説明

液晶装置用基板、及び液晶装置の製造方法

【課題】表示品質を向上させることが可能な液晶装置用基板、及び液晶装置の製造方法を提供する。
【解決手段】液晶装置用基板200は、ウエハ200aに面付けされた一対の基板を構成する第1素子基板10a、第2素子基板10b、第1対向基板20a、及び第2対向基板20bを備え、複数の素子基板10a,10b及び複数の対向基板20a,20bは、無機配向膜を構成する柱状構造物の積層方向が互いに揃うようにウエハ200aに配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置用基板、及び液晶装置用基板を用いて製造する液晶装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記液晶装置は、例えば、無機配向膜が形成された一対の基板間に、シール材を介して液晶が注入封止された構造となっている。液晶装置の製造方法は、一対の基板のうち一方の基板に画素電極を形成し、画素電極上に、例えば、斜方蒸着法によって無機配向膜を形成する。次に、他方の基板に共通電極を形成し、共通電極上に、例えば、一方の基板と同様の方法を用いて、無機配向膜を形成する。
【0003】
しかし、無機配向膜の原料となる無機材料をチャンバー内でウエハに蒸着させた際、ウエハを配置する位置によって無機配向膜の方位角(柱状構造物の積層方向)が異なってしまい、一対の基板において方位角の対称性が得られないという問題があった。これにより、液晶装置の表示品質が劣化するという問題があった。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1に記載のように、チャンバー内においてウエハを同心円状に配置することにより、ウエハに蒸着される無機配向膜の方位角の対称性を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−160711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ウエハをチャンバー内に同心円状に配置する方法は手間や工数がかかり作業性が悪い。また、一方の基板が面付けされたウエハと、他方の基板が面付けされたウエハとを、別々のタイミングで無機配向膜を形成し貼り合わせる方法では、無機配向膜の方位角の対称性を維持するのに限界があるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例に係る液晶装置用基板は、ウエハに面付けされた一対の基板を構成する素子基板及び対向基板を備え、前記素子基板及び前記対向基板は、無機配向膜の積層方向が互いに揃うように前記ウエハに配置されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、無機配向膜の積層方向が揃うように素子基板及び対向基板が1つのウエハに面付けされているので、このウエハに無機配向膜を積層させ、素子基板と対向基板とを貼り合わせることにより、互いの配向方向を所定の方向に合わせることが可能となる。よって、配向特性がばらつくことを抑えることができ、表示品質を向上させることができる。
【0010】
[適用例2]上記適用例に係る液晶装置用基板において、前記ウエハにオリフラが設けられており、前記素子基板又は前記対向基板は、前記素子基板の外周の一端面、又は前記対向基板の外周の一端面が、前記オリフラの面と略平行になるように前記ウエハに配置されていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、素子基板の外周の一端面、又は対向基板の外周の一端面が、オリフラの面と平行になるように配置されているので、各基板の配置位置を正規の位置に決めることができる。
【0012】
[適用例3]上記適用例に係る液晶装置用基板において、前記無機配向膜は、蒸着によって形成されていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、蒸着によって無機配向膜が形成されているので、無機配向膜を構成する、例えば、柱状構造物を所定の方向に積層させることができる。
【0014】
[適用例4]本適用例に係る液晶装置の製造方法は、上記に記載の液晶装置用基板をチャンバー内に配置する配置工程と、前記チャンバー内において前記液晶装置用基板に無機配向膜を形成する無機配向膜形成工程と、前記素子基板と前記対向基板とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
この方法によれば、チャンバー内に配置したウエハの素子基板及び対向基板に無機配向膜を形成し、1つのウエハから切り出した素子基板と対向基板とを貼り合わせるので、無機配向膜の積層方向を所定の方向に揃えることが可能となり、配向特性がばらつくことを抑えることができる。よって、表示品質を向上させることができる液晶装置の製造方法を提供することができる。
【0016】
[適用例5]上記適用例に係る液晶装置の製造方法において、前記無機配向膜形成工程の後、前記素子基板又は前記対向基板に液晶滴下法を用いて液晶を供給することが好ましい。
【0017】
この方法によれば、液晶滴下法(ODF法)を用いて液晶を供給するので、効率よく液晶装置を形成することができる。
【0018】
[適用例6]上記適用例に係る液晶装置の製造方法において、前記ウエハにおける前記無機配向膜の形成面側には、所望の位置に前記無機配向膜を形成するためのシャッターが配置されており、前記無機配向膜形成工程は、前記シャッターに対して前記ウエハを所定の方向に移動させることにより、前記ウエハに前記無機配向膜を形成することが好ましい。
【0019】
この方法によれば、シャッターに対してウエハを所定の方向に移動させるので、例えば、素子基板及び対向基板と無機配向膜の積層方向の角度を揃えることが可能となり、バランスのとれた無機配向膜を形成することができる。
【0020】
[適用例7]上記適用例に係る液晶装置の製造方法において、前記無機配向膜形成工程は、無機材料を蒸着によって前記ウエハに成膜することが好ましい。
【0021】
この方法によれば、蒸着によって無機配向膜を形成するので、無機配向膜を構成する、例えば、柱状構造物を所定の方向に積層させてつくることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は液晶装置の構造を示す模式平面図、(b)は(a)に示す液晶装置のH−H’線に沿う模式断面図。
【図2】液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図。
【図3】無機配向膜が形成された液晶装置の構造を示す模式断面図。
【図4】第1無機配向膜及び第2無機配向膜の成膜方向(柱状構造物の積層方向の方位角)の関係を示す模式図。
【図5】液晶装置の製造方法を工程順に示すフローチャート。
【図6】液晶装置の製造方法の一部であるウエハに素子基板及び対向基板を形成した状態(液晶装置用基板)を示す模式平面図。
【図7】液晶装置の製造方法の一部で用いられる蒸着装置の構造を示す模式図であり、(a)は上方から見た平面図、(b)は側方から見た側面図。
【図8】本実施形態の液晶装置に印加された電圧と流れる電流との関係を示すグラフ。
【図9】変形例の液晶装置用基板の構成を示す模式平面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大又は縮小して表示している。
【0024】
なお、以下の形態において、例えば「基板上に」と記載された場合、基板の上に接するように配置される場合、又は基板の上に他の構成物を介して配置される場合、又は基板の上に一部が接するように配置され、一部が他の構成物を介して配置される場合を表すものとする。
【0025】
本実施形態では、薄膜トランジスター(Thin Film Transistor:TFT)を画素のスイッチング素子として備えたアクティブマトリックス型の液晶装置を例に挙げて説明する。この液晶装置は、例えば、投射型表示装置(液晶プロジェクター)の光変調素子(液晶ライトバルブ)として好適に用いることができるものである。
【0026】
<液晶装置の構成>
図1(a)は、液晶装置の構造を示す模式平面図である。図1(b)は、図1(a)に示す液晶装置のH−H’線に沿う模式断面図である。図2は、液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図である。以下、液晶装置の構造を、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0027】
図1(a)及び(b)に示すように、液晶装置100は、対向配置された素子基板10及び対向基板20と、これら一対の基板によって挟持された液晶層50とを有する。素子基板10を構成する第1基板11、及び対向基板20を構成する第2基板12は、例えば、透明な石英基板やガラス基板などが用いられている。
【0028】
素子基板10は、対向基板20よりも一回り大きく形成されている。両基板10,20は、額縁状に配置されたシール材40を介して接合されている。そして、その隙間に、負の誘電異方性を有する液晶が封入されて液晶層50が構成されている。シール材40は、例えば、熱硬化性又は紫外線硬化性のエポキシ樹脂などの接着剤が採用されている。シール材40には、一対の基板の間隔を一定に保持するためのスペーサー(図示省略)が混入されている。
【0029】
額縁状に配置されたシール材40の内側には、同じく額縁状に額縁遮光膜21が設けられている。額縁遮光膜21は、例えば、遮光性の金属あるいは金属酸化物などからなり、対向基板20側に設けられている。そして、額縁遮光膜21の内側が画素領域Eとなっている。画素領域Eには、マトリックス状に画素Pが複数配置されている。なお、図1では図示省略したが、画素領域Eにおいても複数の画素Pを平面的に区分する遮光部が設けられている。
【0030】
素子基板10の1辺部には、1辺部に沿ったシール材40との間にデータ線駆動回路101が設けられている。また、該1辺部に対向する他の1辺部に沿ったシール材40の内側に検査回路103が設けられている。更に、該1辺部と交差し互いに対向する他の2辺部に沿ったシール材40の内側には、走査線駆動回路102が設けられている。
【0031】
1辺部と対向する他の1辺部のシール材40の内側には、2つの走査線駆動回路102を繋ぐ複数の配線105が設けられている。これらデータ線駆動回路101、走査線駆動回路102に繋がる配線105は、該1辺部に沿って配列した複数の外部接続端子104に接続されている。以降、1辺部に沿った方向をX方向とし、1辺部と交差し互いに対向する他の2辺部に沿った方向をY方向として説明する。
【0032】
図1(b)に示すように、第1基板11の液晶層50側の表面には、画素Pごとに設けられた光透過性を有する画素電極15及びスイッチング素子としてのTFT30と、信号配線と、これらを覆う第1無機配向膜18aとが形成されている。また、第1基板11の表面には、TFT30における半導体層に光が入射して光リーク電流が流れ、不適切なスイッチング動作となることを防ぐ遮光構造が採用されている。
【0033】
第2基板12の液晶層50側の表面には、額縁遮光膜21と、これを覆うように成膜された層間膜22と、層間膜22を覆うように設けられた光透過性を有する共通電極23と、共通電極23を覆う第2無機配向膜18bとが設けられている。
【0034】
額縁遮光膜21は、図1(a)に示すように、平面的にデータ線駆動回路101や走査線駆動回路102、検査回路103と重なる位置において額縁状に設けられている。これにより、対向基板20側から入射する光を遮蔽して、これらの駆動回路を含む周辺回路の光による誤動作を防止する役目を果たしている。また、不必要な迷光が画素領域Eに入射しないように遮蔽して、画素領域Eの表示における高いコントラストを確保している。
【0035】
層間膜22は、例えば、酸化シリコンなどの無機材料からなり、光透過性を有して額縁遮光膜21を覆うように設けられている。このような層間膜22の形成方法としては、例えば、プラズマCVD法などを用いて成膜する方法が挙げられる。
【0036】
共通電極23は、例えば、ITOなどの透明導電膜からなり、層間膜22を覆うと共に、図1(a)に示すように、対向基板20の四隅に設けられた上下導通部106により素子基板10側の配線105に電気的に接続されている。
【0037】
画素電極15を覆う第1無機配向膜18a及び共通電極23を覆う第2無機配向膜18bは、例えば、酸化シリコン(SiO2)などからなる無機配向膜によって構成されている。本実施形態では、負の誘電異方性を有する液晶分子が配向膜面に対してプレチルトを与えられて垂直配向するように、所定の方向に配向処理が施されたものである。
【0038】
また、本実施形態では、画素領域Eは実効的な表示がなされる表示領域と、表示領域を囲む周辺領域とを含むものである。周辺領域に配置された画素Pはダミー画素として扱われている。
【0039】
図2に示すように、液晶装置100は、少なくとも画素領域Eにおいて互いに絶縁されて交差する複数の走査線3a及び複数のデータ線6aと、データ線6aに対して一定の間隔をおいて平行するように配置された容量線3bとを有する。なお、走査線3aが延在する方向がX方向であり、データ線6aが延在する方向がY方向である。
【0040】
走査線3aとデータ線6aならびに容量線3bと、これらの信号線類により区分された領域に、画素電極15と、TFT30と、保持容量16とが設けられ、これらが画素Pの画素回路を構成している。
【0041】
TFT30のゲートは走査線3aに電気的に接続され、TFT30のソースはデータ線6aに電気的に接続されている。画素電極15は、TFT30のドレインに電気的に接続されている。
【0042】
データ線6aは、データ線駆動回路101(図1参照)に接続されており、データ線駆動回路101から供給される画像信号D1,D2,…,Dnを画素Pに供給する。走査線3aは、走査線駆動回路102(図1参照)に接続されており、走査線駆動回路102から供給される走査信号SC1,SC2,…,SCmを各画素Pに供給する。
【0043】
データ線駆動回路101からデータ線6aに供給される画像信号D1〜Dnは、この順に線順次で供給してもよく、互いに隣接する複数のデータ線6a同士に対してグループごとに供給してもよい。走査線駆動回路102は、走査線3aに対して、走査信号SC1〜SCmを所定のタイミングで、互いに重複しないパルス信号として順次供給する。
【0044】
液晶装置100は、スイッチング素子であるTFT30が走査信号SC1〜SCmの入力により一定期間だけオン状態とされることで、データ線6aから供給される画像信号D1〜Dnが所定のタイミングで画素電極15に書き込まれる構成となっている。そして、画素電極15を介して液晶層50に書き込まれた所定レベルの画像信号D1〜Dnは、画素電極15と液晶層50を介して対向配置された共通電極23との間で一定期間保持される。
【0045】
保持された画像信号D1〜Dnがリークするのを防止するため、画素電極15と共通電極23との間に形成される液晶容量と並列に保持容量16が接続されている。保持容量16は、TFT30のドレインと容量線3bとの間に設けられている。
【0046】
なお、図1(a)に示した検査回路103には、データ線6aが接続されており、液晶装置100の製造過程において、上記画像信号を検出することで液晶装置100の動作欠陥などを確認できる構成となっているが、図2の等価回路では省略している。また、検査回路103は、上記画像信号をサンプリングしてデータ線6aに供給するサンプリング回路、データ線6aに所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して供給するプリチャージ回路を含むものとしてもよい。
【0047】
このような液晶装置100は、例えば透過型であって、画素Pが非駆動時に明表示となるノーマリーホワイトモードや、非駆動時に暗表示となるノーマリーブラックモードの光学設計が採用される。光の入射側と射出側とにそれぞれ偏光素子が上記光学設計に応じて配置されて用いられる。
【0048】
図3は、無機配向膜が形成された液晶装置の構造を示す模式断面図である。図4は、第1無機配向膜及び第2無機配向膜の成膜方向(柱状構造物の成長方向の方位角)の関係を示す模式図である。以下、液晶装置の構造、及び無機配向膜の方位角の関係について、図3及び図4を参照しながら説明する。
【0049】
図3に示すように、液晶装置100は、第1無機配向膜18aが設けられた素子基板10と、第2無機配向膜18bが設けられた対向基板20とが、対向配置されている。
【0050】
具体的には、素子基板10を構成する第1基板11上には、TFT30などが設けられた層の上に画素電極15が設けられている。なお、図3において、画素電極15の図示は簡略化している。画素電極15上には、酸化シリコンなどの無機材料の柱状構造物18cが、配向膜形成面に対し所定の角度をなして配列した第1無機配向膜18aが設けられている。
【0051】
一方、対向基板20を構成する第2基板12上には、共通電極23が設けられている。共通電極23上には、素子基板10側と同様に、酸化シリコンなどの無機材料の柱状構造物18cが、配向膜形成面に対し所定の角度をなして配列した第2無機配向膜18bが設けられている。
【0052】
また、図4に示すように、無機配向膜18a,18bを構成する柱状構造物18cの成長方向(所望のプレチルト角となるように成膜された柱状構造物18cの成膜方向)が、第1無機配向膜18aと第2無機配向膜18bとの間で、180°異なるようになっている。つまり、パラレルニコル(言い換えればカウンター)の状態となっている。このような関係になるように第1無機配向膜18aと第2無機配向膜18bとを配置させることにより、液晶分子を垂直配向させることが可能となっている。
【0053】
<液晶装置の製造方法>
図5は、液晶装置の製造方法を工程順に示すフローチャートである。図6は、液晶装置の製造方法の一部である、液晶装置用基板のウエハに素子基板及び対向基板を形成した状態を示す模式平面図である。図7は、液晶装置の製造方法の一部で用いられる蒸着装置の構造を示す模式断面図であり、(a)は上方から見た平面図、(b)は側方から見た側面図である。以下、液晶装置の製造方法を、図5〜図7を参照しながら説明する。
【0054】
最初に、図6を参照しながら、液晶装置用基板200を構成するウエハ200aに形成する素子基板10(10a,10b)と対向基板20(20a,20b)との配置関係を説明する。図6に示すように、ウエハ200aには、オリフラ201側から順に、複数の第1素子基板10aが形成される第1素子基板領域110と、複数の第2素子基板10bが形成される第2素子基板領域120とを有する。更に、ウエハ200aには、オリフラ201側から順に、複数の第1対向基板20aが形成される第1対向基板領域210と、複数の第2対向基板20bが形成される第2対向基板領域220とを有する。
【0055】
複数の第1素子基板10aは、第1素子基板10aの外周の一端面10cがオリフラ201の面と略平行になるようにウエハ200aに形成される。また、複数の第2素子基板10bも同様に、第2素子基板10bの外周の一端面10cがオリフラ201の面と略平行になるようにウエハ200aに形成される。つまり、第1素子基板10a及び第2素子基板10bは、オリフラ201の位置を基準に形成位置が決められている。
【0056】
一方、複数の第1対向基板20aは、ウエハ200aに配向処理を施し第1素子基板10aと貼り合わせた際、第2無機配向膜18bを構成する柱状構造物18cの成膜方向が180°異なるように(カウンターとなるように)、第1素子基板10aと角度を変えて配置する。よって、第1素子基板10aや第2素子基板10bの配置方向と異なって配置されることになる。また、複数の第2対向基板20bも同様に、ウエハ200aに配向処理を施し第2素子基板10bと貼り合わせたときに、それぞれの柱状構造物18cの成膜方向が180°異なるように(カウンターとなるように)、第2素子基板10bと角度を変えて配置する。
【0057】
なお、図中の矢印は、無機配向膜18a,18bを構成する柱状構造物18c(図3参照)の成膜方向を示している。つまり、柱状構造物18cの成膜方向を所望の方向に揃えるために(同一の方位角が得られるように)、複数の第1素子基板10a、第2素子基板10b、第1対向基板20a、及び第2対向基板20bを、それぞれの向きに配置している。また、ウエハ200aの大きさは、例えば、200mmである。
【0058】
次に、液晶装置100の製造方法を説明する。最初に、素子基板10側の製造方法を説明する。まず、図5に示すように、ステップS11では、石英基板などからなる第1基板11上にTFT30及び画素電極15等を形成する。具体的には、周知の成膜技術、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、第1基板11上にTFT30及び画素電極15などを形成する。
【0059】
画素電極15は、例えば、第1基板11の一方の表面にITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電性材料をスパッタし、この導電膜をエッチングすることによって形成することができる。
【0060】
次に、対向基板20側の製造方法を説明する。ステップS21では、第2基板12上に共通電極23などを形成する。具体的には、石英基板などの透光性材料からなる第2基板12の一方の表面に、ITOなどの透明導電性膜をスパッタし、これをエッチングすることによって形成することができる。続いて、素子基板10及び対向基板20に無機配向膜18a,18bを成膜する。
【0061】
まず、無機配向膜18a,18bを成膜するための蒸着装置41について、図7を参照しながら説明する。図7(b)に示すように、蒸着装置41は、蒸着処理を行うためのチャンバー31と、蒸着材料32が入れられた蒸着源33と、蒸着材料32を昇華させる電子銃34と、ウエハ200aにおける所定の領域に蒸着させるためのシャッター35とを備えている。
【0062】
具体的には、チャンバー31には、図示しない排気系統が備えられている。蒸着源33には、蒸着材料32に電子ビームを照射する電子銃34が備えられている。なお、蒸着材料32を蒸発または昇華させるものであればよく、電子銃34に限らず、抵抗加熱、レーザーなど他の加熱手段を用いてもよい。
【0063】
チャンバー31における蒸着源33の上方には、複数のウエハ200aが配置される。ウエハ200aは、図示しないウエハ保持手段によって所望の角度に保持される。
【0064】
また、図7(a)に示すように、複数のウエハ200aは、チャンバー31の内周に所定の間隔をあけて配置されている。本実施形態のウエハ200aの配置枚数は、6枚であるが、適宜選択することが好ましい。
【0065】
図7(b)に示すように、蒸着源33とウエハ200aとの間には、無機配向膜18a,18bの成膜領域を規定するためのシャッター35が配置されている。シャッター35の一部には、成膜する領域となる開口部36が設けられている。例えば、シャッター35に対してウエハ200aを所定の方向に所定の速度で移動させることにより、ウエハ200aの端から順に無機配向膜18a,18bを成膜していくことができる。
【0066】
シャッター35は、例えば、長さが300mmである。また、ギャップは、例えば、10mmである。蒸着源33からシャッター35までの距離は、例えば、1500mmである。以降、引き続き、液晶装置100の製造方法を説明する。
【0067】
ステップS31(配置工程、無機配向膜形成工程)では、上記した蒸着装置41を用いてチャンバー31内にウエハ200aを配置し、素子基板10及び対向基板20に無機配向膜18a,18bを成膜する。これにより、複数の素子基板10の画素電極15上、及び複数の対向基板20の共通電極23上に、酸化シリコン(SiO2)などの無機材料が斜方蒸着される。そして、液晶装置用基板200が完成する。
【0068】
ステップS32では、素子基板10上にシール材40を塗布する。具体的には、第1基板11上の画素領域Eの周縁部に(画素領域Eを囲むように)、一筆書きで切れ目なくシール材40を塗布する。シール材40としては、例えば、紫外線硬化型エポキシ樹脂が挙げられる。なお、紫外線などの光硬化型樹脂に限定されず、熱硬化型樹脂などを用いるようにしてもよい。
【0069】
また、シール材40には、例えば、素子基板10と対向基板20との間隔(基板11,12間ギャップ或いはセルギャップ)を所定値とするためのグラスファイバー或いはガラスビーズ等のギャップ材が含まれている。
【0070】
ステップS33では、素子基板10上に液晶を滴下する。具体的には、シール材40で囲まれた領域に液晶を滴下する。また、液晶は、囲まれた領域(画素領域E)の中央部に滴下することが望ましい。
【0071】
ステップS34(貼り合わせ工程)では、素子基板10に対向基板20を貼り合わせる。具体的には、予め各基板をブレークしておき、素子基板10に塗布されたシール材40を介して素子基板10と対向基板20とを貼り合わせる。以上により、液晶装置100が完成する。
【0072】
図8は、本実施形態の液晶装置に印加された電圧と、流れる電流との関係を示すグラフである。以下、電圧と電流との関係について、図8を参照しながら説明する。
【0073】
図8に示すグラフは、横軸に電圧を示しており、「+電圧」から「−電圧」に印加電圧を変えている。一方、縦軸に電流を示しており、液晶装置に電圧が印加されたときの「+電流」、「−電流」がどの位流れたかを見ている。
【0074】
従来の液晶装置は、素子基板と対向基板とを別々のタイミングで無機配向膜を成膜している。つまり、製造するロットが異なっている。一方、本実施形態の液晶装置100は、1つのウエハ200aに素子基板10及び対向基板20が形成されており、同じロットで無機配向膜18a,18bを成膜し、それぞれを対向配置している。
【0075】
図8に示すように、従来の液晶装置は、電圧を「−」から「+」に振ったとき、液晶装置に流れる電流値に対称性がないことがわかる。本実施形態の液晶装置100は、電圧を「−」から「+」に振ったとき、液晶装置100に流れる電流値に対称性があることがわかる。よって、素子基板10と対向基板20とを貼り合わせた際、配向特性がばらつくことを抑えることができる。
【0076】
以上詳述したように、本実施形態の液晶装置用基板200、及び液晶装置100の製造方法によれば、以下に示す効果が得られる。
【0077】
(1)本実施形態の液晶装置用基板200によれば、無機配向膜18a,18bの柱状構造物18cの積層方向が揃うように素子基板10及び対向基板20が1つのウエハ200aに面付けされているので、このウエハ200aに無機配向膜18a,18bを積層させ、素子基板10と対向基板20とを貼り合わせることにより、所定の方向に配向させることが可能となる。よって、配向特性がばらつくことを抑えることができ、表示品質を向上させることができる。
【0078】
(2)本実施形態の液晶装置用基板200によれば、素子基板10の外周の一端面10c、又は対向基板20の外周の一端面が、オリフラ201の面と略平行になるように配置するので、各基板10,20を正規の方向に決めることができる。
【0079】
(3)本実施形態の液晶装置100の製造方法によれば、チャンバー31内に配置したウエハ200aの素子基板10及び対向基板20に無機配向膜18a,18bを形成し、1つのウエハ200aから切り出した素子基板10と対向基板20とを貼り合わせるので、無機配向膜18a,18bの積層方向を所定の方向に揃えることが可能となり、配向特性がばらつくことを抑えることができる。よって、表示品質を向上させることができる液晶装置100の製造方法を提供することができる。また、従来と同じ製造装置で形成することができるので、かかるコストを抑えることができる。
【0080】
なお、本発明は、上記した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、本発明の技術範囲に含まれるものである。また、以下のような形態で実施することもできる。
【0081】
(変形例1)
上記したように、ウエハ200aにおける素子基板10と対向基板20との配置を、ウエハ200aのオリフラ201が下に配置されるように見て左側に第1素子基板10a及び第2素子基板10bを配置し、右側に第1対向基板20a及び第2対向基板20bを配置することに限定されず、図9に示すように配置してもよい。
【0082】
図9は、変形例のウエハの構成を示す模式平面図である。図9に示す液晶装置用基板1200は、ウエハ1200aのオリフラ201が下に配置されるように見て左側に第1対向基板20a及び第2素子基板10bを配置し、右側に第1素子基板10a及び第2対向基板20bを配置している。
【0083】
なお、この順に配置することに限定されず、第1素子基板、第2素子基板、第1対向基板、第2対向基板を、他の順序で領域ごと入れ替えて配置してもよい。なお、配向特性のばらつきを見ながら素子基板10a,10b及び対向基板20a,20bを配置することが好ましい。
【0084】
(変形例2)
上記したように、素子基板10a,10bの一端面10cがオリフラ201の面と略平行になるようにウエハ200aに形成されることに代えて、対向基板20a,20bの外周の一端面がオリフラ201の面と略平行になるようにウエハ200aに形成されてもよい。この場合、素子基板10a,10bは、対向基板20a,20bの位置を基準に、オリフラ201の面に対して傾いて配置される。
【0085】
(変形例3)
上記したように、無機配向膜18a,18bは、蒸着法によって形成されることに限定されず、例えば、スパッタ法によって形成されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0086】
3a…走査線、3b…容量線、6a…データ線、10…素子基板、10a…第1素子基板、10b…第2素子基板、10c…一端面、11…第1基板、12…第2基板、15…画素電極、16…保持容量、18a…第1無機配向膜、18b…第2無機配向膜、18c…柱状構造物、20…対向基板、20a…第1対向基板、20b…第2対向基板、21…額縁遮光膜、22…層間膜、23…共通電極、30…TFT、31…チャンバー、32…蒸着材料、33…蒸着源、34…電子銃、35…シャッター、36…開口部、40…シール材、41…蒸着装置、50…液晶層、100…液晶装置、101…データ線駆動回路、102…走査線駆動回路、103…検査回路、104…外部接続端子、105…配線、106…上下導通部、110…第1素子基板領域、120…第2素子基板領域、200,1200…液晶装置用基板、200a,1200a…ウエハ、201…オリフラ、210…第1対向基板領域、220…第2対向基板領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハに面付けされた一対の基板を構成する素子基板及び対向基板を備え、
前記素子基板及び前記対向基板は、無機配向膜の積層方向が互いに揃うように前記ウエハに配置されていることを特徴とする液晶装置用基板。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶装置用基板であって、
前記ウエハにオリフラが設けられており、
前記素子基板又は前記対向基板は、前記素子基板の外周の一端面、又は前記対向基板の外周の一端面が、前記オリフラの面と略平行になるように前記ウエハに配置されていることを特徴とする液晶装置用基板。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の液晶装置用基板であって、
前記無機配向膜は、蒸着によって形成されていることを特徴とする液晶装置用基板。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の液晶装置用基板をチャンバー内に配置する配置工程と、
前記チャンバー内において前記液晶装置用基板に無機配向膜を形成する無機配向膜形成工程と、
前記素子基板と前記対向基板とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、
を有することを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記無機配向膜形成工程の後、前記素子基板又は前記対向基板に液晶滴下法を用いて液晶を供給することを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記ウエハにおける前記無機配向膜の形成面側には、所望の位置に前記無機配向膜を形成するためのシャッターが配置されており、
前記無機配向膜形成工程は、前記シャッターに対して前記ウエハを所定の方向に移動させることにより、前記ウエハに前記無機配向膜を形成することを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6のいずれか一項に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記無機配向膜形成工程は、無機材料を蒸着によって前記ウエハに成膜することを特徴とする液晶装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−37319(P2013−37319A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175648(P2011−175648)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】