説明

混合容器

【課題】簡便な操作で主剤に対して添加剤を確実に添加して混合体を作製すること。
【解決手段】主剤M1が収容される容器本体2と、隔壁で区画された内容積の異なる複数の収容室の1つ(R1)に添加剤M2が収容されるカートリッジ3と、カートリッジを離脱自在に保持する保持部材4と、を備え、カートリッジは収容室が形成され、開口部がシール材で密封された収容筒10と突起片とを備え、保持部材は、カートリッジを回転自在に支持するガイド筒21とシール材を破断する刃部22と収容筒を囲む囲繞筒23とを備え、囲繞筒には、突起片を中心軸O方向に沿ってスライド自在に収納させる膨出部30A、30C、及び突起片を中心軸回りに回転可能とさせる周溝31が形成され、カートリッジは、突起片が膨出部内に収納されることで、刃部と隔壁とが中心軸方向で非接触となるように保持部材に対して周方向に位置決めされながら組み合わされる混合容器1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主剤が収容された容器本体に添加剤を添加して、主剤と添加剤とを混合させる混合容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば殺菌剤若しくは殺虫剤等の農業用薬剤、又は接着剤等の薬剤、或いは食品として、主剤に添加剤を添加した混合体を使用又は飲食するものが提供されている。
この種の用途に適した混合容器としては、例えば、主剤が収容された容器本体に設けられた装着筒と、添加剤が収容されると共にその開口部がシール材でシールされたカップ体と、該カップ体を保持すると共に装着筒に螺着されるキャップ体と、を具備する混合容器が知られている(特許文献1、2参照)。
【0003】
上記混合容器によれば、装着筒に対してキャップ体を螺着させると、装着筒内に設けられた刃部がシール材を破断してカップ体を開封する。これにより、カップ体に収容された添加剤が装着筒を通じて容器本体に流入し、主剤に添加されることで上記混合体が作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−62768号公報
【特許文献2】特開2011−63275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の混合容器では、混合体を作製するにあたり、キャップ体にカップ体を保持させる作業や、装着筒に対してキャップ体を捩じ込んで螺着させる作業が必要であるので、操作に手間がかかり、その操作性に改善の余地があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、簡便な操作で、主剤に対して添加剤を確実に添加して混合体を作製することができる混合容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
(1)本発明に係る混合容器は、主剤が収容される胴部と、該胴部内に連通した装着筒部と、を有する容器本体と、隔壁によって区画された内容積の異なる複数の収容室を有し、少なくとも1つの収容室内に添加剤が収容されるカップ状のカートリッジと、前記装着筒部に対して装着されると共に、前記カートリッジを装着筒部の中心軸方向に沿って離脱自在に保持する保持部材と、を備え、前記保持部材に対して前記カートリッジを組み合わせることで、前記主剤と前記添加剤とを混合させた混合体を作製する混合容器であって、前記カートリッジは、前記複数の収容室が内部に形成され、開口部がシール材で密封された有底筒状の収容筒と、該収容筒の径方向の外側に向けて突設された突起片と、を備え、前記保持部材は、前記カートリッジを径方向の外側から前記中心軸回りに回転自在に支持するガイド筒と、該ガイド筒内に配設され、前記中心軸方向に沿った前記容器本体の外方に向けて前記シール材を破断する刃部と、前記収容筒を径方向の外側から囲む囲繞筒と、を備え、前記囲繞筒には、前記突起片を前記中心軸方向に沿ってスライド自在に収納させる膨出部が径方向の外側に向けて突設されていると共に、収納された突起片を前記中心軸回りに回転可能とさせる周溝が周方向に沿って形成され、前記カートリッジは、前記突起片が前記膨出部内に収納されることで、前記刃部と前記隔壁とが前記中心軸方向で非接触となるように前記保持部材に対して周方向に位置決めされながら組み合わされることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る混合容器によれば、カートリッジの突起片を保持部材の囲繞筒に設けられた膨出部に位置合わせしながら、カートリッジを装着筒部の中心軸方向に沿って押し込むことで、突起片を膨出部内にスライド移動させながら収納することができると共に、保持部材に対してカートリッジを組み合わせることができる。これにより、刃部を利用してシール材を破断でき、カートリッジの複数の収容室を開封できる。この際、突起片が膨出部内に収納されることで、刃部と隔壁とが中心軸方向で非接触となるようにカートリッジが保持部材に対して周方向に位置決めされるので、刃部を隔壁に干渉させることなく確実にシール材だけを破断できる。
次いで、装着したカートリッジを保持部材に対して装着筒部の中心軸回りに回転させることで、シール材を破断した刃部が該シール材を周方向に広範囲に切り裂く。これにより、複数の収容室のうち少なくとも1つの収容室内に収容された添加剤が装着筒部を通過して容器本体の内部に確実に流入し、主剤に添加される。
【0009】
このように、カートリッジを保持部材に対して押し込んで装着し、その後に続けて回転させるだけの簡便な操作だけで、主剤に添加剤を確実に添加して混合体を作製することができる。特に、従来の螺着方式とは異なり、無駄の少ない連続した最少限の操作で混合体を作製できるので、使い勝手に優れている。
また、カートリッジを回転させる際、膨出部に収納されたカートリッジの突起片を周溝でガイドしながら周方向に移動させることができるので、カートリッジをがたつき少なく回転させることができ、シール材を安定して切断できる。これにより、添加剤を収容室内に残すことなく容器本体内に流入させることができ、所望の混合比率の混合体とすることができる。
また、添加剤を収容させる収容室を適宜選択することで、主剤に対する添加剤の添加量を容易且つ正確に変更でき、例えば用途等に応じて混合体の濃縮度を変化させ易い。
【0010】
(2)上記本発明に係る混合容器において、前記周溝は、前記膨出部を起点として周方向の一方向に向けて延びるように形成されていることが好ましい。
【0011】
この場合には、カートリッジを回転させる方向を一方向に規定できるので、混合体を作製する操作をより簡便にすることができると共に、シール材をより安定して切断し易い。
【0012】
(3)上記本発明に係る混合容器において、前記カートリッジは、前記突起片を複数備え、複数の前記突起片は、前記中心軸を中心として周方向に不均等に配置されるように形成、又はその形状がそれぞれ異なるように形成され、前記囲繞筒には、複数の前記突起片に対応して前記膨出部及び前記周溝が複数形成されていることが好ましい。
【0013】
この場合には、突起片を複数備えているので、カートリッジをよりがたつき少なく安定して回転させ易く、シール材をさらに安定して切断することができる。また、複数の突起片は、装着筒部の中心軸を中心として周方向に不均等に配置されているか、又はその形状がそれぞれ異なっているので、各突起片を間違えることなく各膨出部内に収納させて、保持部材に対してカートリッジを周方向に確実に位置決めした状態で組み合わせることができ、刃部と隔壁との中心軸方向における干渉を確実に回避できる。
【0014】
(4)上記本発明に係る混合容器において、前記添加剤は、農業用薬剤の濃縮剤であることが好ましい。
【0015】
この場合には、使用する直前に混合体とすることが一般に望まれているので好適である。なお、農業用薬剤として、例えば肥料、殺菌剤、殺虫剤、害虫忌避剤、除草剤、生物農薬、天然系農薬、展着剤、着果促進剤若しくは植物成長調整剤等が挙げられる。
【0016】
これらのうち、生物農薬に属する農業用薬剤の濃縮剤の好適な例としては、例えば、バーティシリウム属、バチルス属、ペーシロマイセス属、ボーベリア属、若しくはメタリジウム属等に属する害虫に対して感染力を有する微生物、または、アグロバクテリウム属、アクチノマデュラ属、エンテロバクター属、キサトスポリア属、キブデロスポランジウム属、シュードモナス属、ストレプトミセス属、バチルス属、フザリウム属、若しくはペレニポリア属等に属する抗生物質産生微生物、または、アシネトバクター属、アムペロミシス属、アルカンジウム属、エルビニア属、エンテロバクター属、クラドスポリウム属、コリネバクテリウム属、シストバクター属、シュードモナス属、セラチア属、トリコデルマ属、バチルス属、フザリウム属、ペーシロマイセス属、ペニシリウム属、若しくはミキソコッカス属等に属する病原菌に対して拮抗性を有する微生物、または、ザントモナス属、若しくはメタリジウム属等に属する雑草に対して感染力を有する微生物、または、アスペルギルス属、アルスポトリス属、ストレプトミセス属、トリコデルマ属、バチルス属、バクセラ属、バエシロミセス属、パスツリア属、ミロテシウム属、若しくはモナクロスボリウム属等に属する殺線虫性を有する微生物、または、弱毒ウィルス、若しくはバクテリオファージ等に属する病原菌に対して感染力を有するウィルス等を、乾燥等によって製剤化したもの等が挙げられる。
また天然系農薬に属する農業用薬剤の濃縮剤の好適な例としては、例えば、バチルス・チューリンゲンシス由来のBtたんぱく質を乾燥等によって製剤化したもの、あるいは微生物や植物の産生した有機物を濃縮製剤化したもの等が挙げられる。
特に、前記添加剤が、生物農薬若しくは天然系農薬に属する農業用薬剤の濃縮剤である場合には、混合体の状態では、時間の経過に伴い効能の低下、変質、あるいは腐敗等が発生し易く、使用する直前に混合体とすることが特に望まれているので、前述の作用効果が顕著に奏功されることとなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る混合容器によれば、簡便な操作で、主剤に対して添加剤を確実に添加して混合体を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る混合容器の実施形態を示す一部縦断面図である。
【図2】図1に示す部分拡大図である。
【図3】図1に示すカートリッジの上面図である。
【図4】図3に示すA−A断面図である。
【図5】図3に示すカートリッジの下方図である。
【図6】図1に示す保持部材の断面図である。
【図7】図6に示す保持部材の上面図である。
【図8】図6に示す保持部材の下面図である。
【図9】図7に示す保持部材を矢印B方向から見た側面図である。
【図10】図7に示す保持部材を矢印C方向から見た側面図である。
【図11】図1に示す状態における、保持部材及びカートリッジの組み合わせ状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る混合容器の実施形態について図面を参照して説明する。
<混合容器の構成>
図1及び図2に示すように、本実施形態の混合容器1は、主剤M1が収容される容器本体2と、添加剤M2が収容されるカートリッジ3と、容器本体2に装着された保持部材4と、を備え、保持部材4に対してカートリッジ3を組み合わせることで、主剤M1と添加剤M2とを混合させた混合体を作製することが可能な容器である。
【0020】
なお、上記主剤M1は容器本体2内に詰め替え可能とされている。また、添加剤M2が収容されたカートリッジ3が販売されている場合には、混合容器1のうち少なくとも容器本体2及び保持部材4については繰り返し使用することが可能とされている。
【0021】
また混合体としては、例えば農業用薬剤若しくは接着剤等の薬剤、あるいは食品等が挙げられる。これらのうち、農業用薬剤としては、例えば肥料、殺菌剤、殺虫剤、害虫忌避剤、除草剤、生物農薬、天然系農薬、展着剤、着果促進剤若しくは植物成長調整剤等が挙げられる。
さらに混合体としては、主剤M1としての希釈液中に添加剤M2としての濃縮剤を添加して、有効成分が適切な濃度に希釈されたもの、主剤M1と添加剤M2とを混合することで新たな性質を示す生成物、あるいは主剤M1に例えば芳香成分や調味料等の添加剤M2を単に添加したもの等が挙げられる。
【0022】
また、混合体が農業用薬剤の場合、主剤M1と添加剤M2との組み合わせとしては、例えば、肥料と殺虫剤、肥料と殺菌剤、殺菌剤と殺虫剤、殺菌スペクトラムが互いに異なる複数の殺菌剤、殺虫スペクトラムが互いに異なる複数の殺虫剤、展着剤と殺菌剤、展着剤と殺虫剤、または、水と肥料、殺菌剤、殺虫剤、害虫忌避剤、除草剤、生物農薬、天然系農薬、展着剤、着果促進剤若しくは植物成長調整剤等が挙げられる。
さらに、添加剤M2の剤型としては、例えば、顆粒水和剤若しくは顆粒水溶剤である顆粒剤、錠剤、粒剤、粉剤、水和剤、乳剤、液剤、油剤、フロアブル剤、エマルション剤、マイクロエマルション剤、またはサスポエマルション剤等が挙げられる。
【0023】
(容器本体)
容器本体2は、主剤M1が収容される胴部2aと、該胴部2aの上端部に設けられた口部2bと、該口部2bよりも下方に位置した部分において胴部2aに突設され、且つ容器本体2内に連通する装着筒部2cと、を備えている。
口部2bには、注出具としてトリガー式噴出器5が装着されている。このトリガー式噴出器5は、トリガー5aを揺動させる操作によって、作製された容器本体2内の混合体を吸い上げた後、ノズル5bから外部に噴出させる部材である。
【0024】
装着筒部2cは、容器本体2の底部側から口部2b側に向かうに従い容器本体2の外方に向けて、つまり斜め上方に向けて延在している。そして、この装着筒部2cに対して上記保持部材4が螺着されている。但し、螺着に限定されるものではなく、装着筒部2cに対して装着されていれば良い。例えば、回り止めがなされた状態でアンダーカット嵌合によって装着されていても良い。
【0025】
なお、保持部材4及びカートリッジ3は、装着筒部2cの中心軸Oと同軸に配設されている。以下、この中心軸Oに沿って容器本体2の外方に向かう方向を上方、容器本体2の内方に向かう方向を下方といい、中心軸Oに直交する方向を径方向、中心軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0026】
(カートリッジ)
カートリッジ3は、図3〜図5に示すように、隔壁11によって区画された内容積の異なる2つの収容室R1、R2が内部に形成され、開口部がシール材12で密封された有底筒状の収容筒10と、この収容筒10を径方向の外側から間隔を開けて囲む外筒13と、この外筒13から径方向の外側に向けて突設された3つの突起片14A、14B、14Cと、を具備するカップ状の部材である。
【0027】
なお、このカートリッジ3は、図2に示すように、シール材12側を下方に向けた姿勢で保持部材4に対して組み合わされる部材であり、図示の例では組み合わせ時の姿勢に対応して上下方向を逆向きとしている。従って、以下の説明では、図示の姿勢に応じた上下方向で説明する。つまり、上記収容筒10は、下方に開口した有頂筒状に形成されているものとして説明する。
【0028】
上記収容筒10は、上端部が段付きの2段形状とされており、これにより収容筒10内には、開口端からの高さ(深さ)が異なる2つの空間が画成されている。そして、この2つの空間を仕切るように上記隔壁11が収容筒10内に形成されており、一方の空間側が一方の収容室R1、他方の空間側が他方の収容室R2とされている。
そして、本実施形態では、収容室R2よりも内容積の大きい収容室R1内に添加剤M2が収容されているものとして説明する。なお、図3〜図5においては、添加剤M2の図示を省略している。
【0029】
収容筒10の開口端及び隔壁11の下端には、上記シール材12が貼着されており、これにより収容筒10の開口部が密封されている。なお、シール材12としては、円形薄膜状のフィルムやシート等が挙げられる。
上記外筒13は、中心軸Oと同軸に配置されていると共に収容筒10の下端部寄りに配置され、その上端部は収容筒10から径方向の外側に向けて突設された環状のフランジ部15に連設されている。
【0030】
上記3つの突起片14A、14B、14Cは、外筒13とフランジ部15とが連設した部分から径方向の外側に向けて突設された板片であって、周方向に間隔を開けて配置されている。図示の例では、3つの突起片14A、14B、14Cは、中心軸Oを中心として周方向に不均等に配置されている。具体的には、突起片14B及び突起片14Cと、突起片14Aにおける周方向で対向する側壁部と、の間隔が130度程度とされている。これにより、突起片14B、14Cは、図3において突起片14Aにおける周方向中間部と中心軸Oとを径方向に沿って結ぶ仮想線Lに対して、略線対称となるように配置されている。
【0031】
更に、これら3つの突起片14A、14B、14Cは、周方向に沿った周長(図3に示す長さW)がそれぞれ異なるように形成されている。具体的には、突起片14A、突起片14B、突起片14Cの順に周長が短くなるように形成されている。従って、形状による違いによって、3つの突起片14A、14B、14Cを視覚的に容易に判別することが可能とされている。
【0032】
また、収容筒10の外周面には、中心軸O方向に沿って延びる2つの縦リブ16が形成されている。これら縦リブ16は、中心軸Oを挟んで径方向の反対側に位置し、且つ上記した仮想線Lに沿って配置されるように形成されている。この際、一方の縦リブ16は、段付き形状とされた収容筒10の高さの低くなった部分の上方に回りこむように形成されている。
【0033】
(保持部材)
保持部材4は、カートリッジ3を中心軸O方向に沿って離脱自在に保持する部材であって、図2及び図6〜図10に示すように、装着筒部2cに螺着される装着筒20と、装着筒部2cの内側に配置され、カートリッジ3の外筒13を径方向の外側から中心軸O回りに回転自在に支持するガイド筒21と、このガイド筒21内に配設され、カートリッジ3のシール材12を上方に向けて破断する刃部22と、カートリッジ3の収容筒10を径方向の外側から囲む囲繞筒23と、を備えている。
【0034】
装着筒20の外周面には、中心軸O方向に沿って延びる2つの縦リブ25が形成されている。これら縦リブ25は、中心軸Oを挟んで径方向の反対側に位置している。そして、この縦リブ25を利用して、容器本体2の装着筒部2cに保持部材4を螺着する操作を容易に行うことが可能とされている。
【0035】
上記ガイド筒21は、装着筒20の径方向の内側に位置しており、該ガイド筒21の上端部と装着筒20の上端部とが環状の連結壁26によって連結されている。なお、連結壁26と装着筒部2cの開口端との間には環状のパッキン27(図2参照)が介在されており、連結壁26と装着筒部2cの開口端との間の隙間を液密に封止している。
また、ガイド筒21は、その内径がカートリッジ3の外筒13が接する程度のサイズとされており、これにより内面全体で外筒13を回転自在に支持している。ガイド筒21の下端部には、装着筒部2cを塞ぐ円板部28が連設されている。そして、この円板部28に複数の上記刃部22が上方に向けて先鋭化した状態で、周方向に間隔を開けて立設されている。また、円板部28における刃部22と刃部22との間の部分は、円板部28を貫通する開口部28aとされている。
【0036】
上記囲繞筒23は、連結壁26から上方に向けて立設された筒体であり、その内径は上記ガイド筒21の内径よりも拡径している。そして、この囲繞筒23にはカートリッジ3の3つの突起片14A、14B、14Cを中心軸O方向に沿ってスライド自在に収納させる3つの膨出部30A、30B、30Cが、3つの突起片14A、14B、14Cの位置及び形状に対応して径方向の外側に向けて膨らむように形成されている。
【0037】
つまり、突起片14Aを収納する膨出部30Aと、突起片14Bを収納する膨出部30Bと、突起片14Cを収納する膨出部30Cと、がそれぞれ形成されている。これにより、各突起片14A、14B、14Cを各膨出部30A、30B、30C内に嵌め込みながら、保持部材4に対してカートリッジ3を組み合わせることが可能とされ、それによってカートリッジ3は保持部材4に対して周方向に位置決めされながら組み合わされる。そして、カートリッジ3を保持部材4に組み合わせることで、保持部材4の刃部22がカートリッジ3のシール材12を上方に向けて破断することが可能とされている。
【0038】
ところで、複数の刃部22は、カートリッジ3が周方向に位置決めされながら保持部材4に組み合わされた際、カートリッジ3の収容筒10内で2つの収容室R1、R2を区画している隔壁11に対して中心軸O方向で非接触となるように設けられている。
【0039】
また、囲繞筒23には、膨出部30A、30B、30C内に収納されたカートリッジ3の突起片14A、14B、14Cを中心軸O回りに回転可能とさせる周溝31が、当該膨出部30A、30B、30Cの下端部から周方向に沿って形成されている。しかも、この周溝31は、膨出部30A、30B、30Cを起点として周方向の一方向(図示の例では、上方から見て時計方向)に向けて延びるように形成されている(図7参照)。
これにより、図11に示すように、保持部材4に対してカートリッジ3を周方向の一方向に回転(例えば40度〜60度)させることが可能とされている。なお、カートリッジ3の収容筒10には、上記回転方向を示す矢印Pが明示されている(図3参照)。
【0040】
<混合容器の使用>
次に、上述したように構成された混合容器1を使用して、主剤M1に添加剤M2を添加して混合体を作製する場合について説明する。
なお、容器本体2の装着筒部2cに保持部材4が螺着されており、カートリッジ3が保持部材4から分離している状態から説明する。
【0041】
まず、カートリッジ3のシール材12を保持部材4側に向けた姿勢で、カートリッジ3の突起片14A、14B、14Cを保持部材4の囲繞筒23に設けられた膨出部30A、30B、30Cに対してそれぞれ位置合わせしながら、カートリッジ3を中心軸O方向に沿って下方に押し込む。これにより、各突起片14A、14B、14Cを各膨出部30A、30B、30C内にスライド移動させながら収納することができると共に、カートリッジ3の外筒13が保持部材4のガイド筒21内及び囲繞筒23内に進入するので、保持部材4に対してカートリッジ3を組み合わせることができる。また、カートリッジ3を組み合わせることで、刃部22を利用してシール材12を破断でき、カートリッジ3の2つの収容室R1、R2を開封できる。
【0042】
この際、各突起片14A、14B、14Cが各膨出部30A、30B、30C内に収納されることで、刃部22と隔壁11とが非接触となるようにカートリッジ3が保持部材4に対して周方向に位置決めされるので、刃部22を隔壁11に干渉させることなく確実にシール材12だけを破断できる。
【0043】
次いで、図11に示すように、装着したカートリッジ3を保持部材4に対して周方向の一方向に向けて回転させることで、シール材12を破断した刃部22が該シール材12を周方向に亘って広範囲に切り裂く。これにより、図2に示すように、収容室R1内に収容された添加剤M2が、保持部材4の開口部28a及び装着筒部2cを通過して容器本体2の内部に確実に流入し、主剤M1に添加される。
【0044】
このように、カートリッジ3を保持部材4に対して押し込んで装着し、その後に続けて回転させるだけの簡便な操作だけで、主剤M1に添加剤M2を確実に添加して混合体を作製することができる。特に、従来の螺着方式とは異なり、無駄の少ない連続した最少限の操作で混合体を作製できるので、使い勝手に優れている。
【0045】
また、カートリッジ3を回転操作する際、膨出部30A、30B、30C内に収納されたカートリッジ3の突起片14A、14B、14Cを周溝31でガイドしながら周方向に移動させることができるので、カートリッジ3をがたつき少なく回転させることができ、シール材12を安定して切断できる。
これにより、添加剤M2を収容室R1内に残すことなく容器本体2内に流入させることができ、所望の混合比率の混合体とすることができる。
【0046】
しかも、本実施形態では、カートリッジ3が3つの突起片14A、14B、14Cを有しているので、カートリッジ3をよりがたつき少なく安定して回転させ易く、シール材12をより安定して切断できる。加えて、周溝31が膨出部30A、30B、30Cを起点として一方向に向けて延びているので、カートリッジ3の回転方向を一方向に規定できる。従って、この点においても、混合体を作製する操作をより簡便にすることができると共に、シール材12を安定に切断し易い。
【0047】
なお、形状による違いによって3つの突起片14A、14B、14Cを視覚的に容易に判別することができるうえ、各突起片14A、14B、14Cに対応して膨出部30A、30B、30Cが形成されているので、間違えることなく各突起片14A、14B、14Cを各膨出部30A、30B、30C内に収納させて、保持部材4に対してカートリッジ3を周方向に確実に位置決めした状態で組み合わせることができ、刃部22と隔壁11との干渉を確実に回避できる。
【0048】
なお、2つの収容室R1、R2のうち、内容積の大きい収容室R1内に添加剤M2を収容させたが、内容積の小さい収容室R2内に添加剤M2を収容させても構わない。このように、添加剤M2を収容させる収容室R1、R2を適宜選択することで、主剤M1に対する添加剤M2の添加量を容易且つ正確に変更でき、例えば用途等に応じて混合体の濃縮度を変化させ易い。
更に、2つの収容室R1、R2のうちの一方にだけ添加剤M2を収容するのではなく、収容室R1、R2の両方に添加剤M2を収容させても構わない。この場合、同一の添加剤M2を収容しても良いし、異なる添加剤M2を収容しても良い。
更には、収容室の数は2つに限定されるものではなく、3つ以上としても良い。この場合には、少なくとも1つの収容室内に添加剤M2が収容されていれば良い。
【0049】
更に、添加剤M2として、農業用薬剤の濃縮剤が採用された場合には、使用する直前に混合体とすることが一般に望まれているので好適である。
特に、添加剤M2が、生物農薬若しくは天然系農薬に属する農業用薬剤の濃縮剤である場合には、混合体の状態では、時間の経過に伴い効能の低下、変質、あるいは腐敗等が発生し易く、使用する直前に混合体とすることが特に望まれているので、前述の作用効果が顕著に奏功されることとなる。
【0050】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0051】
例えば、上記実施形態では、容器本体2の口部2bにトリガー式噴出器5を装着したが、これに代えて例えば、ポンプ、注出ノズル若しくは注出孔が形成されたキャップ体等の他の注出具、あるいは封止キャップ等を装着しても良い。
また、容器本体2の胴部2aに装着筒部2cを1つだけ設けた構成としたが、2つ以上設け、それぞれに保持部材4を装着したうえでカートリッジ3を組み合わせても構わない。また装着筒部2cの突設方向は前述の斜め上方に限らず、例えば鉛直方向若しくは水平方向であっても良い。
【0052】
また、カートリッジ3の構成は、上記実施形態に限定されるものではなく適宜変更して良い。
例えば、3つの突起片14A、14B、14Cを具備する構成としたが、1つ又は2つでも4つ以上でも構わない。複数設けた場合には、配置や形状の差異等によって、保持部材4に対して周方向に位置決めされた状態でカートリッジ3を確実に組み合わせることができるように構成すれば良い。
また、収容筒10を段付きの2段形状となるように構成したが、段付きに形成しなくても構わない。この場合であっても、隔壁11によって内容積の異なる2つの収容室R1、R2を画成することが可能である。
また、外筒13は必須ではなく、具備しなくても構わない。この場合には、収容筒10を保持部材4のガイド筒21に接する程度まで拡径させると共に、収容筒10から突起片14A、14B、14Cを突設させれば良い。
【0053】
また、保持部材4の構成は、上記実施形態に限定されるものではなく適宜変更して良い。
例えば、膨出部30A、30B、30Cを起点として周方向の一方向に延びるように周溝31を形成し、カートリッジ3の回転方向を一方向に規制したが、膨出部30A、30B、30Cを中心として周方向の一方向及び他方向にそれぞれ延びるように周溝31を形成しても構わない。この場合には、カートリッジ3を一方向及び他方向の両方向に適宜回転させることで、シール材12を広範囲に切断することが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
O…中心軸
M1…主剤
M2…添加剤
R1、R2…収容室
1…混合容器
2…容器本体
2a…胴部
2c…装着筒部
3…カートリッジ
4…保持部材
10…収容筒
11…隔壁
12…シール材
14A、14B、14C…突起片
21…ガイド筒
22…刃部
23…囲繞筒
30A、30B、30C…膨出部
31…周溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤が収容される胴部と、該胴部内に連通した装着筒部と、を有する容器本体と、
隔壁によって区画された内容積の異なる複数の収容室を有し、少なくとも1つの収容室内に添加剤が収容されるカップ状のカートリッジと、
前記装着筒部に対して装着されると共に、前記カートリッジを装着筒部の中心軸方向に沿って離脱自在に保持する保持部材と、を備え、
前記保持部材に対して前記カートリッジを組み合わせることで、前記主剤と前記添加剤とを混合させた混合体を作製する混合容器であって、
前記カートリッジは、
前記複数の収容室が内部に形成され、開口部がシール材で密封された有底筒状の収容筒と、該収容筒の径方向の外側に向けて突設された突起片と、を備え、
前記保持部材は、
前記カートリッジを径方向の外側から前記中心軸回りに回転自在に支持するガイド筒と、該ガイド筒内に配設され、前記中心軸方向に沿った前記容器本体の外方に向けて前記シール材を破断する刃部と、前記収容筒を径方向の外側から囲む囲繞筒と、を備え、
前記囲繞筒には、前記突起片を前記中心軸方向に沿ってスライド自在に収納させる膨出部が径方向の外側に向けて突設されていると共に、収納された突起片を前記中心軸回りに回転可能とさせる周溝が周方向に沿って形成され、
前記カートリッジは、前記突起片が前記膨出部内に収納されることで、前記刃部と前記隔壁とが前記中心軸方向で非接触となるように前記保持部材に対して周方向に位置決めされながら組み合わされることを特徴とする混合容器。
【請求項2】
請求項1に記載の混合容器において、
前記周溝は、前記膨出部を起点として周方向の一方向に向けて延びるように形成されていることを特徴とする混合容器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の混合容器において、
前記カートリッジは、前記突起片を複数備え、
複数の前記突起片は、前記中心軸を中心として周方向に不均等に配置されるように形成、又はその形状がそれぞれ異なるように形成され、
前記囲繞筒には、複数の前記突起片に対応して前記膨出部及び前記周溝が複数形成されていることを特徴とする混合容器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の混合容器において、
前記添加剤は、農業用薬剤の濃縮剤であることを特徴とする混合容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−107696(P2013−107696A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256385(P2011−256385)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000127879)株式会社エス・ディー・エス バイオテック (23)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】