策することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、以上のような問題点を解決するものであり、柱状スペーサの先端が接触するTFT基板側に細いストッパーを形成することによって、外部から液晶表示パネルに押し圧力が加わっても、柱状スペーサがずれないようにすることによって、液晶の配向乱れを防止し、コントラストの低下を防止する。具体的な手段は次ぎのとおりである。
【0016】
(1)第1の方向に延在し、第2の方向に配列した走査線と、第2の方向に延在し、第1の方向に配列した映像信号線とで囲まれた領域に画素が形成されたTFT基板と、前記TFT基板と対向して対向基板が配置され、前記TFT基板と前記対向基板との間に液晶層が挟持された液晶表示装置であって、前記画素には、平面状に形成された画素電極と、前記画素電極の上には、絶縁膜を介して櫛歯状に形成された対向電極が配置され、前記対向基板には、前記TFT基板と前記対向基板との間隔を規定する柱状スペーサが形成され、前記TFT基板の前記走査線の上には、第1の方向に延在する前記対向電極と接続する金属で形成されたバス電極が形成され、前記柱状スペーサの先端は前記バス電極と対向し、前記バス電極の幅は3μm以下であることを特徴とする液晶表示装置。
【0017】
(2)前記バス電極は前記走査線と前記映像信号線の交点において、第2の方向に延在して十字状の形状をなし、前記柱状スペーサの先端は、前記十字状をなす前記バス電極と対向することを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0018】
(3)前記走査線と前記映像信号線の交点付近において、前記バス電極を挟んで、前記バス電極と同じ材料で形成された島状の突起が形成され、前記島状突起の幅は3μm以下であり、前記柱状スペーサは、前記バス電極あるいは前記島状の突起のいずれかと対向することを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0019】
(4)第1の方向に延在し、第2の方向に配列した走査線と、第2の方向に延在し、第1の方向に配列した映像信号線とで囲まれた領域に画素が形成されたTFT基板と、前記TFT基板と対向して対向基板が配置され、前記TFT基板と前記対向基板との間に液晶層が挟持された液晶表示装置であって、
前記画素には、平面状に形成された対向電極と、前記対向電極の上には、絶縁膜を介して櫛歯状に形成された画素電極が配置され、前記対向基板には、前記TFT基板と前記対向基板との間隔を規定する柱状スペーサが形成され、前記TFT基板の前記走査線の上には、前記画素電極と同じ材料で形成された突起が形成され、
前記柱状スペーサの先端は前記突起対向し、前記突起の幅は3μm以下であることを特徴とする液晶表示装置。
【0020】
(5)前記突起は前記走査線と前記映像信号線の交点において、第2の方向と第2の方向に延在して十字状の形状をなし、前記柱状スペーサの先端は、前記十字状をなす前記突起と対向することを特徴とする(4)に記載の液晶表示装置。
【0021】
(6)前記走査線と前記映像信号線の交点において、前記突起が島状に複数形成されていることを特徴とする(4)に記載の液晶表示装置。
【0022】
(7)第1の方向に延在し、第2の方向に配列した走査線と、第2の方向に延在し、第1の方向に配列した映像信号線とで囲まれた領域に画素電極が形成されたTFT基板と、前記TFT基板と対向して対向基板が配置され、前記TFT基板と前記対向基板との間に液晶層が挟持された液晶表示装置であって、前記対向基板には、前記TFT基板に形成された前記画素電極に対向して対向電極が形成され、前記対向基板には、前記TFT基板と前記対向基板との間隔を規定する柱状スペーサが形成され、前記TFT基板の前記走査線の上には、前記画素電極と同じ材料で形成された突起が形成され、前記柱状スペーサの先端は前記突起対向し、前記突起の幅は3μm以下であることを特徴とする液晶表示装置。
【0023】
(8)前記突起は前記走査線と前記映像信号線の交点において、第2の方向と第2の方向に延在して十字状の形状をなし、前記柱状スペーサの先端は、前記十字状をなす前記突起と対向することを特徴とする(7)に記載の液晶表示装置。
【0024】
(9)前記走査線と前記映像信号線の交点において、前記突起が島状に複数形成されていることを特徴とする(7)に記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、対向基板に形成された柱状スペーサの先端が接触するTFT基板側に細いストッパーを形成するので、液晶表示パネルが外部から押し圧力を受けても柱状スペーサが動くことが無い。したがって、液晶の配向乱れを防止することが出来、光漏れを防止することが出来、画面の明るさを低下させることなく、コントラストの低下を防止することが出来る。
【0026】
また、柱状スペーサが動くことによる配向膜の削れを防止することができるので、配向膜屑による光漏れを防止することが出来る。したがって、液晶の配向乱れを防止することが出来、光漏れを防止することが出来る。これによって、画面の明るさを低下させることなく、コントラストの低下を防止することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に実施例を用いて本発明の内容を詳細に説明する。
【実施例1】
【0028】
本実施例はIPS(In Plane Swiching)方式(以後IPS)の液晶表示装置の場合についての例である。IPSは対向電極109と画素電極112をTFT基板100上に形成し、画素電極112と対向電極109との間に形成される電界の、基板と平行な方向の電界によって液晶分子を回転することによって画素を通過する光の量を制御する液晶表示装置であり、優れた視野角特性を有している。
【0029】
図3はTFT基板100における走査線101、映像信号線104と画素の配置を示す概略平面図である。図3において、走査線101が横方向に延在し、縦方向に配列している。絶縁膜を挟んで映像信号線104が縦方向に延在し、横方向に配列している。走査線101と映像信号線104とで囲まれた領域が画素である。
【0030】
走査線101の上には、図示しないTFTが形成されている。TFTのゲート電極は走査線101が兼用している。走査線101の電位がONレベルになると、TFTがONし、映像信号線104の信号が画素電極112に印加される。図3では省略しているが、画素電極112は透明導電膜であるITOによって形成され、平面状のベタ電極となっている。
【0031】
画素電極112の上には層間絶縁膜107を介して対向電極109が形成されている。対向電極109も透明導電膜であるITOによって形成されている。対向電極109には基準電位が印加される。対向電極109の例を図4に示す。図4において、対向電極109は両端が閉じた櫛歯状の電極である。櫛歯と櫛歯の間にはスリット110が形成されている。
【0032】
図4に示す対向電極109の下には、図示しない平面ベタで形成された画素電極112が形成されている。画素電極112に映像信号による電圧が印加されると、図4に示す基準電圧が印加された対向電極109との間に電界が形成される。具体的には、櫛歯状の対抗電極からスリット110を介して電気力線が下部の画素電極112に発生する。この電気力線によって液晶層300の液晶分子が回転し、液晶層300を透過する光の量を制御する。光は画素毎に制御されるので、画像が形成されることになる。
【0033】
対向電極109には基準電圧が印加されるので、各画素共通の電位が印加される。基準電圧は、表示領域の外側から供給される。ITOは比較的抵抗が大きいので、電源線から離れるにしたがって、対向電極109の電位が低下する。これは、輝度の傾斜を引き起こす。
【0034】
このような、輝度の傾斜を防止するために、金属で形成されたバス電極108を走査電極の上に配置し、対向電極109の電圧が変化することを防止している。バス電極108は例えば、CrおよびMoの積層構造で形成される。本発明は、このバス電極108の幅wbを3μm以下とすることによって、バス電極108によって柱状スペーサ203のストッパーを形成するものである。バス電極108は、走査線101と映像信号線104の交点においては、十字状に形成されている。なお、後で説明するように、バス電極108の上に透明電極である対向電極109が形成される。
【0035】
図2は、図3に示すTFT基板100の走査線101と映像信号線104の交点に、対向基板200に形成された柱状スペーサ203が接触している状態を示す平面図である。柱状スペーサ203は、走査線101と映像信号線104の交点全てに形成されるわけではない。柱状スペーサ203はTFT基板100と対向基板200の間隔を規定することが目的であるから、必要最小限の数で良い。すなわち、柱状スペーサ203が存在すれば、液晶の配向乱れ等を生ずるので、柱状スペーサ203は対向基板200とTFT基板100の間隔維持に必要なピッチで配置される。
【0036】
図2において、走査線101と映像信号線104の交点にはバス電極108が十字状に形成されているが、柱状スペーサ203の中心は十字状になったバス電極108の中心と一致させている。このような配置とすることによって、柱状スペーサ203の先端は、バス電極108によって形成された細いストッパーと接触することになる。すなわち、対向基板200あるいはTFT基板100が外部から押し圧力を受けたような場合は、柱状スペーサ203の先端が、細いストッパーに食い込むような形となり、柱状スペーサ203がずれることが防止される。
【0037】
図1は図2のA−A断面図であり、本発明の特徴を示す図である。図1において、TFT基板100の上には、走査線101が形成されている。走査線101の上にはゲート絶縁膜102が形成されている。走査線101の上には、半導体層103が形成されている。半導体層103の上には、映像信号線104が形成されている。
【0038】
なお、図2における、走査線101と映像信号線104との交点からずれた走査線101上には、走査線101、ゲート絶縁膜102、半導体層103、および、映像信号線104と同層で形成されたソース電極、ドレイン電極によってTFTが形成されている。図1における半導体層103は、ゲート絶縁膜102の断切れを防止するために形成されているものである。
【0039】
図1において、映像信号線104の上には、無機パッシベーション膜105が形成されている。無機パッシベーション膜105の上には、平坦化膜を兼ねた有機パッシベーション膜106が形成されている。有機パッシベーション膜106は2μm程度と、厚く形成されるので、有機パッシベーション膜106の上は平坦となっている。
【0040】
有機パッシベーション膜106の上には、層間絶縁膜107が形成されている。層間絶縁膜107の役割は、画素内において、画素電極112と対向電極109の絶縁をすることであるが、図1に示す断面図は、映像信号線104の上なので、画素電極112は存在していない。
【0041】
図1において、層間絶縁膜107の上には、バス電極108が形成されている。図1の断面は、図2に示すように、十字の交点からずれた場所なので、図1においてバス電極108は突起状となっている。バス電極108の上には、突起用ITO113が形成されている。バス電極108と突起用ITO113によってストッパーを形成している。ストッパーの上には配向膜111が形成されている。
【0042】
ITOは走査線101と映像信号線104との交点付近においては、島状に形成されている。突起をより急峻にするためである。しかし、走査線101と映像信号線104との交点以外ではITOはバス電極108を覆う形で接続している。
【0043】
図1において、対向基板200のTFT基板100側には、ブラックマトリクス201が形成されている。図1は映像信号線104の上なので、ブラックマトリクス201が形成されているが、画素領域においては、赤、緑、青等のカラーフィルタが形成されている。ブラックマトリクス201の上には、ブラックマトリクス201およびカラーフィルタによって形成される凹凸を緩和するためのオーバーコート膜202が形成されている。
【0044】
オーバーコート膜202の上には柱状スペーサ203が形成されている。柱状スペーサ203はたとえば、感光性のアクリル樹脂を柱状スペーサの高さと同等な厚さまで塗布し、マスク露光して、光が照射された部分のみの材料の架橋を促進して現像液に対して不溶性とする。その後、現像することによって、柱状スペーサ203を形成する。柱状スペーサ203の上には配向膜111が形成されている。
【0045】
図1において、画素電極112と対向電極109はいずれもTFT基板100に形成されており、対向基板200には電極は存在しない。したがって、対向基板200側から電気的なノイズが進入すると、液晶層300に影響を与え、画像を劣化させる。これを防止するために、対向電極109の外側に表面導電膜210を形成し、表面導電膜210をアースあるいは基準電圧に設定することによって、液晶表示パネルの内部をシールドしている。
【0046】
図1において、対向基板200側あるいは、TFT基板100側から押し圧力が加わった場合。柱状スペーサ203の先端は、TFT基板100側のバス電極108および突起用ITO113で形成されたストッパーに食い込む状態となる。すなわち、柱状スペーサ203はアクリル等の樹脂で形成されているので、弾性に富むからである。
【0047】
このように、柱状スペーサ203がTFT基板100に形成されたストッパーに食い込むことによって、柱状スペーサ203の、図1の矢印で示すような、y方向への動きを防止することが出来る。柱状スペーサ203の動きが防止できれば柱状スペーサ203が画素電極112側にはみ出して液晶の配向を乱すことは無い。また、柱状スペーサ203の動きが防止できれば、配向膜111が削れて配向膜111の屑が周辺に撒き散らされることも無い。したがって、コントラストの低下を防止することが出来る。
【0048】
図1におけるストッパーは、図2におけるx方向に伸びるバス電極108によって形成されるものである。したがって、柱状スペーサ203の図2におけるy方向への動きが防止される。一方、柱状スペーサ203の図2における、x方向への動きは、y方向に伸びるバス電極108によって防止される。したがって、図2のようなバス電極108を形成することによって柱状スペーサ203の、図2における上下左右の動きを防止することが出来る。
【0049】
ところで、柱状スペーサ203の動きを防止するためには、ストッパーの幅、すなわち、バス電極108の幅が重要である。ストッパーの幅、すなわち、バス電極108の幅が大きいと、液晶表示パネルに押し圧力が加わった場合に、ストッパーが柱状スペーサ203に食いこまなくなるからである。図5は、主として、バス電極108の幅、すなわち、ストッパーの幅を変化させた場合の、微小輝点の発生、すなわち光漏れの状態を調査したものである。
【0050】
図5において、バス電極108の厚さは220nmで一定である。また、バス電極108の幅を12μmから3μmに変化させている。なお、バス電極108の幅は、図1におけるバス電極の上部における幅をいう。配向膜111の厚さはバス電極108の幅にしたがって、90nmから50nmに変化している。配向膜111の厚さは意図的に変化させたのではなく、バス電極108の線幅が小さくなるにしたがって、薄くなったものである。つまり、図5では、バス電極108の幅が微小輝点の発生に対して支配的である。
【0051】
図5において、バス電極108の幅が12μm、6μmの場合は、柱状スペーサ203が動いたことによる液晶分子の配向の乱れ、あるいは、配向膜111の削れによる微小輝点の発生が生じている。しかし、バス電極108の幅が3μmになると、微小輝点の発生は生じない。すなわち、バス電極108の幅が3μmより小さくなると、ストッパーの幅が十分に小さくなって、液晶表示パネルに対して外部から押し圧力が加わった場合であっても、柱状スペーサ203の動きを防止することが出来る。
【0052】
図8は、本実施例と同様なIPSにおいて、バス電極108が形成されていない場合か、あるいは、バス電極108が走査線101と同じ程度に幅が広く形成されている場合である。柱状スペーサ203は図2と同様に、走査線101と映像信号線104の交点に形成されている。このような構成では、柱状スペーサ203の先端には、対向基板200の突起が形成されていない。
【0053】
図7は、図8のB−B断面図である。図7において、対向基板200、および、TFT基板100の柱状スペーサ203と対向する部分を除いては、図1と同じなので説明は省略する。図7において、TFT基板100の層間絶縁膜107までは、図1と同様である。層間絶縁膜107の上にバス電極108が形成されているが、バス電極108の幅は、柱状スペーサ203の径よりも大きい。バス電極108の上には、対向電極109が形成され、対向電極109の上には配向膜111が形成されている。
【0054】
図7において、バス電極108の幅は柱状スペーサ203の径よりも大きいので、柱状スペーサ203に対応する突起はTFT基板100側には形成されていない。これは、図8に示すx方向、y方向いずれについても同様である。したがって図7および図8に示す従来構造では、柱状スペーサ203は図8のx方向、y方向あるいは、その他のいずれの方向にも移動することが出来る。したがって、柱状スペーサ203の移動による液晶の配向乱れ、あるいは、配向膜111の削れ等による光漏れが生じてコントラストの低下を来たす。
【0055】
本発明の実施例1である図2においては、バス電極108は走査線101と映像信号線104の交点に十字状に形成されている。そして、柱状スペーサ203の中心は、バス電極108の十字状の交点に一致している。TFT基板100と対向基板200の合わせが正確な場合は問題ないが、TFT基板100と対向基板200に合わせずれが生ずる場合は、柱状スペーサ203の先端にバス電極108によって形成される突起が対応しない場合が生ずる。
【0056】
このような場合に対処するための突起の形成の例を図6に示す。図6において、左下の走査線101と映像信号線104の交点に柱状スペーサ203が配置する。この場所において、バス電極108がx方向に延在している。また、x方向に伸びるバス電極108の上下には、x方向に延在するバス電極108を挟んで島状バス電極115が形成されている。言い換えると、複数の突起が島状バス電極115によって形成されている。この島状バス電極115が突起を形成する。なお、島状バス電極115の上には島状のITOが形成されている。
【0057】
島状バス電極115によって形成された突起が、TFT基板100と対向基板200の合わせずれによって柱状スペーサ203の中心が走査線101と映像信号線104の交点からずれた場合に、柱状スペーサ203に対応する突起となる。島状の突起は、走査線101と映像信号線104の交点の中心の上下、あるいは斜め方向に形成されているので、TFT基板100と対向基板200のずれがどの方向に生じても対応することが出来る。
【0058】
以上説明したように、本実施例によれば、櫛歯電極状の対向電極109が上側に存在し、平面状の画素電極112が下側に存在するIPS方式の液晶表示装置において、液晶表示パネルに外部から押し圧力が加わった場合であっても、柱状スペーサ203のずれに起因する光漏れを防止し、コントラストの低下を防止することが出来る。
【実施例2】
【0059】
図9および図10は、本発明の第2の実施例を示す。すなわち、本発明を、平面状の対向電極109を下側に形成し、層間絶縁膜107を介して櫛歯状の画素電極112を上側に形成した場合のIPSに適用した場合である。図10は実施例1の図2に対応する平面図である。図10において、走査線101が横方向に延在し、縦方向の配列している。また、映像信号線104が縦方向に延在し、横方向に配列している。走査線101と映像信号線104で囲まれた領域に画素が形成されている。
【0060】
図2に示す実施例1と異なるところは、画素において、上側に例えば、図4に示すような形状の画素電極112が形成され、層間絶縁膜107を挟んで下側に平面ベタで対向電極109が形成されている点である。図10において、走査線101と映像信号線104の交点には、画素電極112と同層で形成された突起用ITO113が横方向および縦方向に延在し、十字状の突起を形成している。
【0061】
すなわち、実施例1においては、バス電極108によって突起を形成しているが、本実施例では、画素電極112と同層で形成した突起用ITO113によって突起を形成している。突起用ITO113は、画素電極112と同時に形成することが出来るので、製造工程が増加することは無い。
【0062】
突起用ITO113は実施例1におけるバス電極108とは異なり、横方向には連続して形成されてはいない。突起用ITO113は実施例1のバス電極108とは異なり、画素電極112あるいは対向電極109に電位を供給する役割は持たないからである。
【0063】
図9は図10のC−C断面図である。図9において、対向基板200は実施例1における図1と同様である。TFT基板100側において、有機パッシベーション膜106までは、図1と同様である。図9において、有機パッシベーション膜106の上には平面ベタでITOによって形成された対向電極109が形成されている。対向電極109の下にCr、Mo等の金属によるバス電極108を形成してもよいが、図9は対向電極109のためのバス電極108は形成されていない。
【0064】
対向電極109の上には、層間絶縁膜107が形成されている。層間絶縁膜107の上には、突起用ITO113によって突起が形成されている。突起用ITO113は画素内の画素電極112の形成と同時に形成されるので、製造工程の増加は無い。突起用のITOの上には配向膜111が形成されている。
【0065】
ITOによって形成された突起が対向基板200に形成された柱状スペーサ203に接触することになる。対向基板200あるいはTFT基板100が外部から押し圧力を受けた場合に、図9における突起が柱状スペーサ203の先端に食い込み柱状スペーサ203が上下あるいは左右にずれることを防止することが出来る。すなわち、突起用ITO113によって実施例1と同様な効果を得ることが出来る。
【0066】
本実施例においても、突起を形成する突起用ITO113の幅は小さいことが必要である。突起の目的は、突起が柱状スペーサ203の先端に食い込むことが必要なので、実施例1における図5の結果をそのまま適用することが出来る。すなわち、突起用ITO113の幅は3μm以下とする必要がある。
【0067】
実施例1においては、突起は、バス電極108と突起用ITO113によって形成されているのに対して、図9においては、突起は、突起用ITO113のみによって形成されているので、突起の高さは図9において、実施例1よりも小さい。しかし、本発明における突起は、柱状スペーサ203の横方向への動きを阻止出来ればよいので、突起の高さは突起の幅ほど大きな問題ではない。
【0068】
しかし、画素電極112を構成するITOの膜厚が極端に小さくなったような場合、突起用のITOの高さが十分でない場合がある。このような場合、対向電極109の下側に図9では図示していないバス電極108を形成するとき、バス電極108の幅を3μm以下に小さくすることによって突起の高さを実質的に大きくすることが出来る。
【0069】
図9は、図10に示すように、突起用ITO113が走査線101と映像信号線104との交点付近において、十字状に形成されている場合であるが、本実施例においても、実施例1の図6に示すように、突起用ITO113を島状に形成することによってTFT基板100と対向基板200とに合わせずれが生じた場合にも、柱状スペーサ203の先端にTFT基板100の突起を対応させることが出来る。
【実施例3】
【0070】
図11は本発明を通常のTN(Twisted Nematic)方式あるいはVA(Vertical Alighnement)方式の液晶表示装置に適用した場合である。TN方式あるいはVA方式はTFT基板100に画素電極112を形成し、対向基板200に対向電極109を形成する。そして、基板と垂直方向の電界によって、TN方式においては液晶分子をツイストさせて液晶層300を通過する光の量を制御する。また、VA方式においては、当初縦方向に配列していた液晶分子を傾けることによって液晶層300を通過する光の量を制御する。
【0071】
本実施例のTFT基板100の平面図は図10に示すのと同様である。図10において、突起用ITO113は画素電極112用のITOによって形成されることは実施例2の場合と同様である。図10のC−C断面図に対応するTFT基板100および対向基板200の本実施例における断面図は図11であるが実施例2とは異なっている。
【0072】
図11において、TFT基板100における有機パッシベーション膜106までは図1と同様である。有機パッシベーション膜106の上には、突起用ITO113による突起が形成されている。突起用ITO113は画素電極112と同層で形成されるので、製造工程の増加は無い。TN方式あるいはVA方式においては、画素電極112を形成するITOは極端に薄くする必要は無いので突起の高さは十分にとることが出来る。突起および有機パッシベーション膜106を覆って配向膜111が形成されている。
【0073】
図11において、対向基板200の内側にはブラックマトリクス201、続いてオーバーコート膜202が形成されていることは図1と同様である。図11において、オーバーコート膜202の上には対向電極109が形成されている。対抗電極には基準電圧が印加され、TFT基板100に形成された画素電極112に印加される映像信号電圧との間で、縦電界を形成し、液晶層300の透過率を制御する。
【0074】
対向電極109の上には、柱状スペーサ203が形成される。柱状スペーサ203の形成の仕方は実施例1において説明したのと同様である。柱状スペーサ203および対向電極109の上には配向膜111が形成されている。柱状スペーサ203の先端には、TFT基板100に形成された突起が接触する。
【0075】
対向基板200あるいはTFT基板100が外部から押し圧力を受けた場合に、TFT基板100に形成された突起は柱状スペーサ203の先端に食い込み、柱状スペーサ203が基板と平行方向に移動することを防止する。液晶表示パネルが外部から押し圧力を受けた場合に柱状スペーサ203に食い込むようにするには、突起の幅が重要であることは実施例1と同様である。すなわち、実施例1の図5に示すように、突起用ITO113の幅を3μm以下とすることによって、液晶表示パネルが外部から押し圧力を受けた場合の柱状スペーサ203の移動を防止することが出来る。
【0076】
図11は、図10に示すように、突起用ITO113が走査線101と映像信号線104との交点付近において、十字状に形成されている場合であるが、本実施例においても、実施例1の図6に示すように、突起用ITO113を島状に形成することによってTFT基板100と対向基板200とに合わせずれが生じた場合にも、柱状スペーサ203の先端にTFT基板100の突起を対応させることが出来る。
【0077】
以上説明したように、本発明によれば、TN方式、VA方式においても、液晶表示パネルが外部から押し圧力を受けた場合、対向基板200に形成した柱状スペーサ203が基板と平行方向にずれることを防止することが出来る。したがって、柱状スペーサ203がずれることに起因する液晶分子の配向の乱れ、あるいは、配向膜111の削れ屑による光漏れを防止することが出来、液晶表示装置の画像のコントラストの低下を防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施例1を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例1を示す平面図である。
【図3】実施例1のTFT基板の平面図である。
【図4】実施例1における対向電極の平面図である。
【図5】突起の幅と微小輝点の発生率の比較である。
【図6】実施例1の他の例を示す平面図である。
【図7】従来例を示す断面図である。
【図8】従来例を示す平面図である。
【図9】実施例2を示す断面図である。
【図10】実施例2または、実施例3の平面図である。
【図11】実施例3を示す断面図である。
【符号の説明】
【0079】
100…TFT基板、 101…走査線、 102…ゲート絶縁膜、 103…半導体層、 104…映像信号線、 105…無機パッシベーション膜、 106…有機パッシベーション膜、 107…層間絶縁膜、 108…バス電極、 109…対向電極、 110…スリット、 111…配向膜、 112…画素電極、 113…突起用ITO、 115…島状バス電極、 200…対向基板、 201…ブラックマトリクス、 202…オーバーコート膜、 203…柱状スペーサ、 210…表面導電膜、 300…液晶層。
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置に係り、スペーサによってTFT基板と対向基板の間の間隔を適正化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では画素電極や薄膜トランジスタ(TFT)が形成されたTFT基板とカラーフィルタ等が形成された対向基板との間に液晶を充填し、この液晶の分子を画素電極と対向電極の間に映像信号によって発生する電界によって制御することによって画像を形成する。TFT基板と対向基板の間の間隔は数ミクロンと非常に小さい。
【0003】
TFT基板と対向基板の間隔は、従来は小さなビーズを分散することによって保たれてきた。しかし、ビーズを分散させることによって間隔を制御する方法は、ビーズの多い場所と少ない場所が生ずる。そうするとTFT基板と対向基板との間隔のムラが生ずる。TFT基板と対向基板との間隔のムラが生ずると、液晶表示装置の画像のコントラストが低下したり、画像のムラが生じたりする問題が生ずる。
【0004】
このような間隔のムラを対策する方法として、TFT基板と対向基板との間隔を規定する方法として、対向基板上に有機膜による柱状スペーサを形成する方法(支柱方式)が開発されている。柱状スペーサは対向基板に固定されているために、TFT基板と対向基板の間隔を安定して制御することが出来る。また、柱状スペーサ方式は、液晶を滴下して充填する方式(液晶滴下封入方式)の場合は、ビーズと異なり、液晶滴下の際に柱状スペーサの位置がずれないので、好適である。
【0005】
TFT基板にはTFT、映像信号線、走査線等を形成するための多層配線が形成されており、多層配線を接続するためのコンタクトホールが形成されている。このコンタクトホールが形成された部分は凹部となっている。一方、柱状スペーサは対向基板に形成されている。柱状スペーサがコンタクトホール部に入ってしまうとTFT基板と対向基板を所定の間隔に維持することが出来なくなる。「特許文献1」には、柱状スペーサはコンタクトホールに入らないほうが良いが、入るような場合であっても、コンタクトホールに入らない残りの柱状スペーサがTFT基板と対向基板の間隔を維持する構成が記載されている。
【0006】
TFT基板上のコンタクトホール部以外の部分でも配線の交差部等では凸部が形成されており、表面は平らではない。「特許文献2」には、対向基板に一定の高さの柱状スペーサを形成しておき、一部の柱状スペーサはTFT基板の平坦部に接触させ、他の柱状スペーサは凸部に接触させる構成が記載されている。すなわち、他の柱状スペーサは配線等による凸部の高さ分だけ圧縮されており、この圧縮された量が、いわゆる重力マージンとして作用することが記載されている。この場合の他の柱状スペーサが圧縮される量は200nmから600nm程度である。
【0007】
【特許文献1】特開2005−345819号公報
【特許文献2】特開2005−242310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
柱状スペーサは一般的に感光性の有機樹脂によって形成される。液晶表示装置のセルギャップは、通常2〜5μmであり、柱状スペーサも同じ高さが必要である。一般的に、感光性の材料では、膜厚の大きい状態でパターン加工幅を縮小することは困難であり、例えば、JSR社製柱状スペーサ形成材料(NN−777)では高さ3.5μmの突起を形成する場合、直径12μmの幅となる。
【0009】
一方、近年、液晶表示装置の高精細化が求められるようになっている。高精細化のために、1画素の大きさは小さくなる。その一方で、液晶表示装置の明るさを確保するためには液晶表示装置の透過率を下げないことが要求されている。そのために、画素周辺の配線を極力細くする努力が払われている。
【0010】
このような液晶表示装置においては、柱状スペーサの直径よりも配線幅のほうが小さい構成となることも多い。なお、配線は画素電極やTFTが形成されるTFT基板に形成され、これらの配線は、対向基板に形成された遮光膜(ブラックマトリクス)によって覆われている。
【0011】
柱状スペーサは対向基板に形成され、柱状スペーサの先端は、TFT基板に接触しているが接着はしていない。したがって、外部から対向基板、あるいは、TFT基板に押し圧力が加わると柱状スペーサが当初の位置からずれるという現象を生ずる。柱状スペーサがずれると、付近の液晶の配向乱れが生じ、光漏れが生じてコントラストを低下させる。
【0012】
また、柱状スペーサがずれると、柱状スペーサの先端付近の配向膜が削れて、配向膜の屑が柱状スペーサ周辺に撒き散らされ。この屑が液晶の配向に影響を与えて光漏れを生じてコントラストを低下させる場合もある。
【0013】
柱状スペーサが外部からの押し圧力によって動くことによるコントラストが低下する問題点は、対向基板に形成されているブラックマトリクスの幅を大きくすることによって対策することが出来きるが、この場合は、光の透過率が減少し、画面の明るさが低下する。
【0014】
本発明の課題は、柱状スペーサが外部からの押し圧力によって動くことによるコントラストの低下を画面の明るさの低下を引き起こすことなく対策することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、以上のような問題点を解決するものであり、柱状スペーサの先端が接触するTFT基板側に細いストッパーを形成することによって、外部から液晶表示パネルに押し圧力が加わっても、柱状スペーサがずれないようにすることによって、液晶の配向乱れを防止し、コントラストの低下を防止する。具体的な手段は次ぎのとおりである。
【0016】
(1)第1の方向に延在し、第2の方向に配列した走査線と、第2の方向に延在し、第1の方向に配列した映像信号線とで囲まれた領域に画素が形成されたTFT基板と、前記TFT基板と対向して対向基板が配置され、前記TFT基板と前記対向基板との間に液晶層が挟持された液晶表示装置であって、前記画素には、平面状に形成された画素電極と、前記画素電極の上には、絶縁膜を介して櫛歯状に形成された対向電極が配置され、前記対向基板には、前記TFT基板と前記対向基板との間隔を規定する柱状スペーサが形成され、前記TFT基板の前記走査線の上には、第1の方向に延在する前記対向電極と接続する金属で形成されたバス電極が形成され、前記柱状スペーサの先端は前記バス電極と対向し、前記バス電極の幅は3μm以下であることを特徴とする液晶表示装置。
【0017】
(2)前記バス電極は前記走査線と前記映像信号線の交点において、第2の方向に延在して十字状の形状をなし、前記柱状スペーサの先端は、前記十字状をなす前記バス電極と対向することを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0018】
(3)前記走査線と前記映像信号線の交点付近において、前記バス電極を挟んで、前記バス電極と同じ材料で形成された島状の突起が形成され、前記島状突起の幅は3μm以下であり、前記柱状スペーサは、前記バス電極あるいは前記島状の突起のいずれかと対向することを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0019】
(4)第1の方向に延在し、第2の方向に配列した走査線と、第2の方向に延在し、第1の方向に配列した映像信号線とで囲まれた領域に画素が形成されたTFT基板と、前記TFT基板と対向して対向基板が配置され、前記TFT基板と前記対向基板との間に液晶層が挟持された液晶表示装置であって、
前記画素には、平面状に形成された対向電極と、前記対向電極の上には、絶縁膜を介して櫛歯状に形成された画素電極が配置され、前記対向基板には、前記TFT基板と前記対向基板との間隔を規定する柱状スペーサが形成され、前記TFT基板の前記走査線の上には、前記画素電極と同じ材料で形成された突起が形成され、
前記柱状スペーサの先端は前記突起対向し、前記突起の幅は3μm以下であることを特徴とする液晶表示装置。
【0020】
(5)前記突起は前記走査線と前記映像信号線の交点において、第2の方向と第2の方向に延在して十字状の形状をなし、前記柱状スペーサの先端は、前記十字状をなす前記突起と対向することを特徴とする(4)に記載の液晶表示装置。
【0021】
(6)前記走査線と前記映像信号線の交点において、前記突起が島状に複数形成されていることを特徴とする(4)に記載の液晶表示装置。
【0022】
(7)第1の方向に延在し、第2の方向に配列した走査線と、第2の方向に延在し、第1の方向に配列した映像信号線とで囲まれた領域に画素電極が形成されたTFT基板と、前記TFT基板と対向して対向基板が配置され、前記TFT基板と前記対向基板との間に液晶層が挟持された液晶表示装置であって、前記対向基板には、前記TFT基板に形成された前記画素電極に対向して対向電極が形成され、前記対向基板には、前記TFT基板と前記対向基板との間隔を規定する柱状スペーサが形成され、前記TFT基板の前記走査線の上には、前記画素電極と同じ材料で形成された突起が形成され、前記柱状スペーサの先端は前記突起対向し、前記突起の幅は3μm以下であることを特徴とする液晶表示装置。
【0023】
(8)前記突起は前記走査線と前記映像信号線の交点において、第2の方向と第2の方向に延在して十字状の形状をなし、前記柱状スペーサの先端は、前記十字状をなす前記突起と対向することを特徴とする(7)に記載の液晶表示装置。
【0024】
(9)前記走査線と前記映像信号線の交点において、前記突起が島状に複数形成されていることを特徴とする(7)に記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、対向基板に形成された柱状スペーサの先端が接触するTFT基板側に細いストッパーを形成するので、液晶表示パネルが外部から押し圧力を受けても柱状スペーサが動くことが無い。したがって、液晶の配向乱れを防止することが出来、光漏れを防止することが出来、画面の明るさを低下させることなく、コントラストの低下を防止することが出来る。
【0026】
また、柱状スペーサが動くことによる配向膜の削れを防止することができるので、配向膜屑による光漏れを防止することが出来る。したがって、液晶の配向乱れを防止することが出来、光漏れを防止することが出来る。これによって、画面の明るさを低下させることなく、コントラストの低下を防止することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に実施例を用いて本発明の内容を詳細に説明する。
【実施例1】
【0028】
本実施例はIPS(In Plane Swiching)方式(以後IPS)の液晶表示装置の場合についての例である。IPSは対向電極109と画素電極112をTFT基板100上に形成し、画素電極112と対向電極109との間に形成される電界の、基板と平行な方向の電界によって液晶分子を回転することによって画素を通過する光の量を制御する液晶表示装置であり、優れた視野角特性を有している。
【0029】
図3はTFT基板100における走査線101、映像信号線104と画素の配置を示す概略平面図である。図3において、走査線101が横方向に延在し、縦方向に配列している。絶縁膜を挟んで映像信号線104が縦方向に延在し、横方向に配列している。走査線101と映像信号線104とで囲まれた領域が画素である。
【0030】
走査線101の上には、図示しないTFTが形成されている。TFTのゲート電極は走査線101が兼用している。走査線101の電位がONレベルになると、TFTがONし、映像信号線104の信号が画素電極112に印加される。図3では省略しているが、画素電極112は透明導電膜であるITOによって形成され、平面状のベタ電極となっている。
【0031】
画素電極112の上には層間絶縁膜107を介して対向電極109が形成されている。対向電極109も透明導電膜であるITOによって形成されている。対向電極109には基準電位が印加される。対向電極109の例を図4に示す。図4において、対向電極109は両端が閉じた櫛歯状の電極である。櫛歯と櫛歯の間にはスリット110が形成されている。
【0032】
図4に示す対向電極109の下には、図示しない平面ベタで形成された画素電極112が形成されている。画素電極112に映像信号による電圧が印加されると、図4に示す基準電圧が印加された対向電極109との間に電界が形成される。具体的には、櫛歯状の対抗電極からスリット110を介して電気力線が下部の画素電極112に発生する。この電気力線によって液晶層300の液晶分子が回転し、液晶層300を透過する光の量を制御する。光は画素毎に制御されるので、画像が形成されることになる。
【0033】
対向電極109には基準電圧が印加されるので、各画素共通の電位が印加される。基準電圧は、表示領域の外側から供給される。ITOは比較的抵抗が大きいので、電源線から離れるにしたがって、対向電極109の電位が低下する。これは、輝度の傾斜を引き起こす。
【0034】
このような、輝度の傾斜を防止するために、金属で形成されたバス電極108を走査電極の上に配置し、対向電極109の電圧が変化することを防止している。バス電極108は例えば、CrおよびMoの積層構造で形成される。本発明は、このバス電極108の幅wbを3μm以下とすることによって、バス電極108によって柱状スペーサ203のストッパーを形成するものである。バス電極108は、走査線101と映像信号線104の交点においては、十字状に形成されている。なお、後で説明するように、バス電極108の上に透明電極である対向電極109が形成される。
【0035】
図2は、図3に示すTFT基板100の走査線101と映像信号線104の交点に、対向基板200に形成された柱状スペーサ203が接触している状態を示す平面図である。柱状スペーサ203は、走査線101と映像信号線104の交点全てに形成されるわけではない。柱状スペーサ203はTFT基板100と対向基板200の間隔を規定することが目的であるから、必要最小限の数で良い。すなわち、柱状スペーサ203が存在すれば、液晶の配向乱れ等を生ずるので、柱状スペーサ203は対向基板200とTFT基板100の間隔維持に必要なピッチで配置される。
【0036】
図2において、走査線101と映像信号線104の交点にはバス電極108が十字状に形成されているが、柱状スペーサ203の中心は十字状になったバス電極108の中心と一致させている。このような配置とすることによって、柱状スペーサ203の先端は、バス電極108によって形成された細いストッパーと接触することになる。すなわち、対向基板200あるいはTFT基板100が外部から押し圧力を受けたような場合は、柱状スペーサ203の先端が、細いストッパーに食い込むような形となり、柱状スペーサ203がずれることが防止される。
【0037】
図1は図2のA−A断面図であり、本発明の特徴を示す図である。図1において、TFT基板100の上には、走査線101が形成されている。走査線101の上にはゲート絶縁膜102が形成されている。走査線101の上には、半導体層103が形成されている。半導体層103の上には、映像信号線104が形成されている。
【0038】
なお、図2における、走査線101と映像信号線104との交点からずれた走査線101上には、走査線101、ゲート絶縁膜102、半導体層103、および、映像信号線104と同層で形成されたソース電極、ドレイン電極によってTFTが形成されている。図1における半導体層103は、ゲート絶縁膜102の断切れを防止するために形成されているものである。
【0039】
図1において、映像信号線104の上には、無機パッシベーション膜105が形成されている。無機パッシベーション膜105の上には、平坦化膜を兼ねた有機パッシベーション膜106が形成されている。有機パッシベーション膜106は2μm程度と、厚く形成されるので、有機パッシベーション膜106の上は平坦となっている。
【0040】
有機パッシベーション膜106の上には、層間絶縁膜107が形成されている。層間絶縁膜107の役割は、画素内において、画素電極112と対向電極109の絶縁をすることであるが、図1に示す断面図は、映像信号線104の上なので、画素電極112は存在していない。
【0041】
図1において、層間絶縁膜107の上には、バス電極108が形成されている。図1の断面は、図2に示すように、十字の交点からずれた場所なので、図1においてバス電極108は突起状となっている。バス電極108の上には、突起用ITO113が形成されている。バス電極108と突起用ITO113によってストッパーを形成している。ストッパーの上には配向膜111が形成されている。
【0042】
ITOは走査線101と映像信号線104との交点付近においては、島状に形成されている。突起をより急峻にするためである。しかし、走査線101と映像信号線104との交点以外ではITOはバス電極108を覆う形で接続している。
【0043】
図1において、対向基板200のTFT基板100側には、ブラックマトリクス201が形成されている。図1は映像信号線104の上なので、ブラックマトリクス201が形成されているが、画素領域においては、赤、緑、青等のカラーフィルタが形成されている。ブラックマトリクス201の上には、ブラックマトリクス201およびカラーフィルタによって形成される凹凸を緩和するためのオーバーコート膜202が形成されている。
【0044】
オーバーコート膜202の上には柱状スペーサ203が形成されている。柱状スペーサ203はたとえば、感光性のアクリル樹脂を柱状スペーサの高さと同等な厚さまで塗布し、マスク露光して、光が照射された部分のみの材料の架橋を促進して現像液に対して不溶性とする。その後、現像することによって、柱状スペーサ203を形成する。柱状スペーサ203の上には配向膜111が形成されている。
【0045】
図1において、画素電極112と対向電極109はいずれもTFT基板100に形成されており、対向基板200には電極は存在しない。したがって、対向基板200側から電気的なノイズが進入すると、液晶層300に影響を与え、画像を劣化させる。これを防止するために、対向電極109の外側に表面導電膜210を形成し、表面導電膜210をアースあるいは基準電圧に設定することによって、液晶表示パネルの内部をシールドしている。
【0046】
図1において、対向基板200側あるいは、TFT基板100側から押し圧力が加わった場合。柱状スペーサ203の先端は、TFT基板100側のバス電極108および突起用ITO113で形成されたストッパーに食い込む状態となる。すなわち、柱状スペーサ203はアクリル等の樹脂で形成されているので、弾性に富むからである。
【0047】
このように、柱状スペーサ203がTFT基板100に形成されたストッパーに食い込むことによって、柱状スペーサ203の、図1の矢印で示すような、y方向への動きを防止することが出来る。柱状スペーサ203の動きが防止できれば柱状スペーサ203が画素電極112側にはみ出して液晶の配向を乱すことは無い。また、柱状スペーサ203の動きが防止できれば、配向膜111が削れて配向膜111の屑が周辺に撒き散らされることも無い。したがって、コントラストの低下を防止することが出来る。
【0048】
図1におけるストッパーは、図2におけるx方向に伸びるバス電極108によって形成されるものである。したがって、柱状スペーサ203の図2におけるy方向への動きが防止される。一方、柱状スペーサ203の図2における、x方向への動きは、y方向に伸びるバス電極108によって防止される。したがって、図2のようなバス電極108を形成することによって柱状スペーサ203の、図2における上下左右の動きを防止することが出来る。
【0049】
ところで、柱状スペーサ203の動きを防止するためには、ストッパーの幅、すなわち、バス電極108の幅が重要である。ストッパーの幅、すなわち、バス電極108の幅が大きいと、液晶表示パネルに押し圧力が加わった場合に、ストッパーが柱状スペーサ203に食いこまなくなるからである。図5は、主として、バス電極108の幅、すなわち、ストッパーの幅を変化させた場合の、微小輝点の発生、すなわち光漏れの状態を調査したものである。
【0050】
図5において、バス電極108の厚さは220nmで一定である。また、バス電極108の幅を12μmから3μmに変化させている。なお、バス電極108の幅は、図1におけるバス電極の上部における幅をいう。配向膜111の厚さはバス電極108の幅にしたがって、90nmから50nmに変化している。配向膜111の厚さは意図的に変化させたのではなく、バス電極108の線幅が小さくなるにしたがって、薄くなったものである。つまり、図5では、バス電極108の幅が微小輝点の発生に対して支配的である。
【0051】
図5において、バス電極108の幅が12μm、6μmの場合は、柱状スペーサ203が動いたことによる液晶分子の配向の乱れ、あるいは、配向膜111の削れによる微小輝点の発生が生じている。しかし、バス電極108の幅が3μmになると、微小輝点の発生は生じない。すなわち、バス電極108の幅が3μmより小さくなると、ストッパーの幅が十分に小さくなって、液晶表示パネルに対して外部から押し圧力が加わった場合であっても、柱状スペーサ203の動きを防止することが出来る。
【0052】
図8は、本実施例と同様なIPSにおいて、バス電極108が形成されていない場合か、あるいは、バス電極108が走査線101と同じ程度に幅が広く形成されている場合である。柱状スペーサ203は図2と同様に、走査線101と映像信号線104の交点に形成されている。このような構成では、柱状スペーサ203の先端には、対向基板200の突起が形成されていない。
【0053】
図7は、図8のB−B断面図である。図7において、対向基板200、および、TFT基板100の柱状スペーサ203と対向する部分を除いては、図1と同じなので説明は省略する。図7において、TFT基板100の層間絶縁膜107までは、図1と同様である。層間絶縁膜107の上にバス電極108が形成されているが、バス電極108の幅は、柱状スペーサ203の径よりも大きい。バス電極108の上には、対向電極109が形成され、対向電極109の上には配向膜111が形成されている。
【0054】
図7において、バス電極108の幅は柱状スペーサ203の径よりも大きいので、柱状スペーサ203に対応する突起はTFT基板100側には形成されていない。これは、図8に示すx方向、y方向いずれについても同様である。したがって図7および図8に示す従来構造では、柱状スペーサ203は図8のx方向、y方向あるいは、その他のいずれの方向にも移動することが出来る。したがって、柱状スペーサ203の移動による液晶の配向乱れ、あるいは、配向膜111の削れ等による光漏れが生じてコントラストの低下を来たす。
【0055】
本発明の実施例1である図2においては、バス電極108は走査線101と映像信号線104の交点に十字状に形成されている。そして、柱状スペーサ203の中心は、バス電極108の十字状の交点に一致している。TFT基板100と対向基板200の合わせが正確な場合は問題ないが、TFT基板100と対向基板200に合わせずれが生ずる場合は、柱状スペーサ203の先端にバス電極108によって形成される突起が対応しない場合が生ずる。
【0056】
このような場合に対処するための突起の形成の例を図6に示す。図6において、左下の走査線101と映像信号線104の交点に柱状スペーサ203が配置する。この場所において、バス電極108がx方向に延在している。また、x方向に伸びるバス電極108の上下には、x方向に延在するバス電極108を挟んで島状バス電極115が形成されている。言い換えると、複数の突起が島状バス電極115によって形成されている。この島状バス電極115が突起を形成する。なお、島状バス電極115の上には島状のITOが形成されている。
【0057】
島状バス電極115によって形成された突起が、TFT基板100と対向基板200の合わせずれによって柱状スペーサ203の中心が走査線101と映像信号線104の交点からずれた場合に、柱状スペーサ203に対応する突起となる。島状の突起は、走査線101と映像信号線104の交点の中心の上下、あるいは斜め方向に形成されているので、TFT基板100と対向基板200のずれがどの方向に生じても対応することが出来る。
【0058】
以上説明したように、本実施例によれば、櫛歯電極状の対向電極109が上側に存在し、平面状の画素電極112が下側に存在するIPS方式の液晶表示装置において、液晶表示パネルに外部から押し圧力が加わった場合であっても、柱状スペーサ203のずれに起因する光漏れを防止し、コントラストの低下を防止することが出来る。
【実施例2】
【0059】
図9および図10は、本発明の第2の実施例を示す。すなわち、本発明を、平面状の対向電極109を下側に形成し、層間絶縁膜107を介して櫛歯状の画素電極112を上側に形成した場合のIPSに適用した場合である。図10は実施例1の図2に対応する平面図である。図10において、走査線101が横方向に延在し、縦方向の配列している。また、映像信号線104が縦方向に延在し、横方向に配列している。走査線101と映像信号線104で囲まれた領域に画素が形成されている。
【0060】
図2に示す実施例1と異なるところは、画素において、上側に例えば、図4に示すような形状の画素電極112が形成され、層間絶縁膜107を挟んで下側に平面ベタで対向電極109が形成されている点である。図10において、走査線101と映像信号線104の交点には、画素電極112と同層で形成された突起用ITO113が横方向および縦方向に延在し、十字状の突起を形成している。
【0061】
すなわち、実施例1においては、バス電極108によって突起を形成しているが、本実施例では、画素電極112と同層で形成した突起用ITO113によって突起を形成している。突起用ITO113は、画素電極112と同時に形成することが出来るので、製造工程が増加することは無い。
【0062】
突起用ITO113は実施例1におけるバス電極108とは異なり、横方向には連続して形成されてはいない。突起用ITO113は実施例1のバス電極108とは異なり、画素電極112あるいは対向電極109に電位を供給する役割は持たないからである。
【0063】
図9は図10のC−C断面図である。図9において、対向基板200は実施例1における図1と同様である。TFT基板100側において、有機パッシベーション膜106までは、図1と同様である。図9において、有機パッシベーション膜106の上には平面ベタでITOによって形成された対向電極109が形成されている。対向電極109の下にCr、Mo等の金属によるバス電極108を形成してもよいが、図9は対向電極109のためのバス電極108は形成されていない。
【0064】
対向電極109の上には、層間絶縁膜107が形成されている。層間絶縁膜107の上には、突起用ITO113によって突起が形成されている。突起用ITO113は画素内の画素電極112の形成と同時に形成されるので、製造工程の増加は無い。突起用のITOの上には配向膜111が形成されている。
【0065】
ITOによって形成された突起が対向基板200に形成された柱状スペーサ203に接触することになる。対向基板200あるいはTFT基板100が外部から押し圧力を受けた場合に、図9における突起が柱状スペーサ203の先端に食い込み柱状スペーサ203が上下あるいは左右にずれることを防止することが出来る。すなわち、突起用ITO113によって実施例1と同様な効果を得ることが出来る。
【0066】
本実施例においても、突起を形成する突起用ITO113の幅は小さいことが必要である。突起の目的は、突起が柱状スペーサ203の先端に食い込むことが必要なので、実施例1における図5の結果をそのまま適用することが出来る。すなわち、突起用ITO113の幅は3μm以下とする必要がある。
【0067】
実施例1においては、突起は、バス電極108と突起用ITO113によって形成されているのに対して、図9においては、突起は、突起用ITO113のみによって形成されているので、突起の高さは図9において、実施例1よりも小さい。しかし、本発明における突起は、柱状スペーサ203の横方向への動きを阻止出来ればよいので、突起の高さは突起の幅ほど大きな問題ではない。
【0068】
しかし、画素電極112を構成するITOの膜厚が極端に小さくなったような場合、突起用のITOの高さが十分でない場合がある。このような場合、対向電極109の下側に図9では図示していないバス電極108を形成するとき、バス電極108の幅を3μm以下に小さくすることによって突起の高さを実質的に大きくすることが出来る。
【0069】
図9は、図10に示すように、突起用ITO113が走査線101と映像信号線104との交点付近において、十字状に形成されている場合であるが、本実施例においても、実施例1の図6に示すように、突起用ITO113を島状に形成することによってTFT基板100と対向基板200とに合わせずれが生じた場合にも、柱状スペーサ203の先端にTFT基板100の突起を対応させることが出来る。
【実施例3】
【0070】
図11は本発明を通常のTN(Twisted Nematic)方式あるいはVA(Vertical Alighnement)方式の液晶表示装置に適用した場合である。TN方式あるいはVA方式はTFT基板100に画素電極112を形成し、対向基板200に対向電極109を形成する。そして、基板と垂直方向の電界によって、TN方式においては液晶分子をツイストさせて液晶層300を通過する光の量を制御する。また、VA方式においては、当初縦方向に配列していた液晶分子を傾けることによって液晶層300を通過する光の量を制御する。
【0071】
本実施例のTFT基板100の平面図は図10に示すのと同様である。図10において、突起用ITO113は画素電極112用のITOによって形成されることは実施例2の場合と同様である。図10のC−C断面図に対応するTFT基板100および対向基板200の本実施例における断面図は図11であるが実施例2とは異なっている。
【0072】
図11において、TFT基板100における有機パッシベーション膜106までは図1と同様である。有機パッシベーション膜106の上には、突起用ITO113による突起が形成されている。突起用ITO113は画素電極112と同層で形成されるので、製造工程の増加は無い。TN方式あるいはVA方式においては、画素電極112を形成するITOは極端に薄くする必要は無いので突起の高さは十分にとることが出来る。突起および有機パッシベーション膜106を覆って配向膜111が形成されている。
【0073】
図11において、対向基板200の内側にはブラックマトリクス201、続いてオーバーコート膜202が形成されていることは図1と同様である。図11において、オーバーコート膜202の上には対向電極109が形成されている。対抗電極には基準電圧が印加され、TFT基板100に形成された画素電極112に印加される映像信号電圧との間で、縦電界を形成し、液晶層300の透過率を制御する。
【0074】
対向電極109の上には、柱状スペーサ203が形成される。柱状スペーサ203の形成の仕方は実施例1において説明したのと同様である。柱状スペーサ203および対向電極109の上には配向膜111が形成されている。柱状スペーサ203の先端には、TFT基板100に形成された突起が接触する。
【0075】
対向基板200あるいはTFT基板100が外部から押し圧力を受けた場合に、TFT基板100に形成された突起は柱状スペーサ203の先端に食い込み、柱状スペーサ203が基板と平行方向に移動することを防止する。液晶表示パネルが外部から押し圧力を受けた場合に柱状スペーサ203に食い込むようにするには、突起の幅が重要であることは実施例1と同様である。すなわち、実施例1の図5に示すように、突起用ITO113の幅を3μm以下とすることによって、液晶表示パネルが外部から押し圧力を受けた場合の柱状スペーサ203の移動を防止することが出来る。
【0076】
図11は、図10に示すように、突起用ITO113が走査線101と映像信号線104との交点付近において、十字状に形成されている場合であるが、本実施例においても、実施例1の図6に示すように、突起用ITO113を島状に形成することによってTFT基板100と対向基板200とに合わせずれが生じた場合にも、柱状スペーサ203の先端にTFT基板100の突起を対応させることが出来る。
【0077】
以上説明したように、本発明によれば、TN方式、VA方式においても、液晶表示パネルが外部から押し圧力を受けた場合、対向基板200に形成した柱状スペーサ203が基板と平行方向にずれることを防止することが出来る。したがって、柱状スペーサ203がずれることに起因する液晶分子の配向の乱れ、あるいは、配向膜111の削れ屑による光漏れを防止することが出来、液晶表示装置の画像のコントラストの低下を防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施例1を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例1を示す平面図である。
【図3】実施例1のTFT基板の平面図である。
【図4】実施例1における対向電極の平面図である。
【図5】突起の幅と微小輝点の発生率の比較である。
【図6】実施例1の他の例を示す平面図である。
【図7】従来例を示す断面図である。
【図8】従来例を示す平面図である。
【図9】実施例2を示す断面図である。
【図10】実施例2または、実施例3の平面図である。
【図11】実施例3を示す断面図である。
【符号の説明】
【0079】
100…TFT基板、 101…走査線、 102…ゲート絶縁膜、 103…半導体層、 104…映像信号線、 105…無機パッシベーション膜、 106…有機パッシベーション膜、 107…層間絶縁膜、 108…バス電極、 109…対向電極、 110…スリット、 111…配向膜、 112…画素電極、 113…突起用ITO、 115…島状バス電極、 200…対向基板、 201…ブラックマトリクス、 202…オーバーコート膜、 203…柱状スペーサ、 210…表面導電膜、 300…液晶層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延在し、第2の方向に配列した走査線と、第2の方向に延在し、第1の方向に配列した映像信号線とで囲まれた領域に画素が形成されたTFT基板と、前記TFT基板と対向して対向基板が配置され、前記TFT基板と前記対向基板との間に液晶層が挟持された液晶表示装置であって、
前記画素には、平面状に形成された画素電極と、前記画素電極の上には、絶縁膜を介して櫛歯状に形成された対向電極が配置され、
前記対向基板には、前記TFT基板と前記対向基板との間隔を規定する柱状スペーサが形成され、
前記TFT基板の前記走査線の上には、第1の方向に延在する前記対向電極と接続する金属で形成されたバス電極が形成され、
前記柱状スペーサの先端は前記バス電極と対向し、前記バス電極の幅は3μm以下であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記バス電極は前記走査線と前記映像信号線の交点において、第2の方向に延在して十字状の形状をなし、前記柱状スペーサの先端は、前記十字状をなす前記バス電極と対向することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記走査線と前記映像信号線の交点付近において、前記バス電極を挟んで、前記バス電極と同じ材料で形成された島状の突起が形成され、
前記島状突起の幅は3μm以下であり、
前記柱状スペーサは、前記バス電極あるいは前記島状の突起のいずれかと対向することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
第1の方向に延在し、第2の方向に配列した走査線と、第2の方向に延在し、第1の方向に配列した映像信号線とで囲まれた領域に画素が形成されたTFT基板と、前記TFT基板と対向して対向基板が配置され、前記TFT基板と前記対向基板との間に液晶層が挟持された液晶表示装置であって、
前記画素には、平面状に形成された対向電極と、前記対向電極の上には、絶縁膜を介して櫛歯状に形成された画素電極が配置され、
前記対向基板には、前記TFT基板と前記対向基板との間隔を規定する柱状スペーサが形成され、
前記TFT基板の前記走査線の上には、前記画素電極と同じ材料で形成された突起が形成され、
前記柱状スペーサの先端は前記突起対向し、前記突起の幅は3μm以下であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項5】
前記突起は前記走査線と前記映像信号線の交点において、第2の方向と第2の方向に延在して十字状の形状をなし、前記柱状スペーサの先端は、前記十字状をなす前記突起と対向することを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記走査線と前記映像信号線の交点において、前記突起が島状に複数形成されていることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
第1の方向に延在し、第2の方向に配列した走査線と、第2の方向に延在し、第1の方向に配列した映像信号線とで囲まれた領域に画素電極が形成されたTFT基板と、前記TFT基板と対向して対向基板が配置され、前記TFT基板と前記対向基板との間に液晶層が挟持された液晶表示装置であって、
前記対向基板には、前記TFT基板に形成された前記画素電極に対向して対向電極が形成され、
前記対向基板には、前記TFT基板と前記対向基板との間隔を規定する柱状スペーサが形成され、
前記TFT基板の前記走査線の上には、前記画素電極と同じ材料で形成された突起が形成され、
前記柱状スペーサの先端は前記突起対向し、前記突起の幅は3μm以下であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
前記突起は前記走査線と前記映像信号線の交点において、第2の方向と第2の方向に延在して十字状の形状をなし、前記柱状スペーサの先端は、前記十字状をなす前記突起と対向することを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記走査線と前記映像信号線の交点において、前記突起が島状に複数形成されていることを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項1】
第1の方向に延在し、第2の方向に配列した走査線と、第2の方向に延在し、第1の方向に配列した映像信号線とで囲まれた領域に画素が形成されたTFT基板と、前記TFT基板と対向して対向基板が配置され、前記TFT基板と前記対向基板との間に液晶層が挟持された液晶表示装置であって、
前記画素には、平面状に形成された画素電極と、前記画素電極の上には、絶縁膜を介して櫛歯状に形成された対向電極が配置され、
前記対向基板には、前記TFT基板と前記対向基板との間隔を規定する柱状スペーサが形成され、
前記TFT基板の前記走査線の上には、第1の方向に延在する前記対向電極と接続する金属で形成されたバス電極が形成され、
前記柱状スペーサの先端は前記バス電極と対向し、前記バス電極の幅は3μm以下であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記バス電極は前記走査線と前記映像信号線の交点において、第2の方向に延在して十字状の形状をなし、前記柱状スペーサの先端は、前記十字状をなす前記バス電極と対向することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記走査線と前記映像信号線の交点付近において、前記バス電極を挟んで、前記バス電極と同じ材料で形成された島状の突起が形成され、
前記島状突起の幅は3μm以下であり、
前記柱状スペーサは、前記バス電極あるいは前記島状の突起のいずれかと対向することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
第1の方向に延在し、第2の方向に配列した走査線と、第2の方向に延在し、第1の方向に配列した映像信号線とで囲まれた領域に画素が形成されたTFT基板と、前記TFT基板と対向して対向基板が配置され、前記TFT基板と前記対向基板との間に液晶層が挟持された液晶表示装置であって、
前記画素には、平面状に形成された対向電極と、前記対向電極の上には、絶縁膜を介して櫛歯状に形成された画素電極が配置され、
前記対向基板には、前記TFT基板と前記対向基板との間隔を規定する柱状スペーサが形成され、
前記TFT基板の前記走査線の上には、前記画素電極と同じ材料で形成された突起が形成され、
前記柱状スペーサの先端は前記突起対向し、前記突起の幅は3μm以下であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項5】
前記突起は前記走査線と前記映像信号線の交点において、第2の方向と第2の方向に延在して十字状の形状をなし、前記柱状スペーサの先端は、前記十字状をなす前記突起と対向することを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記走査線と前記映像信号線の交点において、前記突起が島状に複数形成されていることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
第1の方向に延在し、第2の方向に配列した走査線と、第2の方向に延在し、第1の方向に配列した映像信号線とで囲まれた領域に画素電極が形成されたTFT基板と、前記TFT基板と対向して対向基板が配置され、前記TFT基板と前記対向基板との間に液晶層が挟持された液晶表示装置であって、
前記対向基板には、前記TFT基板に形成された前記画素電極に対向して対向電極が形成され、
前記対向基板には、前記TFT基板と前記対向基板との間隔を規定する柱状スペーサが形成され、
前記TFT基板の前記走査線の上には、前記画素電極と同じ材料で形成された突起が形成され、
前記柱状スペーサの先端は前記突起対向し、前記突起の幅は3μm以下であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
前記突起は前記走査線と前記映像信号線の交点において、第2の方向と第2の方向に延在して十字状の形状をなし、前記柱状スペーサの先端は、前記十字状をなす前記突起と対向することを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記走査線と前記映像信号線の交点において、前記突起が島状に複数形成されていることを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−181786(P2010−181786A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27314(P2009−27314)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】
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