説明

液状適用音響減衰材

【課題】音響減衰組成物を提供する。
【解決手段】共重合されたペンダントリン系酸基として存在する0.03%〜3%のリンを有するバインダーを含む液状適用される音響減衰組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音響減衰のための組成物に関し、特に、自動車用途に有用な音響減衰のための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車製造者は多くの場合、道路騒音からの振動、エンジンおよびトランスミッション振動および風による音を減衰させた車両を製造する工程を採用してきた。振動を低減する最も一般的な方法の1つは、アスファルト製パッチであり、これは車体またはフレームの金属またはプラスチック部品に接着される厚いパッチである。それらは音を減衰させるのに非常に効率的であるが、使用が煩わしい。第1に、それらは装着に労力を必要とする。第2に、各車両の種類は他の車両の種類とは異なる車体とフレーム部品を有しているので、製造者は非常に広範囲のサイズと形状のパッチを入手可能にしなければならない。1つの車両でさえ、多くの異なるサイズと形状のパッチを用いる場合があり得る。その結果、製造者は多数のそれらの部品を設計し、提供し、貯蔵しなければならず、コスト高であり非効率的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
液状適用音響減衰材料が開発された。それらはパッチよりもいくつかの利点を有し、特にそれらはスプレー装置でロボットによって装着して、パッチ装着に伴う労力を省くことができる。
【0004】
また、スプレー装着は防音材料のより集中的なまたは限定された適用を可能にする。自動車のレーザー援用振動解析は振動的な「ホットスポット」(他よりも振動の多い領域)の識別を可能にする。パッチでは、いくつかの小さなパッチを製造し装着するよりも、いくつかのホットスポットを被覆する1つの大きなパッチを製造し装着するほうが時には簡単である。コンピュータで案内されたスプレー装置では各ホットスポットを個別にスプレー(および減衰)することができ、使用材料と車両重量を低減する。
【0005】
溶媒ベースエポキシまたはウレタン系材料を含む液状適用音響減衰材料は、VOC放出に対して環境的に明らかな欠点を有し、かつ臭気の問題を発生する(例えば、「新車臭」)。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、改善された音響減衰組成物であり、
(a)共重合されたペンダントリン系酸基として存在する0.03%〜3%のリンを含み、バインダーが−50℃〜80℃、好ましくは−30℃〜50℃、さらに好ましくは0℃〜30℃の計算Tを有する水性ポリマーバインダー;
(b)乾燥重量基準で充填剤のポリマーに対する比が1:1〜10:1である充填剤;および
(c)剪断条件下にないとき、200,000〜10,000,000cP(および好ましくは1,000,000〜3,000,000,cP)のブルックフィールド粘度を有する剪断減粘可能な組成物を得るのに充分な量の増粘剤:を含み、組成物の体積固形分は約50〜75%である。
【0007】
本発明の一実施形態において、バインダー(a)は2成分を含み、第1成分は−50℃〜60℃の計算Tを有するコポリマーを含み、第2成分は−30℃〜80℃の計算Tを有するコポリマーを含み、2成分間のTの差は少なくとも20℃である。
【0008】
2成分バインダーの場合、成分の1方は他方の存在の下で重合することができる。あるいは、2成分バインダーにおいて、バインダーは2つのポリマー分散物の混合物を含むことができる。
【0009】
2成分バインダーにおいて、2成分間のTの差は、20℃〜80℃、さらに好ましくは30℃〜70℃、最も好ましくは40℃〜60℃である。2成分バインダーにおける各成分の量は、1〜99%、好ましくは5〜95%、さらに好ましくは10〜90%の範囲であることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の組成物は従来の水性音響減衰材料に比べて、改善された複合損失係数(「CLF」)特性を有し、溶媒系液状適用音響減衰材料に伴う問題を実質上解消する。
【0011】
さらに、本発明は、車両の1つ以上の部品に上述の本発明の組成物を適用することを含む、自動車の振動を低減する方法である。
【0012】
「体積固形分」とは、充填剤の乾燥体積とバインダーの乾燥体積の和を組成物の総体積で除して、100を掛けたものを意味する。
【0013】
「(コ)ポリマー」は、ホモポリマーまたはコポリマー、またはその両方の組み合わせを指す。用語「(メタ)アクリレート」はアクリレートまたはメタクリレートのいずれかを指し、「(メタ)アクリル」はアクリルまたはメタクリルのいずれかを指す。
【0014】
「ガラス転移温度」または「T」は、フォックスの式[Bulletin of the American Physical Society 1,3,123ページ(1956)]の次の式:
【数1】

で計算されたコポリマーのガラス転移温度である。
【0015】
コポリマーの場合、wおよびwは、反応容器に装填されたモノマーの重量を基準とする2種のコモノマーの重量分率を指し、Tg(1)およびTg(2)は2つの対応するホモポリマーのガラス転移温度(ケルビン度)を指す。3種以上のモノマーを含むポリマーの場合、追加の項(w/Tg(n))が加えられる。本発明の目的のためのホモポリマーのガラス転移温度は、「Polymer Handbook」(J.Brandrup and E.H.Immergut編、Interscience Publishers,1966)に報告されたものであり、この出版物が報告しない特定のホモポリマーのTの場合には、ホモポリマーのTは示差走査熱量計(DSC)によって測定される。ホモポリマーのガラス転移温度をDSCによって測定するには、ホモポリマーのサンプルを製造し、アンモニアまたは1級アミンの不在下に保つ。ホモポリマーサンプルを乾燥し、120℃に予備加熱し、急速に−100℃に冷却し、次いで20℃/分の速度でデータを収集しながら150℃まで加熱する。ホモポリマーのガラス転移温度は半高法(half−height method)を用いて変曲の中点で測定される。
【0016】
重合単位として架橋性モノマーを含むコポリマーのTのフォックス計算は、各架橋性モノマーから形成されたホモポリマーのガラス転移温度に基づき、ホモポリマーはアンモニアまたは1級アミンの存在下のものではない。アニオン性モノマーから形成されたホモポリマーのガラス転移温度値は、酸の形態のアニオン性ホモポリマーについてのものである。
【0017】
エマルジョン(コ)ポリマー粒子が2種以上の互いに非混和性(コ)ポリマーから作られる場合、Tは各(コ)ポリマーに存在する成分モノマーによる各(コ)ポリマー相について計算される。
【0018】
「ブルックフィールド粘度」に言及する場合、粘度が1,000,000〜10,000,000cPのコーティング用のT−バー型T−Fスピンドルを用いるブルックフィールドヘリパス(Brookfield Helipath)(商標)スタンドを備えるブルックフィールドRV DV−I粘度計で測定したコーティングの粘度を意味する。粘度が200,000〜1,000,000のコーティングについては、Tバー型T−Eスピンドルを用いることができる。両方の場合にスピンドルの回転速度は1rpmであり、スピンドルは測定を行う前に10秒間駆動させる。Brookfield Helipath(商標)スタンドは、高粘度材料の適切な測定を確実にするために、スピンドルは回転中にコーティング内に降下することが可能である。
【0019】
混合に用いられるエマルジョン(コ)ポリマー粒子の重量平均粒子直径は、Brookhaven BI−90パーティクルサイザーを用いて測定し、40ナノメートル〜1000ナノメートルであることができる。しかし、本明細書に参照により組み込まれている米国特許第4,384,056号および第4,539,361号に開示されたものなどの多モード粒子サイズ分布を用いることができる。
【0020】
「水性ポリマーバインダー」は、実質上溶媒を含まない水性の、水に分散したポリマーを意味する。好ましい実施形態において、音響減衰組成物は、処理組成物の固形分重量%基準で、9重量%〜50重量%、好ましくは20重量%〜45重量%、さらに好ましくは25重量%〜40重量%の量でバインダーを含む。「固形分重量%」はバインダー固形分重量を組成物中の総固形分で除し、100を乗じることを意味する。バインダーは、共重合されたペンダントリン系酸基として存在する0.03%〜3%のリンを含むコポリマーを含む。「ペンダントリン系酸基(pendant phosphorus acid group)」は、ポリマー主鎖に共有結合されたリン系酸基を意味する。ペンダントリン系酸基は、典型的に、リン系酸基を含む共重合可能なモノマーを使用することによって導入される。適切なバインダーは、例えば、公開番号2005/0222299の米国特許出願の方法に従って製造された、共重合単位として55重量%のブチルアクリレート、2.6重量%のホスホエチルメタクリレート、および42.4重量%のメチルメタクリレートを有するポリマーバインダーを含む。
【0021】
リン系酸(phosphorus acid)モノマーは少なくとも1のエチレン性不飽和およびリン系酸基を含む。リン系酸モノマーはリン系酸基の酸の形態またはリン系酸基の塩の形態であることができる。リン系酸モノマーの例は、以下のものを包含する:
【0022】
【化1】

【0023】
〔式中、Rはアクリルオキシ、メタクリルオキシ、またはビニル基を含む有機基であり;並びに、R’およびR’’は独立にHおよび第2有機基から選択される〕。第2有機基は飽和または不飽和であることができる。
【0024】
適切なリン系酸モノマーは、アルコール(ここで、アルコールは重合可能なビニルまたはオレフィン基も含み、例えば、アリルホスフェート、ビス(ヒドロキシ−メチル)フマレートまたはイタコネートのモノ−またはジホスフェートなど)の二水素リン酸エステルなどの二水素ホスフェート官能性モノマー、(メタ)アクリル酸エステルの誘導体、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどを含むヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのリンエステル類なども含む。他の適切なリン系酸モノマーは、国際公開第99/25780A1号に開示されたホスホネート官能性モノマーであり、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸、α−ホスホノスチレン、2−メチルアクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸を含む。さらに適切なリン系官能性モノマーは、米国特許第4,733,005号に開示された1,2−エチレン性不飽和(ヒドロキシ)ホスフィニルアルキル(メタ)アクリレートモノマーであり、(ヒドロキシ)ホスフィニルメチルメタクリレートを含む。好ましいリン系酸モノマーは二水素ホスフェートモノマーであり、2−ホスホエチル(メタ)アクリレート、2−ホスホプロピル(メタ)アクリレート、3−ホスホプロピル(メタ)アクリレート、および3−ホスホ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートを含む。
【0025】
本発明の一実施形態において、本発明のバインダーポリマーは最初にペンダント第1共反応性基を含む前駆体ポリマーを製造することにより製造され、第1共反応性基は第2共反応性基およびリン系酸基を含む化合物と反応することができる。前駆体ポリマー上の適切な第1共反応性基はヒドロキシル、エポキシ、アセトアセトキシ、およびイソシアネート基である。例えば、前駆体ポリマーは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシ(メタ)アクリレート、またはα,α−ジメチルメタイソプロペニルベンジルイソシアネートを用いて製造することができる。第2共反応性基およびリン系酸基を含む化合物上の適切な第2共反応性基は、アミン、ヒドロキシル、およびリン酸無水物である。あるいは、ヒドロキシル官能性前駆体ポリマーは、ポリリン酸と反応して内部ペンダントリン系酸基を有する有機ポリマーを生成することができる。エポキシ官能性前駆体ポリマーは、ポリリン酸またはグリホサートと反応して内部ペンダントリン系酸基を有する有機ポリマーを生成することができる。イソシアネートまたはアセトアセトキシ官能性前駆体ポリマーは、グリホサートなどのアミン官能性ホスホネートと反応して内部ペンダントリン系酸基を有する有機ポリマーを生成することができる。
【0026】
本発明の一実施形態において、バインダーコポリマーは共重合単位として少なくとも1種のエチレン性不飽和非イオン性モノマーを含むことができる。本明細書の「非イオン性モノマー」は共重合されたモノマー残基がpH1から14の間でイオン性電荷をもたないことを意味する。適切なエチレン性不飽和非イオン性モノマーは、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートを含む(メタ)アクリル酸エステルモノマー;(メタ)アクリロニトリル;(メタ)アクリルアミド;ウレイド官能性モノマー類;アセトアセテート官能性基を有するモノマー;スチレンおよび置換スチレン類;ブタジエン;エチレン、プロポイレン、1−デセンなどのα−オレフィン;ビニルアセテート、ビニルブチレート、および他のビニルエステル類;および塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのビニルモノマー類を含む。
【0027】
アミノ官能性モノマーを組み込むこともできる。
【0028】
本発明の異なる実施形態において、バインダーは、ポリマーの重量基準で、バインダーの乾燥重量基準で0〜5重量%の共重合されたエチレン性不飽和カルボン酸モノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、モノメチルイタコアート、モノメチルフマレート、モノブチルフマレート、および無水マレイン酸などを含むことができる。0〜2%の共重合されたエチレン性不飽和カルボン酸モノマーが好ましい。
【0029】
本発明のさらに他の実施形態において、バインダーは、バインダーの乾燥重量基準で0〜5%の共重合された多エチレン性不飽和モノマー、例えば、アリルメタクリレート、ジアリルフタレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,2−エチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、およびジビニルベンゼンなどを含むことができる。
【0030】
また、連鎖移動剤を用いて分子量を制御することができる。ゲル浸透クロマトグラフィーで測定して20,000を超える分子量を有することが好ましい。
【0031】
1方の成分が他方の存在下で重合され、より高いT(硬質)を有する他の成分に比べてより低いT(軟質)を有する1成分を有する、硬質−軟質ポリマー粒子とも呼ばれる2成分バインダーを製造するのに用いられる重合技術は当技術分野において周知である。硬質−軟質ポリマー粒子は典型的に多段階水性エマルジョン重合工程によって製造され、その工程では組成物中で異なる少なくとも2段階が逐次的な様式で重合される。硬質−軟質ポリマー粒子の製造に適した多段階重合技術は、例えば、米国特許第4,325,856号、第4,654,397号、および第4,814,373号に開示される。本発明に用いられる硬質−軟質ポリマーを製造する多段階重合方法において、軟質ポリマーまたは硬質ポリマーのいずれかが、第1ポリマー粒子の水中分散物として製造され、続いて、他のポリマー(それぞれ硬質ポリマーまたは軟質ポリマー)の重合が第1ポリマー粒子の存在下で行われて硬質−軟質粒子を与える。
【0032】
充填剤の例は、粉砕および沈降炭酸カルシウム、カオリン、焼成クレイ、剥離クレイ、構造化クレイ、二酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ウラストナイト、酸化亜鉛、酸化鉄、炭酸マグネシウム、非晶質シリカ、水酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、タルク、サテンホワイト、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、およびこれらの物質の組み合わせなどの鉱物充填剤を含むが、これに限定されない。本発明に有用な充填剤は、固体ビーズ、空隙有り、複数の空隙あり、バインダー被覆されたもの、装填されたもの、など、およびその組み合わせを含むが、限定されない様々な非融合(少なくとも使用温度で)ポリマー系プラスチック充填剤も含むことができる。好ましくは、本発明に用いられる充填剤は、炭酸カルシウムおよび/またはマイカを含むのが好ましい。炭酸カルシウムは様々な粒子サイズ、形状および形態の粉砕型(GCC)または沈降型(PCC)でありうる。
【0033】
本発明の剪断減粘組成物を製造するために様々な増粘剤を使用することができる:疎水性に改変されたアルカリ膨潤可能エマルジョン(「HASA」)、疎水性に改変されたエトキシ化ウレタン増粘剤(「HEUR」)、ヒドロキシエチルセルロース(「HEC」)。剪断減粘組成物の利点は、それをスプレーまたは押し出し(例えば)することによって材料に一旦剪断が加えられると、粘度が低下するので、そのようなやりかたで適用することができる点である。しかし、剪断を取り去ると粘度が非常に高くなり、材料は垂下せず、適用されるとその場所に留まる。好ましいHASA増粘剤はAcrysol(商標)TT−615であり、好ましいHEUR増粘剤はAcrysol(商標)RM−12Wであり、その両方ともRohm and Haas Company、Philadelphia,PAから入手可能である。
【0034】
任意選択的に、本発明の組成物はポリホスフェート化合物、または、式(I)もしくは(II)の化合物から選択される1種以上の化合物を含むことができる。
【0035】
【化2】

【0036】
式中、R1、R3、R6、R8は独立に水素またはアルキル基であり、R2、R4、R5、R7、R9およびR10は独立に水素、アルキル基、またはアンモニウムもしくは金属対イオンであり、あるいは、R5は任意選択的に他のエチレン性不飽和モノマーまたはダイマーと重合されるホスホエチルジメタクリレートの残基であり、和(m+n)、および和(q+r)のそれぞれは10〜600の整数であり、pは1〜10の整数であり、比m:n、および比q:rのそれぞれは0:100〜95:5である。
【0037】
式(I)または(II)のポリマー構造のいくつかは水溶性である。
【0038】
「ポリホスフェート化合物(単一種または複数種)」は、CottonらのAdvanced Inorganic Chemistry,A Comprehensive Text,Interscience Publishers(1972),397ページに記載された線状または環状ポリホスフェート(単一種または複数種)を意味する。
【0039】
好ましい化合物ポリホスフェートは、例えば、酸の形態またはアルカリ金属またはアンモニウム塩の:ピロホスフェート類、トリポリホスフェート類、メタホスフェート類、およびポリメタホスフェート類、例えば(NaPO、例えばナトリウムヘキサメタホスフェート(x=6)、またはxが6よりも大きい他の類似構造物などを含む。本発明の好ましい実施形態においてナトリウム塩が用いられる。
【0040】
リン含有アクリルポリマーバインダーの、ポリホスフェート化合物(単一種または複数種)(および/または式(I)もしくは(II)の化合物)に対する重量比は、好ましくは、1:0.001〜1:2の範囲であることができ、さらに好ましくは1:0.01〜1:0.5であり、最も好ましくは1:0.03〜1:0.3でありうる。
【0041】
本発明の組成物は従来の様式(例えば、ファンブレードオーバーヘッドミキサーを用いて)で任意の順序で一緒に混合することができる。組成物は、成分の混合に続いて、任意選択的に、真空下で脱気することができる。
【0042】
他に特に示されないかぎり全てのパーセントは重量パーセントである。
【実施例】
【0043】
実施例1:リン含有ポリマー粒子の水性分散物の製造
576gの脱イオン(DI)水、21.1gのドデシルベンゼンスルホネート界面活性剤(23重量%活性)、38.6gのエトキシ化モノアルキルスルホサクシネート界面活性剤(30重量%活性)、38.6gのアクリル酸、1255.3gのブチルアクリレート、154.8gのアクリロニトリル、425gのスチレン、および57.9gのホスホエチルメタクリレート(50%活性)を混合することによってモノマーエマルジョンを製造した。664gのDI水、12.6gのドデシルベンゼンスルホネート(23%)、1.44gの硫酸ナトリウム、0.4gの4−ヒドロキシTEMPO(5%活性)を含む、攪拌機と凝縮器を装備した5リットルの4首丸底フラスコに、87℃で、102.7gのモノマーエマルジョン、続いて32.4gのDI水に溶解した5.9gの過硫酸ナトリウムを装填し、追加の22.6gのDI水でフラスコを洗浄した。10分後、残りのモノマーエマルジョン、並びに203.4gのDI水中の5.9gの過硫酸ナトリウムおよび8.6gの水酸化ナトリウム(50%活性)の溶液、を3時間かけて別々にフラスコに加えた。添加の間、バッチの温度は87℃に保たれた。全ての添加を終了した時、容器はフラスコに15.2gのDI水でリンスされた。14.3gのt−ブチルヒドロペルオキシド(70%)およびDI水中の8.8gの重亜硫酸ナトリウムからなる、個別の触媒および活性剤装填物を、45℃にバッチを冷却しながら90分かけて3部分に加え、並びに253.9gのDI水中の42.6gの水酸化ナトリウム(50%)からなる中和剤溶液を同じ時間かけて加えた。バッチに8.1gのKathon LX溶液(1.4%活性)、および1.17gのDrewplus T−3200消泡剤を添加して終了した。実施例1の水性ポリマー分散物は49重量%の固形分を含み、7.6のpHを有した。この手順を用いて、ラテックス実施例1A(粒子サイズ約130nm)が製造された。
【0044】
実施例2A〜B:コーティング配合物および複合損失係数
以下の表に使用した材料は、Rohm and Haas Company,Philadelphia,PA製の市販製品として入手可能なPrimal 308 AF(スチレン−アクリレートバインダー);Cognisから得られるFoamaster Nopco NXZ;Rohm and Haas Companyから入手可能なTamol(商標)850分散剤およびUCD 1530E黒色着色剤;Omya,Incから入手可能なSnowhite 12(炭酸カルシウム);Asheville Mica Companyから入手可能なMica 325;および、Rohm and Haas Companyから入手可能なAcrysol(商標)TT−615増粘剤(疎水性に改変されたアルカリ膨潤性エマルジョン(HASE)である。これらの材料は以下のコーティング配合物を製造するために用いた。
【0045】
Oberst Bar試験についてのSAE J−1637試験方法の、さらなる他の試験使用を用いて、ASTM E−756試験方法に従って様々な温度での複合損失係数(「CLF」)計算を行った。実施例2Aおよび2Bについては、3.0kg/mの乾燥コーティング重量を適用した。実施例2C〜2Hについては、2.44kg/mの乾燥コーティング重量を適用した。湿式コーティング適用の後、バーを室温で10分間静置し、続いて、150℃のオーブン中で20分間バーを乾燥させた。冷却の後、バーはコ−ティングカバレッジについて測定され、上述のように試験された。示されるCLF値は3試験バー標本の平均を表す。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
実施例3:リン含有ポリマー粒子の水性分散物の製造
969gのブチルアクリレート、34gのホスホエチルメタクリレート、680gのメチルメタクリレート、17gのウレイドメタクリレート、477gのDI水、およびアンモニウムアルキルフェノキシポリエトキシスルファート界面活性剤の60重量%水性溶液18.7gを混合し、攪拌で乳化することによってモノマーエマルジョンを製造した。次に、アンモニウムアルキルフェノキシポリエトキシスルファート界面活性剤の60重量%水性溶液2.5gおよび1000gのDI水を機械的攪拌機を装備した5リットルの複数首フラスコに装填した。次いで、フラスコの内容物を窒素雰囲気下で85℃に加熱した。攪拌されたフラスコの内容物に92gのモノマーエマルジョン、続いて100gのDI水中のAPS2.6g、続いて100gのDI水中の炭酸ナトリウム1.7gを加えた。モノマーエマルジョンおよび100gのDI水中2.6gのAPSのコフィードの総添加時間は210分間であった。反応器の温度はモノマー混合物の添加の間を通して80℃〜85℃に保たれた。次に、60gのDI水を用いて反応器へのエマルジョン供給ラインをすすいだ。反応器の内容物を65℃に冷却した。次に、水性溶液中の6.6ppmの硫酸第一鉄、1gのt−ブチルヒドロペルオキシド、および0.5gのD−イソアスコルビン酸をフラスコに加えた。フラスコの内容物を水酸化アンモニウムでpH9.5に中和した。計算されたTは−5℃である。この手順を用いて、ラテックス実施例3が製造された。
【0049】
実施例4A〜B:コーティング配合物および複合損失係数
以下の表に用いた材料は実施例2において言及されたもの、およびヘキサメタホスフェートナトリウム(BK Giuilini,CA,USAから購入したCalgon−N)である。これらの材料を用いて以下のコーティング配合物を製造した。
【0050】
実施例4A〜B:コーティング配合物および複合損失係数
【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
実施例5:ポリマーの製造
5Lの4首丸底フラスコにパドル攪拌器、温度計、窒素入り口、還流凝縮器を装備した。961gのDI水をケトルに加え、窒素雰囲気下で84℃に加熱した。加熱されたケトル水に、2.2gの脂肪アルコールエーテルスルファートのナトリウム塩、138gのモノマー混合物3、および55gのDI水に溶解した5.5gの過硫酸アンモニウムを加えた。発熱の後、モノマー混合物3の残りを83℃の温度で、2.35gの過硫酸アンモニウムおよび10.4gの水酸化アンモニウム(88gのDI水中)と一緒にケトルに加えた(共供給溶液)。モノマー混合物3の添加を完了したとき、共供給溶液を継続しながらモノマー混合物4を反応器に加えた。モノマー混合物3とモノマー混合物4の総供給時間は90分間であった。供給を完了すると、バッチを85℃で30分間保持し、次いで10gの硫酸第一鉄溶液(水中0.15%)、1.5gのVersene溶液(水中1%)、40gの水に溶解した4gのt−ブチルヒドロペルオキシド(70%)の全部、および40gの水中に溶解した2.6gのイソアスコルビン酸の全部を加えた。水酸化アンモニウムを加えてpHを9.3に上げた。最終ラテックスは51.2%の固形分含有量および167nmの平均粒子サイズを有した。
【0054】
【表5】

【0055】
【表6】

【0056】
実施例6:ポリマーの製造
5Lの4首丸底フラスコにパドル攪拌器、温度計、窒素入り口、還流凝縮器を装備した。961gのDI水をケトルに加え、窒素雰囲気下で84℃に加熱した。加熱されたケトル水に、2.2gの脂肪アルコールエーテルスルファートのナトリウム塩、138gのモノマー混合物1、および55gのDI水に溶解した5.5gの過硫酸アンモニウムを加えた。発熱の後、モノマー混合物1の残りを83℃の温度で、2.35gの過硫酸アンモニウムおよび10.4gの水酸化アンモニウム(88gのDI水中)と一緒にケトルに加えた(共供給溶液)。モノマー混合物1の添加を完了したとき、共供給溶液を継続しながらモノマー混合物2を反応器に加えた。モノマー混合物1とモノマー混合物2についての総供給時間は90分間であった。供給を完了すると、バッチを85℃で30分間保持し、次いで10gの硫酸第一鉄溶液(水中0.15%)、1.5gのVersene溶液(水中1%)、40gの水に溶解した4gのt−ブチルヒドロペルオキシド(70%)の全部、40gの水中に溶解した2.6gのイソアスコルビン酸の全部を加えた。水酸化アンモニウムを加えてpHを9.8に上げた。最終ラテックスは51.3%の固形分含有量および169nmの平均粒子サイズを有した。
【0057】
【表7】

【0058】
【表8】

【0059】
実施例7:以下の表に用いられた材料は既に言及され、並びに実施例5および6で製造された物質である。これらの材料を用いて以下のコーティング配合物が製造された。
【0060】
様々な温度での複合損失係数(「CLF」)計算が、ASTM E−756試験方法に従って、1.6mm厚さのバー上で行われた。4.0kg/mの乾燥コーティング重量が、実施例7Aおよび7Bについては適用された。湿式コーティング適用の後、バーを室温で10分間静置し、続いて、150℃のオーブン中で20分間バーを乾燥させた。冷却の後、バーはコーティングカバレッジについて測定され、上述のように試験された。報告されるCLF値は3試験バー標本の平均を表す。
【0061】
【表9】

【0062】
【表10】

【0063】
本発明の組成物は自動車の1つ以上の部品に、空気圧縮機で駆動されるスプレーガンによってサイホンガンを用いて手動で適用することができ、または自動車産業における従来のものとしての分配ロボットを用いてロボットによって適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)共重合されたペンダントリン系酸基として存在する0.03%〜3%のリンを含み、−50℃〜80℃の計算Tを有する水性ポリマーバインダー;
(b)乾燥重量基準で、充填剤のポリマーに対する比が1:1〜10:1である充填剤;および
(c)剪断条件下にないとき、200,000〜10,000,000のブルックフィールド粘度を有する剪断減粘可能な組成物を得るのに充分な量の増粘剤:
を含む組成物であって、
組成物の体積固形分が約50%〜約75%である組成物。
【請求項2】
バインダーが−30℃〜50℃の計算Tを有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
バインダーが0℃〜30℃の計算Tを有し、および組成物が1,000,000〜3,000,000のブルックフィールド粘度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
バインダーが2成分を含み、第1成分が−50℃〜60℃の計算Tを有するコポリマーを含み、および第2成分が−30℃〜80℃の計算Tを有するコポリマーを含み、2成分間のTの差が少なくとも20℃である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
成分の1方が他方の存在下で重合される請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記成分が2種のポリマー分散物の混合物を含む請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
(a)共重合されたペンダントリン系酸基として存在する0.03%〜3%のリンを含み、−50℃〜80℃の計算Tを有する水性ポリマーバインダー;
(b)乾燥重量基準で、充填剤のポリマーに対する比が1:1〜10:1である充填剤;および
(c)剪断条件下にないとき、200,000〜10,000,000のブルックフィールド粘度を有する剪断減粘可能な組成物を得るのに充分な量の増粘剤:
を含む組成物であって、組成物の体積固形分が約50%〜約75%である組成物を、自動車の1以上の部品に適用することを含む自動車の振動を低減する方法。

【公開番号】特開2008−169382(P2008−169382A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−320665(P2007−320665)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】