説明

液状廃棄物の減容装置及びその減容方法

【課題】液状廃棄物を容易且つ安価に減容することができる液状廃棄物の減容装置及びその減容方法を提供する。
【解決手段】減容装置11は、廃棄するシート状基材36に液状廃棄物を塗布する塗布部2と、シート状基材36に塗布された液状廃棄物に含まれる溶剤成分を蒸発させて、液状廃棄物に含まれる固形成分をシート状基材36に固定する蒸発乾燥部38と、を含むことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤系塗料を塗工する工場において生ずる塗料等の液状廃棄物を、紙やフィルム等の廃棄するシート状基材に塗布し、塗布された液状廃棄物を乾燥させることで、容易且つ安価に減容することができる装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙やフィルムなどに有機溶剤系塗料を塗工する工場において生じる、余剰となった塗料など(以下、「液状廃棄物」とも言う。)を処理する際、前記液状廃棄物に含まれる溶剤成分を蒸発させて、前記液状廃棄物に含まれる固形成分のみを取り出すことで、前記液状廃棄物を減容する場合がある。そのための装置としては、例えば、前記液状廃棄物を高温に加熱して溶剤成分を蒸留分離する装置がある。
【0003】
しかしながら、このような処理は消費エネルギーが大きく、例えば効率よく処理するためには200℃以上の高温を必要とする場合がある。さらに、前記液状廃棄物に含まれる溶剤成分と固形成分とを分離した結果、糊状になった残留物(つまり、前記固形成分)が塗料容器に付着した場合には、容器ごと廃棄することもある。
このように、従来技術には、液状廃棄物を容易且つ安価に減容することができないといった課題がある。なお、液状廃棄物を加熱して減容する従来技術としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−103253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、液状廃棄物をシート状基材に塗布することで、液状廃棄物を容易且つ安価に減容することができる液状廃棄物の減容装置及びその減容方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本願発明の一態様は、廃棄するシート状基材に液状廃棄物を塗布する塗布部と、前記シート状基材に塗布された前記液状廃棄物に含まれる溶剤成分を蒸発させて、前記液状廃棄物に含まれる固形成分を前記シート状基材に固定する蒸発乾燥部と、を含むことを特徴とする液状廃棄物の減容装置である。
上記態様によれば、シート状基材に塗布された液状廃棄物に含まれる溶剤成分を蒸発させることができるので、液状廃棄物に含まれる固形成分のみをシート状基材上に固定することが可能となる。このため、従来技術のように、液状廃棄物に含まれる溶剤成分と固形成分との分離する際(つまり、液状廃棄物を減容する際)に高温加熱する必要はない。また、塗料容器内に残留物が付着することもないので、塗料容器を廃棄する必要もない。よって、液状廃棄物を容易且つ安価に減容することができる。
【0007】
また、本願発明の別の態様は、前記蒸発乾燥部は、液状廃棄物を塗布した前記シート状基材の通路に臨み、且つ塗工機に設置された乾燥炉に連続している排気ダクトからバイパスされてなる排気バイパス路により構成された第1の蒸発乾燥部を有することとしても良い。
上記態様によれば、液状廃棄物減容装置は、塗工機の乾燥炉から排気ガス処理施設へ通じる排気ダクトからバイパスして供給される乾燥炉からの排気ガスを再利用して、シート状基材に含まれる溶剤成分を蒸発させることができる。このため、従来技術のように、液状廃棄物を減容する際に高温加熱する必要がない。よって、液状廃棄物を容易且つ安価に減容することができる。
【0008】
また、本願発明の別の態様は、前記塗布部は、前記シート状基材に液状廃棄物を塗布する塗布ローラーを備え、前記塗布ローラーは、表面がフッ素系樹脂でコーティングされていることとしても良い。
上記態様によれば、例えば液状廃棄物を弾くことのない適度な濡れ性を備え、且つ乾燥して固体となった液状廃棄物が固着することのない適度な非粘着性を備えたフッ素系樹脂を塗布ローラーの表面にコーティングすることができる。このため、仮に液状廃棄物が枯渇してローラーが乾燥した場合であっても、乾燥して固体となった液状廃棄物によって液状廃棄物減容装置が動作しなくなることがない。
【0009】
また、本願発明の別の態様は、前記蒸発乾燥部は、前記第1の蒸発乾燥部とは異なる位置で液状廃棄物を塗布した前記シート状基材の通路に臨んで設置された第2の蒸発乾燥部をさらに備え、前記第2の蒸発乾燥部は、前記シート状基材の搬送用駆動源であるエアモーターの排気口に連続して配置され、前記第1の蒸発乾燥部において前記溶剤成分を蒸発させた前記シート状基材の通路に向けられたノズルを備えることとしても良い。
【0010】
上記態様によれば、シート状基材に空気を送風することができるので、シート状基材に塗布した液状廃棄物をさらに乾燥させることができる。
また、本願発明の別の態様は前記液状廃棄物を塗布する前のロール状に巻き取られた前記シート状基材を巻き出して送り出す送り出し部と、前記蒸発乾燥部の下流側で前記シート状基材を巻き取る巻き取り部と、をさらに備え、前記シート状基材は、前記送り出し部から前記巻き取り部へ連続する帯状のシートからなり、その経路に前記塗布部と蒸発乾燥部が配置されることとしても良い。
【0011】
上記態様によれば、シート状基材は、送り出し部から巻き取り部へと連続した帯状のシートであるので、液状廃棄物の減容を一連の工程で実施することができる。
また、本願発明の別の態様は、シート状基材に液状廃棄物を塗布する塗布工程と、前記塗布工程後、前記シート状基材に塗布された前記液状廃棄物に含まれる溶剤成分を蒸発させて、前記液状廃棄物に含まれる固形成分を前記シート状基材に固定する蒸発乾燥工程と、を含むことを特徴とする液状廃棄物の減容方法である。
【0012】
上記態様によれば、シート状基材に塗布された液状廃棄物に含まれる溶剤成分を蒸発させることができるので、液状廃棄物に含まれる固形成分のみをシート状基材上に固定することが可能となる。このため、従来技術のように、液状廃棄物を減容する際に高温加熱する必要はない。また、塗料容器内に残留物が付着することもないので、塗料容器を廃棄する必要もない。よって、液状廃棄物を容易且つ安価に減容することができる。
【0013】
また、本願発明の他の態様は、前記蒸発乾燥工程は、塗工機に設置された乾燥炉から排出される排気ガスを利用して、前記シート状基材に塗布された前記液状廃棄物に含まれる溶剤成分を蒸発させる第1の蒸発乾燥工程を含むこととしても良い。
上記態様によれば、乾燥炉からの排気ガスを再利用して、シート状基材に含まれる溶剤成分を蒸発させることができる。このため、従来技術のように、液状廃棄物を減容する際に高温加熱する必要がないので、液状廃棄物を容易且つ安価に減容することができる。
【0014】
また、本願発明の他の態様は、前記塗布工程は、表面がフッ素系樹脂でコーティングされた塗布ローラーで前記シート状基材に前記液状廃棄物を塗布することとしても良い。
上記態様によれば、例えば液状廃棄物を弾くことのない適度な濡れ性を備え、且つ乾燥して固体となった液状廃棄物が固着することのない適度な非粘着性を備えたフッ素系樹脂を塗布ローラーの表面にコーティングすることができるので、仮に液状廃棄物が枯渇してローラーが乾燥した場合であっても、乾燥して固体となった液状廃棄物によって液状廃棄物減容装置が動作しなくなることがない。
【0015】
また、本願発明の他の態様は、前記蒸発乾燥工程は、前記第1の蒸発乾燥工程後、前記シート状基材に向かって空気を吹き付けて前記シート状基材を乾燥させる第2の蒸発乾燥工程をさらに備え、前記空気は、前記シート状基材を搬送するためのエアモーターから排出された空気であることとしても良い。
上記態様によれば、シート状基材に空気を送風することができるので、シート状基材に塗布した液状廃棄物をさらに乾燥させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、減容装置11によれば、工場に既存の塗工機が有する乾燥炉の排気を再利用して、シート状基材36に塗布されて廃塗料37に含まれる溶剤成分を蒸発させることができるので、従来技術のように、液状廃棄物を減容する際に高温加熱する必要としない。よって、廃塗料37の減容を安価且つ容易に実施することができる。
なお、駆動機構は圧縮空気を使用することにより、揮発溶剤雰囲気中でも安全に駆動させることができ、圧縮空気の使用後の排気は乾燥の補助風として利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本願発明に係る廃塗料減容装置の全体を示す概念図。
【図2】本願発明に係る廃塗料減容装置が組み込まれた塗工機の一部を示す概念図。
【図3】本願発明に係る廃塗料減容装置の塗布部を示す概念図。
【図4】本願発明に係る廃塗料減容装置の巻取り張力制御の空圧回路を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明に係る液状廃棄物の減容装置11の構造について説明する。図1は、液状廃棄物の減容装置(以下、単に「減容装置」と言うこともある。)11の全体を示す概念図であり、この実施形態では、液状廃棄物としては使用後の余剰廃塗料を対象としているが、本発明としては他の液状をした廃棄物に適用可能である。図1に示すように、減容装置11は、送り出し部1と巻取り部3とを備えている。送り出し部1には、廃棄する予定の紙またはフィルム(以下、「シート状基材」と言うこともある。)36がロール状に巻き取られてセットされ、これから巻き出されたシート状基材36が巻取り部3で巻き取られるようになっている。そして、送り出し部1と巻取り部3と間には、送り出し部1から巻取り部3に向かって順に、塗布部2と蒸発乾燥部38と巻取り張力調整部39とが配置されている。さらに、シート状基材36の経路には、シート状基材36を案内する複数のローラー40が配置されている。なお、このローラー40は、廃棄する予定のシート状基材36の移動方向を調整するためのものであり、減容装置11が動作している間、各ローラー40とシート状基材36とは接している。
【0019】
送り出し部1は、ロール状に巻かれたシート状基材36の中心軸をなす回転軸と、この回転軸の回転に制動力を与えるエアクラッチブレーキ35(図4を参照)とで構成されている。
塗布部2は、塗布機構2aと廃塗料供給機構2bとで構成されているが、これらの詳細については後述する。
【0020】
蒸発乾燥部38は、第1の蒸発乾燥部38aと第2の蒸発乾燥部38bとで構成されている。第1の蒸発乾燥部38aは、後述する乾燥排気ダクト13からバイパスされてなる排気バイパス路13aにより構成される。この排気バイパス路13aには、バイパスして送り込まれた排気を、塗布部2の下流側で巻き取り部3に向けて走行するシート状基材36の塗布面に案内する整流板17が配置され、この整流板17も第1の蒸発乾燥部38aを構成する要素の1つである。
【0021】
第2の蒸発乾燥部38bは、第1の蒸発乾燥部38aの下流側でシート状基材36の塗布面に向けて空気を吐出するノズル5からなる。このノズル5は、巻き取り部3でシート状基材36をロール状に巻き取るために駆動ローラー4を回転させる図示しないエアモーターの排気口に連続されており、そのエアモーターの排気をノズル5から吐出して前記塗料面を乾燥させるようになっている。
【0022】
巻取り張力調整部39は、張力制御ローラー6とバネ7と下限スイッチ8と上限スイッチ9と支点10とアーム41とで構成されている。アーム41は底板42に対して支点10を介して俯仰自在に支持されており、アーム41先端に回転自在に軸支された張力制御ローラー6はシート状基材36を表面から押すようになっており、底板42とアーム41との間には引っ張りバネ7が掛渡されて、これにより前記ローラー6がシート状基材36を押す力が付与されている。アーム41の上下両側には上限スイッチ9と下限スイッチ8とが配置されて、後述の空圧回路(図4を参照)により送り出し部1のエアクラッチブレーキ35を制御するようになっている。
【0023】
巻取り部3は、回転軸と駆動ローラー4とで構成されており、シート状基材36が回転軸に巻き付いてロール状をなし、このロールの外周に接する駆動ローラー4で巻き取られる。
次に、塗工機に組み込まれた減容装置11について説明する。図2は、本願発明に係る減容装置11が組み込まれた塗工機の一部を示す概念図である。図2に示すように、減容装置11本体は、密閉可能な格納容器12に格納されている。格納容器12は、塗工機の乾燥排気ダクト13に対し、ダクト13内のダクト弁16の前後においてバイパス弁14及び15によって接続されている。前記バイパス弁14と15との間に前記排気バイパス路13aが形成される。さらに、格納容器12には、外部と連通する扉18及び19が設置されている。なお、この乾燥排気ダクト13は、塗工機の乾燥炉から排気ガス処理設備に向けて排気ガスを排気するためのダクトである。
【0024】
次に、塗布部2の詳細について図3を参照して説明する。図3は、本願発明に係る減容装置11の塗布部2に含まれる塗布機構2aと廃塗料供給機構2bとを示す概念図である。
塗布機構2aは、供給ローラー24と塗布ローラー25と基材ローラー26と受け皿27とで構成され、受け皿27内に廃棄する塗料(以下、「廃塗料」とも言う。)37が収容されている。この廃塗料37は、溶剤成分と固体成分とを含んだものであり、受け皿27に溜められている。そして、供給ローラー24は廃塗料37と接して配置されている。塗布ローラー25は、供給ローラー24と基材ローラー26とを一定の力で押圧している。そして、シート状基材36は塗布ローラー25と基材ローラー26とで挟まれている。なお、塗布ローラー25に示された矢印は、押圧される方向を示している。また、供給ローラー24と塗布ローラー25の表面は、廃塗料37を弾くことが無い適度な濡れ性を持ち、且つ乾燥して固体となった廃塗料37が固着しない適度な非粘着性を併せ持ったフッ素系樹脂コーティングが施されている。このため、仮に廃塗料37が枯渇して上記ローラーが乾燥しても、乾燥して固着した廃塗料37によって減容装置11が動作しなくなるのを防止することができる。
【0025】
廃塗料供給機構2bは、廃塗料タンク22とポンプ23と供給管28と戻り管29とで構成され、廃塗料37は廃塗料タンク22に溜められている。そして、廃塗料タンク22には、廃塗料37を受け皿27に汲み上げることができるようにポンプ23を備え供給管28が配置されている。供給管28は、塗布機構2aと廃塗料供給機構2bとを隔てる隔壁を介して、塗布機構2a側と通じ、供給管28の吐出口は、受け皿27上に臨んでいる。戻り管29は、廃塗料タンク22に配置されており、廃塗料供給機構2bと塗布機構2aとを隔てる隔壁を介して、受け皿27と通じている。そして、戻り管29の途中にはU字状トラップが形成されている。
【0026】
次に、本願発明に係る減容装置11の動作について説明する。
まず、送り出し部1にすでにロール状に巻き取られたシート状基材36をセットする。セットされたシート状基材36は、ローラー40によって進行方向を変えながら、塗布部2へと搬送される。
塗布部2では、塗布ローラー25によって、基材ローラー26上のシート状基材36の片面に廃塗料37が転写させる。なお、減容装置11の停止時には、塗布ローラー25は供給ローラー24及び基材ローラー26から離れるため、廃塗料37が転写されることはない。また、廃塗料タンク22に貯蔵された廃塗料37は、圧縮空気にて駆動するポンプ23によって吸い上げられ、供給管28を通り受け皿27に供給されて前記のように塗布される。そして、塗布されずに受け皿27に溜まった廃塗料37は、勾配を持った戻り管29を通り、廃塗料タンク22に再び戻る。戻り管29のU字状トラップにより、仮に受け皿27が空になった場合であっても格納容器12内の空気と廃塗料タンク22内の空気が直接繋がることがない。
【0027】
塗布部2にて廃塗料37が塗布されたシート状基材36は、蒸発乾燥部38へと搬送される。蒸発乾燥部38では、廃塗料37に含まれる溶剤成分が蒸発し、固体成分のみがシート状基材36上に固定される。こうして、廃塗料37は減容される。
図2において示した矢印20は、工場に備えられた塗工機の一部をなす乾燥炉(図示せず)にて生じた、溶剤成分を含んだ排気ガスの流れを示している。また、矢印21は工場の排気ガス処理設備(図示せず)への排気ガスの流れを示している。一般的に塗工機の乾燥炉は、製品の品質を一定基準以上に保つために、余裕を持った乾燥能力を有している。よって、排気ガスは、まだ十分な乾燥能力を有したまま排気側に排出される。このため、上記排気ガスは、減容装置11の乾燥機構に利用することができる。
【0028】
そこで、バイパス弁14及び15を開き、ダクト弁16を閉じることにより、排気ガスは格納容器12へ流れ込み、第1の蒸発乾燥部38aに至って整流板17により流れの向きをシート状基材36の表面に向けられ、シート状基材36の表面上の廃塗料37を乾燥させる。廃塗料37は薄く塗布されており、溶剤成分の揮発性が高いため、即座に乾燥する。この溶剤成分を含む排気ガスはバイパス弁15を通ってダクト13に戻り、排気ガス処理設備に送り込まれる。
【0029】
また、減容装置11を停止させ、ダクト弁16を開き、バイパス弁14及び15を閉じた後、扉18及び19を開き、シート状基材36の交換作業などを行うことができる。
次に固体成分のみが固定されたシート状基材36は巻取り張力調整部39において、巻取り張力が調整される。そして、その後、巻取り部3にて固体成分が固定されたシート状基材36は巻き取られる。シート状基材36の送り駆動力は、駆動ローラー4が、巻取り部3のロールになったシート状基材36に対して押し付けられることによって、巻き取り部3に巻き取り力が発生することで得られる。
【0030】
駆動ローラー4の動力には、圧縮空気を使用したエアモーターを使用し、エアモーターの駆動力として使用した後の圧縮空気の排気はノズル5によってシート状基材36に向け吹き付けられ、廃塗料37の第2の蒸発乾燥部38bとして利用される。なお、駆動ローラー4に示された矢印は、押圧される方向を示している。
巻取り張力の調整には、送り出し部1の回転軸に設けられたエアクラッチブレーキ35を使用し、この回転軸にブレーキを掛けながら、駆動ローラー4にてシート状基材36を引っ張る力とのバランスを制御することで行う。
【0031】
上記制御方法は、支点10を中心としてアーム41が俯仰することにより上下移動する張力制御ローラー6が、バネ7によりシート状基材36に張力を付与しており、シート状基材36が弛み張力制御ローラー6が下降すると下限スイッチ8が入り送り出し部1のブレーキ力が増加する。逆にシート状基材36が張り過ぎ、張力制御ローラー6が上昇すると、上限スイッチ9が入り、送り出し部1のブレーキ力が低下する。これにより、巻取り部3は一定の張力でシート状基材36を巻き取ることができる。ここで、巻き取られたシート状基材36はそのまま廃棄処分されるので、これ以上の高精度制御は必要ない。
【0032】
なお、下限スイッチ8及び上限スイッチ9には、リミットスイッチ形のメカニカルバルブを使用できる。
図4は、本願発明に係る減容装置11の巻取り張力制御の空圧回路を示す概念図である。図4に示すように、減圧弁30、31、32は3段階のブレーキ力に合わせた空圧がそれぞれ設定されており、前記スイッチ8及び9の動作に応じてリミットスイッチ形メカニカルバルブ33、34の入切にてエアクラッチブレーキ35への入力空圧が切り替えられる。このように、上記機構には電気的な部品を使う必要がないため、廃塗料37中に含まれる溶剤成分への引火の危険が少なくなる。
【0033】
また、廃塗料37は溶剤成分が蒸発して大幅に減容されるだけでなく、残留する固形成分はシート状基材36上に塗布されて巻き取られる。このために、ロール状に巻きとられたシート状基材36を廃棄するだけで良くなる。よって、廃棄方法が一本化されるので、廃棄費用を低く抑えることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 送り出し部
2 塗布部
2a 塗布機構
2b 廃塗料供給機構
3 巻取り部
4 駆動ローラー
5 ノズル
6 張力制御ローラー
7 バネ
8 下限スイッチ
9 上限スイッチ
10 支点
11 廃塗料減容装置
12 格納容器
13 乾燥排気ダクト
13a 排気バイパス路
14 バイパス弁(導入側)
15 バイパス弁(排出側)
16 ダクト弁
17 整流板
18 扉(巻取り側)
19 扉(送り出し側)
20 工場の塗工機に備わる乾燥炉からの排気ガスの流れ
21 工場の排気ガス処理設備への排気ガスの流れ
22 廃塗料タンク
23 ポンプ
24 供給ローラー
25 塗布ローラー
26 基材ローラー
27 受け皿
28 供給管
29 戻り管
30 減圧弁(高圧側)
31 減圧弁(低圧側)
32 減圧弁(中圧側)
33 リミットスイッチ形メカニカルバルブ(低圧側)
34 リミットスイッチ形メカニカルバルブ(高圧側)
35 エアクラッチブレーキ
36 シート状基材
37 廃塗料
38 蒸発乾燥部
38a 第1の蒸発乾燥部
38b 第2の蒸発乾燥部
39 巻取り張力調整部
40 ローラー
41 アーム
42 底板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄するシート状基材に液状廃棄物を塗布する塗布部と、前記シート状基材に塗布された前記液状廃棄物に含まれる溶剤成分を蒸発させて、前記液状廃棄物に含まれる固形成分を前記シート状基材に固定する蒸発乾燥部と、を含むことを特徴とする液状廃棄物の減容装置。
【請求項2】
前記蒸発乾燥部は、液状廃棄物を塗布した前記シート状基材の通路に臨み、且つ塗工機に設置された乾燥炉に連続している排気ダクトからバイパスされてなる排気バイパス路により構成された第1の蒸発乾燥部を有することを特徴とする請求項1に記載の液状廃棄物の減容装置。
【請求項3】
前記塗布部は、前記シート状基材に液状廃棄物を塗布する塗布ローラーを備え、前記塗布ローラーは、表面がフッ素系樹脂でコーティングされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液状廃棄物の減容装置。
【請求項4】
前記蒸発乾燥部は、前記第1の蒸発乾燥部とは異なる位置で液状廃棄物を塗布した前記シート状基材の通路に臨んで設置された第2の蒸発乾燥部をさらに備え、前記第2の蒸発乾燥部は、前記シート状基材の搬送用駆動源であるエアモーターの排気口に連続して配置され、前記第1の蒸発乾燥部において前記溶剤成分を蒸発させた前記シート状基材の通路に向けられたノズルを備えることを特徴とする請求項2に記載の液状廃棄物の減容装置。
【請求項5】
前記液状廃棄物を塗布する前のロール状に巻き取られた前記シート状基材を巻き出して送り出す送り出し部と、前記蒸発乾燥部の下流側で前記シート状基材を巻き取る巻き取り部と、をさらに備え、前記シート状基材は、前記送り出し部から前記巻き取り部へ連続する帯状のシートからなり、その経路に前記塗布部と蒸発乾燥部が配置されたことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の液状廃棄物の減容装置。
【請求項6】
シート状基材に液状廃棄物を塗布する塗布工程と、前記塗布工程後、前記シート状基材に塗布された前記液状廃棄物に含まれる溶剤成分を蒸発させて、前記液状廃棄物に含まれる固形成分を前記シート状基材に固定する蒸発乾燥工程と、を含むことを特徴とする液状廃棄物の減容方法。
【請求項7】
前記蒸発乾燥工程は、塗工機に設置された乾燥炉から排出される排気ガスを利用して、前記シート状基材に塗布された前記液状廃棄物に含まれる溶剤成分を蒸発させる第1の蒸発乾燥工程を含むことを特徴とする請求項6に記載の液状廃棄物の減容方法。
【請求項8】
前記塗布工程は、表面がフッ素系樹脂でコーティングされた塗布ローラーで前記シート状基材に前記液状廃棄物を塗布することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の液状廃棄物の減容方法。
【請求項9】
前記蒸発乾燥工程は、前記第1の蒸発乾燥工程後、前記シート状基材に向かって空気を吹き付けて前記シート状基材を乾燥させる第2の蒸発乾燥工程をさらに備え、前記空気は、前記シート状基材を搬送するためのエアモーターから排出された空気であることを特徴とする請求項7に記載の液状廃棄物の減容方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−250157(P2012−250157A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123465(P2011−123465)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】