説明

液面レベルセンサ

【課題】液面の揺動に対するフロートの追従性を低下させることで、アームの回転支持部分の摺動を抑えて摩耗を減らすことのできる液面レベルセンサを提供する。
【解決手段】フロート2の外形を形成する該フロート2の外面の、該フロート2が液面Eに浮かんでいる際の液体に接触する箇所に、該フロート2の内部に向かって窪む穴3が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の燃料タンクなどの液面レベルを検知する液面レベルセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の液面レベルセンサとして、基端が回動自在に支持されたアームと、アームの先端に固定され、測定すべき液面に浮かんで液面の変位に応じて上下動するフロートと、アームの回動変位に応じた電気出力を発生する検出手段と、を具備する液面レベルセンサが、特許文献1などにおいて知られている。
【特許文献1】特開2005−321263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、自動車の燃料タンク内の燃料は、走行中に常に短い周期で揺動(波打ち)しており、液面に浮かぶフロートも揺動によって生じる鉛直方向の荷重(揺動荷重と称する)が作用して、液面に追従して揺動する。従って、アームの基端を回転自在に支持している部分が、フロートの揺動に応じて常時摺動を繰り返していることとなり、摺動面に摩擦が生じ、徐々に摩耗することでガタが発生し、出力信頼性が低下する可能性がある。また、車両走行中に発生する燃料の液面揺動に伴うフロートの揺動変位は、そのまま検出出力にノイズとなって出てしまい、検出精度を低下させることにもなる。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液面の揺動に対するフロートの追従性を低下させることで、アームの回転支持部分の摺動を抑えて摩耗を減らし、その結果、摺動部分のガタを低減して、耐久性の向上と信頼性の向上を図ることができると共に、フロートの液面追従性の低下により、ノイズを減らして、出力精度を向上させることのできる液面レベルセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述した目的を達成するために、本発明に係る液面レベルセンサは、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1) 液体の液面に浮かび、該液面の変位に応じて上下動するフロートと、
一端部が前記フロートに接続されたアームと、
前記アームの他端部を回動自在に支持するホルダと、
前記フロートの上下動に伴う前記アームの回動変位を前記ホルダの回動角度によって検出するセンサ本体と、を備え、
前記フロートの外形を形成する該フロートの外面の、該フロートが前記液面に浮かんでいる際の前記液体に接触する箇所に、該フロートの内部に向かって窪む穴が形成されていること。
(2) 上記(1)の構成の液面レベルセンサであって、
前記穴は、前記フロートの外形を形成する該フロートの外面のうちの一面から他面にかけて突き抜ける貫通穴であり、該貫通穴の少なくとも一部は、該フロートが前記液面に浮かんでいる際に該液面下に位置して液没していること。
(3) 上記(1)または(2)の構成の液面レベルセンサであって、
前記穴は、前記フロートの外形を形成する該フロートの外面に、複数個形成されていること。
【0006】
上記(1)の構成の液面レベルセンサによれば、フロートが液体に浮かんでいる際に、該フロートの穴内に液体が進入するので、該フロートには、穴内に進入した液体の重量が、液面の揺動によって鉛直方向に作用する揺動荷重に対抗する動的荷重として作用することになる。この結果、液面揺動に対してのフロートの追従揺動を抑制することができる。
上記(2)または(3)の構成の液面レベルセンサによれば、フロートには鉛直方向の動的荷重が作用する力点が増えることによって、より均等にフロートに鉛直方向の動的荷重を作用させることができる。この結果、フロートの任意の箇所に動的荷重が偏って作用することを抑制し、フロートを液面上に安定して浮かべることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フロートに液が自由に出入りできる穴を設けたので、液面揺動に対するフロートの追従性を低下させることができる。従って、アームの回転支持部分の摺動を抑えて、同部分の摩耗を減らし、摺動部分のガタを低減して、耐久性の向上と信頼性の向上を図ることができる。また、フロートの液面追従性の低下により、ノイズを減らすことができて、出力精度の向上も図ることができる。
【0008】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための最良の形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1は実施形態の液面レベルセンサの構成を示す図で、(a)は全体の原理構成図、(b)は液面レベルが低い位置にあるときのフロートの状態を示す図、(c)は液面レベルが高い位置にあるときのフロートの状態を示す図である。
【0011】
この液面レベルセンサは、自動車の燃料タンクに装備されるもので、図1(a)に示すように、基端がホルダ4を介してセンサ本体5に回動自在に支持されたアーム1と、このアーム1の先端に固定され、測定すべき液面Eに浮かんで液面Eの変位に応じて上下動するフロート2と、アーム1の回動変位に応じたホルダ4の回動角度を検出してそれに応じた電気出力を発生するセンサ本体5と、を具備しており、フロート2の外形を形成する外面には、該フロートが前記液面に浮かんでいる際の該液面下に位置する箇所に、液の出入りの自由な穴3が形成されていることを特徴としている。図1では、前記フロートの外形を形成する外面のうちの一面から他面にかけて突き抜ける穴3が2つ、フロート2に形成された場合を示している。なお、穴3は上記一面から上記他面にかけて貫通していてもよいし、貫通せずにある一面に窪むように形成されてもよい。
【0012】
図1に示す2つの穴3は、液面Eが燃料タンク内の低いところに位置している場合には、それぞれの穴3の総容量の略半分が液面上に残りの略半分が液面下に位置するように、且つ、液面Eが燃料タンク内の高いところに位置している場合には、フロート2に作用するアームの張力によって一方の穴が液面下に沈み他方の穴が液面上に位置するよう、フロート2に形成されている。このように、穴3を画成するフロートの内面によって囲まれる空間全てが液没する必要はなく、その空間の少なくとも一部が液没するように穴3をフロートに形成すればよい。
【0013】
この構成により、液面下に沈んだフロート2の穴3内に液体が進入し、フロート2の外面より内側に液体が存在することにより、液体の変位方向に動的荷重がフロート2に加わると、フロート2には、その変位方向とは反対方向に、穴3に進入した液体の重量分の荷重が作用する。この結果、穴3内に進入した液体の重量分の荷重が、動的に作用する揺動荷重に対抗する荷重として動的に作用することになって(穴3が形成されていないフロート2には、揺動荷重に対抗する荷重が作用しない)、液面の揺動に対してのフロート2の追従揺動を抑制することができる。特に、走行中に短い周期で液面が揺動する場合に、液面の揺動に対するフロート2の追従揺動を抑制するという効果を顕著に得られる。例えば、フロート2の自重と穴3内の液重量が下向きの動的荷重Mとなり、これが、浮力と揺動荷重よりなる上向き荷重Fに対抗することになるので、荷重Fを穴3内の液重量の分だけ低減することができ、その分だけフロート2の揺動を抑制することができる。
【0014】
従って、液面揺動に対するフロート2の追従性を低下させることができ、アーム1の回転支持部分の摺動を抑えて、同部分の摩耗を減らし、摺動部分のガタを低減して、耐久性の向上と信頼性の向上を図ることができる。さらに、フロート2の液面追従性の低下により、ノイズを減らすことができて、出力精度の向上も図ることができる。
【0015】
また、本実施形態のように、穴3の総容量の略半分が液面上にあり、残りの略半分が液面下にあるように、穴3を開けた場合、フロート2の自重と動的荷重のバランスをとりやすくなる。
【0016】
さらに、フロートの一面に形成する穴3を増やすほど、また、穴3とその穴3が設けられたフロートの一面を形成する平面とによって囲まれる空間(すなわち、窪んだ部分の体積)を大きくするほど、フロートには鉛直方向下向きの動的荷重が作用する力点が増えることによって、より均等にフロートに動的荷重を作用させることができる。この結果、フロートの任意の箇所に動的荷重が偏って作用することを抑制し、フロートを液面上に安定して浮かべることができる。
【0017】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0018】
例えば、フロートの形状や穴の形状は任意に選択することができ、図2(a)に示すように、四角柱状のフロート12に対して四角形の1個の穴13を開けたり、図2(b)に示すように、三角柱状のフロート22に対して三角形の1個の穴23を開けたり、図2(c)に示すように、円柱状のフロート32に対して円形の1個の穴33を開けたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態の液面レベルセンサの構成を示す図で、(a)は全体の原理構成図、(b)は液面レベルが低い位置にあるときのフロートの状態を示す図、(c)は液面レベルが高い位置にあるときのフロートの状態を示す図である。
【図2】(a)〜(c)はフロート形状の他の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
1 アーム
2,12,22,32 フロート
3,13,23,33 穴
E 液面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の液面に浮かび、該液面の変位に応じて上下動するフロートと、
一端部が前記フロートに接続されたアームと、
前記アームの他端部を回動自在に支持するホルダと、
前記フロートの上下動に伴う前記アームの回動変位を前記ホルダの回動角度によって検出するセンサ本体と、を備え、
前記フロートの外形を形成する該フロートの外面の、該フロートが前記液面に浮かんでいる際の前記液体に接触する箇所に、該フロートの内部に向かって窪む穴が形成されていることを特徴とする液面レベルセンサ。
【請求項2】
前記穴は、前記フロートの外形を形成する該フロートの外面のうちの一面から他面にかけて突き抜ける貫通穴であり、該貫通穴の少なくとも一部は、該フロートが前記液面に浮かんでいる際に該液面下に位置して液没していることを特徴とする請求項1に記載の液面レベルセンサ。
【請求項3】
前記穴は、前記フロートの外形を形成する該フロートの外面に、複数個形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の液面レベルセンサ。

【図1】
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【図2】
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