説明

液状材料の射出成形における材料置換方法

【課題】ランナの材料置換を射出装置によらず置換部材の採用により置換材料を直接金型に圧送することにより置換材料の節減と作業時間の短縮を図る。
【解決手段】射出装置のノズル前部に置換部材を装着する。置換部材を前記射出装置の前進により前記ランナ金型に当接する。置換部材と前記材料供給装置の液状樹脂材料を接続する流路を形成する。材料供給装置から前記置換部材に前記液状樹脂材料を圧送供給して前記ランナ金型内の材料置換を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液状樹脂材料と液状硬化剤を含む2種以上を混合した液体材料の射出成形における材料置換方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液状樹脂材料(主剤)と液状硬化剤とからなる2種以上の液状材料を樹脂混合装置に供給し、スクリュにより混合を行って金型に射出する樹脂注入装置が知られており、運転終了時に主剤のみを樹脂混合装置内に送出して、攪拌により内部に残存している既混合剤と共に主剤を排出して清掃を行っている。
【0003】
また金型内のランナの樹脂替・色替えとして、射出装置を金型から離し、新たな樹脂を供給しながら射出を繰返して、今まで成形に使用していた樹脂をスクリュシリンダから取り去り、新たな樹脂に置換してから金型にノズルタッチして樹脂の供給と射出を繰返し、ランナに残存していた樹脂と置換することが知られている。
【特許文献1】特公平7−2348号公報
【特許文献2】特公平6−88286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の射出の繰返しによる材料置換では、射出シリンダ側の材料置換を行ってから、同様な操作により金型のランナに残存した樹脂の置換を行っていることから、液状材料の硬化による成形で、金型交換やメンテナンスに際する材料置換に採用すると、射出シリンダ側の材料置換が不要な場合であっても、射出シリンダ側の材料置換を行うことから置換材料が無駄になる。また硬化の進行が早い場合、射出シリンダ側の材料置換を行っている間に、ランナに残存した材料の硬化が進行して材料置換が困難になり易い。そして、置換材料として使用される液状樹脂材料は汎用樹脂よりも高価であるので、成形コストにも影響を与える。
【0005】
この発明は、前記材料置換の課題を解決するために考えられたものであって、その目的は、ランナの材料置換を射出装置によらず置換部材の採用により置換材料を直接金型に圧送することにより、金型交換やメンテナンスに際する置換材料の節減と、作業時間の短縮を図ることができる新たな液状材料の射出成形における材料置換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的によるこの発明は、液状樹脂材料(主剤)と液状硬化剤を含む2種以上の液体材料を射出シリンダに供給する材料供給装置と、該材料供給装置により供給された液状材料をスクリュにより混合計量して射出成形を行う射出装置とを備え、ランナを有する金型を使用して前記射出装置により射出成形を行う際の材料置換方法であって、 前記射出装置のノズル前部に置換部材を装着し、該置換部材を前記射出装置の前進により前記ランナ金型に当接するとともに、前記置換部材と前記材料供給装置の液状樹脂材料を接続する流路を形成し、前記材料供給装置から前記置換部材に前記液状樹脂材料を圧送供給して前記ランナ金型内の材料置換を行うというものであり、前記材料供給装置の液状樹脂材料と置換部材との流路は、前記液状樹脂材料の流路から分岐して形成される、というものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明では、金型内のランナの材料置換を、ノズル部材に装着した着脱自在な置換部材により、射出装置内を迂回して材料供給装置からノズル前部の置換部材を経て置換材料を金型内のランナに直接圧送し、ランナ内の材料置換を行うことから、簡単な段取で材料硬化が進行する前に材料置換が行え、また射出の繰返しによりランナの材料置換を行う場合よりも置換材料の使用量がランナの材料置換量で済むため置換材料の節減ともなる。
【0008】
また金型交換やメンテナンスに際するランナ内の材料置換に、射出装置を稼働せずに済むので作業効率の向上となり、射出装置の再稼働もノズル先端から置換部材を外してノズルタッチするだけでよいので、射出装置内を迂回したランナ内の材料置換でも、置換部材のノズルタッチを射出装置により行えることから、ノズルタッチに特別な装置や操作を必要とせず、作業としても置換部材となる主剤の材料供給装置から分岐した流路を、ノズル部材に装着した置換部材に接続するだけで済むので、安価な構成で容易に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図中1は射出装置、2は材料供給吐出装置、3は型締装置に取り付けたランナ金型、4はアタッチメントによる置換部材である。
【0010】
前記射出装置1は、先端にノズル部材11を備え、後部上側に材料供給口12を穿設したシリンダ13と、そのシリンダ内に回転かつ進退自在に設けた射出スクリュ14とからなり、ノズル部内に設けたニードルバルブ15の開閉装置16をシリンダ外に備えている。またシリンダ13の外周囲には温調手段17が施してある。
【0011】
前記材料供給吐出装置2は、液状の樹脂材料(主剤)の供給装置21と液状の硬化剤の供給装置22の一対と、主剤と硬化剤を個々に同時に同量吐出する単一の吐出装置23と、各供給装置から吐出装置を経て前記射出装置1の材料供給口12にわたり配設した流路とからなる。主剤としては液状シリコーンゴムが一般的に使用されているが、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等の液状樹脂材料でもよく、硬化剤はそれらの樹脂を混合により硬化する液状硬化剤が用いられる。
【0012】
前記供給装置21,22は主剤と硬化剤のタンク21a、22aとタンク内の主剤と硬化剤をそれぞれ圧送する加圧シリンダ21b,22bとからなる。また前記吐出装置23は主剤と硬化剤を個々に貯留する同一断面積の一対の吐出用シリンダ23a、23bと、シリンダ内の吐出用プランジャ23a′、23b′と、その両方を同時作動する単一の加圧装置23cとからなる。この加圧装置23cにより同一分量の主剤と硬化剤の吐出が行われる。
【0013】
この吐出装置23の吐出用シリンダ23aと主剤タンク21aには流路24aが、吐出用シリンダ23bと硬化剤タンク22aには流路24bが配設してある。また主剤の流路24aは、流路途中に設けた切換バルブ25により流路24a′に分岐してある。この分岐流路は前記金型3の材料置換に使用される。前記吐出用シリンダ23a,23bから前記射出装置1の材料供給口12には流路24a,24bが配設してあり、分岐流路24a′を除いて、それらの流路にはストップバルブが取り付けてある。
【0014】
前記置換部材4は、前部41を縮径して先端を前記ノズル部材11の先端のノズル11aと同一形状のノズルに形成し、後部42の内部をノズル部材11の先端部と嵌合する凹所43に形成した円柱体のアタッチメントからなる。前部41の中央部には先端面から凹所43の手前まで流通路44が穿設してあり、その流通路44の終端部位に側部から連通孔45が穿設してある。この連通孔45には前記分岐流路24a′の延長流路となるホース47の接続管46が取り付けてある。
【0015】
前記構成の射出装置1により主剤と硬化剤の2種を混合して射出成形するには、図1に示すように、型締装置に取り付けた前記金型3のスプルブッシュにノズル部材11の先端をノズルタッチする。金型3の固定側にはランナ31が設けてあり、そのゲートには開閉作動するゲートピンが設けてある。ノズルタッチをした状態で前記吐出装置23からシリンダ11内に供給された主剤と硬化剤の液状材料をスクリュ回転により混合し、それをスクリュ後退によりシリンダ11の先端部内に計量してから、スクリュ前進により金型3に射出する。混合材料はランナ31からキャビティ32に充填され、その後に硬化して製品となる。
【0016】
金型交換により金型内のランナ31の材料置換が必要となったときには、成形終了後に型開して製品を取出したのち、前記開閉装置16により前記ニードルバルブ15を閉作動し、ノズル口から材料漏れが生じないようにして、射出装置1を所定位置まで後退移動する。ノズル11aが金型3から離れたらノズル部材11の先端部に前記置換部材4を後部42の凹所43を嵌合して被せ、置換部材4をノズル部材11の延長部としてねじなどにより固定して装着する。
【0017】
置換部材11の装着が済んだら、主剤側の供給装置21の分岐流路24a′と置換部材11の流通路44とをホース47により接続して、分岐流路24a′から置換部材11に主剤の圧送ができるようにする。また型開された金型側ではゲートピンを後退してランナゲートを開放しておく。かかる準備ののち図2に示すように、射出装置1を前進移動して置換部材11の先端を金型にノズルタッチする。
【0018】
ノズルタッチ後に前記切換バルブ25を分岐流路側に切換え、供給装置21から吐出装置23と射出装置1を迂回して主剤を直接置換部材4に圧送する。主剤は金型3にノズルタッチした置換部材4のノズルからランナ31を経て開放したランナゲートから外部に流出する。これにより未硬化状態でランナ31に残存していた混合材料が主剤に押し出されて除かれ、スプルブッシュからランナゲートに残る液状材料は主剤のみとなる。材料置換後にランナゲートをゲートピンにより閉じてランナ内の主剤が流出しないようにしてから、固定側の金型を取り外して交換を行う。
【0019】
材料置換後に前記切換バルブ25により流路を供給流路24aに切換え、射出装置1を後退位置まで移動してから置換部材4及びホース47の取り外しを行い。金型交換後に射出装置1の再稼働ができるようにする。したがって、材料置換もその後の稼働準備も、置換部材4のノズル部材11への装着及び取り外しと、分岐流路24a′の取り付け及び取り外しだけで済み、これまでの射出の繰返しによる材料置換よりも作業時間が短いので、材料置換のために金型の交換作業が長くかかることがなく、また主剤の消費量はランナの材料置換量ですむことから高価な主剤の節減ともなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明に係わる材料置換方法における材料置換前の説明図である。
【図2】同じく材料置換時の説明図である。
【図3】この発明に用いる置換部材をノズル部材の先端に装着した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0021】
1 射出装置
2 材料供給吐出装置
3 金型
4 置換部材
11 ノズル部材
11a ノズル
21 主剤の供給装置
22 硬化剤の供給装置
23 吐出装置
24a 主剤の流路
24a′主剤の分岐流路
25 切換バルブ
31 ランナ
41 置換部材の前部
42 置換部材の後部
43 後部の凹所
44 流通路
45 連通孔
46 接続部材
47 分岐流路のホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状樹脂材料(主剤)と液状硬化剤を含む2種以上の液体材料を射出シリンダに供給する材料供給装置と、該材料供給装置により供給された液状材料をスクリュにより混合計量して射出成形を行う射出装置とを備え、ランナを有する金型を使用して前記射出装置により射出成形を行う際の材料置換方法であって、
前記射出装置のノズル前部に置換部材を装着し、該置換部材を前記射出装置の前進により前記ランナ金型に当接するとともに、前記置換部材と前記材料供給装置の液状樹脂材料を接続する流路を形成し、前記材料供給装置から前記置換部材に前記液状樹脂材料を圧送供給して前記ランナ金型内の材料置換を行うことを特徴とする液状材料の射出成形における材料置換方法。
【請求項2】
前記材料供給装置の液状樹脂材料と置換部材との流路は、前記液状樹脂材料の流路から分岐して形成されることを特徴とする請求項1記載の液状材料の射出成形における材料置換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−110964(P2010−110964A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284564(P2008−284564)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000227054)日精樹脂工業株式会社 (293)
【Fターム(参考)】