説明

液滴吐出装置および吐出検査方法

【課題】印刷不良を最低限に抑えつつも、1回の吐出検査の時間を短縮させることのできる液滴吐出装置および吐出検査方法を提供すること。
【解決手段】印刷媒体に対し主走査方向に相対移動しながら複数の吐出ノズルNから液滴を吐出して印刷を行う印刷部(液滴吐出ヘッド4)と、複数の吐出ノズルNを、副走査方向において最小印刷幅を形成するために必要なノズル数ごとに分割した分割ノズル群のうち、任意の一部の吐出ノズルNを検査対象ノズルとして吐出の有無を検査する吐出検査を行う吐出検査部(メンテナンス機構9)と、印刷部および吐出検査部を制御する制御部と、を備え、制御部は、所定量の印刷を終了するごとに、ノズル群内で検査対象ノズルを切り替えて吐出検査を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の吐出ノズルについて吐出の有無を検査する機能を備えた液滴吐出装置および吐出検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、印刷に先立って、吐出ノズルから正常に液滴が吐出されるか否かを検査する吐出検査を行う印刷装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の印刷装置は、吐出検査において、印字ヘッドのノズル形成面に形成されているすべての吐出ノズルについて吐出の有無を検査し、一部の吐出ノズルが吐出不良であった場合、当該吐出ノズルが実行すべき吐出を、吐出が正常である他の吐出ノズルにより代行する。このようにして印刷を実行し、当該印刷が終了した後に、吐出ノズルからのインクの吸引やノズル形成面のワイピングによるクリーニングを行う。これにより、印刷実行前に吐出不良を発見しても、処理に時間を要するクリーニングを実行せずとも不具合なく印刷を行うことができるため、印刷終了を遅らせることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−195037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような印刷装置は、1回の吐出検査において、印字ヘッドが有するすべての吐出ノズルについて吐出の有無を検査するため、処理に時間がかかるという問題がある。そこで、処理時間を短縮するために、1回の吐出検査において一部の吐出ノズルを検査対象として吐出検査を行うことが考えられるが、当該吐出検査において検査対象ではなかった吐出ノズルに吐出不良がった場合、吐出不良のまま次の印刷を行うことによって印刷不良を発生させるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、印刷不良を最低限に抑えつつも、1回の吐出検査の時間を短縮させることのできる液滴吐出装置および吐出検査方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液滴吐出装置は、印刷媒体に対し主走査方向に相対移動しながら複数の吐出ノズルから液滴を吐出して印刷を行う印刷部と、複数の吐出ノズルを、副走査方向において最小印刷幅を形成するために必要なノズル数ごとに分割した分割ノズル群のうち、一部の吐出ノズルを検査対象ノズルとして吐出の有無を検査する吐出検査を行う吐出検査部と、印刷部および吐出検査部を制御する制御部と、を備え、制御部は、所定量の印刷を終了するごとに、ノズル群内で検査対象ノズルを切り替えて前記吐出検査を行うことを特徴とする。
【0007】
本発明の吐出検査方法は、印刷媒体に対し主走査方向に相対移動しながら複数の吐出ノズルから液滴を吐出して印刷を行う印刷部と、複数の吐出ノズルを、副走査方向において最小印刷幅を形成するために必要なノズル数ごとに分割した分割ノズル群のうち、一部の吐出ノズルを検査対象ノズルとして吐出の有無を検査する吐出検査を行う吐出検査部と、を用い、所定量の印刷を終了するごとに、ノズル群内で検査対象ノズルを切り替えて吐出検査を行うことを特徴とする。
【0008】
これらの構成によれば、1回の吐出検査において、印刷部が有する吐出ノズルのうち一部の吐出ノズルについて吐出の有無を検査するため、吐出検査に要する時間を短縮することができる。また、吐出検査ごとに上記したノズル群の中で検査対象となるノズルを切り替えることにより、毎回の吐出検査において少なくとも最小印刷幅を構成するノズル群のうちのいずれかの吐出ノズルについて吐出の有無を検査するため、吐出「有」と判定されれば少なくとも検査対象である吐出ノズルによって印刷が行われ、印刷不良(印字抜け)を防ぐことができる。
なお、「最小印刷幅」とは、印刷部が印刷可能な最小の線幅を指す。
【0009】
この場合、複数の吐出ノズルは、各吐出ノズルが副走査方向に等間隔で配列されたノズル列が、副走査方向に1/Nピッチずつ位置ずれしてN列配列されたノズル列群を有し、分割ノズル群は、少なくとも異なるノズル列に属する2以上の吐出ノズルから構成されており、吐出検査部は、ノズル列ごとに検査対象ノズルを切り替えて前記吐出検査を行うことが好ましい。
【0010】
この構成によれば、ノズル列ごとに検査対象となる吐出ノズルを切り替えることによって、吐出検査における印刷部の駆動制御を簡単にすることができる。
【0011】
この場合、ノズル列群は、液滴の種類ごとに用意され、各ノズル列群の位置ずれ量にしたがって並ぶ1番目からN番目までのノズル列の基準位置は、液滴の種類によらずいずれも前記副走査方向において同位置であり、吐出検査部は、1回の吐出検査において、液滴の種類ごとに副走査方向において異なる列番号のノズル列を検査対象ノズルとすることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、印刷部が主走査方向に移動することによって、主走査方向に配列された異なるノズル群の吐出ノズルが、時間差で同じ吐出位置に異なる液滴を吐出することで所望の印刷(例えば所望の色)を可能にしている場合、毎回の吐出検査において少なくとも当該吐出位置に吐出する吐出ノズルのうちのいずれかについて吐出の有無を検査するため、吐出「有」と判定されれば少なくとも検査対象である吐出ノズルによって印刷が行われ、当該吐出位置におけるドット抜けを防ぐことができる。
【0013】
この場合、所定回数の吐出検査において、所定数を超える吐出ノズルに対して吐出「無」と判定された場合、印刷部に対してクリーニングを行うクリーニング部をさらに備えたことが好ましい。
【0014】
この構成によれば、実際に吐出不良がある場合にのみクリーニングを実施するため、印刷処理におけるメンテナンス処理に要する時間を短縮することができる。
【0015】
この場合、印刷部は、クリーニングの実行後に、直前に実行した印刷を再度実行することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、印刷不良が発生した印刷について自動的に再印刷が行われるため、利便性が良い。
【0017】
上記の液滴吐出装置において、吐出検査部は、印刷部に吐出ノズルから帯電液滴を吐出させる吐出駆動部と、吐出された帯電液滴を着弾させる吐出対象と、帯電液滴の着弾により吐出対象に発生する電流の変化を検出する検出部と、を備え、電流の変化によって吐出ノズルの吐出の有無を検査することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、吐出検査において消費する液滴の量が微量であるため、印刷以外のメンテナンスに要する液滴の消費量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態にかかる液滴吐出装置の外観斜視図である。
【図2】液滴吐出ヘッドの外観側面図である。
【図3】液滴吐出ヘッドをインク導入部側からの平面図(a)、およびノズル面側からの平面図(b)である。
【図4】ノズル面における吐出ノズルの配置を示した模式図(a)、および各ノズル列が吐出するインクの種類を示した図(b)である。
【図5】ヘッドキャップの断面図である。
【図6】単位印刷データについて示した図である。
【図7】検査対象となるノズル列の切り替えパターンを示した図である。
【図8】印刷処理のスケジュールを示した図である。
【図9】印刷処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照し、本発明の一実施形態にかかる液滴吐出装置および吐出検査方法について説明する。本発明の液滴吐出装置は、本実施形態の液滴吐出装置は、印刷媒体であるロール紙に対して複数種類のカラーインク(液滴)を吐出してカラー印刷を行う印刷装置であり、所定量の印刷が終了するごとに、液滴吐出ヘッドの吐出検査を行う。以下、液滴吐出装置にセットされたロール紙の幅方向を主走査方向とし、ロール紙の長手方向を副走査方向として、説明を進める。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の液滴吐出装置1は、ロール紙2を収容するロール紙収容部3と、複数種類のインクをロール紙2に吐出する液滴吐出ヘッド4(印刷部)を搭載したキャリッジ5と、キャリッジ5を主走査方向に移動させるキャリッジ移動機構6と、ロール紙2の端を副走査方向に引き出すロール紙搬送機構7と、液滴吐出ヘッド4に対してカラーインクを供給するインク供給機構8と、液滴吐出ヘッド4のメンテナンスを行うメンテナンス機構9と、これらの各構成部を統括的に制御する制御部(図示省略)と、備え、全体が不図示のケースに覆われている。また、液滴吐出装置1は、ロール紙2をロール紙収容部3から着脱するためのロール紙カバー(図示省略)や、インク供給機構8のインクカートリッジ10を着脱するためのカートリッジカバー11を備えている。
【0022】
キャリッジ移動機構6は、キャリッジ5を主走査方向に移動可能に支持するガイド軸12と、ガイド軸12に併設された環状ベルト13と、環状ベルト13を回転させるキャリッジモーター14と、を有している。キャリッジ移動機構6は、キャリッジモーター14の駆動によって環状ベルト13を回転させ、ガイド軸12にしたがってキャリッジ5を主走査方向に移動させる。
【0023】
ロール紙搬送機構7は、ロール紙2上でキャリッジ5と対面するプラテン15と、上方を通過するロール紙2の端を副走査方向に繰り出す搬送ローラー16と、を有している。プラテン15は、キャリッジ5に搭載された液滴吐出ヘッド4にロール紙2を押し当て、搬送ローラー16は、印刷済みのロール紙2をキャリッジ側に押し当てた状態で繰り出して排出する。
【0024】
インク供給機構8は、インクカートリッジ装着部17に装着されたインクカートリッジ10と、インクカートリッジ10に収容された各カラーインクに対応したインクパックから液滴吐出ヘッド4にカラーインクを供給するためのインク流路18およびインク供給チューブ19と、を有している。本実施形態では、シアン(C)、マゼンダ(M)、およびイエロー(Y)の3色のカラーインクに対応したインクパックおよびインク供給チューブ19を備えている。
【0025】
メンテナンス機構9は、ロール紙2上から主走査方向に外れた位置でキャリッジ5と対面し、液滴吐出ヘッド4のノズル面20を封止するヘッドキャップ21(図5参照)、インク吸引機構、およびワイピング機構(いずれも不図示)を有している。ヘッドキャップ21には、インク吸引機構のチューブの一端が接続され、インク吸引機構のポンプモーターが駆動されることによってヘッドキャップ21内が減圧され、ノズル面20に形成された吐出ノズルNからカラーインクを吸引する。ワイピング機構は、ノズル面20の汚れをゴム製のワイパによって払拭する。メンテナンス機構9は、このようなインク吸引機構によるインク吸引処理およびワイピング機構によるワイピング処理を行うことによって液滴吐出ヘッド4のクリーニング処理を実施する。なお、メンテナンス機構9は、液滴吐出ヘッド4の吐出検査を行った後(後述する)、当該吐出検査によって吐出不良と判定された場合において、クリーニング処理を行う。
【0026】
なお、キャリッジ5がロール紙2に対面する位置を印刷位置P1とし、キャリッジ5がメンテナンス機構9に対面する位置をメンテナンス位置P2とする。液滴吐出装置1は、キャリッジ5を印刷位置P1に移動させて印刷を行い、キャリッジ5をメンテナンス位置P2に移動させて液滴吐出ヘッド4のメンテナンスを行う。
【0027】
図2および図3に示すように、液滴吐出ヘッド4は、いわゆる6連のインクジェットヘッドであり、6連の接続針22を有するインク導入部23と、インク導入部23に連なるヘッド基板24と、ヘッド基板24に連なりインクを吐出するヘッド本体25と、を備えている。インク導入部23は、6列のノズル列NLA,NLB,・・・,NLFに対応した6連の接続針22A,22B,・・・,22Fを有しており、インク供給機構8からインクが供給されるようになっている。なお、各接続針22とノズル列NLとの対応は、図3に示すとおりである。また、ヘッド本体25は、ピエゾ素子等で構成される6連のポンプ部26と、複数の吐出ノズルNが形成されたノズル面20を有するノズルプレート27と、を有している。液滴吐出装置1は、制御装置から出力した駆動波形が各ポンプ部26に印加することで、各吐出ノズルNからカラーインクを吐出する。
【0028】
図4は、ノズルプレート27のノズル面20に形成された吐出ノズルNの配置を示した模式図である。なお、本図は、図3におけるノズルプレート27を上下に回転させた状態を示している。図示のように、ノズルプレート27のノズル面20に形成された多数の吐出ノズルNは、6列のノズル列NLA,NLB,・・・,NLFを有しており、各ノズル列NLは、副走査方向に等ピッチ(ノズルピッチ)で並べられた90個の吐出ノズルN1,・・・,N90で構成されている。各ノズル列NLは、ノズル列NLA,NLC,NLEの3列が基準位置1に配置され、ノズル列NLB,NLD,NLFの3列が基準位置1に対して半ノズルピッチ副走査方向に位置ズレした基準位置2に配置されて構成されている。すなわち、各ノズル列NLは、相互に平行且つ半ノズルピッチ位置ズレして列設されている。
【0029】
図4(b)は、各ノズル列NLが吐出するカラーインクの種類を示している。図示のように、ノズル列NLA,NLFはシアン(C)、ノズル列NLB,NLEはマゼンダ(M)、ノズル列NLC,NLDはイエロー(Y)、を吐出する。すなわち、基準位置の異なる2列のノズル列NLによって、各種カラーインクが吐出される。なお、請求項における「ノズル列群」とは、同種のカラーインクを吐出するノズル列NLA,NLF、ノズル列NLB,NLE、およびノズル列NLC,NLDを指す。
【0030】
液滴吐出ヘッド4は、主走査方向に移動しながら、各ノズル列NLにおいてロール紙搬送方向下流側から数えて同番目の吐出ノズルNで構成される6つの吐出ノズルN(分割ノズル群)からのインクの吐出により、副走査方向における最小印字幅(最小印刷幅)を印刷する。最小印字幅とは、液滴吐出装置1が印刷可能な最小の線幅である。例えば、図4(a)に示すように、6つの吐出ノズルN1A,N1B,N1C,N1D,N1E,N1Fによって、印刷領域における最も下流位置の最小印字幅を印刷する。すなわち、液滴吐出ヘッド4は、半ノズルピッチの間隔を有する複数の吐出ノズルによって最小印字幅を印刷する構成となっている。また、液滴吐出ヘッド4は、主走査方向に移動しながら、基準位置が同位置である各ノズル列NLの同ノズル番号の吐出ノズルNが、同じ位置に異なるカラーインクを吐出してカラー印刷を実現している。
【0031】
図5は、メンテナンス機構9のヘッドキャップ21の断面図である。図示のように、ヘッドキャップ21は、ノズル面20に密着可能なゴム等の弾性材からなるリップ部28と、液滴吐出ヘッド4のノズル面20を封止可能な大きさの開口を有する箱型のキャップ本体29と、キャップ本体29の凹部30に収納され廃インクを吸収する多層構造の吸収材31と、キャップ本体29の凹部30に立設され吸収材31と導通可能な金属軸32と、金属軸32の下端に接続されたリード線33とを有している。吸収材31は、リップ部28と離間するよう押さえて配置されている。
【0032】
メンテナンス機構9は、全印刷データを所定量ごとに分割した単位印刷データに基づく印刷(単位印刷)が終了するごとに、液滴吐出ヘッド4の吐出ノズルNのインクの吐出の有無を検査する。この吐出検査では、先ず、液滴吐出ヘッド4のノズル面20に対してヘッドキャップ21が位置決めされた状態で対面し、この状態で複数の吐出ノズルNから帯電したインクを制御部からの駆動波形によって選択的に吐出させる(吐出駆動部)。そして、吐出された帯電インクが吸収材31(吐出対象)に着弾して発生する電流の変化を金属軸32およびリード線33を介して取り出し(検出部)、制御部により吐出の有無を判断する。なお、吐出検査は、1度に複数の吐出ノズルNに対して行われ、検査対象となった吐出ノズルNのうち、吐出「無」と判定された吐出ノズルNが所定数を越えた場合、吐出検査の結果が「吐出不良」と判定され、吐出「無」と判定された吐出ノズルNが所定数以内であった場合、吐出検査の結果が「吐出良好」と判定される。なお、請求項における「吐出検査部」とは、制御部およびメンテナンス機構9により構成される。
【0033】
ここで、図6を参照し、本実施形態における印刷データの分割について例示する。同図(a)に示す例では、一連の連続する印刷データを印刷するページごと(ロール紙を切断するごと)に分割した印刷データを単位印刷データとする。この場合、各単位印刷データは、それぞれ異なった内容となる。一方、同図(b)に示す例では、所定内容の印刷データを複数繰り返すことにより全印刷データが構成されている。この場合、各単位印刷データは、同内容となる。このように、単位印刷データに基づく印刷(単位印刷)が終了するごとに吐出検査を行うことにより、印字抜けが発生したと推定される印刷済みのロール紙を最小限に抑えることができる。
【0034】
次に、図7を参照し、上記の吐出検査において検査対象となる吐出ノズルNについて説明する。液滴吐出装置1は、所定量の印刷ごとに行う吐出検査の所要時間を短縮すべく、制御部によって各吐出検査において検査吐出する吐出ノズルNをノズル列NLごとに切り替える。すなわち、各吐出検査の検査対象となるノズル列NLを切り替える。
【0035】
図7には、吐出検査ごとの吐出ノズルNの切り替えパターンを3つ例示している。同図(a)に示すパターン1は、1回目の吐出検査において、基準位置1に配置されたノズル列NLA,NLC,NLEの3列を検査対象として吐出検査を行う。そして、2回目の吐出検査において、基準位置2に配置されたノズル列NLB,NLD,NLFの3列を検査対象として吐出検査を行う。すなわち、パターン1は、各吐出検査において、基準位置ごとに各カラーインクを吐出する吐出ノズルNを検査対象としている。これにより、毎回の吐出検査において、少なくとも各最小印字幅を形成する吐出ノズルNのうち各カラーを吐出するいずれかの吐出ノズルNについて吐出検査することができる。よって、「吐出不良」と判定された場合にクリーニング処理を実施して直前の単位印刷を再実行することで、各吐出検査においてすべての吐出ノズルNを検査対象とせずとも印字抜けを防ぐことができる。
【0036】
図7(b)に示すパターン2は、1回目の吐出検査において、基準位置1に配置され且つシアンのインクを吐出するノズル列NLA、イエローのインクを吐出するノズル列NLC、および基準位置2に配置され且つマゼンダのインクを吐出するノズル列NLBを検査対象として吐出検査を行う。そして、2回目の吐出検査において、残りのノズル列NLD,NLE,NLFを検査対象として、吐出検査を行う。同図(c)に示すパターン3は、1回目の吐出検査において、基準位置1に配置され且つシアンのインクを吐出するノズル列NLAおよび基準位置2に配置され且つマゼンダのインクを吐出するノズル列NLB、イエローのインクを吐出するノズル列NLDを検査対象として吐出検査を行う。そして、2回目の吐出検査において、残りのノズル列NLC,NLE,NLFを検査対象として、吐出検査を行う。すなわち、パターン2および3は、1回の吐出検査において、シアンおよびマゼンダを吐出する吐出ノズル列NLのうち、異なる基準位置に配置されたノズル列NLを検査対象としている。これにより、主にシアンおよびマゼンダの吐出が影響する黒ドットが、片方の基準位置における各吐出位置においてドット抜けすることを防ぐことができる。
【0037】
次に、図8を参照し、液滴吐出装置1の吐出検査を含んだ一連の動作について説明する。なお、以下の説明において、1回目の吐出検査の対象となる複数の吐出ノズルNを「検査対象1」、2回目の吐出検査の対象となる複数の吐出ノズルNを「検査対象2」として図示している。また、図示において、「●」は「吐出良好」を示し、実線矢印は各検査対象が「吐出良好」の状態で印刷(吐出)が行われていることを示す。一方、「○」は「吐出不良」を示し、点線矢印は各検査対象が「吐出不良」の状態で印刷(吐出)が行われていることを示す。なお、各印刷において、検査対象1または検査対象2の一方が「吐出良好」の状態で印刷を行っていれば、当該印刷は良好な印刷結果を得ることができる。一方、検査対象1および検査対象2が「吐出不良」の状態で印刷を行った場合、当該印刷は印字抜けが発生している可能性が高く印刷不良となる。なお、「CN」はクリーニング処理を示している。
【0038】
図8(a)および(b)は、1回目の吐出検査において「吐出不良」と判定されたケースを示している。液滴吐出装置1は、1回目の単位印刷(単位印刷1)を行った後、1回目の吐出検査(吐出検査1)を実施し、「吐出不良」という検査結果に基づいてクリーニング処理を行う。その後、単位印刷1の再印刷(再印刷1)を行う。1回目の吐出検査において「吐出不良」と判定された場合であって、仮に、1回目の吐出検査で検査対象となっていない検査対象2がその時点で「吐出不良」であった場合(図(a)参照)、単位印刷1において印刷不良が発生している可能性が高いため、クリーニング処理および再印刷1を行うことによって有効な再印刷を行うことができる。
【0039】
図8(c)および(d)は、1回目の吐出検査において「吐出良好」と判定されたケースを示している。液滴吐出装置1は、単位印刷1を行った後、吐出検査1を実施し、「吐出良好」という検査結果に基づいて、次の単位印刷(単位印刷2)を行う。同図(d)に示すように、1回目の吐出検査で検査対象となっていない検査対象2がその時点で「吐出不良」であっても、「吐出良好」と判定された検査対象1を構成する複数の吐出ノズルNによって不具合なく印刷が実行されている。さらに、単位印刷2後に実施される吐出検査2において、検査対象2について「吐出不良」という検査結果を得ることができる。さらに、本検査結果に基づいたクリーニング処理および単位印刷2の再印刷(再印刷2)を行うことで、吐出検査2の時点で検査対象1が「吐出不良」であっても、単位印刷2における印刷不良の可能性をカバーすることができる。
【0040】
次に、図9のフローチャートを参照して、液滴吐出装置1の印刷処理について説明する。液滴吐出装置1は、先ず、最初の単位印刷を実行し(S01)、液滴吐出ヘッド4の吐出検査を実施する(S02)。検査結果が「吐出不良」であった場合(S03:「吐出不良」)、液滴吐出ヘッド4に対してクリーング処理を行う(S04)。その後、直前に実行した単位印刷の再印刷を行う(S05)。一方、吐出検査の検査結果が「吐出良好」であった場合(S03:「吐出良好」)。全印刷データに基づく印刷がすべて終了していれば(S06:Yes)、処理を終了する。全印刷データに基づく印刷がすべて終了していなければ(S06:No)、次の単位印刷を実行する(S07)。そして、前回の吐出検査における検査対象ノズルを切り替え(S08)、切り替えた検査対象ノズルに対して吐出検査を行う(S02)。以降、S02〜S08までの処理を繰り返す。
【0041】
上記した液滴吐出装置1および吐出検査方法によれば、所定量の印刷ごとに最小印字幅を形成する複数の吐出ノズルN内で吐出検査の検査対象を切り替えるため、各吐出検査における所要時間を短縮することができると共に、印字抜けを防ぐことができる。よって、全体の印刷処理に要する所要時間を短縮することができる。また、吐出検査において「吐出不良」と判定された場合にのみ液滴吐出ヘッド4のクリーニング処理を行うため、クリーニング処理の実施回数を減らすことができ、印刷以外に消費するインク量を減少させることができる。
【0042】
なお、本実施形態では、1回の吐出検査において「吐出不良」と判定されるとクリーニング処理を実施する構成としたが、複数回の吐出検査において所定回数「吐出不良」と判定された場合に、クリーニング処理を実施する構成としてもよい。これによれば、印刷不良が発生していないにもかかわらず、不要にクリーニング処理を実施して印刷処理を遅らせることを防ぐことができる。また、不要な再印刷も減らすことができる。
【0043】
上記した液滴吐出装置1における液滴吐出ヘッド4の数、吐出ノズルNの数、ノズル列NLの数、インクの種類の数は任意である。また、印刷媒体は上記した連続紙に限られるものでなく、単紙にも適用可能である。
【0044】
また、上記した、液滴吐出装置1の各構成要素をプログラムとして提供することも可能である。また、そのプログラムを記憶媒体(図示省略)に格納して提供することも可能である。記録媒体としては、CD−ROM、フラッシュROM、メモリカード(コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア、メモリースティック等)、コンパクトディスク、光磁気ディスク、デジタルバーサタイルディスクおよびフレキシブルディスク等を利用することができる。
【0045】
また、上述した実施例によらず、液滴吐出装置1の装置構成や処理工程等について、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更も可能である。
【符号の説明】
【0046】
1:液滴吐出装置 4:液滴吐出ヘッド 5:キャリッジ 6:キャリッジ移動機構 9:メンテナンス機構 20:ノズル面 21:ヘッドキャップ N:吐出ノズル NL:ノズル列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に対し主走査方向に相対移動しながら複数の吐出ノズルから液滴を吐出して印刷を行う印刷部と、
前記複数の吐出ノズルを、副走査方向において最小印刷幅を形成するために必要なノズル数ごとに分割した分割ノズル群のうち、一部の吐出ノズルを検査対象ノズルとして吐出の有無を検査する吐出検査を行う吐出検査部と、
前記印刷部および前記吐出検査部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、所定量の印刷を終了するごとに、前記ノズル群内で前記検査対象ノズルを切り替えて前記吐出検査部に吐出検査を行わせることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記複数の吐出ノズルは、各吐出ノズルが前記副走査方向に等間隔で配列されたノズル列が、副走査方向に1/Nピッチずつ位置ずれしてN列配列されたノズル列群を有し、
前記分割ノズル群は、少なくとも異なる前記ノズル列に属する2以上の吐出ノズルから構成されており、
前記吐出検査部は、前記ノズル列ごとに前記検査対象ノズルを切り替えて前記吐出検査を行うことを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記ノズル列群は、液滴の種類ごとに用意され、
各ノズル列群の位置ずれ量にしたがって並ぶ1番目からN番目までのノズル列の基準位置は、前記液滴の種類によらずいずれも前記副走査方向において同位置であり、
前記吐出検査部は、1回の前記吐出検査において、前記液滴の種類ごとに前記副走査方向において異なる列番号の前記ノズル列を検査対象ノズルとすることを特徴とする請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
所定回数の前記吐出検査において、所定数を超える吐出ノズルに対して吐出「無」と判定された場合、前記印刷部に対してクリーニングを行うクリーニング部をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記印刷部は、前記クリーニングの実行後に、直前に実行した印刷を再度実行することを特徴とする請求項4に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記吐出検査部は、
前記印刷部に前記吐出ノズルから帯電液滴を吐出させる吐出駆動部と、
吐出された前記帯電液滴を着弾させる吐出対象と、
前記帯電液滴の着弾により前記吐出対象に発生する電流の変化を検出する検出部と、を備え、
前記電流の変化によって前記吐出ノズルの吐出の有無を検査することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
印刷媒体に対し主走査方向に相対移動しながら複数の吐出ノズルから液滴を吐出して印刷を行う印刷部と、前記複数の吐出ノズルを、副走査方向において最小印刷幅を形成するために必要なノズル数ごとに分割した分割ノズル群のうち、任意の一部の吐出ノズルを検査対象ノズルとして吐出の有無を検査する吐出検査を行う吐出検査部と、を用い、
所定量の印刷を終了するごとに、前記ノズル群内で前記検査対象ノズルを切り替えて前記吐出検査を行うことを特徴とする吐出検査方法。
【請求項8】
前記複数の吐出ノズルは、各吐出ノズルが前記副走査方向に等間隔で配列されたノズル列が、副走査方向に1/Nピッチずつ位置ずれしてN列配列されたノズル列群を有し、
前記ノズル列群は、液滴の種類ごとに用意され、
各ノズル列群の位置ずれ量にしたがって並ぶ1番目からN番目までのノズル列の基準位置は、前記液滴の種類によらずいずれも前記副走査方向において同位置であり、
前記吐出検査部は、1回の前記吐出検査において、前記液滴の種類ごとに前記副走査方向において異なる列番号の前記ノズル列を検査対象ノズルとすることを特徴とする請求項7に記載の吐出検査方法。
【請求項9】
所定回数の前記吐出検査において、所定数を超える吐出ノズルに対して吐出「無」と判定された場合、前記印刷部に対してクリーニングを行うことを特徴とする請求項7または8に記載の吐出検査方法。
【請求項10】
前記吐出検査部は、
前記印刷部に前記吐出ノズルから吐出対象に対して帯電液滴を吐出させる吐出駆動ステップと、
前記帯電液滴の着弾により前記吐出対象に発生する電流の変化を検出する検出ステップと、を実行し、
前記電流の変化によって前記吐出ノズルの吐出の有無を検査することを特徴とする請求項7ないし9のいずれかに記載の吐出検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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