説明

液肥の製造方法及び装置

【課題】アンモニアの悪臭が少なく、作物の根腐れや生育阻害等のない液肥を得る。
【解決手段】
有機性廃棄物から液肥を製造する方法において、有機性廃棄物を含む廃液をメタン醗酵処理するメタン発酵工程と、メタン醗酵後の廃液中のアンモニア性窒素を硝化細菌により亜硝酸性窒素又は硝酸性窒素に硝化する硝化工程と、硝化後の廃液を脱窒微生物により脱窒する脱窒工程と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃棄物から液肥を製造する方法及び装置に係り、特に、有機性廃棄物として家畜糞尿等の動物の排泄物、野菜屑、植物残渣、食品廃棄物等を用いて液肥を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
各種バイオマスや再生可能有機性源からのエネルギー回収技術に関する開発が多方面で進められており、畜産廃棄物やエタノール生産廃棄物からの水素発酵やメタン発酵が試みられている。これらの水素発酵、エタノール発酵やメタン発酵等の発酵廃液は液肥として農地(例えば、ソーイビーンズ畑や綿花畑)に散布されている。
【0003】
これらの発酵廃液は、通常、高濃度のアンモニアやBOD成分(有機物)を含有している。具体的には、アンモニア性窒素濃度としては1000〜3000mg/Lであり、BOD成分としては500〜4000mg/Lである。このアンモニアやBOD成分は、畜産廃棄物の発酵廃液の場合、畜産屎尿に含まれるアンモニアや固形排泄物に含まれる有機性窒素に起因するものである。また、バガスやキャッサバ等のエタノール発酵では窒素源が不足するため、多量の窒素を添加しており、これにより発酵廃液には多量のアンモニアが含まれている。
【0004】
このような従来の発酵廃液を液肥として農地に散布すると、アンモニアの悪臭が生じるという問題があった。また、液肥に含まれるBOD成分や窒素成分が過多であり、作物等の根腐れや生育阻害の原因になるという問題があった。
【0005】
これに対して、従来の液肥の製造方法としては、畜産廃棄物等の有機性廃棄物を嫌気状態でメタン醗酵させ、生成するガス成分を脱離して得られた廃液から養液栽培用液肥を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。そして、リン酸肥料等の他の肥料成分を添加することで、液肥として望ましい範囲に調整することが記載されている。
【0006】
特許文献2には、生ゴミ等の有機廃棄物を含有するスラリーから液肥を製造する方法において、液肥を加熱殺菌することで、安全な液肥を製造することが提案されている。
【0007】
特許文献3には、メタン醗酵を抑制し、液肥を大量に製造することが提案されている。
【0008】
特許文献4には、有機性廃棄物をメタン醗酵させた後の発酵残渣を、凝集剤を使わずに脱水し、脱水ろ液を膜分離処理することで固形分、細菌類、原虫のいない液肥を製造することが提案されている。これにより、ポリマー(凝集剤)を含有しない安全な液肥を提供できるとされている。
【特許文献1】特開2002−137979号公報
【特許文献2】特開2003−225636号公報
【特許文献3】特開2002−364999号公報
【特許文献4】特開2006−52096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の特許文献1〜4の方法は、いずれも液肥のアンモニアの悪臭を充分に抑制できるものではなかった。また、液肥に含まれるBOD成分も充分に低減されないため、依然として作物等の根腐れや生育阻害の原因になるという問題があった。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、発酵廃液を液肥として農地に散布してもアンモニアの悪臭が少なく、作物の根腐れや生育阻害等のない液肥の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、有機性廃棄物から液肥を製造する方法において、前記有機性廃棄物を含む廃液をメタン醗酵処理するメタン発酵工程と、前記メタン醗酵後の廃液中のアンモニア性窒素を硝化細菌により亜硝酸性窒素又は硝酸性窒素に硝化する硝化工程と、前記硝化後の廃液を脱窒微生物により脱窒する脱窒工程と、を備えたことを特徴とする液肥の製造方法を提供する。
【0012】
請求項1によれば、液肥の製造工程において、メタン醗酵後の廃液中のアンモニア性窒素を硝化細菌により亜硝酸性窒素又は硝酸性窒素に硝化する硝化工程と、硝化後の廃液を脱窒微生物により脱窒する脱窒工程とを備えるようにした。これにより、有機性廃棄物の廃液に含まれるアンモニア性窒素の一部が分解除去されるので、アンモニア臭を抑えることができる。また、メタン醗酵処理により液肥中のBOD成分を低減できる。したがって、水や薬剤等を添加しなくても、アンモニアの悪臭が少なく作物の根腐れや生育阻害等を生じることのない液肥を得ることができる。なお、脱窒微生物としては、従属栄養性の脱窒細菌や嫌気性アンモニア酸化細菌等が含まれる。
【0013】
請求項2は請求項1において、前記硝化工程は、前記硝化細菌であるアンモニア酸化細菌により前記アンモニア性窒素を亜硝酸性窒素に硝化する亜硝酸型硝化工程であるとともに、前記脱窒工程は、前記脱窒微生物である嫌気性アンモニア酸化細菌により前記アンモニア性窒素と前記亜硝酸性窒素とを除去する嫌気性アンモニア酸化工程であることを特徴とする。
【0014】
請求項2によれば、嫌気性アンモニア酸化細菌により高速脱窒ができるとともに基質として有機物を添加する必要がなく、液肥中のBOD成分を低く保つことができる。
【0015】
請求項3は請求項2において、前記嫌気性アンモニア酸化工程後の廃液中の硝酸性窒素を従属栄養性の脱窒細菌により除去する工程を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項3によれば、嫌気性アンモニア酸化反応によって微量の硝酸性窒素が生じるが、この硝酸性窒素を廃液中のBOD成分を基質として従属栄養性の脱窒細菌により除去できる。これにより、液肥中の全窒素濃度を所定値以下となるように調整できる。
【0017】
請求項4は請求項1〜3の何れか1項において、前記製造した液肥のアンモニア性窒素濃度を測定する工程と、該測定した結果に基づいて、前記液肥のアンモニア性窒素濃度が所定範囲となるように前記液肥に混合する前記メタン醗酵後の廃液量を制御する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項4によれば、例えば、液肥のアンモニア性窒素濃度が低くなり過ぎた場合でも、アンモニア性窒素を含むメタン醗酵後の廃液を添加することで、液肥中のアンモニア性窒素濃度が所定範囲となるように制御できる。
【0019】
請求項5は請求項1〜3の何れか1項において、前記製造した液肥のアンモニア性窒素濃度を測定する工程と、該測定した結果に基づいて、前記液肥のアンモニア性窒素濃度が所定範囲となるように前記硝化工程及び脱窒工程における廃液処理量を制御する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
請求項5によれば、硝化工程、脱窒工程におけるアンモニア性窒素除去量を調節することで、液肥中のアンモニア性窒素濃度が所定範囲となるように制御できる。
【0021】
請求項6は請求項4又は5において、前記液肥のアンモニア性窒素濃度を、冬場においては50〜100mg/Lとし、夏場においては50mg/L以下とすることを特徴とする。
【0022】
請求項6によれば、年間を通じて、アンモニア臭の少ない液肥を提供することができる。
【0023】
請求項7は請求項1〜6の何れか1項において、前記硝化工程及び(又は)前記脱窒工程における廃液中のコロイダル粒子状浮遊物質濃度を測定する工程と、該測定した結果に基づいて、前記廃液中のコロイダル粒子状浮遊物質濃度が所定範囲となるように前記コロイダル粒子状浮遊物質の供給量を制御する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0024】
請求項7によれば、硝化工程及び(又は)脱窒工程における廃液中のコロイダル粒子状浮遊物質濃度が所定範囲となるように制御できるので、硝化細菌等の分解活性を良好に維持できる。なお、コロイダル粒子状浮遊物質濃度は、例えば、MLSS計で測定できる。
【0025】
なお、コロイダル粒子状浮遊物質とは、廃液試料を蒸発乾固し、105〜110℃で2時間加熱乾燥して残留する物質をいい、メタン醗酵で有機物を発酵させたときに生じる分解残留物である。組成としては、メタン醗酵菌の代謝物と糖や蛋白質が結合した糖蛋白やリン蛋白などの有機化学物質、それらがキレート状に結合した高分子の有機化学物質などが含まれる。
【0026】
請求項8は請求項1〜7の何れか1項において、前記硝化細菌及び前記脱窒微生物は、高分子ゲル内に前記硝化細菌又は前記脱窒微生物が包括固定された包括固定化担体であることを特徴とする。
【0027】
請求項8によれば、硝化細菌及び脱窒微生物をそれぞれ高分子ゲル内に包括固定した包括固定化担体として使用する。これにより、硝化細菌や脱窒微生物を高分子ゲル内に安定に保持できるので、高い処理性能を得ることができる。
【0028】
請求項9は請求項8において、前記硝化工程及び(又は)前記脱窒工程における廃液中のコロイダル粒子状浮遊物質濃度を1000〜30000mg/Lとすることを特徴とする。
【0029】
請求項9によれば、コロイダル粒子状浮遊物質濃度を上記範囲とすることで、コロイダル粒子状浮遊物質中の生育促進物質の作用により、包括固定化担体内の硝化細菌や脱窒微生物の分解活性を高めることができる。
【0030】
本発明の請求項10は前記目的を達成するために、有機性廃棄物から液肥を製造する装置において、前記有機性廃棄物を含む廃液をメタン醗酵させるメタン醗酵槽と、前記メタン醗酵後の廃液中のアンモニア性窒素を硝化細菌により亜硝酸性窒素に硝化する亜硝酸型硝化槽と、前記硝化後の廃液中の亜硝酸性窒素とアンモニア性窒素とを嫌気性アンモニア酸化細菌により除去する嫌気性アンモニア酸化槽と、前記嫌気性アンモニア酸化後の廃液を液肥として貯留する液肥貯留槽と、を備えたことを特徴とする液肥の製造装置を提供する。
【0031】
なお、請求項10において、亜硝酸型硝化槽、嫌気性アンモニア酸化槽及び液肥貯留槽としては、タンク状のものに限定されることはなく、廃液又は液肥が溜められる構成であればよく、例えば、ラグーン等も含まれる。
【0032】
請求項11は請求項10において、前記液肥貯留槽と前記亜硝酸型硝化槽とを連通し、前記液肥貯留槽内の廃液を前記亜硝酸型硝化槽に導入する流路と、前記嫌気性アンモニア酸化槽と前記液肥貯留槽とを連通し、前記嫌気性アンモニア酸化槽において処理した廃液を前記液肥貯留槽に戻す流路と、を備えたことを特徴とする。
【0033】
請求項11によれば、液肥貯留槽内の液肥を、亜硝酸型硝化槽、嫌気性アンモニア酸化槽を介して循環することができ、アンモニア性窒素濃度を所定範囲に調整できる。
【0034】
請求項12は請求項10において、前記液肥のアンモニア性窒素濃度を測定する測定手段と、該測定手段における結果に基づいて、前記液肥のアンモニア性窒素濃度が所定範囲となるように前記液肥に混合する前記メタン醗酵後の廃液量を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0035】
請求項13は請求項10又は11において、前記液肥のアンモニア性窒素濃度を測定する測定手段と、該測定手段における結果に基づいて、前記液肥のアンモニア性窒素濃度が所定範囲となるように前記亜硝酸型硝化槽及び前記嫌気性アンモニア酸化槽における廃液処理量を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0036】
請求項13において、亜硝酸型硝化槽及び嫌気性アンモニア酸化槽における廃液処理量を制御する機構としては、例えば、亜硝酸酸化槽及び嫌気性アンモニア酸化槽に循環する廃液量をバルブ等で制御する機構、上記各槽における滞留時間等の処理条件を制御する機構が含まれる。
【0037】
請求項14は請求項10〜13の何れか1項において、前記亜硝酸型硝化槽及び(又は)前記嫌気性アンモニア酸化槽における廃液中のコロイダル粒子状浮遊物濃度を測定する測定手段と、該測定手段に基づいて、前記廃液中のコロイダル粒子状浮遊物濃度が所定範囲となるように前記亜硝酸型硝化槽及び(又は)前記嫌気性アンモニア酸化槽への前記コロイダル粒子状浮遊物の供給量を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0038】
なお、コロイダル粒子状浮遊物濃度を測定する測定手段としては、例えば、MLSS計を使用できる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、アンモニアの悪臭が少なく、作物の根腐れや生育阻害等のない液肥を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、添付図面に従って本発明に係る液肥の製造方法及び装置の好ましい実施の形態について説明する。
【0041】
まず、本発明に係る第1の実施形態について説明する。
【0042】
図1は、第1の実施形態における液肥の製造装置10の概略を説明する概略図である。
【0043】
図1に示すように、液肥の製造装置10は、上流側から順に、養豚屎尿(有機性廃棄物)等の有機物廃液(以下、単に「廃液」ともいう)をメタン醗酵するメタン醗酵槽12と、該メタン醗酵後の廃液中のアンモニアを亜硝酸に部分酸化する亜硝酸型硝化槽14と、該酸化後の廃液中のアンモニアと亜硝酸とを嫌気性アンモニア酸化により除去する嫌気性アンモニア酸化槽16と、亜硝酸型硝化槽14及び嫌気性アンモニア酸化槽16においてアンモニア性窒素濃度を低減した廃液を液肥として貯留する液肥貯留槽18と、を備えている。
【0044】
有機物廃液は、必要に応じて固液分離された後、メタン醗酵槽12に導入される。メタン醗酵槽12内には、嫌気性微生物(例えば、メタン生成菌)が充填されており、メタン醗酵により廃液に含まれるBOD成分がメタンと二酸化炭素とに分解される。これにより、廃液中の大部分のBOD成分が低減される。なお、メタン醗酵で生成したメタンは、図示しない排出配管から回収される。
【0045】
メタン醗酵槽12における滞留時間は、通常、10〜15日程度とすることが好ましい。メタン醗酵槽12の有機物負荷(CODcr負荷)は、3〜9kg/m/日とし、温度は30〜35℃の条件とすることが好ましい。
【0046】
亜硝酸型硝化槽14はメタン醗酵槽12の下流側に設けられ、メタン醗酵槽12から排出される廃液が導入される。亜硝酸型硝化槽14には、硝化細菌が投入されており、好気性雰囲気下で廃液中のアンモニア性窒素の約60〜70%が亜硝酸性窒素に部分酸化される(亜硝酸型硝化)。このアンモニア性窒素の部分酸化を制御する方法としては、例えば、加熱することにより、硝化細菌に含まれるアンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌のうち亜硝酸酸化細菌の活性を低下させてアンモニア酸化細菌を優勢にする方法、亜硝酸型硝化槽14における曝気量(廃液中の溶存酸素濃度)や滞留時間を低減する方法、等が挙げられる。
【0047】
亜硝酸型硝化槽14における滞留時間は、12〜24時間とすることが好ましい。亜硝酸型硝化槽14の窒素容積負荷は、2〜4kg/m/日とし、温度は20〜30℃の条件とすることが好ましい。
【0048】
嫌気性アンモニア酸化槽16には、亜硝酸型硝化槽14における亜硝酸型硝化で、アンモニア性窒素が酸化されて生成する亜硝酸性窒素と残留するアンモニア性窒素とを含む廃液が導入される。そして、アンモニア性窒素を電子供与体とし、亜硝酸性窒素を電子受容体とする嫌気性アンモニア酸化細菌による生物脱窒が行われると共に(下記式1参照)、アンモニア性窒素濃度が一定レベルまで低減される。
【0049】
NH+1.32NO+0.066HCO+0.13H
→1.02N+0.26NO+0.066CH0.50.15+2.03H
…(式1)
嫌気性アンモニア酸化槽16に導入される廃液のアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素の割合は、モル比でアンモニア性窒素1に対して亜硝酸性窒素1〜1.5とするのが好ましいが、亜硝酸性窒素の蓄積を抑制する上でアンモニア性窒素をやや過剰にするのがより好ましい。
【0050】
嫌気性アンモニア酸化槽16における脱窒条件としては、例えば、嫌気性アンモニア酸化槽16内の廃液の温度が30〜35℃、DO濃度が0.1mg/L以下、窒素容積負荷が2〜10kg−N/m/日の範囲とするのが好ましい。
【0051】
液肥貯留槽18は、嫌気性アンモニア酸化槽16の下流側に設けられており、嫌気性アンモニア酸化槽16で脱窒後の廃液が導入される。この廃液中には嫌気性アンモニア酸化槽16内の反応により生成した硝酸が含まれるが、この硝酸は、液肥貯留槽18内の廃液のBOD成分を基質として、従属栄養性の脱窒細菌により除去される。なお、従属栄養性の脱窒細菌は液肥貯留槽18に投入してもよいが、廃液中にも従属栄養性の脱窒細菌が含まれているため、必ずしも投入する必要はない。
【0052】
このように、メタン醗酵後の廃液は、亜硝酸型硝化槽14及び嫌気性アンモニア酸化槽16で脱窒処理することによりアンモニア性窒素濃度が低減された後、液肥として、例えばポンプ19等により農地に散布される。
【0053】
亜硝酸型硝化槽14、嫌気性アンモニア酸化槽16において、硝化細菌又は嫌気性アンモニア酸化細菌の保持形態としては、特に限定はなく、例えば、付着材料に菌を付着させた付着担体(生物膜を含む)、菌を高分子ゲル内に包括固定させた包括固定化担体等が使用できる。中でも、各槽内への硝化細菌又は嫌気性アンモニア酸化細菌を安定に保持でき且つ高活性を示す上で、包括固定化担体を用いることが好ましい。
【0054】
包括固定化担体は、例えば、微生物と固定化材料(モノマ、プレポリマ等の高分子ゲル化材料)を混合した混合液を重合して、含水ゲル内部に微生物を包括固定化することにより製造できる。重合条件としては、重合温度は15〜40℃、好ましくは20〜30℃で、重合時間は1〜60分である。
【0055】
モノマー材料としてはアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、トリアクリルフォルマールなどがよい。プレポリマ材料としてはポリエチレングリコールジアクリレートやポリエチレングリコールメタアクリレートがよく、その誘導体を用いることができる。包括固定化担体の形状としては、球状や筒状等の包括担体、ひも状包括担体など凹凸が多いものが、接触効率がよく反応速度が向上するので好ましい。担体の大きさは、接触効率の観点から、球相当で0.5〜10cmとすることが好ましい。
【0056】
本発明では、液肥としての組成を満たす範囲でアンモニア臭を少なくするために、アンモニア性窒素濃度を低減する。具体的には、液肥のアンモニア性窒素濃度は、冬場においては50〜100mg/Lとし、夏場においては50mg/L以下とし、全窒素含有量として1000mg/L以下とすることが好ましい。さらに、液肥を農地に散布したときの根腐れや生育阻害を防止する上で、液肥に含まれるBOD成分を500mg/L以下とすることが好ましい。
【0057】
また、亜硝酸型硝化槽14及び嫌気性アンモニア酸化槽16におけるアンモニア性窒素の分解活性が、有機物スラリーに含まれるコロイダル粒子状浮遊物質濃度によって異なる。これを利用して、亜硝酸型硝化槽14及び嫌気性アンモニア酸化槽16における分解効率を向上させるようにする。
【0058】
なお、コロイダル粒子状浮遊物質とは、廃液試料を蒸発乾固し、105〜110℃で2時間加熱乾燥して残留する物質をいう。具体的には、メタン醗酵で有機物を発酵させたときに生じる分解残留物であり、組成としては、メタン醗酵菌の代謝物と糖や蛋白質が結合した糖蛋白やリン蛋白などの有機化学物質、それらがキレート状に結合した高分子の有機化学物質などが含まれている。
【0059】
以下、液肥のアンモニア性窒素濃度、コロイダル粒子状浮遊物質濃度を制御する機構について説明する。
【0060】
液肥のアンモニア性窒素濃度の制御機構としては、液肥貯留槽18にはメタン醗酵後のアンモニア性窒素を含む廃液を液肥貯留槽18内に導入する導入配管20が接続されている。そして、液肥貯留槽18において液肥のアンモニア性窒素濃度を測定する濃度計22と、該濃度計22における測定結果に基づき、導入配管20から導入する廃液の量をバルブ24の開度を制御する制御部26と、が設けられている。
【0061】
これにより、例えば、濃度計22により、液肥に含まれるアンモニア性窒素濃度が低すぎるのを検知すると、バルブ24を開き、アンモニア性窒素を含む廃液を液肥貯留槽18内に導入する。一方、アンモニア性窒素濃度が高すぎるのを検知すると、亜硝酸型硝化槽14及び嫌気性アンモニア酸化槽16における処理条件(滞留時間、微生物の充填量など)を調整し、アンモニア性窒素濃度を上記範囲となるように制御する。
【0062】
濃度計22としては、例えば、公知の窒素濃度計が使用できるが、液肥に含まれるアンモニア性窒素濃度が測定できるものであればいずれでもよい。
【0063】
コロイダル粒子状浮遊物質濃度を制御する機構としては、亜硝酸型硝化槽14には液肥貯留槽18からコロイダル粒子状浮遊物質を含む液肥を戻す返送配管34が接続されており、返送量を調整するバルブ32が設けられている。そして、亜硝酸型硝化槽14において液肥のコロイダル粒子状浮遊物質濃度を測定する濃度計36と、該濃度計36における測定結果に基づき、液肥貯留槽18から返送するコロイダル粒子状浮遊物質を含む液肥の流量をバルブ32の開度により制御する制御部38と、が設けられている。
【0064】
また、亜硝酸型硝化槽14には、希釈水を添加するための添加配管40が接続されており、上記希釈水の供給量を調整するバルブ42が設けられている。バルブ42は、濃度計36における測定結果に基づき、制御部38により亜硝酸型硝化槽14における廃液中のコロイダル粒子状浮遊物質濃度を所定範囲に調整するように制御される。
【0065】
これにより、例えば、濃度計36により廃液中のコロイダル粒子状浮遊物質濃度が低すぎるのを検知すると、返送配管34のバルブ32の開度を大きくし、返送するコロイダル粒子状浮遊物質量を増加させる。これとは逆に、濃度計36によりコロイダル粒子状浮遊物質濃度が高すぎるのを検知すると、添加配管40のバルブ42を開き、亜硝酸型硝化槽14に希釈水を添加する。
【0066】
亜硝酸型硝化槽14及び嫌気性アンモニア酸化槽16において、コロイダル粒子状浮遊物質濃度は、包括固定化担体を用いる場合は1000〜30000mg/Lの範囲にすることが好ましく、1000〜10000mg/Lの範囲にすることがより好ましい。なお、付着担体を用いる場合は、1000mg/L以下にすることが好ましく、700mg/L以下にすることがより好ましい。
【0067】
コロイダル粒子状浮遊物質濃度を測定する濃度計36としては、特に限定はないが、例えば、MLSS計を使用することができる。この場合、コロイダル粒子状浮遊物質濃度とMLSS濃度との関係を検量しておくことで、コロイダル粒子状浮遊物質濃度を把握する。
【0068】
このように、本実施の形態によれば、冬場においては50〜100mg/Lとし、夏場においては50mg/L以下とし、全窒素含有量として1000mg/L以下とするように制御することができる。また、嫌気性アンモニア酸化反応による高速脱窒では有機物を添加する必要がないので、BOD成分を500mg/L以下と低く保つことができる。これにより、液肥としての用途を満たす範囲でアンモニア臭を低減することができると共に、液肥を農地に散布したときの根腐れや生育阻害を防止できる。また、液肥を水で薄める、或いは凝集剤等の薬剤を使用する場合とは異なり、水や薬剤の使用によるランニングコストの上昇や設備の大型化を伴うこともない。
【0069】
次に、本発明に係る第2の実施形態について説明する。
【0070】
図2は、第2の実施形態における液肥の製造装置10’の概略を説明する概略図である。なお、図2において、図1と同一の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0071】
図2に示すように、液肥の製造装置10’は、主に、亜硝酸型硝化槽14及び嫌気性アンモニア酸化槽16を、メタン醗酵槽12と液肥貯留槽18との間に直列に配置せず、液肥貯留槽18の液肥を亜硝酸型硝化槽14及び嫌気性アンモニア酸化槽16に循環できるように配置した以外は、図1と同様に構成されている。
【0072】
図2に示すように、液肥の製造装置10’では、メタン醗酵槽12のすぐ下流側に液肥貯留槽18が設けられ、メタン醗酵後の廃液を液肥貯留槽18に直接導入できるように構成されている。
【0073】
液肥貯留槽18は、導入配管44を介して亜硝酸型硝化槽14と接続されており、嫌気性アンモニア酸化槽16は、戻し配管46を介して液肥貯留槽18と接続されている。これにより、液肥貯留槽18から導入配管44を介して導入された液肥は、亜硝酸型硝化槽14において部分酸化された後、嫌気性アンモニア酸化槽16において脱窒される。そして、亜硝酸型硝化槽14、嫌気性アンモニア酸化槽16においてアンモニア性窒素が低減された液肥は、戻し配管46を介して液肥貯留槽18に戻される。
【0074】
本実施の形態では、液肥貯留槽18において液肥のアンモニア性窒素濃度を濃度計22により測定すると、該測定結果に基づき、導入配管44のバルブ48の開度を制御する。このように、亜硝酸型硝化槽14及び嫌気性アンモニア酸化槽16を介して循環する液肥量を制御することで、液肥のアンモニア性窒素濃度を所定範囲に調整することができる。なお、アンモニア性窒素濃度の調整方法としては、図2の態様に限定されず、例えば、循環する液肥量を一定とし、亜硝酸型硝化槽14、嫌気性アンモニア酸化槽16における処理条件(滞留時間、微生物の充填率など)を調整する方法でもよい。
【0075】
このように、本実施の形態によれば、メタン醗酵後の廃液のうち必要な分を亜硝酸型硝化槽14、嫌気性アンモニア酸化槽16に循環させることで、アンモニア性窒素濃度を調整する。これにより、アンモニア性窒素濃度が低下し過ぎるのを抑制し、所定範囲に安定に調整することができる。
【0076】
以上、本発明に係る液肥の製造装置及び方法の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
【0077】
たとえば、上記実施の形態では、脱窒微生物として嫌気性アンモニア酸化細菌を用いた嫌気性アンモニア酸化槽16の例で説明したが、これに限定されず、例えば、従属栄養性の脱窒細菌を用いた脱窒槽でもよい。
【0078】
上記実施の形態では、亜硝酸型硝化槽14においてアンモニア性窒素を部分酸化する割合を調整することで、アンモニア性窒素:亜硝酸性窒素がほぼ1:1となるようにしたが、これに限定されず、例えば、亜硝酸型硝化槽14内で100%亜硝酸に部分酸化したものと硝化前の廃液とをほぼ同量ずつ混合してもよい。
【0079】
また、亜硝酸型硝化槽14、嫌気性アンモニア酸化槽16及び液肥貯留槽18は、いずれもタンク状の設備に限定されることはなく、例えば、ラグーン等のため池などを水路で接続するようにしてもよい。
【0080】
また、上記実施の形態では、養豚屎尿から液肥を製造する例を示したが、本発明はこれに限定されず、野菜屑、植物残渣、食品廃棄物等の有機性廃棄物から液肥を製造する際にも適用できる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例と比較例を挙げて本発明の特徴を更に具体的に説明するが、本発明は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0082】
(実施例1−1)
まず、硝化細菌の硝化速度及び嫌気性アンモニア酸化細菌の脱窒速度の液肥に含まれるコロイダル粒子状浮遊物質濃度による影響について検討した。さらに、硝化細菌、嫌気性アンモニア酸化細菌の保持形態による硝化速度、脱窒速度への影響について検討した。
【0083】
菌液としては、硝化細菌を含有する硝化細菌含有汚泥及び嫌気性アンモニア酸化細菌を含有する嫌気性アンモニア酸化細菌群汚泥を用いた。
【0084】
それぞれの菌液をウレタンアクリレートプレポリマー液に懸濁し、過硫酸カリウムとNNN’N’テトラジメチルアミンを添加することにより、重合温度10℃、重合時間5分で重合し、菌を包括固定したゲルを作製した。それぞれの添加量は次のとおりである。
【0085】
(ゲル化液の組成)
菌培養液 20質量%
硝化細菌培養液における硝化細菌の菌数:2×10cells/ml
嫌気性アンモニア酸化細菌培養液における嫌気性アンモニア酸化細菌の菌数:
4×10cells/ml
ウレタンアクリレートプレポリマー 15質量%
滅菌水 64.25質量%
NNN’N’テトラジメチルアミン 0.5質量%
過硫酸カリウム 0.25質量%
上記のゲルを3mm球に成形し、それぞれの包括固定化担体を得た。
【0086】
得られた包括固定化担体を、500mLジャーファメンタにそれぞれ充填率20%となるように投入した。さらに、硝化細菌用培地又は嫌気性アンモニア酸化細菌用培地をそれぞれのジャーファメンタに注ぎ、包括固定化担体を馴養した。硝化細菌用培地としては、アンモニア性窒素1000mg/Lを含有する無機培地を使用し、嫌気性アンモニア酸化細菌用培地としては、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを約500mg/Lずつ含有する無機合成培地を使用した。馴養は、水温30℃、滞留時間12時間とし、65日間行った。
【0087】
馴養後の包括固定化担体を、それぞれビーカに投入し、硝化速度、脱窒速度を測定した。なお、硝化細菌の包括固定化担体を投入したビーカAには、アンモニア性窒素1000mg/Lを含有する有機物スラリーを投入した。また、嫌気性アンモニア酸化細菌の包括固定化担体を投入したビーカBには、上記有機物スラリーを部分酸化してアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを約500mg/Lずつ含有する有機物スラリーを投入した。ビーカA、Bにおける接触は回分で行い、処理水質の経時変化から処理速度を求めた。
【0088】
なお、コロイダル粒子状浮遊物質は、遠心分離することで各コロイダル粒子状浮遊物質濃度となるようにし、各条件での硝化速度、脱窒速度について測定した。なお、硝化速度、脱窒速度は、それぞれ有機物スラリーのアンモニア性窒素、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素の濃度変化を窒素濃度計により測定することにより求めた。この結果を図3及び図4に示す。
【0089】
(実施例1−2)
硝化細菌、嫌気性アンモニア酸化細菌を包括固定化担体としてではなく、ポリプロピレン付着担体に付着させた付着担体として亜硝酸型硝化槽14、嫌気性アンモニア酸化槽16に投入した以外は実施例1−1と同様にした。この結果を図3及び図4に示す。
【0090】
図3及び図4に示すように、硝化速度、脱窒速度は、いずれもコロイダル粒子状浮遊物質濃度によって影響を受けると同時に、菌の保持形態によって異なる傾向が得られることがわかった。すなわち、包括固定化担体を用いた実施例1−1では、コロイダル粒子状浮遊物濃度の上昇に伴い硝化速度、脱窒速度ともに向上した。具体的には、コロイダル粒子状浮遊物濃度が1000〜30000mg/Lの範囲で高くなり、1000〜10000mg/Lで安定して高いことがわかった。
【0091】
一方、付着担体を用いた実施例1−2では、コロイダル粒子状浮遊物濃度の上昇に伴い硝化速度、脱窒速度ともに低下した。このため、付着担体は、コロイダル粒子状浮遊物濃度が700mg/L以下の範囲で使用することが好ましいことがわかった。
【0092】
これらの結果については、以下のように考えることができる。すなわち、付着担体では、コロイダル粒子状浮遊物中の菌が付着担体上の硝化細菌又は嫌気性アンモニア酸化細菌と直接触れて付着し易い。このため、硝化細菌又は嫌気性アンモニア酸化細菌に廃液中の基質が行き渡らなくなり、分解活性を示さなくなる。
【0093】
一方、包括固定化担体では、含水ゲル内に上記硝化細菌又は嫌気性アンモニア酸化細菌が包括固定されているため、コロイダル粒子状浮遊物中の菌が直接付着することがない。また、包括固定化担体同士が触れ合う際の摩擦により、包括固定化担体の周面にコロイダル粒子状浮遊物中の菌が付着し難い。さらに、コロイダル粒子状浮遊物には、上記硝化細菌又は嫌気性アンモニア酸化細菌の活性を促進する生育促進物質が含まれており、これにより、特にコロイダル粒子状浮遊物が1000〜30000mg/Lにおいて、包括固定化担体内の硝化細菌、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性が高められたものと推測される。或いは、コロイダル粒子状浮遊物質中に含まれるメタン醗酵菌が硝化細菌や嫌気性アンモニア酸化細菌の生育促進に関与していることも考えられる。
【0094】
以上より、包括固定化担体を用いる場合は、廃液中のコロイダル粒子状浮遊物濃度が1000〜30000mg/Lの範囲にすることが好ましく、1000〜10000mg/Lの範囲にすることがより好ましいことがわかった。また、付着担体を用いる場合は、廃液中のコロイダル粒子状浮遊物濃度が700mg/Lがより好ましく、500mg/以下が更に好ましいことがわかった。
【0095】
(実施例2−1)
図1に示す液肥の製造装置10を用いて、養豚屎尿2〜3%固形分を含有する有機物スラリー(T−N濃度:1200〜2400mg/L)から液肥を製造した。
【0096】
亜硝酸型硝化槽14、嫌気性アンモニア酸化槽16には、それぞれ硝化細菌、嫌気性アンモニア酸化細菌の包括固定化担体(上記実施例1−1と同じもの)を使用した。なお、亜硝酸型硝化槽14においては、充填率20%とし、嫌気性アンモニア酸化槽16においては充填率20%とした。
【0097】
各槽の運転条件としては、メタン醗酵槽12の有機物負荷は6kg−VSS/m/日とし、亜硝酸型硝化槽14の窒素容積負荷は3kg−N/m/日とし、嫌気性アンモニア酸化槽16の窒素容積負荷は4kg−N/m/日とした。
【0098】
メタン醗酵槽12において処理した廃液中のアンモニア性窒素濃度は1000〜2000mg/Lであった。また、亜硝酸型硝化槽14におけるコロイダル粒子状浮遊物質濃度は、800〜35000mg/Lの範囲となるように制御した。
【0099】
そして、温度30℃で連続運転し、運転開始から約3ヶ月間後の液肥貯留槽18内の液肥の水質を分析した。この結果を表1に示す。
(実施例2−2)
それぞれ硝化細菌、嫌気性アンモニア酸化細菌として、包括固定化担体の代わりに付着担体(ポリプロピレン付着担体に菌を付着させたもの)を使用した以外は、実施例2−1と同様にした。この結果を表1に示す。
(比較例2)
これに対して、亜硝酸型硝化槽14、嫌気性アンモニア酸化槽16における処理を行わず、メタン醗酵後、液肥貯留槽18において貯留しただけの場合を比較例2とした。この結果を表1に示す。
【0100】
【表1】

【0101】
表1に示すように、本発明に係る液肥の製造方法を適用した実施例2−1、2−2では、アンモニア性窒素濃度を初め、全窒素濃度、BOD成分ともに低減できた。特に、包括固定化担体を用いた実施例2−1では、最終的に得られる液肥のアンモニア性窒素濃度は50mg/L以下と低く、アンモニア臭はほとんどなかった。
【0102】
これに対して、比較例2では、液肥中のアンモニア性窒素濃度は極めて高く、アンモニア臭も強かった。また、液肥中のBOD成分も、実施例2−1、2−2と比較して高いことがわかった。
【0103】
(実施例3−1)
次に、図2に示す液肥の製造装置10を用いて、養豚屎尿2〜3%固形分を含有する有機物スラリー(T−N濃度:1200〜2400mg/L)から液肥を製造した。
【0104】
メタン醗酵槽12で処理した廃液を液肥貯留槽18に貯留し、亜硝酸型硝化槽14において滞留時間6時間で部分酸化し、嫌気性アンモニア酸化槽16において滞留時間12時間で脱窒した。
【0105】
メタン醗酵槽12で処理した廃液中のアンモニア性窒素濃度は1000〜2000mg/Lであった。また、亜硝酸型硝化槽14におけるコロイダル粒子状浮遊物質濃度は、800〜35000mg/Lの範囲に制御した。その他の運転条件は、実施例2−1と同様とした。そして、運転開始から約3ヶ月間後の液肥貯留槽18内の液肥の水質を分析した。この結果を表2に示す。
【0106】
(実施例3−2)
それぞれ硝化細菌、嫌気性アンモニア酸化細菌として、包括固定化担体の代わりに付着担体(ポリプロピレン付着担体に菌を付着させたもの)を使用した以外は、実施例3−1と同様にした。この結果を表2に示す。
【0107】
【表2】

【0108】
表2に示すように、実施例3−1、3−2では、それぞれ実施例2−1、2−2よりも更に液肥のアンモニア性窒素を含む全窒素濃度、BOD成分ともに低減できることがわかった。特に、包括固定化担体を用いた実施例3−1では、液肥のアンモニア性窒素濃度が40mg/L以下、BOD成分が500mg/L未満まで低減できることがわかった。
【0109】
(実施例4)
亜硝酸型硝化槽14におけるコロイダル粒子状浮遊物質濃度を1000〜30000mg/Lの範囲に制御した以外は、実施例2−1と同様にした。
【0110】
この結果、亜硝酸型硝化槽14及び嫌気性アンモニア酸化槽16における全体としての脱窒速度は、制御を行わなかった場合と比較して約30%向上することがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】第1の実施形態における液肥の製造装置10の概略を説明する概略図である。
【図2】第2の実施形態における液肥の製造装置10’の概略を説明する概略図である。
【図3】本実施例における結果を示すグラフ図である。
【図4】本実施例における結果を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0112】
10、10’…液肥の製造装置、12…メタン醗酵槽、14…亜硝酸型硝化槽、16…嫌気性アンモニア酸化槽、18…液肥貯留槽、20、44…導入配管、22、36…濃度計、24、32、42、48…バルブ、26、38…制御部、34…返送配管、40…添加配管、46…戻し配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物から液肥を製造する方法において、
前記有機性廃棄物を含む廃液をメタン醗酵処理するメタン発酵工程と、
前記メタン醗酵後の廃液中のアンモニア性窒素を硝化細菌により亜硝酸性窒素又は硝酸性窒素に硝化する硝化工程と、
前記硝化後の廃液を脱窒微生物により脱窒する脱窒工程と、
を備えたことを特徴とする液肥の製造方法。
【請求項2】
前記硝化工程は、前記硝化細菌であるアンモニア酸化細菌により前記アンモニア性窒素を亜硝酸性窒素に硝化する亜硝酸型硝化工程であるとともに、
前記脱窒工程は、前記脱窒微生物である嫌気性アンモニア酸化細菌により前記アンモニア性窒素と前記亜硝酸性窒素とを除去する嫌気性アンモニア酸化工程であることを特徴とする請求項1に記載の液肥の製造方法。
【請求項3】
前記嫌気性アンモニア酸化後の廃液中の硝酸性窒素を従属栄養性の脱窒細菌により除去することを特徴とする請求項2に記載の液肥の製造方法。
【請求項4】
前記製造した液肥のアンモニア性窒素濃度を測定する工程と、
該測定した結果に基づいて、前記液肥のアンモニア性窒素濃度が所定範囲となるように前記液肥に混合する前記メタン醗酵後の廃液量を制御する工程と、
を備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の液肥の製造方法。
【請求項5】
前記製造した液肥のアンモニア性窒素濃度を測定する工程と、
該測定した結果に基づいて、前記液肥のアンモニア性窒素濃度が所定範囲となるように前記硝化工程及び脱窒工程における廃液処理量を制御する工程と、
を備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の液肥の製造方法。
【請求項6】
前記液肥のアンモニア性窒素濃度を、冬場においては50〜100mg/Lとし、夏場においては50mg/L以下とすることを特徴とする請求項4又は5に記載の液肥の製造方法。
【請求項7】
前記硝化工程及び(又は)前記脱窒工程における廃液中のコロイダル粒子状浮遊物質濃度を測定する工程と、
該測定した結果に基づいて、前記廃液中のコロイダル粒子状浮遊物質濃度が所定範囲となるように前記コロイダル粒子状浮遊物質の供給量を制御する工程と、
を備えたことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の液肥の製造方法。
【請求項8】
前記硝化細菌及び前記脱窒微生物は、高分子ゲル内に前記硝化細菌又は前記脱窒微生物が包括固定された包括固定化担体であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の液肥の製造方法。
【請求項9】
前記硝化工程及び(又は)前記脱窒工程における廃液中のコロイダル粒子状浮遊物質濃度を1000〜30000mg/Lとすることを特徴とする請求項8に記載の液肥の製造方法。
【請求項10】
有機性廃棄物から液肥を製造する装置において、
前記有機性廃棄物を含む廃液をメタン醗酵させるメタン醗酵槽と、
前記メタン醗酵後の廃液中のアンモニア性窒素を硝化細菌により亜硝酸性窒素に硝化する亜硝酸型硝化槽と、
前記硝化後の廃液中の亜硝酸性窒素とアンモニア性窒素とを嫌気性アンモニア酸化細菌により除去する嫌気性アンモニア酸化槽と、
前記嫌気性アンモニア酸化後の廃液を液肥として貯留する液肥貯留槽と、
を備えたことを特徴とする液肥の製造装置。
【請求項11】
前記液肥貯留槽と前記亜硝酸型硝化槽とを連通し、前記液肥貯留槽内の廃液を前記亜硝酸型硝化槽に導入する流路と、
前記嫌気性アンモニア酸化槽と前記液肥貯留槽とを連通し、前記嫌気性アンモニア酸化槽において処理した廃液を前記液肥貯留槽に戻す流路と、
を備えたことを特徴とする請求項10に記載の液肥の製造装置。
【請求項12】
前記製造した液肥のアンモニア性窒素濃度を測定する測定手段と、
該測定手段における結果に基づいて、前記液肥のアンモニア性窒素濃度が所定範囲となるように前記液肥に混合する前記メタン醗酵後の廃液量を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項10に記載の液肥の製造装置。
【請求項13】
前記製造した液肥のアンモニア性窒素濃度を測定する測定手段と、
該測定手段における結果に基づいて、前記液肥のアンモニア性窒素濃度が所定範囲となるように前記亜硝酸型硝化槽及び前記嫌気性アンモニア酸化槽における廃液処理量を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項10又は11に記載の液肥の製造装置。
【請求項14】
前記亜硝酸型硝化槽及び(又は)前記嫌気性アンモニア酸化槽における廃液中のコロイダル粒子状浮遊物濃度を測定する測定手段と、
該測定手段に基づいて、前記廃液中のコロイダル粒子状浮遊物濃度が所定範囲となるように前記亜硝酸型硝化槽及び(又は)前記嫌気性アンモニア酸化槽への前記コロイダル粒子状浮遊物の供給量を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項10〜13に記載の液肥の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−23890(P2009−23890A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190830(P2007−190830)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】