説明

液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子、並びにそれらの製造に用いるポリアミック酸及びポリイミド

【課題】残像特性に優れた液晶表示素子を得るための液晶配向剤を提供する。
【解決手段】テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸及びそのイミド化重合体よりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含有し、前記テトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物を含むものであり、前記ジアミンは、下記式(1)で表される化合物を含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子、並びにそれらの製造に用いるポリアミック酸及びポリイミドに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、液晶分子を配向させるために液晶配向膜を具備する。液晶配向膜の材料としては、耐熱性、機械的強度、液晶との親和性などの各種特性を良好なものとすべく、ポリアミック酸やポリイミドが一般的に使用されている。
【0003】
液晶表示素子の高品位化を実現するためには、残像特性を向上させる必要がある。かかる残像特性を向上させるためには、直流電圧を印加した際の残留電荷が少ないこと、及び直流電圧により蓄積した残留電荷の緩和が早いことの少なくとも一方を満たすような液晶配向膜を得る必要がある。
【0004】
このような液晶配向膜として、特許文献1には、コレスタノール骨格を有するジアミンを用いて得られたポリイミドを含む液晶配向剤について開示されている。また、特許文献2には、クロマン構造を有するジアミンを用いて得られたポリアミド等を含む液晶配向剤について開示されている。これら特許文献1,2では、上記構成のポリイミド又はポリアミド等を液晶配向剤中に含有させることで、残像特性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−241646号公報
【特許文献2】特開2001−97969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、液晶表示素子は液晶テレビといった高品位モニターに適用されているが、このような高品位モニターに対しては長時間(例えば1日)の連続使用後であっても残像特性が良好であることが求められる。これに対して、上記特許文献1に記載のものや、上記特許文献2に記載のものでは、長時間の連続使用後における残像特性という点について全く考慮されていない。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、残像特性に優れた液晶表示素子を得るための液晶配向剤、当該液晶配向剤の成分として有用なポリアミック酸及びポリイミド、並びにそれらを用いて作製される液晶配向膜及び液晶表示素子を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記のような従来技術の課題を達成すべく鋭意検討した結果、芳香族テトラカルボン酸二無水物と、3級窒素原子を有する特定構造のジアミンとを用いて得られる重合体を液晶配向剤に含有させることにより、上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明により以下の液晶配向剤、液晶配向膜、液晶表示素子、ポリアミック酸及びポリイミドが提供される。
【0009】
本発明によれば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸及びそのイミド化重合体よりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含有し、前記テトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物を含むものであり、前記ジアミンは、下記式(1)で表される化合物を含むものであることを特徴とする液晶配向剤が提供される。
【0010】
【化1】

(式(1)中、Aは、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ピリジレン基、ピリミジニレン基又はトリアジニレン基であり、これらは置換基を有していてもよい。Bは、芳香環構造を有する1価の基、炭素数1〜30の1価の鎖状炭化水素基又は炭素数3〜30の1価の脂環式炭化水素基であり、鎖状炭化水素基又は脂環式炭化水素基は置換基を有していてもよく、メチレン基の一部が、酸素原子、カルボニル基又は−COO−で置換されていてもよい。但し、Bにおいて式(1)中の窒素原子と結合するものはメチレン基、脂環式構造を形成する炭素原子又は芳香環構造を形成する炭素原子である。)
【0011】
本発明の液晶配向剤によれば、長時間(例えば1日)の連続使用後であっても良好な残像特性を示す液晶配向膜を形成することができる。これにより、残像特性に優れた液晶表示素子を得ることができる。また、プレチルト角の安定性を高めることができるとともに、電圧保持率の変化率(以下、信頼性ともいう)を低く抑えることができる。
【0012】
また、上記残像特性、プレチルト角の安定性及び信頼性をより良好なものとする上では、前記Bが、炭素数1〜6のアルキル基(当該アルキル基は、置換基を有していてもよく、メチレン基の一部が、酸素原子、カルボニル基又は−COO−で置換されていてもよい)、又は置換基を有していてもよいアリール基であるものが好ましい。また、前記Aが、置換基を有していてもよいフェニレン基であることが好ましい。
【0013】
また、本発明によれば、上記記載の液晶配向剤により形成された液晶配向膜、及び当該液晶配向膜を具備する液晶表示素子が提供される。
【0014】
本発明によれば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸であって、前記テトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物を含むものであり、前記ジアミンは、上記式(1)で表される化合物を含むものであることを特徴とするポリミック酸が提供される。また、このポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドが提供される。
【0015】
なお、本明細書において、「炭化水素基」は、飽和炭化水素基であってもよく、不飽和炭化水素基であってもよい。また、「鎖状炭化水素基」とは、鎖状構造のみで構成された炭化水素基を意味し、直鎖状であっても分岐状であってもよい。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環式構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味する。但し、脂環式構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を含んでいてもよい。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。但し、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式構造を含んでいてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の液晶配向剤は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸及びそのイミド化重合体の少なくともいずれかの重合体を含有する。以下、本発明の液晶配向剤について詳細に説明する。
【0017】
<ポリアミック酸>
[テトラカルボン酸二無水物]
本発明におけるポリアミック酸を合成するためのテトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物を含む。
【0018】
ここで、芳香族テトラカルボン酸二無水物とは、芳香環に結合する少なくとも1つのカルボキシル基を含めて4つのカルボキシル基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物のことである。
【0019】
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、好ましくは同一の又は異なる芳香環に結合する4つのカルボキシル基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物である。芳香環の数は1〜4が好ましい。この場合、芳香環が1つであれば、当該芳香環に結合する4つのカルボキシル基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物が好ましい。また、芳香環が2つ以上であれば、一の芳香環に結合する2つのカルボキシル基が分子内脱水するとともに他の芳香環に結合する2つのカルボキシル基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物、又は隣接する2個の芳香環のうち一方に結合するカルボキシル基と他方に結合するカルボキシル基が分子内脱水するとともに隣接する2個の芳香環のうち一方に結合するカルボキシル基と他方に結合するカルボキシル基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物が好ましい。
【0020】
このような酸二無水物として具体的には、下記式(Ar−1)で表されるものを挙げることができる。
【0021】
【化2】

【0022】
式(Ar−1)中、Arは、以下の各構造に由来する芳香族基のいずれかである。
【化3】

(*1は上記式(Ar−1)中、一方の酸無水物基に結合する結合手であり、*2は他方の酸無水物基に結合する結合手である。)
【0023】
上記Arは、炭素原子が有する水素原子の少なくとも1つが、ハロゲン原子又は炭素数1〜6のアルキル基若しくはフルオロアルキル基等で置換されていてもよい。
【0024】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。また、炭素数1〜6のフルオロアルキル基としては、上記の炭素数1〜6のアルキル基として挙げた基の少なくとも1個の水素原子をフッ素原子で置換したものを挙げることができる。なお、Arは、上記置換基を1種単独で1個のみ又は複数個有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0025】
好ましい芳香族テトラカルボン酸二無水物としてより具体的には、ピロメリット酸二無水物、1,4−ジフルオロ−ピロメリット酸二無水物、2,5−トリフルオロメチルピロメリット酸二無水物、トリフルオロメチルピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールジベンゾアートテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ベンゼン−1,4−ジイル ビス(1,3−オキソ−1,3−ジヒドロ−2−ベンゾフラン−5−カルボキシレイト)等を挙げることができる。また、その他に、特開2010−97188号公報に記載の芳香族テトラカルボン酸二無水物であって上記以外のものを用いることができる。
【0026】
これらのうち、好ましくは、ピロメリット酸二無水物、1,4−ジフルオロ−ピロメリット酸二無水物、2,5−トリフルオロメチルピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ベンゼン−1,4−ジイル ビス(1,3−オキソ−1,3−ジヒドロ−2−ベンゾフラン−5−カルボキシレイト)、又はエチレングリコールジベンゾアートテトラカルボン酸二無水物である。
【0027】
上記のような芳香族テトラカルボン酸二無水物は、1種単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
【0028】
芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いることにより、作製される液晶表示素子において、長時間(例えば1日)の連続使用に対する残存特性を良好にすることができる。また、プレチルト角の安定性を高めることができるとともに、電圧保持率の変化率を低く抑えることができる。但し、テトラカルボン酸二無水物としては、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物のみを用いてもよいが、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物に加えて、脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び脂環式テトラカルボン酸二無水物の少なくとも一方を用いてもよい。
【0029】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物とは、鎖状炭化水素構造に結合する4つのカルボキシル基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物のことである。但し、鎖状炭化水素構造のみで構成されている必要はなく、その一部に脂環式構造や芳香環構造を有していてもよい。
【0030】
脂環式テトラカルボン酸二無水物とは、脂環式構造に結合する少なくとも1つのカルボキシル基を含めて4つのカルボキシル基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物のことである。但し、これら4つのカルボキシル基はいずれも芳香環には結合していない。また、脂環式構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状炭化水素構造や芳香環構造を有していてもよい。
【0031】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。また、脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:3,5:6−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオンなどを挙げることができる。その他、特開2010−97188号公報に記載の脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び脂環式テトラカルボン酸二無水物であって上記以外のものを用いることができる。
【0032】
テトラカルボン酸二無水物としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び脂環式テトラカルボン酸二無水物のうち、溶解性の観点からは、脂環式テトラカルボン酸二無水物を含むことが好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物又は1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を含むものであることがより好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物を含むものであることが特に好ましい。
【0033】
上記のような脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物を用いる場合、これら脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物は、1種単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
【0034】
テトラカルボン酸二無水物として、芳香族テトラカルボン酸二無水物だけではなく、脂肪像又は脂環式テトラカルボン酸二無水物を含む場合、芳香族テトラカルボン酸二無水物の比率は、テトラカルボン酸二無水物の全量に対して0.1〜90モル%が好ましく、0.5〜80モル%がより好ましく、1〜70モル%が更に好ましく、2〜50モル%が特に好ましい。このような範囲とすることにより、長時間の連続使用に対する残存特性をより良好にすることができる。また、プレチルト角の安定性を高めることができるとともに、電圧保持率の変化率を低く抑えることができる。
【0035】
[ジアミン]
本発明におけるポリアミック酸を合成するために使用するジアミンは、下記式(1)で表される化合物(以下、ジアミン(D−1)ともいう。)を含む。
【0036】
【化4】

(式(1)中、Aは、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ピリジレン基、ピリミジニレン基又はトリアジニレン基であり、これらは置換基を有していてもよい。Bは、芳香環構造を有する1価の基、炭素数1〜30の1価の鎖状炭化水素基又は炭素数3〜30の1価の脂環式炭化水素基であり、鎖状炭化水素基又は脂環式炭化水素基は置換基を有していてもよく、メチレン基の一部が、酸素原子、カルボニル基又は−COO−で置換されていてもよい。但し、Bにおいて式(1)中の窒素原子と結合するものはメチレン基、脂環式構造を形成する炭素原子又は芳香環構造を形成する炭素原子である。)
【0037】
上記式(1)におけるAのうち、
フェニレン基としては、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基などを;
ナフチレン基としては、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基などを;
ピリジレン基としては、2,4−ピリジレン基、2,5−ピリジレン基などを;
ピリミジニレン基としては、2,5−ピリミジニレン基などを;
トリアジニレン基としては、2,4−トリアジニレン基などを;
それぞれ挙げることができる。これらの基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子又は炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基若しくはフルオロアルキル基などを挙げることができる。これらのうち、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、及び炭素数1〜6のフルオロアルキル基については、上記Arの置換基として例示したものを挙げることができる。また、炭素数1〜6のアルコキシ基としては、上記の炭素数1〜6のアルキル基として挙げた基が酸素原子に結合したものを挙げることができ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基などを挙げることができる。
【0038】
これらの中でも、Aとして好ましくは、置換基を有していてもよいフェニレン基である。すなわち、本発明におけるジアミンは、下記式(2)で表される化合物(以下、ジアミン(D−1−1)ともいう。)を含んでいることが好ましい。これにより、形成される液晶配向膜において、ジアミン部分(ドナー)と酸無水物部分(アクセプター)間にCT相互作用が生じることで光電流が発生し、イオンの偏在または配向膜自体の分極の発生が抑制されると推測される。よって、液晶配向性を良好にすることができる。
【0039】
【化5】

(式(2)中、Rは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、又は炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基、若しくはフルオロアルキル基である。kは、それぞれ独立に、0〜4の整数である。Bの定義は、上記式(1)と同じである。)
【0040】
上記式(2)のRについての具体例は、上記Aが有していてもよい置換基と同様のものを挙げることができる。kとしては、0〜2が好ましく、0がより好ましい。上記式(2)中のベンゼン環において、1級アミノ基の結合位置は特に限定されないが、式(2)中の窒素原子に対して3−位又は4−位であるものが好ましく、4−位であるものがより好ましい。
【0041】
上記式(1)中及び上記式(2)中のBにおける炭素数1〜30の1価の鎖状炭化水素基としては、炭素数1〜12のアルキル基が好ましい。当該炭素数1〜12のアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基等が挙げられる。
【0042】
なお、上記式(1)や上記式(2)中の窒素原子と結合するものがメチレン基であれば、上記式(1)にて示したようにメチレン基の一部が置換されていてもよい。また、炭素原子が有する水素原子の少なくとも1つが、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、水酸基、シアノ基等で置換されていてもよい。
【0043】
Bが鎖状炭化水素基である場合、置換基を有していてもよく、メチレン基の一部が、酸素原子、カルボニル基又は−COO−で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基又はフルオロアルキル基がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましい。
【0044】
上記Bの炭素数3〜30の1価の脂環式炭化水素基は、脂環式構造のみで構成されていてもよく、その一部に鎖状構造を含んでいてもよい。脂環式構造としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ノルボルナン、アダマンタン等が挙げられる。
【0045】
一方、一部に鎖状構造を含んでいる場合、当該鎖状構造は、上記式(1)や上記式(2)中の窒素原子と上記脂環式構造とを連結するように存在していてもよく、連結しないように存在していてもよい。また、上記脂環式炭化水素基は、当該連結する鎖状構造と、当該連結しない鎖状構造とを共に含んでいてもよい。
【0046】
なお、上記1価の脂環式炭化水素基について、上記式(1)や上記式(2)中の窒素原子と結合するものがメチレン基又は脂環式構造を形成する炭素原子であれば、上記式(1)にて示したようにメチレン基の一部が置換されていてもよい。また、置換基を有してもよい点は、上記鎖状炭化水素基と同様である。
【0047】
上記1価の脂環式炭化水素基は、炭素数17〜30のステロイド骨格を有する基であってもよい。かかるステロイド骨格とは、シクロペンタノ−ペルヒドロフェナントレン骨格、又は当該骨格が有する炭素原子間の単結合のうち1つ若しくは複数が二重結合となっている骨格のことである。このようなステロイド骨格を有する基としては、例えばコレスタニル基、コレステリル基などを挙げることができる。
【0048】
上記Bの芳香環構造を有する1価の基は、芳香環構造のみで構成されていてもよく、その一部に鎖状構造及び脂環式構造の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0049】
芳香環構造としては、ベンゼン環であってもよく、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、インデン環、ピレン環等の縮合ベンゼン環であってもよく、チオフェン環、ピロール環、フラン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環等の複素芳香環であってもよい。
【0050】
脂環式構造としては、炭素数3〜12のモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン等が挙げられ、具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ノルボルナン、アダマンタン等が挙げられる。鎖状構造としては、炭素数3〜12の飽和又は不飽和の炭化水素が挙げられる。また、これら脂環式構造や鎖状構造は、その一部に−O−、カルボニル基及び−COO−のうち少なくとも1つを有していてもよい。
【0051】
上記芳香環構造を有する1価の基は、芳香環構造を1個のみ有していてもよく、複数個有していてもよい。複数個有している場合、それら複数個の芳香環構造が単結合により結合されていてもよく、この場合、具体的にはビフェニルやテルフェニル等が挙げられる。また、複数個の芳香環構造を連結するように鎖状構造又は脂環式構造が存在していてもよい。
【0052】
これら芳香環構造、鎖状構造及び脂環式構造のうち少なくとも1つの構造は、置換基を有していてもよい。当該置換基としては上記鎖状炭化水素基と同様のものが挙げられる。
【0053】
上記芳香環構造を有する1価の基は、上記式(1)や上記式(2)中の窒素原子に結合する原子がメチレン基、脂環式構造を形成する炭素原子又は芳香環構造を形成する炭素原子であれば、当該窒素原子に芳香環構造が結合している基であってもよく、これら窒素原子と芳香環構造とを連結するように鎖状構造及び脂環式構造の少なくとも一方が存在している基であってもよい。このうち、長時間の連続使用に対する残存特性、プレチルト角の安定性及び信頼性を良好なものとする上では、芳香環構造を有する1価の基は、上記窒素原子に芳香環構造が結合しているものが好ましい。また、より好ましくは、当該芳香環構造が、ベンゼン環であるか、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、インデン環、ピレン環等の縮合ベンゼン環であるものである。つまり、置換基を有していてもよいアリール基である。また、下記式(3)に示す構造が特に好ましい。
【0054】
【化6】

(式(3)中、Rは、ハロゲン原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜30の1価の脂環式炭化水素基、又は芳香環構造を有する炭素数6〜30の1価の基であり、アルキル基又は脂環式炭化水素基は、置換基を有していてもよく、メチレン基の一部が酸素原子、カルボニル基又は−COO−で置換されていてもよい。mは0〜4の整数であり、mが2〜4の場合、複数のRはそれぞれ独立して上記定義を有する。「*」は、上記式(1)や上記式(2)中の窒素原子に結合する結合手を示す。)
【0055】
のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、好ましくはフッ素原子である。
【0056】
の炭素数1〜30のアルキル基としては、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、具体的には上記Bにおける炭素数1〜30の1価の鎖状炭化水素基として例示したものが挙げられる。また、当該アルキル基のメチレン基の一部が置換されていてもよく、具体的には、アルコキシ基、−CO−Ra1、−COO−Ra1、−OCO−Ra1、−Ra2−O−Ra1、−Ra2−CO−Ra1、−Ra2−COO−Ra1、−Ra2−OCO−Ra1(Ra1は置換基を有していてもよいアルキル基、Ra2は置換基を有していてもよいアルカンジイル基)が含まれる。
【0057】
の炭素数3〜30の1価の脂環式炭化水素基としては、上記Bにおける炭素数1〜30の1価の脂環式炭化水素基として例示したものが挙げられる。また、一部に鎖状構造を含んでいる場合、当該鎖状構造は、上記式(3)中のベンゼン環と脂環式構造とを連結するように存在していてもよく、連結しないように存在していてもよい。また、当該脂環式炭化水素基は、当該連結する鎖状構造と、当該連結しない鎖状構造とを共に含んでいてもよい。
【0058】
脂環式炭化水素基としては、炭素数17〜30のステロイド骨格を有する基が好ましい。具体的には、コレスタニル基、コレステリル基、コレスタニルオキシカルボニル基、コレステリルオキシカルボニル基、コレスタニルオキシ基、コレステリルオキシ基などが挙げられる。
【0059】
の芳香環構造を有する炭素数6〜30の1価の基としては、上記Bにおける芳香環構造を有する1価の基として例示したものが挙げられる。この場合、一部に鎖状構造や脂環式構造を含んでいる場合、これら鎖状構造や脂環式構造は、上記式(3)中のベンゼン環と芳香環構造とを連結するように存在していてもよく、連結しないように存在していてもよい。また、当該1価の基は、当該連結する鎖状構造及び脂環式構造の少なくとも一方と、当該連結しない鎖状構造及び脂環式構造の少なくとも一方とを共に含んでいてもよい。当該1価の基としては、フェニル基が好ましい。
【0060】
が有していてもよい置換基としては、上記Bにおける炭素数1〜30の1価の鎖状炭化水素基が有していてもよい置換基として例示したものが挙げられる。
【0061】
としては、フッ素原子、又は炭素数1〜9のアルキル基、アルコキシ基、若しくはフルオロアルキル基が好ましく、炭素数1〜9のアルキル基がより好ましい。
【0062】
mは0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。mが1である場合、Rの結合位置は特に限定されないが、上記式(1)や上記式(2)中の窒素原子に対して3−位又は4−位であるものが好ましく、4−位であるものがより好ましい。
【0063】
ジアミン(D−1)としては、上記式(2)中のBが、炭素数1〜6のアルキル基、又は上記式(3)で表される基であるものが好ましい。具体的には、N,N−ビス(4−アミノフェニル)−メチルアミン、N,N−ビス(4−アミノフェニル)−プロピルアミン、N,N−ビス(4−アミノフェニル)−ヘキシルアミン、N,N−ビス(4−アミノフェニル)−フェニルアミン、N,N−ビス(4−アミノフェニル)−p−メチルフェニルアミン、N,N−ビス(4−アミノフェニル)−p−ヘキシルフェニルアミン、N,N−ビス(4−アミノフェニル)−p−オクチルフェニルアミン、N,N−ビス(4−アミノフェニル)−p−(1−メチルテトラデシル)フェニルアミン、N,N−ビス(4−アミノフェニル)−p−(コレスタニルオキシカルボニル)フェニルアミン、N,N−ビス(4−アミノフェニル)−p−(コレステリルオキシカルボニル)フェニルアミン、N,N−ビス(4−アミノフェニル)−p−(コレスタニルオキシ)フェニルアミン、N,N−ビス(4−アミノフェニル)−p−(コレステリルオキシ)フェニルアミンなどを挙げることができる。
【0064】
これらの化合物の少なくともいずれかを、上記芳香族テトラカルボン酸二無水物とともに用いることにより、ポリアミック酸の主鎖に、3個以上のベンゼン環が導入されるとともに、少なくも2個のベンゼン環に結合された3級窒素原子が導入される。これにより、作製される液晶表示素子において、長時間の連続使用に対する残存特性を良好にすることができる。また、プレチルト角の安定性を高めることができるとともに、電圧保持率の変化率を低く抑えることができる。
【0065】
本発明におけるポリアミック酸を合成するためのジアミンとしては、上記ジアミン(D−1)のみを使用してもよく、ジアミン(D−1)とともにその他のジアミンを併用してもよい。
【0066】
ここで使用することのできるその他のジアミンとしては、例えば、下記に示す脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えば1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどを;
脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを;
芳香族ジアミンとして、例えばo−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、3,5−ジアミノ安息香酸、ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、2,4−ジアミノーN,N―ジアリルアニリン、4−アミノベンジルアミン、3−アミノベンジルアミン、1−(2,4−ジアミノフェニル)ピペラジン−4−カルボン酸、4−(モルホリン−4−イル)ベンゼン−1,3−ジアミン、1,3−ビス(N−(4−アミノフェニル)ピペリジニル)プロパン、α−アミノ−ω−アミノフェニルアルキレン、1−(2−プロピニルオキシ)−2,4−ベンゼンジアミン、4−アミノフェニル 4−アミノベンゾエート、4,4'−[4,4'−プロパン−4,4−プロパン−1,3−ジイルビス(ピペリジン−1,4−ジイル)]ジアニリンなどを;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンなどを、それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のジアミンを用いることができる。
【0067】
また、芳香族ジアミンとしては、上記のように列挙したもの以外にも、下記式(A−1)で表される化合物が含まれる。かかる化合物を用いることで、プレチルト特性を良好なものとすることが可能となる。
【0068】
【化7】

(式(A−1)中、XI、XII及びXIIIは、それぞれ独立に、単結合、−O−又は−COO−であり、Rは、炭素数1〜3のアルカンジイル基であり、aは0又は1であり、bは0〜2の整数であり、但しa及びbが同時に0になることはなく、cは1〜20の整数であり、nは0又は1である。)
【0069】
上記式(A−1)における−X−(R−XII−で表される2価の基としては、炭素数1〜3のアルカンジイル基、*−O−、*−COO−又は*−O−CHCH−O−(但し、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であるのが好ましい。基C2c+1−の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基などを挙げることができる。ジアミノフェニル基における2つの1級アミノ基は、他の基に対して2,4−位又は3,5−位にあるのが好ましい。
【0070】
上記式(A−1)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(d2−1)〜(d2−6)のそれぞれで表される化合物などを挙げることができる。
【0071】
【化8】

【0072】
ポリアミック酸を合成する場合におけるジアミンの全量に対する上記ジアミン(D−1)の比率は、0.1モル%以上含むものであることが好ましく、0.5〜80モル%含むものであることがより好ましく、1〜70モル%含むものであることが更に好ましく、2〜50モル%含むものであることが特に好ましい。このような範囲とすることにより、長時間の連続使用に対する残存特性をより良好にすることができる。また、プレチルト角の安定性を高めることができるとともに、電圧保持率の変化率を低く抑えることができる。
【0073】
[分子量調節剤]
ポリアミック酸を合成するに際して、上記の如きテトラカルボン酸二無水物及びジミアンとともに、適当な分子量調節剤を用いて末端修飾型の重合体を合成することとしてもよい。かかる末端修飾型の重合体とすることにより、本発明の効果を損なうことなく液晶配向剤の塗布性(印刷性)をさらに改善することができる。
【0074】
前記分子量調節剤としては、例えば酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物などを挙げることができる。これらの具体例としては、酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物などを;
モノアミン化合物として、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミンなどを;
モノイソシアネート化合物として、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを、それぞれ挙げることができる。
【0075】
分子量調節剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計100重量部に対して、20重量部以下とすることが好ましく、10重量部以下とすることがより好ましい。
【0076】
<ジアミン(D−1)の合成>
上記式(1)で表されるジアミン(D−1)は、有機化学の定法により適宜製造することができる。具体的には、上記式(1)においてBが上記式(3)で表される基である場合、例えば、先ず、下記式で表される化合物(M−1)と化合物(M−2)とを反応させることによって、中間体(M−3)を得る(下記反応式(I)参照)。また、上記式(1)においてBが1価の鎖状炭化水素基又は1価の脂環式炭化水素基である場合(以下、Bという)、例えば、先ず、下記式で表される化合物(M−4)と化合物(M−5)とを反応させることによって、中間体(M−6)を得る(下記反応式(II)参照)。
【0077】
【化9】

(式中、Yはハロゲン原子であり、Aは上記式(1)の定義と同じであり、R及びmは上記式(3)の定義と同じである。)
【0078】
【化10】

(式中、Yはハロゲン原子であり、Bは炭素数1〜30の1価の鎖状炭化水素基又は炭素数3〜30の1価の脂環式炭化水素基であり、これらは置換基を有していてもよく、メチレン基の一部が、酸素原子、カルボニル基又は−COO−で置換されていてもよい。但し、Bにおいて3級窒素原子と結合するものはメチレン基又は脂環式構造を形成する炭素原子である。Aは上記(1)の定義と同じである。)
【0079】
Yのハロゲン原子としては、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等が挙げられる。これらのうち、反応性の観点からするとフッ素原子が好ましい。
【0080】
反応式(I)及び(II)の反応は、塩基の存在下で行うことが好ましい。塩基としては、例えば、フッ化セシウム、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0081】
反応式(I)及び(II)の反応温度は、反応方法に応じて適宜設定すればよいが、0〜150℃であることが好ましく、80〜150℃であることがより好ましい。反応に使用する有機溶媒としては、例えばジメチルスルホキシドやジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0082】
次いで、上記反応式(I)の後であれば中間体(M−3)、上記反応式(II)の後であれば中間体(M−6)について、接触還元条件下、ニトロ基の還元及び水酸基の還元的除去を行う。これにより、ジアミン(D−1)に含まれるジアミン(D−1−a)、ジアミン(D−1−b)を得ることができる(下記反応式(III)及び下記反応式(IV)参照)。
【0083】
【化11】

(式中、Aは上記式(1)の定義と同じであり、R及びmは上記式(3)の定義と同じである。)
【0084】
【化12】

(式中、Aは上記式(1)の定義と同じであり、Bは上記式(II)の定義と同じである。)
【0085】
反応式(III)及び(IV)の反応は、ニッケル、パラジウム−炭素、PtO2、Pd(OH)2などの触媒を用いて、−20〜150℃で行うことが好ましく、0〜120℃で行うことがより好ましい。反応に使用する溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、エタノール、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
【0086】
<ポリアミック酸の合成>
本発明におけるポリアミック酸は、芳香族テトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物と、上記式(1)で表される化合物、好ましくは上記式(2)で表される化合物を含むジアミンとを反応させることにより得ることができる。ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.2当量となる割合である。
【0087】
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。このときの反応温度は−20℃〜150℃が好ましく、0〜100℃がより好ましい。また、反応時間は0.1〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましい。
【0088】
ここで、有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール及びその誘導体、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などを挙げることができる。
【0089】
これら有機溶媒の具体例としては、上記非プロトン性極性溶媒として、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどを;
上記フェノール誘導体として、例えばm−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノールなどを;
上記アルコールとして、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどを;
上記ケトンとして、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどを;
上記エステルとして、例えば乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチルなどを;
上記エーテルとして、例えばジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフランなどを;
上記ハロゲン化炭化水素として、例えばジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼンなどを;
上記炭化水素として、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテルなどを、それぞれ挙げることができる。
【0090】
これらの有機溶媒のうち、非プロトン性極性溶媒並びにフェノール及びその誘導体よりなる群(第一群の有機溶媒)から選択される1種以上、又は前記第一群の有機溶媒から選択される1種以上と、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素及び炭化水素よりなる群(第二群の有機溶媒)から選択される一種以上との混合物を使用することが好ましい。後者の場合、第二群の有機溶媒の使用割合は、第一群の有機溶媒及び第二群の有機溶媒の合計に対して、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下であり、更に30重量%以下であることが好ましい。
【0091】
有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して0.1〜50重量%になるような量とすることが好ましい。
【0092】
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリアミック酸を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸を脱水閉環してポリイミドとする場合には、上記反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで脱水閉環反応に供してもよく、又は単離したポリアミック酸を精製したうえで脱水閉環反応に供してもよい。ポリアミック酸の単離および精製は公知の方法に従って行うことができる。
【0093】
<イミド化重合体の合成>
本発明におけるイミド化重合体(ポリイミド)は、上記の如くして合成されたポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。
【0094】
本発明におけるポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造が併存する部分イミド化物であってもよい。本発明におけるポリイミドは、そのイミド化率が30%以上であることが好ましく、35〜99%であることがより好ましく、40〜99%であることがより好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
【0095】
ポリアミック酸の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸を加熱する方法により、又はポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。このうち、後者の方法によることが好ましい。
【0096】
上記ポリアミック酸の溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は好ましくは1.0〜120時間であり、より好ましくは2.0〜30時間である。
【0097】
このようにしてポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、これをそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤および脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。
【0098】
<重合体の溶液粘度>
以上のようにして得られる本発明におけるポリアミック酸又はイミド化重合体(以下、特定重合体ともいう)は、これを濃度10重量%の溶液としたときに、10〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、15〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。
【0099】
上記特定重合体の溶液粘度(mPa・s)は、当該特定重合体の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
【0100】
<その他の添加剤>
本発明の液晶配向膜は、上記の如き特定重合体を必須成分として含有するが、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。かかるその他の成分としては、例えばその他の重合体、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」という)、官能性シラン化合物等を挙げることができる。
【0101】
[その他の重合体]
上記その他の重合体は、溶液特性および電気特性の改善のために使用することができる。かかるその他の重合体は、特定重合体以外の重合体であり、例えば芳香族テトラカルボン酸二無水物を含まないテトラカルボン酸二無水物とジアミン(D−1)を含むジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸(以下、「他のポリアミック酸(1)」という)、該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミド(以下、「他のポリイミド(1)」という)、ジアミン(D−1)を含まないジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸(以下、「他のポリアミック酸(2)」という)、該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミド(以下、「他のポリイミド(2)」という)、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらのうち、他のポリアミック酸(1)、他のポリアミック酸(2)、他のポリイミド(1)又は他のポリイミド(2)が好ましく、他のポリアミック酸(1)又は他のポリアミック酸(2)がより好ましい。
【0102】
上記他のポリアミック酸(1),(2)又は他のポリイミド(1),(2)を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、特定重合体を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物として上述したものと同様のものを挙げることができるが、好ましくは1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物および1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオンよりなる群から選択される少なくとも1種を使用するものである。
【0103】
上記他のポリアミック酸(1),(2)又は他のポリイミド(1),(2)を合成するために用いられるジアミンとしては、特定重合体を合成するために用いられるジアミンとして上述したものと同様のものを挙げることができる。好ましくは、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸および1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジンよりなる群から選択される少なくとも1種を使用するものである。
【0104】
その他の重合体を液晶配向剤に添加する場合、その配合比率は、液晶配向剤中の全重合体量に対して95重量%以下が好ましく、0.1〜90重量%がより好ましく、0.1〜85重量%が更に好ましい。
【0105】
[エポキシ化合物]
上記エポキシ化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−シクロヘキシルアミン等を好ましいものとして挙げることができる。
【0106】
これらエポキシ化合物を液晶配向剤に添加する場合、その配合比率は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100重量部に対して40重量部以下が好ましく、0.1〜30重量部がより好ましい。
【0107】
[官能性シラン化合物]
上記官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、2―グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2―グリシドキシエチルトリエトキシシラン、3―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3―グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
【0108】
これら官能性シラン化合物を液晶配向剤に添加する場合、その配合比率は、重合体の合計100重量部に対して2重量部以下が好ましく、0.02〜0.2重量部がより好ましい。
【0109】
<有機溶媒>
本発明の液晶配向剤は、特定重合体及び必要に応じて任意的に配合されるその他の添加剤が、好ましくは有機溶媒中に溶解含有されて構成される。
【0110】
本発明の液晶配向剤に使用される有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。これらは単独で使用することができ、または2種以上を混合して使用することができる。
【0111】
本発明の液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計重量が液晶配向剤の全重量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲である。すなわち、本発明の液晶配向剤は、後述するように基板表面に塗布され、好ましくは加熱されることにより液晶配向膜である塗膜または液晶配向膜となる塗膜が形成されるが、固形分濃度が1重量%未満である場合には、この塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得ることができず、一方固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得ることができず、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が劣るものとなる。
【0112】
特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えばスピンナー法による場合には固形分濃度1.5〜4.5重量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲とし、それにより溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。
【0113】
本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは10〜50℃であり、より好ましくは20〜30℃である。
【0114】
<液晶配向膜及び液晶表示素子>
本発明の液晶配向膜は、上記の液晶配向剤により形成される。また、本発明の液晶表示素子は、該液晶配向膜を具備するものである。液晶表示素子における動作モードについて、IPS型やTN型、STN型といった水平配向型に適用してもよいし、VA型のような垂直配向型に適用してもよい。
【0115】
以下に、本発明の液晶表示素子の製造方法を説明するとともに、その説明の中で本発明の液晶配向膜の製造方法についても説明する。本発明の液晶表示素子は、例えば以下(P1)〜(P3)の工程により製造することができる。
【0116】
[工程(P1):塗膜の形成]
先ず基板上に本発明の液晶配向剤を塗布し、次いで塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。
【0117】
(P1−1)TN型、STN型又はVA型液晶表示素子を製造する場合、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を一対として、その各透明性導電膜形成面上に、本発明の液晶配向剤を、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法によりそれぞれ塗布し、次いで、各塗布面を加熱(好ましくは予備加熱(プレベーク)及び焼成(ポストベーク)からなる二段階加熱)することにより塗膜を形成する。ここで、本発明の液晶配向剤は、印刷性に優れているので、塗布方法としてオフセット印刷法を採用することが、本発明の優れた効果を最大限に発揮するとの観点から好ましい。
【0118】
基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス基材、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。
【0119】
基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを用いることができ、パターニングされた透明導電膜を得るには、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後フォト・エッチングによりパターンを形成する方法、透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法などによることができる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面及び透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板表面のうち塗膜を形成するべき面に、官能性シラン化合物、官能性チタン化合物などを予め塗布する前処理を施しておいてもよい。
【0120】
液晶配向剤塗布後の塗布面を、次いで予備加熱(プレベーク)し、さらに焼成(ポストベーク)することにより塗膜を形成する。プレベーク温度は、好ましくは30〜200℃であり、より好ましくは40〜150℃であり、特に好ましくは40〜100℃である。プレベーク時間は好ましくは0.25〜10分であり、より好ましくは0.5〜5分である。焼成(ポストベーク)温度は、好ましくは80〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃である。ポストベーク時間は好ましくは5〜200分であり、より好ましくは10〜100分である。このようにして、形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
【0121】
(P1−2)一方、IPS型液晶表示素子を製造する場合、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜が設けられている基板の導電膜形成面と、導電膜が設けられていない対向基板の一面とに、本発明の液晶配向剤をそれぞれ塗布し、次いで各塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。このとき使用される基板及び透明導電膜の材質、塗布方法、塗布後の加熱条件、透明導電膜のパターニング方法、基板の前処理ならびに形成される塗膜の好ましい膜厚については上記(P1−1)と同様である。
【0122】
上記(P1−1)及び(P1−2)のいずれの場合も、基板上に液晶配向剤を塗布した後、有機溶媒を除去することによって配向膜となる塗膜が形成される。この場合、塗膜形成後に更に加熱することによって脱水閉環反応を進行させ、よりイミド化された塗膜としてもよい。
【0123】
[工程(P2):ラビング処理]
TN型、STN型又はIPS型液晶表示素子を製造する場合には、上記のようにして形成された塗膜を、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦るラビング処理を施す。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。
【0124】
さらに、上記の液晶配向膜に対し、液晶配向膜の一部に紫外線を照射することによって液晶配向膜の一部の領域のプレチルト角を変化させる処理や、液晶配向膜表面の一部にレジスト膜を形成した上で先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去する処理を行い、液晶配向膜が領域ごとに異なる液晶配向能を持つようにすることによって得られる液晶表示素子の視界特性を改善することが可能である。
【0125】
なお、VA型液晶表示素子を製造する場合には、上記工程(1)で形成された塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、上記のラビング処理を施してもよい。
【0126】
[工程(P3):液晶セルの構築]
基板間に液晶を配置するには、例えば以下の2つの方法が挙げられる。
【0127】
第一の方法は、従来から知られている方法である。先ず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部を、シール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造することができる。
【0128】
第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法であり、液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に例えば紫外光硬化性のシール材を塗布し、さらに液晶配向膜面上に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造することができる。
【0129】
いずれの方法による場合でも、上記のようにして製造した液晶セルにつき、さらに、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶注入時の流動配向を除去することが望ましい。
【0130】
シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
【0131】
液晶としては、ネマチック型液晶及びスメクチック型液晶を挙げることができ、その中でもネマチック型液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック型液晶;商品名「C−15」、「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶などを、添加して使用してもよい。
【0132】
液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、本発明の液晶表示素子を得ることができる。偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【0133】
本発明の液晶表示素子は、種々の装置に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、各種モニター、液晶テレビなどの表示装置に用いることができる。
【実施例】
【0134】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0135】
<ジアミンの合成>
先ず、各種ジアミン化合物(D−1)の合成例1〜4を以下に説明する。なお、必要に応じて下記のスケールで合成を繰り返すことにより、以降のポリイミドの合成例における必要量を確保した。
【0136】
[合成例1]:N,N−ビス(4−アミノフェニル)−p−メチルフェニルアミンの合成
下記スキームに従って、N,N−ビス(4−アミノフェニル)−p−メチルフェニルアミン(以下、化合物(d−1)という)を合成した。
【化13】

【0137】
300ml三口フラスコに、窒素雰囲気下中、4−フルオロニトロベンゼン21.2g(0.15モル)、フッ化セシウム27.4g(0.18モル)、4−メチルアニリン8.0g(0.0745モル)、ジメチルスルホキシド75mlを混合し、110℃で6時間攪拌し反応させた。その後、反応溶液をエタノール800mlと混合し1時間攪拌した。析出物をろ過、乾燥し、中間体11.2gを得た。
【0138】
次いで、300ml三口フラスコに、窒素雰囲気下中、上記で合成した中間体11.2g(0.025モル)、Pd/C 9.1g、テトラヒドロフラン150mlを混合し、70℃で1時間加熱攪拌した。その後ヒドラジン一水和物15mlを加えた後、窒素雰囲気下80℃で3時間攪拌し反応させた。その後、ろ過により触媒を除去し、ろ液を濃縮、乾燥した。得られた粘性液体をカラムクロマトグラフ(クロロホルム/アセトン=10/1)により精製し、濃縮、乾燥した後、化合物(d−1)4.0gを得た。
【0139】
[合成例2]:N,N−ビス(4−アミノフェニル)−p−オクチルフェニルアミンの合成
下記スキームに従って、N,N−ビス(4−アミノフェニル)−p−オクチルフェニルアミン(以下、化合物(d−2)という)を合成した。
【化14】

【0140】
300ml三口フラスコに、窒素雰囲気下中、4−フルオロニトロベンゼン21.2g(0.15モル)、フッ化セシウム27.4g(0.18モル)、4−オクチルアニリン15.3g(0.0745モル)、ジメチルスルホキシド75mlを混合し、110℃で6時間攪拌し反応させた。その後、反応溶液をエタノール800mlと混合し1時間攪拌した。析出物をろ過、乾燥し、中間体11.2gを得た。
【0141】
次いで、300ml三口フラスコに、窒素雰囲気下中、上記で合成した中間体11.2g(0.025モル)、Pd/C 9.1g、テトラヒドロフラン150mlを混合し、70℃で1時間加熱攪拌した。その後ヒドラジン一水和物15mlを加えた後、窒素雰囲気下80℃で3時間攪拌し反応させた。その後、ろ過により触媒を除去し、ろ液を濃縮、乾燥した。得られた粘性液体をカラムクロマトグラフ(クロロホルム/アセトン=10/1)により精製し、濃縮、乾燥した後、化合物(d−2)5.3gを得た。
【0142】
[合成例3]:N,N−ビス(4−アミノフェニル)−フェニルアミンの合成
下記スキームに従って、N,N−ビス(4−アミノフェニル)−フェニルアミン(以下、化合物(d−3)という)を合成した。
【化15】

【0143】
300ml三口フラスコに、窒素雰囲気下中、4−フルオロニトロベンゼン40.6g(0.288モル)、アニリン12.8g(0.137モル)、フッ化セシウム50.0g(0.329モル)、ジメチルスルホキシド100mlを混合し、110℃で3日間攪拌し反応させた。その後、反応液に水を注いで、析出物をろ過し、水およびエタノールで洗浄し、乾燥し、中間体34.5gを得た。
【0144】
次いで、300ml三口フラスコに、窒素雰囲気下中、上記で合成した中間体34.1g(0.102モル)、Pd/C 2.54g、テトラヒドロフラン200ml、エタノール200mlを混合し、ヒドラジン一水和物25.4mlを加えた後、室温で1時間、70℃で2日間攪拌し反応させた。その後、ろ過により触媒を除去し、酢酸エチル500mlを追加し蒸留水300mlで4回洗浄、濃縮した。得られた粉末を再結晶により精製し(90℃で酢酸エチル270mlに溶解させた後ヘキサン150mlを加え放冷)、さらにろ液を濃縮・再結晶(80℃で酢酸エチル60mlに溶解させた後ヘキサン40mlを加え放冷)することで、最終的に化合物(d−3)を23.5g得た。
【0145】
[合成例4]:N,N−ビス(4−アミノフェニル)−メチルアミンの合成
下記スキームに従って、N,N−ビス(4−アミノフェニル)−メチルアミン(以下、化合物(d−4)という)を合成した。
【化16】

【0146】
300ml三口フラスコに、窒素雰囲気下中、4−フルオロニトロベンゼン18.6g(0.132モル)、N−メチル−4−ニトロアニリン18.3g(0.12モル)、炭酸カリウム18.2g(0.132モル)、ジメチルアセトアミド120mlを混合し、110℃で3日間攪拌し反応させた。その後、反応液に水を注いで、析出物をろ過し、水およびエタノールで洗浄し、乾燥し、中間体28.4gを得た。
【0147】
次いで、300ml三口フラスコに、窒素雰囲気下中、上記で合成した中間体28.1g(0.103モル)、Pd/C 3.08g、テトラヒドロフラン200ml、エタノール200mlを混合し、ヒドラジン一水和物30.8mlを加えた後、室温で30分間、70℃で3日間攪拌し反応させた(途中でPd/C 1g+2g、ヒドラジン10ml+10mlを追加)。その後、ろ過により触媒を除去し、酢酸エチル500mlを追加し蒸留水500mlで4回洗浄、濃縮した。得られた粉末を乾燥し、化合物(d−4)を21.3g得た。
【0148】
<ポリイミドの合成>
以下の合成例におけるポリイミドのイミド化率、及び溶液粘度は以下の方法により測定した。
【0149】
[イミド化率測定方法]
ポリイミドを室温で減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解させ、テトラメチルシランを基準物質として室温でH−NMR(核磁気共鳴装置(商品名:JNM−ECX400、日本電子社製))を測定し、下記式(i)で示される式により求めた。
イミド化率(%)=(1−A/A×α)×100 (i)
:NH基のプロトン由来のピーク面積(10ppm)
:その他のプロトン由来のピーク面積
α :ポリアミック酸における、NH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合
【0150】
[溶液粘度]
重合体の溶液粘度(mPa・s)は、所定の溶媒を用い、所定の固形分濃度に希釈した溶液ついてE型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
【0151】
[合成例5]
ジアミン化合物としてN,N−ビス(4−アミノフェニル)−p−オクチルフェニルアミン1.78g(4.58ミリモル)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン0.82g(4.12ミリモル)、4−アミノフェニル 4−アミノベンゾエート1.57g(6.87ミリモル)、1−(2−プロピニルオキシ)−2,4−ベンゼンジアミン0.74g(4.58ミリモル)、テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン0.73g(2.29ミリモル)、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン0.29g(0.46ミリモル)をN−メチル−2−ピロリドン44gに溶解させた後、テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物4.57g(20.4ミリモル)を加え、60℃で3時間反応させた。その後、ピロメリット酸二無水物0.49g(2.27ミリモル)を加え、常温で1時間反応させた後、N−メチル−2−ピロリドンを55g加え希釈し、固形分濃度10%での溶液粘度30mPa・sのポリアミック酸溶液約110gを得た。
【0152】
次いで、ピリジン9.0gおよび無水酢酸6.9gを添加し110℃で4時間脱水閉環させた。イミド化反応後、系内の溶剤を新たなγ―ブチロラクトンで溶剤置換し(本操作にてイミド化反応に使用したピリジン、無水酢酸を系外に除去した)、固形分濃度10重量%、溶液粘度33mPa・s、イミド化率83%のポリイミド含有溶液約100gを得た。
【0153】
[合成例6〜21、比較合成例1〜2]
合成例6〜21、及び比較合成例1〜2については、使用するモノマーの種類、組成比を下記表1のようにした点、及び以下の(1),(2)を除き、合成例5と同様にして、ポリイミドを含有する溶液を調製した。なお、表1中、[mol%]は、各テトラカルボン酸二無水物については、テトラカルボン酸二無水物の全量に対する含有量を示し、各ジアミンについては、ジアミンの全量に対する含有量を示す。
【0154】
(1)各種ジアミンを溶解させる溶媒が、合成例16ではN−メチル−2−ピロリドン760g及びγ−ブチロラクトン760gであり、合成例17ではN−メチル−2−ピロリドン22g及びγ−ブチロラクトン22gであった。また、ポリアミック酸溶液を調製する上で希釈のために加えたN−メチル−2−ピロリドンの量が、合成例16では1900gであった。
【0155】
(2)ピリジン及び無水酢酸の添加量は、合成例10,比較合成例2では9.3g及び7.2gであり、合成例11,12では9.5g及び7.4gであり、合成例13〜15では9.4g及び7.2gであり、合成例16では311.1g及び240.9gであり、合成例17では9.0g及び6.9gであり、合成例18,21では8.9g及び6.9gであり、合成例19,20では8.5g及び6.6gであり、比較合成例1では10.0g及び7.7gであった。
【0156】
【表1】

【0157】
表1中、各化合物の略称は、それぞれ以下のとおりである。
[テトラカルボン酸二無水物]
t−1:ピロメリット酸二無水物
t−2:2,5−トリフルオロメチルピロメリット酸二無水物
t−3:ベンゼン−1,4−ジイルビス(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−2−ベンゾフラン−5−カルボキシレイト)
t−4:エチレングリコールジベンゾアートテトラカルボン酸二無水物
t−5:2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物
[ジアミン]
d−1:N,N−ビス(4−アミノフェニル)−p−メチルフェニルアミン
d−2:N,N−ビス(4−アミノフェニル)−p−オクチルフェニルアミン
d−3:N,N−ビス(4−アミノフェニル)−フェニルアミン
d−4:N,N−ビス(4−アミノフェニル)−メチルアミン
d−5:4,4’−ジアミノジフェニルメタン
d−6:4−アミノフェニル 4−アミノベンゾエート
d−7:1−(2−プロピニルオキシ)−2,4−ベンゼンジアミン
d−8:テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン
d−9:3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン
d−10:4,4’−[4,4’−プロパン−4,4−プロパン−1,3−ジイルビス(ピペリジン−1,4−ジイル)]ジアニリン
d−11:p−フェニレンジアミン
d−12:ビスアミノプロピルテトラメチルジシロキサン
【0158】
<ポリアミック酸の合成>
[合成例22]
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物200g(1.0モル)、ジアミンとして2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル210g(1.0モル)をN−メチル−2−ピロリドン370g、γ―ブチロラクトン3300gに溶解させ、40℃で3時間反応させて、固形分濃度10重量%、溶液粘度160mPa・sのポリアミック酸溶液を得た。
【0159】
<液晶配向剤の調製>
[実施例1]
上記合成例5で得たポリイミド含有溶液にγ−ブチロラクトン(BL)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)及びブチルセロソルブ(BC)を加え、さらにエポキシ化合物としてN,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンを重合体の合計100重量部に対して2重量部加えて十分に撹拌し、溶媒組成がBL:NMP:BC=75:10:15(重量比)、固形分濃度5.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより、液晶配向剤を調製した。
【0160】
[実施例2〜19、比較例1〜2]
表2に記載の重合体を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2〜19及び比較例1〜2についての液晶配向剤を調製した。
【0161】
<液晶表示素子の製造及び評価>
[印刷性の評価]
調製した実施例1〜19及び比較例1〜2のそれぞれの液晶配向剤を、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いてITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面に塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、200℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚600Åの塗膜を形成した。この塗膜を倍率20倍の顕微鏡で観察して印刷ムラおよびピンホールの有無を調べた。ハジキ、塗布ムラのないものを「良好」、それ以外の場合を「不良」とした。
【0162】
[塗膜の膜厚均一性の評価]
上記実施例1〜19及び比較例1〜2に係る各塗膜のそれぞれについて、蝕針式膜厚計(KLAテンコール社製)を用いて基板の中央部における膜厚と基板の外側端から15mm中央に寄った位置における膜厚とをそれぞれ測定した。両者の膜厚差が20Å以下のものを膜厚均一性「良好」、膜厚差20Åを超えたものを膜厚均一性「不良」として評価した。
【0163】
[液晶表示素子の製造]
上記のように得た、実施例1〜19及び比較例1〜2に係る各塗膜のそれぞれについて、レーヨン布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数400rpm、ステージ移動速度3cm/秒、毛足押しこみ長さ0.5mmでラビング処理を行い、液晶配向能を付与した。その後、各塗膜のそれぞれについて、超純水中で1分間超音波洗浄を行ない、次いで100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、液晶配向膜を有する基板を得るとともに、さらにこの操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
【0164】
次に、上記のように得た、実施例1〜19及び比較例1〜2に係る各一対の基板のそれぞれについて、上記一対の基板の液晶配向膜を有するどちらか一枚の外縁に、直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマチック型液晶(メルク社製、MLC−6221)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することにより、液晶表示素子を製造した。
【0165】
[液晶配向性の評価]
上記のように製造した、実施例1〜19及び比較例1〜2に係る各液晶表示素子を、光学顕微鏡により観察したとき、光漏れが観察されないものを液晶配向性「良好」、光漏れが観察されたものを液晶配向性「不良」として評価した。
【0166】
[DC残像特性(残留DC緩和測定)]
上記のように製造した、実施例1〜19及び比較例1〜2に係る各液晶表示素子を、高温環境(60℃)下で、DC1V、10Hzの三角波で1日駆動させたのち、フリッカー消去法にて残留DC値を測定した。測定は駆動を止めてすぐの初期残留DC値と、残留DC値の時間変化の傾きについて緩和速度(mV/sec)について測定した。初期残留DC値が1000mV以下で緩和するものをDC残像特性良好、緩和しないものを不良とした。
【0167】
[AC残像特性(プレチルト角安定性の評価)]
上記のように製造した、実施例1〜19及び比較例1〜2に係る各液晶表示素子を、AC9V、室温で、13時間駆動した後のプレチルト角(駆動後プレチルト角θac)を「T.J.Scheffer et.al.,J.Appl.Phys.vol.48,p1783(1977)」、及び「F.Nakano,et.al.,JPN.J.Appl.Phys.vol.19,p2013(1980)」に記載の方法に準拠し、He−Neレーザー光を用いる結晶回転法で測定し下記式(ii)によりプレチルト角変化率α[%]を算出した。プレチルト角変化率αが3%未満のものを「良好」、それ以上のものを「不良」と評価した。上記評価をもってAC残像特性評価とした。
α=(θac−θini)/θini×100[%] (ii)
【0168】
[信頼性]
上記のように製造した、実施例1〜19及び比較例1〜2に係る各液晶表示素子を、バックライト電灯下でストレス付加100時間経過後の電圧保持率の変化率(ΔVHR)を測定した。電圧保持率は液晶表示素子に1Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、1670ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から1670ミリ秒後の電圧保持率を測定した。測定装置は(株)東陽テクニカ製VHR−1を使用した。電圧保持率の変化率(ΔVHR)が2%以内の場合を良、それ以外の場合を不良と判断した。
【0169】
実施例1〜19及び比較例1〜2の評価結果を、各組成とともに下記表2に示す。
【0170】
【表2】

【0171】
表2に示すように、実施例1〜19及び比較例1〜2のいずれも、印刷性、膜厚均一性、及び液晶配向性が良好であった。また、実施例1〜19はいずれも、DC残像特性、AC残像特性及び信頼性も良好であった。これに対して、比較例1は、DC残像特性、AC残像特性及び信頼性のいずれも不良であり、比較例2は、AC残像特性は良好であるものの、DC残像特性及び信頼性が不良であった。
【0172】
また、実施例1〜19について、テトラカルボン酸二無水物の全量に対する芳香族テトラカルボン酸二無水物のモル比が5モル%である実施例2及び2モル%である実施例3や、ジアミンの全量に対するジアミン(D−1)のモル比が5モル%である実施例7及び2モル%である実施例8に比べて、いずれも10モル%以上である実施例1,4〜6,9〜19の方が、残留DC値の緩和速度が特に好ましい値となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸及びそのイミド化重合体よりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含有し、
前記テトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物を含むものであり、
前記ジアミンは、下記式(1)で表される化合物を含むものであることを特徴とする液晶配向剤。
【化1】

(式(1)中、Aは、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ピリジレン基、ピリミジニレン基又はトリアジニレン基であり、これらは置換基を有していてもよい。Bは、芳香環構造を有する1価の基、炭素数1〜30の1価の鎖状炭化水素基又は炭素数3〜30の1価の脂環式炭化水素基であり、鎖状炭化水素基又は脂環式炭化水素基は置換基を有していてもよく、メチレン基の一部が、酸素原子、カルボニル基又は−COO−で置換されていてもよい。但し、Bにおいて式(1)中の窒素原子と結合するものはメチレン基、脂環式構造を形成する炭素原子又は芳香環構造を形成する炭素原子である。)
【請求項2】
前記Bは、炭素数1〜6のアルキル基(当該アルキル基は、置換基を有していてもよく、メチレン基の一部が、酸素原子、カルボニル基又は−COO−で置換されていてもよい)、又は置換基を有していてもよいアリール基であることを特徴とする請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
前記Aは、置換基を有していてもよいフェニレン基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1に記載の液晶配向剤により形成された液晶配向膜。
【請求項5】
請求項4に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
【請求項6】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸であって、
前記テトラカルボン酸二無水物は、芳香像テトラカルボン酸二無水物を含むものであり、
前記ジアミンは、下記式(1)で表される化合物を含むものであることを特徴とするポリミック酸。
【化2】

(式(1)中、Aは、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ピリジレン基、ピリミジニレン基又はトリアジニレン基であり、これらは置換基を有していてもよい。Bは、芳香環構造を有する1価の基、炭素数1〜30の1価の鎖状炭化水素基又は炭素数3〜30の1価の脂環式炭化水素基であり、鎖状炭化水素基又は脂環式炭化水素基は置換基を有していてもよく、メチレン基の一部が、酸素原子、カルボニル基又は−COO−で置換されていてもよい。但し、Bにおいて式(1)中の窒素原子と結合するものはメチレン基、脂環式構造を形成する炭素原子又は芳香環構造を形成する炭素原子である。)
【請求項7】
請求項6に記載のポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミド。

【公開番号】特開2012−173514(P2012−173514A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35456(P2011−35456)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】