説明

混合廃棄物の分別回収方法、およびその装置

【課題】 水を用いることなく、重量再生物と軽量再生物とを含む混合廃棄物を有効に分別回収可能な方法等を提供すること。
【解決手段】 混合廃棄物2を投入する分別空間3を備えた分別用ドラム4と、この分別用ドラム4を回転軸Lの回りに回転させるドラム回転装置5と、分別空間3内に回転軸Lの方向に向かって送風する送風装置6とを備え、分別用ドラム4は回転軸Lが水平から所定の角度θを備えて傾斜して設置されており、分別空間3には回転軸Lに沿った上下一対の開放口7,8が設けられ、送風装置6は下側開放口7から上側開放口8に向かって送風するように構成されているとともに、分別用ドラム4の内壁面には、分別用ドラム4の回転に伴って分別空間3内の混合廃棄物2を空中に放出させる放出用羽根11が設けられている分別回収装置1によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合廃棄物を重量再生物と軽量再生物とに分別して回収するための方法、及びその方法を用いた混合廃棄物の分別回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物等の廃却建物の解体物は重機による解体および選別をし、木片や金属物等を手作業または重機を利用した選別機械によって除去し、次に残物を産業廃棄物として廃棄したり、埋め立て材として処分するという処理方法が普及している。この廃却建物の処理方法によると、木造建物の混合廃棄物は、解体の前工程において木片を除去するものの、その完全除去が困難なことから相当量の木質物が残存して廃棄されるので、多量の微小木質物と他の建材のコンクリート・壁材等が混合した物となるので、多量の産業廃棄物が発生することになる。
現在の社会では、できるだけリサイクル率を上昇させて環境への負荷を減少させるための分別回収方法が求められている。すなわち、混合廃棄物を重量物と軽量物とに分別することで、それぞれ重量再生物(例えば、瓦礫類・コンクリート・砂利・石などで構成される再生物)および軽量再生物(例えば、木くず・廃プラスチック・紙くず・繊維くずなどで構成される再生物)として再資源化を図ることで、環境への負荷を減少させることができる。本発明者は、従来からこの課題の解決に取り組み、その一部を特許出願している(特許文献1)。特許文献1には、前後一対に開放した分別ドラムを傾斜させて設置し、この分別ドラム中に水を流し込みつつ、混合廃棄物を投入・撹拌する。水よりも小さな比重を有する木質分は水上に浮くため、上方の開口から水と共に排出させる。一方、下方の開口側からは、水よりも大きな比重を有する混合廃棄物が沈殿・排出される。こうして、木質分と、非木質分とが分別される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−61347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術は、木質分と非木質分とを分別回収するために有効な発明であるが、大量の汚水が発生するため、その処理に手間がかかるという問題があった。
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、水を用いることなく、混合廃棄物を重量再生物と軽量再生物とに分別回収できる方法、およびそのための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
混合廃棄物に送風を行うことにより、重量再生物と軽量再生物とに分別する技術は従来にも認められる。例えば、本願発明者は、大型扇風機で送風しながら、混合廃棄物を空中から落下させるという試験を行ったことがある。しかしながら、単回の落下では、軽量再生物は十分に送風方向には移動しないため、分別は困難であった。この問題は、(1)落下中に送風環境に曝される時間が短いという時間的な問題に加えて、(2)軽量再生物の向きが送風方向に対して大きな面積を備えた位置関係にない場合には、ほとんど移動しないという位置的な問題によるものであった。本発明者は、混合廃棄物を繰り返して空中に放出することで、複数回にわたって混合廃棄物を送風環境に曝すという技術思想に至ることで、上記2つの問題を解決することに成功した。すなわち、混合廃棄物を繰り返して送風環境に曝すことで、送風環境に曝す時間を長くできると共に、軽量再生物の向きが送風方向に対して大きな面積を備えた位置関係となる可能性(確率)が高くなり、軽量再生物の移動距離を大きくできるのである。
こうして、上記目的を達成するための発明に係る分別回収方法は、混合廃棄物を、より重い重量再生物と、より軽い軽量再生物とに分別するためのものであって、前記混合廃棄物を繰り返して空中に放出しつつ、複数回にわたって空中にある混合廃棄物に対して送風することで前記軽量再生物を送風方向に沿ってより多く移動させて前記重量再生物と前記軽量再生物とを分別することを特徴とする。
また、上記発明に使用するための分別回収装置であって、混合廃棄物を投入する分別空間を備えた分別用ドラムと、この分別用ドラムを回転軸の回りに回転させるドラム回転装置と、前記分別空間内に前記回転軸の方向に向かって送風する送風装置とを備えており、前記分別用ドラムは前記回転軸が水平から所定の角度を備えて傾斜して設置されており、前記分別空間には前記回転軸に沿った上下一対の開放口が設けられ、前記送風装置は下側開放口から上側開放口に向かって送風するように構成されているとともに、前記分別用ドラムの内壁面には、前記分別用ドラムの回転に伴って前記分別空間内の混合廃棄物を空中に放出させる放出用羽根が設けられていることを特徴とする。このとき、前記放出用羽根は、複数のものが前記回転軸に対して同位置に配置された羽根列とされているとともに、前記回転軸に沿って前記羽根列が複数にわたって設けられ、前後に位置する羽根列の放出用羽根は互いに位置ずれして配置されていることが好ましい。
【0006】
混合廃棄物とは、例えば木造建造物等を解体したときに発生する廃棄物である。この混合廃棄物には、より重い重量再生物(例えば、瓦礫類・コンクリート・砂利・石などで構成される再生物)と、より軽い軽量再生物(例えば、木くず・廃プラスチック・紙くず・繊維くずなどで構成される再生物)とが混合している。このように混合廃棄物は、均一な要素によって構成されていないために、使用できる範囲が極めて限定されており、再資源化が図られることは難しかった。なお、手作業で重量再生物と軽量再生物とに分別することは不可能ではないが、人件費が膨大となってしまうため、現実的ではなかった。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、混合廃棄物を繰り返して空中に放出し、空中にあるときに送風環境に曝す。この送風に伴い、軽量再生物は重量再生物に比べて、より遠くに移動する。この操作を繰り返すことによって、軽量再生物と重量再生物とを分離回収できる。本発明では、水を用いることがないので、環境への負荷が小さな状態で、混合廃棄物を分別し、再資源化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】分別回収装置の概要図である。なお、図示の都合上、羽根列を簡易に示してある。より、詳細には、図5に示す通りである(図6においても同様)。
【図2】分別用ドラムの内壁面に設けられた一列の羽根列を示す断面図である。
【図3】分別用ドラムの内壁面に設けられた一列の羽根列を示す側断面図である。
【図4】分別用ドラムにおいて、三列の羽根列を示す断面図である。なお、図中には、説明のために羽根列ごとに異なる模様を施してある。
【図5】分別用ドラムにおいて、三列の羽根列を示す側断面図である。
【図6】分別回収装置が駆動中の様子を示す図である。
【図7】分別回収装置が駆動中のときの分別用ドラムの内部の様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
【0010】
図1には、本実施形態の分別回収装置1(以下、単に「装置1」という)の概要を示した。装置1には、混合廃棄物2を投入する分別空間3を備えた分別用ドラム4と、この分別用ドラム4を仮想の回転軸Lの回りに回転させるモータ5と、分別空間3の内部に回転軸Lの方向に向かって送風する送風装置6が設けられている。分別用ドラム4は中空状に形成されており、回転軸Lに沿って前後一対の開放口7,8が設けられている。分別用ドラム4の外壁には、モータ5に連結されたチェーン9が設けられており、モータ5の駆動によって分別用ドラム4が回転軸Lの回りに所定の方向に回転する。分別用ドラム4は、回転軸Lが地面に水平な仮想線Mから所定の角度θだけ傾斜した状態で設置されており、下側開放口7からは、分別空間3の中央に混合廃棄物2を投入するための投入用コンベア10の先端が挿入されている。
【0011】
分別用ドラム4は、枠体16の上面に設置されており、枠体16と分別用ドラム4との間には、上下一対の回転受部材17が設けられることにより、分別用ドラム4を回転可能に支持している(なお、図示の都合上、図1には、上下一対の回転受部材17のみを示したが、同様のものが裏面側にも設けられており、合計4個の回転受部材17によって、分別用ドラム4を支持している)。
送風装置6は、下側開放口7に隣接して設けられており、分別空間3に向かって下側開放口7側から上側開放口8側に風を送るようになっている。また、下側開放口7の下方には、重量再生物2Bを受ける受皿18が設けられている。
分別用ドラム4の内壁面には、図2に示すように、中央に向かって放出用羽根11が設けられている。各放出用羽根11は、図3に示すように、回転軸Lの方向に延設された長方形状とされている。また、放出用羽根11は回転軸Lに沿って同じ位置に設けられた複数のもの(図2においては12個)が一つの羽根列12〜14として構成されており、この羽根列12〜14が前後三列に形成されている。
【0012】
各羽根列12〜14においては、図2に示すように、複数の放出用羽根11は分別用ドラム4の周方向に沿って均等なピッチで配置されている。また、図4及び図5に示すように、各羽根列12〜14については放出用羽根11の位置が互いに位置ずれするように、回転軸Lの回りに所定の角度だけずらせた(好ましくは、隣り合う放出用羽根11が離間する角度の1/3の角度だけずらせて)位置に設けられている。投入用コンベア10の先端位置は、中央の羽根列13の位置に整合されており、混合廃棄物2は分別空間3への投入直後には、中央の羽根列13の位置に落下するようになっている。
また、図1に示すように、上側開放口8の下方に隣接して、軽量再生物を運搬する排出用コンベア15が設けられている。
【0013】
次に、上記のように構成された本実施形態の装置1について、図6及び図7を参照しつつ、その作用及び効果を説明する。
図6に示すように、モータ5を駆動させて、分別用ドラム4を矢印Y方向に回転させつつ、送風装置6から矢印X方向に送風した状態としておき、投入用コンベア10から混合廃棄物2を分別空間3に投入する。なお、図中の矢印Aは、混合廃棄物2の投入方向である。投入用コンベア10の先端から、分別空間3に投入された混合廃棄物2は、落下しながらX方向の風を受け、ほぼ羽根列13の位置に至る。ここで分別用ドラム4は回転しているので、図7に示すように、混合廃棄物2は放出用羽根11の上面に乗りながら、適当な位置で再び分別空間3に放出される(図中の矢印Zは、混合廃棄物2が放出用羽根11から分別空間3に放出される方向を示す)。ここで、混合廃棄物2は再びX方向の風を受けながら分別空間3内を落下し、放出用羽根11に至る。
【0014】
この動作を繰り返すことにより、より軽い軽量再生物2Aは、X方向に移動し、上側開放口8に至ったところで分別ドラム4から排出用コンベア15に落下する。なお、排出用コンベア15は、図7中の矢印B方向に軽量再生物2Aを運搬する。一方、上記動作を繰り返すことにより、より重い重量再生物2Bは、分別空間3内を下方に移動し、下側開放口7に至ったところで分別ドラム4から排出される。こうして、排出された重量再生物2Bは、受皿18の上面に溜まっていく。
このように、本実施形態によれば、混合廃棄物2を分別空間3中に放出し、空中にあるときに送風装置6によって送風する。この送風に伴い、軽量再生物2Aは、重量再生物2Bに比べて、より遠くに移動する。この操作を繰り返すことによって、軽量再生物2Aと重量再生物2Bとを分離回収できた。本実施形態では、水を用いることがないので、環境への負荷が小さな状態で、混合廃棄物2を軽量再生物2Aと重量再生物2Bに分別できた。
【符号の説明】
【0015】
1…分別回収装置、2…混合廃棄物、2A…軽量再生物、2B…重量再生物、3…分別空間、4…分別用ドラム、5…モータ(ドラム回転装置)、6…送風装置、7…下側開放口、8…上側開放口、11…放出用羽根、12〜14…羽根列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合廃棄物を、より重い重量再生物と、より軽い軽量再生物とに分別するための分別回収方法であって、前記混合廃棄物を繰り返して空中に放出しつつ、複数回にわたって空中にある混合廃棄物に対して送風することで前記軽量再生物を送風方向に沿ってより多く移動させて前記重量再生物と前記軽量再生物とを分別することを特徴とする分別回収方法。
【請求項2】
請求項1に記載の分別回収方法に使用するための分別回収装置であって、
混合廃棄物を投入する分別空間を備えた分別用ドラムと、この分別用ドラムを回転軸の回りに回転させるドラム回転装置と、前記分別空間内に前記回転軸の方向に向かって送風する送風装置とを備えており、
前記分別用ドラムは前記回転軸が水平から所定の角度を備えて傾斜して設置されており、前記分別空間には前記回転軸に沿った上下一対の開放口が設けられ、前記送風装置は下側開放口から上側開放口に向かって送風するように構成されているとともに、前記分別用ドラムの内壁面には、前記分別用ドラムの回転に伴って前記分別空間内の混合廃棄物を空中に放出させる放出用羽根が設けられていることを特徴とする分別回収装置。
【請求項3】
前記放出用羽根は、複数のものが前記回転軸に対して同位置に配置された羽根列とされているとともに、前記回転軸に沿って前記羽根列が複数にわたって設けられ、前後に位置する羽根列の放出用羽根は互いに位置ずれして配置されていることを特徴とする請求項2に記載の分別回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−183302(P2011−183302A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51140(P2010−51140)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(594167082)吉田工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】