説明

液面計

【課題】上層液体が電解液等の導電性が低い液体で、下層液体が上層液体よりも比重が重く上層液体と不要に混合せず、かつ上層液体よりも導電性の高い液体である2層構造の液体が貯留されている貯槽や反応槽において、上層液体及び下層液体が共に高温に維持されて金属に対して腐食性が高いものであっても不要に腐食することがなく、簡便な構成で、上層液体の液面の位置等を高精度に検出可能な液面計を提供する。
【解決手段】交流電源50から交流電流が供給された状態の一対の電極30、40、130、140間のアドミッタンス出力の変化、特に液体に対して耐腐食性を呈する材料から成る接触外面を伴う探触子34、44、132b、142b間のアドミッタンス出力の変化に応じて、第1の液体22の液面の位置等を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中に浸漬された電極間に交流電流を流して液面位置を検出する液面計に関し、特に、高温の溶融塩の液体の下に高温の溶融金属の液体が位置する等の比重が異なり容易に混合しない腐食性の2種の高温液体から成る2層構造の液体の液面位置を検出するための液面計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、貯槽や反応槽中の液体の液面の位置を検出する液面計としては、複数の電極を液中に設置して、液面の位置の変化による電極間の静電容量値等の変化で、液面の位置を検出するもの、フロートを液中に設置して、フロート位置の変化で、液面の位置を検出するもの、及び超音波やレーザー光により、液面までの距離を測定して、液面の位置を検出するもの等の構成が用いられている。
【0003】
これらの中で、超音波やレーザー光を用いて、上方から液面の位置を検出する構成は、液面上に液体の蒸気が冷えて形成されるミスト層が存在すると、安定した液面の位置の検出が行い難い。超音波を用いる場合には、貯槽の底部に発振器を設置し、下方から液面を検出してもよいが、溶融塩のような高温の液体を対象とする場合には、貯槽の底部への発振器の設置が難しい。
【0004】
フロートを用いる構成では、液面の直接的な検出に代えて、位置検出が容易なフロートを用いて検出しているに過ぎず、測定部材に関する選択肢は広がるものの、結局、フロート位置を何らかの方法で検出しなければならないことに変わりはない。
【0005】
これに対して、複数の電極間の静電容量値等の変化によって液面位置を検出する構成は、構造が簡便で、高温の液体を対象として使用することができる利点がある。
【0006】
特許文献1は、いずれも真鍮やステンレス鋼の金属製である棒状中心電極及び外筒電極を備えた静電容量型液面計を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−286651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者の検討によれば、特許文献1が開示する静電容量型液面計は、液化ガスタンク中の液体の液面を測定するためのものであるため、真鍮やステンレス鋼といった金属製の一対の電極を備えた構成を有するものに過ぎず、高温で高腐食性の電解質や金属から成る2層構造の液体の液面や界面を検出するための構成を何等提案するものではない。
【0009】
特に、本発明者の検討によれば、電解反応容器内で、溶融塩化亜鉛を電気分解して溶融亜鉛を得るような場合においては、溶融塩化亜鉛及び溶融亜鉛は、いずれも高温であって金属に対して高腐食性の液体であるため、上層に位置する溶融塩化亜鉛の液面の位置を精度よく実用的に検出することができると共に、更に拡張的に、溶融塩化亜鉛と溶融亜鉛との界面の位置を精度よく実用的に検出することができ、適宜のタイミングで溶融塩化亜鉛の供給や電気分解を停止して、溶融塩化亜鉛の液面の不要な上昇や低下を停止することに
寄与し得る構成の液面計が必要となる。
【0010】
しかしながら、現状としてこのような液面計は実用化されてはおらず、電解反応容器内で、溶融塩化亜鉛を電気分解して溶融亜鉛を得るような場合に、現実に適用し得る新規な構成の液面計の実現が待望された状況にある。
【0011】
本発明は、以上の検討を経てなされたもので、上層液体が電解液等の導電性が低い液体で、下層液体が上層液体よりも比重が重く上層液体と不要に混合せず、かつ上層液体よりも導電性の高い液体である2層構造の液体が貯留されている貯槽や反応槽において、上層液体及び下層液体が共に高温に維持されて金属に対して腐食性が高いものであっても不要に腐食することがなく、簡便な構成で、上層液体の液面の位置等を高精度に検出可能な液面計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上のような目的を達成するため、本発明は、第1の局面において、容器内に溜められて金属に対して腐食性を有する電解質である第1の液体と、前記容器内に前記第1の液体よりも下方に溜められて金属に対して腐食性を有する導電性の第2の液体と、の成す界面を横断自在に、前記第1の液体及び前記第2の液体に対して同一の浸漬長さでもって浸漬自在であって、前記第1の液体及び前記第2の液体に対して耐腐食性を呈する材料から成る接触外面を伴う探触子を、それぞれ有する一対の電極と、前記一対の電極のそれぞれの前記探触子の間に交流電流を供給自在な交流電源と、前記一対の電極のそれぞれの前記探触子の先端が、前記第1の液体内に位置する場合に、前記探触子間を流れる前記交流電流に基づくアドミッタンス出力の変化に応じて、前記第1の液体の液面の位置を検出自在である検出部と、を備える液面計である。
【0013】
また本発明は、第1の局面に加えて、前記検出部は、更に、前記一対の電極のそれぞれの前記探触子の前記先端が、前記第1の液体と前記第2の液体と界面を横切る際に、前記探触子間を流れる前記交流電流に基づくアドミッタンス出力の変化に応じて、前記界面の位置を検出自在であることを第2の局面とする。
【0014】
また本発明は、第1又は第2の局面に加えて、前記一対の電極のそれぞれの前記探触子は、その先端部に前記界面と平行に設定自在な平坦面を有する円柱状部材であることを第3の局面とする。
【0015】
また本発明は、第1から第3のいずれかの局面に加えて、前記一対の電極のそれぞれの前記探触子は、グラファイト製であることを第4の局面とする。
【0016】
また本発明は、第1から第4のいずれかの局面に加えて、前記一対の電極のそれぞれの前記探触子は、前記第一対の電極の導電部材に対応して連絡し、前記導電部材は、前記第1の液体及び前記第2の液体に対して耐腐食性を呈する絶縁部材で覆われることを第5の局面とする。
【0017】
また本発明は、第1又は第2の局面に加えて、前記一対の電極のそれぞれの前記探触子は、シース型熱電対を構成し、前記検出部は、更に、前記第1の液体及び前記第2の液体の温度を検出自在であることを第6の局面とする。
【0018】
また本発明は、第6の局面に加えて、前記シース型熱電対は、絶縁性セラミック製の保護管に収容されることを第7の局面とする。
【0019】
また本発明は、第1から第7のいずれかの局面に加えて、前記第1の液体が溶融塩化亜
鉛を含有する溶融塩であり、前記第2の液体が溶融亜鉛を含有する溶融金属であることを第8の局面とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の第1の局面における液面計においては、容器内に溜められて金属に対して腐食性を有する電解質である第1の液体及び容器内で第1の液体よりも下方に溜められて金属に対して腐食性を有する導電性の第2の液体の中に同一の浸漬長さでもって浸漬自在であって、第1の液体及び第2の液体に対して耐腐食性を呈する材料から成る接触外面を伴う探触子をそれぞれ有する一対の電極を用いて、かかる探触子の間に交流電流を供給しながら第1の液体内に位置させて、探触子間を流れる交流電流に基づくアドミッタンス値の変化に応じて、第1の液体の液面の位置を検出することにより、上層液体が電解液等の導電性が低い液体で、下層液体が上層液体よりも比重が重く上層液体と不要に混合せず、かつ上層液体よりも導電性の高い液体である2層構造の液体が貯留されている貯槽や反応槽において、上層液体及び下層液体が共に高温に維持されて金属に対して腐食性が高いものであっても、簡便な構成で、上層液体の液面の位置を高精度に検出することができ、必要に応じて、所望のタイミングで上層液体の液面の不要な変化を確実に停止することができる。
【0021】
また本発明の第2の局面における液面計においては、更に、一対の電極のそれぞれの探触子の先端が、第1の液体と第2の液体と界面を横切る際に、探触子間を流れる交流電流に基づくアドミッタンス出力の変化に応じて、かかる界面の位置を検出自在であることにより、簡便な構成で、上層液体の液面の位置を高精度に検出することができると共に、上層液体と下層液体との界面の位置を高精度に検出することができ、必要に応じて、所望のタイミングで上層液体の液面の不要な変化や上層液体と下層液体との界面の不要な変化をより確実に停止することができる。
【0022】
また本発明の第3の局面における液面計においては、一対の電極のそれぞれの探触子が、その先端部に界面と平行に設定自在な平坦面を有する円柱状部材であることにより、特に、上層液体と下層液体との界面を瞬時に横切ることができ、上層液体と下層液体との界面の位置をより高精度に検出することができる。
【0023】
また本発明の第4の局面における液面計においては、一対の電極のそれぞれの探触子が、グラファイト製であることにより、上層液体及び下層液体が共に高温に維持されて金属に対して腐食性が高いものであっても不要に腐食することがなく、簡便な構成で、上層液体の液面の位置や、上層液体と下層液体との界面の位置を高精度に検出することができる。
【0024】
また本発明の第5の局面における液面計においては、一対の電極のそれぞれの探触子が、電極の導電部材に対応して連絡し、導電部材は、第1の液体及び第2の液体に対して耐腐食性を呈する絶縁部材で覆われることにより、かかる電極の探触子以外の部分が上層液体等の液滴やガスに接触した場合でも、上層液体及び下層液体が共に高温に維持されて金属に対して腐食性が高いものであっても不要に腐食することがなく、簡便な構成で、上層液体の液面の位置や、上層液体と下層液体との界面の位置を高精度に検出することができる。
【0025】
また本発明の第6の局面における液面計においては、一対の電極のそれぞれの探触子が、シース型熱電対を構成し、第1の液体及び第2の液体の温度を検出自在であることにより、上層液体の液面の位置等を検出することに加えて液温も検出するという付加的な機能をも実現し得て、使用する電極等の総数を減らしながら、上層液体の液面の位置や液温等を高精度に検出することができる。
【0026】
また本発明の第7の局面における液面計においては、シース型熱電対が、絶縁性セラミック製の保護管に収容されることにより、上層液体及び下層液体が共に高温に維持されて金属に対して腐食性が高いものであっても不要に腐食することがなく、簡便な構成で、上層液体の液面の位置や液温等を高精度に検出することができる。
【0027】
また本発明の第8の局面における液面計においては、第1の液体が溶融塩化亜鉛を含有する溶融塩であり、第2の液体が溶融亜鉛を含有する溶融金属であるため、溶融塩化亜鉛を電気分解することにより、その下層に溶融亜鉛を得ながら、溶融塩化亜鉛の液面の位置等を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態における液面計の構成を示す模式的な断面図であり、液体を貯留する貯槽をも示す。
【図2】本実施形態における液面計のアドミッタンス出力の変化曲線を示すグラフである。
【図3】本発明の第2の実施形態における液面計の構成を示す模式的な断面図であり、液体を貯留する貯槽をも示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の各実施形態における液面計につき、図面を適宜参照して、詳細に説明する。なお、図中、x軸及びz軸は、直交座標系を成し、z軸の方向が鉛直の上下方向である。
【0030】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態における液面計につき、図1及び図2を用いて、詳細に説明する。
【0031】
図1は、本実施形態における液面計の構成を示す模式的な断面図であり、液体を貯留する貯槽をも示す。また、図2は、本実施形態における液面計のアドミッタンス出力の変化曲線を示すグラフである。
【0032】
図1に示すように、本実施形態における装置S1は、液面計10と、液体を貯留自在な貯槽20と、を備える。かかる装置S1は、単に液体を溜める貯留装置であってもよいし、図示を省略する一対の電解用電極を用いて、典型的には、溶融塩化亜鉛を電気分解し、溶融亜鉛と塩素ガスとを生成する電解装置であってもよい。また、装置S1が、電解装置である場合には、貯槽20は、電解反応容器となる。
【0033】
具体的には、液面計10は、一対の電極30、40と、一対の電極30、40に給電線50a、50bを介して連絡して交流電圧を印加して交流電流を流す交流電源50と、給電線50a、50bの一方、例えば給電線50aに連絡された交流電流計60と、交流電源50及び交流電流計60に電気的に接続する制御器70と、を備える。なお、制御器70は、図示を省略する演算装置やメモり等を有する。
【0034】
また、かかる液面計10が適用される典型的にはグラファイト製の貯槽20は、図示を省略する加熱機構により450℃以上550℃以下程度の温度範囲に保持されており、その内部に、溶融塩化亜鉛22と、それから電解生成される溶融亜鉛24と、が溜められる。450℃以上550℃以下程度の温度範囲での塩化亜鉛の比重は約2.4であり、亜鉛の比重は約6.4であるから、溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24の両液は、上下に分離して、溶融塩化亜鉛22を上層とし溶融亜鉛24を下層とする2層構造の液体となる。ま
た、溶融亜鉛24の導電率は、溶融塩化亜鉛22の導電率よりも5桁程度高いものである。
【0035】
ここで、かかる2層構造の液体としては、溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24に限定されるものではなく、上層液体が、金属に対して高い腐食性を呈すると共に電解液等の導電性が低い溶融塩等の液体で、下層液体が、金属に対して高い腐食性を呈すると共に、上層液体よりも比重が重く上層液体と不要に混合せず、かつ上層液体よりも導電性の高い溶融金属等の液体であれば足りる。また、溶融塩化亜鉛を電解質として用いながら電気分解をして、溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24から成る2層構造の液体を得る場合においては、塩化リチウムや塩化カリウム等の支持電解質を用いてもかまわず、かかる場合には、溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24には、塩化リチウムや塩化カリウム等が混入してもかまわない。
【0036】
また、一対の電極30、40は、金属製で棒状の導電部材32a、42aを絶縁性の保護管32b、42bで囲んだ構造を有する電極部32、42と、導電部材から成る円柱状の探触子34、44と、を対応して備える。具体的には、かかる保護管32b、42bは、それぞれ、金属に対して高い腐食性を有する溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24の液滴やガスにより導電部材32a、42aが不要に腐食されないように、棒状の導電部材32a、42aの周囲を覆った典型的にはセラミック製で円筒状の絶縁部材である。また、探触子34、44は、それぞれ円柱状であり、それぞれの外面が、溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24に対する接触外面となる。また、探触子34、44においては、保護管32b、42bに対応して接続するそれらの上部の外面は、保護管32b、42bの外面と面一として形成され、かつそれらの下端の先端面は、それぞれ溶融塩化亜鉛22と溶融亜鉛24との界面26に平行に位置し得る平坦面として形成される。
【0037】
ここで、かかる探触子34、44が、それぞれ、溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24から成る2層構造の液体に侵入して浸漬される部分として設定される。 詳しくは、探触子34、44の上端が、それぞれ、溶融塩化亜鉛22の液面に対して面一になるか溶融塩化亜鉛22の液面よりも上方に突出するように設定されながら、探触子34、44が、溶融塩化亜鉛22及びそれから電解生成される溶融亜鉛24に浸漬自在であって、かつそれらの上昇する界面26を横断自在に、典型的には固定されて配置される。なお、溶融塩化亜鉛22と溶融亜鉛24との界面26の位置が一定である場合等には、探触子34、44、つまり一対の電極30、40の方をそれぞれ移動して、その界面26を横切らせてもかまわない。また、かかる探触子34、44が、界面26を相対的に横切る方向は、それぞれ、上下方向であって、界面26に直交する方向であるとする。
【0038】
また、かかる探触子34、44間に溶融塩化亜鉛22のみが位置した状態では、溶融塩化亜鉛22は電解質であるから、これらから成る電気回路は、探触子34、44間にいずれも溶融塩化亜鉛22に起因する抵抗と静電容量とが並列に接続された等価回路として評価される。かかる場合における等価回路では、溶融塩化亜鉛22に対する探触子34、44の浸漬長さが変化すると、探触子34、44間の距離が一定に維持された状態で、探触子34、44間に位置する溶融塩化亜鉛22から成る領域の上下方向の長さが変化するから、探触子34、44は、それらの間に溶融塩化亜鉛22を介在させながら対向する一種の可変抵抗及び可変コンデンサーとして機能する。よって、このような抵抗成分及び静電容量成分から成る電気的特性値、典型的にはアドミッタンス値は、溶融塩化亜鉛22に対する探触子34、44の浸漬長さに応じて連続的に変化することになる。なお、溶融塩化亜鉛22のインダクタンス値は、実質的に無視し得る大きさである。
【0039】
また、探触子34、44間において溶融塩化亜鉛22に加えてその上方に空気が介在する場合には、探触子34、44間に溶融塩化亜鉛22のみが位置した状態の等価回路に対
して、探触子34、44間の溶融塩化亜鉛22の抵抗成分や静電容量成分に加えてその上方の探触子34、44間の空気の静電容量成分を考慮する必要がある。つまり、かかる場合における等価回路では、溶融塩化亜鉛22に対する探触子34、44の浸漬長さが変化すると、探触子34、44間の距離が一定に維持された状態で、探触子34、44間に位置する溶融塩化亜鉛22から成る領域の上下方向の長さとその上方の空気から成る領域の上下方向の長さとの比が変化するから、探触子34、44は、それらの間に溶融塩化亜鉛22と空気が介在しながら対向する一種の可変抵抗及び可変コンデンサーとして機能する。よって、このような抵抗成分及び静電容量成分から成る電気的特性値、典型的にはアドミッタンス値は、溶融塩化亜鉛22に対する探触子34、44の浸漬長さに応じて連続的に変化することになる。
【0040】
また、探触子34、44間に溶融亜鉛24のみが位置した状態では、溶融亜鉛24は金属であるから、これらから成る電気回路は、探触子34、44間に溶融亜鉛24に起因した抵抗が接続された等価回路として評価される。つまり、かかる状態における等価回路では、探触子34、44間の距離は一定であるから、その抵抗値は、一定である。なお、溶融亜鉛24の静電容量値やインダクタンス値は、実質的に無視し得る大きさである。
【0041】
また、探触子34、44が、溶融塩化亜鉛22と溶融亜鉛24との界面26を、溶融塩化亜鉛22から溶融亜鉛24に向かって横切る際には、これらから成る電気回路は、探触子34、44間に共に溶融塩化亜鉛22に起因する抵抗と溶融塩化亜鉛22やその上方の空気に起因する静電容量とが並列に接続された等価回路から、それに加えて、更に探触子34、44間に溶融亜鉛24に起因する抵抗が接続された等価回路が並列に接続された等価回路に変化する。ここで、探触子34、44間の溶融亜鉛24に起因する抵抗値は、実質一定であると共に相対的に小さな値であるから、その全体的な等価回路は、探触子34、44間に溶融亜鉛24に起因する抵抗が接続された等価回路として評価できるものである。
【0042】
つまり、探触子34、44が、溶融塩化亜鉛22と溶融亜鉛24との界面26を、溶融塩化亜鉛22から溶融亜鉛24に向かって横切る際には、これらから成る電気回路は、探触子34、44間に共に溶融塩化亜鉛22に起因する抵抗と溶融塩化亜鉛22やその上方の空気に起因する静電容量とが並列に接続された等価回路から、探触子34、44間に溶融亜鉛24に起因する抵抗が接続された等価回路に急激に変化するものとして評価できる。なお、同様な議論から、探触子34、44が、溶融塩化亜鉛22と溶融亜鉛24との界面26を、溶融亜鉛24から溶融塩化亜鉛22に向かって横切る際には、探触子34、44間に溶融亜鉛24に起因する抵抗が接続された等価回路から、探触子34、44間に共に溶融塩化亜鉛22に起因する抵抗と溶融塩化亜鉛22やその上方の空気に起因する静電容量とが並列に接続された等価回路に急激に変化するものとして評価できる
【0043】
また、交流電源50は、一対の電極30、40間、つまり探触子34、44間に交流電圧を印加して交流電流を流すものである。かかる交流電源50を測定電源として用いる理由としては、溶融塩化亜鉛22は電解質であるため、直流電圧を印加して直流電流を流すと、探触子34、44間を流れる電流値は安定しないのに対して、交流電圧を印加して交流電圧を流すと、安定した電流値を得ることができることが挙げられる。また、かかる交流電圧の最大電圧は、溶融塩化亜鉛22に不要な電気分解を生じさせないように、溶融塩化亜鉛22の電気分解電圧よりも小さい範囲、例えば1V以下の範囲に設定されている。
【0044】
このように交流電源50から印加する交流電流の周波数としては、5Hz以上1000Hz以下の範囲が好適である。具体的には、印加する交流電流の周波数の下限については、印加する交流電流の周波数が低いほど、溶融塩化亜鉛22に起因して検出される電気的特性、典型的にはアドミッタンス値が大きくなって、溶融塩化亜鉛22の液面の位置の測
定精度を向上し得るという観点からは好ましいのであるが、5Hz未満の低周波数になると安定した検出値が現実的に得られないため、5Hz以上であることが好ましい。
【0045】
一方で、このように印加する交流電流の周波数の上限については、印加する交流電流の周波数が高いほど、安定した検出値を得ることができるからは好ましいのであるが、1000Hzを超える周波数になると、溶融塩化亜鉛22に起因して検出される電気的特性、典型的にはアドミッタンス値が顕著に小さくなって、溶融塩化亜鉛22の液面の位置の変化を実質測定し得なくなるし、加えて、制御器70等に対して電磁シールドを設ける必要が生じたり、交流電源50や交流電流計60等が特殊なものとなって高価となる傾向が生じるので、1000Hz以下であることが好ましい。更に、より商用の電源周波数に近く、安価で信頼性の高い交流電源50や交流電流計60等が使用できるという観点からは、印加する交流電流の周波数としては、50Hz以上100Hz以下の範囲が現実的により好適である。
【0046】
また、交流電流計60は、一対の電極30、40、並びに電解槽20内の溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24から成る回路系を流れる交流電流を測定する。
【0047】
また、制御器70は、交流電源50及び交流電流計60を制御すると共に、図2に示すアドミッタンス出力Aを得る制御部70aと、図2に示すアドミッタンス出力Aから、溶融塩化亜鉛22の液面の位置や溶融塩化亜鉛22と溶融亜鉛24との界面26の位置を検出する検出部70bと、を有する。図2中、横軸は、一対の電極30、40の探触子34、44が溶融塩化亜鉛22の液面から下方に侵入した長さである浸漬長さL(m)を示し、縦軸は、制御器70が出力する電圧値を示すアドミッタンス出力A(V)である。
【0048】
具体的には、制御部70aは、交流電源50の動作を制御して、前述した交流電流を探触子34、44間に供給すると共に、交流電流計60の動作を制御して、その測定電流値を担持する電気信号を受信する。更に、制御部70aは、交流電流計60から受信した電気信号が担持する電気的特性値、つまり探触子34、44間を流れる交流電流値を簡便な回路構成でデータ処理してアドミッタンス値、を算出し、アドミッタンス出力Aを得て、かかるアドミッタンス出力Aを検出部70bに出力する。また、検出部70bは、制御部70aから出力されたアドミッタンス出力Aから、貯槽20内に貯留される溶融塩化亜鉛22の液面の位置を検出すると共に、溶融塩化亜鉛22と溶融亜鉛24との界面26の位置を検出する。
【0049】
より詳しくは、交流電源50から交流電流を供給された状態の一対の電極30、40の探触子34、44が、溶融塩化亜鉛22の液面から相対的に下方に侵入していくと、それらの浸漬長さLが増大することに対応して、制御器70が出力するアドミッタンス出力Aが増大するような図2に示すプロフィールC1が得られる。これは、探触子34、44間に溶融塩化亜鉛22やその上方の空気が位置した状態では、これらは溶融塩化亜鉛22に起因する抵抗と溶融塩化亜鉛22やその上方の空気に起因する静電容量とが並列に接続された等価回路を成しているため、その静電容量値が、浸漬長さLが増大することに対応して増大したことに起因する。なお、理想的な系では、かかるプロフィールC1は、線形となる。
【0050】
よって、探触子34、44、溶融塩化亜鉛22やその上方の空気から成る系で、かかるプロフィールC1を含むアドミッタンス出力Aの変化曲線を予め測定しデータベース化して検出部70bの図示を省略するメモリに記憶しておけば、その後に同様の物理的特性を有する探触子34、44、溶融塩化亜鉛22やその上方の空気から成る系で、探触子34、44と溶融塩化亜鉛22の液面との位置関係が相対的に変化した場合に、プロフィールC1を参照しながら、典型的には、それらの位置が固定された探触子34、44の下端の
位置を基準として、溶融塩化亜鉛22の液面の位置を検出することができる。更に、このように探触子34、44、つまり一対の電極30、40の位置が固定されている構成で、溶融塩化亜鉛22が貯槽20に供給されている場合には、装置S1の操作者等に対して、制御器70が出力するアドミッタンス出力Aが増大していることを提示できれば、かかる操作者等は、対応して溶融塩化亜鉛22の液面の位置も上昇していることが直感的に理解しやすくなる。つまり、このように溶融塩化亜鉛22の液面が上昇している場合には、操作者等が、検出された溶融塩化亜鉛22の液面の位置情報に加えて、図示を省略するディスプレィ等に表示されるアドミッタンス出力Aの変化曲線を参照することにより、溶融塩化亜鉛22の液面の所望位置に応じて溶融塩化亜鉛22の供給を停止して、溶融塩化亜鉛22の液面の不要な上昇を確実に停止することができる。
【0051】
一方で、交流電源50から交流電流を供給された状態の一対の電極30、40の探触子34、44が、更に相対的に下方に位置して、探触子34、44の下端が、溶融塩化亜鉛22と溶融亜鉛24との界面26を横切って溶融亜鉛24に侵入していくと、制御器70が出力するアドミッタンス出力Aは一定値を呈するような図2に示すプロフィールC2が得られる。これは、探触子34、44間に溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24が位置した状態では、これらが探触子34、44間に対して溶融亜鉛24に起因して一定値を呈する抵抗が接続された等価回路を実質的に成していることによる。
【0052】
ここで、交流電源50から交流電流を供給された状態の一対の電極30、40の探触子34、44の下端が、溶融塩化亜鉛22と溶融亜鉛24との界面26に到達する際には、制御器70が出力するアドミッタンス出力Aは、浸漬長さLがL1の辺りでA1からA2に急激に変化して、プロフィールC1がプロフィールC2へと急激に変化するような図2に示すアドミッタンス段差プロフィールC3が得られる。これは、かかる場合に、探触子34、44間に対して溶融塩化亜鉛22に起因して可変値を呈する抵抗と溶融塩化亜鉛22やその上方の空気に起因して可変値を呈する静電容量とが並列に接続された等価回路から、探触子34、44間に対して溶融亜鉛24に起因して一定値を呈する抵抗が接続された等価回路に、急激に切り替わるためである。また、溶融亜鉛24の導電率が相対的に顕著に小さいために、溶融亜鉛24に起因するかかる抵抗値は、相対的に顕著に小さくなり、アドミッタンス出力AにおけるプロフィールC3の出力電圧段差であるアドミッタンス段差は、相対的に顕著に大きくなる。
【0053】
よって、探触子34、44、つまり一対の電極30、40の位置が固定されている構成で、溶融塩化亜鉛22を貯槽20に供給した後に溶融塩化亜鉛22の電気分解により溶融亜鉛24が生成されて溶融塩化亜鉛22の液面が低下している場合には、プロフィールC1に加えてかかるプロフィールC2、C3を含むアドミッタンス出力Aの変化曲線を予め測定しデータベース化しておけば、その後に同様の物理的特性を有する探触子34、44、溶融塩化亜鉛22、その上方の空気や溶融亜鉛24から成る系で、探触子34、44と溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24の界面との位置関係が相対的に変化した場合に、特にプロフィールC1からアドミッタンス段差プロフィールC3への切り替わりを参照しながら、典型的には、それらの位置が固定された探触子34、44の下端の位置を基準として、溶融塩化亜鉛22と溶融亜鉛24との界面26の位置を検出することができる。また、装置S1の操作者等は、かかるアドミッタンス出力Aの変化曲線におけるアドミッタンス段差の発生に応じて、つまり溶融塩化亜鉛22の液面の下限位置に応じて、電気分解を停止するか、又は塩化亜鉛22を貯槽20に追加して供給することにより、溶融塩化亜鉛22の液面の不要な低下や溶融塩化亜鉛22と溶融亜鉛との界面の不要な上昇をより確実に停止することができる。
【0054】
また、この際、探触子34、44の下端の先端面は、それぞれ溶融塩化亜鉛22と溶融亜鉛24との界面26に平行に位置し得るように設定される平坦面であるから、探触子3
4、44の下端の先端面は、溶融塩化亜鉛22と溶融亜鉛24との界面26を瞬時に横切るため、かかるアドミッタンス段差プロフィールC3は、アドミッタンス出力Aにおいて直立した態様となり、急峻な傾きを呈すようになるため、アドミッタンス段差が発生したこと、つまり溶融塩化亜鉛22と溶融亜鉛24との界面26の位置の検出精度が向上し得る。
【0055】
なお、以上のような溶融塩化亜鉛22の液面の不要な上昇や低下、更には溶融塩化亜鉛22と溶融亜鉛との界面の不要な上昇を停止するための操作は、装置S1の操作者等の手動により行ってもよいし、制御器70にリミッタ機能を持たせて自動的に行ってもよい。
【0056】
以上の本実施形態の構成によれば、容器内に溜められて金属に対して腐食性を有する電解質である第1の液体及び容器内で第1の液体よりも下方に溜められて金属に対して腐食性を有する導電性の第2の液体の中に同一の浸漬長さでもって浸漬自在であって、第1の液体及び第2の液体に対して耐腐食性を呈する材料から成る接触外面を伴う探触子をそれぞれ有する一対の電極を用いて、かかる探触子の間に交流電流を供給しながら第1の液体内に位置させて、探触子間を流れる交流電流に基づくアドミッタンス値の変化に応じて、第1の液体の液面の位置を検出することにより、上層液体が電解液等の導電性が低い液体で、下層液体が上層液体よりも比重が重く上層液体と不要に混合せず、かつ上層液体よりも導電性の高い液体である2層構造の液体が貯留されている貯槽や反応槽において、上層液体及び下層液体が共に高温に維持されて金属に対して腐食性が高いものであっても、簡便な構成で、上層液体の液面の位置を高精度に検出することができ、必要に応じて、所望のタイミングで上層液体の液面の不要な変化を確実に停止することができる。
【0057】
また、更に、一対の電極のそれぞれの探触子の先端が、第1の液体と第2の液体と界面を横切る際に、探触子間を流れる交流電流に基づくアドミッタンス出力の変化、特にアドミッタンス出力の段差に応じて、かかる界面の位置を検出自在であることにより、簡便な構成で、上層液体の液面の位置を高精度に検出することができると共に、上層液体と下層液体との界面の位置を高精度に検出することができ、必要に応じて、所望のタイミングで上層液体の液面の不要な変化や上層液体と下層液体との界面の不要な変化をより確実に停止することができる。
【0058】
また、一対の電極のそれぞれの探触子が、その先端部に界面と平行に設定自在な平坦面を有する円柱状部材であることにより、特に、上層液体と下層液体との界面を瞬時に横切ることができ、上層液体と下層液体との界面の位置をより高精度に検出することができる。
【0059】
また、一対の電極のそれぞれの探触子が、グラファイト製であることにより、上層液体及び下層液体が共に高温に維持されて金属に対して腐食性が高いものであっても不要に腐食することがなく、簡便な構成で、上層液体の液面の位置や、上層液体と下層液体との界面の位置を高精度に検出することができる。
【0060】
また、一対の電極のそれぞれの探触子が、電極の導電部材に対応して連絡し、導電部材は、第1の液体及び第2の液体に対して耐腐食性を呈する絶縁部材で覆われることにより、かかる電極の探触子以外の部分が上層液体等の液滴やガスに接触した場合でも、上層液体及び下層液体が共に高温に維持されて金属に対して腐食性が高いものであっても不要に腐食することがなく、簡便な構成で、上層液体の液面の位置や、上層液体と下層液体との界面の位置を高精度に検出することができる。
【0061】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態における液面計につき、更に図3をも参照して、詳細に
説明する。
【0062】
図3は、本実施形態における液面計の構成を示す模式的な断面図であり、液体を貯留する貯槽をも示す。
【0063】
本実施形態においては、液面計100の一対の電極130、140の構成が、第1の実施形態で説明した液面計10の一対の電極30、40のものとは異なっていることが主たる相違点であるため、以下、かかる相違点に着目して説明することとし、同様の構成については同一の符号を付しながら、適宜説明を簡略化又は省略する。
【0064】
図3示すように、本実施形態における装置S2に適用される液面計100は、一対の電極130、140を備えるものであり、かかる一対の電極130、140は、シース型熱電対132、142と、シース型熱電対132、142を囲んで収容する絶縁性の保護管134、144と、を対応して備える。
【0065】
具体的には、シース型熱電対132、142は、図示を省略する温度検知器にそれぞれ電気的に接続されて探触子として機能する2種類の金属部材から成る熱電対132a、142aと、熱電対132a、142aを収容してステンレス鋼等の金属製であるシース132b、142bと、熱電対132a、142a及びシース132b、142bの間に充填されて電気的に絶縁性で熱的に伝導性である充填材132c、142cと、を対応して備える。かかるシース132b、142bは、制御器70にそれぞれ電気的に接続されており、第1の実施形態における探触子34、44と同様の機能を発揮する。
【0066】
また、保護管134、144は、それぞれ、金属に対して高い腐食性を有する高温の溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24により、シース型熱電対132、142が不要に腐食されないように、シース型熱電対132、142の周囲を、空気を介在して離間して覆った典型的にはセラミック製で閉底円筒状の絶縁部材である。ここで、保護管134、144の外面は、シース132b、142bに関し溶融塩化亜鉛22及び溶融亜鉛24に対する接触外面を構成する。このように保護管134、144が閉底円筒部材であるため、シース型熱電対132、142自体は、それぞれ露出型であっても埋め込み型であってもかまわない。
【0067】
ここで、かかる一対の電極130、140においては、探触子として機能する部分であるシース132b、142bが、絶縁性の保護管134、144やシース132b、142bと保護管134、144との間の空気によって対応して覆われているため、一対の電極130、140間に、溶融塩化亜鉛22やその上方の空気、更には溶融亜鉛24が位置した状態では、これらをも含めた電気回路が、シース132b、142b間に静電容量や抵抗が接続された等価回路として評価されることになる。
【0068】
より詳しくは、交流電源50から交流電流を供給された状態の一対の電極130、140が、溶融塩化亜鉛22の液面から相対的に下方に侵入していくと、シース132b、142bの浸漬長さLが増大することに対応して、制御器70が出力するアドミッタンス出力Aが増大するような図2に示すプロフィールC1に類似するプロフィールが得られる。一方で、交流電源50から交流電流を供給された状態の一対の電極130、140が、更に相対的に下方に位置して、シース132b、142bの下端が、溶融塩化亜鉛22と溶融亜鉛24との界面26を横切って溶融亜鉛24に侵入していっても、第1の実施形態で見られたアドミッタンス段差プロフィールC3が明確には出現することはなく、プロフィールC1に類似するプロフィールから、シース132b、142b間における溶融塩化亜鉛22から成る領域の上下方向の長さに応じて適宜変化して維持されるような図2に示すプロフィールC2’に変化する。
【0069】
よって、かかる構成では、第1の実施形態と同様にプロフィールC1に類似するプロフィールを用いながら、典型的にはそれらの位置が固定されたシース132b、142bの下端の位置、便宜的には目視できる保護管134、144の下端の位置を基準として、溶融塩化亜鉛22の液面の位置を検出することができる。また、第1の実施形態の構成に対しては検出精度が下がるが、原理的には、アドミッタンス出力AがプロフィールC1に類似するプロフィールからプロフィールC2’へと変化することを利用して、その変曲点等を用いながら、溶融塩化亜鉛22と溶融亜鉛24との界面26の位置を検出し得る。
【0070】
また、一対の電極130、140は、シース型熱電対132、142を内蔵するものであるため、溶融塩化亜鉛22や溶融亜鉛24の液温も精度よく検出できることに加え、貯槽20に挿通される電極の総数を低減できる。特に、貯槽20が電解反応容器である場合には、断熱構造を採用すると共に、その開放上端部を蓋体で塞いで気密構造を実現する必要があるから、電極や種々の配管が気密を維持可能な相対的に大きな占有領域を必要とする構成でもって貫通孔を介して挿通される傾向があるが、このように貯槽20に挿通される電極の総数を低減し得る構成は、複雑な周辺構造を有する貫通孔の総数を低減して装置S2の全体構成を簡素化する観点から有意性がある。なお、一方のシース型熱電対として、他方のシース型熱電対に対してシースの長さが同じで熱電対の下端位置が相対的に上方にあるものを用いれば、貯槽20の底からの高さが異なる場所における溶融塩化亜鉛22や溶融亜鉛24の液温を測定することも可能である。
【0071】
なお、本実施形態におけるシース型熱電対132、142を内蔵する一対の電極130、140については、その一方のみを適用して、他方には、第1の実施形態における探触子34、44を有する一対の電極30、40の一方を適用してもよく、かかる場合には、一対の電極130、140を全て用いた場合に比べて、溶融塩化亜鉛22と溶融亜鉛24との界面26の位置を精度よく検出し得る。
【0072】
以上の本実施形態の構成によれば、一対の電極のそれぞれの探触子が、シース型熱電対を構成し、第1の液体及び第2の液体の温度を検出自在であることにより、上層液体の液面の位置等を検出することに加えて液温も検出するという付加的な機能をも実現し得て、使用する電極等の総数を減らしながら、上層液体の液面の位置や液温等を高精度に検出することができる。
【0073】
また、シース型熱電対が、絶縁性セラミック製の保護管に収容されることにより、上層液体及び下層液体が共に高温に維持されて金属に対して腐食性が高いものであっても不要に腐食することがなく、簡便な構成で、上層液体の液面の位置や液温等を高精度に検出することができる。
【0074】
なお、本発明においては、部材の種類、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上のように、本発明においては、上層液体が電解液等の導電性が低い液体で、下層液体が上層液体よりも比重が重く上層液体と不要に混合せず、かつ上層液体よりも導電性の高い液体である2層構造の液体が貯留されている貯槽や反応槽において、上層液体及び下層液体が共に高温に維持されて金属に対して腐食性が高いものであっても不要に腐食することがなく、簡便な構成で、上層液体の液面の位置等を高精度に検出可能な液面計を提供することができ、その汎用普遍的な性格からこのような2層構造の液体を対象とする液面計に広範に適用され得るものと期待される。
【符号の説明】
【0076】
10……液面計
20……貯槽
22……上層液体
24……下層液体
26……界面
30、40…電極
32、42…電極部
32a、42a…保護管
32b、42b……導電部材
34、44…探触子
50……交流電源
50a…給電線
50b…給電線
60……交流電流計
70……検出部
70a…制御部
70b…検出部
100……液面計
130、140…電極
132、142…シース型熱電対、
132a、142a…熱電対、
132b、142b…シース、
132c、142c…充填材、
134、144…保護管、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に溜められて金属に対して腐食性を有する電解質である第1の液体と、前記容器内に前記第1の液体よりも下方に溜められて金属に対して腐食性を有する導電性の第2の液体と、の成す界面を横断自在に、前記第1の液体及び前記第2の液体に対して同一の浸漬長さでもって浸漬自在であって、前記第1の液体及び前記第2の液体に対する接触外面が耐腐食性を呈する材料から成る探触子を、それぞれ有する一対の電極と、
前記一対の電極のそれぞれの前記探触子の間に交流電流を供給自在な交流電源と、
前記一対の電極のそれぞれの前記探触子の先端が、前記第1の液体内に位置する場合に、前記探触子間を流れる前記交流電流に基づくアドミッタンス出力の変化に応じて、前記第1の液体の液面の位置を検出自在である検出部と、
を備える液面計。
【請求項2】
前記検出部は、更に、前記一対の電極のそれぞれの前記探触子の前記先端が、前記第1の液体と前記第2の液体と界面を横切る際に、前記探触子間を流れる前記交流電流に基づくアドミッタンス出力の変化に応じて、前記界面の位置を検出自在である請求項1に記載の液面計。
【請求項3】
前記一対の電極のそれぞれの前記探触子は、その先端部に前記界面と平行に設定自在な平坦面を有する円柱状部材である請求項1又は2に記載の液面計。
【請求項4】
前記一対の電極のそれぞれの前記探触子は、グラファイト製である請求項1から3のいずれかに記載の液面計。
【請求項5】
前記一対の電極のそれぞれの前記探触子は、前記第一対の電極の導電部材に対応して連絡し、前記導電部材は、前記第1の液体及び前記第2の液体に対して耐腐食性を呈する絶縁部材で覆われる請求項1から4のいずれかに記載の液面計。
【請求項6】
前記一対の電極のそれぞれの前記探触子は、シース型熱電対を構成し、前記検出部は、更に、前記第1の液体及び前記第2の液体の温度を検出自在である請求項1に記載の液面計。
【請求項7】
前記シース型熱電対は、絶縁性セラミック製の保護管に収容される請求項6に記載の液面計。
【請求項8】
前記第1の液体が溶融塩化亜鉛を含有する溶融塩であり、前記第2の液体が溶融亜鉛を含有する溶融金属である請求項1から7のいずれかに記載の液面計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−154840(P2012−154840A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15236(P2011−15236)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(503107255)株式会社キノテック・ソーラーエナジー (18)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】