説明

液晶表示装置

【課題】光の利用効率が高い液晶表示装置の提供。
【解決手段】表示面側から順に、一対の吸収型偏光板10、12に挟まれた液晶セル11と、反射型偏光板13と、位相差フィルム14と、集光シート15と、面光源16とを有する液晶表示装置であって、位相差フィルム14がλ/4機能を有し、且つ集光シート15が屈折率等方性材料からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は光利用効率が低いことが大きな欠点であったが、特許文献1、2では、光源側の吸収型偏光板と光源の間に反射型偏光フィルムを用いることで輝度を向上させる方法が提案されている。反射型偏光フィルムは一方の偏光成分を透過し、もう一方の偏光成分を反射する性質を持つ。これを用いることで光源からの光の偏光成分の一方が吸収型偏光板に吸収される前に、当該偏光成分を反射させて光源に戻し、偏光解消させて光を再利用することができる。これにより光利用効率を改善することができる。
【0003】
更に特許文献3では、光源と偏光反射板の間に位相差1/4波長を有する位相差フィルムを配置することで光利用効率を向上させる方法が提案されている。これは反射型偏光板で反射された偏光成分が光源側の部材で反射して再度反射型偏光板に入射する前に、位相差フィルムを往復して透過することで偏光面を90°回転させ、反射型偏光板を透過させる方法である。この方法では、前述の偏光解消させる場合に比べ、光源と反射型偏光板の間で起こる光再利用のための反射回数を減らすことができるため、吸収や散乱によるロスを少なくすることができ、これにより光利用効率を更に高めることができる。
【0004】
しかしながら、特許文献3のケースでは反射部材としてミラーを配置することで、反射率が高く、偏光解消が起こらない構成を実現したが、液晶表示装置の光源には集光シートや導光板、拡散板などの部材が必要であり、位相差フィルムに隣接させてミラーを配置することができない。そのため各種部材を通過する際に、偏光解消が生じ、位相差フィルムによる光利用効率の向上効果が十分に得られていないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−51399号公報
【特許文献2】特開平6−324333号公報
【特許文献3】特開昭63−168626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した問題を解決するためになされたものであり、光利用効率が高い液晶表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
【0008】
[1]
表示面側から順に、一対の吸収型偏光板に挟まれた液晶セルと、反射型偏光板と、位相差フィルムと、集光シートと、面光源とを有する液晶表示装置であって、上記位相差フィルムがλ/4機能を有し、且つ上記集光シートが屈折率等方性材料からなる液晶表示装置。
[2]
上記集光シートが透明支持体と、集光層とからなり、上記透明支持体の波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が20nm以下である[1]に記載の液晶表示装置。
[3]
上記集光層の屈折率が1.55以上である[1]又は[2]に記載の液晶表示装置。
[4]
上記位相差フィルムの厚み方向レターデーションRth(550)が−90nm〜90nmである[1]〜[3]のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
[5]
上記位相差フィルムの少なくともどちらか一方の面がランダムな凹凸を有する[1]〜[4]のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
[6]
上記位相差フィルムのランダムな凹凸の平均傾斜角θaが2°〜5°である[5]に記載の液晶表示装置。
[7]
上記反射型偏光板と上記位相差フィルムと上記集光シート及び上記面光源からなるバックライトユニットから出射された光量を測定したとき、上記液晶表示装置の表示画面の法線に対して、観察者が上記液晶表示画面を視認するときの鉛直方向または水平方向に傾けられた出射角度50°から85°の範囲の光量の平均値が、上記法線方向の光量に対して12%以下である、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
[8]
上記吸収型偏光板は、各々偏光膜とその両側に保護フィルムを有し、各々の偏光膜と上記液晶セルの間に配置される保護フィルムの少なくとも一方が光学補償フィルムであり、
上記光学補償フィルムの面内レターデーションRe(550)が1〜200nmであり、厚み方向レターデーションRth(550)が80〜400nmである、[7]に記載の液晶表示装置。
[9]
上記液晶セルがTNモードである[7]又は[8]に記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光利用効率の高い液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の液晶表示装置の断面模式図である。
【図2】バックライト側の吸収型偏光板と反射型偏光板の関係の概略図である。
【図3】反射型偏光板と位相差フィルムの関係の一例の概略図である。
【図4】集光シートで戻り光を反射させて光を再利用する時の様子を表した概略図である。
【図5】位相差フィルムで戻り光を反射させて光を再利用する時の様子を表した概略図である。
【図6】プリズムシートにおける光路を示す断面図である。
【図7】プリズムシートの製造装置の一例を示す概略図である。
【図8】プリズムシートの作製方法を説明するための概略図である。
【図9】プリズムシートの作製方法を説明するための概略図である。
【図10】プリズムシートの作製方法を説明するための概略図である。
【図11】プリズムシートの作製方法を説明するための概略図である。
【図12】プリズムシートの作製方法を説明するための概略図である。
【図13】実施例で使用した各プリズムシートについて、光度と出射角度の関係を正面(0°)で測定した光度(cd)を基準に規格化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。まず、本明細書で用いられる用語について説明する。
【0012】
Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH、又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。測定されるフィルムが、1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、又はWRが算出する。なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)、及び式(B)よりRthを算出することもできる。
【0013】
【数1】

【0014】
なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。また、式(A)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzは、nx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚を表す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・・・・・・・・・式(B)
【0015】
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0016】
なお、本明細書では、測定波長について特に付記がない場合は、測定波長は550nmである。
また、本明細書において、角度(例えば「90°」等の角度)、及びその関係(例えば「直交」、「平行」、及び「45°で交差」等)については、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、厳密な角度±10°未満の範囲内であることなどを意味し、厳密な角度との誤差は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。
【0017】
本明細書では、表面粗さRaとは、JIS B 0601(2001)における算術平均粗さのことを意味し、特に断りがない限り、単位は、(μm)である。
反射率とは、分光光度計V−550(日本分光(株)製)にアダプター(ARV−474)を装着して、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における出射角−5゜の鏡面反射率を測定し、450〜650nmの平均反射率のことを意味する。
【0018】
本発明は、表示面側から順に一対の吸収型偏光板に挟まれた液晶セル、反射型偏光板、位相差フィルム、集光シート、面光源が配置された液晶表示装置であって、前記位相差フィルムがλ/4機能を有し、且つ前記集光シートが屈折率等方性材料からなる液晶表示装置に関する。
【0019】
液晶セルと面光源の間に反射型偏光板を用いた液晶表示装置は、面光源からの光の偏光成分の一方が吸収型偏光板に吸収される前に、当該偏光成分を反射させて光源に戻し、偏光解消させて光を再利用することができるため光利用効率を高めることができる。さらに面光源と反射型偏光板の間に位相差がλ/4の位相差フィルムを、その光学軸が吸収型偏光板の吸収軸と45°の角度をなす方位で配置することで、光の再利用の効率を上げ、光利用効率をより高めることができる。しかし集光シートが大きなRe値を持つと、反射型偏光板から反射された偏光した光が、集光シート、面光源のどこかで反射されて再び反射型偏光板に入射するまでの間に位相差の影響を受けて偏光方向が変化し、反射型偏光板と位相差フィルムを用いたことによる光利用効率の向上効果を十分に得ることができなかった。本発明はこの問題を解消するものであり、屈折率等方性材料を用いて集光シートを形成する。集光シートが透明支持体と集光層からなる場合、好ましくは集光シートの透明支持体のRe(550)を20nm以下に設定することで光再利用の際の偏光変化を減らし、光利用効率を高めることができる。より好ましくはRe(550)が10nm以下であり、更に好ましくは5nm以下である。
【0020】
集光シートの集光層は屈折率が高い方が好ましい。1.55以上が好ましく、1.59以上がより好ましく、1.70以上が最も好ましい。集光層の屈折率を高めることで、反射型偏光板から反射してきた光を集光シートが再利用のために反射する光の量を増やすことができ、これにより光を再利用する効率を高めることができる。これは集光層の屈折率を高めることで、集光層に入射した光が屈折する角度を大きくすることができ、これによって透明支持体への入射角を大きくすることができ、結果として、透明支持体と空気界面での反射率を大きくできることによる。
【0021】
以下、図面を用いて、本発明のいくつかの実施形態を説明するが、図中の各層の厚みの相対的関係は、実際の相対的関係を反映しているわけではない。また、図中、同一の部材については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する場合がある。
【0022】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置の一例の断面模式図を図1に示す。液晶表示装置100は、上から(表示面側から)順に一対の吸収型偏光板(10、12)に挟まれた液晶セル11、反射型偏光板13、位相差フィルム14、集光シート15、面光源16を有する。
吸収型偏光板12と反射型偏光板13の関係の1例に関する概略図を図2に示す。図2では、吸収型偏光板12の吸収軸と反射型偏光板13の反射光の偏光方向は一致しており、吸収型偏光板12の透過軸と反射型偏光板13の透過光の偏光方向は一致している。吸収型偏光板12の吸収軸と反射型偏光板13の反射光の偏光方向を一致させることで光を再利用することができる。
反射型偏光板13と位相差フィルム14の関係に関する関係の1例に関する概略図を図3に示す。図3では、反射型偏光板13の反射光の偏光方向と位相差フィルム14の光学軸(遅相軸)の間の角度を45°又は135°にすることで位相差フィルム14に入射した反射型偏光板13からの直線偏光を円偏光に変換することができる。
【0023】
反射型偏光板13で反射された直線偏光状態の光がそれと直交する直線偏光状態の光に変換されて反射型偏光板13を透過する様子を図4に示す。
集光シートの側から光線が入射し、位相差フィルム14を透過した偏光のうち、紙面に垂直な方向の直線偏光のみを反射型偏光板13が反射する。反射された直線偏光は、位相差フィルム14を再び透過する際に円偏光に変換され、その円偏光は集光シート15の支持体界面により逆まわりの円偏光として反射される。その後、反射された円偏光は再び位相差フィルム14を透過した後、紙面に平行な方向の直線偏光となり、反射型偏光板13から出射される。これにより輝度向上効果が得られる。
この効果は位相差フィルム14に反射率増加層17を設けることで更に強調される(図5)。この反射率増加層17は集光シート15と位相差フィルム14の間での再帰反射を利用して透過光を集光する作用と、反射型偏光板13からの戻り光を効率的に反射させる作用を持つ。これにより、より大きな輝度向上効果が得られる。
【0024】
[集光シート]
集光シート15としては、プリズムシートやレンズシートを用いることができる。集光シート15は表面に凹凸が形成されたシートが好ましく、その材料や作成方法はさまざまなものを用いることができるが、特に屈折率等方性材料で作られたものが本発明の目的である光利用効率向上のために好ましい。屈折率等方性材料で作られたものとしては、分子配向の少ない樹脂シート、例えば、環状オレフィン樹脂、アクリル樹脂、アセチルセルロース等の屈折率異方性の小さいフィルムを透明支持体とし、その上にアクリル樹脂等で集光層を形成したものが好ましく用いられる。またアセチルセルロース等の屈折率異方性の小さいフィルムの表面にモールド等で型押しすることで凹凸を形成したものが好ましく用いられる。これにより光を再利用する際に集光シート15を通過した光の偏光変化が小さくなり、光利用効率を向上させることができる。また透明支持体の厚みムラに起因した着色ムラが発生しにくくなるという効果がある。
【0025】
また集光シート15の透明支持体に用いる材料は光弾性の小さい材料が好ましい。光弾性の小さい材料を用いることでムラの発生を抑制できる。面光源の近くは温度が高く、また面内の温度変化が大きいため応力が発生しやすい。光弾性が大きいと応力による位相差変化が大きくなり、ムラが発生しやすくなる。光弾性の小さい材料としては、環状オレフィン樹脂、アセチルセルロース、アクリル樹脂を用いたもの、低光弾性ガラスが挙げられる。
【0026】
[位相差フィルム]
本発明における位相差フィルムはλ/4機能を有する。これにより、直線偏光を円偏光に変換することができる。
位相差フィルム14の位相差は、λ/4、3×λ/4、・・・(1+2n)×λ/4(nは整数)の式を満たすものが直線偏光を円偏光に変換することができるため、効果が大きいが、λ/4が特に好ましい。位相差が大きくなると、波長分散の影響を受けやすくなり、波長ごとの光利用効率に差が生じ、虹色の面内ムラが発生しやすくなる。
【0027】
位相差フィルム14の面内レターデーションRe(550)は100〜175nmであることが好ましく、110〜165nmであることがより好ましく、115〜155nmであることが更に好ましい。厚み方向レターデーションRth(550)は−400〜260nmであることが好ましく、−200〜160nmがより好ましく、−90〜90nmが更に好ましい。Rthの値をこの範囲にすることで、斜め方向に位相差フィルム14を通過する光に対しても直線偏光を円偏光に変換する作用を持つため、光の利用効率を高めることができる。
【0028】
位相差フィルム14の構成については特に制限はない。単層構造であっても、積層構造であってもよい。位相差フィルム14に利用可能な部材としては、位相差ポリマーフィルム、位相差フィルムの積層体、液晶組成物の配向を固定して形成される光学異方性層、及び該光学異方性層とそれを支持するポリマーフィルムとの積層体が挙げられる。これらの部材の詳細については、後述する。
【0029】
また、位相差フィルム14は、反射率増加層を有しているのも好ましい。反射率増加層を位相差フィルム14の一方の面に付与し、その面が集光シート15の側を向くように配置することで、反射型偏光板13と位相差フィルム14の間で回る光の再利用のサイクルを増やすことができ、光の利用効率が高くなる。位相差フィルム14の反射率としては、10%〜30%が好ましく、15%〜25%がより好ましい。反射率が低すぎると光の再利用のサイクルが増えず、反射率が高すぎると面光源16から入射する光の多くを反射してしまうため逆に効率が下がってしまう。
【0030】
前記位相差フィルム14の一方の面の反射率を上げる方法としては、表面に屈折率が異なり、厚みが1μm以下の光学干渉層を反射率増加層として配置する方法が好ましい。干渉層を構成する薄膜層の層数は一層でも効果が有るが、多層構成とし、屈折率と厚みを最適化することで大きな反射率を得ることができる。
【0031】
集光シート15の周期構造と液晶セル11の画素の間で周期パターンが干渉してモアレが発生することを抑制するため、集光シート15と反射型偏光板13の間に拡散シートを配置することが行われる。しかし図1の液晶表示装置100の部材構成の間に更に拡散シートを挿入すると、空気界面が増え、偏光解消が起こりやすくなる。そのため位相差フィルム14の表面に凹凸を形成して光拡散機能を持たせる事が好ましい。これにより空気界面での反射で生じる偏光変化を抑制し、光利用効率を高めることができる。
【0032】
光拡散機能を持たせた位相差フィルム14のヘイズ値は3%〜50%が好ましく、5%〜30%がより好ましく、10%〜25%が最も好ましい。ヘイズ値が小さいとモアレを抑制する効果が得られず、ヘイズ値が大きいと光散乱によって偏光解消が発生し、本発明の課題とする光利用効率の向上効果が得られにくくなる。
【0033】
位相差フィルム14に光拡散機能を持たせる方法としては、表面に凹凸を形成する方法ではあればどの方法を用いることも可能であり、例えば粒子を含有した紫外線硬化樹脂を塗布し、乾燥、紫外光硬化させる方法、表面を溶剤で溶かし、予め凹凸を形成したモールドで型押しする方法、位相差フィルム14を作成する際に共流延法を用いて表面層に粒子を混ぜる方法等を使うことができる。
【0034】
[反射型偏光板]
反射型偏光板13の構成についても特に制限はない。複屈折性樹脂を積層した直線偏光子、コレステリック液晶とλ/4板を組み合わせた円偏光子、ワイヤーグリッド型偏光子等が利用できる。
【0035】
[面光源]
面光源16の構成についても特に制限はない。側面に光源を配置した導光板、光源を面状に並べ拡散板で均一化したもの、面で発光する有機EL光源等が使用できる。また偏光した光を発する面光源も使用することができる。偏光した光を発する面発光光源としては発光材料を配向させた有機EL光源などが提案されている。
【0036】
本発明で用いた屈折率等方性材料を用いた集光シート15は偏光した光を面発光する光源に対しても好適に用いることができる。これは偏光した光が集光シート15を透過する際の偏光方向変化が小さいため、光利用効率を高めることができる。
【0037】
以下、本発明の液晶表示装置に用いられる種々の部材等について詳細に説明する。
【0038】
[集光シートの材料及び製法]
本発明に係る集光シート15を構成する材料及び製法について説明する。
【0039】
本発明に係る集光シート15を製造する方法に関しては、微細な凹凸パターンのプリズムシートを形成することができる方法であればよく、製造方法は限定されない。
【0040】
例えば、ダイより押し出したシート状の樹脂材料を、この樹脂材料の押し出し速度と略同速度で回転する転写ローラ(プリズムシートに形成される凹凸パターンと反対の反転パターンが表面に形成されている)と、この転写ローラに対向配置され同速度で回転するニップローラ板とで挟圧し、転写ローラ表面の凹凸パターンを樹脂材料に転写することにより製造するプリズムシートの製造方法を用いることができる。
【0041】
また、ホットプレスにより、プリズムシートに形成される凹凸パターンと反対の反転パターンが表面に形成されている転写型板(スタンパー)と樹脂板とを積層し、熱転写することによりプレス成形するプリズムシートの製造方法を用いることができる。
【0042】
更には、プリズムシートに形成される凹凸パターンと反対の反転パターンの平板金型を用いて射出成形することにより製造するプリズムシートの製造方法も用いることができる。
【0043】
以上の製造方法に使用されるプリズムシートを構成する樹脂材料としては、熱可塑性樹脂が用いられる。具体的には、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、MS樹脂、AS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、セルロースアシレート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースダイアセテート、熱可塑性エラストマー、又はこれらの共重合体、シクロオレフィンポリマー等を使用することができる。
【0044】
また、他の製造方法としては、透明なフィルムの表面に、凹凸ローラ(プリズムシートに形成される凹凸パターンと反対の反転パターンが表面に形成されている)を用い凹凸パターンを転写し形成するプリズムシートの製造方法を用いることができる。具体的には、透明なフィルムの表面に接着剤と樹脂とを順次塗布することにより、接着剤層と樹脂層(例えば、UV硬化性樹脂)とを形成し、この透明なフィルムを回転する凹凸ローラに巻き掛け連続走行させ、樹脂層に凹凸ローラの表面に形成されている凹凸パターンを転写し、透明なフィルムが凹凸ローラに巻き掛けられている状態で樹脂層を硬化(例えば、UV照射)することにより、プリズムシートを製造する方法である。
【0045】
尚、接着層は樹脂層と透明フィルムとの接着性が良好であれば付与する必要は無く、また、接着性を向上させる方法としては、透明なフィルムの表面に下塗り層を設けておく方法や、コロナ処理などの活性化処理を行う方法などがあり、接着性が良好になる方法であれば特に限定されるものではない。
【0046】
また、プリズムシートに形成される凹凸パターンに対し反転したパターンが形成された凹凸ローラに樹脂材料(例えば、UV硬化樹脂)を塗布し、連続走行される透明なフィルムを凹凸ローラとニップローラで挟み、凹凸ローラの樹脂材料と透明なフィルムとを密着させた後に硬化(例えば、UV照射)する方法もある。樹脂材料と透明なフィルムとの接着を高めるためには、前述した接着剤層を設ける等の方法であってもよい。
【0047】
[透明支持体]
透明支持体の製造方法については特に制限はない。溶液製膜法及び溶融製膜法のいずれも利用することができる。溶液製膜法が好ましい。透明支持体としては、Re(550)が20nm以下であることが好ましく、より好ましくはRe(550)が10nm以下であり、更に好ましくは5nm以下である。
【0048】
本発明に使用可能な透明支持体を形成する材料としては、例えば、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマーも例としてあげられる。また本発明に使用可能な透明支持体は、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の紫外線硬化型、熱硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0049】
また、前記透明支持体の材料としては、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を好ましく用いることが出来る。熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等があげられる。さらに、環状オレフィンと他のオレフィンの共重合体(COC)も好ましく用いることができ、例えば、Topas Advanced Polymers GmbH製のTOPASが挙げられる。
【0050】
また、前記透明支持体の材料としては、従来偏光板の透明保護フィルムとして用いられてきた、トリアセチルセルロースに代表される、セルロース系ポリマー(以下、セルロースアシレートという)を好ましく用いることが出来る。
【0051】
[延伸]
透明支持体は、屈折率等方性が満足される範囲なら延伸処理を施された延伸フィルムであってもよい。延伸処理によって、レターデーション及び面内遅相軸を調整することができる。
積極的に幅方向(TD方向)に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、および特開平11−48271号の各公報などに記載されている。フィルムの延伸は、常温または加熱条件下で実施する。加熱温度は、フィルムのガラス転移温度を挟む−20℃〜+100℃であることが好ましい。これは、ガラス転移温度より極端に低い温度で延伸すると、破断しやすくなり所望の光学特性を発現させることができない。また、ガラス転移温度より極端に高い温度で延伸すると、延伸により分子配向したものが熱固定される前に、延伸時の熱で緩和し配向を固定化することができず、光学特性の発現性が悪くなる。
【0052】
フィルムの延伸は、MD方向あるいはTD方向だけの一軸延伸でもよく同時あるいは逐次2軸延伸でもよいが、TD方向により多く延伸することが好ましい。TD方向の延伸は1〜100%の延伸が好ましく、さらに好ましくは10〜70%延伸で、特に好ましくは20%〜60%の延伸を行う。MD方向の延伸は1〜10%の延伸が好ましく、特に好ましくは2〜5%延伸を行う。
延伸処理は製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。
製膜工程の途中で延伸を行う場合には残留溶剤量を含んだ状態で延伸を行っても良く、残留溶剤量=(残存揮発分質量/加熱処理後フィルム質量)×100%が0.05〜50%で好ましく延伸することができる。
製膜して巻き取った原反を延伸する場合には、残留溶剤量が0〜5%の状態でTD方向に1〜100%延伸を行うことが好ましく、さらに好ましくは10〜70%延伸で、特に好ましくは20%〜60%延伸である。
【0053】
延伸処理は製膜工程の途中で行った後、製膜して巻き取った原反をさらに延伸処理しても良い。
製膜工程の途中で延伸処理されたフィルムを巻き取った後でさらに延伸処理する場合には、製膜工程の途中での延伸は残留溶剤量を含んだ状態で延伸を行っても良く、残留溶剤量=(残存揮発分質量/加熱処理後フィルム質量)×100%が0.05〜50%で延伸することが好ましく、製膜して巻き取った原反の延伸は、残留溶剤量が0〜5%の状態で延伸することが好ましく、TD方向の延伸は未延伸の状態を基準として1〜100%延伸を行うことが好ましく、さらに好ましくは10〜70%延伸で、特に好ましくは20%〜60%の延伸である。
【0054】
また、透明支持体は、屈折率等方性が満足される範囲なら二軸延伸を行ってもよい。
二軸延伸には、同時二軸延伸法と逐次二軸延伸法があるが、連続製造の観点から逐次二軸延伸方法が好ましく、ドープを流延した後、バンドもしくはドラムよりフィルムを剥ぎ取り、TD方向に延伸した後、MD方向に延伸されるか、またはMD方向に延伸した後、TD方向に延伸される。
延伸での残留歪を緩和させ、寸度変化を低減させるため、また面内の遅相軸のTD方向に対するバラツキを小さくするために、横延伸後に緩和工程を設けることが好ましい。緩和工程では緩和前のフィルムの幅に対して緩和後のフィルムの幅を100〜70%の範囲(緩和率0〜30%)に調節することが好ましい。緩和工程における温度はフィルムの見かけ上のガラス転移温度Tg−50〜Tg+50℃であることが好ましい。通常の延伸ではこの最大拡幅率を経た後の緩和率ゾーンでは、テンターゾーンを通過させるまでの時間は1分より短い。
ここで、延伸工程におけるフィルムの見かけ上のTgは、残留溶剤を含んだフィルムをアルミパンに封入し、示差走査熱量計(DSC)で25℃から200℃まで20℃/分で昇温し、吸熱曲線を求めることによりTgを求めた。
【0055】
製膜工程の途中で延伸処理を行った場合、フィルムの乾燥は搬送したまま行うことができる。乾燥温度は100℃〜200℃であることが好ましく、より好ましくは100℃〜150℃であり、さらに好ましくは110℃〜140℃であり、特に好ましくは130℃〜140℃ある。乾燥時間は特に制限はないが、好ましくは10分から40分である。
最適な延伸後乾燥温度を選択することにより、製造されるセルロースエステルフィルムの残留応力が緩和されて、高温下及び高温高湿下における寸法変化、光学特性変化、遅相軸方位の変化を小さくすることができる。
【0056】
製膜して巻き取った原反を延伸処理した場合、延伸処理されたフィルムはその後、さらに加熱処理される工程を経て製造されても良い。加熱処理する工程を経ることにより、製造される透明支持体の残留応力が緩和されて、高温下及び高温高湿下における寸法変化が小さくなる他、屈折率が等方的になりやすいので好ましい。加熱時の温度は特に制限はないが、100℃〜200℃が好ましい。
【0057】
次に、上記工程により製造された三角状の凹凸パターンが形成されたプリズムシートにおいて、本発明に係る集光シート15を得るための集光層を形成するための樹脂材料について説明する。
【0058】
集光層を形成するための樹脂材料は、所定の屈折率を有するものであり、凹部の谷底部を充填することが可能な粘度等の物性を有するものであれば特に限定されるものではない。具体的には、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、MS樹脂、AS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、セルロースアシレート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースダイアセテート、熱可塑性エラストマー、又はこれらの共重合体、シクロオレフィンポリマー等の樹脂を溶剤で希釈し、凹部に流し込み溶剤を揮発させてもよい。また、UV硬化樹脂などを凹部に流し込みUV光を照射することにより固めてもよい。
【0059】
UV硬化性樹脂を用いる場合では、上記のような構造を含有し、さらに(メタ)アクロイル基、ビニル基やエポキシ基などの反応性基含有化合物と、紫外線などの放射線照射にて前記反応性基含有化合物を反応させうるラジカルやカチオン等の活性種を発生する化合物を混合したものが用いられる。特に硬化の速さからは、(メタ)アクロイル基、ビニル基などの不飽和基を含有する反応性基含有化合物(モノマ−)と、光によりラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤の組み合わせが好ましい。
【0060】
(メタ)アクロイル基化合物としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ−2−メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3−(2−フェニルフェニル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレンオキシドを反応させたp−クミルフェノールの(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエポキシ開環反応で得られるビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエポキシ開環反応で得られるビスフェノールFエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0061】
より屈折率の高い(メタ)アクロイル基化合物としては、芳香環にBr、Clのハロゲン基が置換された化合物が用いられる。このような構造をもつ不飽和モノマ−としては、エチレンオキシド付加テトラブロモビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、プロピレンオキシド付加テトラブロモビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエポキシ開環反応で得られるテトラブロモビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールFジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエポキシ開環反応で得られるテトラブロモビスフェノールFエポキシ(メタ)アクリレート、2−ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4−ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,6−ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6−トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,4,6−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0062】
更に、高屈折率な無機微粒子材料を含有させることにより樹脂材料の屈折率を高めることも可能である。このような高屈折率な無機材料としてはTiO(屈折率2.2〜2.7)、CeO(屈折率2.2)、ZrO(屈折率2.1)、In(屈折率2.0)、La(屈折率1.95)、SnO(屈折率1.9)、Sb(屈折率1.7)等が挙げられる。また、微粒子の粒子径は小さい方が樹脂材料の透明度は高くなるため、好ましい粒子径としては100nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下である。これら高屈折率な無機微粒子材料は通常のUV硬化性樹脂に混合して使用することが可能であり、上記のような、高屈折率のUV硬化性樹脂に混合することにより、UV硬化性樹脂の屈折率をより一層高めることが可能となる。
【0063】
凹部に流し込む方法は、上記の凹部の谷底部を充填する材料を形成するための液体をプリズムシート上の全面に薄く塗布することにより凹部の谷底部に流し込む方法や、ディスペンサ等によって凹部の谷底部に一列ごとに流し込む方法が挙げられ、凹部の谷底部において所望の深さを埋め込むことができる方法であればよい。
【0064】
形成された集光シート15には、光拡散機能を付加することも可能である。光拡散機能を付加する方法として、例えば、集光シート15内に光拡散物質を含有させる方法が挙げられる。また、ビーズ等からなる光拡散粒子を集光シート15内に含有させる方法、屈折率の異なる樹脂を混練する方法、空気・中空ビーズなどを含有させる方法等も挙げられる。更に、集光シート15の表面にビーズを付着させる方法、集光シート15の表面にサンドブラスト等のブラスト処理、プラズマ処理をすることにより表面を荒らす方法、集光シート15を溶解する溶液を含浸させて集光シート15の表面を溶解させる方法等により、集光シート15の表面にランダムな凹凸を設け、光拡散機能を付加する方法が挙げられる。
【0065】
《プリズムシート》
本発明に用いられる集光シートとして、特に好ましいプリズムシートについて詳述する。
本発明の液晶表示装置は、前記反射型偏光板と前記位相差フィルムと前記集光シート及び前記面光源からなるバックライトユニットから出射された光量を測定したとき、該液晶表示装置の表示画面の法線に対して、観察者が前記液晶表示画面を視認するときの鉛直方向に傾けられた出射角度50°から85°(極角50°から85°)の範囲の光量の平均値が、該法線方向の光量に対して12%以下であることが好ましい。
【0066】
図6は、プリズムシート41における光路を示す断面図である。図6に示すように、入射した光は、プリズムシート41を屈折透過する際に、正面方向に屈折する成分Aと、正面方向ではなく、正面から離れる方向に屈折する成分Bと、表面で反射する成分Cに分けられる。これらの光の成分のうち、前記成分Aは、正面方向即ち観察方向に出射されるものであり、実際に利用される光である。前記反射される成分Cは、底面で拡散反射して、プリズムシートに入射する角度を変え、一部は成分Aに変換され正面方向に出射する。この反射を繰り返すことにより、成分Cの多くは成分Aに変換され、出射面の正面方向の輝度を増加させる。
これに対して、図6のX部分を通過する光の成分Bは、液晶表示装置等の有効な視野角外に広角度で出射する光(以下、サイドローブ光と称する)であり、正面輝度の増加には寄与しない。
さらに、サイドローブ光は、画面の法線方向から極端にかけ離れた角度で液晶パネルに入射し、液晶セルの液晶分子、カラーフィルター、位相差フィルム等により正面に散乱され、黒表示輝度を著しく増加させ、コントラスト低下の原因となっていた。
【0067】
本発明の液晶表示装置に好ましく用いられるプリズムシートは、サイドローブ光を少なくすることができ、黒表示の輝度上昇を防止し、コントラストが向上する効果を奏する。
前記反射型偏光板と前記位相差フィルムと前記集光シート及び前記面光源からなるバックライトユニットから出射された光量を測定したとき、該液晶表示装置の表示画面の法線に対して、観察者が前記液晶表示画面を視認するときの鉛直方向または水平方向に傾けられた出射角度50°から85°の範囲の光量の平均値が、該法線方向の光量に対して12%以下であることが好ましく、8%以下であることがさらに好ましく、4%以下であることがコントラストの観点で最も好ましい。
【0068】
特に本発明の液晶表示装置がTNモード液晶セルを用いる場合、視認者側から見てTNモード液晶セルの表示画面は、通常、横長画面の長辺を水平方向として、液晶セル内の液晶分子の配向方向を45°から135°にツイストし、前記TNモード液晶セルの面内位相差が最大となる方向が鉛直方向となるよう画面を配置するが、用途によっては逆に配置した液晶表示装置であってもよい。
特に本発明の液晶表示装置がTNモード液晶セルを用いる場合、上記集光シートが前記TNモード液晶セルの面内位相差が最大となる方向に集光し、且つその方向のサイドローブ光が少ない場合に顕著な効果を奏し、好ましいが、液晶セルの画素とのモアレを防止するためにプリズムの稜線を画素のブラックマトリックスに対して1〜20°の範囲で傾けてもよい。
【0069】
前記プリズム断面の凹凸パターンとしては、三角形状が好ましく、とりわけ二等辺三角形状がより好ましく、凸部を液晶セル側へ向けたプリズムシートであることが好ましい。
形状の特徴としては、三角形状の頂角が95〜130°が好ましく、100〜120°がより好ましい。前記頂角が95°未満であると、サイドローブ光の影響により、黒表示輝度の著しい増加の原因となりやすい。
一方、前記頂角が130°を超えると、集光効果が低下し、正面方向の輝度が低下することがある。
【0070】
また、該プリズム断面の三角形状の頂角が95°未満であっても、プリズム部とは別に光学調整部を支持体に設けることにより、サイドローブ光を低減することができ、もう一つの好ましい態様である。
また、前記支持体上の面内に所定の間隔をもって光学調整部が複数に配設されたプリズムシートも好ましい態様であり、該光学調整部としては、光反射性を有するもの、光拡散性を有するもの、屈折率差を利用するものがあり、特に光反射性を有する光学調整部であることが好ましい。
これら光学調整部は、特開2008−003515号公報、特開2008−176197号公報に記載された光学シートの光学調整部と同義である。
【0071】
−プリズムシートの製造方法−
プリズムシートの製造方法の一例について図面を参照して説明する。図7は、プリズムシートの製造装置80の構成を示す概念図である。このプリズムシートの製造装置80は、シート状体供給手段81と、塗布手段82と、乾燥手段89と、凹凸ロールであるエンボスロール83と、ニップロール84と、樹脂硬化手段85と、剥離ロール86と、保護フィルム供給手段87と、シート巻き取り手段88、等とから構成される。
プリズムシートの製造方法の詳細については、特開2008−176197号公報に記載された事項と同様である。
【0072】
[位相差フィルム]
本発明では、λ/4機能を有する位相差フィルムが用いられる。
【0073】
位相差フィルムは単層構造であっても、積層構造であってもよい。また、位相差フィルムがポリマーフィルムを含んでいると、隣接して配置される偏光膜の保護フィルムとしても利用できるので好ましい。λ/4機能を有する部材としては、位相差ポリマーフィルム、位相差ポリマーフィルムの積層体、液晶化合物の配向を固定して形成される光学異方性層、及び該光学異方性層とそれを支持するポリマーフィルムとの積層体が挙げられ、いずれも用いることができる。位相差ポリマーフィルムの例には、ポリマーフィルムを延伸してフィルム中の高分子を配向させて発現させた光学異方性を有するフィルムが含まれる。1枚又は2枚以上の二軸性フィルムによって構成することができるし、またCプレートとAプレートとの組合せ等、一軸性フィルムを2枚以上組合せることでも構成することができる。勿論、1枚以上の二軸性フィルムと、1枚以上の一軸性フィルムとを組み合わせることによっても構成することもできる。前記光学異方性層は、液晶性化合物の分子の配向によって発現された光学異方性を示す層である。光学異方性層単独でλ/4機能を有していてもよいし、支持体となるポリマーフィルムとともに、全体として、λ/4機能を有していてもよい。
【0074】
位相差フィルムの面内レターデーションRe(550)は100〜175nmであることが好ましく、110〜165nmであることがより好ましく、115〜155nmであることが更に好ましい。
位相差フィルムの厚み方向レターデーションRth(550)は−400〜260nmであることが好ましく、−200〜160nmがより好ましく、−90〜90nmが更に好ましく、−20〜20nmが最も好ましい。以上のような範囲にすることで、光の波長依存性や入射角度依存性が小さい、λ/4機能を有する位相差フィルムを得ることができる。また、理想的には450nm、550nm、630nmのいずれにおいてもReがλ/4となる波長分散となることが好ましい。すなわち、理想的な位相差フィルムは、Re(450)=112.5nm、Re(550)=137.5nm、Re(630)=157.5nmを満足する。理想的には位相差フィルムのRthは、どの波長においても0nmとなるのが好ましい。すなわち、理想的には、Rth(450)=0nm、Rth(550)=0nm、Rth(630)=0nmを満足する。
【0075】
位相差フィルム全体のReにおける波長分散は、0.80≦Re(450)/Re(550)≦1.21で、0.82≦Re(630)/Re(550)≦1.11が好ましく、(IV)1.00≦Re(450)/Re(550)≦1.18で、(V)0.92≦Re(630)/Re(550)≦1.00がより好ましい。
【0076】
位相差フィルムとしては、40℃90%RHでの透湿度が100g/m/day以下であることが好ましい。
40℃90%RHでの透湿度が、100g/m/dayを超えると、耐久性ムラを改善することができないという点で好ましくなく、その観点では、5〜100g/m/dayが好ましく、15〜80g/m/dayがより好ましい。透湿度が低すぎると、わずかな耐久性ムラが発生したときに、耐久性ムラの消失に時間がかかる場合がある。
【0077】
本発明に使用される好ましい位相差フィルムは、40℃90%RHでの透湿度が100g/m/day以下であれば特に制限されないが、環状オレフィン系樹脂を主成分として含有する環状オレフィン系ポリマーフィルムが好ましい。
【0078】
環状オレフィン系樹脂の例には、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィンの重合体、(3)環状共役ジエンの重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及び(1)〜(4)の水素化物などがある。本発明の位相差フィルムに使用される好ましい重合体はノルボルネン系(共)重合体である。
【0079】
ノルボルネン系(共)重合体としては、具体的にはノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、及びそれらの水素添加物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとの付加型共重合体などが挙げられる。これらの中でも、透明性や透湿性の観点から、ノルボルネン系モノマーの付加(共)重合体及び開環(共)重合体水素添加物が最も好ましい。
【0080】
ノルボルネン系付加(共)重合体は、特開平10−7732号公報、特表2002−504184号公報、米国特許出願公開第2004/229157号明細書あるいは国際公開第2004/070463号パンフレット等に開示されている。ノルボルネン系多環状不飽和化合物同士を付加重合する事によって得られる。また、必要に応じ、ノルボルネン系多環状不飽和化合物と、エチレン、プロピレン、ブテン;ブタジエン、イソプレンのような共役ジエン;エチリデンノルボルネンのような非共役ジエン;アクリロニトリル、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、酢酸ビニル、塩化ビニルなどの線状ジエン化合物とを付加重合することもできる。このノルボルネン系付加(共)重合体は、三井化学(株)よりアペルの商品名で発売されており、ガラス転移温度(Tg)の異なる例えばAPL8008T(Tg70℃)、APL6013T(Tg125℃)あるいはAPL6015T(Tg135℃)などのグレードがある。ポリプラスチックス(株)よりTOPAS8007(Tg80℃)、同6013(Tg140℃)、同6015(Tg160℃)などのペレットが発売されている。更に、Ferrania社よりAppear3000(Tg330℃)が発売されている。
【0081】
ノルボルネン系開環重合体水素化物は、特開平1−240517号、特開平7−196736号、特開昭60−26024号、特開昭62−19801号、特開2003−159767号あるいは特開2004−309979号等の各公報に開示されているように、多環状不飽和化合物を付加重合あるいはメタセシス開環重合したのち水素添加することにより作られる。これらのノルボルネン系樹脂は、JSR(株)からアートン(Arton)GあるいはアートンFという商品名で発売されており、また日本ゼオン(株)からゼオノア(Zeonor)750R、1020R、1600、ゼオネックス(Zeonex)250あるいは280という商品名で市販されており、これらを使用することができる。
【0082】
位相差フィルムには、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、劣化防止剤、紫外線防止剤、微粒子、剥離促進剤、赤外吸収剤など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に劣化防止剤の混合などである。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期は環状オレフィン系樹脂溶液(ドープ)作製工程において何れの段階で添加してもよいが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、環状オレフィン系樹脂フィルムが多層構成で形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。
【0083】
前記位相差ポリマーフィルム、又は前記光学異方性層の支持体として用いられるポリマーフィルムの材料については、特に制限はない。種々のポリマーフィルム、例えば、セルロースアシレート(例えば、セルローストリアセテートフィルム、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム)、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ノルボルネン等の環状オレフィン系ポリマー、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマー等が挙げられる。1種又は2種以上のポリマーを、主成分として用いることができる。市販品を用いても良く、環状オレフィン系ポリマーであるアートン(JSR社製)、非晶質ポリオレフィンであるゼオネックス(日本ゼオン社製))などを用いてもよい。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、環状オレフィン系ポリマーが好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。
【0084】
前記位相差ポリマーフィルム等の製造方法については特に制限はない。溶液製膜方法及び溶融製膜方法のいずれも利用することができる。所望の特性とするために、製膜後に延伸処理を行ってもよい。また、その上に、液晶組成物からなる光学異方性層を形成する場合は、ポリマーフィルムを表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理、鹸化処理)等してもよい。
【0085】
前記位相差ポリマーフィルムの厚みについては特に制限はないが、通常25μm〜1000μm程度のものが使用される。
【0086】
なお、後述する液晶組成物からなる光学異方性層の支持体として用いるポリマーフィルムは、低Reであってもよく、例えば、0〜50nm、0〜30nm、又は0〜10nmであってもよい。また、支持体として用いられるポリマーフィルムのRthについても、特に制限はなく、例えば、−300nm〜300nm、−100nm〜200nm、又は−60nm〜60nmであってもよい。支持体の光学特性は、その上に設けられる光学異方性層との組み合わせによって選択することが好ましい。
【0087】
前記位相差フィルムは、液晶化合物を含有する組成物からなる光学異方性層を1以上有していてもよい。液晶性化合物の種類については特に制限されない。例えば、低分子液晶性化合物を液晶状態においてネマチック配向に形成後、光架橋や熱架橋によって固定化して得られる光学異方性層や、高分子液晶性化合物を液晶状態においてネマチック配向に形成後、冷却することによって当該配向を固定化して得られる光学異方性層を用いることもできる。なお本発明では、光学異方性層に液晶性化合物が用いられる場合であっても、光学異方性層は、該液晶性化合物が重合等によって固定されて形成された層であり、層となった後はもはや液晶性を示す必要はない。重合性液晶性化合物は、多官能性重合性液晶でもよいし、単官能性重合性液晶性化合物でもよい。また、液晶性化合物は、ディスコティック液晶性化合物でもよいし、棒状液晶性化合物でもよい。
【0088】
前記光学異方性層において、液晶化合物の分子は、垂直配向、水平配向、ハイブリッド配向及び傾斜配向のいずれかの配向状態に固定化されていることが好ましい。一例は、ディスコティック液晶性化合物の円盤面がフィルム面(光学異方性層面)に対して実質的に垂直に配向している例であり、他の例は、棒状液晶性化合物の長軸がフィルム面(光学異方性層面)に対して実質的に水平に配向している例である。ディスコティック液晶性化合物が実質的に垂直とは、フィルム面(光学異方性層面)とディスコティック液晶性化合物の円盤面とのなす角度の平均値が70°〜90°の範囲内であることを意味する。80°〜90°がより好ましく、85°〜90°が更に好ましい。棒状液晶性化合物が実質的に水平とは、フィルム面(光学異方性層面)と棒状液晶性化合物のダイレクターとのなす角度が0°〜20°の範囲内であることを意味する。0°〜10°がより好ましく、0°〜5°が更に好ましい。
液晶化合物の分子をハイブリッド配向させて視野角依存性が非対称である光学異方性層を作製する場合、液晶化合物のダイレクターの平均傾斜角は5〜85°であることが好ましく、10〜80°であることがより好ましく、15〜75°であることが更に好ましい。
【0089】
前記光学異方性層は、棒状液晶性化合物又は円盤状(ディスコティック)液晶性化合物等の液晶性化合物と、所望により、後述する重合開始剤や配向制御剤や他の添加剤を含む塗布液を、支持体上に塗布することで形成することができる。支持体上に配向膜を形成し、該配向膜表面に前記塗布液を塗布して形成するのが好ましい。
【0090】
[棒状液晶性化合物]
位相差フィルムが有する光学異方性層の形成に棒状液晶性化合物を用いてもよい。棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。棒状液晶性化合物を重合によって配向を固定することがより好ましい。液晶性化合物には活性光線や電子線、熱などによって重合や架橋反応を起こしうる部分構造を有するものが好適に用いられる。その部分構造の個数は好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性棒状液晶性化合物としては、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced
Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、及び特開2001−328973号公報などに記載の化合物を用いることができる。
【0091】
[ディスコティック液晶性化合物]
本発明では、前記位相差フィルムが有する光学異方性層の形成に、ディスコティック液晶性化合物を用いるのが好ましい。ディスコティック液晶性化合物は、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994))に記載されている。ディスコティック液晶性化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
【0092】
ディスコティック液晶性化合物は、重合により固定可能なように、重合性基を有するのが好ましい。例えば、ディスコティック液晶性化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させた構造が考えられるが、但し、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に連結基を有する構造が好ましい。即ち、重合性基を有するディスコティック液晶性化合物は、下記式で表される化合物であることが好ましい。
D(−L−P)
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Pは重合性基であり、nは1〜12の整数である。前記式中の円盤状コア(D)、二価の連結基(L)及び重合性基(P)の好ましい具体例は、それぞれ、特開2001−4837号公報に記載の(D1)〜(D15)、(L1)〜(L25)、(P1)〜(P18)であり、同公報に記載の内容を好ましく用いることができる。なお、液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、30〜300℃が好ましく、30〜170℃が更に好ましい。
【0093】
下記式(I)で表わされるディスコティック液晶性化合物は、面内レターデーションの波長分散性が低く、高い面内レターデーションを発現可能であり、また特殊な配向膜や添加剤を使用しなくても高い平均傾斜角で均一性に優れた垂直配向を達成できるので、光学異方性層の形成に利用するのが好ましい。更に該液晶性化合物を含有する塗布液は、その粘度が比較的低くなる傾向があり、塗布性が良好である点でも好ましい。
【0094】
(1)−1 一般式(I)で表されるディスコティック液晶化合物
【0095】
【化1】

【0096】
式中、Y11、Y12及びY13は、それぞれ独立に置換されていてもよいメチン又は窒素原子を表し;L、L及びLは、それぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表し;H、H及びHは、それぞれ独立に一般式(I−A)又は(I−B)の基を表し;R、R及びRは、それぞれ独立に下記一般式(I−R)を表す;
【0097】
【化2】

【0098】
一般式(I−A)中、YA及びYAは、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;XAは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;*は上記一般式(I)におけるL〜L側と結合する位置を表し;**は上記一般式(I)におけるR〜R側と結合する位置を表す;
【0099】
【化3】

【0100】
一般式(I−B)中、YB及びYBは、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;XBは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;*は上記一般式(I)におけるL〜L側と結合する位置を表し;**は上記一般式(I)におけるR〜R側と結合する位置を表す;
【0101】
一般式(I−R)
*−(−L21−Qn1−L22−L23−Q
一般式(I−R)中、*は、一般式(I)におけるH〜H側と結合する位置を表す;L21は単結合又は二価の連結基を表す;Qは少なくとも1種類の環状構造を有する二価の基(環状基)を表す;n1は、0〜4の整数を表す;L22は、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−S−、**−NH−、**−SO−、**−CH−、**−CH=CH−又は**−C≡C−を表す;L23は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO−、−NH−、−CH−、−CH=CH−及び−C≡C−並びにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す;Qは重合性基又は水素原子を表す。
【0102】
前記式(I)で表される3置換ベンゼン系ディスコティック液晶化合物の各符号の好ましい範囲、及び前記式(I)の化合物の具体例については、特開2010−244038号公報の段落[0013]〜[0077]記載を参照することができる。但し、本発明に使用可能なディスコティック液晶化合物は、前記式(I)の3置換ベンゼン系ディスコティック液晶化合物に限定されるものではない。
【0103】
トリフェニレン化合物としては、特開2007−108732号公報の段落[0062]〜[0067]記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0104】
なお、前記3置換ベンゼン又はトリフェニレン化合物とともに、下記一般式(II)(より好ましくは一般式(II’))で表されるピリジニウム化合物の少なくとも1種、及び下記一般式(III)で表されるトリアジン環基を含む化合物の少なくとも1種を含有させてもよい。前記ピリジニウム化合物の添加量は、ディスコティック液晶性化合物100質量部に対し、0.5〜3質量部であるのが好ましい。また、前記トリアジン環基を含む化合物の添加量は、ディスコティック液晶性化合物100質量部に対し、0.2〜0.4質量部であるのが好ましい。
一般式(II)
【0105】
【化4】

【0106】
式中、L23及びL24はそれぞれ二価の連結基であり;R22は水素原子、無置換アミノ基、又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基であり;Xはアニオンであり;Y22及びY23はそれぞれ、置換されていてもよい5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基であり;Z21はハロゲン置換フェニル、ニトロ置換フェニル、シアノ置換フェニル、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が2〜20のアルキニル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基、炭素原子数が2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基および炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基からなる群より選ばれる一価の基であり;pは1〜10の数であり;並びにmは1又は2である。
一般式(III)
【0107】
【化5】

【0108】
式中、R31、R32及びR33は、末端にCF基を有するアルキル基又はアルコキシ基を表し、但し、アルキル基(アルコキシ基中のアルキル基も含む)中の隣接していない2以上の炭素原子は、酸素原子又は硫黄原子に置換されていてもよい;X31、X32及びX33は、アルキレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−、−SO−、又はこれらの群より選ばれる二価の連結基を少なくとも二つ組み合わせた基を表し;m31、m32及びm33はそれぞれ、1〜5の数である。上記式(III)中、R31、R32及びR33はそれぞれ、下記式で表される基であるのが好ましい。
−O(C2nn1O(C2mm1−C2k+1
式中、n及びmはそれぞれ1〜3であり、n1及びm1はそれぞれ1〜3であり、kは1〜10である。
一般式(II’)
【0109】
【化6】

【0110】
式(II’)中、式(II)と同一の符号は同一の意義であり;L25はL24と同義であり;R23、R24及びR25はそれぞれ、炭素原子数が1〜12のアルキル基を表し、n3は0〜4、n4は1〜4、及びn5は0〜4を表す。
る。
【0111】
前記光学異方性層の形成に用いられる重合性液晶性組成物は、少なくとも1種以上含有しており、また、前記組成物とともに添加剤の1種以上を含有していてもよい。使用可能な添加剤の例として、空気界面配向制御剤、ハジキ防止剤、重合開始剤、重合性モノマー等について説明する。
【0112】
空気界面配向制御剤:
前記組成物は、空気界面においては空気界面のチルト角で配向する。このチルト角は、液晶性組成物に含まれる液晶性化合物の種類や添加剤の種類等で、その程度が異なるため、目的に応じて空気界面のチルト角を任意に制御する必要がある。
【0113】
前記チルト角の制御には、例えば、電場や磁場のような外場を用いることや添加剤を用いることができるが、添加剤を用いることが好ましい。このような添加剤としては、炭素原子数が6〜40の置換もしくは無置換脂肪族基、又は炭素原子数が6〜40の置換もしくは無置換脂肪族置換オリゴシロキサノキシ基を、分子内に1本以上有する化合物が好ましく、分子内に2本以上有する化合物が更に好ましい。例えば、空気界面配向制御剤としては、特開2002−20363号公報に記載の疎水性排除体積効果化合物を用いることができる。
また、特開2009−193046号公報等に記載のフルオロ脂肪族基含有ポリマーも同様な作用があるので空気界面配向制御剤として添加することができる。
【0114】
空気界面側の配向制御用添加剤の添加量としては、前記組成物(塗布液の場合は固形分、以下同様である)に対して、0.001質量%〜20質量%が好ましく、0.01質量%〜10質量%が更に好ましく、0.1質量%〜5質量%がより更に好ましい。
【0115】
ハジキ防止剤:
前記組成物に添加し、該組成物の塗布時のハジキを防止するための材料としては、一般に高分子化合物を好適に用いることができる。
使用するポリマーとしては、前記組成物の傾斜角変化や配向を著しく阻害しない限り、特に制限はない。
ポリマーの例としては、特開平8−95030号公報に記載があり、特に好ましい具体的ポリマー例としてはセルロースエステル類を挙げることができる。セルロースエステルの例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース及びセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。
前記組成物の配向を阻害しないように、ハジキ防止目的で使用されるポリマーの添加量は、前記組成物に対して一般に0.1〜10質量%の範囲にあり、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
【0116】
重合開始剤:
前記組成物は、重合開始剤を含有しているのが好ましい。重合開始剤を含有する前記組成物を用いると、液晶相形成温度まで加熱した後、重合させ冷却することによって液晶状態の配向状態を固定化して、光学異方性層を作製することもできる。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応と電子線照射による重合反応が含まれるが、熱により支持体等が変形、変質するのを防ぐためにも、光重合反応又は電子線照射による重合反応が好ましい。
【0117】
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)等が挙げられる。
光重合開始剤の使用量は、前記組成物の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0118】
重合性モノマー:
前記組成物には、重合性のモノマーを添加してもよい。本発明で使用できる重合性モノマーとしては、併用される液晶化合物と相溶性を有し、液晶性組成物の配向阻害を著しく引き起こさない限り、特に限定はない。これらの中では重合活性なエチレン性不飽和基、例えばビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基などを有する化合物が好ましく用いられる。上記重合性モノマーの添加量は、併用される液晶化合物に対して一般に0.5〜50質量%の範囲にあり、1〜30質量%の範囲にあることが好ましい。また反応性官能基数が2以上のモノマーを用いると、配向膜との密着性を高める効果が期待できるため、特に好ましい。
【0119】
前記組成物は、塗布液として調製してもよい。塗布液の調製に使用する溶剤としては、汎用の有機溶剤が好ましく用いられる。汎用の有機溶剤の例には、アミド系溶剤(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド系溶剤(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環系溶剤(例、ピリジン)、炭化水素系溶剤(例、トルエン、ヘキサン)、アルキルハライド系溶剤(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル系溶剤(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン系溶剤(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル系溶剤(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。エステル系溶剤及びケトン系溶剤が好ましく、特にケトン系溶剤が好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0120】
前記光学異方性層は、前記組成物を、配向状態とし、その配向状態を固定することで、作製することができる。以下に、製造方法の一例について説明するが、この方法に限定されるものではない。
まず、重合性液晶性化合物を少なくとも含有する組成物を支持体の表面上(配向膜を有する場合は配向膜表面)に塗布する。所望により加熱等して、所望の配向状態で配向させる。次に、重合反応等を進行させて、その状態を固定して、光学異方性層を形成する。この方法に用いられる前記組成物に添加可能な添加剤の例としては、前記した空気界面配向制御剤、ハジキ防止剤、重合開始剤、重合性モノマー等が挙げられる。
【0121】
塗布は、公知の方法(例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により行うことができる。
【0122】
均一に配向した状態を実現するためには、配向膜を利用するのが好ましい。配向膜は、ポリマー膜(例えば、ポリビニルアルコール膜及びイミド膜等)の表面をラビング処理することで形成されるものが好ましい。本発明に利用するのに好ましい配向膜の例には、特開2006−276203号公報の[0130]〜[0175]に記載のあるアクリル酸コポリマー又はメタクリル酸コポリマーの配向膜が含まれる。当該配向膜を利用すると、液晶化合物のゆらぎを抑制でき高コントラスト化が達成できるので好ましい。
【0123】
次に、配向状態を固定するために、重合を実施するのが好ましい。前記組成物中に光重合開始剤を含有させ、光照射により重合を開始するのが好ましい。光照射には、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ/cm〜50J/cmであることが好ましく、50mJ/cm〜800mJ/cmであることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。また、雰囲気の酸素濃度は重合度に関与するため、空気中で所望の重合度に達しない場合には、窒素置換等の方法により酸素濃度を低下させることが好ましい。好ましい酸素濃度としては、10%以下が好ましく、7%以下がさらに好ましく、3%以下がよりさらに好ましい。
【0124】
本発明で配向状態が固定化された状態とは、その配向が保持された状態が最も典型的、且つ好ましい態様ではあるが、それだけには限定されず、具体的には、通常0℃〜50℃、より過酷な条件下では−30℃〜70℃の温度範囲において、該固定化された組成物に流動性が無く、また外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態を指すものである。なお、配向状態が最終的に固定化され光学異方性層が形成された際に、前記組成物はもはや液晶性を示す必要はない。例えば、結果的に熱、光等による反応により重合又は架橋反応が進行し、高分子量化して、液晶性化合物が液晶性を失ってもよい。
【0125】
前記光学異方性層の厚さについては特に制限されないが、一般的には、0.1〜10μm程度であるのが好ましく、0.5〜5μm程度であるのがより好ましい。
【0126】
前記光学異方性層の形成には、配向膜を利用してもよく、配向膜としては、ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールを主成分とする膜の表面をラビング処理したもの等を利用することができる。
【0127】
なお、本発明に利用する前記位相差フィルム及び光学異方性層は、長尺の状態で連続的に製造されることが好ましい。更に、長手方向に対して遅相軸が平行でも直交でもない方向にあることが、ロールツーロールの方式で、偏光膜と、その遅相軸を偏光膜の吸収軸に対して45°又は135°として貼り合わせできるので好ましい。すなわち、位相差フィルム及び光学異方性層の遅相軸と長辺とのなす角度は、5〜85°であることが好ましい。
液晶組成物から形成される光学異方性層の遅相軸の角度は、ラビングの角度で調整できる。延伸フィルムの遅相軸は、延伸方向によって遅相軸の角度が調整できる。
【0128】
[液晶セル]
本発明の立体用画像表示システムに用いられる立体用画像表示装置に利用される液晶セルは、VAモード、OCBモード、IPSモード、又はTNモードであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、更に60〜120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)及び(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、及びPSA(Polymer−Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006−215326号公報、及び特表2008−538819号公報に詳細な記載がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の透過軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10−54982号公報、特開平11−202323号公報、特開平9−292522号公報、特開平11−133408号公報、特開平11−305217号公報、特開平10−307291号公報などに開示されている。
【0129】
前記の各種モードの液晶セルには視野角や色味を補償する目的で偏光膜と液晶セルの間に光学補償用の光学補償フィルムを用いることができる。
本発明においては、特にTNモード液晶セルに光学補償フィルムを用いる態様が顕著な効果を奏し、好ましい。
【0130】
《液晶セルを光学補償するための光学補償フィルム》
〈フィルムを形成するポリマー材料〉
液晶セルを光学補償するための光学補償フィルムを形成するポリマー材料としては、特に限定されないが、例えば、セルロースエステル、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー等を利用することができる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ノルボルネン等のシクロポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマー等から1種又は2種以上のポリマーを選択し、主成分として用いてポリマーフィルムを作製し利用することができる。また汎用されている市販品のポリマーフィルムを用いることもできる。
【0131】
この中で、セルロースエステルを用いることが好ましく、偏光板加工適正、光学発現性、透明性、機械特性、耐久性、コスト等の観点から、アセチル基等のアシル基を有するセルロースアシレートを用いることが特に好ましい。
【0132】
〈セルロースアシレート〉
前記光学補償フィルムの材料としてセルロースアシレートを使用する場合、前記光学補償フィルムは、1種又は2種以上のセルロースアシレートを主成分として含有する。ここで「主成分として含有する」とは、フィルムの材料として用いられているセルロースアシレートが1種である場合は、当該セルロースアシレートをいい、複数種である場合は、最も高い割合で含有されるセルロースアシレートをいう。
セルロースには、β−1,4結合しているグルコース単位当り、2位、3位及び6位に遊離の水酸基がある。セルロースアシレートは特に限定はされないが、セルロースアセテート、またはアセチル基と他のアシル基を有するセルロースアシレートを用いることが好ましい。
これらの3つの水酸基のうち平均で2.00〜2.80の水酸基の水素原子がアシル基に置換され、好ましい第一の態様としては、全てがアセチル基であることである。
また、好ましい第二の態様としては、3つの水酸基のうち平均で2.00〜2.80の水酸基の水素原子がアシル基に置換され、且つそのうち0.50〜1.50がプロピオニル基及び/又はブチリル基で置換されているセルロースアセテート・プロピオネート、セルロースアセテート・ブチレート、又はセルロースアセテート・プロピオネート・ブチレートを用いることである。
好ましい第二の態様としては、セルロースアセテート・プロピオネートを用いることが特に好ましい。
【0133】
総アシル基置換度が2.00未満であると、無置換のヒドロキシ基が多く存在し、フィルムの湿度依存性が大きくなり、液晶表示装置の光学部材としての用途等、湿度に対する耐久性を必要とされる用途には適さなくなる。一方、総アシル基置換度が、2.80を超えてしまうと、Re及びRthの発現性が低下し、好ましくない。双方の観点では、好ましい第一の態様、第二の態様ともに総アシル基置換度は、2.20〜2.70であるのがより好ましく、2.40〜2.60であるのがさらに好ましい。
3層共流延法により製造する場合は、コア層のセルロースアシレートの総アシル基置換度が上記範囲であることが好ましく、それより外側の層(以下ではスキン層という)のセルロースアシレートの総アシル置換度は、2.70を超え3.00以下であることが好ましく、2.75〜2.90であることが特に好ましい。
【0134】
一方、好ましい第二の態様としてセルロースアシレートのプロピオニル基及び/又はブチリル基の置換度は、フィルムのRe及びRthの発現性に影響するとともに、フィルムの湿度依存性及び弾性率にも影響する。プロピオニル基及び/又はブチリル基の置換度を0.5〜1.5とすることで、これらの両立した好ましい特性を得ることができる。プロピオニル基及び/又はブチリル基置換度は0.60〜1.10がより好ましく、0.80〜1.00であるのがさらに好ましい。
なお、本明細書では、セルロースアシレートのアシル基置換度は、セルロースの構成単位質量当りの結合脂肪酸量を測定して算出することができる。測定方法は、「ASTM D817−91」に準じて実施する。
【0135】
セルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができ、前記セルロースアシレートフィルムに対しては特に限定されるものではない。
【0136】
前記セルロースアシレートは、350〜800の質量平均重合度を有することが好ましく、370〜600の質量平均重合度を有することがさらに好ましい。また本発明に用いるセルロースアシレートは、60000〜230000の数平均分子量を有することが好ましく、70000〜230000の数平均分子量を有することがさらに好ましく、78000〜120000の数平均分子量を有することがよりさらに好ましい。
【0137】
前記セルロースアシレートは、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。工業的に最も一般的な合成方法としては、以下の通りである。綿花リンタや木材パルプなどから得たセルロースをアセチル基並びにプロピオニル基及び/又はブチリル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)又はそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)を含む混合有機酸成分でエステル化し、目的のセルロースアシレートを合成することができる。
【0138】
〈可塑剤〉
前記光学補償フィルムは、可塑剤を含有していてもよい。前記光学補償フィルムの主成分(例えばセルロースアシレート)との相溶性が良い可塑剤は、ブリードアウトが生じ難く、低ヘイズであり、更に含水率及び透湿度を低減させるので、高品質で高耐久性を有するフィルムを得るのに有効である。
【0139】
前記光学補償フィルムに使用可能な可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、カルボン酸エステル系可塑剤、ポリエステルオリゴマー系可塑剤、糖エステル系可塑剤、エチレン性不飽和モノマー共重合体系可塑剤などが挙げられる。
好ましくはリン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系化合物、多価アルコールエステル系可塑剤、ポリエステルオリゴマー系可塑剤、糖エステル系可塑剤、エチレン性不飽和モノマー共重合体系可塑剤であり、より好ましくは多価アルコール系可塑剤、ポリエステルオリゴマー系可塑剤、糖エステル系可塑剤、エチレン性不飽和モノマー共重合体系可塑剤であり、さらに好ましくは糖エステル系可塑剤である。
特にポリエステルオリゴマー系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、糖エステル系可塑剤、及びエチレン性不飽和モノマー共重合体系可塑剤はセルロースアシレートとの相溶性が高く、ブリードアウト低減、低ヘイズ及び低透湿度の効果が高く、また温湿度変化や経時による可塑剤の分解及びフィルムの変質や変形が生じ難いため、好ましい。
【0140】
光学補償フィルムとして二軸性フィルムを用いる態様では、中でも、可塑剤として、糖エステル系可塑剤、ポリエステルオリゴマー系可塑剤、及び多価アルコール系可塑剤は、光学発現性に優れるために特に好ましく、糖エステル系可塑剤はさらにセルロースアシレートと構造が近いために、非常に低ヘイズなフィルムの作製が可能となるため、最も好ましい。
【0141】
本発明において、可塑剤は1種のみで用いてもよいし、2種以上を混合して使用することもできる。可塑剤を2種類以上混合して使用する場合、1種類のみを用いることよりも相溶性が良好となり、ブリードアウト低減、低ヘイズとなる可能性が高い。これは、セルロースアシレートフィルムとの1種の可塑剤との相溶性を、他の1種の可塑剤が相溶化剤的に働くことで改善させるからであると推定している。
可塑剤を2種類以上混合して使用する場合、少なくとも1種は糖エステル系可塑剤、またはポリエステルオリゴマー系可塑剤であることが好ましく、糖エステル系可塑剤であることがさらに好ましい。
【0142】
前記光学補償フィルムにおいて、可塑剤の含有量は、主成分ポリマー(例えばセルロースアシレート)に対して0.1〜50質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることが更に好ましく、7〜15質量%であることが特に好ましい。
【0143】
〈リン酸エステル系可塑剤〉
リン酸エステル系可塑剤としては特に限定されないが、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート(BDP)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェートなどが挙げられる。
【0144】
〈フタル酸エステル系可塑剤〉
フタル酸エステル系可塑剤としては特に限定されないが、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、メチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジベンジルフタレートなどが挙げられる。
【0145】
〈グリコレート系可塑剤〉
グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。
アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
【0146】
〈多価アルコールエステル系可塑剤〉
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環又はシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
【0147】
本発明に好ましく用いることのできる多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。
特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
【0148】
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
【0149】
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、メトキシ基或いはエトキシ基などのアルコキシ基を1〜3個を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
【0150】
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。分子量がこの範囲であると、低揮散で、透湿性、セルロースエステルとの相溶性も良好であって好ましい。
【0151】
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化されていてもよいし、一部がOH基のままのこっていてもよい。
【0152】
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
【0153】
【化7】

【0154】
【化8】

【0155】
【化9】

【0156】
【化10】

【0157】
〈ポリエステルオリゴマー系可塑剤〉
本発明におけるポリエステルオリゴマーは、ジオールとジカルボン酸とから、例えば、混合して得られる重縮合体である。
ポリエステルオリゴマーの数平均分子量は300〜3000であることが好ましい。
ポリエステルオリゴマーの数平均分子量はGPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて通常の方法で測定することができる。
例えば、カラム(東ソー(株)製 TSKgel Super HZM−H、TSKgel Super HZ4000及びTSKgel Super HZ2000)の温度を40℃として、溶離液としてTHFを用い、流速を0.35ml/minとし、検出をRI、注入量を10μl、試料濃度を1g/lとし、また標準試料としてポリスチレンを用いて行うことができる。
【0158】
ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。これらジカルボン酸は、ポリエステルオリゴマー中には、ジオール残基とのエステル結合するジカルボン酸残基として含まれる。
【0159】
芳香族ジカルボン酸残基:
芳香族ジカルボン酸残基は、ジオールと芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸とから得られた重縮合体に含まれる。
芳香族ジカルボン酸残基とはポリエステルオリゴマーの部分構造で、ポリエステルオリゴマーを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジカルボン酸HOOC−R−COOHより形成されるジカルボン酸残基は−OC−R−COーである。
本発明に用いるポリエステルオリゴマーを構成する全ジカルボン酸残基中の芳香族ジカルボン酸残基比率は特に限定されないが、40mol%〜100mol%であることが好ましい。
芳香族ジカルボン酸残基比率を40mol%以上とすることで、十分な光学異方性を示すセルロースアシレートフィルムが得られる。
【0160】
本発明に用いる芳香族ジカルボン酸は、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸又は2,6−ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができる。
ポリエステルオリゴマーには混合に用いた芳香族ジカルボン酸により芳香族ジカルボン酸残基が形成される。
【0161】
芳香族ジカルボン酸は、平均炭素数が8.0〜12.0であることが好ましく、8.0〜10.0であることがより好ましく、8.0であることが更に好ましい。この範囲であれば、セルロースアシレートとの相溶性に優れ、セルロースアシレートフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいため好ましい。また、光学用途として光学補償フィルムに用いるに適した異方性を十分に発現し得るセルロースアシレートフィルムとすることができるため好ましい。
【0162】
具体的には、芳香族ジカルボン酸は、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸の少なくとも1種を含むことが好ましく、より好ましくはフタル酸、テレフタル酸の少なくとも1種を含み、更に好ましくはテレフタル酸を含む。すなわち、ポリエステルオリゴマーの形成における混合に、芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸を用いることで、よりセルロースアシレートとの相溶性に優れ、セルロースアシレートフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいセルロースアシレートフィルムとすることができる。また、芳香族ジカルボン酸は1種でも、2種以上を用いてもよい。2種用いる場合は、フタル酸とテレフタル酸を用いることが好ましい。
【0163】
脂肪族ジカルボン酸残基:
脂肪族ジカルボン酸残基は、ジオールと脂肪族ジカルボン酸を含むジカルボン酸とから得られた重縮合体に含まれる。
本明細書中では、脂肪族ジカルボン酸残基とはポリエステルオリゴマーの部分構造で、ポリエステルオリゴマーを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジカルボン酸HOOC−R−COOHより形成されるジカルボン酸残基は−OC−R−CO−である。
本発明で好ましく用いられる脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
重縮合体には混合に用いた脂肪族ジカルボン酸より脂肪族ジカルボン酸残基が形成される。
脂肪族ジカルボン酸残基は、平均炭素数は特に限定されないが、4.0〜6.0であることが好ましく、4.0〜5.0であることがより好ましく、4.0〜4.8であることが更に好ましい。この範囲であれば、セルロースアシレートとの相溶性に優れ、セルロースアシレートフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいため好ましい。
具体的には、コハク酸残基を含むことが好ましく、2種用いる場合は、コハク酸残基とアジピン酸残基を含むことが好ましい。
すなわち、ポリエステルオリゴマーの形成における混合に、脂肪族ジカルボン酸は1種でも、2種以上を用いてもよく、2種用いる場合は、コハク酸とアジピン酸を用いることが好ましい。
コハク酸とアジピン酸の2種の脂肪族ジカルボン酸を用いることにより、ジオール残基の平均炭素数を少なくすることができ、セルロースアシレートとの相溶性の点で好ましい。
また、脂肪族ジカルボン酸残基の平均炭素数が4.0未満では合成が困難となるため、使用できない。
【0164】
ジオール:
ジオール残基は、ジオールとジカルボン酸とから得られたポリエステルオリゴマーに含まれる。
本明細書中では、ジオール残基とはポリエステルオリゴマーの部分構造で、ポリエステルオリオゴマーを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジオールHO−R−OHより形成されるジカルボン酸残基は−O−R−O−である。
ポリエステルオリゴマーを形成するジオールとしては芳香族ジオール及び脂肪族ジオールが挙げられ、特に限定はされないが、脂肪族ジオールが好ましい。
ポリエステルオリゴマーのジオールは特に限定はされないが、平均炭素数が2.0以上3.0以下の脂肪族ジオール残基を含むことが好ましい。脂肪族ジオール残基の平均炭素数が3.0より大きいとセルロースアシレートとの相溶性が低く、ブリードアウトが生じやすくなり、また、化合物の加熱減量が増大し、セルロースアシレートウェブの乾燥時の工程汚染が原因と考えられる面状故障が発生する可能性が高まる。また、脂肪族ジオール残基の平均炭素数が2.0未満では合成が困難となるため、使用できない。
【0165】
前記脂肪族ジオールとしては、アルキルジオール又は脂環式ジオール類を挙げることができ、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール、ジエチレングリコール等があり、これらはエチレングリコールとともに1種又は2種以上の混合物として使用されることが好ましい。
【0166】
好ましい脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、及び1,3−プロパンジオールの少なくとも1種であり、特に好ましくはエチレングリコール、及び1,2−プロパンジオールの少なくとも1種である。2種用いる場合は、エチレングリコール、及び1,2−プロパンジオールを用いることが好ましい。
ポリエステルオリゴマーには混合に用いたジオールによりジオール残基が形成される。
【0167】
封止:
前記ポリエステルオリゴマーの両末端は封止、未封止を問わないが、より好ましくは封止しているものである。
ポリエステルオリゴマーの両末端が未封止の場合、重縮合体はポリエステルポリオールであることが好ましい。
ポリエステルオリゴマーの両末端が封止されている場合、モノカルボン酸と反応させて封止することが好ましい。このとき、該重縮合体の両末端はモノカルボン酸残基となっている。
【0168】
本明細書中では、モノカルボン酸残基とはポリエステルオリゴマーの部分構造で、ポリエステルオリゴマーを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばモノカルボン酸R−COOHより形成されるモノカルボン酸残基はR−CO−である。モノカルボン酸封止は芳香族モノカルボン酸、脂肪族カルボン酸のどちらを用いてもよい。モノカルボン酸は、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、安息香酸及びその誘導体等が好ましい。封止に用いるモノカルボン酸は2種以上を混合してもよい。
【0169】
本発明に係るポリエステルオリゴマーの合成は、常法によりジオールとジカルボン酸とのポリエステル化反応又はエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。また、本発明に係るポリエステルオリゴマーについては、村井孝一編者「可塑剤 その理論と応用」(株式会社幸書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
【0170】
本発明のポリエステルオリゴマーが含有する原料の脂肪族ジオール、ジカルボン酸エステル、又はジオールエステルのセルロースアシレートフィルム中の含有量は、1質量%未満が好ましく、0.5質量%未満がより好ましい。ジカルボン酸エステルとしては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジ(ヒドロキシエチル)、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジ(ヒドロキシエチル)、アジピン酸ジ(ヒドロキシエチル)、コハク酸ジ(ヒドロキシエチル)等が挙げられる。ジオールエステルとしては、エチレンジアセテート、プロピレンジアセテート等が挙げられる。
【0171】
ポリエステルオリゴマーの水酸基価の測定は、日本工業規格 JIS K3342(廃止)に記載の無水酢酸法当を適用できる。ポリエステルオリゴマーがポリエステルポリオールである場合は、水酸基価が55以上220以下であることが好ましく、100以上140以下であることが更に好ましい。
【0172】
以下に、本発明に利用可能なポリエステルオリゴマー系可塑剤の具体例を下記表1に示すが、以下の具体例に限定されるものではない。
【0173】
【表1】

【0174】
〈糖エステル系可塑剤〉
糖エステル系可塑剤で好ましいものとしては、フラノース構造又はピラノース構造を1個以上12個以下有する化合物中の水酸基の少なくとも1つをエステル化したエステル化合物が挙げられる。
【0175】
フラノース構造又はピラノース構造を1個以上12個以下有する化合物中の水酸基の少なくとも1つをエステル化したエステル化合物としては、
フラノース構造又はピラノース構造を1個有する化合物(化合物(A))中の水酸基の全てもしくは一部をエステル化したエステル化化合物;及び
フラノース構造又はピラノース構造の少なくとも1種を2個以上12個以下結合した化合物(化合物(B))中の水酸基の全てもしくは一部をエステル化したエステル化化合物;が挙げられる。
以下、化合物(A)のエステル化化合物、及び化合物(B)のエステル化化合物を総称して、糖エステル化合物とも称す。
また、前記エステル化化合物が単糖類(α−グルコース、β−フルクトース)の安息香酸エステル、若しくは下記一般式(5)で表される単糖類の−OR512、−OR515、−OR522、−OR525の任意の2つ以上が脱水縮合して生成したm5+n5=2〜12の多糖類の安息香酸エステルであることが好ましい。
【0176】
【化11】

【0177】
前記一般式中の安息香酸は更に置換基を有していてもよく、例えばアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、フェニル基が挙げられ、更にこれらのアルキル基、アルケニル基、フェニル基は置換基を有していてもよい。
好ましい化合物(A)及び化合物(B)の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
化合物(A)の例としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、或いはアラビノースが挙げられる。
化合物(B)の例としては、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノース或いはケストース挙げられる。このほか、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。
これらの化合物(A)及び化合物(B)の中で、特にフラノース構造とピラノース構造を両方有する化合物が好ましい。例としてはスクロース、ケストース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオースなどが好ましく、更に好ましくは、スクロースである。また、化合物(B)において、フラノース構造若しくはピラノース構造の少なくとも1種を2個以上3個以下結合した化合物であることも、好ましい態様の1つである。
【0178】
本発明における化合物(A)及び化合物(B)中の水酸基の全て若しくは一部をエステル化するのに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。
【0179】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
【0180】
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
【0181】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、アルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができ、より、具体的には、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、γ−イソジュリル酸、ジュリル酸、メシト酸、α−イソジュリル酸、クミン酸、α−トルイル酸、ヒドロアトロパ酸、アトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、サリチル酸、o−アニス酸、m−アニス酸、p−アニス酸、クレオソート酸、o−ホモサリチル酸、m−ホモサリチル酸、p−ホモサリチル酸、o−ピロカテク酸、β−レソルシル酸、バニリン酸、イソバニリン酸、ベラトルム酸、o−ベラトルム酸、没食子酸、アサロン酸、マンデル酸、ホモアニス酸、ホモバニリン酸、ホモベラトルム酸、o−ホモベラトルム酸、フタロン酸、p−クマル酸を挙げることができるが、特に安息香酸が好ましい。
【0182】
上記化合物(A)及び化合物(B)をエステル化したエステル化化合物の中では、エステル化によりアセチル基が導入されたアセチル化化合物またはベンゾイル基が導入されたベンゾイル化化合物、またはアセチル基とベンジル基の両方が導入された化合物が好ましい。
【0183】
上記化合物(A)及び化合物(B)のエステル化化合物に加えて、オリゴ糖のエステル化化合物を、フラノース構造若しくはピラノース構造の少なくとも1種を3〜12個結合した化合物として適用できる。
オリゴ糖は、澱粉、ショ糖等にアミラーゼ等の酵素を作用させて製造されるもので、本発明に適用できるオリゴ糖としては、例えば、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖が挙げられる。
【0184】
〈添加剤〉
前記光学補償フィルムには、前記可塑剤以外の添加剤(例、レターデーション調節剤、波長分散調整剤、剥離促進剤、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン、紫外線吸収剤、赤外吸収剤など)の少なくとも1種を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、効果の発現及びフィルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)の抑制の観点から、例えば溶液製膜法においては、製膜に用いる溶液(ドープ)の0.01〜1質量%であることが好ましく、0.01〜0.2質量%であることが更に好ましい。
特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トリベンジルアミン(TBA)を挙げることができる。
【0185】
〈マット剤微粒子〉
前記光学補償フィルムには、マット剤を添加してもよい。マット剤として使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、且つ見かけ比重が70g/リットル以上であるものがフィルムのヘイズを下げることができるため、好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0186】
これらの微粒子は、通常、平均粒子径が0.1〜3.0μm程度の2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μm程度の凹凸を形成させる。2次平均粒子径は0.2μm〜1.5μm程度が好ましく、0.4μm〜1.2μm程度がさらに好ましく、0.6μm〜1.1μm程度がさらに好ましい。1次、及び2次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とした。
【0187】
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0188】
これらの中で、アエロジル200V及びアエロジルR972Vが1次平均粒子径が20nm以下で、且つ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0189】
〈光学補償フィルムの製造方法〉
前記光学補償フィルムとして用いられるセルロースアシレートフィルムは、溶液製膜法(ソルベントキャスト法)によって製膜されたフィルムであるのが好ましい。以下、具体例として、セルロースアシレートフィルムの製造方法について説明するが、本発明に用いられる光学補償フィルムは、セルロースアシレートフィルムに限定されるものではない。
【0190】
(ソルベントキャスト法)
ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解して調製されたドープを、金属等からなる支持体の表面にキャストして、乾燥して製膜し、その後、膜を支持体面から剥ぎ取り、所望により延伸処理することで製造される。
【0191】
ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造する。該ドープの調製に用いられる溶媒は、有機溶媒から選択することができる。有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、及び炭素原子数が1〜6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を少なくとも含むことが好ましい。
エーテル、ケトン及びエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトン及びエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する溶媒の上記した好ましい炭素原子数範囲内であることが好ましい。
【0192】
炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトールが含まれる。
炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート及びペンチルアセテートが含まれる。
二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール及び2−ブトキシエタノールが含まれる。
【0193】
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1又は2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましく、35〜65モル%であることがさらに好ましく、40〜60モル%であることがよりさらに好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
二種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
【0194】
調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造する。ドープには前記の可塑剤等の添加剤を添加することが好ましい。
【0195】
ドープは、ドラム又はバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ドープは、表面温度が10℃以下のドラム又はバンド上に流延することが好ましい。
【0196】
ドープ(セルロースアシレート溶液)をバンド上に流延する場合、剥ぎ取り前乾燥の前半において10秒以上90秒以下、好ましくは15秒以上90秒以下の時間、実質的に無風で乾燥する工程を行う。また、ドラム上に流延する場合、剥ぎ取り前乾燥の前半において1秒以上10秒以下、好ましくは2秒以上5秒以下の時間、実質的に無風で乾燥する工程を行うことが好ましい。
【0197】
本明細書において、「剥ぎ取り前乾燥」とはバンドもしくはドラム上にドープが塗布されてからフィルムとして剥ぎ取られるまでの乾燥を指すものとする。また、「前半」とはドープ塗布から剥ぎ取りまでに要する全時間の半分より前の工程を指すものとする。「実質的に無風」であるとは、バンド表面もしくはドラム表面から200mm以内の距離において0.5m/s以上の風速が検出されない(風速が0.5m/s未満である)ことである。
剥ぎ取り前乾燥の前半は、バンド上の場合通常30〜300秒程度の時間であるが、その内の10秒以上90秒以下、好ましくは15秒以上90秒以下の時間、無風で乾燥する。ドラム上の場合は通常5〜30秒程度の時間であるが、その内の1秒以上10秒以下、好ましくは2秒以上5秒以下の時間、無風で乾燥する。雰囲気温度は0℃〜180℃が好ましく、40℃〜150℃がさらに好ましい。無風で乾燥する操作は剥ぎ取り前乾燥の前半の任意の段階で行うことができるが、好ましくは流延直後から行うことが好ましい。無風で乾燥する時間が、バンド上の場合に10秒未満(ドラム上の場合に1秒未満)であると、添加剤がフィルム内に均一に分布することが難しく、90秒を超えると(ドラム上の場合10秒を超えると)乾燥不十分で剥ぎ取られることになり、フィルムの面状が悪化する。
剥ぎ取り前乾燥における無風で乾燥する以外の時間は、不活性ガスを送風することにより乾燥を行なうことができる。このときの風温は0℃〜180℃が好ましく、40℃〜150℃がさらに好ましい。
【0198】
ソルベントキャスト法における乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。バンド又はドラム上での乾燥は空気、窒素などの不活性ガスを送風することにより行なうことができる。
【0199】
得られたフィルムをドラム又はバンドから剥ぎ取り、さらに100〜160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラム又はバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
【0200】
調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)を用いて二層以上の流延を行いフィルム化することもできる。この場合、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを作製することが好ましい。ドープは、ドラム又はバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が10〜40%の範囲となるように濃度を調整することが好ましい。ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。
【0201】
二層以上の複数のセルロースアシレート液を流延する場合、複数のセルロースアシレート溶液を流延することが可能で、支持体の進行方向に間隔をおいて設けられた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよい。例えば、特開昭61−158414号、特開平1−122419号、及び、特開平11−198285号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってもフィルム化することができる。例えば、特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、及び、特開平6−134933号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押し出すセルロースアシレートフィルムの流延方法を用いることもできる。
【0202】
また、二個の流延口を用いて、第一の流延口により支持体に成形したフィルムを剥ぎ取り、支持体面に接していた側に第二の流延を行うことにより、フィルムを作製することもできる。例えば、特公昭44−20235号公報に記載の方法を挙げることができる。
流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液を用いてもよいし、異なるセルロースアシレート溶液を用いてもよい。複数のセルロースアシレート層に機能をもたせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押し出せばよい。さらに本発明のセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、紫外線吸収層、偏光層など)と同時に流延することもできる。
【0203】
従来の単層液では、必要なフィルムの厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースアシレート溶液を押し出すことが必要である。その場合セルロースアシレート溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良となったりして問題となることが多かった。この問題の解決方法として、複数のセルロースアシレート溶液を流延口から流延することにより、高粘度の溶液を同時に支持体上に押し出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアシレート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができる。
【0204】
とりわけ、3層以上の積層構造を有していることが、寸法安定性や環境湿熱変化に伴うカール量低減の観点から好ましい。また、前記低置換度層の両面に前記高置換度層を有する場合、所望の光学特性を実現させる工程における自由度向上の観点から好ましい。
なお、3層以上の積層構造を有している場合に限り、フィルム製膜時に支持体と接していない側の表面層のことをスキンA層とも言う。
【0205】
特に、スキンB層/コア層/スキンA層の3層構造であることが好ましい。3層構造の場合、高置換度層/低置換度層/高置換度層という構成であっても低置換度層/高置換度層/低置換度層という構成であってもよいが、高置換度層/低置換度層/高置換度層の構成であることが、溶液製膜時の支持体からの剥離性を改善する観点および寸法安定性の観点から好ましい。
3層構造であるとき、両面の表面層に含まれるセルロースアシレートは同じアシル置換度のセルロースアシレートを用いることが、製造コスト、寸法安定性および環境湿熱変化に伴うカール量低減の観点から好ましい。
【0206】
前記セルロースアシレートフィルムは、例えば、幅は0.5〜5mであり、より好ましくは0.7〜3mの形態として作製されてもよい。また、前記セルロースアシレートフィルムは、巻長300〜30000m、より好ましくは500〜10000m、さらに好ましくは1000〜7000mの形態として作製されてもよい。
【0207】
〈延伸〉
前記光学補償フィルムとして、上記方法で作製されたセルロースアシレートフィルムに、さらに延伸処理を施し、そのレターデーションを調整した延伸フィルムを用いてもよい。積極的に幅方向(製膜時の流延方向と直交する方向)に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、及び特開平11−48271号の各公報などに記載されている。フィルムの延伸は、常温又は加熱条件下で実施する。加熱温度は、フィルムのガラス転移温度を挟む±20℃であることが好ましい。これは、ガラス転移温度より極端に低い温度で延伸すると、破断しやすくなり所望の光学特性を発現させることができない。また、ガラス転移温度より極端に高い温度で延伸すると、延伸により分子配向したものが熱固定される前に、延伸時の熱で緩和し配向を固定化することができず、光学特性の発現性が悪くなる。
【0208】
さらに、延伸ゾーン(例えばテンターゾーン)において、フィルムを噛み込み、搬送し最大拡幅率を経た後に、通常緩和させるゾーンを設ける。これは軸ずれを低減するのに効果的なゾーンである。通常の延伸ではこの最大拡幅率を経た後の緩和率ゾーンでは、テンターゾーンを通過させるまでの時間は1分より短く、フィルムの延伸は、搬送方向あるいは幅方向だけの一軸延伸でもよく同時あるいは逐次2軸延伸でもよいが、幅方向により多く延伸することが好ましい。幅方向、即ち製膜時の流延方向と直交する方向、に1.4倍〜2倍の倍率で延伸処理するのが好ましく、より好ましくは延伸倍率は1.4倍〜1.6倍であり、さらに好ましくは延伸倍率は1.4倍〜1.5倍である。
【0209】
延伸処理は製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。前者の場合には残留溶剤量を含んだ状態で延伸を行ってもよく、残留溶剤量(残留溶剤量/(残留溶剤量+固形分量))が0.05〜50%で好ましく延伸することができる。残留溶剤量が0.05〜5%の状態で5〜80%延伸を行うことが特に好ましい。
【0210】
また、前記光学補償フィルムとして、上記方法で作製されたセルロースアシレートフィルムに二軸延伸処理を施した二軸延伸処理フィルムを用いてもよい。
二軸延伸には、同時二軸延伸法と逐次二軸延伸法があるが、連続製造の観点から逐次二軸延伸方法が好ましく、ドープを流延した後、バンドもしくはドラムよりフィルムを剥ぎ取り、幅方向(長手方法)に延伸した後、長手方向(幅方向)に延伸される。
【0211】
これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。
【0212】
また、上記した通り、幅方向、即ち流延方向と直交する方向、に延伸処理をしたフィルムは、その後、100℃以上に加熱された水蒸気を吹き付けられる工程を経て製造されるのが好ましい。この水蒸気の吹付け工程を経ることにより、製造されるセルロースアシレートフィルムの残留応力が緩和されて、寸度変化が小さくなるので好ましい。水蒸気の温度は100℃以上であれば特に制限はないが、フィルムの耐熱性などを考慮すると、水蒸気の温度は、200℃以下となるであろう。
【0213】
前記方法により長尺状に作製したセルロースアシレートフィルムは、巻き取り機により巻き取って、ロール形態として、保管・搬送等してもよい。巻き取り機は一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
【0214】
〈面内軸バラツキ〉
本発明に使用する前記光学補償フィルムは、面内の軸バラツキが1.0°以下であり、好ましくは0.5°以下、より好ましくは0.4°以下、さらに好ましくは0.3°以下である。理想的には0°である。この面内の軸バラツキが1.0°を超越してしまうと、(クロスニコル配置においても想定外の位相差が発生することにより黒表示時の光モレが増加するため、)好ましくない。
【0215】
〈ヘイズ値〉
本発明に使用する前記光学補償フィルムは、全ヘイズ値が1.0%以下であり、好ましくは0.60%以下、より好ましくは0.30%以下、さらに好ましくは0.25%以下、最も好ましくは0.20%以下である。理想的には0%である。全ヘイズ値が1.0%を超越すると、(フィルム表面及び内部での光の拡散が黒表示時の光モレの原因となるため、)好ましくない。
光学補償フィルムの全ヘイズ(H)はJIS K−7136に従ってヘイズメーターNDH2000(日本電色工業(株))等を用いて測定することができる。
また内部ヘイズ値は0.50%以下であり、好ましくは0.30%以下、より好ましくは0.10%以下、さらに好ましくは0.05%以下、最も好ましくは0.03%以下である。理想的には0%である。内部ヘイズ値が0.50%を超越すると、(フィルム内部での光の拡散が黒表示時の光モレの原因となるため、)好ましくない。
【0216】
〈光学特性〉
本発明に使用する前記光学補償フィルムの好ましい例は、光学補償フィルムの3方向の屈折率において、面内最大方向をnx、nxと垂直方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとした場合、nx>ny>nzを満足する光学補償フィルムである。
【0217】
また、前記光学補償フィルムの面内レターデーションRe(=(nx−ny)×d;dはフィルムの膜厚を表す。)は、波長590nmにおいて1〜200nmが好ましく、より好ましくは5〜100nm、さらに好ましくは15〜80nm、特に好ましくは30〜60nmである。また、前記光学補償フィルムの厚み方向レターデーションRth(={(nx+ny)/2−nz}×d;dはフィルムの膜厚を表す。)は、波長590nmにおいて、80〜400nmが好ましく、より好ましくは75nm〜200nm、さらに好ましくは80〜150nm、特に好ましくは90〜140nmである。
【0218】
〈膜厚〉
前記光学補償フィルムの膜厚は、特に限定されないが、10〜200μmであることが好ましい。薄型化の観点では、膜厚は薄いほどよいが、10μm未満であると、取り扱い性が損なわれる傾向がある。より好ましくは10〜80μm、さらに好ましくは10〜60μm、特に好ましくは10〜50μm、最も好ましくは10〜40μmである。
【0219】
スキンB層/コア層/スキンA層の3層構造であって、順に高置換度層/低置換度層/高置換度層という好ましい態様においては、前記高置換度層の平均膜厚が0.1μm以上10μm未満の範囲が好ましく、0.5μm以上5μm未満の範囲がより好ましい。スキン層が0.1μm未満になると、剥離性が不十分となり、スジ状のムラ、フィルムの膜厚不均一あるいは光学特性不均一を招きやすい。
また、スキン層が10μm以上になると、全体の膜厚を薄形する上でコア層の厚みが制限されるため、コア層の光学発現性を有効に利用することが難しくなる。
【0220】
《吸収型偏光板》
前記光学補償フィルムは、偏光板の保護フィルムとして用いることができる。本発明に使用可能な偏光板の一例は、偏光膜とその両面を保護する二枚の偏光板保護フィルムからなり、前記光学補償フィルムを少なくとも一方の偏光板保護フィルムとして有する。光学補償フィルムは、液晶セルと偏光膜との間に配置される。前記光学補償フィルムを偏光板保護フィルムとして用いる場合、前記光学補償フィルムには前記表面処理(特開平6−94915号公報、同6−118232号公報にも記載)を施して親水化しておくことが好ましく、例えば、グロー放電処理、コロナ放電処理、又は、アルカリ鹸化処理などを施すことが好ましい。特に、前記表面処理としてはアルカリ鹸化処理が最も好ましく用いられる。
【0221】
前記偏光膜としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸したもの等を用いることができる。ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸した偏光膜を用いる場合、接着剤を用いて偏光膜に本発明の透明光学補償フィルムの表面処理面を直接貼り合わせることができる。このように、本発明の光学補償フィルムが偏光膜と直接貼合されていることが好ましい。前記接着剤としては、ポリビニルアルコール又はポリビニルアセタール(例えば、ポリビニルブチラール)の水溶液や、ビニル系ポリマー(例えば、ポリブチルアクリレート)のラテックスを用いることができる。特に好ましい接着剤は、完全鹸化ポリビニルアルコールの水溶液である。
【0222】
一般に液晶表示装置は二枚の偏光板の間に液晶セルが設けられるため、4枚の偏光板保護フィルムを有する。前記光学補償フィルムは、4枚の保護フィルムのうち、偏光膜と液晶セルの間に配置される保護フィルムとして用いることができる。勿論、偏光膜のさらに外側に配置される保護フィルムとして用いてもよい。また、前記偏光膜を挟んで該光学補償フィルムの反対側に配置される保護フィルムには、透明ハードコート層、防眩層、反射防止層などを設けることができ、これらの層を有する保護フィルムは、液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムとして用いるのが好ましい。
【0223】
偏光膜の透過軸と前記光学補償フィルムの平均遅相軸とを平行にして貼り合わせてもよいし、偏光膜の透過軸と前記光学補償フィルムの平均遅相軸とを直交にして貼り合わせてもよい。ポリビニルアルコール(PVA)系偏光膜等は、一般的にはMD方向に吸収軸を有し、TD方向に透過軸を有するので、製造適性の観点で、MD方向を一致させて、長尺状のPVA系偏光膜と、長尺状の前記光学補償フィルムとを貼り合わせる場合は、前者の態様の偏光板を作製するためには、平均遅相軸がTD方向にある前記光学補償フィルムを用い、後者の態様の偏光板を作製するためには、平均遅相軸がMD方向にある前記光学補償フィルムを用いることが好ましい。偏光膜の透過軸と本発明の光学補償フィルムの平均遅相軸を平行または垂直に配置することで、想定外の位相差を発生させること無く、優れた補償効果を得ることができる。
【0224】
偏光膜の膜厚は、好ましくは5〜30μmであり、特に好ましくは10〜25μmである。
【0225】
偏光膜の他方の表面(即ち液晶表示装置に組み込んだ際に、偏光膜の外側になる表面)に貼合する保護フィルムについては、なんら制限はない。種々のポリマーフィルム、例えば、セルロースアシレート、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー等を利用することができる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ノルボルネン等のシクロポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマー等から1種又は2種以上のポリマーを選択し、主成分として用いてポリマーフィルムを作製し保護フィルムとして利用することができる。また汎用されている市販品のポリマーフィルムを用いることもできる。
【実施例】
【0226】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0227】
[実施例1]
(樹脂液1の調製)
以下に記載の化合物を、下記に記載の重量比にて混合した後、50℃で加熱し攪拌混合することにより樹脂液1を得た。
・EB3700:エベクリル3700、ダイセルUC(株)製 ビスフェノールAタイプエポキシアクリレート(粘度:2200mPa・s/65°C)
60質量部
・BPE200:NKエステルBPE−200、新中村化学(株)製 エチレンオキシド付加ビスフェノールAメタクリル酸エステル(粘度:590mPa・s/25°C)
20質量部
・BR−31:ニューフロンティアBR−31、第一工業製薬工業(株)製 トリブロモフェノキシエチルアクリレート(常温で固体、融点50°C以上)
100質量部
・M−110 :アロニックスM−110、東亞合成(株)製 エチレンオキシドを反応させたp−クミルフェノールの(メタ)アクリレート(粘度:150mPa・s/25°C)
20質量部
・Lucirin TPO−L:BASF(株)製ラジカル発生剤 2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキシド
4質量部
・MEK:メチルエチルケトン 68質量部
【0228】
(集光シート1の作成)
透明支持体である膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム(TD−80UF、富士フイルム(株)製)上に、前記調整した樹脂液1を、スロットダイを有するコーターを用い、乾燥後の厚さが20μmとなるように、塗布量を調整して塗布し、熱風循環式の乾燥装置により、100℃で乾燥を行った。
【0229】
次に、樹脂液を塗布した透明支持体を、ニップローラと凹凸ローラにてニップ圧0.5Paで挟み込むことにより、樹脂層に三角状の頂部と三角状の谷底部を有するプリズム状の凹凸パターンを形成し、透明シートを作製した。形成したパターンは、頂部の頂角が90°の三角状で、谷底部も平坦部分のない溝の角度が90°の三角状であった。周期は50μmであり、深さは約25μmであった。
【0230】
その後に、前記透明シートを、凹凸ローラに巻き付けた状態で、メタルハライドランプにより露光し、膜を硬化させ、金型から剥離し、集光シート1を作製した。
【0231】
(位相差フィルム1の作成)
市販の膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム(TD−80UL、富士写真フイルム(株)製)を、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムのバンド面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/mで塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアシレートフィルムを作製した。
【0232】
────────────────────────────────────
アルカリ溶液組成(質量部)
────────────────────────────────────
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
界面活性剤
SF−1:C1429O(CHCHO)20H 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
────────────────────────────────────
【0233】
上記のように鹸化処理した長尺状のセルロースアシレートフィルムに、下記の組成の配向膜塗布液を#14のワイヤーバーコーターで23.5mL/m塗布した。60℃の温風で60秒、更に100℃の温風で120秒乾燥した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
配向膜塗布液の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
光重合開始剤(イルガキュアー2959、チバ・ジャパン製) 0.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0234】
【化12】

【0235】
上記構造式において、各構造単位の比は質量比である。
【0236】
上記作製した配向膜に連続的にラビング処理を施した。このとき、長尺状のフィルムの長手方向と搬送方向は平行であり、フィルム長手方向に対して、ラビングローラーの回転軸は時計回りに45°の方向とした。
【0237】
下記の組成のディスコティック液晶化合物を含む塗布液Aを上記作製した配向膜上にワイヤーバーで連続的に塗布した。フィルムの搬送速度(V)は36m/minとした。塗布液の溶媒の乾燥及びディスコティック液晶化合物の配向熟成のために、120℃の温風で90秒間加熱した。続いて、80℃にてUV照射を行い、液晶化合物の配向を固定化し厚さ1.77μmの光学異方性層を形成し、位相差フィルム1を得た。作製した位相差フィルム1は、550nmにおけるRe(550)が138nm、Rth(550)が−5nmであった。遅相軸の方向はラビングローラーの回転軸と直交していた。すなわち、支持体の長手方向に対して、遅相軸は反時計回りに45°の方向であった。ディスコティック液晶性分子の円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、ディスコティック液晶がフィルム面に対して垂直に配向していることを確認した。なお、Re(550)及びRth(550)は自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。位相差フィルムの40℃90%RHでの24時間あたりの透湿度は、330g/m/dayであった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層塗布液(A)の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
下記のディスコティック液晶化合物 91質量部
アクリレートモノマー *1 5質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部
下記のピリジニウム塩 0.5質量部
下記のフッ素系ポリマー(FP1) 0.2質量部
下記のフッ素系ポリマー(FP3) 0.1質量部
メチルエチルケトン 189質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
*1:エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)
【0238】
【化13】

【0239】
【化14】

【0240】
上記フッ素ポリマー(FP3)の構造式において、各構造単位の比は質量比である。
【0241】
(液晶表示装置1の作成)
上記作成した集光シート1、位相差フィルム1をシャープ社製液晶表示装置LC−46LX1に、各部材の位置関係が図1と同じ配置になるように挿入して液晶表示装置1を作製した。面光源、反射型偏光板、液晶セル、一対の吸収型偏光板はシャープ社製液晶表示装置LC−46LX1に組み込まれていたものを利用した。
【0242】
[比較例1]
実施例1で作製した集光シート1の透明支持体を厚さ100μmの透明なPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムとした集光シート2とした以外は実施例1と同様にして液晶表示装置2を作製した。
【0243】
実施例、比較例で作製した集光シートの構成を表2に、液晶表示装置の構成を表3に示す。
【0244】
【表2】

【0245】
【表3】

【0246】
[表示性能評価]
作成した液晶表示装置の輝度を正面からBM5A(Topcon社製)を用いて測定した。その結果を表4に示す。集光シートの透明支持体としてReの小さいフィルムを用いた実施例1の方が高い輝度が得られた。
【0247】
【表4】

【0248】
(実施例2)
(光学補償フィルム1の作製)
<セルロースアシレート溶液1Cの調製>
セルロースアシレートおよび下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液1Cを調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液1Cの組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレートCE−1 100.0質量部
ポリエステルオリゴマーA−1 10.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 403.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.2質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0249】
<セルロースアシレート溶液1Sの調製>
セルロースアシレートおよび下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液1Sを調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液1Sの組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレートCE−2 100.0質量部
ポリエステルオリゴマーA−1 5.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 403.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.2質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0250】
<マット剤溶液1の調製>
下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液1を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤溶液1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒子サイズ16nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、 日本アエロジル(株)製) 2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 72.4質量部
メタノール(第2溶媒) 10.8質量部
セルロースアシレート溶液1S 10.3質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0251】
CE−1:アセチル置換度2.42、全置換度2.42
CE−2:アセチル置換度2.81、全置換度2.81
【0252】
【表5】

【0253】
流延方法としては、ドープを金属製のバンド流涎機で外層(バンド層)用ドープ/コア層用ドープ/外層(エア層)用ドープの順に三層共流延を行い、乾燥させた後、剥ぎ取りドラムによりフィルムをバンドから剥ぎ取った。
コア層用ドープはセルロースアシレート溶液1C、外層用ドープは、セルロースアシレート溶液1Sの100質量部に対して、上記マット剤溶液1を1.35質量部を混合したものとした。
185℃の雰囲気温度で残留溶媒含量1%未満の上記フィルムを固定端一軸延伸で延伸倍率1.05倍のMD延伸を行った後、185℃の雰囲気温度で残留溶媒含量1%未満の上記フィルムをテンターゾーンで延伸倍率1.30倍のTD延伸を行った。
その後、クリップを外して乾燥させ、幅2000mmの光学補償フィルム1を製造した。作製された光学補償フィルム1の残留溶媒量は0.1%であり、全膜厚は50μm(バンド層、エア層とも2μmに設定)であった。
【0254】
得られた光学補償フィルムの測定波長550nmでの面内位相差Re、厚さ方向位相差Rth、全ヘイズ、を本文に記載の方法で測定した。測定条件は25℃60%相対湿度で、フィルムをこの環境に十分な時間置いた後で測定を行った。
結果を表6に記載する。
【0255】
(偏光板1の作製)
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。
次に、作製した光学補償フィルム1を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて偏光膜の片側に貼り付けた。このとき、ポリビニルアルコールの長手方向と光学補償フィルム1の長手方向が一致するように貼り付け、光学補償フィルム1の遅相軸および偏光膜の透過軸が平行になるように配置した。
この様にして、偏光板1を作製した。
【0256】
(偏光板2の作製)
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。
次に、光学補償フィルム1の作製過程でTD延伸を行わなかったセルロース系フィルム1を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて偏光膜の片側に貼り付けた。このとき、ポリビニルアルコールの長手方向と前記セルロース系フィルム1の長手方向が一致するように貼り付けた。
この様にして、偏光板2を作製した。
【0257】
【表6】

【0258】
さらにバックライトに用いるための下記のプリズムシートを作製した。
【0259】
<実施例2に用いる集光シートの作製>
下記のようにしてプリズムシートを作製した。
〔プリズム層塗布液の調整〕
下記処方のプリズム層塗布液を調製した。
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、50℃に加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、塗布液を調製した。なお、硬化後のプリズム層の屈折率は1.59であった。前記プリズム層の屈折率は、同一の液を平坦な塗布膜として形成し、プリズムカプラー屈折率測定機(SPA4000 Sairon Technology Inc.)により測定した。
・エベクリル3700(ダイセルUBC(株)製)・・・2.55質量部
・NKエステルBPE−200(新中村化学(株)製)・・・0.85質量部
・アロニックスM−110(東亞合成(株)製)・・・0.85質量部
・ニューフロンティアBR−31(第一工業製薬(株)製)・・・4.25質量部
・メチルエチルケトン・・・2.89質量部
・ルシリンTPO−L(BASF(株)製)・・・0.17質量部
【0260】
〔プリズムシートAの作製〕
透明支持体である膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム(TD−80UF、富士フイルム(株)製)上に、前記で調製したプリズム層塗布液を乾燥質量で14g/mとなるように塗布し、80℃で1分間乾燥させた後、該プリズム層を、断面形状が頂角90°の二等辺三角形であり、ピッチ(底辺の長さ)50μmのストライプ状にプリズム形状が彫刻された金属の型(金型)に押し当てた。この押し当て状態で、前記支持体のプリズム層を有する側とは反対の表面(第二の表面)側から、高圧水銀灯により露光し、膜を硬化させ、金型から剥離し、プリズムシートA(凹凸部を形成した支持体)を得た。
【0261】
<白色反射層用塗布液の調製>
下記処方で、光学調整部形成用の白色反射層用塗布液を調製した。
[ホワイト顔料分散母液の組成]
・ポリビニルブチラール(エスレックB BL−SH、積水化学工業(株)製)・・・2.7質量部
・ルチル型酸化チタン(JR805、テイカ(株)製、質量平均粒子径0.29μm)・・・35.0質量部
・分散助剤(ソルスパース20000、アビシア(株)製)・・・0.35質量部
・n−プロピルアルコール・・・62.0質量部
上記組成物を、アイガー社製モーターミルM50によりジルコニアビーズを用いて分散し、ホワイト顔料分散母液を調製した。
【0262】
[白色反射層塗布液の組成]
・上記で調製されたホワイト顔料分散母液・・・1,200質量部
・ワックス系化合物
ステアリン酸アミド(ニュートロン2、日本精化(株)製)・・・5.7質量部
ベヘン酸アミド(ダイヤミッドBM、日本化成(株)製)・・・5.7質量部
ラウリン酸アミド(ダイヤミッドY、日本化成(株)製)・・・5.7質量部
パルミチン酸アミド(ダイヤミンドKP、日本化成(株)製)・・・5.7質量部
エルカ酸アミド(ダイヤミッドL−200、日本化成(株)製)・・・5.7質量部
オレイン酸アミド(ダイヤミッドO−200、日本化成(株)製)・・・5.7質量部
・ロジン(KE−311、荒川化学(株)製、成分:樹脂酸80〜97%;樹脂酸成分:アビエチン酸30〜40%、ネオアビエチン酸10〜20%、ジヒドロアビエチン酸14%、テトラヒドロアビエチン酸14%)・・・80.0質量部
・界面活性剤(メガファックF−780F、固形分30%、大日本インキ化学工業社製)・・・16.0質量部
・n−プロピルアルコール・・・1,600質量部
・メチルエチルケトン・・・580質量部
【0263】
<白色反射シートの作製>
厚み25μmのPET製支持体上に、前記で調製した白色反射層塗布液を、乾燥膜厚が2μmになるように塗布し、100℃で2分間乾燥させ、白色反射シートを作製した。
【0264】
<ポジ型感光層用塗布液の調製>
下記処方のポジ型感光層用塗布液を調製した。
・フェノールノボラック樹脂(住友デュレズ株式会社製、PR−50716、融点:76℃)・・・2.5質量部
・フェノールノボラック樹脂(住友デュレズ株式会社製、PR−51600B、融点:55℃)・・・3.5質量部
・1,2−ナフトキノン(2)ジアジド−4−スルフォン酸クミルフェノールエステル・・・2.0質量部
・メチルエチルケトン・・・40質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート・・・20質量部
・界面活性剤(大日本インキ株式会社製、メガファックF−176PF)・・・0.1質量部
【0265】
<アルカリ現像液の調製>
下記組成のアルカリ現像液を調製した。
・炭酸ナトリウム・・・59質量部
・重炭酸ナトリウム・・・32質量部
・水・・・720質量部
・ブチルセロソルブ・・・1質量部
【0266】
<集光性の光学シート:プリズムシートBの作製>
図8に示すように、前記で作製したプリズムシートA(凹凸部5を形成した支持体2)の平坦な第二の表面4側に、前記で調製したポジ型感光層用塗布液を、乾燥膜厚が0.5μmになるように塗布し、100℃で2分間乾燥させ、前記支持体2の第二の表面4上にポジ型感光層8を形成した。
次に、図9に示すように、前記支持体2の凹凸部5を形成した第一の表面3側から、平行光線照射機(マスクアライメント装置M−2L、ミカサ(株)製)を用いて、平坦な前記第二の表面4の法線方向に平行に紫外線照射し、前記ポジ型感光層を露光した。図9に符号6で示す部分が、光の不通過部(光束密度の低い部分)である。
【0267】
次いで、前記で調製したアルカリ現像液を用いて、ポジ型感光層の露光部を洗い流し、図10に示すように、支持体2の第二の表面4であって光の不通過部6に、部分的にポジ型感光層8を有する支持体2を得た。
上記部分的にポジ型感光層8を有する支持体2の、前記ポジ感光層8が形成された第二の表面4に、図11に示すように、前記で作製した白色反射層9を設けた白色反射シート10を、粘着性を有する前記ポジ型感光層8に第二の表面4に白色反射層9が接触するように配置し、ラミネート装置にて熱ラミネート(速度:0.5m/min.加熱温度:80℃)した。その後、図12に示すように、白色反射シート10を支持体2から剥離することにより、前記ポジ型感光層8の形成部に12μm巾のストライプ状に、白色反射層9が転写された支持体2を得て、プリズムシートBを形成した。該白色反射層9が、サイドローブ防止部7であり、その光反射率は、71%であった。
【0268】
〔プリズムシートCの作製〕
透明支持体である膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム(TD−80UF、富士フイルム(株)製)上に、前記で調製したプリズム層塗布液を乾燥質量で14g/mとなるように塗布し、80℃で1分間乾燥させた後、該プリズム層を、断面形状が頂角110°の二等辺三角形であり、ピッチ(底辺の長さ)50μmのストライプ状にプリズム形状が彫刻された金属の型(金型)に押し当てた。この押し当て状態で、前記支持体の第二の表面側から、高圧水銀灯により露光し、膜を硬化させ、金型から剥離し、プリズムシートC(凹凸部を形成した支持体)を得た。
【0269】
<バックライトユニットの作製>
市販品の液晶表示装置から取り外した面光源、反射型偏光板、及び実施例1で作製した位相差フィルム1、上記の各プリズムシートを図1と同じ配置になるようにバックライトユニットを作製した。
作製した頂角が90°であるプリズムシートA、頂角が90°であるプリズムシートであって、さらに部分的に光反射性を有するサイドローブ防止部7が複数形成された集光性の光学シートであるプリズムシートB、頂角が110°であるプリズムシートCを、表8の内容となるように配置した。
なお、共通して使用した面光源の底面には反射板が配置されているため、プリズムシートがなくても一定の光利用効率の向上がある。
【0270】
<正面輝度の評価方法>
上記プリズムシートを設置した各バックライトユニット平面光源上に、輝度計(BM−7:トプコン(株))を設置し、光度の測定を行った。プリズムシートのないバックライト平面光源のみの正面輝度を1としたときの、プリズムシートを敷いた場合の正面輝度の倍率を用いて輝度評価を行い、以下のように分類した。
A: 1.5以上
B: 1.3以上、1.5未満
C: 1.1以上、1.3未満
D: 1.1未満
【0271】
<バックライト光の出射角度分布の測定>
上記プリズムシートを設置したバックライトユニットについて、輝度計(BM−7:トプコン(株))にて、光度の測定を行った。
正面を0°として、プリズムシートの集光方向に対して受光機を5°刻みで±85°走査し、プリズムシートから出射される光度の角度分布を測定し、出射角度50°から85°の範囲で測定した光量の平均値を求め、表8に記載した。
なお、光度と出射角度の関係を各プリズムシートについて正面(0°)で測定した光度(cd)を基準に規格化して図13に示す。
【0272】
<液晶表示装置の作製>
液晶セルと偏光板が表7に記載した内容となるように、さらに各プリズムシートを組み込んだバックライトユニットが表8に記載した内容となるように液晶表示装置(ディスプレイ20〜28)を組み立てた。
なお、液晶セルはTNモードの市販品であるサムスン製LS−XL2370KFを使用し、画面の長辺方向を水平方向、短辺方向が鉛直方向とし、上記の偏光板1又は偏光板2に偏光板を貼り替えた。その際、各偏光板はEモード配置(基板上の液晶分子の配向方向とそれに接する偏光板の透過軸が平行の配置)にした。
各プリズムシートは、凸部を液晶セル側へ向けてあり、その集光方向は、表7、表8に記載するように鉛直方向、又は水平方向となるように配置した。
【0273】
(正面コントラストの評価方法)
表7、表8の内容の液晶表示装置(ディスプレイ20〜28)の正面コントラストを評価した。
25℃、60%RHの環境下でコントラスト測定器(ELDIM社製、EZContrast)を用いて、正面コントラストを計測した。
評価基準を、比較例であるディスプレイ25の正面コントラスト値に対する相対比として以下の基準で評価した。
A:正面コントラスト相対比が1.15以上
B:正面コントラスト相対比が1.10以上、1.15未満
C:正面コントラスト相対比が1.05以上、1.10未満
D:正面コントラスト相対比が1.05未満
【0274】
正面輝度、正面コントラストの評価結果を表8に示した。
偏光板に光学補償フィルム1を用い、さらに集光方向を鉛直方向となるようにプリズムシートB、Cを配置したディスプレイ22及び23の性能は、正面輝度の高さに加えて正面コントラストも優れていた。
【0275】
【表7】

【表8】

【符号の説明】
【0276】
1 プリズムシート
2 支持体
3 第一の表面
4 第二の表面
5 凹凸部
6 不通過部
7 サイドローブ防止部
8 ポジ型感光層
9 白色反射層
10 吸収型偏光板(フロント)
11 液晶セル
12 吸収型偏光板(リア)
13 反射型偏光板
14 位相差フィルム
15 集光シート
16 面光源
17 反射率増加層
41 プリズムシート
80 プリズムシート製造装置
81 シート供給手段
82 塗布手段
83 エンボスロール
84 ニップロール
85 樹脂硬化手段
86 剥離ロール
87 保護フィルム供給手段
88 シート巻取り手段
89 乾燥手段
100 液晶表示装置
W 支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示面側から順に、一対の吸収型偏光板に挟まれた液晶セルと、反射型偏光板と、位相差フィルムと、集光シートと、面光源とを有する液晶表示装置であって、前記位相差フィルムがλ/4機能を有し、且つ前記集光シートが屈折率等方性材料からなる液晶表示装置。
【請求項2】
前記集光シートが透明支持体と、集光層とからなり、前記透明支持体の波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が20nm以下である請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記集光層の屈折率が1.55以上である請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記位相差フィルムの厚み方向レターデーションRth(550)が−90nm〜90nmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記位相差フィルムの少なくともどちらか一方の面がランダムな凹凸を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記位相差フィルムのランダムな凹凸の平均傾斜角θaが2°〜5°である請求項5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記反射型偏光板と前記位相差フィルムと前記集光シート及び前記面光源からなるバックライトユニットから出射された光量を測定したとき、該液晶表示装置の表示画面の法線に対して、観察者が前記液晶表示画面を視認するときの鉛直方向または水平方向に傾けられた出射角度50°から85°の範囲の光量の平均値が、該法線方向の光量に対して12%以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記吸収型偏光板は、各々偏光膜とその両側に保護フィルムを有し、各々の偏光膜と前記液晶セルの間に配置される保護フィルムの少なくとも一方が光学補償フィルムであり、
前記光学補償フィルムの面内レターデーションRe(550)が1〜200nmであり、厚み方向レターデーションRth(550)が80〜400nmである、請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記液晶セルがTNモードである請求項7又は8に記載の液晶表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−47794(P2013−47794A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−163977(P2012−163977)
【出願日】平成24年7月24日(2012.7.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】