説明

液滴スプレーデバイス

【課題】ケルビン効果を考慮に入れることができる液滴スプレーデバイスを提供すること。
【解決手段】本発明は、液状物質を噴霧する液滴スプレーデバイスを提供し、このデバイスは、以下:ハウジングであって、このハウジングは、第一基板、第二基板、および液状物質を収容するための空間を備え、この第二基板は、この第一基板上に重ね合わされる、ハウジング;この空間に液状物質を供給する手段;出口手段であって、この出口手段は、第一および第二基板の少なくとも一方に配置され、この排出チャネルは、空間を、少なくとも1個の出口ノズルの各々に連結する、出口手段;ならびに振動要素であって、この振動要素は、出口ノズルを通してスプレーとして液状物質を噴出するために、空間内の液体を振動させるように配置されている、振動要素、を備える、デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の属する技術分野)
本発明は、液状物質(例えば、薬物、芳香剤または他の噴霧液体)を噴霧するのに適切な液滴スプレーデバイスに関する。このようなデバイスは、例えば、香水ディスペンサーに使用され得るか、または患者の呼吸系によって患者に噴霧薬物または霧状薬物を投与するのに使用され得る。このようなデバイスは、その最も簡単な形状では、通例、アトマイザーと呼ばれている。このデバイスは、この液状物質を、噴霧液滴の分散体として送達する。さらに具体的には、本発明は、改良した液滴スプレーデバイスに関し、これは、制御可能な液滴スプレーを効率的に作り発射する。
【背景技術】
【0002】
(従来の技術)
液体を噴霧する種々の液滴スプレーデバイスが公知である。例えば、特許文献1は、水を噴霧する超音波ネブライザーを記述している。このデバイスは、室内加湿器として使用される。この水を通して水面へと振動が伝達され、この水面を通して、スプレーが生じる。振動なしで水を保持するために、穿孔膜が設けられる。
【0003】
代表的には、吸入器は、この液状物質を液滴に噴霧するために、同じ原理を使用する(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
公知のように、その液滴の大きさは、この穿孔膜の出口オリフィスの大きさに依存し、そしてまたその振動周波数に依存している。小さい液滴を得るためには、非常に高い周波数を使用すべきであり、代表的には、直径約10μmの液滴には、1MHzを超える。一般に、この周波数が高くなる程、この液滴の直径は小さくなり得る。これにより、この高い周波数が原因で、電力消費量の増加を引き起こし、その結果、このようなデバイスは、小さい電池で作動するデバイスには適さなくなる。
【0005】
別の液滴スプレーデバイスは、本出願人名義の特許文献3から公知である。そこで記述された液滴スプレーデバイスは、第一基板および第二基板の重ね合わせから形成されたハウジングからなり、これらの基板の間に、液状物質を収容してそれにより圧縮チャンバを提供するチャンバまたは空間が形成されている。第一基板の薄い方の膜部分には、出口手段が設けられている。この出口手段は、空洞(これは、このチャンバを部分的に構成する)、出口ノズルおよび排出チャネル(これは、これらのノズルをチャンバに連結する)からなる。この液状物質は、例えば、非常に小さい圧力(例えば、およそ数ミリバール)または毛管現象により、スプレーデバイスのチャンバまたは空間に入る。このスプレーデバイスは、さらに、この空間内の液状物質の振動を引き起こすために、振動要素(例えば、圧電素子)を含む。この液状物質を振動させることにより、その液体は、この出口手段に入り、この液体がデバイスから発射される際に、液滴スプレーが発生する。
【0006】
この先行技術文献は、さらに、このような排出チャネルを直線状でテーパのない輪郭にする技術を記述している。これにより、水溶液および懸濁液に対して、この排出チャネルを横切る正確に規定した圧力低下、液滴の大きさおよび流動挙動が得られるのに対して、懸濁液中で小さい固体粒子(例えば、1μm未満から約2μm)を運ぶ医薬品には、比較的に滑らかな表面が適している。同じ効果は、例えば、香水分配用途に対してそれより大きい寸法(例えば、10μm以上のノズル)でも、比例的に得られ得る。
【0007】
発射された液滴の直径は、この液状物質の振動の所定周波数に対するノズル穴の大きさ「d」および入口圧力に依存している。約243kHzの周波数を使用する従来のデバイスでは、その平均液滴直径は、約5μmであることが分かっており、この出口ノズルの穴の直径は、約7μmであり、その入口圧力は、数ミリバールである。1個のこのような液滴は、それゆえ、約67フェムトリットル(10−15l)の量を含み、その結果、このようなノズルの数は、噴出する量の関数として決定され得る。
【0008】
実際、これらの出口ノズルの製作公差Δdは、この量(すなわち、発射する液滴の容量「V」)を制御し決定する際の必須要素である。事実、この容量Vは、dに依存しており(V=1/6×πd)、dは、この出口ノズルの直径である。
【0009】
例えば、もし、d=5μmであり、Δd=±0.5μmであるなら、液滴容量Vは、47.5(d=4.5)から87(d=5.5)へと変わり得、これは、83%の変動である。
【0010】
さらに、この排出チャネルを横切る圧力低下は、dに依存していることが公知であり、そこで、この出口直径、チャネル直径、その断面、ならびに出口チャネルおよびノズルの変動する微小機械加工断面の任意の組合せは、この液滴スプレーデバイスの構造における重要な因子であることが理解され得る。
【0011】
この液滴の直径は、その液体のある種の物理化学的特性(例えば、表面張力および粘度)と共に変わることもまた、公知である。従って、引用した先行技術で示されているように、発射する液体および所望の液滴特性に従って、この物理的および電気的デバイスパラメータ(周波数および振幅)を適合させ得ることが重要である。
【0012】
本出願人は、現在、この従来のデバイスが一般に十分に機能することを見出したものの、このデバイスの構成の結果、製造が複雑となり、その結果、ある種の用途(例えば、大気中での芳香剤の分配のため)では、記載されたデバイスは、高価である。さらに、そのスプレーを施した後にこのようなデバイスを補充するのに必要な様式は、ある状況では、厄介でもあり得る。
【0013】
さらに、このスプレーデバイスを使用して芳香剤を発射するとき、空気中での匂いの拡散は、直接的に、周囲の空気で利用可能な液滴の表面と関係していることが公知である。それゆえ、この液滴が小さくなる程、その表面は小さくなる。この液滴の半径が小さくなるにつれて、その表面/体積比が大きくなるので、これは、この匂いの拡散速度を変える。しかし、発射された液滴の表面は、安定ではなく、それは、予想よりも早く破裂し得、その結果、この液滴の大きさの関数として、この匂いの拡散が変化する。事実、本出願人は、この液滴が小さくなる程、この液滴の安定性が低くなることを観察した。
【0014】
実際、ケルビン効果によれば、もし、その気相の飽和が液相との比較において1より大きいなら、この気相に比べたその液滴の熱力学的な安定性は、3D液体を形成するエネルギー放出により高められるが、2D表面の形成により低くなる。その正味の結果は、この液滴の半径が小さくなるにつれての液体分子1個あたりの自由エネルギーの増加となる。この効果は、この液滴の半径が小さくなるにつれての蒸気圧の増大として観察される。
【0015】
以下の表は、T=298°Kの温度での液滴直径の関数としての純水液滴にわたる平衡蒸気圧の増大の例を示す:
【0016】
【表1】

ここで、Dρは、液滴直径(ミクロン(10−6m))であり、そしてΔPは、圧力変化(%)である。
【0017】
分かるように、圧力は、ケルビン効果により、この液滴の半径(直径)が減少する場合に、増大する。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0 516 565号明細書
【特許文献2】国際公開第95/15822号パンフレット
【特許文献3】欧州特許出願公開第0 923 957号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、本発明の課題は、上述の不都合を克服する液滴スプレーデバイスであって、分配する液滴の大きさが一般に非常に小さいことに起因して、ケルビン効果を考慮に入れることができる液滴スプレーデバイスを提供することにある。
【0019】
本発明の他の課題は、簡単で、製造信頼性があり、大きさが小さく、エネルギー消費が少なく、そして価格が安いようなデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、液状物質を噴霧する液滴スプレーデバイス(1)を提供し、このデバイスは、以下:
ハウジングであって、このハウジングは、第一基板(2)、第二基板(3)、および液状物質を収容するための空間(4)を備え、この第二基板は、この第一基板上に重ね合わされ、そしてこの空間は、第一および第二基板で囲まれている、ハウジング;
この空間(4)に液状物質を供給する手段(6、16、26);
出口手段(7)であって、この出口手段は、第一および第二基板(2、3)の少なくとも一方に配置され、そして少なくとも1個の出口ノズル(9)および少なくとも1個の排出チャネル(8)を含み、この排出チャネルは、空間(4)を、少なくとも1個の出口ノズル(9)の各々に連結する、出口手段(7);ならびに
振動要素(5)であって、この振動要素は、出口ノズル(9)を通してスプレーとして液状物質を噴出するために、空間(4)内の液体を振動させるように配置されている、振動要素(5)、
を備え、ここで、
各排出チャネル(8)は、第一部分(8a)、第二部分(8b)および第三部分(8c)を有し、この第一部分(8a)は、空間(4)に隣接して配置され、そして直状の側壁を有し、この第三部分(8c)もまた、直状の側壁を有し、そして第一部分および出口ノズル(9)に隣接して配置され、第一部分の幅(d)は、第三部分の幅(d)より大きく、第二部分(8b)は、排出チャネルの幅が第一部分の幅(d)から第三部分の幅(d)へと段々と変わるように、第一部分(8a)を第三部分(8c)に連結することを特徴とする、デバイス。
【0021】
本発明はさらに、液状物質を噴霧する液滴スプレーデバイス(1)を提供し、このデバイスは、以下:
ハウジングであって、このハウジングは、第一基板(2)、第二基板(3)、および液状物質を収容するための空間(4)を備え、この第二基板は、この第一基板上に重ね合わされ、そしてこの空間は、第一および第二基板で囲まれている、ハウジング;
空間(4)に液状物質を供給する手段(6、16、26);
出口手段(7)であって、この出口手段は、第一および第二基板(2、3)の少なくとも一方に配置され、そして少なくとも1個の出口ノズル(9)および少なくとも1個の排出チャネル(28)を含み、この排出チャネルは、空間(4)を、少なくとも1個の出口ノズル(9)の各々に連結する、出口手段(7);ならびに
振動要素(5)であって、この振動要素は、出口ノズル(9)を通してスプレーとして液状物質を噴出するために、空間(4)内の液体を振動させるように配置されている、振動要素(5)、
を備え、ここで、
各排出チャネル(28)は、段差形状であり、第一部分(28a)および第二部分(28c)を有し、この第一部分(28a)は、空間(4)に隣接して配置され、そして直状の側壁を有し、この第二部分(28c)もまた、直状の側壁を有し、そして第一部分および出口ノズル(9)に隣接して配置され、第一部分(28a)の幅(d)は、第二部分(28c)の幅(d)より大きいことを特徴とする。
【0022】
1つの局面においては、上記ハウジングが、円形であり、そして上記空間が、数個の個々の空間(4)からなり、ここで、数個の振動要素(5)が設けられ、各々が、空間(4)の1個内の液状物質を振動させるように配置されている。
【0023】
1つの局面においては、上記第一および第二基板(2、3)が、適切に被覆し貼り合わせたコンパクトディスク材料から製造される。
【0024】
1つの局面においては、上記第一および第二基板(2、3)が、金属もしくは高分子基板または他のウエハ様材料から製造され、その上に、適切な堆積法により、上記空間(4)(単数または複数)および出口手段(7)を設けるのに必要な構造体が堆積されている。
【0025】
1つの局面においては、上記出口手段(7、8、9)が、上記第一基板(2)に配置されている。
【0026】
1つの局面においては、上記出口手段(7、8、9)が、上記第二基板(3)に配置されている。
【0027】
1つの局面においては、上記出口手段(7、8、9)が、上記第一基板および上記第二基板(2、3)に配置されている。
【0028】
1つの局面においては、上記第一基板(2)が、上記振動要素(5)と上記第二基板(3)との間に設けられた箔(10)により構成される。
【0029】
1つの局面においては、上記液状物質を供給する上記手段(6)が、上記第一基板(2)および上記振動要素(5)を横切るように配置されている。
【0030】
1つの局面においては、上記液状物質を供給する上記手段(16、26)が、上記第二基板(3)を横切るように配置され、それにより、液状物質を上記空間(4)に入れることを可能にする。
【0031】
1つの局面においては、液滴スプレーデバイスにはさらに、上記第二基板(3)に、パッシブバルブ(17)が設けられ、ここで、上記空間(4)が、内部容量および緩衝容量からなり、これらの内部容量および緩衝容量が、このパッシブバルブ(17)によって互いに連結されている。
【0032】
それゆえ、本発明は、添付の特許請求の範囲で規定した液滴スプレーデバイスに関する。
【0033】
本発明によるスプレーデバイスの構成(特に、その出口手段の特定の形状および配置)のおかげで、比較的簡単かつ安価な様式で、効率的なデバイスが得られ得る。
【0034】
本発明による液滴スプレーデバイスの他の特徴および利点は、以下の説明を読むことから明らかとなるが、これは、単に、添付の図面が参照される非限定的な例によって示されているにすぎない。
【発明の効果】
【0035】
本発明によって、ケルビン効果を考慮に入れることができる液滴スプレーデバイスが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
第一の好ましい実施形態の一例を、以下で記述する。本発明は、それゆえ、液状物質を噴霧する液滴スプレーデバイスに関する。図1は、第一実施形態の断面を示す。この液滴スプレーデバイスは、一般参照番号1で示されており、この例では、ハウジングからなり、このハウジングは、第一基板2および第二基板3の重ね合わせを含む。このハウジング内では、液状物質を受容するために、空の空間(すなわち、チャンバ)4が設けられる。この空間4は、これらの基板の一方の上面の一部をエッチングによって除去することにより、作製され得る。この例では、第二基板3の上面の一部が、周知のエッチング技術(例えば、半導体の分野で公知の技術および上記先行技術文献で記述された技術)を使用することによりエッチングされ、その結果、次いで、図示しているように、薄い中間部および厚い端部が得られる。それゆえ、第一基板2の平坦な下面が、第二基板3のエッチングした表面に装着される場合、その空間が取り囲まれて、それにより、チャンバ4を形成する。基板2および3は、好ましくは、アノード結合(anodic bonding)を使用することにより、当業者に周知の適切な接着技術で互いに結合される。
【0037】
このハウジングには、振動要素(例えば、圧電素子)5が配置されて、一旦、液状物質が空間4内に存在すると、この液状物質を振動させる。好ましくは、振動要素5は、第一基板2に直接配置され、その振動を、例えば、上記文献欧州特許出願公開番号0 923 957から公知のような様式で、この基板およびこの液状物質にも伝達する。この液状物質をハウジングに入れるために、この液滴スプレーデバイスに外部液体容器(図示せず)を連結するのに適切な入口手段6が設けられる。この例では、この入口手段は、振動要素5および第一基板2を横切るチャネルからなる。この外部容器に入口手段6を連結するために、さらに適切な連結手段が設けられ得る。
【0038】
出口手段7がさらに、このハウジング内に設けられ、この液状物質がハウジングから出るのを可能にする。事実、空間4内に含まれる液体が、適切な低圧下にて、適切な周波数(この場合、約300kHz)で、振動要素5により励起される場合に、それは、非常に低い出口速度で、この出口手段を通って、液滴のスプレーとして、噴出される。出口手段7は、以下でさらに詳細に説明するように、少なくとも1個の出口ノズルおよび少なくとも1個の排出チャネル(これは、空間4を各出口ノズルに連結する)からなる。
【0039】
図2Aは、液滴スプレーデバイス1の上面図を示し、ここで、第一基板2は、透明である。分かるように、出口手段7は、その全周に沿って、第二基板3の厚い端部に配置される。出口手段の数は、要件に従って、適合され得る。
【0040】
図2Bで分かるように、これらの出口手段は、このスプレーデバイスの外部に空間4を連結するように、第二基板2に配置され、それゆえ、この液体は、スプレーとして、発射され得るようになる。
【0041】
この実施形態によれば、各排出チャネル(図3で参照番号8により示す)は、3つの部分(第一部分8a、第二部分8bおよび第三部分8c)からなる。図3A〜3Cで示すように、排出チャネル8の第一部分8aは、空間4に隣接して配置され、そして直状の側壁を有する。第三部分8cもまた、直状の側壁を有する。分かるように、排出チャネル8は、首形状を有し、空間4に隣接した大きいチャネル部分から出口ノズル(これは、参照番号9で示される)に隣接した狭い部分に至る。事実、第一部分8aの幅dは、第三部分8cの幅dよりも大きく、第二部分8bは、排出チャネル8の幅が第二部分8bに沿って幅dから幅dへと段々と変わるように、第一部分8aを第三部分8cに連結する。図9は、2つの部分(内部空間4に隣接した広い部分28aおよび外部ノズル9に隣接した狭い部分28c)だけを使用する別の実施形態を示す。両方のチャネル部分28aおよび28cもまた、直状の側壁を有する。このような実施形態は、図6で暗示しているように、本出願人名義の同時係属中の欧州特許出願番号01 103 653.0で説明されているように、種々の材料に容易に機械加工され得る。その断面は、容易に想像され得るように、三角形または円形であり得る。この構造は、例えば、それをKOHでエッチングする代わりに、その構造に必要な物質を堆積することにより、またはこの構造をレーザーもしくは微量射出成形などにより機械加工することにより、作製され得る。
【0042】
出口手段7は、溝部を得るように、第二基板3の厚い端部をエッチング(例えば、湿潤エッチングまたは異方エッチングなど)することにより製造され得、これらの溝部は、排出チャネルの部分8a、8bおよび8cに対応している。
【0043】
2つの部分を使用するこの実施形態の利点は、広い部分28aに対して狭い部分28cの整列を変えることにより、このスプレーデバイスから発射されるスプレーの方向を変化させることが可能となることにある。分かるように、両方の部分を同心様式で整列させることにより、そこを通って発射される液滴は、この出口ノズルに対して垂直に移動する。しかし、もし、この狭い部分が広い部分に対して偏心しているなら、発射される液滴は、この出口ノズルに対して垂直には発射されず、その偏心度に依存する角度で発射される。それゆえ、明らかに、この様式では、段差を付けた部分の配置に起因して、収束または発散して発射したスプレーを得ることが可能となる。
【0044】
上記様式により本出願人により作製された実施形態では、約7cmの実質的に正方形の基板を使用して、この液滴スプレーデバイスにおいて、1側面あたり71個の出口手段(すなわち、合計284個の出口手段)を得ることが可能であった。
【0045】
図4は、作動中の本発明による液滴スプレーデバイスを示す。分かるように、この液滴スプレーは、このスプレーデバイスの全ての側面から発射され、このデバイスは、側面シューターと呼ばれ得る。
【0046】
有利なことに、もし、さらに多くの出口手段が必要なら(例えば、より多くの液体をスプレーとして分散すべきとき)、類似の様式で、第一基板2に出口手段を作製することもまた、可能である。図5Aおよび5Bで示すように、第一基板2にある出口手段は、もちろん、いかなる重なりをも回避するために、第二基板3にあるものに対してシフトすべきである。このように、このスプレーデバイスにおいて、さらに高い密度の出口手段が得られ得る。そのように作製した実施形態では、同じ大きさの基板(7cm)を使用するとき、568個、すなわち、二倍の量の出口手段が得られ得る。
【0047】
当然のことながら、これらの出口手段は、第二基板3に作製される必要はなく、その代わりに、第二基板2について上で記述したものと同じ様式で、第一基板2で作製され得、または両方で作製され得る。
【0048】
これらの基板に適切な材料には、ガラス、セラミック、シリコン、高密度重合体、プラスチック、フォトレジスト、金属などが挙げられる。事実、これらの基板に使用される材料は、内部空間4および出口手段7を作製するために、上で言及した様式で、材料をエッチング、機械加工または堆積することを可能とするに適切である必要がある。
【0049】
別の好ましい実施形態では、図6で示すように、この液滴スプレーデバイスは、実質的に円形であり、例えば、2つの円形ウエハ、またはコンパクトディスクを製造するのに通常使用される2枚のディスクを使用することにより製作され得、これらは、上で説明したように適切に機械加工され、必要に応じて、被覆され、互いに適切に結合される。
【0050】
この実施形態および他の実施形態は、1個以上の空間4を備え得、各々は、分配されるべき液状物質を含む。各空間は、同一または異なる液状物質を含み得る。もちろん、このような場合、制御コマンドの関数として、該数個の異なる液状物質を個々にまたは一緒に活性化するために、対応する数の振動要素またはアクチュエータが使用される。このようにして、これらの液状物質の組合せにより形成されたスプレーが発射され得る。このような実施形態は、人(例えば、適切な様式で匂いを誘発した映画を見ている人、ある種の製品の匂いを嗅ぐ買い物客または顧客など)に匂いを供給するのに使用され得る。
【0051】
このデバイスおよび先に記述した小型の円形版はまた、もちろん、他の材料(例えば、金属、フォトレジストなど)で実現され得る。
【0052】
図7Aおよび7Bは、それぞれ、本発明による液滴スプレーデバイスの改変物を示し、この場合、その入口チャネルは、上で示したように、第一基板2ではなく第二基板3に設けられている。実際、図7Aで示すように、入口チャネル16は、外部容器を空間4に連結するために、第二基板3の薄い部分を横切って、設けられている。有利なことに、さらに、緩衝容量(図示せず)が設けられ得、これは、緩衝チャネル17により、内部空間4に連結される。緩衝チャネル17は、パッシブバルブであり、これは、この液状物質を、この緩衝空間から内部空間へと移動させる。これを、本出願人名義の同時係属中の欧州特許出願番号01 103 653.0で説明されているものと類似の様式で、行い得る。この内部空間の全容量は、次いで、空間4の容量および緩衝空間の容量に対応する。有利なことに、緩衝チャネルはまた、この入口チャネルと比べて、この基板の反対端で、第二基板3の薄い部分を横切る。
【0053】
他の改変物では、図7Bで示すように、中心に配置された入口チャネル27が設けられ、これは、第二基板3を横切って、その外部容器を内部空間4に連結する。
【0054】
さらに好ましい実施形態は、図8で示されている。この実施形態では、このハウジングは、1枚の基板(この例では、第二基板3)だけからなり、ここで、出口手段7は、上で説明した様式で、配置されている。圧電素子5と第二基板3との間には、箔10のシートまたはリングが設けられている。この箔10がシート形状である場合には、空間4および出口手段7の両方を密封し、それゆえ、第一基板1の代わりをする。この箔10がリング形状である場合には、少なくとも、出口手段7を密封し、これに対して、振動要素5が、空間4を密封する。
【0055】
本発明は、液状物質を噴霧する液滴スプレーデバイスに関し、該デバイスは、ハウジングを備え、該ハウジングは、第一基板、第二基板、および該液状物質を収容するための空間を備え、該第二基板は、該第一基板上に重ね合わされ、そして該空間は、該第一および第二基板で囲まれている。該第一または第二基板の少なくとも一方には、出口手段が配置され、これは、少なくとも1個の出口ノズル(19)および少なくとも1個の排出チャネル(20)を含み、該排出チャネルは、該空間(12)を、各出口ノズル(19)に連結する。該出口ノズル(19)を通るスプレーとして該液状物質を噴出するために、該空間(12)内の液体を振動させるように、振動要素(18)が配置されている。
【0056】
本発明によれば、各排出チャネル(20)は、第一部分(20a)、第二部分(20b)および第三部分を有し、該第一部分は、該空間(12)に隣接して配置され、そして直状の側壁を有し、該第三部分もまた、直状の側壁を有し、該第一部分の幅は、該第三部分の幅より大きく、該第二部分は、該排出チャネルの幅が該第一部分の幅から該第三部分の幅へと段々と変わるように、該第一部分を該第三部分に連結する。
【0057】
本発明の好ましい実施形態を記述したが、現在、その概念を含む他の実施形態が使用され得ることは、当業者に明らかとなる。従って、本発明は、開示した実施形態に限定されるべきではなく、むしろ、添付の特許請求の範囲でのみ限定されるべきであると思われる。
【0058】
例えば、同じ液滴スプレーデバイスは、呼吸器療法用の医薬品を噴霧するのに使用され得るだけでなく、一般に、例えば、水性またはアルコール性または他の液状物質を使用して、異なる物理化学的組成物を噴霧するのに使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、本発明による液滴スプレーデバイスの第一実施形態の概略断面図である。
【図2A】図2Aは、第一基板が透明である図1の液滴スプレーデバイスの概略上面図を示す。
【図2B】図2Bは、図1の液滴スプレーデバイスの概略側面図を示す。
【図3A】図3Aは、そこに出口手段を備えた第二基板の概略詳細断面図を示す。
【図3B】図3Bは、そこに出口手段を備えた第二基板の概略詳細断面図を示す。
【図3C】図3Cは、そこに出口手段を備えた第二基板の概略詳細断面図を示す。
【図4】図4は、作動中の本発明による液滴スプレーデバイスを示す。
【図5A】図5Aは、本発明による液滴スプレーデバイスの第一および第二基板の両方に出口手段が設けられた代替物の概略断面図を示す。
【図5B】図5Bは、本発明による液滴スプレーデバイスの第一および第二基板の両方に出口手段が設けられた代替物の概略断面図を示す。
【図6】図6は、本発明による円形液滴スプレーデバイスの別の好ましい実施形態を示す。
【図7A】図7Aは、第二基板に入口チャネルを設けた本発明による液滴スプレーデバイスの改変物を示す。
【図7B】図7Bは、第二基板に入口チャネルを設けた本発明による液滴スプレーデバイスの改変物を示す。
【図8A】図8Aは、本発明による液滴スプレーデバイスの別の好ましい実施形態の概略断面図を示す。
【図8B】図8Bは、本発明による液滴スプレーデバイスの別の好ましい実施形態の概略断面図を示す。
【図9】図9は、本発明による液滴スプレーデバイスのさらなる実施形態を示す。
【符号の説明】
【0060】
1 液滴スプレーデバイス
2 第一基板
3 第二基板
4 空間
5 振動要素
6 液状物質を供給する手段
7 出口手段
8 排出チャネル
9 出口ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本実施例に記載のデバイス。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−149321(P2008−149321A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66874(P2008−66874)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【分割の表示】特願2002−251790(P2002−251790)の分割
【原出願日】平成14年8月29日(2002.8.29)
【出願人】(501166522)マイクロフロー・エンジニアリング・エス エイ (3)
【Fターム(参考)】