説明

液晶表示装置

【課題】光配向処理が行われた配向膜を有するTFT基板と対向基板を接着する樹脂を、紫外線を用いて硬化させる工程において、該紫外線に対する遮光マスクを用いることなく、該紫外線によって配向膜がダメージを受けることを防止する。
【解決手段】対向基板200のブラックマトリクス201とブラックマトリクス201の間には紫外線吸収層210が形成されている。TFT基板100と対向基板200の周辺はシール材150によって封止されている。シール材150は紫外線硬化樹脂であり、硬化させるために対向基板200の側から紫外線を照射する。紫外線吸収層210は配向膜113を劣化させる300nm以下の波長に対する吸収が大きいので、シール材硬化のための紫外線によって配向膜113がダメージを受けることを防止することが出来る。これによって、表示領域に紫外線を遮光する遮光マスクの配置を省略することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,液晶表示装置に係り,特に配向膜に光の照射で配向制御能を付与した液晶表示パネルを具備した液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では画素電極および薄膜トランジスタ(TFT)等がマトリクス状に形成されたTFT基板と、TFT基板に対向して、ブラックマトリクスあるいはオーバーコート膜等が形成された対向基板が設置され、TFT基板と対向基板の間に液晶が挟持されている。そして液晶分子による光の透過率を画素毎に制御することによって画像を形成している。
【0003】
液晶表示装置はフラットで軽量であることから、TV等の大型表示装置から、携帯電話やDSC(Digital Still Camera)等、色々な分野で用途が広がっている。一方、液晶表示装置では視野角特性が問題である。視野角特性は、画面を正面から見た場合と、斜め方向から見た場合に、輝度が変化したり、色度が変化したりする現象である。視野角特性は、液晶分子を水平方向の電界によって動作させるIPS(In Plane Switching)方式が優れた特性を有している。
【0004】
液晶表示装置に使用する配向膜を配向処理すなわち配向制御能を付与する方法として,従来技術としてラビングで処理する方法がある。このラビングによる配向処理は,配向膜を布で擦ることで配向処理を行うものであるが、一方、配向膜に非接触で配向制御能を付与する光配向法という手法がある。IPS方式はプレティルト角が小さいほうが性能的には優れているので、プレティルト角が原理的に発生しない光配向法が有利である。
【0005】
TFT基板と対向基板とは周辺でシール材を用いて接着するが、このシール材は紫外線硬化樹脂を用いることが多い。シール材を硬化するための紫外線が、配向膜が形成されている表示領域に照射されると、紫外線によって配向膜が劣化するという問題がある。従来は、シール材に紫外線を照射する際、紫外線が表示領域に照射されないよう遮光マスクを使用していた。
【0006】
しかし、このようなマスクを使用しても、紫外線が回り込み、表示領域周辺の配向膜を劣化させるという問題があった。「特許文献1」には、対向基板において、表示領域の外側を囲むように、紫外線をカットするバンドパスフィルタを形成し、前記遮光マスクとバンドフィルタを組み合わせて表示領域における配向膜や液晶を紫外線から保護する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−221700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のように、シール材を紫外線硬化させる際に、表示領域を覆うように遮光マスクを配置する構成は、露光における遮光マスクを所定の位置に合わせる必要があり、その分工程が増える。また、遮光マスクを種々の大きさの品種毎に準備しておく必要がある。
【0009】
さらに、「特許文献1」のように、対向基板において、表示領域の周辺にバンドパスフィルタを形成する構成は、バンドパスフィルタとシール材の重なりの問題を生じ、バンドパスフィルタによるシール材の硬化への影響を考慮する必要がある。あるいは、バンドパスフィルタとシール材または周辺のブラックマトリクス等との接着性等についての注意が必要になる。また、バンドパスフィルタを形成するにしても、遮光マスクは必要である。
【0010】
本発明の課題は、光配向による配向膜と、シール材に紫外線硬化樹脂を用いた液晶表示装置において、シール材を紫外線硬化する際に、紫外線の遮光マスクを使用する必要の無い液晶表示装置の構成を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を克服するものであり、主な手段は次のとおりである。すなわち、主な手段の第1は、配向膜を有するTFT基板と、配向膜を有する対向基板がシール材によって貼り付けられ、内部に液晶を封入した液晶表示装置であって、前記対向基板は、ブラックマトリクスとブラックマトリクスの間に紫外線吸収層が形成され、前記ブラックマトリクスと前記紫外線吸収層はオーバーコート膜で覆われ、前記オーバーコート膜は前記配向膜で覆われており、前記シール材は紫外線硬化樹脂であり、波長300nmの紫外線に対する前記紫外線吸収層の透過率は前記オーバーコート膜の透過率よりも小さく、波長340nmの紫外線に対する前記紫外線吸収層の透過率は、前記オーバーコート膜の透過率よりも大きいことを特徴とする液晶表示装置である。
【0012】
主な手段の第2は、配向膜を有するTFT基板と、配向膜を有する対向基板がシール材によって貼り付けられ、内部に液晶を封入した液晶表示装置であって、前記対向基板は、ブラックマトリクスとブラックマトリクスの間および前記ブラックマトリクスの上に紫外線吸収層が形成され、前記紫外線吸収層の上に配向膜が形成され、前記TFT基板は、TFT回路とこれを覆う有機パッシベーション膜によって覆われており、前記有機パッシベーション膜の上に対向電極、層間絶縁膜、画素電極がこの順で形成され、または、前記有機パッシベーション膜の上に画素電極、層間絶縁膜、対向電極がこの順で形成され、前記画素電極または前記対向基板の上に前記配向膜が形成され、前記シール材は紫外線硬化樹脂であり、波長300nmの紫外線に対する前記紫外線吸収層の透過率は前記有機パッシベーション膜の透過率よりも小さく、波長340nmの紫外線に対する前記紫外線吸収層の透過率は、前記有機パッシベーション膜の透過率よりも大きいことを特徴とする液晶表示装置である。
【0013】
主な手段の第3は、配向膜を有するTFT基板と、配向膜を有する対向基板がシール材によって貼り付けられ、内部に液晶を封入した液晶表示装置であって、前記対向基板は、ブラックマトリクスとブラックマトリクスの間にカラーフィルタが形成され、前記ブラックマトリクスと前記カラーフィルタはオーバーコート膜で覆われ、前記オーバーコート膜は前記配向膜で覆われており、前記TFT基板は、TFT回路とこれを覆う紫外線吸収層によって覆われており、前記紫外線吸収層の上に対向電極、層間絶縁膜、画素電極がこの順で形成され、または、前記紫外線吸収層の上に画素電極、層間絶縁膜、対向電極がこの順で形成され、前記画素電極または前記対向基板の上に前記配向膜が形成され、前記シール材は紫外線硬化樹脂であり、波長300nmの紫外線に対する前記紫外線吸収層の透過率は前記オーバーコート膜の透過率よりも小さく、波長340nmの紫外線に対する前記紫外線吸収層の透過率は、前記オーバーコート膜の透過率よりも大きいことを特徴とする液晶表示装置である。
【0014】
主な手段の第4は、配向膜を有するTFT基板と、配向膜を有する対向基板がシール材によって貼り付けられ、内部に液晶を封入した液晶表示装置であって、前記対向基板は、ブラックマトリクスとブラックマトリクスの間に紫外線吸収層が形成され、前記ブラックマトリクスと前記紫外線吸収層はオーバーコート膜で覆われ、前記オーバーコート膜は前記配向膜で覆われており、前記TFT基板は、TFT回路とこれを覆う紫外線吸収層によって覆われており、前記紫外線吸収層の上に対向電極、層間絶縁膜、画素電極がこの順で形成され、または、前記紫外線吸収層の上に画素電極、層間絶縁膜、対向電極がこの順で形成され、前記画素電極または前記対向基板の上に前記配向膜が形成され、前記シール材は紫外線硬化樹脂であり、波長300nmの紫外線に対する前記紫外線吸収層の透過率は前記オーバーコート膜および前記有機パッシベーション膜の透過率よりも小さく、波長340nmの紫外線に対する前記紫外線吸収層の透過率は、前記オーバーコート膜および前記有機パッシベーション膜の透過率よりも大きいことを特徴とする液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、配向膜を有するTFT基板と対向基板を紫外線硬化型シール材によって封止するために、紫外線を照射する際、表示領域には、300nm以下の波長の紫外線を吸収する紫外線吸収層が形成されているので、配向膜が紫外線によってダメージを受けることを防止することが出来る。したがって、紫外線照射工程において、表示領域を紫外線から保護するための遮光マスクを省略することが出来るので、液晶表示装置の製造コストを低減することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1の液晶表示装置の断面図である。
【図2】本発明の液晶表示装置の製造プロセスである。
【図3】紫外線吸収層の波長に対する紫外線透過特性である。
【図4】実施例1と従来例の液晶表示装置の紫外線透過特性の比較である。
【図5】実施例2の液晶表示装置の断面図である。
【図6】実施例2および実施例1と従来例の液晶表示装置の紫外線透過特性の比較である。
【図7】実施例3の液晶表示装置の断面図である。
【図8】実施例4の液晶表示装置の断面図である。
【図9】IPS方式液晶表示装置の表示領域の断面図である。
【図10】IPS方式液晶表示装置の画素電極の例を示す平面図である。
【図11】IPS方式液晶表示装置の表示領域およびシール部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例を説明する前に、本発明が適用されるIPS方式の液晶表示装置の構成について説明する。図9はIPS方式の液晶表示装置の表示領域における構造を示す断面図である。図9の構造は、現在広く使用されている構造であって、簡単に言えば、平面ベタで形成された対向電極108の上に絶縁膜109を挟んで櫛歯状の画素電極110が形成されている。そして、画素電極110と対向電極108の間の電圧によって液晶分子301を回転させ、画素毎に液晶層300の光の透過率を制御することにより画像を形成するものである。
【0018】
図9において、ガラスで形成されるTFT基板100の上に、ゲート電極101が形成されている。ゲート電極101は走査線と同層で形成されている。ゲート電極101はAlNd合金の上にMoCr合金が積層されている。
【0019】
ゲート電極101を覆ってゲート絶縁膜102がSiNによって形成されている。ゲート絶縁膜102の上に、ゲート電極101と対向する位置に半導体層103がa−Si膜によって形成されている。a−Si膜はTFTのチャネル部を形成するが、チャネル部を挟んでa−Si膜上にドレイン電極104とソース電極105が形成される。なお、a−Si膜とドレイン電極104あるいはソース電極105との間には図示しないn+Si層が形成される。半導体層103とドレイン電極104あるいはソース電極105とのオーミックコンタクトを取るためである。
【0020】
ドレイン電極104は映像信号線が兼用し、ソース電極105は画素電極110と接続される。ドレイン電極104もソース電極105も同層で同時に形成される。本実施例では、ドレイン電極104あるいはソース電極105はMoCr合金で形成される。ドレイン電極104あるいはソース電極105の電気抵抗を下げたい場合は、例えば、AlNd合金をMoCr合金でサンドイッチした電極構造が用いられる。
【0021】
TFTを覆って無機パッシベーション膜106がSiNによって形成される。無機パッシベーション膜106はTFTの、特にチャネル部を不純物401から保護する。無機パッシベーション膜106の上には有機パッシベーション膜107が形成される。有機パッシベーション膜107はTFTの保護と同時に表面を平坦化する役割も有するので、厚く形成される。厚さは1μmから4μmである。
【0022】
有機パッシベーション膜107の上には対向電極108が形成される。対向電極108は透明導電膜であるITO(Indium Tin Oxide)を表示領域全体にスパッタリングすることによって形成される。すなわち、対向電極108は面状に形成される。対向電極108を全面にスパッタリングによって形成した後、画素電極110とソース電極105を導通するためのスルーホール111部だけは対向電極108をエッチングによって除去する。
【0023】
対向電極108を覆って層間絶縁膜109がSiNによって形成される。層間絶縁膜109が形成された後、エッチングによってスルーホール111を形成する。この層間絶縁膜109をレジストにして無機パッシベーション膜106をエッチングしてスルーホール111を形成する。その後、層間絶縁膜109およびスルーホール111を覆って画素電極110となるITOをスパッタリングによって形成する。スパッタリングしたITOをパターニングして画素電極110を形成する。画素電極110となるITOはスルーホール111にも被着される。スルーホール111において、TFTから延在してきたソース電極105と画素電極110が導通し、映像信号が画素電極110に供給されることになる。
【0024】
図10に画素電極110の1例を示す。画素電極110は、櫛歯状の電極である。櫛歯と櫛歯の間にスリット112が形成されている。図示しない層間絶縁膜109を挟んで、画素電極110の下方には、平面状の対向電極108が形成されている。画素電極110に映像信号が印加されると、スリット112を通して対向電極108との間に生ずる電気力線によって液晶分子301が回転する。これによって液晶層300を通過する光を制御して画像を形成する。
【0025】
図9に戻り、画素電極110の上には液晶分子301を配向させるための配向膜113が形成されている。図9において、液晶層300を挟んで対向基板200が設置されている。図9はモノクロタイプの液晶表示装置なので、対向基板200の内側には、ブラックマトリクス201およびこれを覆うオーバーコート膜202が形成されている。ブラックマトリクス201はコントラストを向上させるためであるが、TFTに対する遮光膜としての役割も有している。オーバーコート膜202は表面の凹凸を緩和させるためである。オーバーコート膜202の上には、液晶の初期配向を決めるための配向膜113が形成されている。対向基板側の配向膜113もTFT基板側の配向膜113と同様に、光配向による配向処理が施されている。
【0026】
図9では図示していないが、TFT基板100と対向基板200との間隔を規定するための、樹脂で形成された柱状スペーサが対向基板側に形成される。なお、図9はモノクロ液晶表示装置なので、カラーフィルタは存在しない。カラー液晶表示装置の場合は、図9におけるブラックマトリクス201の両側に赤、緑、青等のカラーフィルタが形成される。
【0027】
図9は有機パッシベーション膜107の上に対向電極108が形成され、その上に層間絶縁膜109を挟んで櫛歯状の画素電極110が配置される構成であるが、この逆に、有機パッシベーション膜107の上に画素電極110を形成し、その上に層間絶縁膜109を挟んで櫛歯状の対向電極108が配置される構成のIPSも存在する。本発明はいずれのタイプのIPSに対しても適用することが出来る。
【0028】
図11は、図9で説明した光配向を用いたIPS方式の液晶表示装置の表示領域およびシール部の断面図である。図11は、図9におけるゲート電極101から無機パッシベーション膜106までを一括してTFT回路120として表現している。図11において、TFT基板100の上にTFT回路120が形成され、その上に有機パッシベーション膜107が形成され、有機パッシベーション膜107の上に平面ベタで形成されたコモン電極108が形成されている。コモン電極108の上に層間絶縁膜109を挟んで櫛歯状の画素電極110が形成され、画素電極110は配向膜113によって覆われている。
【0029】
図11において、対向基板200にはブラックマトリクス201が形成され、ブラックマトリクス201を覆ってオーバーコート膜202が形成され、オーバーコート膜202の上には配向膜113が形成されている。また、対向基板200とTFT基板100との間には柱状スペーサ130が形成されている。
【0030】
図11において、対向基板200とTFT基板100の周辺部にはシール材150が形成され、シール材150の内側に液晶層300が封止されている。図11において、シール材150はTFT基板100の層間絶縁膜109と対向基板200のオーバーコート膜202の間に形成されており、シール材150が形成された部分には配向膜113は存在しない。配向膜113はシール材150の接着性を低下させる性質があるからである。
【0031】
図11において、配向膜113は300nm以下の紫外線によって光配向され、シール材150は、340nm以上の紫外線によって硬化する。シール材150を硬化させるときは、すでに配向膜113の光配向処理は終わっている。配向処理の終わった配向膜113に対して再び300nm以下の紫外線を加えると配向膜113が劣化する。
【0032】
これを防止するには、シール材150の紫外線硬化をする紫外線に対してフィルタをかけ、300nm以下の波長をカットした紫外線を用いるか、紫外線遮光マスクを用いて、配向膜113に紫外線が照射されることを防止すればよい。しかし、紫外線に対してフィルタを形成することは製造コストがかかるし、フィルタは紫外線によって劣化するので、フィルタの頻繁な交換が必要となる。一方、遮光マスクを用いる方法は、「本発明の課題」で述べたような問題がある。
【0033】
以下に述べる実施例で説明する本発明は、紫外線の光源に対してフィルタを用いる必要がなく、また、シール材150の紫外線硬化の際、遮光マスクを用いることなく、配向膜113の紫外線による劣化を防止する構成を与えるものである。
【実施例1】
【0034】
図1は実施例1における液晶表示装置の構造を示す断面図であり、左側は表示領域の断面図で右側がシール部の断面図である。図1において、TFT基板100の上にTFT回路120が形成されている。TFT回路120は、図9におけるゲート電極101から無機パッシベーション膜106までの構成を一括して表現したものである。以下の図面も同様である。なお、図1はモノクロ液晶表示装置である。図1の構成は、ブラックマトリクス201とブラックマトリクス201の間に、本発明の特徴である紫外線吸収層210が形成されている他は図11と同様であるので、構造の詳細な説明は省略する。なお、図1における矢印UVはシール材150を硬化させるための紫外線のことである。
【0035】
図2は実施例1の液晶表示装置を製作するためのフローである。図2において、左側は、TFT基板100の製造フローである。TFT基板100の製造プロセスは図9において説明したので詳細は省略する。TFT基板100に対し、配向膜113を塗布し、焼成した後、配向膜113に対して紫外線を用いて配向処理を行う。この時、配向処理に有効な紫外線の波長は300nm以下である。
【0036】
図2の右側において、対向基板200の製造プロセスは図9で説明したので詳細は省略する。対向基板200に対し、配向膜113を塗布し、焼成した後、配向膜113に対して300nm以下の紫外線を用いて配向処理を行う。その後、対向基板200にシール材150を形成し、シール材150で囲まれた領域に液晶を滴下する。
【0037】
その後、TFT基板100と対向基板200をシール材150によって貼り合わせ、図1に示すように、対向基板側から紫外線を照射し、シール材150を硬化させる。この時、遮光マスクは使用しない。シール材150は340nm以上の紫外線に反応して硬化するが、用いられる紫外線は、340nm以上の波長のみでなく、300nm以下の波長の紫外線も含まれている。従来構成では、シール材150を硬化させるときに、遮光マスクを用いなければ、紫外線に300nm以下の波長が含まれると、配向膜113を劣化させる。
【0038】
ブラックマトリクス201が形成されている部分は、ブラックマトリクス201が紫外線に対して遮光効果を有する。しかし、従来例ではブラックマトリクス201が存在しない部分は、オーバーコート膜202のみであり、波長300nm以下の紫外線が透過する。本実施例においては、ブラックマトリクス201とブラックマトリクス201の間に紫外線吸収層210を形成し、特に300nm以下の紫外線を遮光する。これによって遮光マスクを配置しなくとも、配向膜の劣化を防止することが出来る。
【0039】
図3は本発明で使用されている有機材料である、オーバーコート膜202(OC用材料)、有機パッシベーション膜107(有機PAS材料)、および、本発明にかかわる紫外線吸収層210(UV吸収層)の紫外線透過率を示すグラフである。図3に示すように紫外線吸収層210は、波長300nm以下の紫外線に対しては透過率が非常に小さくなっている。一方、波長340nm以上の紫外線に対しては、透過率が大きい。
【0040】
図3において、波長300nmにおける紫外線吸収層210の透過率は10%であり、波長340nmにおける紫外線吸収層210の透過率は90%である。この値は、紫外線吸収層210の厚さが1μmの場合である。このような紫外線吸収層210を用いることによって、図1に示す液晶表示装置の表示領域とシール部における波長300nmと波長340nmの紫外線に対する透過率を、従来例と本実施例による紫外線吸収層210を使用した例について評価した結果を図4の表に示す。図4は図1のように、対向基板200の側から紫外線を照射した場合に、液晶表示装置を紫外線が通り抜けてTFT基板100の側において測定される紫外線強度である。
【0041】
図4において、シール部150は、従来例と本実施例とでは同じ構成なので、紫外線に対する透過率は同じである。一方、表示部においては、本実施例では紫外線吸収層210が存在しているので、300nmの紫外線に対する透過率は、従来例では2.7%であるのに対し、本実施例では、0.6%に低下している。図3からわかるように、300nm以下の紫外線に対しては、透過率はさらに低下することになる。したがって、本実施例によれば、配向膜113に対して影響を与える300nm以下の紫外線は、表示領域においては殆ど透過しないことになり、遮光マスクを用いなくとも、配向膜113に対する紫外線によるダメージは阻止することが出来る。
【0042】
ただし、波長が340nmの紫外線に対しては、従来例における透過率は13、6%であるのに対し、本実施例では19、9%に上昇している。これは図3に示すように紫外線吸収層は340nm以上の波長に対しては、オーバーコート膜202の場合よりも透過率が高いからである。しかし、340nm以上の紫外線は配向膜113に対してはダメージを与えないので、実効的には問題は生じない。
【0043】
図4の表は例である。実際には、紫外線吸収層210等は膜厚にばらつきが生ずる。紫外線吸収層210等にばらつきが生じた場合であっても、図1の構成において、表示領域における300nmに対する透過率が1%以下で、シール部における340nmに対する透過率が20%以上であれば、本発明の効果を得ることが出来る。
【実施例2】
【0044】
図5は実施例2における液晶表示装置の構造を示す断面図であり、左側は表示領域の断面図で右側がシール部の断面図である。図5が実施例1の図1と異なる点は、オーバーコート膜の代わりに紫外線吸収層210が形成されていることである。図5において、紫外線吸収層210は表示領域のみでなく、シール部においても、オーバーコート膜の代わりに形成されている。
【0045】
図5において、TFT基板100と対向基板200を、シール材150を介して貼り合わせた後、対向基板200の側から紫外線を照射してシール材150を硬化させることは実施例1と同じである。また、本実施例においても、表示領域に紫外線を照射させないための遮光マスクを使用しないことは実施例1と同様である。
【0046】
紫外線吸収層210およびオーバーコート膜202の紫外線に対する透過率は図3に示すとおりである。すなわち、紫外線吸収層210はオーバーコート膜202に比較して波長が300nm以下の紫外線に対しては透過率が低く、波長が340nm以上の紫外線に対しては透過率が大きい。したがって、遮光マスクを使用しないで紫外線を照射しても表示領域における配向膜113には300nm以下の紫外線は極めて僅かしか到達しない。つまり、表示領域に存在する配向膜に対する紫外線の影響は極めて小さくすることが出来る。
【0047】
図6に示す表は、本実施例における表示部およびシール部での波長300nmおよび340nmの紫外線の透過率を、実施例1および従来例と比較したものである。測定方法は、図4と同様、対向基板200の側から紫外線を照射し、TFT基板100側において、どの程度その紫外線が透過するかを比較したものである。
【0048】
シール部150においては、本実施例は従来例および実施例1と異なり、オーバーコート膜202の代わりに紫外線吸収層210が形成されているので、300nmの紫外線の透過率2.7%と、低い代わりに、340nmの紫外線の透過率は49.2%と、大きい。すなわち、シール材150を硬化させる340nmの紫外線は紫外線吸収層210による吸収は小さいので、シール材150に効率良く照射される。したがって、本実施例では、シール材150は紫外線によって効率よく硬化されるということが出来る。
【0049】
表示領域においては、300nmの紫外線に対してはオーバーコート膜202全てが紫外線吸収層210によって置き換えられているので、実施例1の場合よりもさらに透過率が小さくなっており、0.2%である。したがって、本実施例では、より効率よく、300nmの紫外線をカットするので、配向膜113へのダメージをより効率的に防止することが出来る。表示領域における340nmの紫外線に対する透過率は49.2%と大きいが、340nmの紫外線は配向膜に対して影響は少ないので、配向膜113にダメージを与えることはない。
【0050】
このように、本実施例においても、遮光マスクを使用しないでも、配向膜113にダメージを与えることなく、シール材150を紫外線硬化することが出来る。
【0051】
図5に示すように、本実施例では、紫外線吸収層210の上に柱状スペーサ130が形成されている。柱状スペーサ130として、紫外線吸収層210と同じ材料を使用することによって、紫外線吸収層210と柱状スペーサ130を同時に形成することが出来る。このプロセスとして、例えば、図5における紫外線吸収層210と柱状スペーサ130を合わせた厚さの紫外線吸収層を対向基板200にコーティングする。その後、フォトリソグラフィにおいて、露光量を調整して、柱状スペーサ130以外の部分のみを所定の厚さまでエッチングによって除去する。これによって、柱状スペーサ130を形成するプロセスにおいて、柱状スペーサ130と紫外線吸収層210を同時に形成することが出来、製造コストの低減を図ることができる。
【実施例3】
【0052】
図7は本発明の第3の実施例を示す液晶表示装置の断面図である。図7は実施例1および実施例2と異なり、カラー液晶表示装置である。したがって、対向基板200において、ブラックマトリクス201とブラックマトリクス201の間には、カラーフィルタ220が形成されている。一方、TFT基板100において、有機パッシベーション膜107の代わりに紫外線吸収層210が形成されている。その他は実施例1の図1と同じ構成なので説明を省略する。
【0053】
本実施例では、光配向された配向膜113を有する対向基板200と、光配向された配向膜113を有するTFT基板100を周辺において、紫外線硬化性のシール材150を用いてシールするが、図7に示すように、シール材150を硬化するための紫外線はTFT基板100の側から照射される。有機パッシベーション膜107と紫外線吸収層210の紫外線透過率の関係は図3に記載されているとおりである。すなわち、紫外線吸収層210は有機パッシベーション膜107に比較して、300nm以下の紫外線は効率よくカットするのに対し、340nm以上の紫外線は効率よく透過する。
【0054】
図7に示す構成において、TFT基板100側から紫外線を照射すると、TFT基板100の側には有機パッシベーション膜107の代わりに紫外線吸収層210が形成されているので、表示領域においては、配向膜113に対してダメージを与える波長300nm以下の紫外線は効率よくカットされる。なお、表示領域おける波長340nm以上の紫外線は紫外線吸収層210をより多く透過するが、340nm以上の紫外線は配向膜113にダメージを与えないので、問題は無い。
【0055】
一方、シール部のシール材150に対しては、TFT基板100に形成されている紫外線吸収層210は、340nm以上の紫外線への透過率は高いので、シール材150の硬化を効率よく行うことが出来る。なお、シール材150に対する300nm以下の紫外線の照射も少ないが、この範囲の紫外線はシール材150の硬化には影響が小さいので、問題は無い。
【0056】
このように、本実施例においても、遮光マスクを用いなくとも、紫外線照射によって、配向膜113にダメージを与えることなく、シール材150を紫外線硬化することが出来る。
【実施例4】
【0057】
図8は本発明の第4の実施例を示す液晶表示装置の断面図である。図8も実施例1および実施例2と同様、モノクロ液晶表示装置である。図8において、実施例1と同様、ブラックマトリクス201とブラックマトリクス201の間に紫外線吸収層210が形成されている。一方、TFT基板100側には、実施例3と同様、有機パッシベーション膜107の代わりに紫外線吸収層210が形成されている。すなわち、本実施例では、対向基板200側もTFT基板100側も波長が300nm以下の紫外線を効率よくカットするが、波長が340nm以上の紫外線の透過率は大きくする構成となっている。
【0058】
本実施例では、図8に示すように、対向基板200側とTFT基板100の両側から紫外線を照射することができる。対向基板200側およびTFT基板100側のいずれも、300nm以下の紫外線を効率よくカットする構成となっているので、配向膜113にダメージを与えることは無い。一方、特に、TFT基板100側においては、340nm以上の紫外線を効率よく透過する。また、対向基板200側においても、シール部では、340nm以上の紫外線に対しては従来と同様の透過率を維持している。したがって、本実施例によれば、シール材150に対する340nm以上の紫外線の照射量を大幅に上げることが出来るので、紫外線によるシール材150の硬化をより短時間で行うことが出来る。また、遮光マスクを使用しなくとも、配向膜113に対するダメージを防止しつつシール材150を紫外線硬化することが出来る点は実施例1〜3と同様である。
【符号の説明】
【0059】
100…TFT基板、 101…ゲート電極、 102…ゲート絶縁膜、 103…半導体層、 104…ドレイン電極、 105…ソース電極、 106…無機パッシベーション膜、 107…有機パッシベーション膜、 108…対向電極、 109…層間絶縁膜、 110…画素電極、 111…スルーホール、 112…スリット、 113…配向膜、 120…TFT回路、 130…柱状スペーサ、 150…シール材、 200…対向基板、 201…ブラックマトリクス、 202…オーバーコート膜、 210…紫外線吸収層、 220…カラーフィルタ、 300…液晶層、 301…液晶分子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配向膜を有するTFT基板と、配向膜を有する対向基板がシール材によって貼り付けられ、内部に液晶を封入した液晶表示装置であって、
前記対向基板は、ブラックマトリクスとブラックマトリクスの間に紫外線吸収層が形成され、前記ブラックマトリクスと前記紫外線吸収層はオーバーコート膜で覆われ、前記オーバーコート膜は前記配向膜で覆われており、
前記シール材は紫外線硬化樹脂であり、
波長300nmの紫外線に対する前記紫外線吸収層の透過率は前記オーバーコート膜の透過率よりも小さく、波長340nmの紫外線に対する前記紫外線吸収層の透過率は、前記オーバーコート膜の透過率よりも大きいことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
配向膜を有するTFT基板と、配向膜を有する対向基板がシール材によって貼り付けられ、内部に液晶を封入した液晶表示装置であって、
前記対向基板は、ブラックマトリクスとブラックマトリクスの間および前記ブラックマトリクスの上に紫外線吸収層が形成され、前記紫外線吸収層の上に配向膜が形成され、
前記TFT基板は、TFT回路とこれを覆う有機パッシベーション膜によって覆われており、前記有機パッシベーション膜の上に対向電極、層間絶縁膜、画素電極がこの順で形成され、または、前記有機パッシベーション膜の上に画素電極、層間絶縁膜、対向電極がこの順で形成され、
前記画素電極または前記対向基板の上に前記配向膜が形成され、
前記シール材は紫外線硬化樹脂であり、
波長300nmの紫外線に対する前記紫外線吸収層の透過率は前記有機パッシベーション膜の透過率よりも小さく、波長340nmの紫外線に対する前記紫外線吸収層の透過率は、前記有機パッシベーション膜の透過率よりも大きいことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項3】
配向膜を有するTFT基板と、配向膜を有する対向基板がシール材によって貼り付けられ、内部に液晶を封入した液晶表示装置であって、
前記対向基板は、ブラックマトリクスとブラックマトリクスの間にカラーフィルタが形成され、前記ブラックマトリクスと前記カラーフィルタはオーバーコート膜で覆われ、前記オーバーコート膜は前記配向膜で覆われており、
前記TFT基板は、TFT回路とこれを覆う紫外線吸収層によって覆われており、前記紫外線吸収層の上に対向電極、層間絶縁膜、画素電極がこの順で形成され、または、前記紫外線吸収層の上に画素電極、層間絶縁膜、対向電極がこの順で形成され、
前記画素電極または前記対向基板の上に前記配向膜が形成され、
前記シール材は紫外線硬化樹脂であり、
波長300nmの紫外線に対する前記紫外線吸収層の透過率は前記オーバーコート膜の透過率よりも小さく、波長340nmの紫外線に対する前記紫外線吸収層の透過率は、前記オーバーコート膜の透過率よりも大きいことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項4】
配向膜を有するTFT基板と、配向膜を有する対向基板がシール材によって貼り付けられ、内部に液晶を封入した液晶表示装置であって、
前記対向基板は、ブラックマトリクスとブラックマトリクスの間に紫外線吸収層が形成され、前記ブラックマトリクスと前記紫外線吸収層はオーバーコート膜で覆われ、前記オーバーコート膜は前記配向膜で覆われており、
前記TFT基板は、TFT回路とこれを覆う紫外線吸収層によって覆われており、前記紫外線吸収層の上に対向電極、層間絶縁膜、画素電極がこの順で形成され、または、前記紫外線吸収層の上に画素電極、層間絶縁膜、対向電極がこの順で形成され、
前記画素電極または前記対向基板の上に前記配向膜が形成され、
前記シール材は紫外線硬化樹脂であり、
波長300nmの紫外線に対する前記紫外線吸収層の透過率は前記オーバーコート膜および前記有機パッシベーション膜の透過率よりも小さく、波長340nmの紫外線に対する前記紫外線吸収層の透過率は、前記オーバーコート膜および前記有機パッシベーション膜の透過率よりも大きいことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項5】
前記シール材は、波長340nm以上の紫外線によって硬化する紫外線硬化樹脂であり、
前記配向膜は波長300nm以下の紫外線によって光配向されていることを特徴とする請求項1〜4に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−181447(P2012−181447A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45502(P2011−45502)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(502356528)株式会社ジャパンディスプレイイースト (2,552)
【Fターム(参考)】