説明

液溶性除菌剤及び液溶性除菌剤の製造方法

【課題】液溶性除菌剤に含有されるヨウ素の溶出速度を設定することができ、低濃度であっても除菌が可能であるとともに、長期の連続使用が可能ならしめる液溶性除菌剤及び液溶性除菌剤の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る液溶性除菌剤1は、形状の核となる核粒子体10の表面に、ヨウ素及びヨウ素化合物の混合物11(又はヨウ素化合物)とバインダー材料12とが一様混合の硬質化状態となっており、各構成要素の重量比によって、ヨウ素(ヨウ化物イオン)の液体(例えばお湯)に対する溶出速度が決定される。混合物11自体では、造粒化することが困難であるが、核粒子体10とバインダー材料とを用いることにより造粒化し、100℃以下で乾燥することによって適度の硬度を有する造粒体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含有されたヨウ素が溶出する溶出速度を適宜設定することによって、長期間の連続使用が可能で、かつ低濃度であっても除菌及び抗菌(以下、代表して除菌という)が可能であるとともに、取扱いが容易な液溶性除菌剤及び液溶性除菌剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨウ素が大腸菌、黄色ブドウ球菌及びレジオネラ菌などの除菌に有効であることは、よく知られている。例えば、ヨウ素とヨウ化カリウムとが含有されたエタノール溶液であるヨードチンキを用いて、風呂の水に生息しているレジオネラ属菌を除菌することができるレジオネラ属菌の除菌装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、ヨードチンキの濃度によっては危険となることから、一般家庭に適用するには困難である。
【0003】
ところで、ヨウ素自体には毒性が少ないが、水に溶解されにくいという特徴を有しており、固形体の製品を得ることが困難である。そこで、板状のプラスチックの材料にヨウ素を混合して、プラスチックからヨウ素を放出するようにした除菌剤が実用化されている。
【特許文献1】特開平10−244268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した除菌剤は、ヨウ素を混入することによって、その強度が低下することから、混入するヨウ素の量には限界がある。したがって、上述した除菌剤は、溶出するヨウ素の量が少なく、各種の細菌を除菌するには、大量の除菌剤を風呂に投入する必要があり、現実的には、一般家庭風呂に適用することは不可能であった。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、液溶性除菌剤に含有されるヨウ素の溶出速度を設定することができ、低濃度であっても除菌が可能であるとともに、長期の連続使用を可能ならしめる液溶性除菌剤及び液溶性除菌剤の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明に係る液溶性除菌剤は、液体に浸漬されることによって、含有されたヨウ素が溶出する液溶性除菌剤であって、ヨウ素とヨウ素化合物との混合物又はヨウ素化合物がバインダー材料と混合され、粒体の表面に硬質化状態で被覆されていることを特徴とする。
【0007】
本発明にあっては、ヨウ素とヨウ素化合物との混合物又はヨウ素化合物がバインダー材料と混合されて、粒体の表面に硬質化状態で被覆されている。適度の硬度を有する造粒物とすることによって、液体に浸漬されることによって溶出するヨウ素(ヨウ化物イオン)の溶出速度を遅延させ、長期間の連続使用が可能で、かつ取扱いが容易で、さらに低濃度であっても各種細菌を除菌することができる。
【0008】
第2発明に係る液溶性除菌剤は、第1発明において、前記粒体は、メッシュサイズが32メッシュ以下の粉体を造粒化したものであることを特徴とする。
【0009】
本発明にあっては、液溶性除菌剤の形状を決定する核となる粒体が32メッシュ以下の粉体を造粒化したものであることにより、メッシュ内、すなわち粒体の外形より内側に、除菌に作用するヨウ素を蓄積させて、さらに長期間の連続使用を可能にすることができる。
【0010】
第3発明に係る液溶性除菌剤は、第1発明又は第2発明において、前記粒体と、前記混合物又は前記ヨウ素化合物と、前記バインダー材料との重量比が、1:x:0.5(x≧1.5)であることを特徴とする。
【0011】
本発明にあっては、粒体、ヨウ素とヨウ素化合物との混合物又はヨウ素化合物、及びバインダー材料の重量比を1:x:0.5(x≧1.5)とすることにより、280時間以上の連続使用が可能となる。例えば、1日の使用時間を15分とした場合、1つの液溶性除菌剤で1120回の使用が可能となり、利用者は極めて簡単に取り扱うことができるとともに、低コストでの利用が可能となる。
【0012】
第4発明に係る液溶性除菌剤の製造方法は、液体に浸漬されることによって、含有されたヨウ素が溶出する液溶性除菌剤の製造方法であって、ヨウ素とヨウ素化合物との混合物又はヨウ素化合物と、バインダー材料との混合物に、その形状の核となる核子を混入して造粒化し、100℃以下の温度で乾燥して、ヨウ素とヨウ素化合物との混合物又はヨウ素化合物を前記核子の表面に硬質化させることを特徴とする。
【0013】
本発明にあっては、バインダー材料を用いて、ヨウ素とヨウ素化合物との混合物又はヨウ素化合物に、その形状の核となる核子(粒体)を混入して造粒体に成形する。例えば、それ自体公知のカルバーコーティングマシンを用いて、各構成要素を回転ドラムに配置し、回転ドラムを回転させて、粒体を核とする造粒体を得ることができる。そして、造粒体を100℃以下にて乾燥することにより、造粒時の形状を保持した状態で硬質化させる。
【0014】
第5発明に係る液溶性除菌剤の製造方法は、第4発明において、前記混合物又は前記ヨウ素化合物、及び前記バインダー材料の重量比を調整して、ヨウ素の溶出速度を設定することを特徴とする。
【0015】
本発明にあっては、ヨウ素とヨウ素化合物との混合物又はヨウ素化合物とバインダー材料との重量比によって、含有するヨウ素の溶出速度が決定されることから、使用用途に応じて、その重量比を調整して、所望する溶出速度となるように設定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ヨウ素とヨウ素化合物との混合物又はヨウ素化合物がバインダー材料と混合されて、粒体の表面に硬質化状態で被覆されていることとしたので、液体に浸漬されることによって溶出するヨウ素(ヨウ化物イオン)の溶出速度を遅延させ、長期間の連続使用が可能で、かつ取扱いが容易で、さらに低濃度であっても各種細菌を除菌することができる。
【0017】
本発明によれば、液溶性除菌剤の形状を決定する核となる粒体が32メッシュ以下の粉体を造粒化したものであることとしたので、メッシュ内、すなわち粒体の外形より内側に溶出するヨウ素を蓄積させて、さらに長期間の連続使用を可能にすることができる。
【0018】
本発明によれば、粒体、ヨウ素とヨウ素化合物との混合物又はヨウ素化合物、及びバインダー材料の重量比を1:x:0.5(x≧1.5)とすることとしたので、280時間以上の連続使用が可能となる。例えば、1日につき15分間の使用を行った場合、1つの液溶性除菌剤で1120回以上の使用が可能となる。このように、長期の連続使用が可能であるため、利用者は極めて簡単に取り扱うことができるとともに、低コストでの利用が可能となる。
【0019】
本発明によれば、バインダー材料を用いて、ヨウ素とヨウ素化合物との混合物又はヨウ素化合物に、その形状の核となる核子(粒体)を混入して造粒体に成形し、造粒体を100℃以下にて乾燥することにより、造粒時の形状を保持した状態で造粒体を硬質化させて適度の硬度を有する液溶性除菌剤とすることができる。
【0020】
本発明によれば、ヨウ素とヨウ素化合物との混合物又はヨウ素化合物とバインダー材料との重量比を調整することにより、使用用途に応じて、ヨウ素の溶出速度を制御することができる等、優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は本発明に係る液溶性除菌剤の構造を示す断面図である。
本発明に係る液溶性除菌剤1は、形状の核となる核子(粒体)である核粒子体10の表面に、ヨウ素及びヨウ素化合物(例えば、ヨウ化カリウム)の混合物11と、バインダー材料12とが一様混合の硬質化状態となっており、各構成要素の重量比によって、ヨウ素(ヨウ化物イオン)の液体(例えばお湯)への溶出速度が決定される。混合物11自体では、造粒化することが困難であるが、核粒子体10とバインダー材料12とを用いることにより造粒化し、100℃以下で乾燥することによって適度の硬度を有する造粒体とする。各構成要素の重量比を調整することによって、所望する利用用途に適した溶出速度にすることができる。
【0022】
核粒子体10は、例えばメッシュサイズが32メッシュ以下のゼオライトを造粒して、粒径を略3mmφとした造粒体である。なお、核粒子体10としては、上述したゼオライトのほか、厚生省食品添加物既存物物質120号に指定されている材料であるカオリン、タルク、トルマリンなどを用いることが安全性の観点から好適であるが、例えばチタン、プラスチック(ビーズ)、ジルコニア、ゲルマニウム、希土類などでもよく、その材質が限定されるものではなく、例えば焼成処理によって所定形状に造粒できる材料であればよい。
【0023】
また、ヨウ素は、それ自体では溶解しにくいが、ヨウ素化合物に混合することによって溶解性が向上するために、ヨウ素とヨウ素化合物との混合物11に、バインダー材料12を混合するようにしたが、ヨウ素化合物単体にバインダー材料12を混合するようにしてもよい。ただし、ヨウ素とヨウ素化合物との混合物11を用いることにより、単位体積あたりのヨウ素の濃度が、ヨウ素化合物単体の場合より高められることは言うまでもない。
【0024】
さらに、色素、香料及び天然鉱物などを添加して、添加物に固有の効果を出すようしにしてもよい。例えば、色素は赤色2号及び青色1号などの食品添加物認定材料並びに天然色素などであり、香料はアセト酢酸エチル及び酢酸テルピニルなど食品添加物認定材料、並びに天然香料などである。また、天然鉱物は、トルマリン、ゼオライトなどの食品添加物製造用剤が好ましいが、ラジウム鉱石、遠赤外線放射鉱石などであってもよく、入浴時に使用できるものであれば限定されるものではない。例えば、色素を添加するようにすれば、液溶性除菌剤1に含有される有効成分が溶出されているか否かをお湯の着色度合いによって判断することができる。また、香料を添加するようにすれば、その香りによって入浴者のストレスを軽減するアロマセラピー効果をもたらすことができる。このような添加物を添加することによって、ヨウ素化合物11の重量比を下げることができる。
【0025】
バインダー材料12としては、キトサンのような動物性油脂及び植物性油脂が好ましいが、合成のりのような化学系材料であってもよい。バインダー材料12は、核粒子体10の表面に混合物11が一様に混合された状態を維持するためのものであり、液溶性除菌剤を製造するに際して重要な役割を担うとともに、ヨウ素の溶出速度を制御する。
【0026】
図2は本発明に係る液溶性除菌剤の製造方法を説明するための説明図である。
本発明に係る液溶性除菌剤1の製造方法は、カルバーコーティングマシンの回転ドラム30に、まず、ヨウ素11a及びヨウ素化合物11bと、バインダー材料12とを配置した後、一様に撹拌して混合する。そして、ゼオライトを900℃にて焼成処理した球状(例えば3mmφ)の核粒子体10(ここでは複数とする)を、回転ドラム30の略中心Cに配置する(図2(a))。そして、回転ドラムを回転させて、ヨウ素11a及びヨウ素化合物11bの混合物11とバインダー材料12とを一様に混合して核粒子体10を核とする球状の造粒体20を得る(図2(b))。造粒体20は、核粒子体10と相似する形状を呈する。
【0027】
そして、造粒体20を100℃以下にて乾燥することにより、形状を保持した状態で造粒体20が硬質化して液溶性除菌剤1が製造される。バインダー材料11を用いることによって、含有するヨウ素が空気に直接的に晒されることがなくなる。したがって、空気によってヨウ素が分解する虞が全くなくなり、取扱いが極めて容易となる。なお、厳密には、周囲の空気(酸素)が溶性除菌剤1の内部に徐々に取り込まれ、液溶性除菌剤1を構成する薬品と反応して気化(昇華)するが、その量は微量である。
【0028】
このようにして製造された液溶性除菌剤1を、液体中に投入した場合、液溶性除菌剤1の表面からヨウ素が徐々に溶出(徐放)され、ヨウ素化合物を直接液体に投入した場合と比べて、ヨウ素の溶出を抑制することができる。すなわち、長期間の使用が可能となる。
【0029】
次に、評価サンプルとして、核粒子体10、ヨウ素及びヨウ素カリウムの混合物11、並びにバインダー材料12の重量比を1:x:0.5(x=1.5)とした液溶性除菌剤1を製造して、その液溶性を評価した。なお、本例ではヨウ素とヨウ素カリウムとの配合がそれぞれ50重量%となるようにしたが、ヨウ素及びヨウ素化合物の配合比は、溶解補助剤として作用するヨウ素化合物の種類に応じて、適宜設定することが好ましい。
【0030】
液溶牲除菌剤1を43℃の溶液に投入し、280時間利用した後の液溶性除菌剤1から溶出されるヨウ化物イオンの濃度を評価した。0.01重量%溶液となるように、0.5gの液溶性除菌剤1を5000mlの脱イオン水中に入れ、マグネチックスターラーを用い、室温で60分間撹拌する。そして、JIS K 0102 36.2に準拠した検査方法で、溶液中のヨウ化物イオンの濃度を計測すると、6mg/lのヨウ化物イオンが検出された。つまり、使用開始280時間後であっても、お湯に対して0.01重量%の重量比となる液溶性除菌剤を投入した場合であっても、重量比が6ppmのヨウ素(ヨウ化物イオン)が溶出していることが分かった。また、このヨウ素の溶出量は、安全基準に比べてはるかに少ない量であり、一般家庭においても安心して使用することができる。
【0031】
次に、液溶性除菌剤1の大腸菌(Escherichia coliNBRC 3972)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC 12732)及び緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa NBRC 13275)に対する除菌力試験を財団法人新潟県環境衛生研究所にて実施した。まず、試験菌をNA培地(日水製薬)に移植し、36±1℃下で24時間培養を行った後、滅菌精製水に均一に分散させて試験菌液を調製する。そして、42℃に保った試験菌液5000mlに0.5gの液溶性除菌剤1を入れ、42℃のふ卵器内でスターラーを利用して撹拌する。15分後及び60分後にその1mlをSCDLP寒天培地(栄研化学)を用いた混釈平板培養法(35.0±1℃、48時間培養)により、生菌数を計測した。なお、静置したままの試験菌液に対しても同様の試験を行ってレファレンスとした。評価結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
また、液溶性除菌剤1のレジオネラ属菌(Legionella pneumophilaGroup6)に対する除菌力試験を財団法人新潟県環境衛生研究所にて実施した。まず、試験菌をBCYEα寒天培地(OXOID)に移植し、36±1℃下で5日間培養を行った後、滅菌リン酸緩衝生理食塩水に均一に分散させて試験菌液を調製する。そして、42℃に保った試験菌液5000mlに0.5gの液溶性除菌剤1を入れて0.01重量%溶液とし、42℃のふ卵器内でスターラーを利用して撹拌する。15分後及び60分後にその0.1mlをMWY寒天生培地(関東化学)に塗抹し、36℃7日間培養を行い、生菌数を計測した。なお、静置したままの試験菌液に対しても同様の試験を行ってレファレンスとした。評価結果を表2に示す。
【0034】
【表2】

【0035】
表1及び表2に示したように、液溶性除菌剤1は、0.01重量%の低濃度であっても、大腸菌、黄色ブドウ球菌及び緑膿菌、並びにレジオネラ属菌を完全に除菌することが可能であることが分かった。しかも、少なくとも15分後には、各種細菌を除菌することが可能であることが分かった。
【0036】
上述した液溶性除菌剤1の液溶性の評価結果、及びその除菌力の評価結果から、核粒子体、ヨウ素及びヨウ素カリウム、並びにバインダー材料の重量比が1:x:0.5(x≧1.5)である場合には、280時間以上の連続使用が可能となる。使用開始の15分後には各種細菌を除菌することが可能であることから、1日につき15分間の使用を行った場合、1つの液溶性除菌剤で1120回以上の使用が可能となる。このように、長期の連続使用が可能であるため、利用者は極めて簡単に取り扱うことができるとともに、低コストでの利用が可能となる。
【0037】
ここで、ヨウ素の溶出速度は、液溶性除菌剤1を構成する各要素の重量比によって決定されることから、所望の溶出速度となるように、使用用途に応じて重量比を調整すればよい。本実施形態では、主として一般家庭風呂の用途に好適となるように、重量比が1:x:0.5(x≧1.5)とした液溶性除菌剤1を製造した。換言すれば、重量比のパラメータであるxを、用途に合わせて、2,3,4,5などに適宜設定するようにしてもよいことはもちろんである。
【0038】
また、同一の重量比であっても、液溶性除菌剤1の耐用期間(使用期間)は、核粒子体10の表面に硬質化したヨウ素を含む層の厚みによって決定されることから、例えば層の厚みを厚くすることによって、耐用期間を長くすることができる。
【0039】
さらに、液溶性除菌剤1のクロカビ(Cladosporium cladosporioidesIFO No.6348)に対する抗カビ試験を財団法人新潟県環境衛生研究所にて実施した。まず、試験カビをPDA培地に移植し、25±1℃下で7日間培養を行った後、培養面から胞子を抽出し、0.005%界面活性剤(スルホこはく酸ジオクチルナトリウム)含有滅菌精製水に懸濁させ、ガーゼでろ過する。そして、ろ液内の胞子数を計測し、胞子密度が略106 /mlとなるように調製したものを接種用胞子液とする。このようにして調製した接種用胞子液0.5mlを寒天平板培地(0.01%クロラムフェニコール加ポテトデキストロース(栄研器材))に塗抹し、25±1℃下で、この寒天平板培地に球形(直径8mm)の液溶性除菌剤1を載置する。そして、液溶性除菌剤1の周囲におけるカビ発育の有無を4週間にわたって観察した(サンプル:2個)。なお、液溶性除菌剤1を載置しない寒天平板培地に対しても同様の試験を行ってレファレンスとした。評価結果を表3に示す。
【0040】
【表3】

【0041】
表3に示したように、液溶性除菌剤1には、クロカビの発育を阻止する効果を有していることが分かった。これは、液溶性除菌剤1が周囲の空気(酸素)を内部に徐々に取り入れ、液溶性除菌剤1を構成する薬品が空気と反応して気化(昇華)することにより、これら昇華された薬品によってカビが死滅したと推定される。
【0042】
上述した如く、本発明に係る液溶性除菌剤は、長期の連続使用が可能で、バインダー材料を混合させることによって、ヨウ素が空気に晒されることがないため、使用しない場合は、暗室に保管しておくだけでよく、真空状態で保管するといった従来の除菌剤では必須であった手間が不要である。したがって、浴槽の側面に液溶性除菌剤を掛けておくようにすれば、使用後は、浴槽に蓋をすることによって暗室状態にすることができるので、利用者に手間をとらせることはない。このように、一般家庭であっても、本発明に係る液溶性除菌剤を使用することで、各種細菌を手軽に除菌することができ、衛生的に入浴を行うことができる。
【0043】
また、本発明に係る液溶性除菌剤は、抗カビ効果を有することから、未使用状態で長期間放置した場合であっても、カビが生育することなく、かつ、実使用時には上述したような除菌の効能が生じる。
【0044】
以上、本発明に係る液溶性除菌剤及び液溶性除菌剤の製造方法について、具体的な実施の形態を示して説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上述した実施の形態に係る発明の構成及び機能に様々な変更又は改良を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る液溶性除菌剤の構造を示す断面図である。
【図2】本発明に係る液溶性除菌剤の製造方法を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1 液溶性除菌剤
10 核粒子体
11 ヨウ素及びヨウ素化合物の混合物
12 バインダー材料
20 造粒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に浸漬されることによって、含有されたヨウ素が溶出する液溶性除菌剤であって、
ヨウ素とヨウ素化合物との混合物又はヨウ素化合物がバインダー材料と混合され、粒体の表面に硬質化状態で被覆されていること
を特徴とする液溶性除菌剤。
【請求項2】
前記粒体は、メッシュサイズが32メッシュ以下の粉体を造粒化したものであること
を特徴とする請求項1に記載の液溶性除菌剤。
【請求項3】
前記粒体と、前記混合物又は前記ヨウ素化合物と、前記バインダー材料との重量比が、1:x:0.5(x≧1.5)であること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液溶性除菌剤。
【請求項4】
液体に浸漬されることによって、含有されたヨウ素が溶出する液溶性除菌剤の製造方法であって、
ヨウ素とヨウ素化合物との混合物又はヨウ素化合物と、バインダー材料との混合物に、その形状の核となる核子を混入して造粒化し、
100℃以下の温度で乾燥して、ヨウ素とヨウ素化合物との混合物又はヨウ素化合物を前記核子の表面に硬質化させること
を特徴とする液溶性除菌剤の製造方法。
【請求項5】
前記混合物又は前記ヨウ素化合物、及び前記バインダー材料の重量比を調整して、ヨウ素の溶出速度を設定すること
を特徴とする請求項4に記載の液溶性除菌剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−169235(P2006−169235A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−331914(P2005−331914)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(598110828)有限会社 やまがたスリートップ (4)
【出願人】(597014741)ネムール株式会社 (4)
【Fターム(参考)】