説明

混合ガスの冷却方法

【課題】重合性化合物を含む混合ガスを冷却する際に、効率よく前記重合性化合物の重合を抑制することができる冷却方法を提供する。
【解決手段】並列する複数の冷却用流路を備え、かつ該流路に被冷却物質を送るための該流路入口部を連通するヘッダーを有する冷却器に、ヘッダー入口から重合性化合物を含む混合ガスを導入して冷却する際に、前記重合性化合物に対する重合抑制剤を、溶媒に対して100重量ppm〜1重量%となるように溶解して、少なくともヘッダーの上流1箇所
から添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性化合物を含む混合ガスの冷却方法に関し、更に詳しくは、スチレン等の重合性化合物を冷却する際に前記重合性化合物の重合抑制剤を添加する方法に特徴を有する重合性化合物を含む混合ガスの冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にエチルベンゼンの脱水素反応によるスチレンの製造方法においては、まず、ガス状のエチルベンゼンをスチームと共に酸化鉄を主成分とする触媒を充填した多段の脱水素反応器に供給して、エチルベンゼンの脱水素反応によりスチレン等を含む脱水素反応混合物を生成させる。その後、脱水素反応器から排出されたガス状の脱水素反応混合物(以下、単に「脱水素反応混合ガス」と称することがある。)を、複数工程を含む冷却用熱交換器に通して冷却し、ガスと、凝縮したスチレン、ベンゼン、重質物等を含む油相および水とを気液分離する。次いで、まず油水分離槽で油相(粗スチレン)と水相とに油水分離し、その後、油相(粗スチレン)を複数の蒸留塔を通すことで、未反応のエチルベンゼン、副生成物のベンゼン、トルエン、α−メチルスチレンおよびスチルベン等とスチレンとを分離し、これによりスチレンを回収している。
【0003】
脱水素反応器から排出されたガス状の脱水素反応混合物は、通常多段の冷却用熱交換器(冷却器)や、冷却水の注入による直接冷却、さらにその下流に設置された冷却器等によって冷却される。これにより、スチレンおよび水の大部分が凝縮する。この際、脱水素反応器から排出されたガス状の脱水素反応混合物は、多段の熱交換器を通過する際に各段において徐々に冷却される。
【0004】
300℃以下に冷却されると、脱水素反応混合物中の高沸点成分の凝縮が開始する。前記高沸点成分の凝縮開始温度は、その組成、濃度、熱交換器の圧力等によって変わるが、減圧での脱水素反応においては300〜70℃程度である。前記高沸点成分は通常、ジビニルベンゼン、ナフタレン、スチルベン、フェニルナフタレン、およびスチレン二量体、スチレン三量体等の混合物であり、その生成量は脱水素反応条件が過酷になる、即ち高温、高スチレン分圧等の条件になるにつれて増加する。凝縮した高沸点成分の大部分は高速のガスによりミストとして下流に運ばれ、凝縮した粗スチレンに溶解して、最終的には精製系を通りスチレンヘビーエンドとして系外に排出される。しかし、高沸点成分の凝縮液の一部は、熱交換器の出口等にガス流速の低下する部分があると、そこに付着し、それが凹状部等に滞留し、熱等により徐々に重合や縮合等して高分子量化し、不溶性の固形物となる。生成した不溶性固形物の多くは、凝縮した粗スチレンおよび水により油水分離槽へ洗い流され、油相或いは水相の抜き出しポンプのストレーナー等で捕捉されている。
【0005】
しかしながら、生成した可溶性または不溶性固形物の一部は、冷却器や冷却管内に残留して、凝縮した粗スチレンを吸収して成長し、可溶性または不溶性固形物の蓄積を増大させてしまう。可溶性または不溶性固形物の蓄積が多くなると、蓄積部分の下部等の流動性の低い部分で、高沸点成分の高分子量化が更に促進され、時として、冷却器の一部または冷却管等を閉塞させることもある。特に、スチレン製造設備の連続運転の末期には触媒の活性が低下して脱水素反応温度が高くなるため、粗スチレン中の高沸点成分の濃度が上昇して、高沸点成分の凝縮が多くなることにより可溶性または不溶性固形物の生成が増加してしまう。
【0006】
これに対して、従来、その不溶性固形物の生成を防止、或いは蓄積を防止する方法として、フェノール類、アミン類、ニトロフェノール類、ヒドロキシルアミン類等の重合抑制剤を、脱水素反応生成ガスにその凝縮開始部付近において注入することで不溶性固形物の生成を防止する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この方法では、不溶性固形物の生成を完全に防止することは困難である。また、脱水素反応生成ガスの凝縮開始部付近に有機液体または有機液体と水との混合物等を注入して、生成した不溶性固形物を洗い流す方法も知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、この方法では、注入部の上流で生成した固形物をも洗い流すことは困難であり、更に上流部に液体を注入することは熱回収の面で非効率的である。
【0007】
このように、スチレン等が凝縮した後、重合抑制剤の添加によりその重合を抑制することが提案されてはいるものの、十分にスチレンの重合を防止することができなかった。具体的には、重合抑制剤を添加しても、重合抑制剤の添加部位付近ではスチレンの重合を抑制できるものの、下流側においては部分的に重合抑制剤の濃度が低くなり、十分にスチレンの重合を抑制することができなかった。
【特許文献1】特開平9−100245号公報
【特許文献2】特開2002−265397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、重合性化合物を含む混合ガスを冷却する際に、効率よく前記重合性化合物の重合を抑制することができる重合抑制剤の添加方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、本発明に係る下記の手段によれば従来技術の課題を解決しうることを見出した。
(1)並列する複数の冷却用流路を備え、かつ該流路に被冷却物質を送るための該流路入口部を連通するヘッダーを有する冷却器に、ヘッダー入口から重合性化合物を含む混合ガスを導入して冷却する際に、前記重合性化合物に対する重合抑制剤を、溶媒に対して100重量ppm〜1重量%となるように溶解して、少なくともヘッダーの上流1箇所から添加することを特徴とする重合性化合物を含む混合ガスの冷却方法。
(2)並列する複数の冷却用流路を備え、かつ該流路に被冷却物質を送るための該流路入口部を連通するヘッダーを有する冷却器に、ヘッダー入口から重合性化合物を含む混合ガスを導入して冷却する際に、前記重合性化合物に対する重合抑制剤を、混合ガスと直接接触させる冷却剤に溶解して添加することを特徴とする重合性化合物を含む混合ガスの冷却方法。
(3)並列する複数の冷却用流路を備え、かつ該流路に被冷却物質を送るための該流路入口部を連通するヘッダーを有する冷却器に、ヘッダー入口から重合性化合物を含む混合ガスを導入して冷却する際に、前記重合性化合物に対する重合抑制剤を該冷却器中に導入される重合性化合物に対する至適量の1〜5倍添加する方法において、下記式(1)を満足するようにヘッダー中に添加することを特徴とする重合性化合物を含む混合ガスの冷却方法。
式(1):0.25≦Cout/Cin≦4
[上式において、Cinは前記ヘッダー中最上流に位置する流路入口部の該重合抑制剤の該混合ガス中の濃度であり、Coutは前記ヘッダー中最下流に位置する流路入口部の該重合抑制剤の該混合ガス中の濃度である]
(4)前記重合抑制剤の添加部位における前記重合抑制剤と溶媒の添加量、あるいは重合抑制剤を含む冷却剤の添加量と、前記混合ガスの流量とが、質量比で1/1000〜1/10の範囲にあることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の重合性化合物を含む混合ガスの冷却方法。
(5)前記ヘッダーにおいて、混合ガス中の水が凝縮される温度である領域よりも上流において、前記重合抑制剤を添加することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の重合性化合物を含む混合ガスの冷却方法。
(6)前記重合性化合物がスチレンであることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の重合性化合物を含む混合ガスの冷却方法。
(7)前記重合抑制剤を複数の箇所から添加することを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の重合性化合物を含む混合ガスの冷却方法。
(8)前記冷却器の冷却用流路が、入口と出口の少なくとも1箇所ずつに、それぞれ滞留部を有さないバルブが設置されていることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の重合性化合物を含む混合ガスの冷却方法。
(9)並列する複数の冷却用流路を備え、かつ該流路に被冷却物質を送るための該流路入口部を連通するヘッダーを有する冷却器であって、前記冷却用流路が、入口と出口の少なくとも1箇所ずつに、それぞれ滞留部を有さないバルブが設置されていることを特徴とする冷却装置。
【発明の効果】
【0010】
重合性化合物を含む混合ガスを冷却する際に、本発明の方法にしたがって重合抑制剤を添加すれば、より少ない重合抑制剤で冷却器内の全体で効率よく前記重合性化合物の重合を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下において、本発明の重合性化合物を含む混合ガスの冷却方法等について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
本発明の重合性化合物を含む混合ガスの冷却方法の1つは、並列する複数の冷却用流路を備え、かつ該流路に被冷却物質を送るための該流路入口部を連通するヘッダーを有する冷却器を用いて、ヘッダー入口から重合性化合物を含む混合ガスを導入して冷却する際に、前記重合性化合物に対する重合抑制剤を、溶媒に対して100重量ppm〜1重量%となるように溶解して、少なくともヘッダーの上流1箇所から添加する方法である。
【0013】
上記で用いられる冷却器においては、重合性化合物を含む混合ガスを、ヘッダー入口からヘッダー内へ導入し、該ヘッダーで並列する複数の冷却用流路に分流される際に、同じくヘッダー上流から添加された重合抑制剤と接触させる。この後、被冷却物質である混合ガスは、重合抑制剤溶液等とともにヘッダーから上記冷却用流路に入り、さらに空冷、水冷等により冷却される。
【0014】
ここで、「ヘッダーの上流」とは、被冷却物質である混合ガスがヘッダー内に導入される箇所とおおよそ同じ場所をいう。具体的には、ヘッダーに導入される混合ガス中の水が凝縮される温度にある領域よりも上流(混合ガスが導入される側)をいう。ここで「水が凝縮される温度」とは、水の蒸気圧が混合ガス中の水の分圧に等しくなる温度を意味する。
前記重合抑制剤としては、混合ガスに含まれる重合性化合物の重合を抑制できるものであれば特に限定なく用いることができ、通常は公知の重合抑制剤を適宜用いることができる。例えば、重合性化合物がスチレンである場合には、ジエチルヒドロキシルアミン、ジプロピルヒドロキシルアミン、ビス(ヒドロキシプロピル)ヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン化合物、N−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の環状ヒドロキシルアミン化合物、2,4−ジニトロフェノール、2−sec−ブチル−4,6−ジニトロフェノール等のジニトロフェノール化合物、 1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のニトロキシルラジカル化合物、フェニレンジアミン化合物、オキシム化合物、アミノフェノール化合物、ニトロソフェノール化合物等を単独あるいは複数を併用あるいは他の化合物との併用で用いることができる。これらの中では、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン化合物、2−sec−ブチル−4,6−ジニトロフェノール等のジニトロフェノール化合物、ニトロソフェノール化合物が好ましい。
【0015】
重合抑制剤を溶媒に溶解する場合、前記溶媒としては、重合抑制剤を溶解できるものであれば、本発明の効果を損なわない限り、適宜用いることができる。例えば、重合性化合物がスチレンである場合には、その重合抑制剤としてジエチルヒドロキシルアミンを用いることができ、その溶媒としては、水を用いることができる。その他、前記溶媒としては、例えば、粗スチレン、スチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン,トリエチルベンゼン等の芳香族化合物またはそれらを含む混合物等を用いることができ、水、粗スチレン、エチルベンゼン、ポリエチルベンゼン(ジエチルベンゼン,トリエチルベンゼン等混合物)が好ましい。溶媒中の重合抑制剤の濃度は、100重量ppm〜1重量%、好ましくは400重量ppm〜0.5重量%である。
【0016】
重合抑制剤を冷却器入口部に添加する際には、上記のとおり、溶媒に溶かした後にノズル等の添加手段を用いてヘッダー内に噴射する。
混合ガスを冷却して気液分離する際に、ヘッダー内の、水が凝縮される温度にある領域内か該領域よりも下流に設置したノズルから重合抑制剤を添加すると、ノズルより上流で水と共に凝縮した重合性化合物の重合が起ってしまう場合が多い。このため、本発明において、溶媒に溶かした重合抑制剤を添加するためのノズルは、ヘッダー内で水が凝縮される温度にある領域よりも上流に、少なくとも1つ設けられる。さらに、ヘッダーの上流の適当な位置で、ヘッダーの上面部、底部、左右側面等にそれぞれノズルを設けることも好ましい。また、ヘッダー上流以外にも、複数箇所にさらに上記ノズルを設置することもできる。ノズルの形状、大きさ等は、用いる冷却器等に合わせて、任意に選択して用いることができる。
【0017】
上記ノズル等の添加手段を用いてヘッダー内に溶媒に溶かした重合抑制剤を導入する場合、重合抑制剤および溶媒との合計の添加量と、前記混合ガスとの流量とが、添加部位で、質量比で1/1000〜1/10の範囲にあることが好ましい。この質量比は、1/200〜1/10の範囲であることがより好ましく、1/100〜1/15であることがさらに好ましい。
【0018】
ノズルからの噴射速度は1m/s以上であればよく、10m/s以上が好ましい。また、ノズルからの噴射速度は、ヘッダー入口の混合ガス流速の1/5以上が好ましい。噴射する液滴の粒径は、ヘッダーの内径、ノズル形式、個数、ガス流速にもより好適な範囲が異なり、一般にガス流速が小さいほど小粒径が好ましいが、1.0〜0.1mmが好ましく、0.5〜0.2mmが更に好ましい。
【0019】
また、上記冷却器では、ヘッダー内に冷却剤を導入して混合ガスと前記冷却剤を接触させることにより、混合ガスを冷却することも好ましい。この場合、重合抑制剤は、この冷却剤に溶解してヘッダー内へ添加することができる。冷却剤は、本発明で用いられる混合ガスがヘッダー内で適当温度にまで冷却され、生成物および重合抑制剤への影響がなければ特に制限はないが、具体的には水、粗スチレン、エチルベンゼン、ポリエチルベンゼン等が挙げられる。また、冷却剤に溶解して添加する場合には、例えば、前記重合性化合物に対する重合抑制剤を、冷却剤に対して100重量ppm〜1重量%、さらに好ましくは400重量ppm〜0.5重量%となるように溶解してヘッダー内に導入する。冷却剤は、ヘッダーに導入される混合ガスの温度より20度以上低い温度が好ましい。冷却剤に溶解された重合抑制剤は、溶媒に溶かした重合抑制剤の添加方法と同様にヘッダー内に添加される。
【0020】
本発明の重合性化合物を含む混合ガスの冷却法の他の1つの態様は、重合抑制剤の添加量が、混合ガス中に含まれる重合性化合物に対する至適量の1〜5倍で、前記冷却器中全体で重合性化合物の重合を抑制する方法であり、具体的には、ヘッダー内の混合ガスの供給側からみて最も上流に配置される最上流側冷却領域における重合抑制剤の濃度(Cin)と最も下流に配置される最下流側冷却領域における重合抑制剤の濃度(Cout)との比が
0.25≦Cout/Cin≦4となるように、重合抑制剤を添加する方法である。なお、各
重合抑制剤の濃度は、各冷却領域における混合ガスを採取し、混合ガス中の重合抑制剤の濃度を測定することで得られる。前記Cout/Cinの範囲としては、0.5≦Cout/Cin≦2が好ましく、0.7≦Cout/Cin≦1.6が更に好ましい。ここで至適量とは注入
した重合抑制剤が、当該冷却器の出口までに消費された量の2倍の量を表す。
【0021】
本発明の上記混合ガスの冷却方法において用いられる冷却器は、並列する複数の冷却用流路を備えるが、該冷却用流路は、その入口と出口の少なくとも1箇所ずつに、それぞれ滞留部を有さないバルブが設置されていることが好ましい。これらのバルブは、それぞれ独立に開閉可能なものとして設置されるが、1つの冷却用流路を構成する入口と出口のバルブの開閉が連動するようにしておくことが好ましい。このような冷却器を用いれば、冷却器内に堆積した重合性化合物のポリマーを各冷却用流路ごとに順次洗浄して取り除くことができる。
【0022】
即ち、1つの冷却用流路を構成する入口と出口に設けられたバルブを閉め、その流路内にある冷却機構に堆積した前記ポリマーを洗浄により除去した後、前記バルブを開くという工程を個々の流路ごとに行うことができる。これによって、他の流路を閉じることなく洗浄を行うことができるため、冷却器全体を停止させることなく洗浄作業を続けることができる。このような冷却器を用いれば、混合ガスの冷却効率を過度に低下させることなく、連続運転させながら、冷却用流路の洗浄が可能である。また、全ての冷却用流路を一斉に洗浄する必要がないため、洗浄を順次行うことができる。
【0023】
ここで、設置されるバルブは、滞留部を有しないバルブである。ここで「滞留部を有しないバルブ」とは、その構造内にガス又は液体の滞留部を実質的に有しないバルブを意味する。ここでいう「滞留部を実質的に有しない」とは、ガスまたは液体の滞留によって生じる不溶性固形物が過度の流通障害や閉塞などの障害をもたらすことがないことを意味する。上記冷却器で用いられるバルブは、滞留部を有しないバルブであれば特に限定はなく、例えば、ゲート弁、ボール弁、およびバタフライ弁等を採用することが好ましい。このうち、特にボール弁を用いることが好ましい。また、バルブのサイズ、形状は、本発明の混合ガスの冷却におけるの効果や、ガスの流れを過度に妨げない限り特に限定はない。具体的には、例えば、東洋バルブ製のUMBF−G、KITZ製のUTB(M)などを好ましく用いることができる。
【0024】
本発明は、エチルベンゼンの脱水素反応を利用したスチレンの製造方法に好適に用いることができる。ただし、本発明はこのような態様に限定されるものではない。
以下に、本発明の重合抑制剤の添加方法を利用したスチレンの代表的な製造方法について図を用いて説明する。まず、スチレンの製造方法における概略フローについて図1を用いて説明する。図1は、スチレンの製造工程を概略的に示す説明図である。図1において、本実施形態のスチレンの製造装置は、脱水素反応器10と、ガス冷却器20と、入口ヘッダー30と、エアフィンクーラ40と、油水分離槽50と、蒸留器60と、ガス成分冷却器70とで構成されている。
【0025】
エチルベンゼンとスチームとは、脱水素反応器10において脱水素反応によりスチレンを含む脱水素反応ガスを生成し、該脱水素反応混合ガスは、ガス冷却器20において冷却された後、ヘッダー30でエアフィンクーラ40の複数の並列するの入口ノズルに分岐され、エアフィンクーラ40において冷却される。その後、エアフィンクーラ出口の気液分離槽において気液分離される。気液分離されたガス成分は更にガス成分冷却器70で冷却され、水および凝縮物は、油水分離槽50にて水相と油相とに分離され、蒸留器60に送られた油相より、スチレンが回収される。また、気液分離されたガス成分は、コンプレッサーを通して昇圧された後燃焼される。
【0026】
図2を用いて脱水素反応器10について説明する。図2は、脱水素反応器の代表例を概略的に示す断面図である。図2に示すように脱水素反応器10は複数段で反応を行うのが好ましく、図2では3段(脱水素反応部10A〜10C)で構成されており、各反応部には酸化鉄系の脱水素触媒が充填されている。即ち、各反応部のそれぞれが脱水素反応器としての役割を果たす。各反応部の入口の温度は、例えば、550〜700℃、特には580〜640℃に設定することができる。また、脱水素反応器内の圧力は、脱水素反応は平衡反応なので、反応の平衡を有利にするため通常は減圧で行われる。最終段の脱水素触媒層の出口圧力は、通常、絶対圧力で0.03〜0.09MPa程度の範囲が好ましく、0.04〜0.07MPa程度がさらに好ましく、0.04〜0.06MPaが特に好ましい。
【0027】
また、各反応部に充填される触媒量は通常はほぼ同量である。更に、脱水素反応部10Aおよび10Bの間、並びに、脱水素反応部10Bおよび10Cの間には、白金系の酸化触媒が充填された酸化反応部11および12が設けられていてもよい。各酸化反応部に充填される酸化触媒量は、各反応部に充填される脱水素触媒量に対して容積比で0.1〜0.5程度とすることができる。
【0028】
図2では、脱水素反応器10は脱水素反応部と酸化反応部とを有しているので、エチルベンゼンが水蒸気と共に脱水素反応器10に供給されると、まず、脱水素反応部10Aにおいて、エチルベンゼンは脱水素反応によりスチレンと水素とを生成し、これらを含んだガス状の脱水素反応混合物(以下、「脱水素反応混合ガス」と称することがある)は、脱水素触媒間を通過して、脱水素反応部10Aから酸化反応部11にまで達する。脱水素触媒層を通過した脱水素反応混合ガスは、酸化反応部11及び12に入る前に、水蒸気で希釈した酸素あるいは空気と混合される。
【0029】
次いで、これらの脱水素反応混合ガスが酸化反応部11にまで達すると、脱水素反応混合ガス中の水素が、酸化触媒により燃焼される。更に酸化反応部11を通過した混合ガスは、脱水素反応部10B、酸化反応部12および脱水素反応部10Cの順に脱水素反応器10内を通過し、各脱水素反応部および酸化反応部において脱水素反応と酸化反応とを繰り返す。
【0030】
エチルベンゼンの脱水素反応は平衡反応であり、550℃以上の高温で行われるのが一般的である。しかし、脱水素反応は吸熱反応であるため、反応の進行と共に温度が下がり、反応速度が低下してしまう。このような場合、脱水素反応触媒を2段以上に分け、脱水素反応によって温度の下がったガスを再加熱し、次段の脱水素反応触媒層へ導入することで効率よく脱水素反応を行うことができる。従って、各脱水素反応部の間に酸化反応部を設けることで、脱水素反応により低下した熱量を酸化反応部における燃焼反応で補うことができる。あるいは熱交換器で再加熱することもできる。これにより、効率的に、脱水素反応器10内におけるエチルベンゼンの脱水素反応を促進することができる。この際、経時的に触媒の活性が低下することから、経時に伴って各脱水素触媒層の入口温度を徐々に高くしてゆくことが一般的である。
【0031】
また、酸化反応部11および12に供給する空気の量を調整することにより、脱水素反応部10Bおよび10Cの入口温度を制御することができる。また、脱水素反応器10Aに供給する水蒸気とエチルベンゼンとの質量比(水蒸気/エチルベンゼン)は、おおよそ2〜0.5が好ましく、1.7〜1.0が更に好ましい。
次いで、脱水素反応器10から排出された脱水素反応混合ガスは、ガス冷却器20に供給される。ガス冷却器20に供給される前の脱水素反応混合ガスの温度は、おおよそ500〜620℃程度であるが、混合ガスはガス冷却器20によって、おおよそ110±10℃付近にまで徐々に冷却される。
【0032】
図3を用いてガス冷却器20の代表例について説明する。図3は、ガス冷却器を概略的に示す断面図である。ガス冷却器20は三段構成であり、3つのガス冷却器(20A〜20C)から構成される。本実施の形態におけるガス冷却器20は、脱水素反応混合ガスをガス状のまま冷却する役割を有している。脱水素反応器10から排出された脱水素反応混合物は、ガス状のままガス冷却器20の供給側(図3における紙面左側)から供給され、ガス冷却器20内において冷却剤との熱交換により冷却される。尚、ガス冷却器20の出口側に設けられるガス冷却器20Cに供給される脱水素反応混合ガスの温度は、300℃以下であることが好ましく、240℃以下であることが更に好ましい。
【0033】
図3に示すように、ガス冷却器20Aには冷却剤として液体または気体が供給される。前記冷却剤としては水、エチルベンゼン、あるいはそれらの混合物の液体または気体が用いられる。ガス冷却器20B、20Cには、冷却剤として水などの液体がポンプ(P3、P4)によって供給される。前記冷却剤としては、水の他、液体で供給しガス冷却器内部で気化するものであれば特に限定なく用いることができ、例えば、エチルベンゼンあるいは水とエチルベンゼンの混合物 を用いることができる。各ガス冷却器に冷却剤として供給された水は、図示を省略する冷却管の外部に供給され、冷却管を介して各ガス冷却器の内部で混合ガスと熱交換をおこない、それにより気化する。冷却管外で気化した水蒸気は、気体のままガス冷却器外に排出される。各ガス冷却器から排出された水蒸気は、脱水素反応器10に供給する水蒸気として再利用してもよい。この際、ガス冷却器20B、20Cに備えられた冷却剤の出口側にはバルブ(V2、V3)がガス冷却器毎に設けられており、該バルブの開閉により、冷却器内の圧力(冷却剤として水を用いた場合は水蒸気の圧力)を制御できるようになっている。
【0034】
次いで、ガス冷却器20において冷却された脱水素反応混合ガスは、更にヘッダー30を通して並列する複数の冷却用流路を有する空冷式冷却器(本明細書中では「エアフィンクーラ」と称することがある)40に供給される。エアフィンクーラ40について図4を用いて説明する。図4は、エアフィンクーラ入口部を概略的に示す断面図である。並列する複数の冷却用流路を連通するヘッダー30には、液排出管32と、重合抑制剤を冷却器内に添加するための複数のノズル35と、24対(合計48本)のエアフィンクーラの上記冷却用流路入口ノズル34が接続されている。図4に示すように、隣り合う2本の冷却用流路入口ノズルは1つの入口ボックス33に接続されており、これらの冷却用流路入口ノズルに入ったガスは入口ボックス33内で合流し複数の冷却管に供給されるようになっている(ヘッダー30の上流側から順に入口ボックス12A、11A・・・1Aとし、対になっているもう一方の図示していない入口ボックスを上流側から順にボックス12B、11B・・・1Bとする。)。エアフィンクーラの各冷却用流路には、ファンなどにより下部から空気が送風されて、内部の脱水素混合ガスを冷却できるように構成されている。
【0035】
冷却用流路出口は入口側ボックスと同様の出口ボックスを介して、出口ヘッダーに接続されている。また、各冷却用流路には、その入口と出口に冷却用流路を閉鎖するためのノズルが設置されている。これらのボックス及び冷却用流路に対応した冷却領域A〜Xがそれぞれ形成されている。この際、重合抑制剤噴霧用ノズルの設置部位から冷却領域Aまでの距離は、ヘッダーの内径及びガス流速によって変るが、おおよそ2〜30mとすることができる。
【0036】
ヘッダー30内に供給された脱水素反応混合ガスは、冷却水注入により、ガス露点である76℃付近にまで冷却され、さらにエアフィンクーラに供給され、スチレンや水等が凝縮した凝縮物(その他、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、重質物(ジビニルベンゼン、ナフタレン、スチルベン、フェニルナフタレン、およびスチレン二量体、スチレン三量体等を含む)とガス成分(H2、CO2、N2、CH4等)とに気液分離される。
【0037】
この際、ノズル35からは冷却水に溶解された重合抑制剤が噴射される。図5に示すように、ヘッダー30には4つのノズル35が設けられている。図5は、図4におけるヘッダー30のZZ’断面から上流方向を見た図である。また、ノズル35の型式は特に限定されず通常は公知のものを適宜選択することができる。ノズルは、ヘッダー30に高速(5m/sec以上)で供給される脱水素反応混合ガスに対し十分な分散が得られるように配置される。
【0038】
ヘッダー30のノズル35が設けられた付近における脱水素反応混合ガスの流速はおおよそ2〜100m/secとすることが好ましく、5〜60m/secとすることが更に好ましい。ノズル35の種類、数、及び配置は脱水素反応混合ガスの流速、入口ヘッダーの内径、ノズルの設置部位から冷却領域Aまでの距離などから適宜決めることができる。
ヘッダー30で注入された冷却水の一部分と凝縮物は、液排出管32から排出され、油水分離槽50に送られる。ヘッダー30に温度センサーを設置し、各冷却領域ごとの温度をモニタリングできるように構成することもできる。この際、ポリマー生成部位では、温度の低下が見られることから、温度センサーにより検出した結果により、ポリマーが生成した部位を特定することができる。また、大部分の混合ガスはヘッダー30から入口ノズル34を通してエアフィンクーラ40に送られる。エアフィンクーラに設置される冷却用流路の数、長さ、及び配置は処理するガス量に応じて、ガス温度を40〜60℃に冷却可能な能力を持つように設けることができる。更に入口ボックス33および出口ボックスは、上記冷却用流路に対応して区分けされていてもよい。
【0039】
エアフィンクーラ40に送られたガス成分は、エアフィンクーラ40の冷却用流路内でさらに冷却され、油分及び水分が凝縮した後、出口ヘッダー下流の気液分離槽で分離され、ガス成分はさらにガス成分冷却器70を通しガス成分中に含まれていた油分及び水等が除去された後、コンプレッサーを通して加熱炉に送られ燃焼される。この際、エアフィンクーラ40及び上記冷却用流路70内で凝縮した油分及び水等は、油水分離槽50へと送られる。
【0040】
油水分離槽50に送られた凝縮物と水とは、油水の比重差により分離し、水相と、油相とに分離される。この際、油相には、スチレンの他、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、スチレンの重合体、重質物等が含まれている。油水分離槽50において、分離された水相は、槽外に排出され、水処理装置等で処理された後、脱水素工程に用いられるスチームやガス冷却器20に用いられる冷却剤として再利用することができる。また、油水分離槽50において分離された油相は、蒸留器60に送られる。蒸留器60においては、油水分離槽50から供給された油相が精製され、各成分に分離され、その内スチレンが回収され、エチルベンゼンは反応器にリサイクルされる。
【実施例】
【0041】
以下に具体的な態様を挙げて本発明の特徴をさらに説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[実施例1]
市販されているスチレン製造用の酸化鉄系脱水素触媒(ズードケミー触媒社製「StyromaxPlus5」)を用い、固定床流通式の3段の脱水素反応器(触媒量は3段ともほぼ同量)にてエチルベンゼン(純度99%以上)からのスチレンの製造を行った。1〜3段の各脱水素反応器触媒層入口温度を3段とも580℃に設定した。また、2、3段目の各段入口部に、白金系自製酸化触媒(各段の脱水素触媒に対する容積比:0.1〜0.5)を充填した。
【0042】
エチルベンゼンをスチームで希釈した後、脱水素反応器に供給した。また、酸化触媒層入口にスチームで希釈した空気を混合した後、脱水素反応器の酸化触媒層では脱水素反応で生成した水素を燃焼させた。この際、酸化触媒層へ供給する空気の量及びスチームの温度を調整することにより、2段目、3段目の脱水素触媒層入口の温度を制御した。1〜3段の脱水素触媒充填層合計のLHSV(liquid hourly space velocity)を0.3h-1、3段脱水素反応器出口圧力を絶対圧力で0.040〜0.045MPaの範囲となるように設定し、1段目脱水素触媒層のスチーム/原料エチルベンゼン重量比1.2の反応条件とした。エチルベンゼンの転化率は約70%であった。
【0043】
次いで、脱水素反応器において生成された脱水素反応混合ガスを3段のガス冷却器を通して110℃まで冷却した。冷却された脱水素反応混合ガスは、それぞれ入口と出口に冷却用流路の閉鎖可能なノズルが設置された12の冷却用流路と、その入口と出口にボックスを有するエアフィンクーラにおいて、更に冷却され気液分離した。この際、脱水素反応混合ガスの質量に対して1/40の質量の冷却水(温度70〜80℃に設定)に、重合抑制剤として85%ジエチルヒドロキシルアミン水溶液(ダイセル化学(株)製)を1000質量ppmとなるように溶解し、スプレーノズルからヘッダー内に注入、噴霧した。
【0044】
ヘッダー内の混合ガス温度は80±5℃(水の凝縮開始温度)まで低下した。このガスを、更に、上記エアフィンクーラで50±10℃まで冷却した。エアフィンクーラに設置された入口、および出口ボックスは、ヘッダーの上流側から1対ずつ備えられている。重合抑制剤注入箇所の脱水素反応生成ガスの流速は約40m/secであり、重合抑制剤注入箇所(ノズル)から最上流冷却領域までの距離は約12mであった。
【0045】
ガス冷却器から排出された脱水素反応混合ガスは、エアフィンクーラ以降において気液分離された後、油水分離槽で水相と油相とに分離され、その後蒸留塔において油相からスチレンが回収された。
このとき、前記エアフィンクーラの入口ボックス(ヘッダーの両側に各12個直線的に配列)の両端部および中央部からガスを採取し、冷却して、水相のジエチルヒドロキシルアミン濃度を測定した。
【0046】
測定は以下の方法で行った。すなわち、まず100mLメスフラスコに試料を適量(ジエチルヒドロキシルアミンとして200μg以下)とり、3価鉄溶液10mLを加え5分間静置し、さらに1,10−フェナントロリン溶液(0.1%)5mLと酢酸アンモニウム(50%)10mLを加え、20分間静置した。水で全量を100mLにした後、吸収セルに入れ、波長510nmで吸光度を測定した。検量線よりジエチルヒドロキシルアミン量を求め、試料中のジエチルヒドロキシルアミン濃度を計算した。測定結果を表1に示す。
【0047】
この条件のまま、11ヶ月運転を継続した。脱水素触媒の劣化にともない、3段の各脱水素触媒層の入口温度を580〜640℃の範囲で徐々に上昇させたところ、11ヶ月後エチルベンゼン転化率は60%となった。11ヶ月経過後運転を停止し、当該装置の開放を行い、目視にて点検したところ、スプレーノズル下流の配管およびエアフィンクーラでの重合性化合物ポリマーの堆積、チューブの閉塞は見られなかった。
[比較例1]
エアフィンクーラのヘッダー部で、混合ガスを導入する際に、脱水素反応混合ガスの質量に対して1/40の質量の水(温度70〜80℃に設定)をスプレーノズルから注入、噴霧し、ほぼ同位置から脱水素反応混合ガスの質量に対して、1/17000の重量の30質量%ジエチルヒドロキシルアミン水溶液(ダイセル化学(株)製を水で希釈)をスプレーノズルから、実施例1の水と標準状態において同体積のN2と共に注入、噴霧した以外は、実施例1と同様にスチレンの製造を行った。各冷却領域におけるジエチルヒドロキシルアミンの濃度測定結果を併せて表1に示す。
【0048】
この条件のまま、11ヶ月運転を継続した後運転を停止し、当該装置の開放を行い、目視にて点検したところ、エアフィンクーラの冷却管に重合性化合物ポリマーによる閉塞が見られ、入口ボックスNo.12Aおよび12B(上流側)の冷却管で閉塞率が高く、全冷却管の7%が閉塞していた。中央部の入口ボックスの冷却管には閉塞が見られなかった。
【0049】
【表1】

※ボックスナンバーは、冷却管の上流側に設けられている入口ボックスから順に12(12A,12B)〜1(1A,1B)とした。
以上、重合抑制剤を冷却水に溶解してヘッダーに添加した場合には、エアフィンクーラの各冷却用流路、および入口、出口ボックス内においては、重合性化合物のポリマーによる閉塞は見られず、この場合、表1から明らかなように、エアフィンクーラの各冷却用流
路における重合抑制剤濃度が20〜30ppmと均一であり、最上流側冷却領域におけるCinと、最下流側冷却領域におけるCoutと、が0.25≦Cout/Cin≦4を満足していることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のスチレンの製造工程を概略的に示す説明図である。
【図2】本発明における脱水素反応器を概略的に示す断面図である。
【図3】本発明におけるガス冷却器を概略的に示す断面図である。
【図4】エアフィンクーラ入口部を概略的に示す断面図である。
【図5】図4における入口ヘッダーのZZ’断面図である。
【符号の説明】
【0051】
10 脱水素反応器
10A〜C 脱水素反応部
11,12 酸化反応部
20,20A〜C ガス冷却器
30 ヘッダー
32 液排出管
33 入口ボックス
34 入口ノズル
35 ノズル
40 エアフィンクーラ
50 油水分離槽
60 蒸留器
70 ガス成分冷却器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列する複数の冷却用流路を備え、かつ該流路に被冷却物質を送るための該流路入口部を連通するヘッダーを有する冷却器に、ヘッダー入口から重合性化合物を含む混合ガスを導入して冷却する際に、前記重合性化合物に対する重合抑制剤を、溶媒に対して100重量ppm〜1重量%となるように溶解して、少なくともヘッダーの上流1箇所から添加す
ることを特徴とする重合性化合物を含む混合ガスの冷却方法。
【請求項2】
並列する複数の冷却用流路を備え、かつ該流路に被冷却物質を送るための該流路入口部を連通するヘッダーを有する冷却器に、ヘッダー入口から重合性化合物を含む混合ガスを導入して冷却する際に、前記重合性化合物に対する重合抑制剤を、混合ガスと直接接触させる冷却剤に溶解して添加することを特徴とする重合性化合物を含む混合ガスの冷却方法。
【請求項3】
並列する複数の冷却用流路を備え、かつ該流路に被冷却物質を送るための該流路入口部を連通するヘッダーを有する冷却器に、ヘッダー入口から重合性化合物を含む混合ガスを導入して冷却する際に、前記重合性化合物に対する重合抑制剤を該冷却器中に導入される重合性化合物に対する至適量の1〜5倍添加する方法において、下記式(1)を満足するようにヘッダー中に添加することを特徴とする重合性化合物を含む混合ガスの冷却方法。
式(1):0.25≦Cout/Cin≦4
[上式において、Cinは前記ヘッダー中最上流に位置する流路入口部の該重合抑制剤の該混合ガス中の濃度であり、Coutは前記ヘッダー中最下流に位置する流路入口部の該重合抑制剤の該混合ガス中の濃度である]
【請求項4】
前記重合抑制剤の添加部位における前記重合抑制剤と溶媒の添加量、あるいは重合抑制剤を含む冷却剤の添加量と、前記混合ガスの流量とが、質量比で1/1000〜1/10の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の重合性化合物を含む混合ガスの冷却方法。
【請求項5】
前記ヘッダーにおいて、混合ガス中の水が凝縮される温度である領域よりも上流において、前記重合抑制剤を添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の重合性化合物を含む混合ガスの冷却方法。
【請求項6】
前記重合性化合物がスチレンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の重合性化合物を含む混合ガスの冷却方法。
【請求項7】
前記重合抑制剤を複数の箇所から添加することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の重合性化合物を含む混合ガスの冷却方法。
【請求項8】
前記冷却器の冷却用流路が、入口と出口の少なくとも1箇所ずつに、それぞれ滞留部を有さないバルブが設置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の重合性化合物を含む混合ガスの冷却方法。
【請求項9】
並列する複数の冷却用流路を備え、かつ該流路に被冷却物質を送るための該流路入口部を連通するヘッダーを有する冷却器であって、前記冷却用流路が、入口と出口の少なくとも1箇所ずつに、それぞれ滞留部を有さないバルブが設置されていることを特徴とする冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−249328(P2009−249328A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98223(P2008−98223)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】