説明

液状洗浄剤組成物およびそれを用いた洗浄方法

【課題】 構造物表面に対する皮膜の付着力が調節可能で、皮膜を連続して剥離できる皮膜剥離性と、大量に製造した洗浄剤溶液を小分けして長期間貯蔵・保管できる貯蔵安定性とを兼ね備えたパック型の洗浄剤組成物およびそれを用いた洗浄方法を提供する。
【解決手段】 皮膜形成材料としてのポリビニルアルコールと、皮膜に柔軟性を付与する可塑剤と、水を主体とする溶媒と、溶媒に不溶な充填材と、溶媒中での充填材の分散を安定化させるための分散安定化剤とからなる液状洗浄剤組成物、並びに、該組成物を構造物表面に薄膜状に塗布し、形成された塗膜を乾燥することにより構造物表面上に乾燥皮膜を形成させ、次に乾燥皮膜を構造物表面から連続皮膜として剥離することにより、構造物表面上の汚れを乾燥皮膜に絡めとって除去する洗浄方法、である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膜剥離性並びに貯蔵安定性に優れたパック型の洗浄剤組成物およびそれを用いた洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被洗浄面に液状の洗浄剤を塗布して乾燥させることにより洗浄面の表面に皮膜を形成せしめ、その皮膜を乾燥後に剥離することにより被洗浄面の汚れを皮膜に絡めとって除去するパック型クリーナーはよく知られている。このパック型クリーナーを用いた洗浄方式は、通常の洗浄方法である洗剤とブラシ等による機械作用の組み合わせでは、十分な洗浄効果が得にくいエンボス加工が施されたクッションフロアーやブラッシングによるブラシ傷がつき易い塗装面などへの適用が期待されているものである。
【0003】
ポリビニルアルコール(以降、PVAとも称す)を皮膜形成材料とするパック型クリーナーとしては、特定の重合度、ケン化度および粘度のPVA水溶液またはエマルジョンを構造物表面に塗布するもの(特許文献1参照)や、剥離性付着膜形成用ポリマーを溶媒に溶解した糊状溶液に着色剤を混入して混合液を調整し、それを壁面に塗布するもの(特許文献2参照)が知られている。そして、特許文献2では着色剤として、炭酸カルシウム、おがくず、繊維、砂、小石、金属片、フライアッシュ、植物体の細片、プラスチック細片などの不透明粒子が例示されている。
【特許文献1】 特許第3107030号 公報
【特許文献2】 特許第2980230号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者等は、通常の洗浄方法では凹部の汚れが落ちにくいエンボス加工が施されたクッションフロアーの効果的かつ簡便な洗浄方法を開発すべく、パック型クリーナーの検討を行い、本発明に至った。
まず、可塑剤を添加したPVA水溶液を調整して、それをクッションフロアーに適用した(後述の比較例1参照)。このPVA水溶液は、特許文献1に記載の塗布液とその構成においてさほど違わないものであったが、クッションフロアーからの皮膜の剥離が容易でなく、さらに、剥離したとしても皮膜強度が十分でないため、皮膜の厚みが厚い凹部の皮膜がクッションフロアー側に残ってしまう、いわゆる抜けの現象が生じ易く、連続した皮膜として剥がすことが意外に難しい、といった問題が見られた。
【0005】
そこで、クッションフロアー表面に対する皮膜の付着力を弱めると共に、皮膜強度を高めるという上記PVA水溶液の課題を解決すべく、特許文献2に記載の着色剤に相当する充填材をさらに添加したPVA水溶液を調整して検討を続けた(後述の比較例2および3参照)。
この充填材添加処方により、クッションフロアー表面に対する皮膜の付着力を調節でき、加えて、驚くべきことに皮膜強度も向上したことで抜けの現象も改善し、上記課題の解決は図られた。しかし、この充填剤を添加したPVA水溶液には貯蔵安定性の欠如という新たな課題があることが判った。すなわち、作製したPVA水溶液を貯蔵しておくと、添加した充填剤が溶液の組成にもよるが1日ともたずに溶媒と分離・沈降してしまい、清掃現場でそれを再分散することは極めて困難であることが判った。
【0006】
清掃現場でパック型クリーナー溶液を調整して即時施工を行えば、クリーナー溶液の貯蔵安定性はさほど問題にならないが、例えば家庭のクッションフロアーといった小規模な清掃工事ではこのような現場調整・施工には限界があり、クリーナー溶液には一定の貯蔵安定性、すなわち溶液調整時の性状や分散状態を一定期間以上保持する安定性が求められる。本願発明者等はこの貯蔵安定性について、貯蔵温度40℃で最低2週間以上安定という、過酷な貯蔵条件を目標として掲げ、その実現に向けてさらなる検討を行った。
【0007】
本発明は、このような従来のパック型クリーナーでは未解決の問題点を解決しようとするものであり、充填剤の添加によりもたらされる施工面に対する皮膜の付着力の調節並びに皮膜強度の向上効果を享受しつつ、クリーナー溶液の貯蔵安定性も兼ね備えたパック型クリーナーおよびそれを用いた洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、充填剤を添加したパック型クリーナー溶液の貯蔵安定性を改善する方法について鋭意検討を重ねた結果、分散安定化剤、特にカルボオキシメチルセルロースのアルカリ金属塩とキサンタンガムの使用が極めて有効であるとの知見を得、本発明に至った。
すなわち、本発明の液状洗浄剤組成物は、皮膜形成材料としてのポリビニルアルコール、皮膜に柔軟性を付与する可塑剤、水を主体とする溶媒、溶媒に不溶な充填材、溶媒中での充填材の分散を安定化させるための分散安定化剤とからなる組成物であり、さらに、本発明の洗浄方法は、前記の液状洗浄剤組成物を構造物表面に薄膜状に塗布し、形成された塗膜を乾燥することにより構造物表面上に乾燥皮膜を形成させ、次に乾燥皮膜を構造物表面から連続皮膜として剥離することにより、構造物表面上の汚れを乾燥皮膜に絡めとって除去する洗浄方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液状洗浄剤組成物は、パック型クリーナーとして優れた皮膜剥離性を有する。そのため、乾燥皮膜を構造物表面から連続皮膜として剥離することができ、剥離作業は極めて簡便である。さらに、貯蔵安定性にも優れ、工場で大量に調整した洗浄剤溶液を小分けして長期間貯蔵・保管することができ、家庭や店舗のクッションフロアーといった小規模な清掃工事での使用に道を開くものである。
【発明の実施するための最良の形態】
【0010】
まず、本発明の液状洗浄剤組成物について説明する。
本発明の液状洗浄剤組成物は、皮膜形成材料としてのポリビニルアルコール(A)、皮膜に柔軟性を付与する可塑剤(B)、水を主体とする溶媒(C)、溶媒(C)に不溶な充填材(D)、溶媒(C)中での充填材(D)の分散を安定化させるための分散安定化剤(E)と、必要に応じて添加される非イオン界面活性剤(F)とから構成される。
【0011】
皮膜形成材料であるPVA(A)としては、ケン化度が90%未満の部分ケン化PVAを用いるのが好ましい。一方、ケン化度90%以上の完全ケン化PVAは、皮膜強度が強いという点で好ましい皮膜形成材料であるが、炭酸カルシウム等の充填剤(D)の分散安定性に劣り、それを用いるとしても部分ケン化PVAとの混合で用いるのが好ましい。さらに、PVA(A)の重合度について言えば、平均重合度300〜700の低重合度品や平均重合度1000〜1500の中重合度品よりも平均重合度が1700〜2400程度の高重合度品の方が皮膜強度および伸度が高く好ましい。
【0012】
液状洗浄剤組成物に占めるPVA(A)の含有量は、好ましくは4〜10重量%、更に好ましくは5〜8重量%である。PVA(A)の含有量が4重量%未満では、形成された乾燥皮膜を連続して剥離するに足る十分な皮膜強度が得難く、10重量%を超えると、充填剤(D)を添加したPVA溶解液の粘度が高くなりすぎ、そのため分散安定化剤(E)による分散安定化効果が得難くなる。
【0013】
可塑剤(B)は、PVA(A)の乾燥皮膜に柔軟性と強度を与えるものから選ばれる。具体的には、グリセリン、プロピレングリコール等のグリコール類、ブチルカルビトール等が挙げられるが、これらの中でもグリセリンが特に好ましい。液状洗浄剤組成物に占める可塑剤(B)の含有量としては、好ましくは1〜12重量%、更に好ましくは2〜6重量%である。可塑剤(B)の含有量が1重量%未満では、乾燥皮膜の柔軟性がまだ十分でなく、12重量%を超えると、皮膜からの可塑剤(B)のブリードが激しくなり、皮膜の剥離性が悪化する。
【0014】
溶媒(C)としては、水、特に脱イオン水が好ましく用いられる他、塗膜の乾燥時間を短縮したい時などには、脂肪族低級アルコール、特にエチルアルコールを添加した水溶液を溶媒(C)として用いることもできる。
【0015】
充填材(D)は、溶媒(C)に不溶であり、それを液状洗浄剤組成物に加えることで塗布面に対する乾燥皮膜の付着力が調節できるものから選ばれる。具体的には、クレー、炭酸カルシウム、ドロマイト、酸化チタン、タルク、カオリン、石膏、珪藻土、エアロジル、炭素繊維の短繊維、硅砂、フライアッシュ等が挙げられ、これらの中でもPVA溶液中で分散しやすい炭酸カルシウム、ドロマイトおよびエアロジルが特に好ましい充填剤(D)である。
さらに、本発明者等は、充填剤(D)の増量効果で皮膜の厚みが増した結果、少ないPVA量でも強い皮膜強度が得られるという、思いもよらぬ好ましい結果を確認することができた。
【0016】
液状洗浄剤組成物に占める充填材(D)の含有量は、好ましくは3〜15重量%、更に好ましくは5〜10重量%である。充填材(D)の含有量が3重量%未満では、塗布面に対する乾燥皮膜の付着力を十分には調節できず、15重量%を超えると、液状洗浄剤組成物の流動性と貯蔵安定性が悪化して、それを構造物表面に所定の均一な厚みで塗布することに加えて長期間貯蔵することが難しくなる。
【0017】
分散安定化剤(E)は溶液中での充填材(D)の分散を安定化させるために用いられる。具体的には、カルボオキシメチルセルロース(以降、CMCとも称す)のアルカリ金属塩、キサンタンガム、アラビアガム等が挙げられ、CMCアルカリ金属塩特にCMCナトリウム塩と、微生物の発酵により産生される多糖類であるキサンタンガムが特に好ましい分散安定化剤(E)である。液状洗浄剤組成物に占める分散安定化剤(E)の含有量としては、好ましくは0.05〜5重量%、更に好ましくは0.1〜1重量%である。
【0018】
油汚れの激しい構造物表面に対しては、界面活性剤(F)を添加した液状洗浄剤組成物の使用が有効である。界面活性剤(F)は、親水親油バランス(HLB)が7以上、好ましくは8以上のものから選ばれ、非イオン系界面活性剤および陰イオン系界面活性剤のいずれでも良く、具体的には、非イオン系界面活性剤としてはモノラウリン酸ソルビタン、モノカプリン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル類、モノラウリン酸デカグリセリン、モノラウリン酸ヘキサグリセリン、モノオレイン酸デカグリセリン、モノオレイン酸テトラグリセリンなどのポリグリセリンモノ脂肪酸エステル類、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、変性シリコーンエマルジョン等が、陰イオン系界面活性剤としてはラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム等が挙げられる。界面活性剤(F)の含有量は、液状洗浄剤組成物の0.5〜5重量%であることが好ましい。
【0019】
次に、本発明の洗浄方法について説明する。
本発明の洗浄方法は、前記の液状洗浄剤組成物を構造物表面に薄膜状に塗布し、形成された塗膜を乾燥することにより構造物表面上に乾燥皮膜を形成させ、次に乾燥皮膜を構造物表面から連続皮膜として剥離することにより、構造物表面上の汚れを乾燥皮膜に絡めとって除去する方法である。
【0020】
構造物表面への液状洗浄剤組成物の塗布は、容器から取り出した液状洗浄剤組成物を刷毛、コテ、ローラー、ヘラ等の展開用具を用いて塗布面に均一な厚みで展開(レベリング)することによって行なうことができる。このレベリングが不均一であると、薄膜である乾燥皮膜に厚み斑が生じて、それを構造物表面から剥離する際に皮膜破断の原因となるので、液状洗浄剤組成物には展開し易い一定の流動性が求められる。
液状洗浄剤組成物の塗布量は、汚れ度合、表面材質、凸凹の程度といった構造物の状態に応じて適宜選択されるものであるが、剥離の際に乾燥皮膜に要求される強度と経済性を勘案すると、乾燥皮膜の厚みが通常0.05〜0.5mm、特に0.1〜0.3mmとなるように液状洗浄剤組成物を塗布することが好ましい。
【0021】
塗膜の乾燥は、自然乾燥、扇風機等を用いた風による乾燥、温風乾燥、赤外線照射乾燥などによって行なうことができる。自然乾燥の場合の乾燥時間は、通常数時間から48時間程度である。
【0022】
本発明の特に好ましい実施態様によれば、塗膜の乾燥に伴って乾燥皮膜の端は自然剥離しており、その剥離部分を指で摘んで引き剥がせば、皮膜全体を連続皮膜として簡単に剥離することができる。また、自然剥離には至らなかったケースでは、ヘラなどの工具を用いて乾燥皮膜の端を捲り上げれば同様に剥離できる。また、液状洗浄剤組成物を塗布する前に、構造物表面の一端に予めマスキングテープを敷設しておき、テープ上を含めて塗布することで、該テープを摘み代とすることもできる。このマスキングテープを用いる方法は、乾燥皮膜を剥がし易く、不必要な構造物部分を塗らずに済むという利点を有する。
【0023】
本発明に係る液状洗浄剤組成物を構成するPVAを始めとする諸原料は、全てまたはほとんどが食品添加物や化粧品等にも使用可能なものであるため、皮膚に付着しても無害であり、また極度の量を摂取しない限り人体に無害である。
したがって、剥離回収した乾燥皮膜は、汚れの内容にもよるが、余程のことがない限り、焼却処分できる。
【0024】
本発明は、上述のように、エンボス加工が施されたクッションフロアーを対象として、その洗浄方法を検討した結果なされたものであるが、本発明に係る洗浄の対象は上記クッションフロアーに限定されるものではなく、p−タイル、フローリング等の床材、ガラス、木材、壁、塗装面など構造物表面全般に及ぶものである。
【実施例1】
【0025】
容量1.5リットルの攪拌機付き加熱容器に水温15〜25℃の脱イオン水827gを仕込んだ後、グリセリン30gと炭酸カルシウム(重質品)60gを投入して、1分間600回転の攪拌を開始した。続いて、容器の加熱装置を起動して、昇温の過程でPVA(1)(クラレ製PVA−224、ケン化度88%、高重合度品)80gを数回に分けてゆっくりと容器に投入し、液温75℃で15分間保持してPVAを完全に溶解させた。保持時間経過後、加熱を停止して放冷を開始すると共に、液温が65℃以下に低下した時点でキサンタンガム(ローディアジャパン製ローディゲル200)3gを投入した。そして、液温が30℃以下になった時点で攪拌を停止し、液状洗浄剤組成物1kgを得た。
【0026】
得られた液状洗浄剤組成物は、その約半量を事業所の事務棟に敷設されているエンボス加工が施されたクッションフロアーに塗布して流動性および剥離性試験に、残りの約半量を容量1リットルの透明なガラス瓶に入れて密封・静置し40℃・2週間の貯蔵安定性試験に、それぞれ供した。
クッションフロアーへの液状洗浄剤組成物の塗布量は、床面積1mあたり約1kgを目安とし、剥離性試験は塗布から24時間経過後の乾燥皮膜に対して行った。クッションフロアーから剥離された乾燥皮膜について、マイクロメーターで測った膜厚の一例を示すと、エンボス加工の凸部で0.16mm、凹部で0.32mmであった。
【0027】
実施例1の液状洗浄剤組成物の流動性、剥離性および貯蔵安定性は共に良好であった。さらに、他の実施例と同様に、この実施例でも、クッションフロアーの皮膜剥離面は周囲に比べて清浄であり、汚れが除去されているのを確認した。
【実施例2】
【0028】
脱イオン水の仕込み量を837gとし、PVA(1)と炭酸カルシウムの投入量をそれぞれ50gと80gに変更し、キサンタンガムに代えてCMCナトリウム塩(以降、CMC・Naとも称す)3gを用いた以外は、実施例1と同様にして行い、液状洗浄剤組成物1kgを得た。
得られた液状洗浄剤組成物の流動性、剥離性および貯蔵安定性は共に良好であった。
【実施例3】
【0029】
グリセリンに代えてプロピレングリコール(以降、PGとも称す)30gを用いた以外は、実施例2と同様にして行い、液状洗浄剤組成物1kgを得た。
得られた液状洗浄剤組成物の流動性、剥離性および貯蔵安定性は共に良好であった。
【実施例4】
【0030】
脱イオン水の仕込み量を847gとし、PVA(1)の投入量を60gに変更し、炭酸カルシウムに代えてドロマイト60gを用いた以外は、実施例2と同様にして行い、液状洗浄剤組成物1kgを得た。
得られた液状洗浄剤組成物の流動性、剥離性および貯蔵安定性は共に良好であった。
【実施例5】
【0031】
脱イオン水の仕込み量を827gとし、炭酸カルシウムの投入量を90gに変更し、PVA(1)に代えてPVA(2)(クラレ製PVA−220、ケン化度88%、高重合度品)50gを用いた以外は、実施例2と同様にして行い、液状洗浄剤組成物1kgを得た。
得られた液状洗浄剤組成物の流動性、剥離性および貯蔵安定性は共に良好であった。
【実施例6】
【0032】
脱イオン水の仕込み量を757gとし、PVA(2)、グリセリンおよび炭酸カルシウムの投入量をそれぞれ60g、100g、80gに変更した以外は、実施例5と同様にして行い、液状洗浄剤組成物1kgを得た。
得られた液状洗浄剤組成物の流動性と貯蔵安定性は共に良好、剥離性はやや良好であった。
【実施例7】
【0033】
脱イオン水の仕込み量を837gとし、グリセリンの投入量を20gに変更した以外は、実施例6と同様にして行い、液状洗浄剤組成物1kgを得た。
得られた液状洗浄剤組成物の流動性、剥離性および貯蔵安定性は共に良好であった。
【実施例8】
【0034】
脱イオン水の仕込み量を796gとし、炭酸カルシウムとキサンタンガムの投入量をそれぞれ70gと4gに変更し、PVA(1)に代えてPVA(3)(デンカ製B−17、ケン化度87〜89%、高重合度品)60gとPVA(4)(クラレ製PVA−CST、ケン化度96%、高重合度品)40gの混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして行い、液状洗浄剤組成物1kgを得た。
得られた液状洗浄剤組成物の流動性、剥離性および貯蔵安定性は共に良好であった。
【実施例9】
【0035】
脱イオン水の仕込み量を808gとし、PVA(1)、グリセリンおよびCMC・Naの投入量をそれぞれ60g、50g、2gに変更した以外は、実施例2と同様にして行い、液状洗浄剤組成物1kgを得た。
得られた液状洗浄剤組成物の流動性、剥離性および貯蔵安定性は共に良好であった。
さらに、同じ洗浄剤を工場に敷設されている油で汚れたクッションフロアーに塗布してテストしたところ、油汚れの箇所で洗浄剤溶液が弾かれてしまい、全面に渡る膜形成がなされなかった。
【実施例10】
【0036】
脱イオン水の仕込み量を798gとし、非イオン系界面活性剤であるモノラウリン酸デカグリセリン(坂本製薬製ML−750、HLB 14.8)10gを新たに、グリセリンや炭酸カルシウムと同じタイミングで投入した以外は、実施例9と同様にして行い、液状洗浄剤組成物1kgを得た。そして、流動性と剥離性試験は、工場に敷設されている油で汚れたクッションフロアーを用いて行った。
得られた液状洗浄剤組成物の流動性、剥離性および貯蔵安定性は共に良好であった。
【実施例11】
【0037】
モノラウリン酸デカグリセリンに代えて、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(日本油脂製OT−221、HLB 15)10gを投入した以外は、実施例10と同様にして行い、液状洗浄剤組成物1kgを得た。
得られた液状洗浄剤組成物の流動性、剥離性および貯蔵安定性は共に良好であった。
【比較例1】
【0038】
脱イオン水の仕込み量を890gとし、PVA(1)に代えてPVA(3)60gを用い、さらに、炭酸カルシウムとCMC・Naを投入しないことを除けば、実施例9と同様にして行い、液状洗浄剤組成物1kgを得た。
得られた液状洗浄剤組成物の流動性と貯蔵安定性は良好であったが、剥離性は不良であった。
【比較例2】
【0039】
脱イオン水の仕込み量を810gとし、PVA(1)に代えてPVA(3)60gを用い、さらに、CMC・Naを投入しないことを除けば、実施例9と同様にして行い、液状洗浄剤組成物1kgを得た。
得られた液状洗浄剤組成物の流動性と剥離性は良好であったが、貯蔵安定性は不良であった。
【比較例3】
【0040】
脱イオン水の仕込み量を720gとし、PVA(3)の投入量を150gに変更した以外は、比較例2と同様にして行い、液状洗浄剤組成物1kgを得た。
本例は、PVAの添加量を増やして、溶液粘度を上げることにより、比較例2の問題点である貯蔵安定性が改善するかを調べたものである。その結果、液状洗浄剤組成物の剥離性は良好であったが、流動性は不良、さらに貯蔵安定性はゲル化が見られこれも不良であった。このことは、溶液の単なる粘度アップでは充填剤の分散安定化は図れないことを示していると考えられる。
【0041】
実施例1〜7の結果を表1に、実施例8〜11および比較例1〜3の結果を表2に示す。なお、表中の数字は組成物中の各成分の割合(重量%)である。
【0042】
流動性試験では、液状洗浄剤組成物がクッションフロアー上に目でみる限り均一な厚みで塗布できる流動性を備えているかを評価した。刷毛、コテ、ローラー等の展開用具を用いて床面積1mあたり約1kgの割合で洗浄剤をクッションフロアー上に均一な厚みで展開できるなら良好(表1および2では○で示す)、容器から洗浄剤を取り出すのが容易でなかったり、クッションフロアー上に均一に展開するのが容易でなければ不良(同×で示す)、ほぼ均一に展開できたが展開用具の塗り斑が残ればやや良好(同△で示す)と判定・評価した。
【0043】
剥離性試験では、乾燥皮膜の端を指でつまんでクッションフロアーからの剥離開始ができるか、さらに、途中での乾燥皮膜の切断や、エンボス加工の凹部で乾燥皮膜がクッションフロアー側に残ってしまう抜けがなく一枚の連続皮膜として剥離できるがの2点を評価のポイントとした。剥離開始が容易で、連続皮膜として剥離できるなら良好(表1および2では○で示す)、剥離開始にヘラ等の工具を必要としたが、連続皮膜として剥離できるならやや良好(同△で示す)、工具を用いても剥離開始が容易ではないか、また皮膜の切断や抜けのため連続皮膜として剥離できなければ不良(同×で示す)と判定・評価した。
【0044】
貯蔵安定性試験は、加速試験を意図して、通常の貯蔵温度より高い温度設定で行った。温度が高くなると溶液粘度は低くなり、充填材の沈降が問題である貯蔵安定性にとっては厳しい条件である。液状洗浄剤組成物を透明なガラス瓶に入れて密封、40℃で保管し、2週間経過後に、ガラス瓶の底に充填剤の沈殿が見られないか、見られてもかき混ぜれば容易に分散する程度ならば良好(表1および2では○で示す)、手でかき混ぜた程度では沈殿の分散が難しいなら不良(同×で示す)と判定・評価した。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膜形成材料としてのポリビニルアルコール(A)と、皮膜に柔軟性を付与する可塑剤(B)と、水を主体とする溶媒(C)と、溶媒(C)に不溶な充填材(D)と、溶媒(C)中での充填材(D)の分散を安定化させるための分散安定化剤(E)とからなる液状洗浄剤組成物。
【請求項2】
さらに界面活性剤(F)を含有してなる請求項1に記載の液状洗浄剤組成物。
【請求項3】
分散安定化剤(E)がカルボオキシメチルセルロースのアルカリ金属塩及び/又はキサンタンガムである請求項1または2に記載の液状洗浄剤組成物。
【請求項4】
ポリビニルアルコール(A)がケン化度90%未満の部分ケン化ポリビニルアルコール、または、該部分ケン化ポリビニルアルコールとケン化度90%以上の完全ケン化ポリビニルアルコールとの混合物である請求項3に記載の液状洗浄剤組成物。
【請求項5】
可塑剤(B)がグリセリンであり、充填剤(D)が炭酸カルシウム及び/又はドロマイトである請求項4に記載の液状洗浄剤組成物。
【請求項6】
液状洗浄剤組成物中の組成割合が、ポリビニルアルコール(A)4〜10重量%、可塑剤(B)1〜12重量%、充填材(D)3〜15重量%、分散安定化剤(E)0.05〜5重量%である請求項1または5に記載の液状洗浄剤組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の洗浄剤組成物を構造物表面に薄膜状に塗布し、形成された塗膜を乾燥することにより構造物表面上に乾燥皮膜を形成させ、次に乾燥皮膜を構造物表面から連続皮膜として剥離することにより、構造物表面上の汚れを乾燥皮膜に絡めとって除去する洗浄方法。

【公開番号】特開2006−16583(P2006−16583A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222613(P2004−222613)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(592246381)株式会社ミズホケミカル (7)
【Fターム(参考)】