説明

液晶表示装置

【課題】液晶の配向性や低消費電力性を損なうことなく、透過率の高い液晶表示装置を提供する。
【解決手段】液晶表示装置において、少なくとも一方の配向膜は有機化合物を含み、配向膜の一方の面は液晶層と接しており、配向膜の他方の面は下地層と接しており、配向膜の屈折率は、配向膜の膜厚方向に、液晶層と配向膜との界面から、下地層と配向膜との界面にかけて単調増加し、液晶層の最小屈折率nLCと、液晶層と配向膜との界面における、配向膜の屈折率nF2と、配向膜と下地層との界面における、配向膜の屈折率nF1と、下地層の屈折率nS2と、は下記式(I)の関係を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性と高コントラスト性を高めた配向膜が形成された液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は表示品質が高く、且つ薄型、軽量、低消費電力などといった特長からその用途を広げており、携帯電話用モニター、デジタルスチルカメラ用モニターなどの携帯向けモニターからデスクトップパソコン用モニター、印刷やデザイン向けモニター、医療用モニターさらには液晶テレビなど様々な用途に用いられている。
【0003】
この用途拡大に伴い、液晶表示装置には更なる高画質化、高品質化が求められており、特に高透過率化による高輝度化、低消費電力化が強く求められている。また液晶表示装置の普及に伴い、低コスト化に対しても強い要求がある。
【0004】
通常、液晶表示装置の表示は一対の基板間に挟まれた液晶層の液晶分子に電界を印加することにより液晶分子の配向方向を変化させ、それにより生じた液晶層の光学特性の変化により行われる。電界無印加時の液晶分子の配向方向は、ポリイミド薄膜の表面にラビング処理を施した配向膜により規定されている。
【0005】
従来、画素毎に薄膜トランジスタ(TFT)等のスイッチング素子を備えたアクティブ駆動型液晶表示装置は、液晶層を挟持する一対の基板のそれぞれに電極を設け、液晶層に印加する電界の方向が基板面に対してほぼ垂直になる、所謂縦電界になるように設定され、液晶層を構成する液晶分子の光旋光性を利用して表示を行う。
【0006】
縦電界方式の代表的な液晶表示装置として、ツイステッドネマチック(TN:Twisted Nematic)方式が知られている。TN方式の液晶表示装置においては視野角が狭いことが課題の一つである。そこで、広視野角化を達成する表示方式としてIPS(In−Plane Switching)方式やFFS(Fringe−Field Switching)方式が知られている。
【0007】
IPS方式およびFFS方式は、一対の基板の一方に櫛歯状の電極を形成し、発生する電界が当該基板面にほぼ平行な成分を有する、所謂横電界方式の表示方式であり、液晶層を構成する液晶分子を基板とほぼ平行な面内で回転動作させ、液晶層の複屈折性を用いて表示を行う。液晶分子の面内スイッチングにより従来のTN方式に比べて視野角が広く低負荷容量である等の利点があり、TN方式に代わる新たな液晶表示装置として有望視され、近年急速に進歩している。
【0008】
液晶表示素子は、液晶層中の液晶分子の配向状態を電場の有無によって制御する。すなわち、液晶層の外部に設けられた上下の偏光板を完全直交状態にして、中間の液晶分子の配向状態により位相差を発生させて明暗の状態を形成する。
【0009】
液晶表示素子の透過率は基板や透明電極、液晶層、偏光板等の各種光学薄膜自身の光吸収や光散乱以外に、各光学薄膜間の屈折率差に由来する、界面での光反射が大きな割合を占めている。液晶表示素子の光学薄膜の中で最大の屈折率を与えるものは透明電極に用いられる酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide, ITO;屈折率2.1)や画素電極と共通電極の間を電気的に分離する層間絶縁膜に用いられる窒化珪素(Silicon Nitride,SiNx;屈折率1.8〜1.9)等である。それ以外の部材は、液晶や配向膜、偏光板、位相差板等の有機光学薄膜であり、或いはガラス基板であり、それらの屈折率は1.4〜1.6程度である。
【0010】
異なる屈折率を有する媒体間の反射損失を低減するためには、その間に各種反射防止層を挿入することが有効である。代表的な反射防止層として、高屈折率層と低屈折率層の多層膜や、マイクロレンスアレイ等が用いられるが、少なくとも波長オーダの光学的構造を設ける必要があり、液晶表示装置の透明電極と液晶層との間の高々100nm程度の間隔に導入することは困難である。より薄い薄膜でありながら、可視域全般にわたり一様な反射防止を行うためには、屈折率の異なる光学薄膜間になだらかに屈折率を変える傾斜屈折率(Grated Refractive Index,GRIN)薄膜が用いられる。
【0011】
例えば、GRIN薄膜は、無機ガラスからなる光通信ファイバ接続部での接続ロス防止や(非特許文献1参照)、空孔密度制御されたSiOガラスからなる外光反射防止膜に(非特許文献2参照)用いられている。
【0012】
また、特許文献1においては液晶表示素子にも酸化度を制御したSiOx薄膜からなるGRIN薄膜を用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−248607号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Opt.Commun.2002 28th Euro.Conf.Opt.Commun.(ECOC2002) 3 (2002) 1−2
【非特許文献2】Appl.Opt.42 (2003) 4573−4579
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、これらSiOガラスからなる外光反射防止膜やSiOx薄膜からなるGRIN薄膜単独ではその表面に何ら面内異方性を持たないため液晶配向能力を保有することは極めて難しい。更に特許文献1においてはSiOx薄膜単独に斜方蒸着を施すことによって多少なりとも液晶配向能力を付与しようとしているが、このような無機材料の斜方蒸着膜の液晶配向能力が乏しいことは、古くから周知のところである。
【0016】
今日では、液晶分子を配向させるためには、分子レベルでの相互作用により配向させることが可能な有機材料からなる配向膜が標準的に用いられている。仮に、特許文献1に示されるようなSiOx薄膜からなるGRIN薄膜の上に従来の液晶配向膜を塗布すると、屈折率上の差異を緩和する機能は実現されても、例えば透明電極から液晶層に達するまでの距離が長くなり、液晶分子を配向させるのに必要な電圧を高めないと駆動できず、消費電力が著しく増加してしまう。
【0017】
本発明の目的は、液晶の配向性や低消費電力性を損なうことなく、透過率の高い液晶表示装置を提供することにある。また、本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面によって明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る液晶表示装置は、少なくとも一方が透明な第一の基板および第二の基板と、前記第一の基板と前記第二の基板との間に配置された液晶層と、前記第一の基板および前記第二の基板の少なくとも一方の基板に形成され、前記液晶層に電界を印加するための電極群と、前記電極群に接続された複数のアクティブ素子と、前記第一の基板および前記第二の基板の少なくとも一方の基板に配置された、一方の面で前記液晶層と接する配向膜と、前記第一の基板および前記第二の基板の少なくとも一方の基板において、前記配向膜の他方側の面と接する下地層と、を備える液晶表示装置において、前記配向膜は有機化合物を含み、前記配向膜の屈折率は、前記配向膜と前記液晶層との界面から、前記配向膜と下地層との界面にかけて単調増加し、前記液晶層の最小屈折率nLCと、前記液晶層と前記配向膜との界面における、前記配向膜の屈折率nF2と、前記配向膜と前記下地層との界面における、前記配向膜の屈折率nF1と、前記下地層の屈折率nS2と、
は下記式(I)の関係を有することを特徴とする。
【数1】

【0019】
また、前記下地層は、可視光を透過する透明層であり、前記電極群は共通電極および画素電極を含み、前記下地層の前記配向膜に接する面と反対側の面は、前記共通電極および前記画素電極のいずれか一方の電極と接していることとしてもよい。
【0020】
また、前記下地層の屈折率nS2と、前記下地層と前記一方の電極との界面における、前記一方の電極の屈折率nPEと、は下記式(II)の関係を有することとしてもよい。
【数2】

【0021】
また、前記下地層の前記配向膜に接する面と反対側の前記面の一部は前記一方の電極と接しており、他の一部は層間絶縁膜と接しており、前記下地層の屈折率nS2と、前記層間絶縁膜の屈折率nLIとは下記式(III)の関係を有することとしてもよい。
【数3】

【0022】
また、前記電極群は共通電極および画素電極を含み、前記下地層は、前記配向膜の前記液晶層に接する面と反対側の面に接する層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜の前記配向膜側の面の一部に備えられた、前記配向膜側に突出する、前記共通電極および前記画素電極のいずれか一方の電極と、からなり、前記配向膜は、前記下地層上に形成されており、前記配向膜の膜厚は、前記一方の電極の膜厚より大きいこととしてもよい。
【0023】
また、前記一方の電極の、表面の屈折率は、内部の屈折率より低いこととしてもよい。また、前記配向膜は、面内に光学的異方性を有することとしてもよい。また、前記配向膜の面内の光学的異方性軸の方向と、液晶層の配向規制方向とが同じであることとしてもよい。
【0024】
また、前記配向膜は、複数種の前記有機化合物を含むこととしてもよい。また、前記配向膜は、極性の異なる複数種の前記有機化合物を含むこととしてもよい。また、前記配向膜は、屈折率の異なる複数種の前記有機化合物を含むこととしてもよい。また、前記配向膜を構成する複数種の前記有機化合物のうち、最も屈折率が高い前記有機化合物の可視域における屈折率が1.7以上であることとしてもよい。
【0025】
また、前記配向膜がポリアミド酸エステルを前駆体とするポリイミドで形成されていることとしてもよい。また、前記配向膜は、光配向処理によって液晶配向能が付与されていることとしてもよい。また、前記配向膜は、ラビング処理によって液晶配向能が付与されていることとしてもよい。
【0026】
また、前記配向膜の液晶配向能が付与された領域は前記配向膜表面から20nmまでの範囲にあることとしてもよい。また、前記配向膜は、液晶配向能が付与された後に、前記配向膜を形成する化合物同士が架橋していることとしてもよい。前記配向膜の表示領域に対する被覆率が50%以上であることとしてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、液晶の配向性や低消費電力性を損なうことなく、透過率の高い液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A】本発明の実施形態に係る液晶表示装置の概略構成の一例を示す、模式ブロック図である。
【図1B】本発明の実施形態に係る液晶表示装置における、液晶表示パネルの一つの画素の回路構成の一例を示す模式回路図である。
【図1C】本発明の実施形態に係る液晶表示装置における、液晶表示パネルの概略構成の一例を示す模式平面図である。
【図1D】図1Cの1D−1D線における断面構成の一例を示す模式断面図である。
【図2A】本発明の実施形態に係る液晶表示装置における、IPS方式液晶表示パネルの概略構成の一例を示す模式断面図である。
【図2B】本発明の実施形態に係る液晶表示装置の他の一例における、IPS方式液晶表示パネルの概略構成の一例を示す模式断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る液晶表示装置における、FFS方式液晶表示パネルの概略構成の一例を示す模式断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る液晶表示装置における、VA方式液晶表示パネルの概略構成の一例を示す模式断面図である。
【図5A】本発明の実施形態に係る液晶表示装置における、配向膜近傍の構造の一例を示す模式図である。
【図5B】本発明の実施形態に係る液晶表示装置に備えられた配向膜に含まれる、化学構造Dの濃度分布の一例を示す説明図である。
【図5C】本発明の実施形態に係る液晶表示装置に備えられた配向膜近傍の、屈折率分布の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明について、図面を参照して詳細に説明する。なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは、同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0030】
まず図1Aから図1Dで示される、本発明に関わる液晶表示装置の概略構成の一例を示す模式図等を用いて説明する。
【0031】
図1Aは、本発明の実施形態に係る液晶表示装置の概略構成の一例を示す、模式ブロック図である。図1Bは、本発明の実施形態に係る液晶表示装置における、液晶表示パネルの一つの画素の回路構成の一例を示す模式回路図である。図1Cは、本発明の実施形態に係る液晶表示装置における、液晶表示パネルの概略構成の一例を示す模式平面図である。図1Dは、図1Cの1D−1D線における断面構成の一例を示す模式断面図である。
【0032】
本発明は、例えば、アクティブマトリクス方式の液晶表示装置に適用される。アクティブマトリクス方式の液晶表示装置は、例えば、携帯型電子機器向けのディスプレイ(モニター)、パーソナルコンピュータ用のディスプレイ、印刷やデザイン向けのディスプレイ、医療用機器のディスプレイ、液晶テレビ等に用いられている。
【0033】
アクティブマトリクス方式の液晶表示装置は、例えば図1Aに示されるように、液晶表示パネル1、第1の駆動回路2、第2の駆動回路3、制御回路4、およびバックライト5等を有する。
【0034】
液晶表示パネル1は、複数本の走査信号線GL(ゲート線)および複数本の映像信号線DL(ドレイン線)を有し、映像信号線DLは第1の駆動回路2に接続しており、走査信号線GLは第2の駆動回路3に接続している。なお、図1Aには、複数本の走査信号線GLのうちの一部を示しており、実際の液晶表示パネル1には、さらに多数本の走査信号線GLが密に配置されている。同様に、図1Aには、複数本の映像信号線DLのうちの一部を示しており、実際の液晶表示パネル1には、さらに多数本の映像信号線DLが密に配置されている。
【0035】
また、液晶表示パネル1の表示領域DAは、多数の画素の集合で構成されており、表示領域DAにおいて1つの画素が占有する領域は、たとえば、隣接する2本の走査信号線GLと隣接する2本の映像信号線DLとで囲まれる領域に相当する。このとき、1つの画素の回路構成は、例えば、図1Bに示される構成になっており、アクティブ素子として機能するTFT素子Tr、画素電極PX、共通電極CT(対向電極と呼ぶこともある)、液晶層LCを有する。またこのとき、液晶表示パネル1には、たとえば、複数の画素の共通電極CTを共通化する共通化配線CLが設けられている。
【0036】
また、液晶表示パネル1は、例えば、図1Cおよび図1Dに示すように、アクティブマトリクス基板6と対向基板7の表面に配向膜606および705を形成し、それら配向膜の間に液晶層11a(液晶材料)を配置した構造になっている。また、ここでは特に図示していないが、配向膜606とアクティブマトリクス基板6の間、または配向膜705と対向基板7の間に、適宜中間層(例えば位相差板や色変換層、光拡散層等の光学的中間層)を設けてもよい。このとき、アクティブマトリクス基板6と対向基板7とは、表示領域DAの外側に設けられた環状のシール材8で接着されており、液晶層11aは、アクティブマトリクス基板6側の配向膜606、対向基板7側の配向膜705、およびシール材8で囲まれた空間に密封されている。またこのとき、バックライト5を有する液晶表示装置の液晶表示パネル1は、アクティブマトリクス基板6、液晶層11a、および対向基板7を挟んで対向配置させた一対の偏光板9a,9bを有する。
【0037】
なお、アクティブマトリクス基板6は、ガラス基板などの絶縁基板の上に走査信号線GL、映像信号線DL、アクティブ素子(TFT素子Tr)、画素電極PXなどが配置された基板である。また、液晶表示パネル1の駆動方式がIPS方式などの横電界駆動方式である場合、共通電極CTおよび共通化配線CLはアクティブマトリクス基板6に配置されている。
【0038】
また、液晶表示パネル1の駆動方式がTN方式やVA(Vertically Aligment)方式などの縦電界駆動方式である場合、共通電極CTは対向基板7に配置されている。縦電界駆動方式の液晶表示パネル1の場合、共通電極CTは、通常、すべての画素で共有される大面積の一枚の平板電極であり、共通化配線CLは設けられていない。
【0039】
また、本発明に関わる液晶表示装置では、液晶層11aが密封された空間に、たとえば、それぞれの画素における液晶層11aの厚さ(セルギャップということもある)の均一化するための柱状スペーサ10が複数設けられている。この複数の柱状スペーサ10は、例えば、対向基板7に設けられている。
【0040】
第1の駆動回路2は、映像信号線DLを介してそれぞれの画素の画素電極PXに加える映像信号(階調電圧ということもある)を生成する駆動回路であり、一般に、ソースドライバ、データドライバなどと呼ばれている駆動回路である。また、第2の駆動回路3は、走査信号線GLに加える走査信号を生成する駆動回路であり、一般に、ゲートドライバ、走査ドライバなどと呼ばれている駆動回路である。また、制御回路4は、第1の駆動回路2の動作の制御、第2の駆動回路3の動作の制御、およびバックライト5の輝度の制御などを行う回路であり、一般に、TFTコントローラ、タイミングコントローラなどと呼ばれている制御回路である。
【0041】
また、バックライト5は、たとえば、冷陰極蛍光灯などの蛍光灯、または発光ダイオード(LED)などの光源であり、当該バックライト5が発した光は、図示していない反射板、導光板、光拡散板、プリズムシートなどにより面状光線に変換されて液晶表示パネル1に照射される。バックライト5から光が照射された場合、液晶表示パネル1に備えられる様々な層を光は通過することとなる。
【0042】
本発明の実施形態に係る液晶表示装置は、少なくとも一方が透明なアクティブマトリクス基板(第一の基板)6と、対向基板(第二の基板)7と、アクティブマトリクス基板6と対向基板7との間に配置された液晶層11aと、アクティブマトリクス基板6および対向基板7の少なくとも一方の基板に形成され、液晶層11aに電界12を印加するための電極群CT,PXと、当該電極群CT,PXに接続された複数のアクティブ素子Trと、アクティブマトリクス基板6および対向基板7の少なくとも一方の基板に配置された、一方の面で液晶層11aと接する配向膜606,705と、アクティブマトリクス基板6および対向基板7の少なくとも一方の基板において、配向膜606、705の他方側の面と接する下地層と、を備える液晶表示装置である。
【0043】
バックライト5からの光は、互いに屈折率の異なる二つの層の界面を透過するとき、界面で反射損失が発生する。反射損失は屈折率の異なりが大きいほど顕著なものとなる。特に、高屈折率を有する電極群CT,PXや層間絶縁膜の界面での反射に由来する反射損失は顕著なものとなる。
【0044】
例えば、本発明の実施形態に係る液晶表示装置がIPS等の所謂、横電界駆動方式の液晶表示装置である場合、電極群CT,PXは一方の基板(アクティブマトリクス基板6)のみに形成されることとなる。かかる場合、アクティブマトリクス基板6における、反射損失を抑制するためには、アクティブマトリクス基板6に備えられた配向膜606に本発明に係る配向膜を適用することが効果的である。
【0045】
また、縦電界駆動方式の液晶表示装置は、アクティブマトリクス基板6及び対向基板7に電極群の一方(画素電極PX)及び他方(共通電極CT)がそれぞれ形成されることとなる。かかる場合、アクティブマトリクス基板6および対向基板7に備えられたそれぞれの配向膜606,705に本発明に係る配向膜を適用することが効果的である。
【0046】
以下の説明においては、本発明の実施形態に係る液晶表示装置が横電界駆動方式の液晶表示装置である場合、アクティブマトリクス基板6に備えられた配向膜606に関して詳細に説明することとする。なお、横電界駆動方式の液晶表示装置である場合においても、対向基板7に備えられた配向膜705に本発明に係る配向膜を適用することができる。
【0047】
また、本発明の実施形態に係る液晶表示装置が縦電界駆動方式の液晶表示装置である場合は、アクティブマトリクス基板6および対向基板7に備えられた配向膜606、705のそれぞれに、本発明に係る配向膜を適用することが効果的である。ただし、以下の説明では、対向基板7の構成に関する詳細な説明は省略することとする。
【0048】
図2Aは、本発明の実施形態に係る液晶表示装置における、IPS方式液晶表示パネルの概略構成の一例を示す模式断面図である。
【0049】
図2Aの例に係る液晶表示装置は、少なくとも一方が透明なアクティブマトリクス基板(第一の基板)6と、対向基板(第二の基板)7と、アクティブマトリクス基板6と対向基板7との間に配置された液晶層11aと、アクティブマトリクス基板6および対向基板7の一方の基板(アクティブマトリクス基板6)に形成され、液晶層11aに電界12を印加するための画素電極PX及び共通電極CTと、当該画素電極PXに接続されたアクティブ素子Trと、アクティブマトリクス基板6および対向基板7にそれぞれ配置された配向膜606,705とを備える液晶表示装置である。
【0050】
この例において、アクティブマトリクス基板6に備えられた配向膜606は有機化合物を含み、配向膜606の屈折率は、配向膜606と液晶層11aとの界面から、配向膜606と下地層との界面にかけて単調増加し、液晶層11aの最小屈折率nLCと、液晶層11aと配向膜606との界面における、配向膜606の屈折率nF2と、配向膜606と前記下地層との界面における、配向膜606の屈折率nF1と、前記下地層の屈折率nS2と、
は下記式(I)の関係を有することを特徴としている。
【数4】

【0051】
ここで、下地層とは、配向膜606の液晶層11aと反対側に接して備えられる層である。すなわち配向膜606の一方の面は液晶層11aと接し、他方の面は下地層と接することとなる。図2Aに示される液晶表示装置の下地層は、層間絶縁膜605および共通電極CTである。下地層は、例えば、層間絶縁膜605のように液晶パネル一面に広がって形成されるものであっても、共通電極CTのように特定のパターンを形成しているものであってもよい。
【0052】
また、このように下地層として2種類以上の層(例えば、層間絶縁膜605および共通電極CT)が形成されている場合においても、配向膜606との界面における、当該下地層を構成する当該2種以上の層のそれぞれの屈折率nS2は、式(I)の関係を満たす。
【0053】
また、液晶層11aに直接接している配向膜606、705は、ポリイミドを主成分とした耐熱性の有機化合物によって形成されている。液晶層11aを構成する液晶材料はネマチック液晶混合物が用いられている。液晶材料がポジティブ液晶である場合、その正常光方向の屈折率noは約1.7、異常光方向の屈折率neは約1.5であり、液晶材料がネガティブ液晶である場合は逆にnoは約1.5、neは約1.7となる。前述の式(I)中で示される液晶層の最小屈折率nLCとは、液晶層を構成する液晶分子の有する正常光方向の屈折率noおよび異常光方向の屈折率neのいずれか数値の小さいほうをいう。例えばポジティブ液晶によって構成される液晶層の最小屈折率nLCは、異常光方向の屈折率neとなり1.5ということとなる。
【0054】
アクティブマトリクス基板6は、ガラス基板601などの絶縁基板の表面に、走査信号線GLおよび共通化配線CLと、それらを覆う第1の絶縁膜602が形成されている。第1の絶縁膜602の上には、TFT素子Trの半導体層603、映像信号線DL、および画素電極PXと、それらを覆う第2の絶縁膜604が形成されている。半導体層603は、走査信号線GLの上に配置されており、走査信号線GLのうちの半導体層603の下部に位置する部分がTFT素子Trのゲート電極として機能する。
【0055】
また、半導体層603は、たとえば、第1のアモルファスシリコンからなる能動層(チャネル形成層)の上に、第1のアモルファスシリコンとは不純物の種類や濃度が異なる第2のアモルファスシリコンからなるソース拡散層およびドレイン拡散層が積層された構成になっている。またこのとき、映像信号線DLの一部分および画素電極PXの一部分は、それぞれ、半導体層603に乗り上げており、当該半導体層603に乗り上げた部分がTFT素子Trのドレイン電極およびソース電極として機能する。
【0056】
ところで、TFT素子Trのソースとドレインは、バイアスの関係、すなわちTFT素子Trがオンになったときの画素電極PXの電位と映像信号線DLの電位との高低の関係によって入れ替わる。しかしながら、本明細書における以下の説明では、映像信号線DLに接続している電極をドレイン電極といい、画素電極PXに接続している電極をソース電極という。
【0057】
第2の絶縁膜604の上には、表面が平坦化された層間絶縁膜605(オーバーコート層)が形成されている。層間絶縁膜605の上には、共通電極CTと、共通電極CTおよび層間絶縁膜605を覆う配向膜606が形成されている。共通電極CTは、第1の絶縁膜602、第2の絶縁膜604、および層間絶縁膜605を貫通するコンタクトホールCH(スルーホール)を介して共通化配線CLと接続している。
【0058】
また、図2Aに示されるように、アクティブマトリクス基板6に含まれる電極群は共通電極CTおよび画素電極PXを含み、前述の下地層は、配向膜606の液晶層11aに接する面と反対側の面に接する層間絶縁膜605と、層間絶縁膜605の配向膜606側の面の一部に備えられた、配向膜606側に突出する、共通電極CTとからなり、配向膜606は、下地層(層間絶縁膜605および共通電極CT)上に形成されており、配向膜606の膜厚は、共通電極CTの膜厚より大きくなっている。
【0059】
配向膜606の膜厚を、共通電極CTの厚さよりも大きくすることによって、層間絶縁膜605の上面に形成された共通電極CTの凹凸を軽減することができ、ひいては共通電極CTの凹凸に由来する反射損失を抑制することができ透過率向上にとって好ましい。
【0060】
また、共通電極CTは、例えば、平面における画素電極PXとの間隙Pgが7μm程度になるように形成されている。配向膜606は以下の実施例に記載された高分子材料が塗布され、表面に液晶配向能を付与するための表面処理(ラビング処理等)が施されている。
【0061】
一方、対向基板7は、ガラス基板701などの絶縁基板の表面に、ブラックマトリクス702およびカラーフィルタ703R,703G,703Bと、それらを覆うオーバーコート層704が形成されている。ブラックマトリクス702は、たとえば、表示領域DAに画素単位の開口領域を設けるための格子状の遮光膜である。また、カラーフィルタ703R,703G,703Bは、たとえば、バックライト5からの白色光のうちの特定の波長領域(色)の光のみを透過する膜であり、液晶表示装置がRGB方式のカラー表示に対応している場合は、赤色の光を透過するカラーフィルタ703R、緑色の光を透過するカラーフィルタ703G、および青色の光を透過するカラーフィルタ703Bが配置される(ここでは一つの色の画素について代表して示している)。
【0062】
また、オーバーコート層704は、表面が平坦化されている。オーバーコート層704の上には、複数の柱状スペーサ10および配向膜705が形成されている。柱状スペーサ10は、たとえば、頂上部が平坦な円錐台形(台形回転体ということもある)であり、アクティブマトリクス基板6の走査信号線GLのうちの、TFT素子Trが配置されている部分および映像信号線DLと交差している部分を除く部分と重なる位置に形成されている。
【0063】
また、配向膜705は、例えば、ポリイミド系樹脂で形成されており、表面に液晶配向能を付与するための表面処理(ラビング処理等)が施されている。また、図2Aの方式の液晶表示パネル1における液晶層11aの液晶分子11bは、画素電極PXと共通電極CTの電位が等しい電界無印加時には、ガラス基板601,701の表面にほぼ平行に配向された状態であり、配向膜606,705に施されたラビング処理で規定された初期配向方向に向いた状態でホモジニアス配向している。
【0064】
そして、TFT素子Trをオンにして映像信号線DLに加えられている階調電圧を画素電極PXに書き込み、画素電極PXと共通電極CTとの間の電位差が生じると、図中に示したような電界12(電気力線)が発生し、画素電極PXと共通電極CTとの電位差に応じた強度の電界12が液晶分子11bに印加される。このとき、液晶層11aが持つ誘電異方性と電界12との相互作用により、液晶層11aを構成する液晶分子11bは電界12の方向にその向きを変えるので、液晶層11aの屈折異方性が変化する。またこのとき、液晶分子11bの向きは、印加する電界12の強度(画素電極PXと共通電極CTとの電位差の大きさ)によって決まる。したがって、液晶表示装置では、たとえば、共通電極CTの電位を固定しておき、画素電極PXに加える階調電圧を画素毎に制御して、それぞれの画素における光透過率を変化させることで、映像や画像の表示を行うことができる。
【0065】
図2Bは、本発明の実施形態に係る液晶表示装置の他の一例における、IPS方式液晶表示パネルの概略構成の一例を示す模式断面図である。図2Aで示される液晶表示装置における共通電極CT上に透明層610が形成されており、更に透明層610の上に配向膜606が形成されている。また、この透明層610は表示領域の共通電極CTの段差起因の凹凸を平坦化する役割をはたしており、共通電極CTの凹凸に由来する反射損失を抑制する。
【0066】
図2Bに示される液晶表示装置の下地層は、可視光(波長領域が380nmから750nmの電磁波)を透過する透明層610である。透明層610は、アクティブマトリクス基板6において、配向膜606の液晶像11aと接する面と反対側の面で接する。下地層の配向膜606に接する面と反対側の面の一部は、共通電極CTと接している。また、下地層である透明層610の屈折率nS2と、透明層610と共通電極CTとの界面における、共通電極CTの屈折率nPEとは下記式(II)の関係を有することとしてもよい。
【数5】

【0067】
下地層である透明層610の屈折率nS2と共通電極CTの屈折率nPEとの差が0.1以下の場合、透明層610と共通電極CTとの層間反射に由来する反射損失を軽減することができ透過率向上にとって好ましい。また、透明層610の屈折率nS2と共通電極CTの屈折率nPEとが等しい場合、透明層610と共通電極CTとの層間反射に由来する反射損失を特に軽減することができ透過率向上にとって特に好ましい。
【0068】
なお、透明層610と共通電極CTとの界面における、共通電極CTの屈折率nPEは、内部の屈折率より低いこととしてもよい。また、共通電極CTが均質なものであれば、共通電極CTの表面の屈折率は、内部の屈折率と等しいこととしてもよい。
【0069】
さらに、図2Bに示される液晶表示装置において、下地層である透明層610の配向膜606に接する面と反対側の面の一部は共通電極CTと接しており、他の一部は層間絶縁膜605と接しており、透明層610の屈折率nS2と、層間絶縁膜605の屈折率nLIと、は下記式(III)の関係を有することとしてもよい。
【数6】

【0070】
下地層である透明層の屈折率nS2と層間絶縁膜605の屈折率nLIとの差が0.1以下の場合、透明層610と層間絶縁膜605との層間反射に由来する反射損失を軽減することができ透過率向上にとって好ましい。また、透明層610の屈折率nS2と層間絶縁膜605の屈折率nLIとが等しい場合、透明層610と層間絶縁膜605の層間反射に由来する反射損失を特に軽減することができ透過率向上にとって特に好ましい。
【0071】
図3は、本発明の実施形態に係る液晶表示装置における、FFS方式液晶表示パネルの概略構成の一例を示す模式断面図である。図3の例に係る液晶表示装置は、少なくとも一方が透明なアクティブマトリクス基板(第一の基板)6と、対向基板(第二の基板)7と、アクティブマトリクス基板6と対向基板7との間に配置された液晶層11aと、アクティブマトリクス基板6および対向基板7の一方の基板(アクティブマトリクス基板6)に形成され、液晶層11aに電界12を印加するための画素電極PX及び共通電極CTと、当該画素電極に接続されたアクティブ素子と、アクティブマトリクス基板6および対向基板7にそれぞれ配置された配向膜606,705とを備える液晶表示装置である。
【0072】
図3に示される液晶表示装置の下地層は、第2の絶縁膜604および画素電極PXである。また、下地層を構成する第2の絶縁膜604および画素電極PXの屈折率nS2は、配向膜606と接する界面において、いずれも式(I)の関係を満たす。
【0073】
アクティブマトリクス基板6は、ガラス基板601などの絶縁基板の表面に、共通電極CT、走査信号線GL、および共通化配線CLと、それらを覆う第1の絶縁膜602が形成されている。第1の絶縁膜602の上には、TFT素子の半導体層603、映像信号線DL、およびソース電極と、それらを覆う第2の絶縁膜604が形成されている。このとき、映像信号線DLの一部分およびソース電極の一部分は、それぞれ、半導体層603に乗り上げており、当該半導体層603に乗り上げた部分がTFT素子のドレイン電極およびソース電極として機能する。
【0074】
また、図3の液晶表示パネル1では、層間絶縁膜605が形成されておらず、第2の絶縁膜604の上に画素電極PXと、画素電極PXを覆う配向膜606が形成されている。画素電極PXは、第2の絶縁膜604を貫通するコンタクトホールCH(スルーホール)を介してソース電極と接続している。このとき、ガラス基板601の表面に形成された共通電極CTは、隣接する2本の走査信号線GLと隣接する2本の映像信号線DLで囲まれた領域(開口領域)に平板状に形成されており、当該平板状の共通電極CTの上に、複数のスリットを有する画素電極PXが積層されている。またこのとき、走査信号線GLの延在方向に並んだ画素の共通電極CTは、共通化配線CLによって共通化されている。
【0075】
一方、図3の液晶表示パネル1における対向基板7は、図2の液晶表示パネル1の対向基板7と同じ構成である。そのため、対向基板7の構成に関する詳細な説明は省略する。
【0076】
図4は、本発明の実施形態に係る液晶表示装置における、VA方式液晶表示パネルの概略構成の一例を示す模式断面図である。
【0077】
図4に示す例に係る液晶表示装置は、少なくとも一方が透明なアクティブマトリクス基板(第一の基板)6と、対向基板(第二の基板)7と、アクティブマトリクス基板6と対向基板7との間に配置された液晶層11aと、アクティブマトリクス基板6および対向基板7にそれぞれ形成され、液晶層11aに電界12を印加するための画素電極PX及び共通電極CTと、当該画素電極PXに接続されたアクティブ素子Trと、アクティブマトリクス基板6および対向基板7にそれぞれ配置された配向膜606,705とを備える液晶表示装置である。
【0078】
図4に示される液晶表示装置の下地層は、第2の絶縁膜604および画素電極PXである。また、下地層を構成する第2の絶縁膜604および画素電極PXの屈折率nS2は、配向膜606と接する界面において、いずれも式(I)の関係を満たすものとする。
【0079】
縦電界駆動方式の液晶表示パネル1は、たとえば、図4に示すように、アクティブマトリクス基板6に画素電極PXが形成されており、対向基板7に共通電極CTが形成されている。
【0080】
縦電界駆動方式の1つであるVA方式の液晶表示パネル1の場合、画素電極PXおよび共通電極CTは、たとえば、ITOなどの透明導電体によりベタ形状(単純な平板形状)に形成されている。このとき、液晶分子11bは、画素電極PXと共通電極CTの電位が等しい電界無印加時には、配向膜606,705によりガラス基板601,701の表面に対して垂直に並べられている。
【0081】
そして、画素電極PXと共通電極CTとの間に電位差が生じると、ガラス基板601,701に対してほぼ垂直な電界12(電気力線)が発生し、液晶分子11bがガラス基板601,701に対して平行な方向に倒れ、入射光の偏光状態が変化する。またこのとき、液晶分子11bの向きは、印加する電界12の強度によって決まる。したがって、液晶表示装置では、たとえば、共通電極CTの電位を固定しておき、画素電極PXに加える映像信号(階調電圧)を画素毎に制御して、それぞれの画素における光透過率を変化させることで、映像や画像の表示を行う。
【0082】
また、VA方式の液晶表示パネル1における画素の構成、例えば、TFT素子や画素電極PXの平面形状は種々の構成が知られており、図4の方式での液晶表示パネル1における画素の構成は、それらの構成のいずれかであればよい。ここでは、その液晶表示パネル1における画素の構成に関する詳細な説明を省略する。
【0083】
本発明は、上記のようなアクティブマトリクス方式の液晶表示装置のうち、液晶表示パネル1、特に、アクティブマトリクス基板6および対向基板7において液晶層11a接する部分およびその周辺の構成に関する。そのため、本発明には直接関係しない第1の駆動回路2、第2の駆動回路3、制御回路4、およびバックライト5の構成についての詳細な説明は省略する。
【0084】
ここで本発明の実施形態に係る液晶表示装置に含まれる、それぞれの構成物に関し説明を行う。
【0085】
前述のように、液晶層11aに充填する液晶材料はネマチック液晶混合物が用いられることが多いが、その屈折率はポジティブ液晶の場合、正常光方向の屈折率noは約1.7、異常光方向の屈折率neは約1.5であり、ネガティブ液晶の場合は逆にnoは約1.5、neは約1.7となる。
【0086】
また、配向膜に用いられるポリイミドの屈折率は約1.6である。これに対して、配向膜の更に下側にある薄膜層は、例えば図2AのIPS方式の液晶表示素子では液晶層11aの下側には、配向膜606の下に共通電極CTや画素電極PXがあり、これらは絶縁膜604、605で隔てられている。
【0087】
共通電極CTや画素電極PXには透明電極であるITOのスパッタ膜が用いられることが多く、その屈折率は約2.1である。また、絶縁膜604、605にはSiNxのCVD(Chemical Vapor Deposition)膜が用いられることが多く、その屈折率は約1.8から約1.9である。更にその下のガラス基板は無アルカリガラスが用いられることが多く、その屈折率は約1.5である。
【0088】
つまり、アクティブマトリクス基板6においては、屈折率が1.5〜1.7の低屈折率な薄膜層(液晶層11a、ガラス基板601等)の間に屈折率が1.8以上の高屈折率な薄膜層(共通電極CTや絶縁膜604等)が介在している構造であり、この層間の屈折率差に由来する反射損失を抑制することが透過率向上にとって重要である。
【0089】
一方、液晶層11aの上側には、配向膜705、オーバーコート層704、カラーフィルタ703R、703G、703Bがあり、いずれも有機化合物からなり、その屈折率は約1.5から約1.6である。更にその上のガラス基板701は無アルカリガラスが用いられることが多く、その屈折率は約1.5である。つまり、液晶層上部の対向基板7はいずれも屈折率が1.5から1.6の低屈折率な部材からなり、屈折率差に由来する反射損失は小さい。
【0090】
図3のFFS方式の液晶表示素子でもほぼ同様である。また、図4のVA方式の液晶表示素子では、液晶層11aの下方だけではなく、上方にも透明電極からなる共通電極CTがあり、共通電極CTと、オーバーコート層704若しくは配向膜705との屈折率差に由来する反射損失が問題となる。
【0091】
図5Aには、このような課題を解決するのに適した、本発明の実施形態に係る液晶表示装置における、配向膜近傍の構造の一例を示す模式図である。
【0092】
配向膜606(または705)の一方側には液晶層11aが備えられ、他方側には共通電極CTまたは画素電極PXが備えられている。液晶の配向膜606(または705)は、ポリイミド等に代表される有機化合物であることが配向規制力を付与するといった観点から望ましい。一般的に有機化合物を含む配向膜の屈折率は約1.6である。すなわち液晶層11aの屈折率とは0.1程度の差しかないが、共通電極CTまたは画素電極PXに用いられるITOとは0.5程度も差がある。
【0093】
本発明の実施形態に係る液晶表示装置おいては、有機化合物を含む配向膜606(または705)に、屈折率を高める化学構造Dを導入する。化学構造Dの濃度を例えば図5Dに示すように、膜厚方向の位置z=0(配向膜606(または705)と液晶11aとの界面側)で高く(濃度C)、z=d(配向膜606(または705)と共通電極CT(または画素電極PX)との界面側)で低く(濃度C)することによって、液晶の配向性を損なうことなく傾斜屈折率分布層を有する配向膜606(または705)を形成することができる。なお、膜厚方向とは、配向膜の面に直行する方向であり、一方の配向膜606(または705)から他方の配向膜705(または606)に向かう方向である。
【0094】
このような傾斜屈折率分布層を有する配向膜においては、例えば図5Cに示すように、液晶層11aの最小屈折率nLCと、液晶層11aと配向膜606との界面における、配向膜606の屈折率nF2と、配向膜606と下地層との界面における、配向膜606の屈折率nF1と、配向膜606と下地層との界面における、下地層の屈折率nS2とは前述の式(I)の関係を有している。
【0095】
また、配向膜606においては、配向膜606の膜厚方向に、液晶層11aと配向膜606との界面から、配向膜606と下地層との界面にかけて屈折率が単調増加している。また、配向膜606においては、配向膜の膜厚方向に、液晶層11aと配向膜606との界面から、配向膜606と下地層との界面にかけて連続的に屈折率が単調増加していることは更に好ましい。
【0096】
傾斜屈折率分布を実現するためには、z=0からz=dに向けて、なだらかに屈折率分布が変調されることが望ましく、それは化学構造Dの濃度をなだらかに変調させることによって実現される。
【0097】
以下、化学構造Dを有するポリイミドを含む配向膜に関して具体的に説明する。化学構造Dは、液晶表示素子の配向膜としての諸特性、すなわち、液晶分子の配向規制力や、長時間駆動時の安定性、透明性、等の従来の配向膜が有している特性を保持しつつ、配向膜の屈折率を高める必要がある。即ち、1.8以上の高屈折率を有する薄膜層が介在している液晶表示装置においては、配向膜が、少なくとも1.7以上の高屈折率を有する部分と、1.5から1.6の低屈折率を有する部分と、を有している必要がある。高屈折率な高分子を実現する手段としては、例えば、ポリイミド高分子の場合、例えば下記技術文献3に紹介されているように、分子骨格内に硫黄原子Sを多数含むようなポリイミドを使うことで実現することが可能である。
【0098】
技術文献3:ポリイミド最近の進歩2009、ポリイミド研究会編、繊維工業技術振興会、90−92(2008)
【0099】
具体的には、スルフィド(―S―)、スルホキシド(―SO―)、スルホン(―SO―)、またはスルホン酸(―SOH)、スルフィン酸(―SOH)、及びこれらのエステル等、各種硫黄原子Sを含む構造をあげることができる。
【0100】
或いは、より重原子であるセレンSeを含む化学構造、具体的には、セレニィド(―Se―)、セレノキシド(―SeO―)、セレノン(―SeO―)、またはセレノン酸(―SeOH)、セレニィン酸(―SeOH)、及びこれらのエステル等、をあげることができる。
【0101】
或いは、より重原子であるテルルTeを含む化学構造、具体的にはテルリィド(―TeO―)、テルロキシド(―TeO―)、テルロン(―TeO―)、またはテルロン酸(―TeOH)、テルリィン酸(―TeOH)、及びこれらのエステル等、をあげることができる。
【0102】
更には、末端修飾基に、重元素ハロゲン原子、例えば塩素−Cl、臭素−Br、ヨウ素−I等を導入することでも、高屈折率な高分子を形成できる。このような高屈折率化に寄与できる化学構造Dはなるべく高密度に導入する方が高屈折率になるが、材料自身の光吸収特性や液晶分子配向能力等、その他の物性との両立性を見極めつつ、最適構造を決定する必要がある。
【0103】
より高屈折率な高分子を実現するためには、高屈折率で透明な無機微粒子、例えばITOや酸化亜鉛ZnO、酸化チタンTiO、酸化ジルコニウムZrO等の光の波長サイズ以下のナノ粒子を分散もしくは配位結合させた高分子も可能であるが、これらも液晶表示素子の配向膜としての他の特性を阻害しない場合に限られる。
【0104】
一方、低屈折率な有機化合物には、従来液晶表示素子で利用されているポリイミドを用いることが可能であり、例えば下記特許文献2に記載されているような各種ポリイミドを用いることが可能である。
【0105】
特許文献2:特許第4052308号
【0106】
これら高屈折率な有機化合物と低屈折率な有機化合物とを適当な比率で混合することにより、両者の中間的な屈折率を有する有機化合物を実現できる。それぞれ単独成分の有機化合物が持つ屈折率は、それぞれの単独薄膜を形成し、その薄膜の屈折率を既知の手法、例えばアッベ屈折率計、プリズムカップル法、等の手法を用いて評価することができる。
【0107】
中間の屈折率は、両者を均一に混合した薄膜を形成して、同様の手法で直接屈折率を評価すると共に、高屈折率な有機化合物に固有の化学構造Dに含まれる元素、例えばS等の濃度に着目して、その含有濃度と薄膜の屈折率との対応表を作成することで、任意の含有濃度の屈折率を内挿することができる。(多くの場合は、有機化合物の屈折率には加成則が成り立つ。)あるいは、形成された配向膜の両端部を切り出し、膜厚方向と垂直な光を配向膜の一方の端部から照射し、他の端部より照射される光の放射を観察することによって、屈折率の分布を確認することができる。
【0108】
これら有機化合物からなる高屈折率、及び低屈折率高分子が得られたとしても、それらを、高々100nmの膜厚しかない配向膜の膜厚方向に屈折率分布が実現されていることが必要である。例えば、高屈折率な高分子から、低屈折率な高分子にかけて、中間的な屈折率を有する有機化合物の混合物を複数調製し、高屈折率側から順次塗布積層することで、屈折率が徐々に変化する多層膜が実現できる場合がある。しかし、全体で100nmである場合には一層当たりの膜厚が10nmかそれ以下となり、均一な膜形成に難がある。また、多数回積層することは製造コストを著しく高くする。できれば、一回の塗布によって形成された薄膜中に自然に膜厚方向に化学構造Dの濃度分布が形成できれば望ましい。
【0109】
複数の有機化合物からなる混合物の場合、各成分の分子量の差や、相溶性の差で、自然に相分離構造ができる場合があるが、これでは膜厚方向に所望の屈折率分布ができる保証がない。
【0110】
或いは、特定の溶解性の差を利用して、早期に析出しやすい有機化合物が下地層側に、析出しにくい有機化合物が液晶層側に少しずつ分離するような有機化合物の組み合わせを選ぶことも可能である。
【0111】
或いは、一方の有機化合物に極性基、例えば水酸基(−OH)、カルボン酸基(−COOH)、スルホン酸基(−SOH)、アミノ基(−NH)、ニトロ基(−NO)、シアノ基(−CN)等を導入し、極性を適宜保有させ、極性の乏しい有機化合物との組み合わせによって、塗布乾燥の過程で、自然に膜厚方向に成分が分離されるような構造を形成することができる。その際、どの程度の大きな極性の差を持たせるか、例えば極性基単独での分子分極の大きさやその導入密度によって最適な極性差を設けることができる。同時に、塗布する前には均一の混合された溶液状態を形成する必要があるが、そのためには、例えばN−メチルピロリドン(NMP)とγ−ブチルラクトンと組み合わせた混合溶媒の溶解性、極性比率を最適化したものを使うことで実現できる。例えば、極性の高い成分を下地層側に先に析出させたい場合には、例えば下地層がITOの場合には、その表面の親水性を高めるような表面洗浄やUV/O処理、Oプラズマ処理等を施すことで実現できる。逆に極性の低い成分を下地層側に先に析出させたい場合には、その表面の疎水性を高めるような表面処理、SFプラズマ処理、シランカップリング剤処理等を施すことで実現できる。
【0112】
また、かかる特徴を有するポリイミド、或いはイミド化する前のポリアミド酸またはポリアミド酸エステルを合成するためには、通常の芳香族ポリイミドの合成手続きによって得ることができ、例えばピロメリット酸二無水物とp−フェニレンジアミンを有機溶媒中で反応させることで得ることができる。このうち、ポリアミド酸エステルをイミド化する前の前駆体として用いると、イミド化反応の逆過程の進行を抑制することができるという利点がある。
【0113】
或いは、ポリアミド酸エステルを合成することで、充分高分子量な前駆体を形成した後に、エステル解離反応させてからイミド化、或いはイミド化させてからエステル解離反応させることも、分子量の大きなポリイミドを得る場合には有効である。すなわち、配向膜606がポリアミド酸エステルを前駆体とするポリイミドで形成されていることは好適である。
【0114】
また、本発明のポリイミドからなる配向膜606、705を各種基板上に塗布する方法は、通常のポリイミド配向膜形成方法を用いることができる。例えば、所定の溶媒にポリイミド樹脂あるいはその前駆体であるポリアミド酸又はポリアミド酸エステル等を溶かした溶液(配向膜ワニス)をスピンコート法で塗布し、所定の条件で加熱して溶媒を気化し、イミド化反応を進行させることで、薄膜化できる。しかる後、各種配向化処理、例えば柔毛布による物理的摩擦でラビング処理、又は配向膜材料が光反応性基を有し、紫外線を照射する、所謂光配向処理をポリイミド薄膜表面に施すことで、液晶表示素子の配向膜としての液晶配向能を発現させることができる。
【0115】
また、配向膜606は、面内に光学的異方性を有することとしてもよい。配向膜の面内(配向膜内部)に光学異方性を付与する方法としては、前述の光配向処理や、例えば、配向膜606を一方向に延伸する、あるいは強い磁場をかけること等があげられる。配向膜606の面内に光学異方性が付与されることによって、液晶表示装置の画質の向上が期待される他、配向膜606の面内の光学的異方性軸の方向と、液晶層11aの配向規制方向とが同じであることによって、異方性に由来する光の透過損失を抑制することができ透過率向上にとって好ましい。
【0116】
また、共通電極CT及び/又は画素電極PXの表面の屈折率は、内部の屈折率より低いこととしてもよい。例えば共通電極CTの表面にOプラズマ処理等を施すことで、表面は酸化される。かかる場合、共通電極CTの内部の屈折率よりも表面の屈折率のほうが小さくなる。前述のように共通電極CTや画素電極PXには透明電極であるITOのスパッタ膜が用いられることが多く、その屈折率は約2.1と高いものである。共通電極CTや画素電極PXと接して備えられるものの屈折率が、共通電極CTや画素電極PXと比べて低く、その差が大きいときは、かかる処理を施すことによって屈折率の差を縮めることができ透過率向上にとって好ましい。
【0117】
また、本発明の実施形態に係る液晶表示装置において、配向膜606の液晶配向能が付与された領域は配向膜606表面から20nmまでの範囲にあることとしてもよい。また、配向膜606の液晶配向能が付与された領域は前記配向膜表面から20nmまでの範囲にわたって付与されていることとしてもよい。これよりも深い領域まで液晶配向能が付与された構造を有することで、配向膜全体の機械的強度が低下する問題が生ずる場合がある。かかる配向膜自身の機械的強度の低下は長期間にわたり液晶表示素子を駆動させた場合、初期の配向膜表面の配向方向を徐々に消失させ、液晶配向能の低下として表示特性を劣化させることとなる。
【0118】
このような表示劣化を防止するために、配向膜に液晶配向能が付与された後に化学的に架橋させることで、その機械的強度を増加させることは表示劣化を防止にとって有効である。すなわち、本発明の実施形態に係る液晶表示装置において、配向膜606は、液晶配向能が付与された後に、配向膜606を形成する化合物同士が架橋してなることとしてもよい。
【0119】
したがって、液晶配向能が付与された後の配向膜606は架橋性基を有し、架橋処理が施されることは好適である。例えば、前述の紫外線を照射されることによって液晶配向能が付与されている場合において、化学式(1)に示されるXがシクロブタン基を有する場合、紫外線の照射によってシクロブタン基は開裂しマレイミド基を生成する。配向膜を形成する化合物同士はマレイミド基を介して架橋を行うこととなる。また、化学式(1)に示される化合物中にエポキシ基等の熱反応性基を含むことによって、配向膜を形成する化合物同士はエポキシ基を介して架橋を行うこととなる。
【0120】
さらに、本発明の実施形態に係る液晶表示装置において、配向膜606の表示領域に対する被覆率が50%以上であることとしてもよい。すなわち、液晶表示装置の表示領域に対して、配向膜の被覆率が50%以上であるとき効果的に反射損失を抑制することができ透過率向上にとって好ましい。
【0121】
また、配向膜の表示領域に対する被覆率が60%以上であることは好適であり、配向膜の表示領域に対する被覆率が75%以上であることは更に好適である。
【0122】
有機化合物を主成分とする配向膜が所望の化学構造Dの分布構造を形成しているかどうかは以下の手法で確認することができる。まず、形成した薄膜が均一な膜であることは、膜面内については顕微鏡観察、SEM(Scanning Flectron Microscopy)観察、AFM(Atomic Force Microscopy)観察等により、均一か、或いはドメイン構造が形成されていないかを見ることによって確認することができる。
【0123】
その中で、化学構造Dの面内分布状態の均一性を見るためには、例えば化学構造Dに固有の硫黄元素Sに着目してSEM−EDX(Energy Dispersive X−ray spectrometry)等により、面内の元素マッピングを行うことで確認することができる。膜厚方向の薄膜構造については、薄膜の劈開やFIB(Focused Ion Beam Etching)等によって膜断面を露出させ、SEM観察、TEM(Transmission Electron Microscopy)観察によってドメイン構造の有無を確認することができる。
【0124】
更に、化学構造Dの膜厚方向の濃度分布については、例えば化学構造Dに固有の硫黄元素Sに着目してイオンビームスパッタしつつオージェ分光することで確認することができる。これら各種分析手法により、得られた薄膜が相分離せず均一であるかどうか、化学構造Dの濃度分布が所望の状態にあるかどうかを確認することができる。そして、化学構造Dの濃度分布から、膜厚方向の屈折率分布を推定することが可能である。
【0125】
更に、このような高分子混合物を原料とし、膜厚方向の化学構造Dの濃度分布を形成した配向膜の最下部と最上部の屈折率については、以下の方法で確認することができる。例えば、配向膜の下地層が透明電極ITOの場合、ITOと同等の屈折率を有するガラス基板上に同様のプロセスでITOのベタ膜を形成し、実際の液晶表示装置の場合と同じ表面処理を施した上に本発明の配向膜を形成する。また、リファレンスとしては配向膜を形成しないものも用意する。
【0126】
最初に、配向膜を形成しない試料について、ガラス基板側から光を入射した時の下地層と空気界面での全反射角θS2を測定し、スネルの法則から、下地層の最上部での屈折率nS2=1/sinθS2を求める。次に、配向膜を形成した試料を用意し、配向膜表面にカーボンスパッタコートすることで、配向膜最上部の光の反射を防止する。これに基板側から光を入射して下地層と配向膜との界面での反射光を測定し、この際入射面に平行なp偏光成分と垂直なs偏光成分に分けて測定し、p偏光成分が0となるブリュースター角θB1を測定する。この時、配向膜の最下部での屈折率nF1=nS2tanθB1で求めることができる。両者が一致した時は反射が起こらない。
【0127】
一方、配向膜の最上部での屈折率nF1を求めるには、配向膜を形成した試料を用意し、今度はITO側のガラス基板の底面にカーボンスパッタコートして界面反射を防止し、屈折率nRGの参照ガラス基板を、マッチングオイルを介在させて配向膜表面と接合させる。参照ガラス基板側から光を入射して、同様の手法でp偏光成分が0となるブリュースター角θRGを測定する。この時、配向膜の最上部での屈折率nF2=nRGtanθRGで求めることができる。両者が一致した時は反射が起こらない。
【0128】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0129】
[実施例1]
最初に、配向膜として、下記化学式(1)で示される化学構造のポリイミドを各種合成した。
【0130】
【化1】

【0131】
上記化学式(1)で示される化学構造中のXは下記化学式(X1)、(X2)で示される二種である。
【0132】
【化2】

【0133】
ポリイミドの合成において、ピロメリット酸を原料として用いた場合に上記化学構造を含むポリイミドを形成することができる。
【0134】
【化3】

【0135】
ポリイミドの合成において、シクロブタンテトラカルボン酸を原料として用いた場合に上記化学構造を含むポリイミドを形成することができる。
【0136】
なお、上記化学式(1)で示される化学構造中のXは下記化学式(X3)で示されるものを用いることも好適である。
【0137】
【化4】

【0138】
ポリイミドの合成において、1,3ジメチルシクロブタンテトラカルボン酸を原料として用いた場合に上記化学構造を含むポリイミドを形成することができる。
【0139】
また、上記化学式(1)で示される化学構造中のAは下記化学式(Aa1)から(Ac2)で示される九種である。
【0140】
【化5】

【0141】
【化6】

【0142】
【化7】

【0143】
【化8】

【0144】
【化9】

【0145】
【化10】

【0146】
【化11】

【0147】
【化12】

【0148】
【化13】

【0149】
化学式(Aa1)乃至(Aa5)で示される化学骨格Aは、液晶配向能が高い分子骨格を有する。また、化学式(Ab1)乃至(Ab2)で示される化学骨格Aは、高屈折率を付与する硫黄元素が含まれているものである。また、極性を付与した分子骨格として化学式(Ac1)乃至(Ac2)で示されるものを選択した。
【0150】
これらの材料を組み合わせたポリイミドを既存の合成方法によってイミド化前の前駆体ポリアミド酸を合成した。通常の屈折率で極性のないポリイミドについては、X=X1、X2とA=Aa1〜Ac5の組み合わせで、原料となるテトラカルボン酸とフェニルジアミンをX:A=1:1の割合で混合して、ポリアミックス酸を合成した。(この組成からなるポリイミドを記号P−X−A、但し、X=1,2とA=a1〜a5で示すことにする。)また、高屈折率で極性のあるポリイミドについては、X=X1、X2とA=Ab1、Ab2とA´=Ac1、Ac2の組み合わせで、原料となるテトラカルボン酸とフェニルジアミンをX:(A+A´)=1:1の割合で混合して、ポリアミックス酸を合成した。AとA´の比率はA+A´=100%とした時、A=0,20,40,60,80,100%のものを作製した。(この組成からなるポリイミドを記号P−X−AA´−n、但し、X=1,2とA=b1〜b2、A´=c1〜c2、n=0,20,40,60,80,100で示すことにする。)得られたポリマの分子量はGPC法により決定し、スチレン換算の数平均分子量を求めた。得られたポリアミド酸は、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン(GBL)、およびブチルセロソルブ(BC)の混合溶媒に溶解したものを配向膜ワニスとした。
【0151】
次に、配向膜自身の物性評価用試料を以下の手順で作製した。基板にはITO透明電極付ガラス基板を用い、事前に十分な洗浄、UV/O照射した。これにスピンコートで前記配向膜ワニスをスピン塗布し、直ちに80℃、1分間仮乾燥させた後、230℃、1時間、イミド化焼成した。ここで、ワニスの濃度とスピンコートの回転数は、このイミド化焼成後、膜厚200nm程度となる条件を選んだ。また、得られたポリイミド薄膜の屈折率はアッベの屈折計を用いて評価し、白色光源を分光して波長380〜780nmの範囲で測定した平均値を薄膜の屈折率とした。
【0152】
表1の(a)から(e)には、得られたポリイミド薄膜の分子量、及び屈折率の一覧を示した。通常の屈折率で極性基を含まないポリイミドでは屈折率は1.5〜1.6程度であるが、高屈折率で極性基を含むポリイミドでは屈折率は1.7以上あることがわかる。
【0153】
【表1(a)】

【0154】
【表1(b)】

【0155】
【表1(c)】

【0156】
【表1(d)】

【0157】
【表1(e)】

【0158】
次に、これらのポリイミドを組み合わせてブレンドポリマとなし、同様の手順でスピンコート、乾燥、イミド化焼成を行った結果を示す。先に示した低屈折率成分のポリイミドと、高屈折率成分のポリイミドを、それぞれワニス状態で、1:1の重量比で混合したものを、ブレンドポリマ用のワニスとした。同様の条件で薄膜化した後、まずSEMやAFM等で表面形態観察を行い、相分離して海島構造が観察されたものは不均一状態(記号:I)、特にドメインが観察されなかったものを均一状態(記号:H)とした。次に、均一状態の薄膜については、深さ方向のオージェ分光を行い、硫黄元素Sの濃度プロファイルが図5(b)のごとく、ITO側から膜表面側にかけてなだらかに濃度減少(連続的に単調減少)している場合を傾斜状態(記号:G)とした。表3から5には、その評価結果の一覧を示した。
【0159】
このうち、各表の材料は下記(1)〜(5)のような組み合わせである。
(1)表1(a)〜(d):共通材料として、低屈折率成分=P−1−a1〜a5及びP−2−a1〜a5、
(2)表2:高屈折率成分=P−1−b1c1−0〜100、P−2−b1c1−0〜100
(3)表3:高屈折率成分=P−1−b1c2−0〜100、P−2−b1c2−0〜100
(4)表4:高屈折率成分=P−1−b2c1−0〜100、P−2−b2c1−0〜100
(5)表5:高屈折率成分=P−1−b2c2−0〜100、P−2−b2c2−0〜100
【0160】
【表2(a)】

【0161】
【表2(b)】

【0162】
【表3(a)】

【0163】
【表3(b)】

【0164】
【表4(a)】

【0165】
【表4(b)】

【0166】
【表5(a)】

【0167】
【表5(b)】

【0168】
このようにして、材料の様々な組み合わせを探索すると、傾斜濃度分布が実現できる条件(記号:HG)が見出される。しかし、各表の中には、全く条件が見出されない場合(例えば表2(a))や、かなりの頻度で見出される場合(例えば表3(a))等、様々である。つまり、単純に高屈折率成分と低屈折率成分とを組み合わせる、或いは非極性成分と高極性成分とを組み合わせるだけで、所望の傾斜濃度分布を有する配向膜は実現しがたい。
【0169】
次に、これら傾斜濃度分布が実現できた条件のポリイミド配向膜を用いて、IPS方式の液晶表示素子を作製し、その透過率を評価した結果を示す。X−X1のポリマについてはラビング配向処理(レーヨン製ラビング布、回転数1500rpm、送り速度32.5mm/min、切り込み0.4mm)を室温大気中で施した。また、X=X2のポリマについては光配向処理(基板面に対して垂直入射の偏光紫外線照射、低圧水銀光源で波長230〜300nmの光を選択照射、照射時基板温度200℃、照射エネルギ2J)を行った。
【0170】
液晶パネル作製は、通常の製造プロセスにおいて、配向膜材料を本発明の配向膜材料を採用する以外は同一のプロセスにて製造する。例えば、IPS方式の液晶表示装置の代表的な製造方法の場合、事前に配向処理まで終えたアクティブマトリクス基板6と対向基板7とを張り合わせて液晶材料を封入してセル組みするが、この時、アクティブマトリクス基板6の配向膜606の初期配向方向と、対向基板7の配向膜705の初期配向方向とは、互いにほぼ並行になるようにしておく。
【0171】
また、封入する液晶材料は、たとえば、誘電異方性Δεが正で、その値が10.2(1kHz、20℃)であり、屈折率異方性Δnが0.075(波長590nm、20℃)、ねじれ弾性定数K2が7.0pN、ネマチック−等方相転移温度T(N−I)が約76℃、比抵抗が1×10+13Ωcmのネマチック液晶組成物Aを用いる。またこのとき、アクティブマトリクス基板6と対向基板7は、液晶層11aの厚み(セルギャップ)が柱状スペーサ10の高さとほぼ同じ値、たとえば、4.2μmになるように張り合わせる。このような条件で製造された液晶表示パネル1のリタデーション(Δn・d)は、約0.31μmである。リタデーションΔn・dは、0.2μm≦Δn・d≦0.5μmの範囲が望ましく、この範囲を超えると白表示が色づいてしまうなどの問題がある。
【0172】
アクティブマトリクス基板6と対向基板7とを張り合わせて液晶材料を封入したら、たとえば、ガラス基板601,701の外周の不要な部分(余白部分)を切断除去し、偏光板9a,9bを張り合わせる。偏光板9a,9bを張り合わせるときには、一方の偏光板の偏光透過軸をアクティブマトリクス基板6の配向膜606および対向基板7の配向膜705の初期配向方向とほぼ平行とし、他方の偏光板の偏光透過軸をそれに直交するようにする。その後、第1の駆動回路2、第2の駆動回路3、制御回路4、バックライト5などを接続してモジュール化すると、実施例1の液晶表示パネル1を有する液晶表示装置が得られる。
【0173】
なお、実施例1の液晶表示パネル1は、画素電極PXと共通電極CTとの電位差が小さい場合は暗表示(低輝度表示)になり、画素電極PXと共通電極CTとの電位差が大きい場合は明表示(高輝度表示)になるノーマリークローズ特性にしている。他の方式の液晶表示装置の場合も、それぞれの方式での通常の製造を行い、暗表示と明表示が可能な状態にする。
【0174】
この液晶表示素子の透過率は白色冷陰極管バックライトを光源に用い、液晶表示素子を透過させた光を分光せずに光量計で取り込み、光の透過率をパーセントで示した。また、比較のため、各条件の低屈折率成分単独、及び高屈折率成分単独で配向膜を形成した時の透過率も測定した。表6には、その評価結果を示した。いずれの組み合わせでも、低屈折率単独、高屈折率単独の場合に比べて、傾斜濃度膜の透過率は向上していることがわかる。
【0175】
【表6】

【0176】
以上のように、傾斜屈折率を有するポリイミド配向膜では、液晶表示装置の光透過率を向上させる効果があることがわかった。
【0177】
[実施例2]
次に、実施例1で示した配向膜材料を用いて、図3に示したFFS方式の液晶表示素子を作製し、光透過率を評価した結果について説明する。FFS方式はその素子構造がIPS方式に似た点があり、上下の下地基板の片側にのみ画素電極PXと共通電極CTが形成されており、液晶はその間の電場の有無に応じて、面内で回転する。従って、電場が印加されていない初期の配向状態もIPS方式と同様であり、その配向膜606(及び705)に施すべき配向方向同様にすればよく、用いる液晶も、誘電異方性Δεが正のものを使うことができる。
【0178】
表7には、その評価結果を示した。いずれの組み合わせでも、低屈折率単独、高屈折率単独の場合に比べて、傾斜濃度膜の透過率は向上していることがわかる。
【0179】
【表7】

【0180】
以上のように、傾斜屈折率を有するポリイミド配向膜では、液晶表示装置の光透過率を向上させる効果があることがわかった。
【0181】
[実施例3]
次に、実施例1で示した配向膜材料を用いて、図4に示したVA方式の液晶表示素子を作製し、光透過率を評価した結果について説明する。VA方式はIPS方式やFFS方式とは異なり、上下の下地基板に画素電極PXと共通電極CTが形成されており、誘電異方性Δεが負であるVA方式用の液晶材料が用いられ、電場が印加されていない初期の配向状態は液晶分子が基板面に対してほぼ垂直となるように配向処理されねばならない。このため、通常のラビングを用いることが困難である。ここでは、下記技術文献4を参考に、斜め方向から偏光紫外線照射した光配向処理を行った。
【0182】
技術文献4:P.Gass,H.Stevenson,R.Bay,H.Walton,N.Smith,S.Terashita,and M.tillin:垂直配向LCD用パターン化光配向:シャープ技報第85号(2003)24−29
【0183】
表8には、その評価結果を示した。いずれの組み合わせでも、低屈折率単独、高屈折率単独の場合に比べて、傾斜濃度膜の透過率は向上していることがわかる。
【0184】
【表8】

【0185】
以上のように、傾斜屈折率を有するポリイミド配向膜では、液晶表示装置の光透過率を向上させる効果があることがわかった。
【0186】
また、上記実施例1乃至3においては配向膜を構成する有機化合物としてポリイミドを複数種用いたが、たとえば他のポリマを混合することや、ポリイミド以外の有機化合物のみからなる配向膜を形成することも可能である。
【符号の説明】
【0187】
1 液晶表示パネル、2 第1の駆動回路、3 第2の駆動回路、4 制御回路、5 バックライト、6 アクティブマトリクス基板、601 ガラス基板、602 第1の絶縁膜、603(TFT素子の)半導体層、604 第2の絶縁膜、605 層間絶縁膜、606 配向膜、607 ソース電極、608 導電層、609 突起形成部材、609a (突起形成部材の)半導体層、609b(突起形成部材の)導電層、610 透明層、7 対向基板、701 ガラス基板、702 ブラックマトリクス、703R,703G,703B カラーフィルタ、704 オーバーコート層、705 配向膜、710 透明層、8 シール材、9a,9b 偏光板、10 柱状スペーサ、11 液晶分子、11a,LC 液晶層、12 電界(電気力線)、GL 走査信号線GL(ゲート線)、DL 映像信号線(ドレイン線)、DA 表示領域、Tr TFT素子、PX 画素電極、CT 共通電極(対向電極)、CL 共通化配線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明な第一の基板および第二の基板と、
前記第一の基板と前記第二の基板との間に配置された液晶層と、
前記第一の基板および前記第二の基板の少なくとも一方の基板に形成され、前記液晶層に電界を印加するための電極群と、
前記電極群に接続された複数のアクティブ素子と、
前記第一の基板および前記第二の基板の少なくとも一方の基板に配置された、一方の面で前記液晶層と接する配向膜と、
前記第一の基板および前記第二の基板の少なくとも一方の基板において、前記配向膜の他方側の面と接する下地層と、
を備える液晶表示装置において、
前記配向膜は有機化合物を含み、
前記配向膜の屈折率は、前記配向膜と前記液晶層との界面から、前記配向膜と前記下地層との界面にかけて単調増加し、
前記液晶層の最小屈折率nLCと、
前記液晶層と前記配向膜との界面における、前記配向膜の屈折率nF2と、
前記配向膜と前記下地層との界面における、前記配向膜の屈折率nF1と、
前記下地層の屈折率nS2と、
は下記式(I)の関係を有する、
【数1】

ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記下地層は、可視光を透過する透明層であり、
前記電極群は共通電極および画素電極を含み、
前記下地層の前記配向膜に接する面と反対側の面は、前記共通電極および前記画素電極のいずれか一方の電極と接している、
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記下地層の屈折率nS2と、
前記下地層と前記一方の電極との界面における、前記一方の電極の屈折率nPEと、
は下記式(II)の関係を有する、
【数2】

ことを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記下地層の前記配向膜に接する面と反対側の前記面の一部は前記一方の電極と接しており、他の一部は層間絶縁膜と接しており、
前記下地層の屈折率nS2と、
前記層間絶縁膜の屈折率nLIと、
は下記式(III)の関係を有する、
【数3】

ことを特徴とする請求項2または3いずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記電極群は共通電極および画素電極を含み、
前記下地層は、前記配向膜の前記液晶層に接する面と反対側の面に接する層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜の前記配向膜側の面の一部に備えられた、前記配向膜側に突出する、前記共通電極および前記画素電極のいずれか一方の電極と、からなり、
前記配向膜は、前記下地層上に形成されており、
前記配向膜の膜厚は、前記一方の電極の膜厚より大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記一方の電極の、表面の屈折率は、内部の屈折率より低い、
ことを特徴とする請求項2乃至5いずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記配向膜は、面内に光学的異方性を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至7いずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記配向膜の面内の光学的異方性軸の方向と、液晶層の配向規制方向とが同じである、
ことを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記配向膜は、複数種の前記有機化合物を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至8いずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記配向膜は、極性の異なる複数種の前記有機化合物を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至9いずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記配向膜は、屈折率の異なる複数種の前記有機化合物を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至10いずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記配向膜を構成する複数種の前記有機化合物のうち、最も屈折率が高い前記有機化合物の可視域における屈折率が1.7以上である、
ことを特徴とする請求項11に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記配向膜がポリアミド酸エステルを前駆体とするポリイミドで形成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至12いずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項14】
前記配向膜は、光配向処理によって液晶配向能が付与されている、
ことを特徴とする請求項1乃至13いずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項15】
前記配向膜は、ラビング処理によって液晶配向能が付与されている、
ことを特徴とする請求項1乃至13いずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項16】
前記配向膜の液晶配向能が付与された領域は前記配向膜表面から20nmまでの範囲にある、
ことを特徴とする請求項1乃至15いずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項17】
前記配向膜は、液晶配向能が付与された後に、前記配向膜を形成する化合物同士が架橋している、
ことを特徴とする請求項1乃至16いずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項18】
前記配向膜の表示領域に対する被覆率が50%以上である、
ことを特徴とする請求項1乃至17いずれか一項に記載の液晶表示装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【公開番号】特開2011−191571(P2011−191571A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58509(P2010−58509)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(506087819)パナソニック液晶ディスプレイ株式会社 (443)
【Fターム(参考)】